涙のドタバタ「上用饅頭」

 参った。パソコントラブルで昨日は一日、空転してしまった。京都と浦和の安倍晴明の仕業かもしれない(笑)。

で、しょうがないから、京都で体験したドジな「饅頭怖い」話を書くことにしよう。京都好きの人にもきっと少しは参考になると思う。

京都にお住いの天空グルメ先生お勧めの、東山区松原通にある「松壽軒(しょうじゅけん)」が一幕喜劇の舞台である。グルメ先生が繰り返し村長におっしゃった。

「あそこの饅頭を賞味しないで、京都の和菓子は語れまへんよ。建仁寺御用達の上菓子屋で、小っちゃな和菓子屋だけど、そりゃあもう、虎屋や塩瀬総本家も目じゃないというもんです。ただし、予約しないと買えまへんよ」、
          松壽軒 
          目立たない店構え
          松壽軒① 
          名店中の名店

で、先日京都に行ったときに、すぐに電話予約することにした。すると店主らしい男性が出た。お年のようで、二代目の当主だと思う。ちなみに「松壽軒」は創業が昭和7年(1932年)。京都ではまだまだ老舗とは言えない。だが、その和菓子の腕は確かで、かの建仁寺や高台寺が御用達にしているくらい。祇園のお茶屋なども贔屓(ひいき)にしている。
          松壽軒② 
          敷居は低い

「あのう、饅頭を予約したいんですけれど」
「饅頭? へえ、そんなもの作っておまへんで」
えっ、作ってない? そんなはずはない。だって、京都の大先生が美味い、ってホメてましたが」
「ほう、さようでっか。最中とかみかさならありますでえ」

そんなやり取りがだらだらと続き、結局、饅頭はあきらめて、最中とみかさ(どら焼き)を予約した。

翌日、小雨の中を「松壽軒」へ行った。天空グルメ先生が嘘をつくとは思えない。

小さな店構え。ここが和菓子界で知られた名店中の名店とは思えない。中に入ると、ややご高齢の店主(二代目)と女将さんの二人。下町の和菓子屋のよう。「建仁寺御用達」の賛がなければ、店を間違えたと思ってしまうほど。

入った瞬間、目が点になってしまった。「本日の上生菓子」と書かれたところに、饅頭が一個だけあるではないか。上用の織部饅頭、である。
          松壽軒③ 
          ようやくわが手に

「これ、饅頭じゃないですか? あるじゃあ、あーりませんか」
すると、店主と女将が口をそろえて、「へえ、これは上用饅頭でおます。饅頭とは違います」。

カフカの世界に紛れ込んでしまったような気分。その会話の間に、後から来た女性(美人ではなかった)がその一個を買って行ってしまった。何という不幸。推測するに、「うちはただの饅頭屋とは違います」ということなのだろう。上用饅頭と言わなかったほうが悪いかもしれないが、あまりの展開とややこしさに「いけずの虫」がむっくと頭を上げた。
 
「あのう、ご存じかどうかわかりませんが、天空グルメ先生は本山建仁寺が菩提寺で、お偉い方とも知り合いです。そのお方が『松壽軒』の饅頭を食べろと仰ったんです。で、今回、たまたま文筆倶楽部の京都例会があり、立ち寄った次第です。例会には京都市長もいらっしゃいますよ」
すると、今度は店主と女将の目が点になった。
          松壽軒② 
          上用の織部饅頭

「上用饅頭ならまだありますよ。奥にあります。何個必要どすか?

その変わり身の早さに敬意を表したくなった。さすがは建仁寺御用達。心苦しいので3個(1個 税込み320円)だけ持ち帰ることにした。「上生菓子なので、本日中に食べておくれやす」という女将の声を背に、小雨の中をトボトボウキウキと歩いた。

食べる場所がなかったので、やむを得ず、喫茶店に入り、おうす(薄茶)ではなく、コーヒーを飲みながら味わうことにした。
          松壽軒⑧ 
          神々しい
          松壽軒⑦ 
          後ろも神々しい
          松壽軒⑨ 
          饅頭の極致
          松壽軒10 
       皮もこしあんも極致

驚くべき美味さで、何とも表現のしようのない山芋入りの皮のしっとりむっちり感、清流を思わせる瑞々しいこしあん。むろん丹波大納言小豆を使用。砂糖はグラニュー糖か? 村長がこれまで食べた中で、間違いなく頂点の味わいだった。あんこの美味さは一つの極致だと思う。これほどの和菓子を作る店主、人間国宝級だと思う。もはや脱帽、白旗どす。この、朝から晩まであんこと和菓子作り一筋の店主にはすべてが許される。敷居の低い松壽軒の店構えも気に入ってしまった。文句など毛ほどもございません。

