まさか?来年2013年を大予想

 本日は大みそか。波乱含みだった2012年が幕を閉じる。来年はどんな年になるか? 神のみぞ知るだが、越中ふんどしを締め直して、「ときどきタマが外れる」ウマズイめんくい村・赤羽彦作村長がヨッコラショと立ち上がった。毎年恒例の年度予想を行うためである。これまでほとんど当たったためしがない。それでも決行すると力を入れている。1時間ほど瞑想してから10個ほど紙に書き始めた。ま、最後だからいいっか。で、今回は特別編。「来年はこうなる?赤羽彦作の2013年10大ニュース予想」をお届けすることにしよう。お断りするまでもなく、当たるも八卦当たらぬも八卦、でーす。


予想1 尖閣に謎の集団が上陸。

 7月某日。日本の海上保安庁と中国海洋局がにらみ合いを続ける中、両国の警戒網をかいくぐって、謎の集団が尖閣諸島に上陸。「ここは日本のものでも中国のものでもない。誰のものでもない」と主張。「リュウグウノツカイ」を名乗り、ジョン・レノンの「イマジン」を歌う姿がユーチューブを通して全世界に流れる。

予想2 北朝鮮でクーデターが勃発。

 核実験を成功させた北朝鮮でクーデターが勃発。金正恩の行方が不明のまま、金正男が臨時政府を樹立。「人民のための政治」を宣言、総選挙実施を明言するも中国に無視される。日本、アメリカ、韓国は承認へ。

予想3 AKB48が解散へ。

 AKBの人気が急降下。ニューアルバムがベスト30位以内に入らず。大島優子が責任を取って卒業。「要は飽きられてしまったということでしょう」と秋元康がコメント。解散コンサートツアー実施へ。

予想4 シリア・アサド大統領がイランに亡命。

 内戦で化学兵器を使ったとして、オバマ米大統領が軍事介入の動きを見せる中、追い詰められたアサド大統領がイランに亡命。シリアの主導権を巡り、周辺諸国を巻き込んで、混乱はさらに泥沼化。第5次中東戦争勃発も。

予想5 ダルビッシュ有、サイヤング賞受賞。


 レンジャースのダルビッシュ有投手が20勝9敗でシーズンを終え、サイヤング賞を受賞。日本人投手初の快挙。しかし、チーム自体は地区優勝するもののプレーオフで脱落。

予想6 SMAP、ストレスで年内休業。

 嵐に押されっぱなしのスマップ・草彅剛が体調不良で緊急入院。「草彅の様子がこのところヘンだった。原因はストレスらしい」という噂が駆け巡る。真相は今のところ不明。「早く立ち直ってほしい」とファン。スマップもグループとしての活動を年内は休業すると発表。

予想7 新型ウイルスか? 原因不明の奇病発生。


 アフリカで全身が緑色になって呼吸困難に陥る謎の病気が大量発生。そのまま死亡に至るケースも出始め、WHOは「新型ウイルスの可能性がある」と緊急声明を発表した。「グリーンズ」と命名される。

予想8 芦田愛菜ちゃんに初スキャンダル。

 天才子役・芦田愛菜ちゃんがデート中の様子をフライデーされる。お相手は年下の金髪男子。詳しいことは不明。

予想9 突如、T級グルメブーム起こる。

 安倍首相のインフレターゲット政策が失敗。日本社会の貧困化がさら進み、B級よりもっと安いT級グルメが人気となる。T級とは低級・低価格・低満足をもじった新語。

予想10 麻生太郎再登板、首相へ。
 
昨年末に総選挙で大勝した自民党・安倍政権が問題解決できずに暗礁に乗り上げる。政治テロも続発。安倍首相の病気が再発、緊急入院。代わって麻生太郎副総理兼財務大臣が第97代首相に就任。その失言にメディアの期待が高まる。



本日の大金言。

予想は外れるためにある。一寸先は闇。この時代、「みぞうゆう」の事態に備えておくことに尽きる。


 

 


  
     
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カステラ通も唸った京都の「カステイラ」

 2012年(平成24年)も残すところ後3日。今年はどんな年だったか。どん詰まりには総選挙で自民党が政権を奪取するなど大きなニュースがあったが、個人的には宮仕えを終えて、あちこち錆びついた体と頭を補修ドッグで点検したことが大きい。「社会復帰する」ためのリハビリ期間に相当する。社会復帰?もちろんブラックジョークだが。村犬チャイの死(天国特派員就任)も言葉では表せない。

ウマズイめんくい村の村長として、ポンコツの愛車を吹かして東奔西走、うまいもの探しに精を出した。メディアが伝えないうまいものがメディアの目の届かない場所に結構埋まっていることもわかった。その中の一つ、京都の絶品カステイラを本日は特別にお届けしようと思う。「カステラ」ではなく「カステイラ」。カステラと言えば文明堂や福砂屋など長崎があまりにも有名で、まさか京都に長崎に負けないカステラが脈々と引き継がれていたとは。村長も驚いた逸品。

               京都カステラ①  
        京のカステイラさま!

京都にお住いの妖怪魔王、調布先生の手土産の一つ。製造販売元は「越後家多齢堂」。店名を見ただけで頭が混乱するほど。しかも包装には「加壽天以良(カステイラ)」と表記してある。こんな表記ってありか?何と300年以上の歴史という。江戸時代中期に長崎でオランダ人の下で修業した先祖が京都に製法を持ち帰って以来、2012年の現在までカステイラだけを何代にも渡って作り続けている。この隠れ老舗を知っている人は少ないだろう。

「知らなくてもかましまへん。わてらはご先祖さまから引き継いだカステイラの秘伝を大事に守り続けるだけどす。他に何か?」
そうさらりとかわされそうな気配が漂っている。文明堂や福砂屋と同列に扱えない「ややこしさ」も潜んでいる。

                 京都カステラ① 
         これって読める?

村長はハタと困った。で、村民2号の友人で近くに住むカステラ好きのおばさんに加わってもらって、この厄介なカステイラを賞味することにした。目の前にあるのは1本1600円の紙箱入り。
「長崎根元とも書いてあるわ。やっぱり長崎なのね。それをしっかり伝えているのがすごい。恩知らずがはびこっている今の日本人には耳が痛い」
村民2号がちっとも痛そうな顔をしないで、金色のパッケージを開けると、新鮮な卵と甘い香りがふわりと立ち上がってきた。表面は見事な焦げ目。その下にはかなり黄色味の強いスポンジ。
「この色はちょっとすごい。文明堂や福砂屋より色が鮮やか。添加物をまったく使わずにこの色を出しているのは驚きね」
カステラおばさんが目を見開いている。

         京都カステラ④ 
         見事な「カステイラ」が・・・

包丁で切り分けて、賞味する。何ということだ。底にザラメがない!
「しっとり感があまりない。しっとり感ではなく、ふわふわ感が特徴だね。村長は福砂屋のあのしっとり、どっしりした重量感が好きで、底についているザラメの食感が特に大好き。その福砂屋とはまるで違う。何と言えばいいのか、洗練と重厚、粋と野暮の違いとでも言いたくなる。原点は同じオランダ=長崎なのに、ここまで味わいが異なっている。京都の洗練はオランダさえも飲み込んで変換してしまう」
「好みの問題だけど、私は水飴をたっぷり含ませた福砂屋の重量感のあるしっとり感に一票。越後家多齢堂のカステイラはよそ行きの味で、年に一度、晴れの日に食べたい味。福砂屋や文明堂は月に一回くらい食べたい味」
カステラおばさんがうまい表現をした。

         カステイラ②  
         こんなカステラがあったとは

「京都のカステイラに一票。これだけのふわふわ感と上品さはなかなか味わえないわ。調布先生にはいつも驚かされる。どこでも買える福砂屋とか文明堂よりここでしか買えない越後家多齢堂に敬意を表したくなるわ」
ウマズイめんくい村の「多齢堂」村民2号が締めくくった。1年の締めくくりのカステイラ。皆さん、よいお年を!


本日の大金言。

後3日で除夜の鐘。カステイラを賞味しつつあの大航海時代を想うのもいいかもしれない。


              カステイラ③ 

埼玉にうまい土産はあるの?という疑問

 江戸からの帰り道、彦作村長は「さいたまるしぇ」主催のイベントに顔を出した。時節柄、帰省するときの埼玉のお土産ベスト10を選んでしまおうという企画で、隠れた埼玉名物もいろいろ用意しているらしい。村長はこの手のイベントが大好きである。何よりも「埼玉のお土産」というコンセプトが気に入った。だが、しかし、そもそも埼玉に「お土産として持っていきたくなる名物」なんてあるのか?

「さいたまるしぇ」は埼玉の農産物情報を発信していくのが目的の組織。今回は「紅赤」という埼玉発のさつまいもを使ったお菓子類を中心にして、さらに他のスイーツなど掘り出し物を品評しようという試みだった。スイーツ好きの彦作村長には応えられないお誘い。会場はさいたま市の一角。サポーターが7~8人ほど、テーブルの上に用意された十数種類の商品を試食しながら、「うん、これはいいわね」「値段と満足度がどうかな」などとチェックしている。

         紅赤プリン 
         紅赤って埼玉発祥なの?

これだけのスイーツ類が並ぶ光景はなかなかお目にかかれない。村長は最初に目についた「紅赤ぷりん」(1個210円=足立屋)と「おさつプリン」(1個210円=彩菓庵おおき)を試食した。埼玉発祥のさつまいも「紅赤」を使ったプリンで、「紅赤」はその名前通り、赤の鮮やかさと甘さが売り物のさつまいもで、一部では「幻のさつまいも」と呼ばれるそう。

         さいたまるしぇ⑧ 
         意外なうまさ

色の鮮やかさをそのまま生かした「紅赤ぷりん」よりも、村長は見た目はイマイチの「おさつプリン」が気に入った。甘さが控えめで、素材の素朴な風味をそのまま生かしている。紅赤の繊維のつぶつぶ感も心地いい。いぶし銀のような味わい。さつまいも、卵、生クリーム、牛乳、砂糖だけで作っている。洋酒も少々入れているが、どうやら添加物は使っていない。これはマル。

見た目に惹かれたのは「うみたてプリン」(1個100円=ラ・リーヴ)と「サッカー王子最中」(1個75円=橘家)。「うみたてプリン」は卵の殻をそのまま使っていた。ひっくり返すと底が少し開いていて、プリンが詰まっている。生クリームとカスタードのプリンで、新鮮な卵の香りがフワッと立ち上がってくる。甘さはやや強め。何よりもこのアイデアが素晴らしい。

         さいたまるしぇ② 
         卵であって卵じゃない?
         サッカー王子最中  
         これは最中か?

