「渓流斎ブログ」と衣笠丼

きのうは裏新聞会議で、 虎ノ門の居酒屋「小虎」へ。100円生ビールを飲みながら楽しい輩と楽しい時間となった。敬愛するメディア界のバスター・キートン、じゃなかったブログ界の帝王・渓流斎はんにお会いできたことも僥倖だった。昨日と今日の「渓流斎日乗」は誇張と歪みがあるものの、さすが泣く子も笑わせる才能どすなあ。建仁寺御用達の上菓子屋「松壽軒(しょうじゅけん)」での饅頭をめぐる村長の実体験を軽妙な筆致でお書きになってくれはりました。ネタ一本やられてしもた。なんや、いけずやなあ(笑い)。(その模様はこちら⇒http;//keiryusai.com/
          さらしな本店③ 
          衣笠丼おます

という楽屋落ちはさておき、今日テーブルに乗せるのは衣笠丼(きぬがさどん)、である。京都の庶民の味、まかない料理・・・この衣笠丼こそ京都の裏メニューの極みだと思う。お揚げ(油揚げ)と九条ネギを甘いだし醤油で煮込み、卵を落とし、それをご飯の上に乗っけたシンプルなもの。
          さらしな本店① 
          いい店構え

たまたま朝食を食い逃し、四条河原町から新京極のアーケードに入り、ぶら歩き。早朝だったこともあり、これはという店がなかなか見つからない。仕方なく三条方面へと歩いていると、古い店構えのうどん・そば屋が見えた。「さらしな本店」の古い看板。観光客が喜びそうな店構え。その下に「名代 きしめん」の文字。京都できしめんとはいかに? しかも更科とは。よく見ると「衣笠丼」や「木の葉丼」というメニューも見えた。
          さらしな本店 
       ミスマッチやおまへん

調べてみると、創業が明治7年(1874年)で、京都ではギリギリの老舗。どうやら初代が名古屋出身のようで、京都できしめんを売りにしていることがわかった。むろん、京都できしめんはいただけない。「衣笠丼」を頼むことにした。
          さらしな本店1 
     ドンブリ5種(メニューの一部)

口開けだったので、客はいなかったが、すぐに3人4人と入ってきた。人気店らしい。10分ほどでお盆に乗った「衣笠丼」(税込み750円)が湯気を立てながらやってきた。昆布の佃煮と大根の葉の漬け物付き。味噌汁はない。
          さらしな本店④ 
          由緒ある衣笠丼
          さらしな本店⑤ 
          いい匂いが
          さらしな本店⑥ 
          昆布の佃煮

ふっくらと炊かれた厚めのお揚げと半熟の卵、それに九条ネギがいい彩りを形作っていた。お揚げの量がどっさりあり、九条ネギが少ない。天候のせいで九条ネギの相場が高くなっているのかもしれない。

元々が賄い料理なので、ここは豪快にいかなければならない。箸でかっ込むように食べると、味がやや濃いめ。昆布出汁よりも鰹出汁がよく効いていて、これはこれで悪くはない味わい。つゆだくのご飯は洗練とはほど遠く、それが「京都の庶民のまかないメシ」を実感させる。
          さらしな本店⑦ 
          かっ込むべし
          さらしな本店10 
          京都の裏メニュー
          さらしな本店⑧ 
        崖から飛び降りる?

食べ進むうちに、ひょっとしてこれは隠し味に名古屋も入った京都の「衣笠丼」ではないかと思い至った。お揚げの美味さが京都で、味の濃さが名古屋? 「どすえ」と「どえりゃあ」のドンブリの中の出会いと融合ということもある。  

出汁の浸みこんだ厚めのお揚げは京都の台所を感じさせる。全体的にもう少し味を淡泊にしたらいいと思うのだが、それは名古屋の初代に失礼というものかもしれない。きれいにかっ込み終えると、ドンブリの底から「どうどした? どえりゃあー美味かったでっしゃろ」というつぶやきが聞こえた気がした。朝めし代わりにはちょうどいいボリューム、ではある。デザートに空也饅頭・・・じゃなかった松壽軒の饅頭を食いたくなった。ジャンジャン。

本日の大金言。

東京・京都・名古屋の裏三都物語。緑のおばはんの三都物語は見え透いたパフォーマンスだったが、庶民の味は永遠だと思う。富士山もいいけど、衣笠山にはかないまへんで。



               さらしな本店13
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老舗お米屋驚きの洋食ランチ

 京都は行くたびに驚かされるが、今回もまさかの展開になった。つい1週間ほど前、天空グルメ先生のご令室ゆりさんの十三回忌に来たばかりなのに、また魔都・京都に来ることになってしまった。今回は日本ペンクラブ京都例会取材のため。1週間に2回も来れるのは幸せというもの。
          大報恩寺② 
          国宝の穴場