本日の大金言。

京都は一筋縄ではいかない。その分、本物がいたるところに隠れている。入り口は狭く、中は広く奥が深い。一千年の歴史はそう簡単には拝めない。それを肝に銘じて、京都に行くべし。



                  松壽軒11 

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「渓流斎ブログ」と衣笠丼

きのうは裏新聞会議で、 虎ノ門の居酒屋「小虎」へ。100円生ビールを飲みながら楽しい輩と楽しい時間となった。敬愛するメディア界のバスター・キートン、じゃなかったブログ界の帝王・渓流斎はんにお会いできたことも僥倖だった。昨日と今日の「渓流斎日乗」は誇張と歪みがあるものの、さすが泣く子も笑わせる才能どすなあ。建仁寺御用達の上菓子屋「松壽軒(しょうじゅけん)」での饅頭をめぐる村長の実体験を軽妙な筆致でお書きになってくれはりました。ネタ一本やられてしもた。なんや、いけずやなあ(笑い)。(その模様はこちら⇒http;//keiryusai.com/
          さらしな本店③ 
          衣笠丼おます

という楽屋落ちはさておき、今日テーブルに乗せるのは衣笠丼(きぬがさどん)、である。京都の庶民の味、まかない料理・・・この衣笠丼こそ京都の裏メニューの極みだと思う。お揚げ(油揚げ)と九条ネギを甘いだし醤油で煮込み、卵を落とし、それをご飯の上に乗っけたシンプルなもの。
          さらしな本店① 
          いい店構え

たまたま朝食を食い逃し、四条河原町から新京極のアーケードに入り、ぶら歩き。早朝だったこともあり、これはという店がなかなか見つからない。仕方なく三条方面へと歩いていると、古い店構えのうどん・そば屋が見えた。「さらしな本店」の古い看板。観光客が喜びそうな店構え。その下に「名代 きしめん」の文字。京都できしめんとはいかに? しかも更科とは。よく見ると「衣笠丼」や「木の葉丼」というメニューも見えた。
          さらしな本店 
       ミスマッチやおまへん

調べてみると、創業が明治7年(1874年)で、京都ではギリギリの老舗。どうやら初代が名古屋出身のようで、京都できしめんを売りにしていることがわかった。むろん、京都できしめんはいただけない。「衣笠丼」を頼むことにした。
          さらしな本店1 
     ドンブリ5種(メニューの一部)

口開けだったので、客はいなかったが、すぐに3人4人と入ってきた。人気店らしい。10分ほどでお盆に乗った「衣笠丼」(税込み750円)が湯気を立てながらやってきた。昆布の佃煮と大根の葉の漬け物付き。味噌汁はない。
          さらしな本店④ 
          由緒ある衣笠丼
          さらしな本店⑤ 
          いい匂いが
          さらしな本店⑥ 
          昆布の佃煮

ふっくらと炊かれた厚めのお揚げと半熟の卵、それに九条ネギがいい彩りを形作っていた。お揚げの量がどっさりあり、九条ネギが少ない。天候のせいで九条ネギの相場が高くなっているのかもしれない。

元々が賄い料理なので、ここは豪快にいかなければならない。箸でかっ込むように食べると、味がやや濃いめ。昆布出汁よりも鰹出汁がよく効いていて、これはこれで悪くはない味わい。つゆだくのご飯は洗練とはほど遠く、それが「京都の庶民のまかないメシ」を実感させる。
          さらしな本店⑦ 
          かっ込むべし
          さらしな本店10 
          京都の裏メニュー
          さらしな本店⑧ 
        崖から飛び降りる?

食べ進むうちに、ひょっとしてこれは隠し味に名古屋も入った京都の「衣笠丼」ではないかと思い至った。お揚げの美味さが京都で、味の濃さが名古屋? 「どすえ」と「どえりゃあ」のドンブリの中の出会いと融合ということもある。  

出汁の浸みこんだ厚めのお揚げは京都の台所を感じさせる。全体的にもう少し味を淡泊にしたらいいと思うのだが、それは名古屋の初代に失礼というものかもしれない。きれいにかっ込み終えると、ドンブリの底から「どうどした? どえりゃあー美味かったでっしゃろ」というつぶやきが聞こえた気がした。朝めし代わりにはちょうどいいボリューム、ではある。デザートに空也饅頭・・・じゃなかった松壽軒の饅頭を食いたくなった。ジャンジャン。