「サッカー王子最中」はゴルフボール大の小さな最中。アイデアは悪くないが、ネーミングが奇をてらい過ぎて、最中自体のうまみを感じさせていないのが損だと思う。皮が柔らかすぎるのも崩れやすくて残念。しかし、中のあんはかなり甘めだが、村長の好み。つぶあんとゆずあんの2種類ある。割るとなぜか白インゲンが二つ乗っかっている。これも意外性があり、二つの食感が楽しめておもしろい。どうせなら「オウンゴール最中」とか「けまり最中」というネーミングはどうか?「にこたま最中」というのもいいかもしれない。

         さいたまるしぇ⑤ 
         案外いいかも

「元祖ねぎみそ煎餅」(1枚73円=片岡食品)は知る人ぞ知る逸品。深谷産の生ネギを使ったユニークなみそ煎餅で、煎餅好きでもある彦作村長はその甘めのみそと深谷ネギの風味のハーモニーに感心した。よく見るとヒビがかなりあり、そこにネギみそが滲みこんでいる。かなり計算されたつくり。醤油と味噌と深谷ネギの緑が見た目を楽しませてくれる。甘いものに飽きた人への埼玉土産としては案外いいかもしれない。

というわけで、彦作村長のベスト10を付けることはできなかった。しかし、あえて一つ選ぶとしたら、「おさつプリン」にする。味わいの良さはもちろんだが、「おさつ」が増えて、来年はいいことが待っているような気もするからである。おさつとお札のスイートな予感に期待することにしよう。

       さいたまるしぇ⑨ 
       おさつプリンさま


本日の大金言。

時代はさいたま、という日が来るか来ないか。悲しいかな、最後は「埼玉都民」の意識にかかっている。


                さいたまるしぇ⑦

銀座の穴場、原点おにぎりで1年を振り返る

今年も残すところあとわずか。赤羽彦作村長はふと、江戸の銀座に行きたくなった。エンターテインメント新聞社で宮仕えしていた日々、銀座はいわば庭みたいなものだった。と書くとエラソーだが、銀座は大人の世界の迷路という側面もあり、彦作村長は銀座の裏通り歩きが大好きだった。裏通りにあるビー玉の幸福。

新橋で友人との忘年会がある。それまでの時間を久しぶりに山野楽器やデパ地下を散策。その足で松屋の裏手をぶらりぶらりと歩いていると、「茶房 野の花」という看板が見えてきた。1階が花屋でその2階部分。いい雰囲気である。その一角だけ野趣のテイストが漂っていた。

          野の花① 
          銀座のど真ん中?

時計を見ると午後3時半を過ぎている。まだ昼飯を取っていなかったので、軽い食事でも取ろうと考えながら、藍染めのノレンをくぐって階段をトントンと上がった。軽い驚きが村長をとらえた。目の前にここが銀座のど真ん中とは到底思えない別世界が広がっていた。由緒のある和蔵の中にでも紛れ込んでしまったよう。中央に6人用の黒い漆塗りのテーブル。これは古民家のドアを再利用したものだという。さらに5人用、2人用のテーブルが二つほど。時代物の本格的な和ダンスや陶器類などが並べられている。スペースはかなり広く、ゆったり感が漂っている。ここだけ別の時間が流れている。

         野の花② 
         1年を振り返るメニュー

時間が時間だけに客は他に1組だけ。村長はメニューの中から、「野山のごちそうA」(1100円)を選んだ。少々予算オーバーだが、たぶん年内最後の銀座なので、タマゼイ(たまのぜいたく)もいいか、という気分。この店はなんと野草を取り入れた自然食カフェだった。玄米と白米をミックスしたおにぎりと黒米のおにぎりがそれぞれ一個ずつ。それも富山産のコシヒカリを使っているというこだわりぶり。それに山菜の佃煮、煮物、ホタテの汁物がセットになっている。

驚くのは甘味。「空也最中とお煎茶または抹茶」(800円)や「自家製黒豆抹茶みつ豆」(1000円)まである。値段は安くはないが、「空也の最中」をメニューに置いている店はここしかないのではないか。予約しないと買えない「空也の最中」は銀座の逸品で、村長も宮仕え時代にはたまに使わせてもらった。最中界(そんなものがあるとして)の最高峰に位置していると思う。

          野の花④ 
          玄米と黒米のシンプルなおにぎり

予算の関係で「空也の最中」は断念したが、「野山のごちそうA」はマルだった。何よりもその控えめで自然な味わいに感心した。これは精進料理の一種ではないか。おにぎりは味付けはまったくしていない。塩味さえしない。素材の米だけの味。山菜の佃煮(3種類)がその味付けの役割を担当するというわけだ。村長は玄米ミックスのおにぎりより黒米のほうがうまいと思った。米が立っていて、玄米のややクニャッとした食感よりも噛み味がいい。

          野の花⑦ 
          煮物で精進
          野の花⑥  
          がんもで精進

煮物はシイタケ、がんもどき、フキ、麩(ふ)、こんにゃく、昆布、紅あずま、ニンジンなどが関西風の薄味に仕上がっている。一足早く正月が来たような気分になってしまった。もっともうまいと感じたのは「ホタテのみそ汁」。一見何の変哲もないお椀を探ると、中にホタテが潜んでいて、その出汁の凄味に少々驚いた。白みそと出汁のバランスが絶妙で、最初の柔らかいアタックから次第にじわじわと奥行きを広げ、突然現れた「はんなり美女の日本舞踊」、そんな例えをしたくなる味覚世界が五臓六腑に染み入ってきた。お盆の陰にさりげなく置かれた水仙の花一輪が目の隅に入る。まるで千利休のワビさびの世界ではないか。「ワビさび嫌い」には耐えられない、しかし、ワビさび好きには応えられない世界。

         野の花⑨ 
         みそ汁の奥の世界

彦作村長は、銀座のど真ん中で今年一年を振り返ることにした。精進料理と越中ふんどし。ここからスタートしなければならない。たまが外れないように、と自戒を込めながら。



本日の大金言。

今年から来年にかけてのキーワードは「日本の原点」だろう。背伸びしすぎた日本の足元をもう一度見つめること。右肩上がりの幻想はすでに崩壊している。


                   野の花⑧ 

聖夜に希望のシフォンケーキとマフィン

 本日はクリスマス。昨夜はイブ。街行く人もテレビが伝える情報もどこか浮き足立っている。あれっ、日本にこんなにサンタクロースがいったんだっけ?とあきれるほどの商売先行の日である。クリスマス商戦に乗っかって、ロマンチックなムードになるバカップルも多い。
「日本には正月があるだろ、正月が!」
彦作村長は、越中ふんどしを締め直してから、厳かに立ち上がった。熊谷に行った帰りに美味い店を発見、そこで買ってきたシフォンケーキとマフィンを賞味するためである。

          ころぽっくる③ 
          メリークリスマス!

「村長は節操がなさすぎますッ!おとといは歌舞伎役者のディナーショーを楽しんで、日本人はやっぱり和だ。クリスマスなんて怪しからん、なんて息巻いていたくせに。シフォンケーキとマフィンって日本のものだったっけ?」
「昨日は昨日、今日は今日。あんぱん文化も日本の文化になっている。このシフォンケーキとマフィンは実に繊細で、アメリカ人ごときには作れるものではない。そう考えるとこれはもはや日本のスイーツとも言える」
「苦しいわねえ。ヘンな理屈を付けないで、食べたいなら食べたいって言った方が体にいいわよ。私はもともとシフォンケーキ大好きだから、クリスマスにこれを食べるのは賛成よ」
「うむ」

          ころぽっくる④ 
          犬も歩けば棒に当たる

「ころぽっくる」という小さな店を発見したのは偶然だった。ガイドブックやテレビの情報を信じない彦作村長は、自分の足と嗅覚でいい店を探すことを戒め(モットー)にしている。その嗅覚にビビビと来たのが、まずは店構えだった。いい店は店構えである程度判断がつく。ころぽっくるとはアイヌ語で小人の意味。たぶん、小さな店という志を込めているのだろう。入り口の黒板に「当店のシフォンケーキはベーキングパウダーや保存料などは一切使用せず、メレンゲの力で焼き上げております」と書かれた文字。小さな店なのに「地方発送、承ります」という看板まである。それが嫌味ではなく、むしろパティシエのささやかな誇りを感じる。

午後2時過ぎなのに店に入るとほとんどが売り切れていた。夫婦なのだろうか若い店主と女性が切り盛りしていた。いい匂いが小さな店内に充満している。残り物には福がある。村長は目玉の一つ「プレーンシフォンケーキ」(570円)と「ブラウンシュガーマフィン」(170円)、「ゴママフィン」(150円)を買った。

         ころぽっくる① 
         残り物には福がある?
         ころぽっくる⑤  
         この見事なシフォンケーキ

プレーンシフォンケーキは見事なものだった。カバーを取ると、新鮮な卵とバニラの香りが立ち上がってきた。シフォンケーキにはうるさい村民2号が生クリームを用意、そのまま村長を差し置いてひと口ペロリ。
「これは本当に自然な味。シフォンの意味はシルクという意味だけど、これはシルクを超えているわね。羽毛のようなふわふわ感がかなりのレベルに達してる。ベーキングパウダーでごまかしていないところも好感が持てるわ。口の中にふわーっと広がる感覚が素晴らしいわ」
村長も賞味。「この黄色さが自然な色だとしたら、すごいね。甘さも控えめで、ふわふわと同時にもっちり感もある。食感もマルだ」

          ころぽっくる② 
          まずはひと口
          ころぽっくる⑤ 
          黒糖が練り込んである

マフィンはブラウンシュガーに感心した。黒糖の塊が中に入っていて、それがほどよく溶けだしていて、自然な甘さがマフィンのもちもちした食感とともに口中に一時の幸福感をプレゼントしてくれるよう。「メリークリスマス、ミスター彦作!」そうささやいてくれたような気までする。非戦場のメリークリスマス。
「このマフィンはパンに近いイングリッシュではなく、むしろお菓子に近いアメリカ風ね。とくにブラウンシュガーはそう。ゴマは白ゴマと黒ゴマがいっぱい入っていて、甘くないのがいい。バターを使わないで豆乳を使っているというのもヘルシー。太る心配も少なくて、そこも好感度アップ」
村民2号が太る心配をしていたとは・・・。にわかには信じがたいが、ウマズイめんくい村のクリスマスはこうして平和に過ぎていくのだった。皆々さま、メリー、クリスマス!