京都例会の話が本題ではない。合間を縫って、天空グルメ先生と北野天満宮で待ち合わせ。あいにく小雨の中、上七軒を抜け、大報恩寺千本釈迦堂へ。グルメ先生の渋い名解説を聴きながら、いい時間を過ごす。応仁の乱の戦火をくぐり抜けた本堂は国宝に指定されており、宝物館には運慶と並ぶ鎌倉時代の仏師・快慶と定慶の作品が並んでいる。快慶作「十大弟子立像に目が釘付けになる。まるで時空を超えて生きているよう。観光客が少ないのがありがたい(京都国立博物館で開催中の特別展覧会「国宝」に一部が出張中)。
          キッチンパパ 
          不思議な店構え

ここからが本題。グルメ先生が連れていってくれたのが、そこから歩いて7~8分ほどの老舗のお米屋さんだった。江戸時代安政年間(1855~1860年)創業の「大米米殻店(おおまいべいこくてん)」。驚き桃の木お米の樹。時刻は午後1時ちょい過ぎ。
          キッチンパパ① 
          まさかの世界

「ごはんのおいしい洋食屋」のメルヘン文字が見えた。およそ老舗らしからぬ「キッチンパパ」の看板。この妙な軽さは何だ? 何よりグルメ先生のご案内。何か仕掛けがあるに違いない。「へえー」状態の田吾作村長の表情を見て、唇の端にむふむふと笑みが浮かんでいる。ぐやじいのう。
          キッチンパパ② 
          店頭はお米屋さん

「ここはご飯がなくなったら、それでお終い。人気店なので、もう終わってるかも知れまへんよ」

入るとすぐお米屋さんになっていて、そこにご高齢の女将(4代目夫人)がいた。グルメ先生と親しげに談笑。三条商店街の食堂「ちから」が約100年の歴史を閉じ、先日閉店してしまったが、新たなランチ先を見つけたようだ。
          キッチンパパ12  
          メニューの一部

店頭が米屋、奥が洋食屋になっていて、満席だった。「まだ大丈夫ですよ」と女将。15分ほど待って、ようやく中へ。ウッディーなテーブル席がいくつか。ジャズが流れていた。いい雰囲気。4代目女将によると、ご子息の5代目が1996年から洋食屋を始めたそう。
         キッチンパパ⑤ 
         いい時間が流れる

まず瓶ビールを頼み、ランチメニューから「ハンバーグ&クリームコロッケ」(ごはん・味噌汁・サラダ付き 税込み1000円)を頼むことにした。グルメ仙人は「ハンバーグ&チキン南蛮」(同)を選んだ。本日のお米は「滋賀県産ミルキークイーン」。ソースはデミソースとおろしポン酢の2種類あり、おろしポン酢を選んだ。
          キッチンパパ⑦ 
          このスグレモノ
          キッチンパパ⑧ 
       ハンバーグ&クリームコロッケ

この炊き立てのご飯がさすが老舗のお米屋さんという代物でひと味違った。半透明のミルキークイーンはふっくらと炊かれ、噛むと粘り気が強い。ほのかな甘み。唾液がどんどん出てくるよう。玄米を精米したばかりのものを使っているせいか、風味と旨味が素晴らしい。村長の好みはササニシキだが。
          キッチンパパ3 
    本日は滋賀県産ミルキークイーン
          キッチンパパ4 
       手ごねのこだわり
          キッチンパパ⑨ 
          柔らかな肉汁

ハンバーグがこの店のもう一つの売りのようで、表面がこんがりと焼かれていて、口に運ぶと、牛肉と豚肉のミンチと玉葱、それにつなぎの卵黄(?)などが絶妙に捏ねられているのがわかる。ホロホロと柔らかい。その旨味とともに肉汁がじゅわりと溢れ出てくる。ポン酢あんかけソースがよく合っている。
          キッチンパパ6 
          クリームコロッケ
          キッチンパパ7 
         上質なクリーミー

クリームコロッケはきめ細かなパン粉がサクッと揚がっていて、中のホワイトソースのクリームが素朴にクリーミー。こちらはトマトベースのソースで、これがよく計算された相性となっている。2種類のソースを使っていることといい、全体的に上質の街の洋食屋さんなのは確か。
          キッチンパパ11 
          お米は日替わり

