近江と桐生の「接点ランチ」

火薬庫の上で ピョンチャン五輪が始まり、始まった途端、結果に一喜一憂することになっている。テレビの力、恐るべし。

という前振りで、本日テーブルに乗せるのは、約300年の歴史を持つ店蔵(みせぐら)で食べたレトロランチ「黒酢あんかけ」である。

いつものようにポンコツ車を走らせて、群馬・桐生市にあるゴッドマザーの旧宅へ。すでに亡くなっている大酒のみファザーのお墓詣り。むろんもう一つの目的は昼ごはん・・・。
          桐生泉新① 
          歴史的鰻屋(泉新)

桐生はかつて「西の西陣、東の桐生」と称されたこともある織物の街。今では閑散としているが、メーンストリート本町通り周辺には古くていい店が残っている。桐生で晩年を迎えた坂口安吾が通った鰻屋「泉新(いづしん)」(創業天保元年)、棟方志功の壁画があるレストラン「芭蕉(ばしょう)」など数えたらきりがない。
          矢野園喫茶 
     300年の歴史「矢野本店」

たまたま本町通りでひと際異彩を放っている「矢野本店」で足が止まった。創業が驚くなかれ享保2年(1717年)、初代は近江日野からやってきた矢野久佐衛門。2代目がここに店を構え、酒蔵、味噌蔵、醤油蔵を造り、途中商売替えしたものの、「矢野本店」として現在もお茶屋など手広く営んでいる。
          矢野園喫茶③ 
       喫茶有鄰(ゆうりん)

中に入ると、一角に大正ロマンの香りがする「喫茶 有鄰(ゆうりん)」があり、そこで昼めしとなった。「とれたて野菜カレー」にするか「黒酢あんかけ」にするかしばし迷ったが、珍しモノ好きの虫が動きだし、「黒酢あんかけ」(サラダ・コーヒー付き 税込み800円」を選んだ。村民2号は「とれたて野菜カレー」(同 800円)。どちらも十六穀米。高くないのがいい。
          矢野園喫茶② 
          メニューの一部

7~8分ほどの待ち時間でミニサラダ、続いて十六穀米の「黒酢あんかけ」がやってきた。一見カレーのようだが、文字通り黒酢のあんかけ。地場の野菜(ブロッコリー、人参、玉ねぎ、カボチャ、じゃがいも、ナス、しめじ、ピーマン、レンコン)がドカドカと入っていた。採れたての野菜だそうで、あまり煮込まず、鮮度を生かした作り。
          矢野園喫茶⑤ 
          サラダ、登場
          矢野園喫茶⑥ 
          黒酢あんかけ
          矢野園喫茶⑦  
    こちらは「とれたて野菜カレー」

十六穀米はやや固めに炊かれていて、甘酢っぱい黒酢のあんかけとのバランスは悪くない。ほどよく柔らかく炊かれたじゃがいも、ブロッコリー、ナスなどとよく合う。メチャウマではないが、体の中が妙にきれいになってくる気がする。オーガニックな、ほどよいボリューム。
          矢野園喫茶⑧ 
         コスパがいい
          矢野園喫茶⑨ 
         採れたての野菜

「こっちの方が当たりね。カレーとあんかけだけの違い。カレーの方が旨いに決まってるわ。自家製ルーがこってりして結構いける。店の人もカレーがイチオシと言ってたでしょ。珍しければいいってもんじゃないわよ」
          矢野園喫茶11 
          形がしっかり

「この店、凄い店だよ。奥に戦国武将蒲生氏郷のポスターがあったのでビックリ。ややご高齢の店長に聞いたら、初代が近江日野から移ってきたので、今でも日野町とつながりがあるんですよ、と言ってた。つい最近まで日野にも店があったとか。日野出身の蒲生氏郷を追っていることを考えると、何か不思議な縁を感じる」

「何言ってるのよ、蒲生氏郷がたどった日野、松阪、会津若松とお金をかけて何度も行ってるのに一向に成果が出ないじゃない。とっくに日が暮れたわよ」
          喫茶有鄰 
          歴史を想う

「急いではいけない。限りあれば吹かねど花は散るものを心短き春の山風・・・いい辞世の歌だ。心短き春の山風、身近に実感するなあ」

「フン、花ではなく髪の毛なら理解できるけど」

「・・・・・・」

本日の大金言。

近江日野商人の足跡は全国にある。酒造業、味噌醤油、薬、漆器・・・そこに蒲生氏郷の力もかかわっていると思う。三方よしの精神・・・桐生にもその足跡が残っていた。改めて歴史を考えてみる。