本日の大金言。

東京・京都・名古屋の裏三都物語。緑のおばはんの三都物語は見え透いたパフォーマンスだったが、庶民の味は永遠だと思う。富士山もいいけど、衣笠山にはかないまへんで。



               さらしな本店13

老舗お米屋驚きの洋食ランチ

 京都は行くたびに驚かされるが、今回もまさかの展開になった。つい1週間ほど前、天空グルメ先生のご令室ゆりさんの十三回忌に来たばかりなのに、また魔都・京都に来ることになってしまった。今回は日本ペンクラブ京都例会取材のため。1週間に2回も来れるのは幸せというもの。
          大報恩寺② 
          国宝の穴場

京都例会の話が本題ではない。合間を縫って、天空グルメ先生と北野天満宮で待ち合わせ。あいにく小雨の中、上七軒を抜け、大報恩寺千本釈迦堂へ。グルメ先生の渋い名解説を聴きながら、いい時間を過ごす。応仁の乱の戦火をくぐり抜けた本堂は国宝に指定されており、宝物館には運慶と並ぶ鎌倉時代の仏師・快慶と定慶の作品が並んでいる。快慶作「十大弟子立像に目が釘付けになる。まるで時空を超えて生きているよう。観光客が少ないのがありがたい(京都国立博物館で開催中の特別展覧会「国宝」に一部が出張中)。
          キッチンパパ 
          不思議な店構え

ここからが本題。グルメ先生が連れていってくれたのが、そこから歩いて7~8分ほどの老舗のお米屋さんだった。江戸時代安政年間(1855~1860年)創業の「大米米殻店(おおまいべいこくてん)」。驚き桃の木お米の樹。時刻は午後1時ちょい過ぎ。
          キッチンパパ① 
          まさかの世界

「ごはんのおいしい洋食屋」のメルヘン文字が見えた。およそ老舗らしからぬ「キッチンパパ」の看板。この妙な軽さは何だ? 何よりグルメ先生のご案内。何か仕掛けがあるに違いない。「へえー」状態の田吾作村長の表情を見て、唇の端にむふむふと笑みが浮かんでいる。ぐやじいのう。
          キッチンパパ② 
          店頭はお米屋さん

「ここはご飯がなくなったら、それでお終い。人気店なので、もう終わってるかも知れまへんよ」

入るとすぐお米屋さんになっていて、そこにご高齢の女将(4代目夫人)がいた。グルメ先生と親しげに談笑。三条商店街の食堂「ちから」が約100年の歴史を閉じ、先日閉店してしまったが、新たなランチ先を見つけたようだ。
          キッチンパパ12  
          メニューの一部

店頭が米屋、奥が洋食屋になっていて、満席だった。「まだ大丈夫ですよ」と女将。15分ほど待って、ようやく中へ。ウッディーなテーブル席がいくつか。ジャズが流れていた。いい雰囲気。4代目女将によると、ご子息の5代目が1996年から洋食屋を始めたそう。
         キッチンパパ⑤ 
         いい時間が流れる

まず瓶ビールを頼み、ランチメニューから「ハンバーグ&クリームコロッケ」(ごはん・味噌汁・サラダ付き 税込み1000円)を頼むことにした。グルメ仙人は「ハンバーグ&チキン南蛮」(同)を選んだ。本日のお米は「滋賀県産ミルキークイーン」。ソースはデミソースとおろしポン酢の2種類あり、おろしポン酢を選んだ。
          キッチンパパ⑦ 
          このスグレモノ
          キッチンパパ⑧ 
       ハンバーグ&クリームコロッケ

この炊き立てのご飯がさすが老舗のお米屋さんという代物でひと味違った。半透明のミルキークイーンはふっくらと炊かれ、噛むと粘り気が強い。ほのかな甘み。唾液がどんどん出てくるよう。玄米を精米したばかりのものを使っているせいか、風味と旨味が素晴らしい。村長の好みはササニシキだが。
          キッチンパパ3 
    本日は滋賀県産ミルキークイーン
          キッチンパパ4 
       手ごねのこだわり
          キッチンパパ⑨ 
          柔らかな肉汁

ハンバーグがこの店のもう一つの売りのようで、表面がこんがりと焼かれていて、口に運ぶと、牛肉と豚肉のミンチと玉葱、それにつなぎの卵黄(?)などが絶妙に捏ねられているのがわかる。ホロホロと柔らかい。その旨味とともに肉汁がじゅわりと溢れ出てくる。ポン酢あんかけソースがよく合っている。
          キッチンパパ6 
          クリームコロッケ
          キッチンパパ7 
         上質なクリーミー