老舗のお米屋さんが洋食屋を併設しているのは全国でも極めて珍しいと思う。コロンブスの卵とも言えるが、こういう店を見つけて、フツーに使っているグルメ先生に改めて舌を巻かざるを得ない。ビールのちょっとしたアテにピーナッツとあられが付いてきたこともくすぐられる。京都、何という街だろう。

本日の大金言。

京都には実はいい洋食屋が多い。東京の下町にもいい洋食屋が多いが、京都の方が少し安い気がする。つまりコスパのいい洋食屋が多いということになる。京都人の厳しい舌と目がいいい店とコックさんを生んでいることは確かだと思う。観光客用の洋食屋は論外だが。



               キッチンパパ10 

神戸最古の喫茶で「玉子トースト」

 本日テーブルに乗せるのは、神戸で見つけたシーラカンスのような喫茶店で食べた「玉子トースト」であります。

京都から足を延ばして、神戸・新開地の安ホテルへ。中心地・三宮からは市営地下鉄で3駅ほど離れているが、このあたりはかつては港町神戸の中心地だった。戦前から昭和30年代まで、映画館や劇場が並び、「西の浅草」と称された場所でもある。神戸市役所も昭和32年(1957年)三宮に移転するまではこの地にあったという。

今では過日の面影はない。だが、ここに喫茶店好きにはちょいと知られた古い喫茶店がある。それが「エデン」である。神戸で現存する一番古い喫茶店。創業が昭和23年。神戸大空襲の焼け跡から立ち上がり、さらに大震災を乗り越えての生き残っていることを考えると、ほとんど奇跡に近い喫茶店だと思う。ここでモーニングを食べようと思い立った。
          エデン① 
       神戸現存最古の喫茶店へ
          エデン② 
          楽園の入り口

午前9時前に到着。植物の繁った入り口が歴史を感じさせる。神戸のハイカラ喫茶店文化の先駆けだが、どこか哀愁さえ感じさせる。店内は船のキャビンをイメージした造りで、そのレトロ感は只事ではない。はげかかった板張りの床はギシギシと音がしそうで、音量を落としたBGMのクラシックがさらに哀愁を膨らませる。
          エデン4 
          床板もポエム
          エデン③ 
          メニューの一部

メニューの中から「玉子トースト」(税込み 400円)、それに「ホットコーヒー」(同 350円)を頼むことにした。モーニングなのでセットにすると100円引き。安ホテルですでにモーニングを食べている村民2号は、ホットコーヒーのみ。「ホットコーヒー」という言い方も多分、当時はモダンだったに違いない。
          エデン2 
          レトロの歴史

この玉子トーストがかなりのレベルだった。初代から2代目に受け継がれた作り方で、まずパンの美味さに軽く驚く。神戸はパンの美味い街だが、ここのトーストした食パンはかじった瞬間、素朴な食感と小麦粉の香ばしさが優れている。浅草「ペリカン」の食パンと同じくらいのレベルか、ひょっとしてそれ以上かもしれない。
          エデン⑤ 
          玉子トースト、登場
          エデン12 
          上質の手づくり
          エデン⑨ 
          神戸の底力
          エデン10 
          さり気ない鮮度

具の卵は関西流の卵焼きで、キュウリとトマトで挟んでいる。自家製マヨネーズ(マスタードも入っている?)とマーガリンが絶妙なバランスで、思っていたよりも美味。時代が変わっても美味いものは美味い。添えられていたオレンジとバナナの鮮度もとてもいい。全体のボリュームも結構ある。

「このコーヒー、本当に美味いわ。コクが素晴らしい。時代から取り残されたような喫茶店なのに、作り方は時代を超えているみたい」
          エデン⑧ 
          さり気ないコーヒー

「確かに。常連客が多いようだけど、見ていると、この店を愛しているのがよくわかる。メニューがお世辞にもきれいじゃないので、最初は期待外れかな、と思ったけど、それだけで店を判断してはいけないってことだな」

「コーヒーカップも香蘭社のものよ。砂糖入れといい、一級品をさり気なく使っている。それでいて、この安さ。泣きたくなってくるわ」

「ここに来てよかったよ。エデンとはよく名付けたもんだ」

「またいつか来たいわね」
          エデン④  
          参りました

「おカネが続かないよ。第一、ヘビは一杯いるし、リンゴは食い過ぎてる。でもまあここが閉店しない限り、また来たいよ」

「何わけのわかんないこと言ってんのよ。私がリンゴ好きなことを皮肉ってんの?」

「・・・・・・」
 
本物のエデンは遠すぎるようで・・・。

本日の大金言。

栄枯盛衰は世の習いだが、そこに宝石が残っていることもある。たまには往時をしのぶ時間も必要かもしれない。









                 エデン13

「十三回忌」と京うどん

博覧強記、天空グルメ先生のご令室ゆりさんの十三回忌に列座するために久しぶりに京都へ。若くしてガンで亡くなったゆりさんは名門桜蔭出の才媛だが、そうしたことを鼻にかけることがまったくなかった、「本物」を感じさせる清楚な人柄だった。服装など生活スタイルもシンプルで、今思うと、ブランドで固めた「このハゲーッ」とはえらい違いである。