                  矢野園喫茶12 


スポンサーサイト

百年料理屋の「キジつくね弁当」

東京・日本橋茅場町周辺にはいい店が多い。ホントに多い。

兜町ペンクラブに野良仕事に行ったときなど、時間があるときは、このあたりをぶら歩きするのが楽しい。今回テーブルの上に乗せるのは昨日午後1時過ぎ、氷雨の中を飛び込んだ「鳥徳(とりとく)」のランチ弁当である。
          鳥徳 
          いい店構え

以前から目を付けていた老舗の鳥料理屋で、うなぎも名物。創業は記録が残っていないのではっきりしないが、明治30年(1897年)前後のようだ。すぐ近くには同じ鳥料理の名店「やきとり 宮川」もある。こちらはすでにこのブログでご紹介している。
           鳥徳① 
          二階は座敷

海老茶の暖簾がいい風情で、中に入ると、外から見るよりもかなり広い。年季の入った下駄箱と階段があり、大正・昭和の面影がある。一階は奥がガラス張りの板場になっていて、こちらも驚くほど広い。そこで料理人が鮮やかな手さばきでうなぎとキジ(鶏)を焼いている。明治・大正の板場を見ているような気分。
          鳥徳1 
          一階の世界
          鳥徳2 
          板場の別世界
          
カウンター席に座って、メニューを物色する。3種類の弁当が気になった。一番安い「A弁当」(税込み 850円)に目が行くのは仕方がない。
          鳥徳6 
          メニューは多くない

「A弁当って何?」
「キジ焼きとつくねです」(女性スタッフ)
「それ、お願いします」

ちなみにB弁当は焼き鳥中心、C弁当はうなぎ。値段が上がっていく。どうやらこの店では鳥をキジと呼んでいる。江戸から続く言葉遊び(シャレ)が今も生きているのが、さすが日本橋界わいの老舗と感心。
           
14~5分ほどで鳥スープがサッと置かれた。あっさりした塩味で、ま、普通の味わい。それから2~3分で、A弁当がやってきた。漆塗りのドシリしたお重で、「A弁当」というあまりに軽い言葉と違和感があると思う。
          鳥徳③ 
          A弁当、登場

ゆっくり(こういう店では急いではならない)蓋を取ると、見事な世界が広がっていた。濃いタレをくぐらせたキジ(多分胸肉)が全体の三分の二を覆っていた。そのボリューム。焼き加減がプロフェッショナル。残りの三分の一は大きめのつくねが6個。こちらは塩ダレで、箸を付けると、鳥つくね自体の旨みが口中に広がった。かすかににんにくの匂い。グリーンピースがポエム。
          鳥徳④ 
          このボリューム感
          鳥徳7  
          つくねの実力
          鳥徳⑧ 
          キジの実力

キジは厚めで7~8枚はありそう。濃いめの甘辛ダレで、鳥の鮮度がかじった瞬間にわかった。ブランド名などは書かれていないが、比内地鶏のような食感で、おそらくいい鳥を朝締めしたものではないか。老舗は野暮な表示はしない。
          鳥徳10 
          七味をパラリ

最も感心したのは絶妙にタレのかかったご飯で、やや固めの炊き加減と、透明感のあるテカり。どこの米かはわからないが、一粒が小さいのでおそらくコシヒカリ系だと思う。量は少なめ。
          鳥徳11 
          タレのかかり具合
          鳥徳12 
        食べ終えたくない

途中で七味をかけ、さらに食べ進むと、つややかな海苔が出てきた。ポエム。あまりに美味いので、食べ終えるのが惜しくなるほど。白菜の漬け物(食べ放題)はそれなりだが、このA弁当、850円という舌代を考えると、かなりのお値打ちだと思う。

本日の大金言。

茅場町、兜町、八丁堀周辺はランチの激戦区でもある。裏通りに入ってもいい店が多い。バブル華やかなりし時代には近くの証券マンが爪楊枝(つまようじ)を加え、肩で風切って歩いていた。その爪楊枝姿も今はあまり見かけなくなった。


                 鳥徳14 

こいつぁ春から「天然酵母トースト」

大方の サラリーマン諸君は今日が仕事始め。だが、村長はペンクラブの急な仕事が入ってしまい、ゲラ片手にきのうから仕事始め。

外にも出ず、マドンナの「MUSIC」をかけながら、午後3時近くまで活字の山とニラメッコ。ついてねえ。小腹が減ったので、栃木・佐野までポンコツ車を走らせることにした。今回の目的はラーメンではない。