クリームコロッケはきめ細かなパン粉がサクッと揚がっていて、中のホワイトソースのクリームが素朴にクリーミー。こちらはトマトベースのソースで、これがよく計算された相性となっている。2種類のソースを使っていることといい、全体的に上質の街の洋食屋さんなのは確か。
          キッチンパパ11 
          お米は日替わり

老舗のお米屋さんが洋食屋を併設しているのは全国でも極めて珍しいと思う。コロンブスの卵とも言えるが、こういう店を見つけて、フツーに使っているグルメ先生に改めて舌を巻かざるを得ない。ビールのちょっとしたアテにピーナッツとあられが付いてきたこともくすぐられる。京都、何という街だろう。

本日の大金言。

京都には実はいい洋食屋が多い。東京の下町にもいい洋食屋が多いが、京都の方が少し安い気がする。つまりコスパのいい洋食屋が多いということになる。京都人の厳しい舌と目がいい店とコックさんを生んでいることは確かだと思う。観光客用の洋食屋は論外だが。



               キッチンパパ10 

「十三回忌」と京うどん

博覧強記、天空グルメ先生のご令室ゆりさんの十三回忌に列座するために久しぶりに京都へ。若くしてガンで亡くなったゆりさんは名門桜蔭出の才媛だが、そうしたことを鼻にかけることがまったくなかった、「本物」を感じさせる清楚な人柄だった。服装など生活スタイルもシンプルで、今思うと、ブランドで固めた「このハゲーッ」とはえらい違いである。

天空先生の菩提寺、信行寺と建仁寺で法要を営み(これは凄いこと)、天空先生が用意してくれた花見小路の「桃庭」で中華料理に舌鼓を打ち、ゆりさんを忍び、天空先生の半分以上理解できない絶妙な座談に耳を傾ける。祖先が会津藩足軽出身の村長にとっては、飯盛山からチョモランマを眺めるようなものかもしれない。
          春日井② 
          すでに行列とは

と書いたところで、五条大宮の「手打うどん 春日井(かすがい)」に話は移る。京都の凄味を改めて感じた小さなうどん屋で、たまたま泊まった安宿でフロントの女性スタッフが教えてくれた店。
          春日井③ 
          いい店構え

午後六時半少し前に行くと、客が5~6人ほど並んでいた。町家風のいい店構えで、これが思わぬ拾い物だった。
          春日井④ 
          この値頃感
          春日井⑤ 
          メニューの一部

瓶ビールとゆりさんも好きだった日本酒を頼み、メニューの「一品」から「ゆで豚」(からし酢醤油付 税込み380円)と「かしわ天」(胡椒塩とすだち付 同450円)を選んだ。仕上げには「冷たいうどん ざる」(同650円)。
          春日井13 
          奥が板場

「おうどんは少しお時間がかかります」
と女将らしい女性。ガラス越しに奥の板場が見え、そこでいい立ち姿の店主がうどんを釜茹でしていた。いいうどん職人であることがすぐにわかった。

7~8分ほどで、「ゆで豚」「かしわ天」の順でやって来た。絶妙な出し方。「ゆで豚」「かしわ天」ともにプロの板前の味で、シンプルな中にさり気なく技が詰まっている、そんな味わい。ゆで豚の何とも言えない柔らかな旨み、かしわ天のサクサクした衣とかしわの旨み。それぞれからし酢醤油と胡椒塩に付けて食べる。文句なしに絶妙と表現するしかない味わい。
          春日井⑥ 
          ゆで豚、登場
          春日井⑦ 
          隙がない
          春日井⑧ 
          たまりまへん
          春日井⑨ 
          素晴らしき世界
          春日井10 
          プロがいる

「当たりね。この縁も天空先生とゆりさんのお蔭かもしれないわ。高くないというのもありがたいな」
しみじみと村民2号。
「店は10年になるそうだけど、店主はどこで修業したんだろう。余分なものが何もない。雑味がない。かなりの腕の料理人だと思うよ」
          春日井11 
          仕上げのざる

タイミングを見計らったように、仕上げの「ざる」がやって来た。細めの絹のような光沢のうどんで、グルテンがにじみ出ているよう。やや甘めの鰹出汁のよく効いたつゆに付けて食べる。薬味は生姜、ミョウガ、万能ねぎ、それにお好みで胡麻。
          春日井5 
          京うどんの発見
          春日井12 
          奥の深さ
          春日井7 
          つゆの美味さ

口中に入れた途端、そのもっちり感とコシがとてもいい。その感触は名店の稲庭うどんのようでもあり、さぬきの二枚腰も連想させる。だが、これはまぎれもなく京うどん。これほどのもっちり感とのど越しはそうはないと思う。シンプルの深み。

ガラス越しに白衣の店主の姿を見ながら、予期せぬいい店に出会ったことに感謝することにした。京都の奥の深さと、なぜかゆりさんの残像がこの店にもあるような気がするのだった。

本日の大金言。

騒がしい観光名所よりも人通りの少ない場所。そこにいい店が暖簾を下げていることもある。京都の迷路は深すぎてわかりにくい。








                  春日井9

京都展の「いなり・だし巻き弁当」

 おいなりさんとだし巻き。京料理のベースにある粋だと思う。B級なのにA級でもあり、シンプルなのに奥が深い。どちらも出汁が決め手になっている。「野暮」が看板の関東のいなり寿司や卵焼きとはベースが違い過ぎる。むろん、野暮の魅力も手放しがたいが。

東京・新宿で気の置けない仲間とちょっとした飲み会があり、新宿伊勢丹本店で待ち合わせとなった。ちょうど6階で「京都展」が開催されていて、京菓子からサンドイッチまで、京都の名店がズラリと並んでいた。さすが伊勢丹、と感心しながら、いつもの癖で価格を見ると、いずれも安くはない。
          さいき家 
      京都の名店がズラリ(さいき家)
          さいき家② 
        おっ、だし巻き実演中
          さいき家① 
          これこれ

フトコロと相談しながらあれこれ迷った末に、「大徳寺 さいき家」の「いなり寿司だし巻き弁当」(一折 税込み972円)を買い求めた。1000円以内であることと「いなり・だし巻き」に惹かれたからである。

後ろに視線を感じ、振り向くと、京グルメ仙人と本日の夜の主役・コック長が立っていた。わわわ。いつもながら風の又三郎的登場の仕方で、これが不思議な魅力でもある。

「村長、グルメ仙人が冷ややかに見てましたよ。『さいき家』の弁当を買うなんて、お里が知れるって顔でしたよ、むふむふムフフ」
コック長が村長の耳元でささやいた。何という微笑ましい奴らだ。

その後、三丁目の居酒屋でしこたま飲み食べしてから、終電近くにウマズイめんくい村に帰り、翌日の朝食で、この「いなり寿司だし巻き弁当」を賞味した。
          さいき家① 
          朝めし、である

自然な色の大きいだし巻きが2切れ、それにいなり寿司が4つ。

「さいき家」は仕出し専門の料理屋で、創業が昭和8年(1933年)。西陣が華やかりし頃などは、評価の高い仕出し屋だったようだ。現在は時代に合わせて有名デパートなどでも店舗展開をしている。
          さいき家② 
          さすが京都

グルメ仙人はツウすぎて、昭和8年創業の仕出し屋などは「なんや近ごろ気張ってはる店やなあ。京都駅でも売り出してはるわ」くらいの認識のようだ。京都では84年程度では老舗とは言えない。かなんなあ。

だが、だし巻き卵の美味さはさすが京都、というものだった。甘さが控えめというより、ほとんどない。鰹節と利尻昆布出汁がじゅわりと効いている。冷めているのに美味い。ほどよい塩気。ふつうは冷めると出汁が微妙に流れ出て、味が落ちる。それがまったくない。ふわふわのまま。何か特別なつなぎを加えているに違いない。
          さいき家⑨ 
          冷めてても
          さいき家10
          味が落ちていない


 
いなり寿司はお揚げが薄く、かなり甘め。酢飯にはゴボウ、人参、たけのこ、黒ごま、ちりめんじゃこが入っていて、それなりに美味い。以前に賞味した新京極「寿司 乙羽(おとわ)」のいなり寿司が大関だとすると、小結くらいの美味さ。むろん個人的な感想で、フツーに食べたら「うめえ」となるレベルだと思う。
          さいき家⑥ 
          おいなりさん
          さいき家⑦ 
          出汁の効き方

気がついたら、一人でほとんど全部食べていた。村民2号とゴッドマザーが呆れたように村長を見ていた。天井のあたりからグルメ仙人の笑い声が聞こえた気がした。村にも応仁の乱が近づいている?

本日の大金言。

京都は別格だと思う。恐るべき一千年の味覚文化。庶民と殿上人が曼荼羅状にどこかで繋がっている。その下に眠っている怨念の深さ。千年王国の桜の下には屍体が埋まっている。おいなりさんとだし巻きもその上に花開いていると思うが。肩に力が入り過ぎだよ、ぐひひ。




                 さいき家5 



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プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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