天空先生の菩提寺、信行寺と建仁寺で法要を営み(これは凄いこと)、天空先生が用意してくれた花見小路の「桃庭」で中華料理に舌鼓を打ち、ゆりさんを忍び、天空先生の半分以上理解できない絶妙な座談に耳を傾ける。祖先が会津藩足軽出身の村長にとっては、飯盛山からチョモランマを眺めるようなものかもしれない。
          春日井② 
          すでに行列とは

と書いたところで、五条大宮の「手打うどん 春日井(かすがい)」に話は移る。京都の凄味を改めて感じた小さなうどん屋で、たまたま泊まった安宿でフロントの女性スタッフが教えてくれた店。
          春日井③ 
          いい店構え

午後六時半少し前に行くと、客が5~6人ほど並んでいた。町家風のいい店構えで、これが思わぬ拾い物だった。
          春日井④ 
          この値頃感
          春日井⑤ 
          メニューの一部

瓶ビールとゆりさんも好きだった日本酒を頼み、メニューの「一品」から「ゆで豚」(からし酢醤油付 税込み380円)と「かしわ天」(胡椒塩とすだち付 同450円)を選んだ。仕上げには「冷たいうどん ざる」(同650円)。
          春日井13 
          奥が板場

「おうどんは少しお時間がかかります」
と女将らしい女性。ガラス越しに奥の板場が見え、そこでいい立ち姿の店主がうどんを釜茹でしていた。いいうどん職人であることがすぐにわかった。

7~8分ほどで、「ゆで豚」「かしわ天」の順でやって来た。絶妙な出し方。「ゆで豚」「かしわ天」ともにプロの板前の味で、シンプルな中にさり気なく技が詰まっている、そんな味わい。ゆで豚の何とも言えない柔らかな旨み、かしわ天のサクサクした衣とかしわの旨み。それぞれからし酢醤油と胡椒塩に付けて食べる。文句なしに絶妙と表現するしかない味わい。
          春日井⑥ 
          ゆで豚、登場
          春日井⑦ 
          隙がない
          春日井⑧ 
          たまりまへん
          春日井⑨ 
          素晴らしき世界
          春日井10 
          プロがいる

「当たりね。この縁も天空先生とゆりさんのお蔭かもしれないわ。高くないというのもありがたいな」
しみじみと村民2号。
「店は10年になるそうだけど、店主はどこで修業したんだろう。余分なものが何もない。雑味がない。かなりの腕の料理人だと思うよ」
          春日井11 
          仕上げのざる

タイミングを見計らったように、仕上げの「ざる」がやって来た。細めの絹のような光沢のうどんで、グルテンがにじみ出ているよう。やや甘めの鰹出汁のよく効いたつゆに付けて食べる。薬味は生姜、ミョウガ、万能ねぎ、それにお好みで胡麻。
          春日井5 
          京うどんの発見
          春日井12 
          奥の深さ
          春日井7 
          つゆの美味さ

口中に入れた途端、そのもっちり感とコシがとてもいい。その感触は名店の稲庭うどんのようでもあり、さぬきの二枚腰も連想させる。だが、これはまぎれもなく京うどん。これほどのもっちり感とのど越しはそうはないと思う。シンプルの深み。

ガラス越しに白衣の店主の姿を見ながら、予期せぬいい店に出会ったことに感謝することにした。京都の奥の深さと、なぜかゆりさんの残像がこの店にもあるような気がするのだった。

本日の大金言。

騒がしい観光名所よりも人通りの少ない場所。そこにいい店が暖簾を下げていることもある。京都の迷路は深すぎてわかりにくい。








                  春日井9

「桐生ソースカツ丼」の隠れ王者

 かつて「西の西陣、東の桐生」と呼ばれた群馬・桐生市はソースカツ丼のメッカでもある。「志多美屋」や「藤屋食堂」などが有名だが、地元の食通が愛する店は、別のところにある。