以前から目を付けていた「茶房 直(なお)」の自家製天然酵母食パンのトースト! ここを見つけたのはひょんなことから。昨年末にゴッドマザーの実家へ大掃除に出かけた帰り、佐野に立ち寄り、コーヒーを一日三杯飲まないとツノが出始める村民2号のご機嫌を取るために、佐野市内の喫茶店をウロウロ探し回った。で、たまたま見つけたのが「茶房 直」だった。
          茶房直 
          意外な出会い

普通に通ったら、気がつかないほどの地味な店構え。まともな看板すらない。このとき何故かセンサーが働き、思い切って飛び込んでみた。
          茶房直① 
       まさかの喫茶店
          茶房直② 
          隠遁者の世界?

驚いた。一枚板の磨き抜かれた長いカウンターとテーブル席。それに暖炉。ゆったりと時間が流れていた。客は常連らしき品のいい老夫婦が一組だけ。本格的なサイフォンコーヒーの台が3台、ひと目でスグレモノとわかるコーヒーカップやグラスが棚に整然と置かれていた。シンプルなのに隅々まで気が配られているのがわかった。
          茶房直④ 
          あらまあの世界
          茶房直1 
      喫茶店ファンも知らない

晩年の淡路恵子のようなママさんが一人。このコーヒーが美味かった。食べログにも出ていない喫茶店で、ママさんによると、創業は1977年(昭和52年)1月。「昔は3人でやっていたんですよ。でも今の時代はこういう店は流行らないでしょ」とポツリ。

そのときにメニューに載っていたのが天然酵母パンのトーストだった。よくよく聞いたらパンは自家製で、しかも小麦は北海道・美瑛町(びえいちょう)産小麦粉だという。
          茶房直⑤ 
          自家製の極み

ラーメンを食べた後だったので、コーヒーだけで「また来ます」と店を後にした。その幻のトーストが頭の隅に残ったまま。というわけで、今回の再訪問となった。

天然酵母トーストは数種類あるが、最も定番の「トースト」(税込み 450円)を選んだ。むろんブレンドコーヒー(同 500円)も頼む。正直安くはないと思ったが、それは十数分後に間違いだとわかる。
          茶房直⑥  
          幻のトースト

コーヒーの美味さはさておき、このトーストが並のものとは違った。待ち時間は10分ほど。ひと目でただのトーストとは違うことがわかる。厚さは約3センチほど。天然酵母パン独特の香ばしさと深い色。茶グレー。表面にバターが塗ってあり、その焼き加減がとてもいい。イチゴジャムが脇に置かれていた。
          茶房直⑦ 
          利休の世界?
          茶房直⑨ 
          シンプル

切れ目が二筋。それを両手で割ると、素朴なもっちり感と重みが直に伝わってきた。ひと口。表面のパリパリ感と中のもっちり感が絶妙という言葉を押し出してくる。この浮いたところのない美味さは何だろう?
          茶房直11 
          この瞬間

「生地にほんの少し黒糖を加えてるんですよ」

すべてがさり気なく本物で、手抜きは一ミリほどもない。何も足さず何も引かずの世界。これほどの喫茶店なのにあまりに客が少ない。なぜだ? 去年の秋、神戸最古の喫茶店「エデン」で味わった衝撃に劣らない。まさか佐野でかような喫茶店が生き残っていて、しかも隠遁者のようにひっそりと常連客だけを相手にしているように見える。こんなのありか?
          茶房直12 
          理屈は後で
          茶房直2 
          器の凝り方

値段が安くなくても満足がそれを上回るということもある。千利休の世界にも通じるような喫茶店が関東の片隅にある。そのことを素直に喜びたい、と思う。こいつぁ春から縁起がいいわい。

本日の大金言。

ついてねえ。それがついてる、に変わることもある。天然酵母トーストのささやかな教訓。今年はこの小さな出来事を胸の奧に仕舞って乗りきって行こうと思う。


                  茶房直14 

「ソースかつカレー」に驚く

村のルーティンワークとなった実家の掃除で群馬・桐生へポンコツ車を飛ばす。桐生は 日本三大ソースかつ丼のメッカとして、長野・駒ヶ根、福島・会津とともに知る人ぞ知る存在。

約1時間半ほどの掃除を終え、ひと汗かいた後に、桐生市内境野(さかいの)にある洋食レストラン「ペーペ.」へ。イタリア語で胡椒(こしょう)の意味。時計を見ると、午後1時半を少し超えていた。「西の西陣、東の桐生」と言われた過日ほどの活気はないが、織物の街・桐生には隠れたいい料理屋が多い。
          ペーペ 
          メルヘン風外観