          ころぽっくる⑦  
          おまけのツーショット


本日の大金言。

世界にはクリスマスを祝えない人もいっぱいいる。1秒でもその人たちのことを想ってみる。祈り。


                 ころぽっくる④ 


Xマスより和だ?『芝浜』と幕の内弁当

 クリスマスイブの前日、コーヒー好きの村民2号が猫足で近寄ってきて、彦作村長の耳元でささやいた。
「日本人がクリスマスで大騒ぎするのはどこか変よねえ。村長もいまだに越中フンドシを愛用しているくらいだから、和の人よね?」
「何が言いたいの?」
「いい店を見つけたのよ。コーヒーがとってもうまい店で、そのマスターが歌舞伎役者なのよ。今晩、そこでディナーショーをやるの。幕の内弁当を食べて、美味しいコーヒーを飲んで、マスターの踊りと一人芝居を楽しむ。それで、一人2000円。安いでしょ。2人分予約してあるから、早く行きましょ。クリスマスより日本の伝統芸よ」
否も応もない。歌舞伎役者だとお?村長のライバルではないか。これは敵情視察に出かけねばなるまい。ポンコツ車をすっ飛ばして、うどんと鯉のぼりの町・埼玉加須市の「カフェ・竜」にダイブした。

         カフェ竜① 
         こんなところに歌舞伎役者が・・・

「カフェ・竜」は昨年の10月にオープン。白を基調としたこじゃれたカフェで、マスターは市川竜之助(42)。歌舞伎座で大舞台も踏んでいるれっきとした歌舞伎役者。出身地が大利根町ということもあり、地元周辺で「コーヒーのうまい店をやりたかった」という。コーヒーにはうるさい村民2号もすでにファンになっている。炭火焙煎ブレンド(400円)の他メニューは豊富で、レアチーズケーキ(300円)やコーヒーゼリーなどのスイーツ類まですべて自家製。口コミでうまいという評判である。

        カフェ竜10 
       絶妙なこだわりブレンド

店内はすっかり芝居小屋に変身していた。午後7時のスタート。歌舞伎座ならぬ「竜座の幕の内弁当」をつつきながら、竜之助の「本日の演目」を聞く。食事の後はブレンドコーヒータイム、それから「日本舞踊」へ。最後に一人芝居「芝浜」というコース。照明から音響まですべて竜之助が一人でやるという。歌舞伎役者の凄味を感じる。

          カフェ竜⑦ 
          幕の内弁当が登場

値段から言ってあまり期待していなかったが、仕出しの幕の内弁当は予想以上のうまさだった。煮物、焼き物、揚げ物、デザートまで華やかに作られていて、腹八分目の分量もちょうどいい。あちらこちらから「竜さんのショーまで見れて、これで全部で2000円なんて信じられない」という声が聞こえてくる。観客は7割が女性。ぐやじい。村長は竜之助に嫉妬した。ぎっくり腰の田吾作と歌舞伎役者。こりゃダメだ。

         カフェ竜② 
         いよっ、竜之助!
         カフェ竜③ 
         ありゃ、撮影はここまで

日本舞踊は意表を突くスタート。普段着から紋付き仕舞袴に着替える早ワザを見せてくれる。少々頼りなげだった竜之介助が芸に入った瞬間、きりりと締まる。狭い特設ステージを目いっぱい使った舞踊はプロのワザ。感嘆の拍手が引いた後、いよいよ一人芝居「芝浜」が始まる。「芝浜」は古典落語の定番の一つで、大酒飲みの魚屋と女房の人情噺(にんじょうばなし)である。これを竜之助が自分で演出。落語とはひと味違った歌舞伎仕込みのパフォーマンスが小気味いい。照明を効果的に使って、約45分の熱演が終わる。ほろりとしたいい余韻が残る。「アンコール」の声がかかる。大音声で隈取のワンシーンを再現する。拍手が鳴りやまない。まさか埼玉の果てでこんなパフォーマンスが見れるとは。2000円の満足。一人芝居はクリスマスの夜まで続く・・・。



本日の大金言。

安倍次期首相殿、「取り戻す」なら日本の伝統芸も。埼玉のへき地でも伝統芸が楽しめる。クリスマスをぶっ飛ばせ、である。



               カフェ竜⑨ 

あの伝説のラーメン屋の流れは汲めるか?

 赤羽彦作が食べた醤油ラーメンの中でもベスト10に入った熊谷「よか楼」。その謎の閉店はショックだった。閉店の理由が不明のまま1年半以上たった。もう埼玉・熊谷でラーメンを食べることはないだろう。そう思っていた。

だが、少々気になる新しい店の情報を仕入れた。美熟女の村民2号が知り合いラーメン通から「熊谷ですっごく面白いラーメン屋さんを見つけたわよ。店を開いて10年くらいたつらしいけど、土曜に行ったら行列だった」という情報。これは行くっきゃない。久しぶりにポンコツの愛車を飛ばして、その「きくちひろき」というおよそラーメン屋らしからぬ名前のラーメン屋に出向いた。

         きくちひろき① 
         がんこ流の骨っぽい外観

調べてみると、この店は東京・高田馬場で伝説のラーメン屋となったあの「元祖一条流 がんこ総本家」直系の店のようだ。「よか楼」しか眼中になかった彦作村長にとっては痛恨の極みかもしれない。たかが熊谷、されど熊谷。平日の午後1時半過ぎ。時間帯もあってか、行列はなかった。黒い建物に巨大な牛骨のマーク。それはこの店が「元祖一条流」の流れを汲んでいることを物語っている。入り口に「今日も又 咲くか咲かぬか我がスープ 咲かせて見せよう がんこ花」という大きなノレンが。店主の心意気だろうが、何やら演歌の世界のよう。村長の苦手な世界でもある。

店内は照明を落としていて、それが独特の味わいをかもし出している。14~5人ほど座れる長いカウンターだけの世界。目の前が厨房になっていて、若いハンサムな男性が一人、黙々と麺づくりに励んでいた。村長の他お客は2人。雰囲気としては好感が持てる。メニューはこってり系とあっさり系があり、背脂が苦手な村長は「醤油味あっさり(ネギ油入り)」(730円)を注文した。ネギ油は焦がしたネギと油を煮たてたもの。最近、このネギ油を使う店が増えてきている。

          きくちひろき② 
          シンプルな中の奥行き

「醤油味あっさりらーめん」が登場した。透き通ったスープと黄色みの強いストレート細麺。それに大きなチャーシューが目に飛び込んできた。シナチクと白身の多い刻みネギが見事に彩りを添えている。白いドンブリの隅には大きな海苔が。実にシンプルな構成の中に只者ではない雰囲気が漂っている。赤羽で賞味した「麺屋 伊藤」と共通するものを感じる。

         きくちひろき④ 
         あっさり目のスープ

まずスープ。仕上げにネギ油を入れているので、ぷんといい匂いが鼻腔をくすぐる。スープは塩分が強いという触れ込みだが、むしろさっぱりしたシンプルな味わい。ベースには牛骨や鶏ガラ、魚介類など数種類の出汁が潜んでいて、それがシンプルの中に奥行きを与えているようだ。店主がこのスープに賭けているのがわかる。だが、と彦作村長は思う。このさっぱりは村長にはやや物足りなさを覚えた。余韻が足りない。背脂をいっぱい使った「こってり」との対比でさっぱり感を前面に打ち出したと思うが、その後味はネギ油がやや強めに残る。ここが微妙に難しいところだが、この味の評価が別れる所ではないか。

         きくちひろき③ 
         歯ごたえのあるストレート細麺
         きくちひろき⑥  
         チャーシューは特筆もの

ストレートな黄色い細麵はコシがあり、シャキッとしたいい食感だ。何よりもスープとの色合いと味の相性がいい。自家製のチャーシューは箸で摘まもうとすると崩れるほど柔らかい。これほどの柔らかさまで煮込んだチャーシューはそうはない。シナチクも自家製でチャーシューとは反対で、コリッとした固めの食感。このあたりの絶妙なバランスは相当研究していることが読み取れる。あえて彦作村長の好みを言うと、チャーシューは柔らかすぎで、もう少し豚バラの食感があったほうがいいと思う。

スープを一滴も残さず飲む。高田馬場の伝説の店の流れを汲む「きくちひろき」。「よか楼」なき後、埼玉のラーメン戦国時代を生き残る有力店を発見した幸せな気分で、彦作村長はポンコツ車に戻ることにした。波乱の2012年も残すところ後わずかである。



本日の大金言。

ラーメン界のバトンタッチは心配には及ばないのかもしれない。永田町のバトンタッチの方が心配だ。


                    きくちひろき⑧ 

 ローストビーフサンドとシーラカンス

 宮仕え時代から彦作村長はドトールをよく使った。仕事の打ち合わせや骨休めに喫茶店ほど便利な場所はない。リッチな気分を味わいたいときはルノアール、それ以外はほとんどドトール。タリーズカフェやスタバなども利用することはあったが、紙コップだったり、コーヒー一杯の値段も高い。それに比べてドトールは白磁のカップの上にブレンド一杯の値段が200円と安い。しかも、サービスと味も悪くない。

                ドトール① 
       おいしい誘惑・・・
           
そのドトールに赤を基調にした「新発売 贅沢ミラノサンド」という垂れ幕が下がっていた。「炭火で焼き上げたローストビーフ」という文字と「特製デミグラスソース」という文字も躍っている。「480円」という価格設定が高いのか安いのかはわからないが、そこからはうまそうな匂いがぷんと漂ってきた。

         ドトール③ 
         待ち人来る

時計を見ると、午後1時ちょい過ぎ。村長はレジに並んで、その新発売のミラノサンドとブレンドコーヒー(セットで650円)を注文した。4~5分ほどで出来上がったミラノサンドがやってきた。20センチほどの長さのソフトフランスパンの間にレタスが敷かれ、薄切りのローストビーフが折り重なるようにして横たわり、その上にはクレソンとミニトマト、それによく見ると半透明のタマネギも乗っかっている。マヨネーズとデミグラスソースがかかっていて、実に美味そうな彩り。パンは表面が少々トーストされている。

        ドトール⑤ 
        この圧倒

650円でこれだけ贅沢な気分になれるのは悪くない。おもむろにコーヒーをひと口飲んでから、半分に切れ目が入ったミラノサンドをがぶりと行く。ソフトフランスパンはちょうどいい歯ごたえで、表面のパリパリと生地の柔らかさが、中の炭火焼きのローストビーフを主役のように引きたてている。デミグラスソースはかなり甘め。それがマヨネーズと調和していて、そこにレタスとミニトマトなど野菜類がいい脇役を演じている。ローストビーフは薄切りを5~6枚重ねているので、全体の歯ごたえは予想以上に柔らかい。炭火焼きしているためか、ローストビーフも臭みがない。

         ドトール⑦ 
         もっと寄ってらっして

村長の好みとしては、もう少し、マヨネーズとデミグラスソースが多いといいのだが、今のままでもほどよいさっぱり感があり、これはこれでマルである。ただ、炒めたタマネギがあと20グラムぐらいほしい。ミラノサンド(イタリアではパニーノ)にはエスプレッソだろうが、村長にはブレンドコーヒーの方が相性がいい。コーヒー好きの村民2号はブルーマウンテンが好きだが。

腹八分目の満足感。明るい冬の日差しが店内に入り込み、どことなくアットホームな雰囲気。危うすぎる日本の未来を決める総選挙が終わったばかりだというのに、そんなことはずいぶん昔の出来事のように思える。これはどうしたことか?

         ドトール④ 
         シーラカンスも食べたい?