不覚にも村長がその存在を知ったのはごく最近。桐生生まれの村民2号の友人からの情報だった。

「美味くて安くて、でっかい。とにかくビックリするわよ。創業が昭和初期というのもすごい。90年以上の歴史があるのに、宣伝もしていない。本物はチャラチャラしてないってことね。ああいう店こそブログに書いてほしいわ」

このブログを見たというその友人おばはんは、そう言って、ガハハと笑った。
          五十番 
      一見、侘びしげな店構え

蜘蛛の巣が張り始めた実家へ掃除に行ったついでに、その店を訪ねることにした。桐生市の中心地の裏通り、糸屋通りにその店はあった。いかにも寂れた古い建物で、外から見たら、ただの古い中華食堂にしか見えない。サンプルケースが昭和そのまま。すぐ近くには坂口安吾も通ったレストラン「芭蕉(ばしょう)」もある。
          五十番② 
          まさかの世界が・・・

過剰な期待はせずに、中に一歩足を踏み入れた。一瞬にして、これは昭和のよき食堂だ、とわかった。テーブルが七つほど。左には木のメニュー札が並んでいて、右の壁には古い映画の下敷きがきれいに張られていた。「ウエストサイドストーリー」「卒業」など昭和の名作がズラリ。
          五十番2 
          ポエム
          五十番6  
       時間が止まったまま?

午後1時半過ぎなのに、常連らしい客がポツリポツリと入ってくる。奥が厨房になっていて、老夫婦が二人だけで切り盛りしていた。ゆったりとした時間が流れている。料理の出るスピードが遅い。だが、お客は文句も言わずにそれが当たり前のように、自分でお茶を持って来たり、注文しに厨房近くまで行ったりしている。ポエム。

村長は「ソースカツ丼」(味噌汁・お新香付き 税込み 670円)、村民2号は「オムライス」(サラダ付き 同620円)を頼んだ。
          五十番⑤ 
          これは何だ?
          五十番④ 
          オムライスもデカ~

待ち時間は約30分ほど。一つ一つ丁寧に作っているのがわかるため、何故かイライラもしない。女将が運んできた「ソースカツ丼」を見て、ウムとなった。ドンブリの蓋がトンカツで閉まっていない。ここまではそう珍しい光景ではない。

蓋を取ると、自家製ソースだれにくぐらせた揚げたての角型のトンカツが5枚、折り重なっていた! 衝撃が走った。これで670円というのは信じられない。もう一度メニュー札を確かめる。間違いない。問題は質と味。
          五十番⑥ 
          何も申しません
          五十番⑧ 
          言葉は不要です
          五十番⑦ 
        何と申しましょうか・・・

取りあえず2枚を蓋に移してから、キメの細かいコロモをガブリとかじると、ヒレ肉のような柔らかな上質の豚肉で、肉自体の厚みは5~7ミリほど。ウースターソースベースの自家製ソースだれはやや甘めで、美味という他はない。桐生ソースかつ丼の特徴で、カツの下にキャベツなどは敷かれていない。直置き。会津や長野・駒ヶ根のソースカツ丼とはそこが違う。
          五十番⑨ 
          こうする他はない
          五十番11 
        驚嘆という他はない

ご飯は炊きたてで、キラキラと見事に立っていた。やや固めに炊かれていて、ソースだれがほどよくかかっている。最初見たとき、トンカツのあまりのボリュームに完食できるか、少々心配にもなったが、あまりの美味さに箸がどんどん進み、10分ほどできれいに平らげてしまった。ワカメの味噌汁、お新香(ぬか漬け)も普通にキチンと作ってある。今年食べた中で、最大の驚き

支払いの時、ご年配の女将に「これで670円とは。かなりビックリしました」と正直に話すと、女将は「自分の家なので家賃がからないから、こうしてやってられるんですよ。ええ現在3代目です。でも、後継者がいないんで、私たちの代でお終いですよ」と寂しげに笑った。
          五十番14 
       プロフェッショナルがいる

最後にぶしつけな質問。元記者のサガ。「あのう豚肉は国産ですか?」「当たり前ですよ。国産のロース肉です。ヒレではありません」笑いながらきっぱり。

店を出ると、村民2号も「オムライスも大きさにも驚いたわ。チキンライスは柔らかめだったけど、美味かったわ。こういう店が隠れていたとは、桐生も奥が深いってことね。見直したでしょ」と鼻をツンとさせたのだった。

本日の大金言。

会津ソースカツ丼も駒ヶ根のソースカツ丼も、あるいは秩父のわらじカツ丼も、この店の前では分が悪いと思う。670円という値付けは今でも信じられない。昭和のよき料理人の心意気がしっかりと桐生に眠っていたとは。


                  五十番15
プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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