「境野には大伯父が大きな屋敷を構えていたのよ。織物工場で成功していたけど、知人の借金の保証人になったことが原因で破産してしまったのよ。紙切れ一枚で全財産を失ってしまうなんてバカみたい。だから境野に来るとついついそれを思い出しちゃう」

珍しく村民2号がセンチメンタルジャーニーになってしまった。村だって破産寸前(?)かもしれないので、困った。こういう時は黙っているに限る。沈黙は銀なり。あまり関係ないが、貴乃花の沈黙は金になるか?
          ペーペ5 
          落ち着く

「ペーペ.」はサーモンピンク色の一軒家のレストランで、ここが美味いという情報は、村民2号が仕入れて来たもの。「カレー&パスタ」と表記されたドアを開けると、ウッディな床と植物、それに窓から入ってくる柔らかな日差しがゆったりと落ち着く雰囲気をかもし出している。。木のテーブルが6つほど。小さなカウンター席もあり、その対面が厨房になっていて、そこに白いコック服姿の二人(ご夫婦?)が仕事に励んでいた。BGMはなぜか安室奈美恵だった。
          ペーペ② 
          メニューの一部

イタリア料理を中心にメニューは多い。この店の売り物でもある「カレー」だけでも15種類もある。その中から村長は「ソースかつ」(税込み 950円)を、村民2号は「なすとひき肉」(同 800円)を選んだ。ついでにランチタイムサービスの「サラダと飲み物」(プラス250円)も頼むことにした。むろん、コーヒー。
          ペーペ④     
          まずサラダ
     
注文を受けてから作り始めているようで、とんかつを揚げる軽やかな音が厨房から聞こえてきた。待ち時間は15分ほど。サラダが先に来て、「ソースかつ」カレーライスがやって来た。おおおというビジュアル。
          ペーペ⑤ 
          おおおの登場
          ペーペ⑥ 
          海と孤島
          ペーペ1 
     こちらは「なすとひき肉」

白い大皿に焦げ茶色の自家製カレーの海。真ん中に孤島のようにライスが盛られ、千切りキャベツが乗り、さらにその上に一口かつが3個「どうだい」とそびえていた。しっかりとソースにくぐらせてある。紅ショウガがちょこんと乗っている。カレーライスと桐生のソースかつ丼をドッキングさせたアイデアがユニークではある。
          ペーペ⑦ 
          本格的味わい

カレーは本格的な欧風カレーで、深みのあるまろやかな味わい。スパイスもほどほど。仕込みに二日ほどかけているそう。タマネギがすっかり溶け込んでいる。
          ペーペ⑨ 
          ヒレの一口かつ

一口かつは噛んだ瞬間、コロモのサクッとした歯触りがいい。中の肉は国産豚のヒレ肉だそうで、厚みはさほどないが、柔らかくて美味。思ったほどのボリュームはないが、それがお腹にはほどよい。
          ペーペ4 
          かじり愛?
          ペーペ11 
          ソースとカレー

好みもあるが、ちょっと惜しいと思うのが、ソースがライスの下まで浸みていること。つまりソースの量が多すぎると思う。せっかくのカレーの美味さが減少してしまうのではないだろうか。加減の問題。

「私の方は当たり。チーズが添えられていてそれが意外に悪くない。カレーの美味さに尽きるわね。天国の大叔母が私に味方したのね。コーヒーも美味いわ」
すっかりセンチメンタルは消え、うふうふ顔。変わり身は金なり。

店は今年で33年になるそう。「旬の味」カキフライカレーも美味そうだった。また来ることにしよう。

本日の大金言。

ソースかつのカレーは極めて珍しいが、東京・新宿にある大正10年創業「王ろじ」に歴史的な名物があることを思い出した。以前このブログでもご紹介した「とん丼」である。こちらはドンブリだが、あの柴田錬三郎も愛したとんかつ屋である。



                  ペーペ12 





続きを読む

「桐生ソースカツ丼」の隠れ王者

 かつて「西の西陣、東の桐生」と呼ばれた群馬・桐生市はソースカツ丼のメッカでもある。「志多美屋」や「藤屋食堂」などが有名だが、地元の食通が愛する店は、別のところにある。

不覚にも村長がその存在を知ったのはごく最近。桐生生まれの村民2号の友人からの情報だった。

「美味くて安くて、でっかい。とにかくビックリするわよ。創業が昭和初期というのもすごい。90年以上の歴史があるのに、宣伝もしていない。本物はチャラチャラしてないってことね。ああいう店こそブログに書いてほしいわ」