2012年12月20日。本日は「シーラカンスの日」である。1952年のこの日、アフリカのマダガスカル島沖でとうの昔に絶滅したはずのシーラカンスが捕獲された。恐竜よりも歴史の古いシーラカンスが生きていた。当時、そのニュースは世界中に衝撃を与えた。今現在地球上には約70億もの人間が生きている。地球は人類だけのものではない。海底でシーラカンスは今の地球をどう思っているのだろうか? ミラノサンドを食べながら、そんなことを考えてみる。


本日の大金言。

人類と原発事故。人類と核。たった10万年ほどで人類はここまで来てしまった。椅子取りゲームをしている場合ではないというのに。


                  ドトール⑧

久しぶりの赤福さま、その後の味

大阪帰りの友人が伊勢名物 「赤福」を手土産に持ってきてくれた。久しぶりの赤福さま!8個入り700円。5年前に発覚した冷凍偽装問題以来、彦作村長は「赤福」からすっかり遠のいていた。それが外見は同じ姿で目の前にある。

「赤福」は彦作村長に言わせれば、薬物中毒から立ち直って、「リカバリー」(再起)したエミネムみたいなもの。エミネムはそのアルバム「リカバリー」で、昨年のグラミー賞で最多10部門にノミネートされた(結果は1部門のみの受賞)。村長は「よく帰ってきたね」と赤福を抱きしめたくなったほど。

          赤福② 
          帰ってきた赤福さま

偽装問題が発覚する以前、彦作村長は「赤福」のファンだった。どっかりと覆いかぶさった見事なこしあんとその奥の柔らかい餅を木のへらですくい取る瞬間の感動は他に例えようがない。エンターテインメント新聞社時代、「赤福」を食べたくなると、門前仲町の伊勢屋に足を運び、「深川餅」を代用にした。深川餅も絶品だった。だが、赤福のあの身も蓋もない美味さには皮一枚ほど届かない。

                赤福③ 
       小ぎれいに?

冷凍偽装を見抜けなかった村長は、その後、甘味修行に出た。あれから5年。帰ってきた「赤福」が目の前にある。包みを解いて、蓋を開ける。銀紙をバックにあの赤福が小ぎれいに並んでいた。小ぎれいに? ひと目で、ワイルドだった娘がスーツ姿になっている。そのあまりのいじらしさに涙が出そうになった。まるで酒井のりピーではないか。そうか、キミも大変だったんだね、そう声をかけたくなった。

         赤福④ 
         久しぶりの味

一見、以前と変わっていない。木のへらですくうと、こしあんが午前の光の中で透き通る。餅もグーンと伸びる。口に入れると、甘さが控えめになっている。うまい。だが、かつての身も蓋もない実に素朴なあんの圧倒が感じられない。怒とうのがぶり寄りがない。品のいい味になってしまっている。かつては水飴をドッと入れて甘さを強くしていたのに、この「しおらしさ」は何だ?

         赤福⑥ 
         これこれ・・・

賞味期限は夏は2日、冬は3日。以前と同じだ。北海道十勝産の小豆を使い、餅も100%国産のもち米を使っている。だが、冬は餅が固くなるのを防ぐために「糖類加工品」を使用しているようだ。それが、以前のあの傲慢なくらいに「どうどす、うまいでっしゃろ?」という気迫につながっていかないのだろうか? 何かが違う。保存料などの添加物は入っていないというが、本当だろうか?

もし、製法を変えているとしたら、それが味の微妙な変化につながっていたとしたら、ここでもう一度リセットして、仙台の「ずんだ餅」のように、完全冷凍して販売した方がかつてのワイルドな味に近くなるのではないだろうか。 餅の伸びも以前のあの美しい人妻のような「くずれなんイザ」がない。生娘のピョーンとした伸び。それはそれで悪くはないが、羹(あつもの)に懲りてなますを吹くという例えもある。赤福よ、江戸の昔に伊勢で店を出した原点に立ち返れ。神様だってもともとは野蛮でもあるのだから。

         赤福① 
         どうした赤福!



本日の大金言。

日本の将来は赤福にかかっている。細かいことばかりに気を取られていると、本道を見落としてしまう。


                     赤福②

これはうどんかすいとんか?耳うどんの奇怪

 「耳うどん」なる江戸時代からのB級グルメの存在を知ったのは、ごく最近である。ラーメンで有名な栃木県佐野市を探索していた時、観光物産課の職員に「佐野はラーメンの街ですが、耳うどんもあるんですよ。面白いですから、ぜひ一度食べてみてください」そう耳打ちされたのだ。耳うどん?聞きなれない言葉に一瞬耳を疑った。

         耳うどん⑧ 
         耳うどんってそんなのアリか?

佐野の郷土食で、正月三が日に食べると、魔除けになって、一年間無病息災で過ごせるというのだ。江戸時代からのの風習で、耳の形をしたうどんを悪魔に見たてて、それを食べることで、家の中の話を悪魔に聞かれないで済むという。あるいは、耳を食べてしまえば、悪口が聞こえないから、近所付き合いがうまくいくともいう。人の悪口ばかり言っているメディアや一部のネット族にぜひ食べてもらいたい。正月も近いし、人の悪口好きな彦作村長も食べなければならない。

その耳うどんを1年中食べさせてくれる明治40年創業の「野村屋本店」へ愛車のポンコツ車を飛ばした。同乗しているのは村民2号の他、友人のマサさんとシゲちゃん。途中で問題が勃発した。「佐野に行くんだったらやっぱりラーメンだべ」というマサさんとシゲちゃん。「ぼくらは村長とか村民2号産と違って、他人の悪口はあまり言ってねえからなあ」。耳の痛い指摘に、それならと、耳うどん派と佐野ラーメン派に別れて昼食を取ることで4党合意が成立した。

          耳うどん③ 
          師走の耳の行列

古い田舎家づくりの「野村屋本店」の前には4~5人並んでいた。中に入ると、4代目当主(50代?)を中心に5人ほど、一家総出で忙しそうに動き回っていた。店内はそれほど広くなく、4人用のテーブルが4つと座敷もあり、こちらには4人用が三つ。中央に障子の低い仕切りがある。つい壁に耳あり、障子に目あり、ということわざが頭に浮かんだ。

         耳うどん① 
         障子に耳あり

メニューは「耳うどん」(740円)、「煮込み耳うどん」(800円)、「大根そば」(630円)などそれなりに豊富である。村長は迷うことなく「耳うどん」を注文。村民2号も耳をそろえた。

          耳うどん⑤ 
          正月の魔除け?

15分ほど待たされて、大きな朱塗りの器に入った耳うどんがやってきた。期待十分。そろそろと開けると、シイタケとゆずのいい香りとともに五目うどんのような満艦飾が目に飛び込んできた。伊達巻、かまぼこ、ナルト、かしわ、ネギなどめでたい正月の食材が総出演しているよう。カニもどきまで顔を出している。濃口の醤油に鰹節とシイタケの出汁だろうシンプルな関東の汁。そして、その下に耳うどんがゴロッゴロッと横たわっていた。

まずは汁をひとすくい。まさに郷土料理とでも言うしかない田舎の家庭の味だ。
「うちで作るのと変わらない。添加物も使っていないと思うわ」
村民2号が感想を一言。
いよいよ耳うどん。その形に仰天させられた。人間の耳の形そっくり!悪魔の耳というより人間の耳にしか見えない。ひょっとして悪魔とは人間のことなのか?

          耳うどん⑥ 
          聞く耳もってますかあ?

小麦粉に塩を加えて寝かせるというほとんどうどんと同じ製法で、食感も味もは素朴なすいとんのよう。蕎麦がきのうどん版といってもいい。もっちりの食感を期待したが、もっちり感も味の奥行きも感じられない。昔からある郷土料理そのままという感じだ。これはうまいとかマズイとかの概念を超えた「B級のウマズイ味」そのものではないか。京都など関西のの洗練とは対極の、関東の風土に根差した野暮な味わい。

「耳うどんは期待していたほどのうまさとは言えないなあ。でも、この素朴な耳うどんからは何か原点を見直せ、足元を見直せ、そんなつぶやきが聞こえてくる」
「それが耳うどんの本当の意味かもしれないわよ。耳をよく噛んで食べて、聞く耳を持てってこと。2012年の師走に何か暗示的ね」
「総選挙も奇妙な結果になった。圧勝した自民党に本当に聞く耳はあるか。民主が大敗したのは国民の声を聞く耳を失ったからだ。そう考えると耳うどんの持つメッセージは大きい」

         耳うどん⑦ 
         いい正月よ、来い

「村長も村民の声をちゃんと聞いてね。そういえば、佐野はあの司馬遼太郎が終戦を迎えたときに過ごした場所でもあるのよ。戦車連隊の小隊長としてね。その経験もその後の作家・司馬遼太郎の出汁となっていると思うわ。あの方の聞く耳の能力と時代を見る目の凄さは村長もよく知ってるでしょ?」
「ああ、村長も司馬遼太郎は愛読したからね。藤沢周平と司馬遼太郎。迷った時に、この2人は欠かせない。この2人が生きていたら、今の日本をどう見たか、とても気になる」
「天国特派員の村犬・チャイに取材してもらいましょうよ」
「耳よりのアイデアだ。村長名でさっそくメールを打つことにしよう」
 


本日の大金言。

江戸の昔からある耳うどん。現代人と江戸人。人間としてどちらが生活の知恵を持っていたか、気になる。


               耳うどん10 

銀座木村家の「限定あんぱん」と総選挙の結果

 総選挙の結果は民主への大きな失望がそのまま自民党に流れて、自民党の圧勝というよりは、結果勝利というのが現実だろう。約3年前、老舗の牛丼に飽き飽きした選挙民が、新しい味のおいしいカレーライスが食べれると期待したのに、蓋を開けたらシロップ漬けの鳩肉入りカレーだったり、メニューにはなかったドジョウが入っていたりで、裏切られた思いが、消去法で自民党牛丼屋に戻ってしまった、といったところ。ホントは老舗の牛丼だってそれほど食べたくない。比例区では自民党と書いた人が前回よりそれほど増えていないことがその証拠だ。景気回復策と同時に原発の再稼働への動きを注意深く見る必要がある。ケーキの陰のセシウムに要注意。

         あんバター⑦ 
         総選挙と銀座木村家

老舗と言えば、銀座木村家(ちょっと強引かな)。彦作村長の大好きなあんぱんは明治7年(1874年)、初代当主・安兵衛が文明開化の流れの中で開発したもの。翌年、山岡鉄舟が「お上、いま庶民の間でこんなものが大人気になってましてな」、そのようなことを言って、若き明治天皇(たぶんスイート好き)に献上、それが評判となり、人気にさらに火をつけ、138年後の現在、あんぱんは日本人の食文化になくてはならないものになっている。

すぐ隣でクリスマスイリュミネーションが点滅する銀座4丁目の木村家総本家。そこで今、スイーツ好きの間でちょっとした話題になっているのが、「あんバターホイップ」(1個210円)だ。10月から来年5月までの期間限定品で、あんぱんの銀座木村家が久々放ったヒット作と言っていい。

          あんバター④ 
          これだこれだ

彦作村長は日本プレスセンター裏の「はらぺこ」で行われる忘年会に出席する用事で久々江戸表に出たついでに、銀座に足を運んで、その話題のスイーツを買い込んだのだった。へそ曲がりの村長は、本店が客で一杯だったので、すぐ近くの松屋のデパ地下で買い求めることにした。「大人気 おすすめ!」「美味」そんな文字が躍っている。「あんバターホイップ」はシンガーソングライターの槙原敬之や高田延彦など有名人のファンも多いという。

ウマズイめんくい村に持ち帰ってから、総選挙の結果とトヨタカップの決勝戦「チェルシー対コリンチャンス」を見ながらの賞味となった。自民党の数がどんどん増えていく。チェルシーのシュートがコリンチャンスのキーパーのスーパーセーブに阻まれる。総選挙は民主のあまりに間抜けなオウンゴールのおかげで自民が勝ち点を伸ばしていく。サッカーの方は手に汗握るものすごい試合。チェルシーが勝つだろうという試合前の予想が覆っていく。

        あんバター② 
        伝統と新しさ

「あんバターホイップ」はフランスパンの生地に北海道産のつぶあんと無塩バターが二層になって詰め込まれている。フランスパン生地と無塩バターとつぶあんを同居させるという発想が、さすが銀座木村家と唸りたくなる。140年近い伝統はダテではない。手で二つに割ると、固くて弾力のあるフランスパン生地の間から白い無塩バター(測ったら最大厚さ18ミリ)と見事な小倉色のつぶあん(こちらは13ミリ)がそれぞれ自己主張しながらデンと納まっている。たまたまTVに出ていたせいか、何やら石原慎太郎と橋下徹に見えてくる。包み込む固めのパン生地はさしずめ安倍自民党か。

         あんバター⑤ 
         このアイデアが永田町にも欲しい

こんなものを食わされる選挙民は腹痛が心配だよ、などと言ったら銀座木村家に失礼というものだ。「あんバターホイップ」は無塩バターの食感が想像以上につぶあんとマッチしている。
「カロリーが心配だけど、この前食べた熊谷あんぱんより私の好み。この渋さと新しさの同居がいいわ。あり得ない組み合わせのハーモニーがとっても絶妙よ」
ダイエット中の村民2号がかなり甘口のコメント。無塩バターがそのまま脂肪にならなければいいが。

          あんバター③ 
          フランスパンと無塩バターとつぶあん!

「文明開化は古さと新しさを見事にマッチさせた。選挙結果についてはいろいろあるが、とりあえずは現実として受け入れるしかないよ。どうやら永田町にはチェルシーもコリンチャンスもいないようだ。最大のポイントは安倍ノ宮が明治維新の気概と現実感覚を持つことができるか、だと思う。トヨタカップは劇的な展開でコリンチャンスが下馬評を覆して1-0で勝利した。あんバターホイップは伝統があって初めて可能になった味だと思う。明治維新、敗戦、そして平成の大失政。ここは長州出身の安倍ノ宮に頑張ってもらうしかないよ」
「会津出身の村長のねじれエールというわけ? 福島がまた賊軍にされちゃうかもよ。もっともその前に安倍ノ宮の下痢が心配。奥さんの小料理屋も心配」
「・・・・・」
総選挙とトヨタカップとあんぱん。日本とウマズイめんくい村の目まぐるしい一日が終わった。



本日の大教訓。

安倍晋三新首相に言いたい。首班指名を受けたら、アメリカや中国に行く前に、銀座木村家に行け、と。


                   あんバター⑤ 

こんなのあり?京都「桂うりの味醂漬け」

 京都・味覚文化の奥の深さについて、これまで何度か書いてきたが、またもやられてしまった。京都にお住いの調布先生は、赤羽彦作村長にとっては、「かなんなあ」お人である。いやな人、という意味ではない。「とてもかなわない人」という意味である。「そういう使い方はしませんよ。だからあんたは会津なんですよ。イ~ヒッヒ」調布先生の口の左端がうれしそうに上がるのが目に見えるようだ。

調布先生が上京(調布先生に言わせれば東下)してきた折に、ウマズイめんくい村にさりげなく置いていった品物。それが本日のテーマである。それは創業が寛政元年(1789年)の「田中長奈良漬店(たなかちょうならづけてん)という、京都では「比較的新しい老舗」の「天下一品 都錦 味醂漬(みりんづけ)」だった。

         京都みりんづけ① 
         このさり気ない箱の奥に・・・

彦作村長の祖先が眠る会津若松にも奈良漬や味噌漬けの老舗(といってもせいぜい百年ほどの歴史)がある。中でも「満田屋」の味噌漬けはうまい。ご飯が何杯でも食べれるうまさで、一度、調布先生にも進呈したことがある。感想はなかった。彦作村長はがっかりしたが、今回その理由がわかった。とても残念なことだが、満田屋の味噌漬けには添加物が何種類か入っている。
会津がイマイチ前頭三枚目から上がれないのは、このあたりの職人意識の不徹底にあるのではないか? 哀しみの会津。

          京都みりんづけ② 
          ひかえおろう

調布先生が置いていった田中長の味醂漬けは京野菜の「桂うり」(1本入り1890円)。厚紙の箱を開けると、酒粕と味醂の入り混じったいい匂いが部屋中に広がった。透明なビニールを解くと、中に「うーむ」と唸りたくなる逸品がどしりと横たわっていた。濃厚な琥珀色の塊りの奥から「知らざあ、言って聞かせやしょう」と見栄を切られたような衝撃が走った。調布先生の「ぐひぐひぐひ」という独特の笑いも聞こえてきた。

         京都みりんづけ③ 
         この色合いの凄味

その圧倒的な存在感には、辛口の村民2号も思わず「すごいわねえ」とため息を漏らしたほど。
さっそくまな板で切って賞味することにした。合いの手はこれまた京都の名酒、佐々木酒造の吟醸純米酒「聚楽第」。まず咽喉を湿らせてから、ひと噛み。シャキッとした絶妙な歯ごたえ。酒粕と味醂(多分かなりの上質)に十分に漬け込まれた何とも表現のしようのない甘みと深いコク。味が実にまろやかで、塩分はそれほど濃くない。それらが口中でビッグバンのように膨張する。しかも繊細に。何ということだ。こんなのありか?

          京都みりんづけ⑤ 
           言葉がない

会津が恥ずかしくなるほどの深い味わい。しかも添加物は使っていない。調べてみたら、野菜の収穫から前処理、塩漬け、下漬け、中漬け、上漬けまで何と2年以上の時間をかけている。すべて手作業で、製法は創業以来ほとんど変えていないという。こんなのありィ?彦作村長の顔がザ・ボンチのおさむちゃんみたいになった(ギャグが古い)。

         京都みりんづけ④ 
         こんなのありィ?

「酒の肴でもいいけど、炊き立てのご飯に乗っけて食べたい。調布先生はいつもこんなものを食べてるのかしら?」
「家ではいつもコンビニ弁当らしいよ。その落差が調布先生の世界なんだよ」
「今度、サバ缶でも送ってやろうかしら。村長が大好きだから案外、調布先生も好きかもよ」
「好きでも絶対に好きとは言わない。サバ缶なんて人間の食うものではありませんよ。あれは猫が食うもんです。そう言うに決まってる」
調布先生まで肴にして、ウマズイめんくい村の夜は更けていくのだった。



本日の大金言。

改めて京都の凄さに脱帽する。「天下一品」を名乗っていいのは、この味醂漬けクラスで初めてその資格が生まれるのだと思う。


              京都みりんづけ⑥ 


よき時代の浅草、セキネの肉まん

 エンターテインメント新聞社時代のこと、お笑いの林家ペー・パー子さんから、10個入りの「セキネの肉まん」が何箱かよく差し入れられた。広い編集局中に肉まんのジューシーな香りが漂い、あちこちで歓声が沸き起こったりした。中には「またかよ」という「まんじゅうコワい」奴もいたりしたが。

そのセキネの肉まんは皮に弾力性ともっちり感があり、かじると、肉汁が滴り、中からぎっしりと詰まった豚肉の具が顔を出す。その塊りが転げ落ちないように噛むと、甘めの至福が口中に広がるのだった。よく食べていたふわふわのヤマザキの中華まんとは旨さがふた味は違った。

         セキネ④  
         よき時代の香りが・・・

セキネは創業80年を超える老舗。肉まんとシューマイの専門店で、持ち帰りが基本。浅草時代のビートたけしがよく行った店でもある。エノケンやロッパなど往年の浅草芸人も通っていたはずである。そのセキネの姉妹店が赤羽にある。こちらも浅草本店と同様、店構えが大正ロマンを感じさせる。林家ペー・パー子さんは赤羽店をよく利用しているようだ。

彦作村長はここで「にくまん4個入り」(920円)をお持ち帰りすることにした。美女ではなく肉まんのお持ち帰り。ちょっとした幸福感に包まれながら、ウマズイめんくい村にどっこらしょと到着。ヤマザキの肉まん、じゃなかった美熟女の村民2号が待ち構えていた。「何時だと思ってるの?」。翌日の朝食にすることで何とか折り合いを付けた。

         セキネ④ 
         7~8分待つのだぞ

「レンジでチンしてもいいですけど、蒸した方がうまいです。蒸し時間は沸騰してから7~8分です」
セキネの女性店員のアドバイスを受けて、冬の朝陽が当たる中、鍋を取り出して、肉まんを蒸かす。水蒸気が心地よく上がる。見事なツヤの肉まんが仕上がった。バスタオルを巻いた湯上り美女の風情。これだこれだ。ふううふうしながら、皿にのせる。

          セキネ⑤ 
          早く食べておくれよ

ひと口がぶりといく。以前と同じく皮の弾力性ともっちり感が抜群である。巨大な小龍包のようなこの皮がセキネの特徴でもある。中は空洞のようになっていて、ポーク9割タマネギ1割くらいのジューシーな塊りが、うまそうに鎮座している。ややもすればその塊りがつるりと滑って飛び出そうになる。飛び出すな、男は急に止まれない。これだこれだ、これがセキネの肉まんだ。塩かげんが絶妙で、かすかに薄口しょうゆとショウガの香りもする。やや甘めなのはタマネギの演出なのか。

         セキネ⑦ 
         辛子と絶妙なハーモニー

「うまいわねえ。昔、香港で食べたまんじゅうもこんな感じだった。1個230円というのもうなずけるけど、もう少し安いとありがたいわ。村長の稼ぎ次第だけど」
毒矢が飛んできた。それを間一髪でヒヤリとかわす。
「肉まんの日本での歴史はそんなに古くない。新宿の中村屋が昭和2年に売り出したのが最初と言われているよ。でもそれ以前にあったという説もある。いずれにせよ、中国からやってきて、それを日本流に改良したようだ。関西では豚まん、関東では肉まん。村長はガンまん」
「くだらない。早くガンになってちょうだい。辛子を付けた方が私は好み」
「うむ。どんどん辛口がすすむ・・・」
毒矢がまた飛んできた。



本日の大金言。

よき時代の老舗の肉まんには大正ロマンの香りがする。それはエログロナンセンスの時代でもある。そこから一気に軍国主義に突入するのに時間はかからなかった。今の時代とどこか重なってくる。


                   セキネ①  

希望はあるか、双葉まんじゅうとお赤飯の朝

 赤羽彦作村長の4代前の祖先は会津藩の足軽である。思い立って、ポンコツ車を吹かして、うどんの町・埼玉県加須市を目指した。ひと月ほど前のこと。ある福島復興イベントで、「双葉名物 茶まんじゅう」と「お赤飯」を買って、ウマズイめんくい村に持ち帰って賞味したところ、これが予想外にうまかったのだあの過酷な事故から立ち上がって、これを作っている和菓子職人に会いたい。

                双葉まんじゅう12 
         加須でひるがえる旗

双葉町=3.11でもっとも打撃を受けた町。役場ごと加須市に移転した悲劇の町。言葉でいうのは簡単だが、未曾有の事故から1年9か月経つのに故郷に帰れる日は見えない。未来を奪ってしまった東京電力の犯罪、それを推し進めてきた歴代政権の無策と無責任、想像力のあまりの欠如に彦作村長は改めて怒りを覚える。へたな正義感を振りかざすつもりはないが、いまだに「東電の恩恵を被ってきたんだから」うんぬんを言う人がいる。それを否定するつもりもないが、根本を間違えてはいけない。村長は福島の事故は原子力の特権村が起こしてしまった構造的な人災だと思う。その根っこの部分にはビルの最上階に巣食っている無責任体質がとぐろを巻いている。そして、それは現在も進行中なのだ。一億総ざんげを繰り返すのは早すぎる。

双葉町役場がある騎西高校から少し離れた場所に、NPO法人が運営する「こらっせ くわっせ」(寄ってってください、食べてってくださいの意味)がある。冬の青空に「双葉名物 茶まんじゅう」の旗がひるがえっていた。双葉町の和菓子職人・森正夫さん(69)がここで「茶まんじゅう」と「お赤飯」を作っている。事故がなかったら、今も双葉町で85年続く老舗和菓子屋「森製菓」の二代目店主として早朝から和菓子作りをしていたはずである。

         双葉まんじゅう15 
         和菓子職人・森さんとシゲちゃんの名コンビ

設備は双葉町時代とは比べようもない。売れ筋だった「十万山」や「味噌まんじゅう」を作るには設備が足りない。今年7月、森さんはできるところから始めようと、地元やボランティアの支援のもと、茶まんじゅうとお赤飯づくりに乗り出した。双葉町時代から店員として森さんを支えてきた関根茂子さんも一緒である。

戊辰戦争で悲劇の舞台となった会津よりも双葉町の置かれた状況は厳しいかもしれない。会津は未来は奪われなかったが、双葉は未来を奪われている。いまだに双葉町に戻れるめどは立っていない。それが日本の未来にも重なる。彦作村長は柄にもなく、そんなことを考えながら、早朝の8時に「こらっせ くわっせ」に入った。もうもうたる湯気の中で、森さんとシゲちゃんが作業中だった。木製の角せいろで「お赤飯」を蒸している最中だった。うまそうな匂いが充満している。

               お赤飯③   
        蒸し上がった名物お赤飯

茶まんじゅうのあんは館林で仕入れたさらしあんに砂糖を加えて、大きな鍋で炊く。和菓子職人歴50年の森さんが木のへらを使って、あんがこびりつかないように素早くかき回し続ける。一見単純作業だが、見事な職人技。見ているだけでかなりのエネルギーが必要な作業だとわかる。    
               
        茶まんじゅう① 
        出来たての茶まんじゅう

出来上がった茶まんじゅうを試食させてもらう。カラメル色の皮は実にもっちりしていて、中にぎっしり詰まった絶妙な甘さのこしあんと一体となっている。お世辞ではなく、職人歴50年の味とはこういう味だという手づくりの味わいが口の中に広がってくる。湯気の中の無上の口福。今、生きていることの実感まで噛みしめてしまう。

「お赤飯」は双葉独特のもので、ささげは使わずに金時豆を使う。もち米は小豆色にそめず、白いまま蒸し器で蒸かす。蒸かし上がった「双葉のお赤飯」はかなりのうまさだ。もち米はキラキラ輝いてふっくら、その甘みのあるもっちり感はやはりプロの技である。金時との相性もささげとは違う食感だが、絶妙と言わざるを得ない。

          双葉まんじゅう10 
          この見事な勇姿
          お赤飯① 
          キラキラお赤飯

「まんじゅうもお赤飯も双葉で作っていた時と同じ味です。イベントがあるとそこに行って販売もしているんですよ。もうすぐ70です。身体はきついけど、ここでこうして、再び和菓子を作れるとは想像もしていなかった」
言葉少なげな森さんにかすかに笑顔が戻る。職人のシャイな笑顔。村長の好きな笑顔だ。
「茶まんじゅうは1パック5個入りで400円、吹雪まんじゅうも同じです。お赤飯は1パック200円いただいてます。皆さんぜひ一度食べてみてください。本当にうまいですよ」
儲けをほとんど考えていない価格設定だが、そこに双葉の菓子職人・森さんの想いも詰まっている。元気なシゲちゃんの声が「こらっせ くわっせ」に響く。笑いで包まれる。その笑顔の陰に3.11が容赦なく存在している。



本日の大金言。

和菓子職人歴50年の森さん。その技を引き継ぐ人は今現在いない。総選挙の候補者たちとのあまりの落差。これが2012年12月の現実の一側面でもある。


            双葉まんじゅう17 

関東平野の「タマネギばばカレー」

 カレーライスのうまい店は全国にいくらでもあるが、ポンコツ車でいつもの散策中に珍しいカレーに出会ってしまった。タマネギの量が半端ではない。まるでタマネギのすき間にカレーのルーが控えめに存在している。オーバーに言うとそんな感じなのだ。こんなカレーライスが2012年師走にかような場所に存在していること、そのこと自体についつい興味を持ってしまった。

          菖蒲町⑧ 
          関東平野のど真ん中

彦作村長がファンでもある山形弁タレント、ダニエル・カールの講演のチケットを手に入れようと、埼玉・久喜市菖蒲町の文化会館「アミーゴ」に行ったときのこと。「カレーライス」と書かれた真っ赤な幟(のぼり)が師走の寒風にはためいていた。菖蒲町は関東平野のど真ん中に位置していて、かつて作家の深沢七郎が「ラブミー農場」を開いたところでもある。ラベンダーの街としても知られている。スコーンと抜けた青空がどこまでも広がっている。ちょうど時刻は昼飯時。その真っ赤な幟に惹かれて、「みどりの風のレストラン」に入ることにした。そこで、出会ったのが「タマネギカレーライス」だったのだ。

中高年のおばちゃんが2人、忙しそうに働いていた。店内は小ぎれいだが、何やら学生食堂ふう。カウンター席とテーブル席があり、20人くらいは収容できそうな広めのスペースだ。「セルフサービス」と書かれた白い紙が張ってある。メニューには「天ぷらうどん」(450円)、「牛丼」(400円)「カレーライス」(450円)など。「ブレンドコーヒー」(200円)もある。

          菖蒲町③ 
          タマネギカレーライス!

安いのは七難隠す。この手の店は「カレーライス」か「牛丼」に限る。彦作村長は迷いなく「カレーライス」を注文。ほとんど待ち時間もなく「カレーの方ぁ~」と呼ばれていくと、お盆に載ったカレーライスが・・・。冒頭に書いたように、タマネギだらけにカレーだったのだ。「これは手抜きではないのか?」そう思ったが、甘めのルーが意外とうまい。さらに、炊き立てのご飯がテカっている。多分市販の福神漬けがどっかりと乗っかっている。ジャガイモの気配はない。ニンジンや豚肉がほんの少し入っていることもわかった。

         カレー  
         怒とうの寄り

「これは揚げ立て。よかったら食べてくださいな」
そう言っておばちゃんがサツマイモの天ぷらを置いていった。これがホクホクしていて、予想外にうまい。都会の食堂ではありえないサービスだろう。
「ルーは中村屋のものを使ってるんですよ。タマネギなど野菜はここらで取れたもの。サツマイモもそうです。米もここらで取れた『彩のかがやき』で、新米なんですよ。案外、おいしいでしょ?」
一見不愛想に見えるおばちゃんはそんな説明をしてくれた。よくよく聞くと、「わたしゃあ、ばあちゃんです(笑い)。この店は地元のシルバーが運営しているのよ。だからおふくろの味なのよ、ムフフフ」。
どひゃー。毒蝮三太夫風に言うと「ババアが元気なことは迷惑だよ」だが、その真意は逆である。中高年が元気で働いていることはとてもいいことに違いない。

          サツマイモの天ぷら 
          おサツはサービスよ
          菖蒲町④ 
          都会では味わえない?

これはうまいとかマズイとかを超えた「関東平野の原点の味」とも言えるまさにウマズイ味わいである。山あり谷あり、年季の入った生活が隠し味となって溶け込んでいる。何も足さず何も引かず。ほとんどタマネギしか入っていないあまりに素朴なカレーライスを平らげると、村長の胸に、昔近所にいた「タマネギばばあ」のくしゃくしゃの懐かしい顔がよみがえるのだった。



本日の大金言。

タマネギは田舎の基本の一つ。あの深沢七郎もラブミー農場ではタマネギも作っていた。高齢者は日本の無形文化財である。


                菖蒲町⑦ 

大地震、豪雪・・・あの栄村の「あんぼ」と出会う

 何だ、この寒さは! 彦作村長は真冬でも草履をはいているが、今朝のあまりの寒さにタンスから「足袋(たび)」を出そうと思ったほど。3日前の久しぶりの震度5強の地震といい、ウマズイめんくい村にも動揺が走っている。そんな中、所用で江戸に足を運んだ彦作村長は上野駅構内で、面白い郷土食を発見した。 

          あんぼ⑤ 
          いい匂いが遠くからぷーん

「のもの」というJR東日本直営の「地産品ショップ」を覗き見していた時のこと。たまたま「信州」の期間で、奥の方からいい匂いが漂ってきた。惹かれるように覗いてみると、鉄板の上でおやきのようなものが焼かれている。「あんぼ」という聞きなれない文字が見えた。「栄村の伝統食」という文字も見えた。

栄村? 数秒ほど考えてから、村長は去年の東日本大震災の翌日に新潟県中越地方を震源とした震度6強の大地震を思い出した。3.11の被害があまりにも大きすぎて、翌日に起きたもう一つの大地震については、その被害の甚大さに比べて、その後のメディアの関心も薄れつつある。続いて襲った豪雪の被害も想像を絶する。

               あんぼ② 
        鉄板の上の復興

「あんぼ」はその信州・栄村の伝統食で、おやきが小麦粉を使っているのに対して、米粉を使っているのが特徴。鉄板には「きのこあんぼ」「野沢菜あんぼ」「よもぎあんぼ」の3種類が焼かれていた。1個150円ナリ。栄村の「有限会社 田舎工房」が実演販売していたのだった。すべてが手づくりだという。

彦作村長のようにいい匂いに惹かれて5~6人のお客が試食している。
「おやきみたいね。でも、食感が全然違う」
「もっちり感が際立っている。野沢菜がうまい。きのこといい明日のランチにしようかしら」 
「粒あんが入ったよもぎがうまいわよ」
そんな会話が聞こえてくる。
村長は野沢菜ときのことよもぎの3個(合計450円)を買い込んで、ウマズイめんくい村に持ち帰って賞味することにした。

          あんぼ⑤ 
          あんぼですダ

フライパンにアルミホイルを敷いて、弱火にして、大きなまんじゅうのような形の「あんぼ」を乗っける。素朴な、うまそうな、いい匂いが立ち上がってくる。大きさは直径5センチほど。米粉は栄村産のコシヒカリ、野沢菜やきのこもすべて栄村産の地場もの。この地場へのこだわりに熱いものを感じる。
「道路は何とかきれいになりましたが、復興はまだまだ遅れています。戻れない村民もいっぱいいます。私たちは昔からある栄村の伝統食『あんぼ』を復興のシンボルにしようと頑張っています」
実演販売していた代表の石沢一男さんの言葉がフライパンから同時に立ち上がってくるようだ。

           あんぼ⑧ 
           野沢菜の圧巻
           あんぼ⑦ 
           立ち上がる地場キノコ

「あんぼ」とは餅を意味する「あも」から転じた方言だという。こんがりと焼き上がった「あんぼ」は餅の食感で、中にぎっしり詰まった野沢菜や甘辛く煮たきのこと素朴なハーモニーを奏でる。匂いを嗅ぎつけたダイエット中の村民2号が猫のようにやってきてさっと手を伸ばした。そのままガブリ。
「私は野沢菜が好き。味はそれほど濃くなくて、自然な味ね。おふくろさんの味って感じ。囲炉裏端の匂いもするわ」
「村長はやっぱりよもぎだな。よもぎ餅の焼けた匂いもっちり感がとてもいいよ。小豆あんは甘さをかなり抑えている。健康にかなり気を使っているのかなあ」
「ほとんどアル中の村長にはいいかもね」
「お取り寄せもできるらしい。栄村田舎工房でキーワードを打つとホームページが出てくる」
「ウマズイめんくい村も頑張らなくちゃ。村長も立ち上がれ!」
最近、腰痛がひどくなり、あまり立ち上がっていない村長は、「うむ」とうなずいてから、ふんどしを締め直そうと思うのだった。

         あんぼ⑨ 
         小倉あんとよもぎ餅のデュエット


本日の大金言。

右も左も天も地も厳しさの増す日本列島。その凹みの中で、栄村の「あんぼ」が立ち上がろうとしている。今必要なのは「りんごの気持ち」ではなく「あんぼの気持ち」かもしれない。

 
                   あんぼ①

パンのAKB?人気1位「熊谷あんぱん」の謎

「ねえ村長、熊谷あんぱんって知ってる?」
「熊谷あんぱん?」
「埼玉の熊谷に住んでる友人が教えてくれたんだけど、かなりユニークなあんぱんで、小倉あんとホイップクリームが二層になってるんだって。熊谷では結構評判になってるらしいわよ」
彦作村長は「赤羽あんこ」をレポートしたばかりだったが、ふんどしがズレていないかを確認すると、「うむ」と立ち上がった。据えパン食わぬは村長の恥である。

          熊谷あんぱん② 
          めっけ!

ポンコツの愛車を吹っ飛ばして、JR熊谷駅の駅ビル「AZ熊谷」へ。ここの1階にある「ハースブラウン」という小じゃれたパン屋さん兼カフェに目指すあんぱんがあった。焼き上がったばかりのパンが何種類も並べられている。平日だというのに客が多い。その一番目立つところに「人気1位 限定プレミアム 1日160個」と書かれた「熊谷あんぱん」がうまそうに並べられていた。形が四角形でこんがり焼けた中央に「熊」の焼きごて文字が押されていた。

          熊谷あんぱん⑦ 
          〆て570円ナリ

お腹がグ~と鳴った。時計を見ると、午後1時。村長は熊谷あんぱん(160円)と人気3位のカレーパン(160円)を注文。それにブレンドコーヒー(250円)、合計570円の昼食となった。ダイエット中の村民2号も同じものを注文。すぐに賞味することにした。
熊谷あんぱんはパン生地がしっとりしていて、小倉あんとポイップクリームが絶妙のバランスとなっている。ホイップクリームの量が多めでやや甘めだが、うまい。カレーパンもこんがり揚がっていて、表面がカリカリしている。中のルーは量は少なめ。まずまずのうまさといったところ。この店は焼き立て・揚げ立てが売り物のようで、絵にかいたようなパリの下町のカフェのような雰囲気とともにそれがうまく機能しているようだ。

          熊谷あんぱん10 
          白黒つけられない?
          熊谷あんぱん⑤ 
          こんがりカレーパン

「うまいけど、この味、どこかで食べたような気がする」
村民2号がふとつぶやいた。
「そう来るかと思って、すでに取材しておいたよ」
「さすが、村長。まだらボケになりかかっていると思ったけど、まだ大丈夫のようね」

「ハースブラウン」はあのパン業界の巨人・ヤマザキパンの子会社「サンエトワール」系の店で、冷凍生地をその店で焼き上げるというシステムを取っている。商売上手で、熊谷では「熊谷あんぱん」千葉・船橋では「船橋あんぱん」という具合にご当地の焼きごて文字を押している。

          熊谷あんぱん⑧ 
           おぬし、できるのう

「まるでパン業界のAKBだよ。センターにはそこの地名を入れて、実にうまそうな雰囲気を作っている。イメージ作りがうまい。ヤマザキパンには秋元康みたいなすご腕のプロデューサーがいると思うよ。おぬし、できるのう、だよ」
「ヤマザキパンとはビックリ。私はたまにスーパーで買ってくる5個入りの薄皮つぶあんぱんが結構好きだけどその味と似ている。あっちはメチャ安だけど」
「まあ、ヤマザキパンは過去にいろいろあったからな。この小倉あん、うまいのはうまいけど、どこのものを使っているんだろう? 調べたけどわからなかった」
「熊谷あんぱんはヒットだと思う。うまいと思うことが大事なのよ。私は好きよ、この味。まさか添加物をいっぱい使ってはいないと思うけど」

                熊谷あんぱん③ 
                AKB劇場?

熊谷あんぱんとカレーパンをぺろりと平らげて、村民2号が立ち上がった。お代わりするためだった。村長の目にハースブラウンの店内がAKB劇場に見えてきた。熊谷あんぱんが大島優子に、カレーパンが高橋みなみの姿とダブってきた。村長は何度も目をこすった。


本日の大金言。

真贋(しんがん)を見分けることが実に難しい時代になってきた。総選挙でもどの政党・政治家を信じていいのやら。AKBは身を以てそのことを教えてくれる。



                熊谷あんぱん① 



煮干しラーメンの修行僧「麺屋 伊藤」

 「当店は化学調味料を使用しておりません」
立てつけの悪そうな入口に手書きの紙がペタリと貼ってある。東京・赤羽東口の一角。派手な居酒屋と満艦飾のパチンコ屋に挟まれるように、「自家製麵 伊藤」の藍染のノレンが地味に下がっている。「無化調」はラーメン界で一つの流れになっている。

         赤羽・伊藤⑨ 
         質素とシンプル

彦作村長が通っていた門前仲町の「こうかいぼう」も無化調のラーメン屋で、行列のできる人気店だった。スープにしても麵にしてもチャーシュー(これは見事だったが)にしても、うまいにはうまいが、どこか物足りなさを覚えていた。やさしい味だが、何かが足りない。化学調味料を全否定するつもりはないが、我々の舌が化学調味料の味にいかに慣らされているか、それを考える上でもいい研究材料にはなった。

「伊藤」は王子にも店があり、煮干しラーメンの最高峰の店として、麺好きの間では鳴り響いている。王子の店はここ赤羽店のオヤジさんの店らしい。つまり、その息子さんがラーメン激戦区になりつつある赤羽で、ひと旗揚げたという構図である。オープンしたのは3年ほど前という。今では赤羽でも注目の人気店になっている。東口の交番で聞いたら、「ああ、あそこですよ」とお巡りさんがすぐに教えてくれたほどだ。

         赤羽・伊藤① 
         何やらわび茶の世界

あまりにシンプルで質素な外観に好感を持った。中に入ると、10席ほどのカウンター席のみ。30代くらいの無口な若い店主が一人。どうやらこの人が王子の息子さんらしい。安い居酒屋を居抜きで買って(借りて?)、そのまま使っているようで、「余計なものはいらない。勝負するのは味だ」という素朴な気概のようなものを感じる。午後2時過ぎという時間帯のせいか客は他に2人だけ。

雰囲気から言って、自販機が窮屈そうに置いてあるのが不思議だ。まあ、人手の問題もあるのだろう、そう考えながら、「中華そば」(600円)にしようか「肉そば」(750円)にしようか迷った。150円の迷い。肉そばはチャーシュー麵で、それをわざわざ「肉そば」と表記しているのは「伊藤」の伝統なのだろう。思い切って、肉そばを選んだ。

         赤羽・伊藤② 
         おお肉そばさま!

7~8分ほどで白いシンプルなどんぶりに入った「肉そば」がやってきた。一目見て、うーむと唸ってしまった。かなり大きめの見事なチャーシューが数えてみると4枚、正座している。ラーメンのスープというより、まるで鴨南そばのスープのような半濁のスープ。ほんのりと煮干しの香りが立ち上がっている。麺はストレートの細麺。それに刻みネギ。実にシンプルな構成だが、禅僧のようなそぎ落とされた豊饒(ほうじょう)が潜んでいるようなのだ。

            赤羽・伊藤⑤ 
            この細麺のワザ

スープはまさに煮干し。かすかに鶏ガラの気配もある。シンプルなのに奥深い。このスープに精魂を傾けているのがすぐに理解できる。麺が意外だった。かなり腰が強く、歯ごたえがあり、食感が生そばと冷麺の中間のようなのだ。彦作村長は太麺が好みだが、加水率をかなり低めに設定しているこの自家製の細麵には脱帽せざるを得ない。細麺でこれだけ食感のある麵は記憶にない。量が少なめなのが難点だが。

        赤羽・伊藤⑧ 
        煮干しの想い

チャーシューも脂身がほどよく、柔らかい歯ごたえと肉の甘みがストレートに口中に広がる。スープと麺とチャーシューの三位一体がほとんど完成の域に近づいているのではないか。無化調でこれだけの味はそう出せるものではないと思う。門前仲町の「こうかいぼう」で物足りなさを覚えたグッとくるものがこの「肉そば」にはある。ただ、スープの量がもう少し欲しい。「スープ増量」(プラス100円)というのは悲しすぎる。

それでもスープを一滴残さず飲み干してから幸せな気分のまま外に出た。さらに進化していきそうな若い無口な店主。ダシの出終えた煮干しのような彦作村長。それでも、ギックリ腰を押さえながら、心の中で静かにエールを送るのだった。禅の道は厳しいぞ、と。
交番のお巡りさんが腰に手を当てて妙な動きをする変なおじさんの姿を遠くから見ていた。


本日の大金言。

禅を感じるラーメンというのもあり得る。あのスティーブ・ジョブスも禅の修行僧になることを一時真剣に考えていたのだから。


                   赤羽・伊藤10 

赤羽あんことソーセージフライの夜

 東京・赤羽は赤羽彦作村長にとって親近感を覚える街である。地名と苗字。それだけではない。この街は居酒屋の街であり、ラーメン激戦区でもあり、「赤羽あんこ」という隠れたB級スイーツの街でもある。美味いもの探しに命の半分を賭けている彦作村長にとって、避けては通れないエリアである。

その赤羽の居酒屋で面白い集まりがあった。メンバーはブログ界のキング・渓流斎日乗先生、情報工学の権威・山石博士、スウェーデンにも居を構える北欧瘋癲(ふうてん)先生、テレビメディア界のシーラカンス・梅谷プロデューサー、それにウマズイめんくい村・赤羽彦作村長、合計5人。集合時間の午後5時には少々間があったので、村長は南口改札横にある「赤羽あんこ」に足を延ばした。

          赤羽あんこ① 
          知る人ぞ知る「赤羽あんこ」

「赤羽あんこ」はあんこをデニッシュ生地で包みこんだスウィーツの傑作で、あんぱんの発展系ともいえるもの。今川焼のデニッシュ版と言えなくもない。あんこは大正14年(1925年)創業の老舗・王子製餡の餡を使っている。「うまい」という噂が口コミで広がり、スイーツファンの間では有名になりつつある。赤羽とペリエ稲毛の2店舗でしか売られていない。村長は一番人気の小倉あん(1個140円)とこしあん(同)、白あん(同)の3種類を買い求めた。あしたの朝食にしようと目論んで。

          赤羽あんこ② 
          あんことデニッシュ生地の出会い系

午後5時。赤羽に詳しい渓流斎先生の案内で、かの有名な居酒屋「まるます家」に行くと、午後5時ちょい過ぎだというのに満杯で入れず。何ということだ。「こんな時間から飲んでる奴らがこんなにいるなんてけしからん」「今度来るときは朝から並ぶしかないってことだよ」5人は、自分たちのことを棚に上げて、しばしまるます家に向かって罵詈雑言を浴びせるのだった。

         赤羽・八起① 
         OK横丁の夜

七回転んでも八回起き上がる。もう一つの有名居酒屋「八起」はさほど混んでいなかった。それでも1階は満杯で、2階へと回された。2階は開けたばかりなのか客はほとんどいなかった。ここはやきとんが有名だが、彦作村長はメニューの中から「ソーセージフライ」(390円)に目を付けた。ソーセージフライ! コンセプトとネーミングが素晴らしい。なぜか空飛ぶソーセージのイメージが脳内を駆け巡った。それがもし魚肉ソーセージだったら言うことはない。

          赤羽・八起②  
          いい雰囲気である

ビールから焼酎へと杯は移り、ビートルズの話題で盛り上がった。ロンドンのアビイ・ロードスタジオにも行っているビートルズフリークの渓流斎先生がビートルズ解散の意外な真相を語れば、北欧瘋癲先生がオレはジョンが射殺されたNYのダコタアパートに3度も行っているんだぞー、と叫び始める。突然、梅谷プロデューサーが、ポール・アンカがなぜ出てこない、ポールと言えばアンカだろーと雄叫びを上げる。危険を察知した落語好きの山石博士はノーウェアマンになっている。村長は、ソーセージフライが魚肉ではなく、フランクフルトだったことに落胆しながら、中濃ソースをかけてがぶりと行く。

        赤羽・八起④ 
        スグレもの、ソーセージフライ

カラリと揚がったパン粉とフランクフルトの肉汁が一体となって、アルコールが地ならしした口内環境に絶妙の至福を運んでくる。これが予想以上のうまさだった。新鮮な千切りキャベツにマヨネーズを付けて、ソーセージフライと一緒に食べると、口内3Pの完成である。

赤羽の居酒屋がいつのまにかミスター・ムーンライトの世界になり始めていた。
「お願いだから、もう一度出てきておくれ、ミスター・ムーンライト」。ビールの入ったコップが飛び、もつ焼きが畳に刺さり、焼酎のお湯割りの底に沈んだ梅干しが踊り始める。ジョンの叫びが、ハチャメチャになりかけながら皮1枚のところで盛り上がっている5人の頭上の向こうへと消えていく。ソーセージフライも飛んでいく。やがて、その声がイマジンへと変わっていくのだった。



本日の大金言。

楽しい一夜にも終わりはある。冬の赤羽の居酒屋で、ビートルズの優しい夜。ミスター・ムーンライトからレット・イット・ビーへ。それでいいのだ。


                    赤羽・八起⑤ 

下町のレトロバーの自家製シュウマイ

 東へ西へ思いつくままに「つまみ食いウォーク」をしていると、ときに思わぬ掘り出し物に出会ったりする。そんな時は期待していなかった分、「ラッキー」と小躍りしたくなる。彦作村長の大好きな街の一つでもある東京・北千住でたまたま出会ったシュウマイも「ラッキーな一品」だった。

               北千住シューマイ⑦ 
         タイムトンネル

宿場町通りを荒川に向かって歩いていくと、戦後からずーっと存在していたような、飲み屋街がある。「毎日通り飲食店」という路地裏の飲み屋街だ。まるで新宿ゴールデン街の北千住版みたいところ。彦作村長は、昔からある路地裏の猥雑な飲み屋街が大好きである。毎日通り飲食街にも同じ匂いを感じ取って、エンターテインメント新聞社の宮仕え時代から、仕事帰りにふらりと立ち寄ったりしていた。

          北千住シューマイ⑧ 
          レトロと郷愁

半年ほど前、いつものように能天気顔で毎日通り飲食街に行ってみると、周囲の雰囲気とは違うこじゃれた店が。入り口に「THE SUN」という看板。バーのような、一見の客が入りにくそうな雰囲気だが、思い切ってドアを開けると、温厚そうなマスターと常連らしい女性が一人カウンターに座って雑談している。広くはないが、テーブル席もある。

何となく会話に加わっているうちに(ここが北千住のいいところでもある)、その女性が「ここの自家製シュウマイは絶品ですよ」と教えてくれた。バーでシュウマイとは意外。しかし、気が向いたときに限定品で作るために、シュウマイにありつける確率は50%くらいだそう。その日はすでに売り切れていた。

          北千住シューマイ① 
          本格的なシュウマイ

そのことが頭に残っていて、寒風吹きすさぶ中、幻のシュウマイを食べに足を運んだ。時間は午後6時ちょい過ぎ。今度は大丈夫だった。カウンターに腰を下ろして、ハイボール(500円)を飲みながら、15分ほど待っていると、あの本格的な蒸籠に入ったシュウマイ(4個入り500円)が湯気を立てて村長の目の前にやってきた。シュウマイのいい匂いが半径1メートルを支配する。一個の大きさは崎陽軒のものの優に2倍はありそう。

                北千住シューマイ10 
       カウンターの太陽

いい意味で期待外れの味だった。蒸籠の中のシュウマイはかつて香港で食べたシュウマイと同じ見事なポーク色。見るからにうまそうで、例えはヘンかもしれないが、まるで蒸し風呂から出てきたばかりのバスタオルを巻いただけの壇れいのよう。実際、ひと口で、その新鮮な肉汁が口内いっぱいに広がるのがわかった。ポークの割合が多い。タマネギだろうか、複雑な甘みが隠し味となって、シュウマイ全体を引きたてている。それを酢醤油と練り辛子が伴奏する。敢えて言うと、奥行きはこれからという30代の比較的若い味。こんなところに、こんなシュウマイが隠れていたとは・・・。

        北千住シューマイ③ 
        この存在感
         北千住シューマイ⑤ 
         肉汁の至福

「タマネギではなく、長ネギを使ってるんですよ。タケノコとレンコンも使ってます。シャキシャキ感と甘い旨味があるとしたら、そのせいかもしれませんよ。その他にもいろいろと・・」
「先日、小洞天の高いシュウマイを食べたけど、冷凍ということもあったかもしれないけど、負けていないね。少量手づくりの方がワザが生きるのは確かだが」
「それはやっぱり生で出来立ての方がうまいと思いますよ」
懐の深そうなマスターとそんなやり取りをしながら、北千住シュウマイの夜は更けていくのだった。



本日の大金言。

ジャズバーでラーメンとおでん、レトロなバーでハイボールとシュウマイ。東京の下町には意外な宝石が埋まっている。それはマイナーな世界だが、見える人にはきらりと光っている。


                    北千住シューマイ⑨ 

弁当人気1位の柿の葉寿司を品評

 ドナルド・キーンさん(通称=鬼怒鳴門さん)のお祝いパーティーに出席するために久しぶりに江戸表へ。開始にはまだ時間があったので、すっかりモダンになった上野駅構内を怪しい姿でぶらぶらしていると、凄い人ごみが目に入った。「ザ・ガーデン自由が丘」というこじゃれた高級食材スーパー。入り口で「有名弁当まつり」の真っ最中だった。弁当や駅弁は彦作村長のバイタルエリアで、エンターテインメント新聞社時代から新宿の京王百貨店(ここは全国駅弁フェアの老舗)に足を運んだりした。ゴールへの嗅覚にスイッチが入った。


          柿の葉寿司④ 
          師走のにぎわい

富山の鱒ずしや浅草・牛肉弁当など「有名老舗お弁当」がずらりと並んでいて、旅行者や通りがかったお客などでにぎわっていた。彦作村長はその中から「人気ランキング1位」の「柿の葉寿司」(8個入り1050円)をゲットした。少々高いが、どうせ賞味するなら1位がいい。「柿の葉寿司」は奈良・和歌山の郷土料理で、石川県にもある。村長が買ったのは奈良県吉野郡にある中谷本舗のもの。

          柿の葉寿司③ 
          有名お弁当見事1位

賞味期限は1日しかないので、パーティーが終わった後、ウマズイめんくい村に帰って賞味することとなった。弁当は開ける瞬間が一番心躍る。柿の葉にくるまれた8個がいい匂いとともに姿を現した。種類は4種。さば、さけ、あじ、真鯛。それぞれ2個ずつ。
「ちょうどいい割り合いね。4個ずつ分けましょ。私が6個食べてあげてもいいわよ」
美熟女の村民2号がニコニコ顔で言った。買って運んできたのは村長なのに。ぐやじぃー。村長は鵜飼の鵜の気持ちがわかる気がした。
「半分もらえるだけ幸せかもよ」
宮仕えを辞して以来、村の力関係は逆転しつつある。

          柿の葉寿司⑥ 
          この感動ものお姿

柿の葉には殺菌効果もあり、奈良や和歌山では昔から保存のために使われていたという。まずは真鯛から。醤油だれをほんの少し付けるのが村長の好み。小さ目なので、がぶりと行く。ほんのり甘い酢飯と真鯛がよくなじんでいて口の中に入った瞬間、柿の葉の香りとともに至福の時間が広がる。うまい。だが、満足度は80%くらい。ネタの小ささが気になった。

         柿の葉寿司⑨   
         うまいわよ

中谷本舗は創業が大正10年(1921年)。元々が米屋のようで、使用している米も「三重県産のコシヒカリと京都産のキヌヒカリをブレンドしています」という凝りよう。コシヒカリの粘りとキヌヒカリのツヤ、両方のいい部分を取り入れているとか。

         柿の葉寿司10 
         醤油を少々・・・

「酢飯は確かにうまい。しかし、真鯛ばかりでなく、あじやざば、それにさけも気持ち薄くて小さいと思う。1050円という価格設定からしてもう少しどうにかならないもんか」
「柿の葉が素晴らしい。さけは好み」
「問い合わせたらチリ産のものを使っているそう。さばは長崎産、真鯛は中国、あじは九州とか言ってた。伝統的な柿の葉寿司も国内産だけでは賄えない時代なのかな」
「TPPの時代だもんね。でも、踏ん張って出来る限り国内産を使ってほしいわ」
「産の字が惨になったりして」
「イエローカード!」
シュートが右にそれてしまった。空になった弁当に、見事な柿の葉だけが残った。タヌキはどこへ消えたのか?



本日の大金言。

柿の葉寿司を食べながら、日本の現実と行く末を想う。



               柿の葉寿司11 
プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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