このブログを見たというその友人おばはんは、そう言って、ガハハと笑った。
          五十番 
      一見、侘びしげな店構え

蜘蛛の巣が張り始めた実家へ掃除に行ったついでに、その店を訪ねることにした。桐生市の中心地の裏通り、糸屋通りにその店はあった。いかにも寂れた古い建物で、外から見たら、ただの古い中華食堂にしか見えない。サンプルケースが昭和そのまま。すぐ近くには坂口安吾も通ったレストラン「芭蕉(ばしょう)」もある。
          五十番② 
          まさかの世界が・・・

過剰な期待はせずに、中に一歩足を踏み入れた。一瞬にして、これは昭和のよき食堂だ、とわかった。テーブルが七つほど。左には木のメニュー札が並んでいて、右の壁には古い映画の下敷きがきれいに張られていた。「ウエストサイドストーリー」「卒業」など昭和の名作がズラリ。
          五十番2 
          ポエム
          五十番6  
       時間が止まったまま?

午後1時半過ぎなのに、常連らしい客がポツリポツリと入ってくる。奥が厨房になっていて、老夫婦が二人だけで切り盛りしていた。ゆったりとした時間が流れている。料理の出るスピードが遅い。だが、お客は文句も言わずにそれが当たり前のように、自分でお茶を持って来たり、注文しに厨房近くまで行ったりしている。ポエム。

村長は「ソースカツ丼」(味噌汁・お新香付き 税込み 670円)、村民2号は「オムライス」(サラダ付き 同620円)を頼んだ。
          五十番⑤ 
          これは何だ?
          五十番④ 
          オムライスもデカ~

待ち時間は約30分ほど。一つ一つ丁寧に作っているのがわかるため、何故かイライラもしない。女将が運んできた「ソースカツ丼」を見て、ウムとなった。ドンブリの蓋がトンカツで閉まっていない。ここまではそう珍しい光景ではない。

蓋を取ると、自家製ソースだれにくぐらせた揚げたての角型のトンカツが5枚、折り重なっていた! 衝撃が走った。これで670円というのは信じられない。もう一度メニュー札を確かめる。間違いない。問題は質と味。
          五十番⑥ 
          何も申しません
          五十番⑧ 
          言葉は不要です
          五十番⑦ 
        何と申しましょうか・・・

取りあえず2枚を蓋に移してから、キメの細かいコロモをガブリとかじると、ヒレ肉のような柔らかな上質の豚肉で、肉自体の厚みは5~7ミリほど。ウースターソースベースの自家製ソースだれはやや甘めで、美味という他はない。桐生ソースかつ丼の特徴で、カツの下にキャベツなどは敷かれていない。直置き。会津や長野・駒ヶ根のソースカツ丼とはそこが違う。
          五十番⑨ 
          こうする他はない
          五十番11 
        驚嘆という他はない

ご飯は炊きたてで、キラキラと見事に立っていた。やや固めに炊かれていて、ソースだれがほどよくかかっている。最初見たとき、トンカツのあまりのボリュームに完食できるか、少々心配にもなったが、あまりの美味さに箸がどんどん進み、10分ほどできれいに平らげてしまった。ワカメの味噌汁、お新香(ぬか漬け)も普通にキチンと作ってある。今年食べた中で、最大の驚き

支払いの時、ご年配の女将に「これで670円とは。かなりビックリしました」と正直に話すと、女将は「自分の家なので家賃がからないから、こうしてやってられるんですよ。ええ現在3代目です。でも、後継者がいないんで、私たちの代でお終いですよ」と寂しげに笑った。
          五十番14 
       プロフェッショナルがいる

最後にぶしつけな質問。元記者のサガ。「あのう豚肉は国産ですか?」「当たり前ですよ。国産のロース肉です。ヒレではありません」笑いながらきっぱり。

店を出ると、村民2号も「オムライスも大きさにも驚いたわ。チキンライスは柔らかめだったけど、美味かったわ。こういう店が隠れていたとは、桐生も奥が深いってことね。見直したでしょ」と鼻をツンとさせたのだった。

本日の大金言。

会津ソースカツ丼も駒ヶ根のソースカツ丼も、あるいは秩父のわらじカツ丼も、この店の前では分が悪いと思う。670円という値付けは今でも信じられない。昭和のよき料理人の心意気がしっかりと桐生に眠っていたとは。


                  五十番15
プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

最新記事
カテゴリ
彦作のつぶやき
最新コメント
月別アーカイブ
カレンダー
01 | 2018/02 | 03
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 - - -
最新トラックバック
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR