客の少ない謎の「会津あんみつ」

NHk大河ドラマ 「八重の桜」で活気を取り戻しつつある会津B級グルメの旅もいよいよ終盤。
「今回は甘い話が全然出ていないわよ。あんこマニアの村長さん、どうしちゃったの? スイーツファンに申し訳ないんじゃない?」
起き上がり小法師の「山田民芸工房」を出て、七日町通りをぶらぶら歩いているとき、村民2号がチクリと言った。
そう言えば、少し体調がおかしくなっていた。甘味禁断症状が出始めていたのである。頭がクラクラし始めていた。

          桃里道⑨ 
          新しい伝統?

遠くに古い町家を利用した甘味どころ「桃里道(とおりみち)」が見えてきた。味噌田楽で有名な「満田屋」のちょうど真向い。
「前からここが気になっていたんだ」
と村民2号。雑誌のグラビアにでも取り上げられそうな和のいい雰囲気ではある。
入り口のボードには「自家製あんみつ」(550円)、「りんごタルト」(コーヒーセット700円)、「じゃがいも入り焼きそば」(500円)などと書かれている。否も応もない。即決!

          桃里道10  
          コンサートもできそうな店内

中は広々としていて、一枚板のテーブルやアンティークなテーブルなどがゆったり置かれ、ステンドガラスやランプの照明まである。和洋折衷。この店が趣味的なつくりであることがすぐにわかる。なぜかグランドピアノまでさり気なく置いてある。だが、たまたまなのか客がいない。ここが例えば京都だったら、人気スポットになっていそうな店なのに・・・。

          桃里道③ 
          ビードロの器とあんみつ

すぐに「自家製あんみつ」を注文。コーヒー好きの村民2号は「りんごタルト」。10分ほどで透明なガラスの器に盛られた「自家製あんみつ」がやってきた。村長はその器に惹きつけられた。長崎で見たビードロのようだった。昔はこんな容器でかき氷を食べた記憶がある。会津なら漆の漆器が定番のはずなのに、ガラスの容器。この意外性が気に入った。ちなみに会津には「南蛮凧(なんばんだこ)」など長崎経由のポルトガルとの関係を示唆する伝統品が存在する。ひょっとして蒲生氏郷のつながりかもしれない。

          桃里道⑤ 
                          絶景かな

あんみつは小豆から赤えんどう豆、寒天まですべて自家製で、オーナーの女性(昔美女)が「全部私が作ってるんですよ」とか。見た目を重視したつくりで、絵心のある村民2号が思わずデッサンしたくなるほど。小豆あんは北海道産を使い、甘さを控えめにしていて、口に運ぶと、いい風味が立ち上がってきてかなりおいしい。黒蜜をかけてみる。悪くない。

          桃里道⑥ 
          赤えんどう豆と寒天の恋愛

感心したのは赤えんどう豆だった。黒々つやつやと煮込まれていて、形が崩れていない。それが寒天の薄白色といいバランスとなっている。村長の好みとしてはオレンジとぶどうは余計だと思う。やはりここは定番の求肥(ぎゅうひ)が欲しい。伝統と新しさを取り違えてはいけないと個人的には思う。

          桃里道⑦ 
          た、たまらん!

「りんごタルトもうまい。これだけ雰囲気が良くて、この味でこの値段で客が少ないのは不思議。店がオープンしたのは2年ちょっと前。3.11のほんの少し前らしいわ。3.11の風評被害をもろに食らってしまったみたい。泣くに泣けない話ね。会津に早く観光客が戻ってきてほしいわね。でも会津は負けない。さすけねえ(大丈夫の意味)」
村民2号が綾瀬はるかのように「さすけねえ」を何度も繰り返すのだった。「八重の桜」の見過ぎでは?



本日の大金言。

「ならぬものはなりませぬ」「さすけねえ」・・・会津の意地と我慢の文化が「甘えの構造」にどっぷりと浸かった現在の日本にどこまで通じるか。我慢という言葉が死語となっているというのに。





                     山田民芸① 

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いざ出陣!明治の蔵で「ハヤシ丼」

 「蔵の街」といえば喜多方が有名だが、会津若松の蔵の多さも喜多方に負けていない。街を歩くと、通りから引っ込んだところや目立たない場所に古い蔵がフツーに納まっている。それだけで歴史を感じさせる。その蔵を喫茶店として再利用している店が多いのも会津散策の楽しみの一つである。

          蔵② 
          会津は蔵の街

「珈琲館 蔵」はその中でも有数の店。明治12年に造られた絵ろうそくの板蔵をそのまま利用して、昭和51年(1976年)にオープン。会津の中でも最もアンティークな蔵の喫茶店である。メーンストリートの神明通りの中心近くにあるため、観光客がよく訪れる。NHK「家族に乾杯」で鶴瓶が綾瀬はるかと会津の街を歩いたときにも鶴瓶がアポなしで訪れている。

         蔵① 
         鶴瓶もくぐった

時はランチタイム。村長も村民2号との怪しいコンビで市内をうろつき回り、歩数計が8000歩を超えたあたりでこの店を発見。入り口に書いてあった「まろやかハヤシ丼」(コーヒー付き780円)に惹かれるように、ふらふらと入ってしまった。「ハヤシ丼」というのが初めてだったし、その上に「まろやか」と付いている。この店の「ハヤシライス」は黒毛和牛をじっくりと煮込んだ本格的なもので、それをドンブリにしている。それがドンブリ好きの村長のB級グルメセンサーに反応したのだった。

          蔵⑥ 
          カウンターをパチリ

店内は会津塗りの漆のカウンター席とシックなテーブル席がいくつかある。吹き抜けの蔵だが、2階の屋根裏席もあり、和洋折衷のオブジェが飾られている。ちょっとしたギャラリーのようでもある。村長はたまたま空いていた1階の囲炉裏のテーブルに腰を下ろした。見事な鉄瓶と敷き詰められた灰にしばし見とれる。

「そこは鶴瓶さんが座った席なんですよ」
とウエートレスさん。鶴瓶にはエンターテインメント新聞社時代に縁がないわけではないが、方や人気スター、方やぎっくり腰のしがない村長。その差は歴然である。

「まろやかハヤシ丼、ください」
「確かここには綾瀬はるかは来なかったのよ。別のところに行ってて。村長、残念ね。温もりが残ってなくて」
「鶴瓶の温もりで十分だよ」

         蔵⑦ 
         特等席でハヤシ丼

20分ほど待たされて、「まろやかハヤシ丼」が登場。ドンブリにはご飯と見るからに濃厚なハヤシカレー、それに温泉卵と生野菜。初めての組み合わせである。これが合うのかどうか、見た目はミスマッチの印象。ご飯がかなり固め。それが気になったが、ハヤシは和牛がよく煮込まれていて、牛筋のように溶け入っている。結構うまい。温泉卵にスプーンを入れると、熟女の花魁(おいらん)のように、ふわとろに崩れてきた。それを混ぜ合わせて口中に運ぶと、予想を超えるまろやかな美味。野暮だと思った生野菜が口直しの役割をきちんと果たし、全体として、見た目よりもうまくまとまっていた。

          蔵⑧ 
          卵もあるでよ~
          蔵⑨ 
          たまらん!

「コーヒーを看板にしているだけに、コーヒーが美味い。年配のマスターみたいな人は相当な腕だと思う。以前来たときは店内がレイアウトも含めてうるさいと思ったけど、今回は感じない。やっぱり3.11のせいかしら」
「ここは客は多いけど、風評被害の傷跡がまだあちこちに残っている。会津は福島というだけでイメージで損している。いっそ福島県から独立したらどうか。会津藩復活プロジェクトを作ろう!」
「戊辰戦争をやり直すというわけ?」
「エイエイオー!」



本日の大金言。

戊辰戦争の敗者から立ち上がった会津。今度は理由なき風評被害。だが、と思う。試練こそ会津の本当の宝物なのである。



                    蔵10 

会津の仰天「味噌焼きおにぎり」

会津の夜は早い。午後8時、 宿泊先の東横インから歩いて6~7分ほど。メーンストリートの中央通り沿いをぶらぶらしながら美味い店はないかとB級グルメセンサーを働かせていると、そこだけやたら明るい居酒屋が目に入った。「のみくい処 作蔵」というノレンと看板。会津はいい地酒も多い。予定していた「手打ちそば 喜平」が早めに店仕舞いしてしまい、仕方なく、ぶっつけ本番で夕飯探しをしようということになったのである。

           作蔵13  
           おばんです

店に入ると、「ここが会津か」と再確認したくなるほどの賑わい。右手が6人くらい座れるカウンターで、左手はテーブル席が6つほどの座敷になっていた。地元の常連客と観光客が和気あいあいと盛り上がっていた。2階もあるようで、若い女性スタッフが階段を上り下りしていた。しみじみ気分で地酒と郷土料理を食べようと思っていたが、店の活気が「生きてるうちは元気に飲み食いしなくっちゃ。明日の心配したってしょうがねえべ」と言っているようだった。

          作蔵14 
          よってらんしょ

カウンター席に腰を下ろして、「末廣 純米酒」(1合550円)と「ニシンの山椒漬け」(600円)と「ニシンの天ぷら」(650円)を注文する。村民2号は「じゃがチーズ」(700円)を追加注文。ニシンは会津料理には欠かせない。特に山椒漬けと地酒の相性は抜群で、山国ゆえの食材の知恵が凝縮している。身欠きにしんを山椒とともに酢醤油に漬け込み、じっくりと寝かせる。会津独特のふくよかな味で、これを賞味せずして、会津は語れないという代物だ。「作蔵」の山椒漬けは会津では平均的なレベルだろう。ニシンの天ぷらはコロモがカリッとしていた。マル。

         作蔵① 
         味噌と醤油、これで小とは・・・

2杯目を飲み干そうというとき、村民2号がメニューの中から、目ざとく「焼きおにぎり」を見つけた。「当店名物」と書かれている。
「これ、食べたいわ。青紫蘇(あおじそ)で包んだ味噌味と醤油味。大2個で680円。1個400グラム! かなりのデカさね」
「小もある。2個480円か。これで十分だと思うよ。大葉で包んだ味噌味とは珍しい」

焼き時間は20~30分ほどかかるという。夜は長い。待ち人もいない。病院には母が寝ている。その間、また1杯飲める。何という息子だろう。
「オーケー。小を頼む」

          作蔵⑥ 
          青じそで包んだ味噌焼きおにぎり

やってきたのは小だというのにフツーにデカい。それをふうふうしながら、ガブリとかじる。村民2号もかじる。青じそで包んだ味噌焼きおにぎりは中に甘い梅肉が入っていた。香ばしく焼かれた甘辛の味噌と青じそとご飯が絶妙と言わざるを得ない。そこに甘い梅肉が割って入ってきて、「ワタスだって、鉄砲撃ちてえ」綾瀬はるかが囁いてくるような錯覚に陥る。八重の桜ではなく八重の焼きおにぎり。

          作蔵⑤ 
         こちらは醤油焼きおにぎり

醤油味の焼きおにぎりは中に鮭が入っていた。外側がカリッと焼けていて、中の鮭との相性もいい。一杯飲んだ後の仕上げとして腹にズシリとくる。フツーにうまい。腹が減っては戦ができぬ。ここにも八重の桜が入っている。彦作村長は祖先も参戦した遠い戊辰戦争を思った。足軽として戦った4代前の祖先。焼きおにぎりを食べている4代後の村長。その間におおよそ145年の時間が横たわっている。
                       (明日は鶴瓶も来た「和蔵のハヤシ丼」)



本日の大金言。

おにぎりを超える会津の焼きおにぎり。このB級グルメの隠れた傑作を食べてくなんしょ。



                     作蔵11 

「八重の桜」出演者が食べたB級グルメ

 所用でポンコツの愛車を吹っ飛ばして、再び会津へ。街中は雪がすっかり消えていて、陽気も随分とよくなり、春が近いことをうかがわせる。観光客が少しずつ戻っているようで、NHK大河ドラマ「八重の桜」のポスターがきらめいて見える。とはいえ風評被害の影響は依然大きく、福島第一原発から約100キロも離れていて、放射線量は首都圏と変わらないというのに、店に入ると、以前の活況はない。

          めでたいや11 
          会津に春は来るか?

会津は原発地区からの避難者を多く受け入れ、市民との交流もそれなりに盛んだが、被災者への視線はどこか冷めてきている。
「あの人たちは事故までは原発の恩恵を受けてきた人がほとんど。最初は同情していろいろボランティア活動をしたけど、正直なところ彼らの生活ぶりを見るにつけて、次第に気持ちが冷えてきた。会津の風評被害のほうが深刻かもしれないのに」そんな声も出始めている。悲しいことだ。原発問題は一筋縄ではいかない。誰が加害者で誰が被害者なのか?

戊辰戦争の敗者から復活した会津。そのシンボルとしてNHK「八重の桜」が始まり、これから桜の季節に向けて、観光客がどっと押し寄せるかもしれない。何よりもまずは自力で立ち上がろうとすることが大事だ、ということを山本八重(新島八重)の生涯を見るにつけて思う。「絆」とか「寄り添う」ことももちろん大事だが、それだけでは問題は解決しない。戊辰戦争後の会津にはそんな余裕はなかった。メディアの過剰な情緒報道にどこか違和感を覚える人も最近増えてきている。どうすれば状況が少しでもよくなるか?こんがらかった糸に未来はあるか?

           めでたいや10 
          綾瀬はるかも来た?

ここまで書いて、赤羽彦作村長は我に返った。そうだ、このブログはB級グルメがテーマだった。キャラクターを間違えてはいけない。村長は会津の街を歩きながら、「八重の桜」の出演者やスタッフが食べたという噂の「中華そば めでたいや」に向かった。グルメ誌や食べログなどでも評価の高い店である。到着したのは正午前。二階建ての大きな店で、すでに行列ができていて、「待ち時間は20分」という表示。名前を記入して順番を待つことにした。店内は中華そば屋というイメージではなく、座敷もある巨大なレストランといった感じ。1階は一般客用で2階は団体客用。

                 めでたいや③ 
          中華そばとミニソースかつ丼

メニューがやたら多い。彦作村長は「中華そば」(550円)と「ミニソースかつ丼」(450円)を注文した。座ってから15分ほど。煮干しのいい匂いとともに「中華そば」と朱塗りの器に入った「ミニソースかつ丼」がやってきた。中華そばは濃いめの醤油スープと太縮れ麺。よく煮込んだ小ぶりのチャーシューが3枚、「寿」の文字が入ったナルト、細切りのメンマ。煮干しの風味が強くよく見ると背脂が浮いている。見るからにうまそう。まずはスープ。鰹ではなく煮干しの何とも言えない匂いと味わい。意外にまろやかで悪くない。麺はもっちりしていてボソッとした素朴な食感。これも悪くはない。チャーシューも悪くない。すべてがよくまとまっていて、印象的には80点の美味さ。だが、気になったのは後味。何となく化学調味料のような匂いが残る。

         めでたいや 
         人気の中華そば
         めでたいや② 
         これでミニとは

ミニソースかつ丼はミニというより普通にデカい。見た目も味も450円という価格を考えると、これは好感が持てる。味も悪くない。ただ、上から見るとソースかつはデカいが、ヨコから見ると肉がきわめて薄い。以前書いた「いとう食堂」のソースかつの驚くほどの厚さと比較すると対極だろう。これは客が多すぎて揚げる時間を短縮するための計算も入っているのだろうか。

          めでたいや⑤ 
          もっちり太麺
          めでたいや⑦ 
          デカいが薄い

「ここに綾瀬はるかが来て中華そばとソースかつ丼を食べたって本当?」
村長が女性スタッフに聞いてみた。
「中村獅童さんとか撮影スタッフは来たけど、綾瀬はるかはどうだったべ。来てねえんでねえべか」
一部情報で、綾瀬はるかがここの中華そばを賞味、「おいしかった」と言ったのはガセネタなのか? そのあたりの真相は不明だが、4月中旬には鶴ヶ城の桜が見ごろになる。「八重の桜」を見に観光客がやってくることを願ってやまない。
                           (明日も会津B級グルメガイド編)




本日の大金言。

絆は切れやすい。絆と言いながらビジネスをする人たちがいれば甘い汁を吸おうとする人もいる。いつの時代も玉石混交を見分ける眼力が必要だと思う。



                 めでたいや⑧ 

昭和のラーメン餃子しめて500円の感動

 B級グルメキングのラーメンがどんどん豪勢になり、気が付いたら一杯800円の時代になってしまった。何ということだ。それはもはやあのラーメンではなく、ジャパニーズヌードルという別ジャンルだと思う。それはそれでいい。だが、しかし・・・とB級キング3歩手前の彦作村長は思う。そればかりではいかんぞ、と。

村長の第二の故郷、東京・北千住に「昭和の味と値段」をかたくなに守っている恐るべきラーメン屋さんがある。1970年代に日光街道沿いの現在地に「りんりん」という看板を掲げた。上野動物園に中国から初めてパンダがやってきて、「リンリン」と「カンカン」と名付けられた時代である(1972年11月4日)。
それから約40年。「りんりん」は知る人ぞ知るB級キングのラーメン屋のまま、いつ行ってもお客が絶えることはない店であり続けている。ラーメン界奇跡のガラパゴス!

         りんりん14  
         噂のりんりん!

「中華そば」の懐かしいノレンをくぐると、8人ほどしか座れないカウンター席のみ。ラーメン300円、カレーライス300円、焼きそば250円・・・という値段にまず驚かされる。ラーメン300円というのは1982~3年頃の値段ではないか。村長はラーメンと餃子(6個入り200円)を注文した。この餃子が絶品なのである。

          りんりん③ 
          圧巻の餃子

客の回転率がいいために、待つ時間が実に短い。店主なのか年配の男性が2人ががりで餃子を作り、次々と焼き上げていく。その熟練のワザについつい見とれてしまう。1分もしないで餃子がサッと登場した。見事なキツネ色の焦げ目がうまそうに6個連なっている。予想以上にデカい。これが200円という現実に軽い衝撃を受けながら、酢醤油にラー油をたらし、熱々を口中に含む。カミカミする。カリカリしつつ、もっちりとした皮の食感の後からジューシーな具がじゅわりとはみ出てくる。野菜中心の甘めの具と醤油だれが絡み合ってくる。肉は少ないか、ひょっとしてないのかもしれない。だが、絶妙としか言いようのない美味さ。

          りんりん④ 
          あちきはグラマー
                   
追いかけるようにラーメン(300円)がやってきた。朱塗りのドンブリがこれまたタイムトンネルで1970年代にスリップしたよう。すっきりとした醤油ベースのスープ。やや細めの中太縮れ麺。味の浸みこんだシナチク。チャーシューは小ぶり2枚。それに刻みネギ。これぞまさしく下町の東京ラーメン! 海苔とナルトががないのが残念だが、そんなぜい沢を言っている場合ではない。「ラーメン好きの小池さん」みたいにズルズルっと食べ終える。昔の中華そばそのままのシンプルな味。美味いというよりB級のウマズイ味わい・・・。

         りんりん⑥ 
         下町の意地ってもんだ
         りんりん⑦ 
         高けりゃいいってもんじゃないぜ

500円ナリを払って、外に出ると、肌寒さの残る空の下、2013年の日本にかような店があることの幸せがじわりと湧き起ってきた。200円餃子の大きな満足感とともに。



本日の大金言。

計算と欲望の社会とはいえ、それだけではない。山椒は小粒でも・・・職人のような店もある。月並みな言い方だが、世の中、そう捨てたものではない。



そばの最高峰?春の「常陸秋そば」

 栃木出身のそば通の友人が「栃木・そば街道のそばも美味いけど、ボクは茨城の常陸秋そばの方が上だと思うよ」そうきっぱり言った。栃木と茨城。何やらU字工事とマギー司郎のローカル対決みたいだが、鹿沼市郊外にある「そばの里 永野」のファンでもある彦作村長は「茨城の常陸秋そば」を食べたことがなかったので、半信半疑でその友人の話を聞き流した。

          そば善16 
          一見ボロ家風だが・・・
 
梅も桜もいいが、桃の花だってある。例年よりもひと足早い東京・上野公園の花見のニュースが流れる中、彦作村長はオンボロ車に村民2号とご近所の友人を乗っけて、桃祭りが始まった茨城県古河市へと向かった。その途中で、何とも雰囲気のある、一見するとボロ家みたいなそば屋を見つけてしまった。ちょうど昼飯時。花より生そば。村長は「そば善」というノレンが下がったその店に入ることにした。入り口に「本日のそば 茨城名物 常陸秋そば」と書かれていたことが決め手となった。あの、常陸秋そばに出会えるとは・・・。

          そば善① 
          隠れた名店か?

調べてみると、このそば屋は茨城県内でも有数の手打ちそばの店だった。食べログなどの評価も実に高い。何よりも「常陸秋そば」は茨城県農業研究所が作り上げた「玄そばの最高峰」と自慢するブランド種。香りも味わいも「日本で一番だっぺ」という代物。本来なら新そばの時期(11月)に賞味した方が美味いに決まっているが、桃の季節もいいかもしれない。そう思うことにした。

店内はカウンターとテーブル席があり、奥が座敷となっていた。旧家のような落ち着いたいい雰囲気。テーブルは一枚板で、右手の奥が厨房になっていた。座敷に座って、メニューを見ると、「石臼粗挽き 二八そば」で、そばのこだわりはもちろん、出汁についてのこだわりや「かえし」についてのこだわりが書かれている。壁にも素材についてのこだわりが書かれていて、「無添加、無化調」と強調されていた。彦作村長は「ここは水戸藩か?」と苦笑するしかなかった。古河藩なのに、そば界の水戸藩・・・。

          そば善④ 
          これが噂の常陸秋そば

さっそく「常陸秋そば もりそば(かき揚げ付き)」(700円)を注文。村民2号とご近所の友人もなぜか同じものを注文した。村民2号はデザートとして「白玉ぜんざい(小)」(240円)も追加注文した。待ち時間は12~3分ほど。丸皿に盛られた「常陸秋そば」は細切りのきれいなそばだった。香りは時期的なものなのか、期待したほどではなかったが、つるりとした食感。噛むと風味がふわりと広がった。もう少しコシがあった方が村長の好みだが、これはこれでありだと思う。

          そば善⑧ 
          日本一だっぺ
          そば善⑥ 
          こだわりが半端じゃない

産地までこだわった鰹と鯖と昆布でとった出汁とかえしで作ったつゆが見事だった。やや濃いめではあるが、まろやかで奥深いうまみ。それが常陸秋そばとよく合っている。
「かき揚げ」はかき揚げというよりもタマネギ揚げ。つけ汁が別に付いているが、ここにも「最高のゴマ油を使っています」という解説が付いている。品のいいかき揚げで、玉ねぎの甘みがとてもいい。

          そば善13 
          まま、仕上げにおひとつ・・・

「自家製の白玉ぜんざいがおいしいわ。小豆あんの甘さが控えめで、これはマル。常陸秋そばもうまいけど期待以上ではなかった。星三つかな。今度は新そばの時期に来たいな」
村民2号が言うと、ご近所の友人がチクリ。
「この店はとてもいい雰囲気だけれど、能書きが多すぎる。これだけこだわりをいっぱい書かれると、落ち着いて味わえないよ」
「ま、江戸っ子や京都人のような粋の文化とは根っこが違うからね。この理屈っぽさが茨城なんだと思う。いい意味でも悪い意味でも」
会津出身の彦作村長が締めくくった。古河の桃祭りはどこかへと吹っ飛んでいた。



本日の大金言。

B級グルメの世界に一番も二番もない。味覚に優劣がないように。ナンバーワンの世界ではなく、オンリーワンの世界へ。



                 そば善② 

摩訶不思議な山田屋まんじゅう

 「山田屋まんじゅう」なるものを初めて知ったのはごく最近である。約146年前の慶応3年〈1867年)に愛媛県西予市宇和町で創業、以来、一子相伝の秘伝の味を守り続けてきたという触れ込みの、いわば伝説的なこしあんまんじゅうである。

あの経済評論家・森永卓郎が昨年末のTBSの番組で「今年食べたお菓子の中でベストワン」と紹介、森永卓郎はエンターテインメント新聞社時代に少々お世話になった方で、その率直さは好感が持てるが、コンビニのスイーツ好きでも知られる。その人が「今年のベストワン」とベタボメする味とはどんなものなんだろう? 機会があれば食べてみたい。そんな好奇心だった。

          歌舞伎座⑤ 
          いい雰囲気

この4月2日にこけら落とし公演が始まる新歌舞伎座の地下ショッピングセンターをウロウロしていて、その「山田屋まんじゅう」に出会ってしまった。「歌舞伎座限定」と書かれた山田屋まんじゅうはまだ夕方だというのに、残りは1箱という状況。すごい人気なのである。本来なら愛媛の本店まで行きたいところだが、予算がない。すぐに1箱(10個入り1150円)をゲットした。

          山田屋まんじゅう④ 
          ありゃりゃ残り1箱・・・

ウマズイめんくい村に持ち帰って賞味することに。箱はシンプルで伝統を感じさせる和紙に包まれていた。ふたを開けると、まんじゅうのイメージとはずいぶん違う小粒な丸い和菓子が現れた。1個22グラム。直径3.5センチ、厚さは2.2センチほど。薄紫色の可愛らしいまんじゅうだった。何という気品のある色合いだろう。北海道産のこしあんをここまで純化するのは確かに驚きである。

         山田屋②   
         山田屋まんじゅう

このまんじゅう一筋、混じり気なしのこしあん勝負で140年以上にわたってファンを魅了しているのだから、あんこ好きの彦作村長としては、その歴史にまずは敬意を表さざるを得ない。だが、と書かざるを得ない。相当な期待を込めつつ、ひと口、賞味してみた。表面の薄い膜(多分小麦粉)を越えて本命のこしあんの世界に入ったが、風味が立ってこない。こしあんのそよ風のような風味を期待したが、それが感じられない。これはどうしたことか? 

         山田屋④ 
         小粒だが見事なお姿
         山田屋⑤ 
         こしあんの奇跡?

品のいい、さらりとした薄甘い味。それはフツーにうまいが、それ以上のものが感じられない。村長にとっていいこしあんの条件は風味が立ってくること。脳天にまで吹き上がるそよ風のような・・・。これは座ったままの小さくまとまったこしあん。少なくとも好みではない。ひょっとして村長の舌がおかしいのか? あるいはワインのようにビンテージによって味が若干変わってくるのか?

          山田屋まんじゅう 
          冷凍庫に入れてみる

「冷凍庫で凍らせても美味」というので、それも試してみた。小豆バーみたいな、面白い食感で、これから暑くなってきたら、面白い食べ方ではある。だが、ここでもこしあんの風味が立ってこない。期待したほどの感動がない。これが本当に一子相伝の製法で140年以上もファンを魅了してきたとしたら、彦作村長の味覚の完敗である。1個(単品)95円というのもそう安くはない。だが、と再び思う。結論は早すぎる。摩訶不思議な山田屋まんじゅうの世界。ここはやはり折を見て愛媛の本店に行くしかない。そこで作りたてを賞味する。それこそがきっと一子相伝の、本物の味なのだろう。その時改めて続きを書くことにしようと思う。



本日の大金言。

伝説の強調とテレビなどメディアの力。それに惑わされない舌。この時代の困難を思いつつ。



                   山田屋まんじゅう⑧ 




赤坂で見つけた「70年代のオムライス」

 久しぶりの赤坂! 彦作村長は友人でもある気鋭のジャーナリストの研究発表会に出席した後、寸詰まりとなった旧赤坂プリンスホテル本館を横目にしながら、TBS方面へと散策に出かけた。ちょうど昼飯時。赤坂は流行に便乗した高い店が多いが、じっくり探せば、安くて渋い店もある。

一ツ木通り周辺をウロウロしながら、どの店に入ろうか、あれこれ思案していると、村民2号が「久しぶりにオムライスを食べたい」と言い始めた。赤坂には洋食屋も多いが、有名店のオムライスは1500円とか2000円とかとにかく高い。日本橋の「たいめいけん」がチキンライスの上に乗っけたオムレツを中央で割って、まるで溶岩のように、ふわとろの中身が流出する形を作ってからというもの、オムライスはそれまでの下町の庶民の味から、高級洋食へと変身してしまったと思う。ちなみに「たいめいけん」のオムライスは1650円である。

          橋の下① 
          70年代オムライスの世界へ

彦作村長はハタと困った。村の財政事情から言っても、せめて1000円までの予算。安くて美味い、がB級グルメの基本である。歩き回ること約20分。さすが赤坂である。流行に流されるだけの街ではない。「セットメニュー ポークソテー900円 オムライス900円」というブラックボードが目に飛び込んできた。店は地下へと続いていて、ニューヨークの裏通りにありそうな、いい雰囲気が漂っていた。「CAFE&BAR&GRILL 橋の下」という店名。カフェとバーとグリル! 何というクールなコンセプトだろう。
赤坂にこれ以上の店はない。彦作村長はそう確信した。

店は1975年頃に創業、約38年ほどの歴史があり、JAZZバーとしても、赤坂界隈では知る人ぞ知る店だった。昼はカフェグリル、夜はジャズバーというのが現在の立ち位置であるようだ。黒をベースにした店内は横長のスペースにテーブル席とカウンター席がある。流れているBGMはもちろんJAZZ。驚いたのは客のほとんどが煙草をぷかぷか吹かしていること。灰皿も置いてある。まるで1970年代のような大人の雰囲気なのだ。

         橋の下④ 
         正統派オムライス!

さっそく「オムライスのセット サラダ、コーヒー付き」(900円)を注文した。カウンターの向こう側が厨房になっていて、マスター(コック?)が手慣れた熟練のワザで忙しそうに料理を作っている。グリルというのもうなずける。店内はほぼ満員。隣の客のポークソテーが実に美味そうで、オムライスへの期待も高まらざるを得ない。待つこと15分ほど。見事なオムライスがやってきた。流行のふわとろではない、正統派の下町のオムライス! 卵は2個は使っているだろう、黄色い夢のような世界が楕円形に整えられている。その上にはデミグラスソースではなく真っ赤なトマトソース。これだこれだ。

         橋の下⑥ 
         ふわとろなんて
         橋の下⑦ 
         絶妙なバランス

「うまそうね。懐かしいオムライスと出会えるなんて」
村民2号もケチャップのように表情が紅潮している。村長も鼻血が出かかる。ほとんど谷岡ヤスジの世界。
スプーンを入れると、中からいい匂いとともに、チキンライスが「むふむふむふ」と顔を出してきた。グリーンピースの鮮やかなこと。口に運ぶと、卵とチキンライスとケチャップが三位一体となって、味覚の粘膜という粘膜をくすぐってきた。甘酸っぱくて懐かしいあの洋食の味! 

         橋の下⑧ 
         赤と緑の出会い
         橋の下⑨ 
         コックの腕前

「場所が赤坂ということを考えると、このオムライスには星三ツあげたいな。ちょっと残念なのはチキンが少ないことかな。それとマッシュルームも欲しい。それ以外はサラダもコーヒーも美味いし、私は満足よ」
「煙草がダメな人はやめた方がいいけど、喫煙オーケーというのも店のポリシーを感じる。村長は煙草はやめてしまったけど、大して気にならないよ。それ以上に、この店にはバブル以降に失われてしまった大事な何かがある。そんな気がする。また来たいよ。今度はポークソテーを食べてみたい。それとここは夜もいいだろうな。赤坂の夜は更けて、の世界を満喫したいよ」
地上は真昼なのに、ノー天気な会話はいつまでも続くのだった。



本日の大金言。

赤坂はTBSの街でもある。ギョーカイ人も多い。その分、探せば路地裏などに小さくていい店も残っている。韓国料理と流行のラーメン屋ばかりではない。



                    橋の下12 








まさか?現実にあった「幻のそば屋」

 美味いもの探しの旅をスタートさせて早9か月。エンターテインメント新聞社時代は「うまいものを食べ尽くした」などと豪語していたが、いかに自分が大海を知らない池のバカ鯉だったかを思い知らされることが二、三あった。世の中は思っているよりもずっと広い。

昨日、その最たる店の一つに出くわしてしまった。赤羽彦作村長にとってはあまりに衝撃的なそば屋。何せ店を開けるのは土日のみ、しかも午前11時半から午後2時半まで営業はたったの3時間という、常識的に考えるととんでもない店である。一部では「幻のそば屋」と呼ばれている。たまたま村民2号がソバ通の知人から仕入れた情報で、その「幻のそば屋」が北埼玉の郊外にあることがわかった。

          石臼亭13  
          まさか、これがそば屋?

ポンコツの愛車を吹っ飛ばして、その「石臼亭(いしうすてい)」というそば屋を探し当てた。JR鴻巣駅から加須市へ向かって車で10分ほどの距離。看板もなく、PRもしていない。「手打そば」という幟(のぼり)がかすかにはためいているだけ。だだっ広い敷地内に車が数台止まっていた。古民家というより大きな納屋のよう。古い農家そのまま。「営業中」という札がかかっていなければ、まさかここが「幻のそば屋」だとは到底思えない。 

          石臼亭③ 
          幻の入り口

中に入ると、広い座敷があり、大きなテーブルが4つほど。さらに椅子席のテーブルも用意されている。メニューを見ると、「そば 並盛(350グラム)750円」「大盛(550グラム)950円)」と実にシンプルに書かれている。かき揚げ50円、野菜の盛り合わせ300円・・・。かき揚げ50円? 見間違いではないかと目をこすってみたが、見間違いではなかった。きわめて少ないメニュー。そばは「石臼引き二八そば」と書かれている。

          石臼亭⑤ 
          まずはそばがき

店主の娘さんなのか若い女性に「そばの並盛(750円)と「かき揚げ(50円)」を注文した。注文してからそばを作るので少々時間がかかるそう。どっしり腰を据えて待っていると、5~6分ほどして付き出しのようなものが出てきた。そばがきを油で揚げたものだという。そばがきはもっちりした食感でうまいが、かえしが強すぎて甘すぎる。サービスなのでも文句は言えないが、期待が大きかった分、もう一つの代物だった。

          石臼亭⑥ 
          主役の登場

さらに待つこと10分ほど。本命の「もりそば」がかき揚げと一緒にやってきた。まずはかき揚げの巨大さに仰天。厚さ4センチ、直径10センチは優にありそう。ネギとニンジン、それに干しエビが色彩豊かにてんこ盛り状態で揚げられている。
そして、竹ざるに盛られた主役のそばは、挽きぐるみの二八そば。やや緑がかった見事な細打ちだった。

         石臼亭10 
         挽きぐるみ二八そば

「これはうまい。そばがいい。このコシと立ち上がってくる風味はかなりのレベルだと思うよ。つゆはかなり甘めで、もう少し出汁を利かせた方が村長の好みだけど、それを差っ引いても、これだけのそばがこんなド田舎・・・失礼、埼玉の郊外にあるなんて驚きだよ」

          石臼亭⑦ 
          これが50円とは・・・
          石臼亭⑨ 
          つゆは甘め

「私が食べたそばの中でもベスト3に入るわ。かき揚げはとても50円とは信じられない。冗談としか思えないわ。外側がカリッとしていて中は柔らかい。でも、これを1個食べるのは大変。半分で十分よ。頼むときに注意が必要ね」
村長と村民2号の評価はそばが最高評価の五ツ星で、それ以外は三ツ星。だが、そばの美味さと店構えだけで十分「幻のそば屋」の名に値すると思う。

          石臼亭11 
          かき揚げの仰天

帰りがけに謎の店主に直撃してみた。年齢は60前後か。太めである。

「店をやり始めたのは12年前。もともとソバが大好きで全国の美味いそば屋を食べ歩いたりしてたんですよ。趣味が高じて店を開いたというのが正直なところです。このあたりは埼玉でも秩父に次ぐそばの産地なんですよ。うちの隣もソバ畑で、ここで取れた地粉を使ってるんです。二八って言ってますけど、実際は一九くらいの割合です。ええ、挽きぐるみで、挽きたてが一番うまい。うちのそばが美味いとしたら、挽きたて、打ち立て、茹で立てに徹していることかもしれません。まあ、田舎そばですが」

土日以外は他の仕事をしていることもわかった。他にうどん職人もいるという。
彦作村長は農家のオヤジのような「幻のそば屋の店主」の姿に、新しいそば屋の流れが起き始めていることを思い知らされるのだった。



本日の大金言。

グルメの世界は思った以上に広くて深い。世の中を知ったつもりが教えられ。未だ豚児。



                      石臼亭12 

リンゴ1個丸ごと、不思議なアップルパイ

どうした風の吹き回しか、花の銀座を 赤羽彦作村長と村民2号の怪しい二人組が歩いている。何を隠そう、知人の偉い大学教授から「フランスを描く 青木誠一絵画展」の案内をもらったからだ。その会場が銀座だった。
「いこいこ、たまには銀座を歩いてみたい」
村民2号は鼻歌混じりで、珍しくおしゃれをし始めた。もはやノーとは言えない状況となり、仕方なく村長も越中ふんどしをパンツに穿き替えて、中折れ帽子などを乗っけて、花の銀座までやってきたのだった。

          銀座アンバー 
          銀座の裏通りには・・・

ギャラリー銀座で青木誠一絵画展を堪能した後に、銀座の裏通り、西五番街通り周辺をウロウロしていると、村民2号の目がぴかっと光った。時計を見ると、午後3時ちょうど。コーヒー好きの村民2号が「ぼちぼちかな」といい喫茶店を探し始めたときだった。銀座は美味いコーヒーとケーキ屋のメッカでもある。視線の先には見事なアップルパイが・・・。

          アンバー① 
          不思議なアップルパイ!

傍らに「リンゴ1個丸ごと閉じこめたHOTアップルパイ コーヒー or 紅茶付き 1050円と書かれていた。

「これは食べなくちゃ。丸ごと1個というのはすごい!」
村民2号はリンゴ大好きでもあったのだ。猫に鰹節、村民2号にアップルパイとコーヒー。村長に選択の余地はなかった。

「アンバー」という名前のカフェバーで、銀座で50年の歴史を持つカフェバーだった。地下のカフェバー。アンバーとは英語で「琥珀色(こはくいろ)」という意味だそう。パイ生地にリンゴを丸ごと1個閉じ込めて焼き上げるというスゴ技は、知る人ぞ知る「カフェ フォンタナ」の人気メニューだった。そのフォンタナが惜しまれつつ閉店。それを失くしてしまうのはあまりにも惜しいと引き継いだのが「アンバー」だった。

階段を下りて扉を開くと、まるでパリの秘密カフェにでもいるような雰囲気。扉の奥からジャン・ギャバンが出てきそうだった。フランソワーズ・モレシャンがコーヒーを飲みながら愚痴をこぼしていてもおかしくない。ウマズイめんくい村とのあまりの落差。テーブル席に腰を下ろしてから、村民2号は「HOTアップルパイとコーヒー」(1050円)を注文。村長はコーヒー単品(600円)で我慢することとなった。ちなみに「HOTアップルパイ」は単品だと700円。リンゴの他に洋ナシ丸ごと1個(同じ値段)もある。

          アンバー③ 
          来たあ~

「HOTアップルパイ」が登場した途端、そのあまりに見事な形と色と甘酸っぱい匂いに、村民2号の目がトロンとなった。村長も少々驚いた。オーブンで温めたばかりの、その見事なアップルパイの上には生クリームがどっかと乗っかっていた。ミントの葉がちょこんと彩りを付けている。不思議なアップルパイ、というフレーズが意味もなくテーブルの周りを飛び回った。

          アンバー⑤ 
          丸ごと1個

村民2号がナイフで切ろうとしたが、なかなかうまく切れない。
「すごく皮がしっかりしている。食べるまでが大変」
何とか中央に切れ込みを入れると、中から飴色のリンゴが顔を出した。湯気とともにじゅわりとリンゴのエキスが滲んでいる。リンゴは紅玉で、その酸味と砂糖のシロップが絶妙に絡み合っている。

          アンバー⑥ 
          ジューシーな溶岩・・・
          アンバー⑧ 
          はちみつ色の至福
          アンバー⑨ 
          まま、まずはひと口

「これよこれ。紅玉じゃないとアップルパイはダメなのよ。うまいわァ・・・」
食べることに夢中になって、しばらく沈黙が続いた。

「丸ごと1個のアップルパイを食べたのは初めての体験よ。パイ生地もしっかり作られていて、かなりレベルが高い味だと言わざるを得ないわ。生クリームの代わりにアイスクリームでも合う。銀座でこの内容でこの値段はかなり良心的だと思うな」
日ごろの辛口をどこかに置き忘れてきたような感想を漏らした。

村民2号はコーヒーの味にも満足したようで、「今日は久しぶりに最高のおやつタイムになったわ」そう締めくくった。村長も少しだけおこぼれに預かった。



本日の大金言。

昼の銀座はスイーツの街でもある。表通りもいいが、裏通りにも意外な発見がある。もっとも夜の銀座の裏通りも捨てがたいが。



                    アンバー11 

B級の極致か、ゼリーフライの人生

映画 「のぼうの城」の大ヒットで、ゼリーフライとともに埼玉・行田市が一躍脚光を浴びた。何せ近隣の映画館では未だにこの映画を上映中である。行田市民は原作者の和田竜に足を向けては眠れない。足袋(たび)を履いたままてもいいが、なんてね。

彦作村長は以前、行田名物のゼリーフライを取り上げたことがある。ポンコツの愛車を吹っ飛ばして「のぼうの城」を見た後にゼリーフライなるものを食べに、地元でも評判の「かねつき堂」に立ち寄った。ゼリーフライは人気テレビ番組「秘密のケンミンSHOW」などで取り上げられ、その名前と実物のあまりの落差のために、行田以外の人々に衝撃を与えたB級の食べ物である。

         行田① 
         さきたま古墳群の梅

久しぶりに「さきたま古墳群」までポンコツの愛車で遠征した彦作村長は、きれいな梅並木を見ながら、行田に来たからにはやっぱりゼリーフライだろう、そう思った。以前食べた「かねつき堂」(1個100円)のゼリーフライは意外にもおいしかった。恥ずかしい話だが、それまではお菓子のゼリーをフライにしたものだとばかり思っていた。ではなくて、おからとジャガイモをメインにネギやニンジンなどを加えて鉄板で焼いたもの。形が銭の形そっくりだったことから銭フライ→ゼニフライ→ゼリーフライとなったという。それは見かけも味もまるでコロモのないコロッケのようだった。

今回は有名店ではない、ごくフツーのゼリーフライを食べたい。そう思って、街行く人に聞き回った。その中の一人があまり有名ではない「ときわ」を教えてくれた。B級グルメとウマズイ味わいの合致を求めて、村長は20分ほど市内をウロウロしてから、ようやく「ときわ」を探し当てた。もともとは「ときわ肉店」という肉屋さんで、現在は「やきそば&ふらい」という看板。行田市の商工観光課が発行している「フライ&ゼリーフライ」マップにも掲載されている店だった。

           ときわ① 
           いい雰囲気である

駐車場がわかりにくかったが、壁は高いほどいい。ややわびしげな外観がいやがおうにも期待を高めてくれた。うまいでもないマズイでもない、ウマズイ味わい。そこに作り手の山あり谷ありの人生がぎっしり詰まっていればさらにいい。儲けりゃいい、だけでは薄っぺらで悲しすぎる。

時刻が3時過ぎだったせいか、お客は他に一人しかいなかった。メニューは行田独特のフライ(お好み焼きのようなもの)とゼリーフライなど数種類のみ。なぜかもつ煮(1皿200円)もある。この店はフライの評判が高いが、村長は目的のゼリーフライ(1個80円)を注文した。村民2号も「1個だけなら」と同じものを注文した。村民2号は「かねつき堂」には行っていないので、ゼリーフライは初体験。注文してから作っているらしく、いい匂いが厨房から漂ってきた。待つこと10分ほど。まるで大きめのコロッケのようなゼリーフライがやってきた。最後にソースにくぐらせるようで、昔の駄菓子屋のような温かい匂いが皿から立ち上ってきた。

          ときわ④ 
          ジャーン、これがゼリーフライ

「本当にコロッケみたい。おからとジャガイモが2対1の割合で、ネギとニンジンも入っているわ。言われなければコロッケと勘違いしそう。これは私は好きな味だな。メチャウマではないけど、どこか懐かしい味。おやつにはいい。行田の人は昔からこれをゼリーフライと呼んで普通に食べていたのね。ウソみたい(笑い)」

村民2号の言葉に無口な店主が反応した。
「そうなんですよ。他の地域もみんなボクらと同じようにゼリーフライを食べてると思ってましたからね。テレビで話題になって、それがフツーじゃないとその時にようやくわかったくらいなんですよ(苦笑)」

        ときわ⑥ 
        コロッケではない
         ときわ⑦ 
         おからとジャガイモ

村長もしみじみと賞味する。おからとジャガイモがミックスしたかすかな甘み。店主の人生の塩分。かねつき堂が大関の味なら、ここのゼリーフライはカド番の関脇の味だろう、そう思った。だが、とさらに思う。80円という安さと店全体に漂うある種のわびしさがいい味付けになっているのではないか。これだ、これはウマズイ味わいそのものではないだろうか。B級グルメの一方の極致かもしれないぞ。なぜかホロリと涙が出かかった・・・。

帰りに手土産に別売りの「メンチカツ」(1個70円)を3個買ってウマズイめんくい村に持ち帰った。それが予想以上にうまかった・・・・。


本日の大金言。

人生はスターばかりでは成り立たない。いぶし銀の脇役があってこそで、その魅力に気づくか気づかないか。そこが分かれ道である。



                    ゼリーフライ① 

泳げるか?羽根付きたい焼きクン

 春一番のあとは黄砂一番。春が来たかと思うと、冬に逆戻りしたりと、このところの日本列島を取り巻く環境は、この先一体どうなるのか、不安になる日々の連続だ。それでも庭の梅の花は八分咲きで、それを見ているだけで心が休まる。未だにぴゅうぴゅう北風が吹き続いている彦作村長の心にも春が来る。こういう時は「たい焼き」に限る。

東京・吉祥寺に今注目のたい焼き屋がある。ハーモニカ横丁の中にある「天音」。村長が住んでいたころにはなかったから、歴史はそう古くはない。麻布十番にある「浪花家総本店」や人形町「柳屋」四谷「若葉」といった「たい焼き御三家」とは比べるべくもない。だが、この店が人気を呼んでいるのは、「羽根付きたい焼き」というユニークなたい焼きであること。しかも行列ができるほどうまい、という評判。たい焼き好きとしては行くっきゃない。

          たい焼き・天音 
          甘い行列

確かに行列ができていた。狭い、迷路のようなハーモニカ横丁の奥まったところに「たい焼」と染め抜かれた赤い幟(のぼり)が見えた。といっても行列は7~8人ほど。すぐ近くの「小ざさ」ほどではない。なぜか「たい焼き」とは言わずに「たい菓子(粒あん)」と表記している。幟は「たい焼」で、表記は「たい菓子」。このわかりにくさがこの店のポジションなのだろう。「うちのたい焼きはただのたい焼きでないですよ」ということを主張したいのかもしれない。そのこだわりはよしとしよう。

          天音② 
          人気にも羽根が生えた?
          天音③ 
          たい焼きではなくたい菓子

その羽根付きたい焼き。出来立てのアツアツを3個(1個150円)買った。羽根付き餃子のように、たい焼きのまわりに長方形の羽根が確かについている。その見た目が気に入った。本体は大きめでその羽根を合わせると、かなりの迫力。柳屋などのようにまわりの縁取りを少々残して手焼き感をわざと残すたい焼きも多い。だが、これはそんなものではない。羽根というより四角い額縁のよう。額付きのたい焼き・・・。

         天音④ 
         中のあんが透けて見える
         天音⑦ 
         こちとら江戸っ子だい

色が均一なので一本焼きではないと思う。買ったばかりの時はパリパリしていたが、食べる場所を求めてウロウロしているうちに、柔らかくなってくるのがわかった。駅ビルの椅子に腰を下ろして賞味となった。人がわんさかいたが、気にしている暇はない。手に取ると買ってから10分も経っていないのに、熱いまま本体はくにゃっと柔らかくなっていた。皮には山芋が入っているらしく、それがいい食感となっていた。

          天音⑧ 
          あーん、粒あーん

中の粒あんは北海道産。実に柔らかく炊かれていて、それが尻尾までぎっしりと詰まっていた。あんの量はかなり多め。控えめで品のいい甘さ。皮がパリッとしていた方が村長の好みだが、それを補うだけの粒あんのうまさ。柔らかくなった皮との相性も悪くはない。1個食べ終えると、大きな満足感とともに、お腹にかなりズシリと来た。

アンコ好きにはたまらないが、それ以外の人には重すぎるかもしれない。そこが魅力でもある。横綱白鵬に抱きしめられる幸せだってある。そんな例えをしたくなってしまった。羽根付きたい焼きは「たい焼き神田達磨」が有名だが、古くて新しい流れとも言える。日本全国を海にして、泳げるか、羽根付きたい焼きクン。というより飛べるか、と言った方が正しいかもしれない。その行方を見守りたい。



本日の大金言。

高級化するたい焼き。バラエティー化するたい焼き。最近はピザたい焼きまである。たい焼きの進化がどこまで進むか? ラーメンのように世界へと進出する日も近い。



                      庭の梅②  

「希望の国」とスローフードの3.11

 3.11からちょうど丸2年。様々な思いが去来したこの2年間。一体何が変わったのか? 辺境に住んでいる赤羽彦作村長は園子温監督「希望の国」を観ようと思い立った。だが、大劇場では上映していない。首都圏(?)で上映している数少ないミニシアター「深谷シネマ」までポンコツの愛車をゆっくり飛ばすことにした。ドキュメンタリー映画「フタバから遠く離れて」(舩橋淳監督)も観たが、その舞台となった旧騎西高校を幾分知っているためか、その内容には少々がっかりした。

         深谷① 
         旧酒蔵の一角にある深谷シネマ

「希望の国」は力作で、いくつかのシーンで首をかしげることもあったが、見終わった後の衝撃は圧倒的なものがあった。園子温監督の才能は疑う余地がない。同時に、なぜこの衝撃作が大きな賞を受賞していないのか、不思議な気がした。メディアに取り上げられる回数も少ないように思える。もっとも園子温監督は賞狙いでこの作品を撮ったわけではないと思う。山椒は小粒でも・・・赤羽彦作村長は、原発を真正面からとらえようとしたこの野心作に、「ウマズイめんくい村」映画大賞を贈りたいと思う。急きょ制定した賞で、名誉もトロフィーも賞金もないが。

          深谷② 
          志村けんとは無関係?

その「深谷シネマ」のすぐ近くでランチを取ることにした。「ここにしましょ」村民2号のひと言で即決となった。「あいん」というスローフードの料理屋さんで、まずその外観と店名に惹かれた。入り口には「本日のメニュー」として、「エビのクリームシチュー、キャベツといり卵の和えもの、わかめのみそサラダ、デザート、みそ汁 700円」と書かれていた。コーヒーを付けると800円なり。

         深谷③ 
         これは当たりイ~

店内は畳敷きにテーブルが合計6つほど、カウンター席もある。奥はギャラリーにもなっていて、様々なおひな様が飾られていた。深谷近辺はおひな様は1か月遅れで祝うそうで、時季外れではなかった。見渡すと女性客ばかりで、「女性はうまい店を見つける天才である」というグルメの法則がここでも生きている? これは期待できそう。

         深谷④ 
         ヘルシーなランチ

四角いお盆に載ったランチがやってきた。うーむ。シチュー、みそ汁、ご飯・・・懐かしい家庭料理そのもの。
「地場の食材を使用して、食品添加物は使用しないというのが基本なんですよ。4年前に町おこしの一環としてこの店を始めたんですよ」
とスタッフの女性。さぞや昔は美女だったろうなというご年齢の方が数人忙しそうに働いていた。料理もスタッフもスローライフの心地よさ。

         深谷⑤ 
         スローなシチュー
         深谷⑧ 
         みそサラダ、イケる

料理は特別うまいというわけではない。薄味ですべて自家製。そのやさしい味が体にいいというのがよくわかる内容。感心したのは「わかめのみそサラダ」。甘い味噌ダレがわかめとシイタケ、水菜とよく合っている。ご飯もあまりに美味いのでコシヒカリかと思いきや熊谷産の米だという。

         深谷⑥ 
         立ってる、炊き立てご飯

「希望の国とあいん。今日は深谷に来てよかったわ」
村民2号が珍しく感に堪えたようにポツリと言った。
重い衝撃とスローフード。「希望の国」のすぐ裏には「絶望の国」という伏せ文字も見えてくる。希望と絶望は紙一重。一瞬、希望の国とあいんがダブって見えた。村長と村民2号もその中にいる・・・。



本日の大金言。

傑作「希望の国」は近未来映画である。そこには3.11後の日本が容赦なく描かれている。だが、日本アカデミー賞にノミネートされることはないだろうな。もちろん皮肉を込めて。



                     深谷⑨ 

これは穴場か、上州麦豚のメンチカツ

 コロッケとメンチカツ。この二つはB級グルメには欠かせない。さらに、トンカツを入れると、戦後の日本の食卓を支えたフライ級ピラミッドが完成する。どこの街角にもあった、トンカツを頂点とした安くて美味いコロッケとメンチカツの夢。ラードのいい匂いとともに燦然と輝いていた「黄金のトライアングル」。

彦作村長にとってこの黄金のトライアングルは肉屋の記憶とセットになっている。メンチカツで有名な東京・吉祥寺の「さとう」も肉屋である。今ではスーパーに活躍の舞台を奪われてしまったが、本来の舞台は肉屋だと思っている。村民2号の故郷でもある上州へドライブした帰り、邑楽(おうら)で、面白い「ミートセンター」を発見してしまった。新大陸の発見? 正式名称は「JA邑楽館林ミートセンター」。小じゃれた外観はなにやら清里とか那須高原によくある店舗のようだ。「営業中」という旗がはためいている。ウッドデッキには白一色のテーブルまである。

         ミートセンター⑦ 
         偶然、めっけ!

「ミートセンターってひょっとしてお肉屋さんのこと?」
「そうかもな。JA邑楽館林直営のお肉屋さんということじゃないのか。卸しと小売り、両方やってるんじゃないか」
「ちょっと寄ってみない?」
肉好きの村民2号が鼻をぴくぴくさせている。うまそうな匂いには敏感な村長も「うむ」とひと言、ブレーキを踏んだ。

         ミートセンター⑥ 
         上州の肉はうまい

「上州和牛」「上州麦豚」を目玉にした直売所だった。卸しもしている。見事な精肉が市場よりも幾分安めな価格で売られている。JAの関連商品も置かれていた。彦作村長の目はいい匂いのする一角に釘付けになった。メンチカツ、トンカツ、唐揚げなどの揚げたてを売っていた。肉屋のメンチカツとトンカツ! コロッケがないのが残念だが、そのいい匂いにひきつけられて、メンチカツ(1個130円)を3個、それにトンカツ(1枚350円)を買い求めた。安くはないなと思いながら、その場で揚げてもらうことに。そのぜい沢。

          ミートセンター① 
           揚げたて、である

メンチカツは麦豚のひき肉とタマネギしか使用していない。それを手でこねてから形を整え、新鮮な卵と牛乳にたっぷりくぐらせる。この牛乳が隠し味だそう。「うま味を封じ込めると同時に臭みを取るんです」という。パン粉を付けて、サラダ油とラードを合わせた油でジュワジュワと揚げる。」

                ミートセンター② 
         注文してから作り始める

「上州麦豚」とは動物性の飼料を使わずに麦をたっぷり食べて育った高級豚のこと。上州はもともと麦の産地で、豚肉のうまさは昔から知られている。その特徴はなめらか肉質。くせがないあっさりした風味。全国にファンも多い。それを使ったメンチカツとトンカツ。財布の中身が気になったが、上州麦豚ならぬ上州麦娘だった村民2号の手前、高いとは言えない。

          ミートセンター⑧ 
          メンチを切る
          ミートセンター11 
          タダの肉ではない?

揚げたてをその場で賞味するのが一番うまいが、時間が夕方だったために、ウマズイめんくい村に持ち帰って、晩メシのおかずにすることにした。メンチカツは時間が少々経っていたが、コロモはカリッとしたままだった。かじると意外にあっさりした味わい。タマネギの甘みが上州麦豚のくせのない豚肉の風味をそのまま押し上げてくる。

「やっぱりうまいわね。うっすらと塩味が付いているのでこのままでもうまい。でもまあ吉祥寺さとうのメンチが横綱なら、関脇クラスのうまさね。スーパーなどのメンチはいろんなものを加えておいしくしているけど、このメンチは素材で勝負しているのがわかる。この素朴なうまさが村長にわかるかしら?」
「ソースをかけた方がうまいよ。メンチにソース。トンカツはどうだい?」

          トンカツ① 
          おおトンカツ!

「肉の厚みが1.5センチはある。脂身が少ないロースで、食感は意外と締まっている感じ。上州麦豚の品の良さが出ている。ちょっと固めで、変に柔らかくない。これも直球勝負ってとこね。でも、やっぱり揚げたてを食べるべきだと思う」
「村長は久しぶりに肉屋のメンチカツとトンカツを食べれて幸せだよ。もうちょっと値段が安いとありがたいけどね。今からでも遅くはない。メンチもトンカツも肉屋に帰れ、と言いたい」
「これだけの肉を使ったら仕方ないわよ」
「B級の原点、黄金の日々、カムバック!」
「村長もメンチと一緒に」揚げられたら? きっとマズイだろうけど・・・」
村民2号と上州麦豚はどこか似ている・・・。



本日の大金言。

3.11からちょうど2年。何もかも押し流されても日常生活は続く。今いる場所で何ができるか。



            ミートセンター12 

時代は変わる新星「田村屋」の味

 ボブ・ディランではないが「時代は変わる」。寒風の中、行列に並んで食べた超有名店「万里」の味に少々がっかりした彦作村長。佐野ラーメンは村長の好きなラーメンだが、メディアにひんぱんに取り上げられることと実際にその評価に値する味かどうかは別物だ、ということを改めて確認させられた。普通に食べて「万里」はうまい店であるとは思う。だが、1時間待つほどの味ではないというのが村長の個人的な評価である。

「老舗」が「老舗」であるためには、最終的には経営者=作り手の職人意識がカギだと思う。これが根っこにあるかどうか。彦作村長は日を改めて、再度、東北道を佐野へと向けてポンコツ車を飛ばした。目指すは今現在、約200軒ある佐野ラーメン店で最も評価の高い店の一つ「田村屋」。


          田村屋12 
          平日なのにこの行列

「田村屋」は約7年前にオープン、佐野ラーメンの伝統を受け継ぐ青竹ラーメンで、しかもその味がきわめてレベルが高いと言われている。化学調味料に頼らない作り方というのも「志の高さ」を感じる。到着したのは午後1時ちょっと前。平日だというのに10人ほど並んでいた。ここも行列か。少々うんざりしながら、25分ほど待たされて、ようやくテーブルに着いた。

「万里は老舗だけど、ここは7年の歴史しかない。それで食べログなどでもベスト3に入っている。今佐野でもっとも人気の高い店というわけね。食べログの評価もそのまま信じると間違う。しっかりチェックしなきゃ」
美熟女の村民2号の鼻息が伝わってきた。

          田村屋③ 
          舌代が良心的

メニューの中から「ラーメン」(580円)と餃子(一人前3ケ280円)をチョイス。ざっと店内を見渡すと、テーブルが4つ、それに座敷。ゆったりしている。厨房にはお決まりの黒いTシャツ姿の男性が2人。頭に白いタオルを巻いたスタイルはどこか山岸一雄のよう。やや長めの15分ほど待っていると、「ラーメン」がやってきた。続いて餃子。餃子は1個がかなり大きい。一人前3個で280円という値段設定はかなり良心的だと思う。

          田村屋⑤ 
          チャーシュー麵ではありません
          田村屋⑨ 
          デカ餃子の実力

ラーメンはひと目見て気に入った。醤油ベースの透明で奥行きのあるスープ。大きめのチャーシューが3枚。それにシナチクとナルトとホウレンソウ。刻みネギ。その下に控えている麺は、まさに佐野ラーメンの伝統の平打ち縮れ麺。それがつややかに「おいでおいで」をしているよう。やっぱりラーメンにはナルトがなくちゃ。ここに海苔があれば言うことないんだが。

まずはスープ。一瞬、薄い味と感じたが、じわりじわりとまろやかに口中に広がってくる。この柔らかな奥深さは何だ?きれいな脂がうっすら浮いている。多分鶏ガラを中心に鰹など魚介類からのダシだろう、相当な熟練のワザを感じてしまった。

         田村屋⑥ 
         スープに感心
         田村屋⑦ 
         麺にも関心

「うまい。麺もヒラヒラしているようでコシがしっかりしている。私が食べた中でもこれはトップクラス。待ち時間はどうにかしてほしいけど、チャーシューも柔らかいうえに肉汁がジワジワくる。全体的にここは人気と実力が合致していると思うわ」

辛口の村民2号が高評価。以前食べた佐野ラーメンの進化系「ゐをり」も高評価だったが、青竹を使わない手打ちラーメンという新しい流れに挑んでいる。その意味では田村屋は佐野ラーメンの伝統線上にある正統派の新星と言えるだろう。

村長もこの味なら行列に並ぶのも仕方がない、そう思った。ただし、1時間以内。それ以上待つとぎっくり腰が悪化して再起不能になってしまうぜよ。麺は時間が経ってもぶよぶよ感がない。麺打ちに手抜きがないのだろう。奥行きのあるさり気ないスープとの相性がいい。チャーシューは豚バラだが、ほどよく煮込まれていて、脂分が気にならない。その柔らかい肉のうまみの味わい。これで、580円というのは好感が持てる。

          田村屋13  
          むふふなチャーシュー
          田村屋10 
          イケてる

餃子も皮から手づくりしているのがわかる。モチモチした皮と野菜が多めの、重層的な味わいはかなりのレベルの高さ。
「こういう店が出てきていることが佐野ラーメンの凄いところね。新しけりゃいいというものではないけど、人気にアグラをかいている老舗の人気店にとってもいい刺激になると思うわ」
「ビジネスと職人意識のせめぎ合いってことかな。田村屋がこれからもこの志しを忘れないことを祈るよ」
村長と村民2号は自分たちのことを棚に上げて、外に出ると、すこんと広がる青空の下、野良猫のように背伸びをするのだった。


本日の大金言。

ボブ・ディランの「時代は変わる」が世界中の若者の心をとらえたのは1960年代。その後、時代は変わったが、世界は変わらなかった。


                     田村屋11 




佐野ラーメンの超人気店に並んでみる

佐野の 「万里(ばんり)」といえば、200軒以上ある佐野ラーメン店の中でもその人気はトップクラスの有名店だ。巨人の2軍コーチ・小関竜也氏の実家としても知られる。佐野でも有数のうまい店として数々のテレビなどメディアにも取り上げられ、店内にはそうした「勲章」がさり気なく(?)飾られている。

土日などは長い行列ができ、1時間待ちということも普通の光景になっている。赤羽彦作村長は、久しぶりにウマズイめんくい村に帰ってきたラーメン好きの娘・キオと佐野までポンコツの愛車を吹っ飛ばした。目的は「万里」。午後1時に到着。日曜ということもあって、寒風の中、予想通りの長い行列。その最後尾に並んだ。

          万里① 
          寒風の中、すごい行列

まずは外、次に入り口、さらに控えの間。3段階の関門があって、席に着くまで50分ほどかかった。店員の対応は悪くもなく良くもなくで、「これが普通なのよ。うちはこういう店なのよ」という超人気店ゆえの日常化した尊大さを感じる。うまいラーメンに出会うにはこのくらいは覚悟せよ、ということかもしれない。その分、期待感が高まっていった。

          万里② 
          待つ身はつらいか楽しいか

長いカウンター席と座敷が二つ。広くはないが、40人くらいは収容できそうなスペース。水はセルフサービス。メニューの中から定番の「手打ちラーメン」(600円)を選ぶ。村の財政事情から「餃子」(6ケ380円)を一つだけ注文した。15分くらい待って、目当ての「手打ちラーメン」が目の前に登場。うむ。透明な醤油ベースのスープ。チャーシューは2枚。いい色合いのシナチク。刻みネギ。その下には佐野ラーメンにしては太めの平打ち麵がうまそうに控えていた。

         万里③ 
         ナルトはないが正統派

「ナルトと海苔がない。でも、これぞ佐野ラーメンって感じ」
村民2号が正統派佐野ラーメンの佇まいに感嘆の声。
「私の好み。脂が意外に浮いているけど、ギトギトではない。素朴でシンプルなのがいいよ」
いつの間にかラーメン通になったキオがひとくさり。

          万里⑦ 
          佐野らしからぬ?極太麺も
          万里⑨ 
          意外に脂の浮いたスープ

まずはスープ。鶏ガラのダシがよく効いていて、醤油の味が強いものの、あっさりしているのにコクもある。予想以上に麵が太い。手打ちなのでバラバラだが、まるで喜多方ラーメンのよう。コシもそれなりにある。超人気店ゆえに一度に10杯くらい作ってしまうビジネス上の宿命もある。そのためにややもするとうどんかワンタンのように柔らかくなってしまう嫌いがあるかもしれない。ぎりぎりの柔らかさだった。素朴なモチモチ感は悪くない。

          万里⑧ 
          絶品だが座布団一枚
          万里10 
          シナチクの実力

チャーシューは薄い。脂身好きの村長が好きな煮汁のよく滲みこんだ味で、これはうまいと思った。だが、2枚は少ないと思う。佐野ラーメンの中では強気の600円という値段設定からして、最低でももう一枚は欲しい。感心したのはシナチク。味がよく滲みこんでいて、古き良き時代の正統派シナチクのシャキシャキ感が気に入った。餃子は佐野の隠れた美味だが、ここの餃子は平均点だと思う。うまいが佐野の中では普通のうまさ。

         万里12 
         オレを忘れちゃ困るってもんだよ

「全体としては満足だが、待ち時間と値段を考えると、期待以上ではなかったよ。これなら、同じ老舗でも宝来軒の方が上と言わざるを得ない。宝来軒は愛想はないが、もっと修業している感じがする」
村長がそう言うと、村民2号がちくりとひと言。
「私は宝来軒に行ってない。村長の抜け駆け。だから、比べようがない」
「私は満足よ。東京でコッテリ系のラーメンばかり食べていると、佐野ラーメンはほっとする。東京に佐野ラーメンが少ないのが残念というものよ」
キオが締めくくった。

食べ終えるまでの時間を計算したら、1時間20分ほどかかっている。千里を超える万里。その意味を考えるべきかもしれない。おいおい、えらそうだよ。
              
                   (明日も引き続き佐野ラーメン編、こうご期待)。



本日の大金言。

東京に佐野ラーメンが少ないのは水と鮮度の問題かもしれない。佐野ラーメンは意外にデリケートで、現地でしか本物は食べられない、ということなのか。



                     万里11 

足利と京都・・・古都のもなか甘い対決

 彦作村長は最中(もなか)については銀座の「空也(くうや)」が一番だと思ってきた。予約しないと買えないこと、実際に食べてみると、皮といいあん(こしあん)といい非の打ちどころがない。エンターテインメント新聞社時代に大ボスの贔屓(ひいき)の店だったこともあり、大事なお客を接待する際になど、「空也の最中」を持参することも多かった。

今でもその思いは変わらない。だが、と書いてしまおう。数年前、京都にお住いの調布先生から奈良市「みむろの最中」(白玉屋栄寿)を教えてもらい賞味したところその考えが変わった。10個入りで900円という安さにまず目を見張った。小ぶりなその最中もこしあんで、その皮の香ばしさといったらなかった。賞味期間は1週間ほどだったと思うが、数日置いてもその皮にまったく崩れが出なかった。こしあんはふわりと立ち上がり、品のいい控えめな甘さが口中に広がった。空也に負けない。そう思った。

          足利①    
          鑁阿寺(ばんなじ)の白梅

さて、彦作村長は時折、気が向くと関東の古都・足利へと足を延ばす。そこに知る人ぞ知る「古印最中(こいんもなか)」(香雲堂本店)がある。空也やみむろの洗練とはいわば対極にある最中で、大きくて、ぎっしりと詰まった粒あんはかなり甘い。それはお尻の大きい女性のようで、空也やみむろの最中が壇れいなら、こちらはさしずめ松坂慶子といったところ。

         古印最中② 
         香雲堂本店の古印最中

その古印最中(5個入り682円)を久しぶりに買ってウマズイめんくい村で賞味となった。足利家ゆかりの真四角の古印をデザインした最中は縦横6センチ、厚さは2センチほど。かなりデカい。面白いことに1個だけ長方形で、それがきっちりと箱の中に納まっている。最中のいい香りが漂う。皮はサクッとしていてややもすれば崩れそうなほど柔らかい。ギリギリのバランス。中の粒あんはいい小倉色で、口中に含むと粒つぶ感が際立っている。

         古印最中⑨ 
         この粒あんの圧巻

「最中はこうでなくちゃね。どっしりしていて、甘いけど品がいい。でも、1個で十分」
美熟女の村民2号が目をとろんとさせて品評する。そういえば、最近の村民2号は古印最中タイプである。
「疲れたときに食べると特にうまい。村長は甘党でもあるので、2個ぐらいはぺろりとイケるよ。さすが足利尊氏の発祥の地の最中で、これを食べると京都へ攻め上がりたくなってくる(笑い)」

                 京都の最中① 
                 底知れぬ京都の最中

「そう言えば去年秋に京都に行ったときに調布先生からすごい最中をいただいたわね。みむろの最中ではなくて、なんて言ったかしら・・・」
「本家玉壽軒(ほんけたまじゅけん)の最中『忙中閑』。確かにあれもすごかった。みむろの最中のように小ぶりで、皮といい、中のあんといい絶妙だった。あんは粒あんだったけど古印最中の粒あんとは全然違う。何というかふわりとしていて甘さが控えめ。羽毛のようなとでも表現したくなる最中だった。どうやってあんなあんが作れるのか。京都は奥が深すぎるよ」

          京都の最中③ 
          洗練の極み
          京都の最中④   
          ふわりとささやいてくる

東京、奈良、足利、京都。古都の老舗の底力。共通しているのは添加物などは使用していないので、賞味期限が短いことと手間ひまを惜しまないこと。たかが最中、されど最中。甘すぎる四都物語、お後がよろしいようで・・・。(皮一枚残して退場)


本日の大金言。

なぜ最中というのか、その語源は江戸・吉原の名妓が皮と餡の関係を「窓から見える月」に例えて、中秋の名月を「最中」と呼んだことから始まったという。少々わかりにくいが、何やらエロティックな語源のようで・・・。




                 古印最中⑤ 

かけそばと猫めしの至福

 立ち食いソバは宮仕え時代の彦作村長にとっては特別な存在だった。都内をあちらこちら歩きながら、美味い立ち食いソバに出会ったりすると、道端でお金を拾ったような気分になった。その立ち食いソバ界の最高峰に位置するのが日本橋「そばよし」である。江戸時代から続く日本橋の鰹節(かつぶし)問屋「中弥商店」が始めた立ち食いそば屋で、昼時などは長い行列ができるほどの人気となっている。

         そばよし② 
         タダの立ち食いそば屋に見えるが・・・

いつかはクラウン、いつかはそばよし。彦作村長は久しぶりに江戸表に行ったついでに、ぶらりと立ち寄ってみた。時刻は午後3時を少々まわっていた。さすがにこの時間になると、待たずに入れた。かき揚げや穴子天もうまいが、ここは「かけそば」(270円)と小ライス(70円)に限る。老舗の鰹節問屋の直営店はダテではない。「立ち食いソバの常識」となっている化学調味料は一切使用していない。もともとは屋台から始まった江戸前そば。その原点に帰ると口で言うのは簡単だが、そこにB級の「立ち食い」という現実を入れて実行するのはそう簡単なものではないと思う。コロンブスの卵ならぬコロンブスのかけそば。

          そばよし④ 
          究極?かけそばと小ライス

小ライスは知る人ぞ知るこの店のサブの名物でもある。あったかいご飯に備え付けの鰹節の粉(無料)を振りかけて、醤油を数滴加える。それをかき混ぜて食べる。おかかご飯である。これがメチャクチャ美味い。

彦作村長はかつて猫と共同生活をしていたころ、猫まんま、つまりおかかご飯こそ究極のごちそうではないか、そう思うことが何度かあった。猫こそ最高の美食家かもしれないぞ。それは「そばよし」で確信に変わった。

まずは「かけそば」。つゆは多めで細切りのそばがゆったりと泳いでいる。カツオの出汁が見事に利いている。返しとのバランスが絶妙で、色合いといい、そのなめらかな風味といい、さり気ない奥深い味わいといい、「ま、これが江戸のそばの原点というものでござんすよ」八代目桂文楽がドンブリの底からにゅっと顔を出して、そうつぶやいているようだ。

          そばよし⑨ 
          返しと出汁の絶妙
          そばよし⑧ 
          只者ではござんせん

ネギの鮮度が普通の立ち食いそば屋よりシャキッとしていて、店の一杯のかけそばへのこだわりを感じる。そばは品のいい江戸前の細切りで、多分二八だろう。柔らかさと歯切れがとてもいい。シンプルの中に、計算しつくされた全体の味わいが職人芸そのものと思わざるを得ない。確かに美味い。

          そばよし⑤ 
          粉がつおをかけまして・・・
          そばよし10 
          おかかご飯!

茶わんに盛られた小ライスに鰹節の粉を振りかける。「醤油を4~5滴」とガイドされているが、村長は7~8滴ほど垂らした。静かにかっ込む。次に混ぜてみる。またかっ込む。何とも言えない鰹節の風味とあったかご飯の恋愛がイケてる。目をつむる。なぜか下町の長屋で博打から帰ってこない父親を待つ貧乏な娘の風景が浮かんでくる。近所の捨て猫が日向ぼこをしている。遠い江戸の昔へと空想の羽根を伸ばす・・・。

あっという間に至福の時間が終わった。合計で340円ナリの舌福。村長はドラ猫のように爪楊枝をくわえてから、毛の抜けた尻尾をピンと立てて外に出た。遠くに三越が見えた。



本日の大金言。

「かけそばとおかかごはん」という原点。敷居の高いそば屋もいいが、鰹節屋の立ち食いという選択も粋じゃござんせんか。


                      そばよし12 


新歌舞伎座で「幻のきんつば」と遭遇?

          歌舞伎座① 
          新歌舞伎座

 歌舞伎座のこけら落としは4月2日だが、それに先立って、歌舞伎座タワーの地下2階がオープンした。歌舞伎には縁のない彦作村長だが、夜の会合まで少々時間があったことと軽い好奇心から地下鉄東銀座駅と直結する地下2階をのぞいてみた。ちょっとしたショッピングセンターになっていて、旧歌舞伎座からの店も新装オープンしていた。緋毛氈(ひもうせん)の縁台と野点傘(のだてがさ)が並んだ一角に村長のセンサーがピピピと反応した。

         歌舞伎座⑤ 
         B2のにぎわい

「歌舞伎座土産 いろはきんつば」という看板。「いろはきんつば」は信州の城下町・飯田市に本店を構える「和泉庄(いずしょう)」直営の出店。創業が文政元年(1818年)という老舗和菓子屋さんだ。「いろはきんつば」(1個200円)は一子相伝の手づくりきんつばだそうで、それを実演販売しているところだった。なんという幸運。

          いろはきんつば② 
          限定いろはきんつば
                          歌舞伎座② 
                         見事なワザ

きんつばは榮太楼総本舗があまりにも有名だが、この和泉庄も榮太楼に負けない歴史を持っている。きんつばは江戸時代の中ごろ京都の清水坂の茶店で焼き餅の一種として誕生したという。刀の鍔(つば)に形が似ていたことから「銀つば」と呼ばれ、それが江戸に伝わり、縁起のいい「金つば」となったという経由をもつ。

和泉庄の「いろはきんつば」は、その原形そのもの。現在のきんつばはほとんどが四角形だが、榮太楼総本舗と同じで、円形である。しかも榮太楼のものより一回り以上大きい。村長は職人さんが焼いている光景を1日中見ていたかったが、夜の会合があるのでそうもいかない。焼き立てを7個買って、その場で1個だけ食べて、残りをウマズイめんくい村へと持ち帰ることにした。

          いろはきんつば① 
          なんという存在感

その「いろはきんつば」。飯田市の本店では「大金つば」という名前で売られている。見事な焼き具合で、その素朴な存在感にしばし見とれてしまう。粋ではなくあまりに野暮ったいお姿。作家の池波正太郎が株屋の丁稚(でっち)時代から愛していたという深川・清水屋のきんつばはきっとこんなだったのではないか? 清水屋は昭和50年代後半に、きんつば作りをやめてしまっている 。

彦作村長はエンターテイメント新聞社時代に「幻の清水屋」を探し求めて、ようやくたどり着いたが、その時には、甘酒屋に変わっていた。ご高齢のきれいなご婦人が出てきて、「きんつばは作るのが大変で、体力的に作れなくなったんですよ。味を落とすわけにはいかないですから。それでやめてしまったんです」きれいな下町言葉でそう話していた。その幻のきんつばも「いろはきんつば」と同じで、大きくて円形だったという。

「いろはきんつば」は江戸の昔と同じように寒天を使用していない。定規で測ってみると、直径57ミリ、厚さは26ミリもあった。かなりのボリューム。江戸の昔からひょいとそのままタイムスリップしてきたよう。添加物などは使用していず、北海道十勝産の小豆(エリモ種)を秘伝のワザで毎日炊いているという。

          いろはきんつば④ 
          刀の凹みまで江戸のまま
          いろはきんつば⑤  
          甘さがほとんどない

ズシリと重い、その様々な思いの詰まったきんつばをがぶりと行く。甘さがほとんどない! 小豆の風味が立ち上がり、口中から鼻へ、寸前で鼻から脳天へとどんよりと広がっていく。寒天が入っていないために柔らかな小豆の風味がそのままストレートに伝わってくる。焦げ目のついた薄い皮。その素朴。洗練ではなく野暮。その分、好き嫌いが激しいかもしれない。あの清水屋の幻のきんつばもこのような味わいだったのだろうか?

かなりのボリュームなのに、1個をあっという間に平らげてしまう。新歌舞伎座と江戸の昔と幻のきんつば。彦作村長は舌の上でそれを同時に味わった気がして、しばしの間、至福の時間に身をゆだねるのだった。



本日の大金言。

池波正太郎が新歌舞伎座を見たら何と言っただろうか? いろはきんつばについても。


                     歌舞伎座 

北埼玉で行列のできる味噌らーめん

 札幌味噌らーめんと言えば、真っ先に「純連(すみれ)」という名前が出てくるほど、その濃厚な味は熱狂的なファンを惹きつけてやまない。昭和39年に札幌で創業したこの店は、その後、女性店主が体調を崩して閉店。さらにその後、長男が店主の意志を継いで「純連(じゅんれん)」という名前で復活。三男も別に「すみれ」という名で開業した。

「純連」も「すみれ」も経営は別系統になっているが、「札幌味噌ラーメンの超人気店」として今や不動の地位を確立している。味は基本的に同じで、ラードの熱い膜に覆われた濃厚で複雑な味噌味は甲乙つけがたい。赤羽彦作村長は正直に言うと、大好きな味だが、そのあまりのこってりと濃厚に、「体調のいい時にしか食べない」ことを肝に銘じている。

         大雅外観 
         こんなところに名店が・・・

その「純連」系のラーメンで土日などは長い行列ができる店がなんと埼玉県羽生市にある。「らーめん大雅(たいが)」。オープンしたのは1998年で、彦作村長がこの店の存在を知ったのは、友人のラーメン通の情報だった。10年ほど前の話。20分ほど並んで、ようやく食べることができた。まさしく札幌で食べた味と同じだった。こんな本物が埼玉の果てで味わえるとは・・・正直驚いた。

比較的若い店主は新横浜ラーメン博物館に出店している「さっぽろ純連」で修業したという。味がほとんど同じなのもうなずける話だが、あまりにうますぎて、これを食い続けたら、健康的にどうなんだろうと心配になってしまった。村長はコレステロール値が高く、人間ドッグなどで、「あまり脂の多いものは控えるように」と言われていた。で、少しずつ足が遠のいていった。 

このブログを書くにあたって、村長は悩んだ。いつかは紹介しなければならない。だが、しかし。健康問題がある・・・。ある日のこと、たまたまテレビで114歳の世界最高齢女性ギネス記録所持者が「好きなものを食うのが一番じゃよ」と話しているのを見てしまった。これだ! ボケ始めた頭に稲妻が走った。B級グルメの道は厳しい。村長は高脂血症薬のリピトールを用意すると、越中ふんどしを締め直してからすっくと立ち上がった。

          大雅② 
          ノレンがいい

ポンコツ車を吹っ飛ばして、久しぶりのにその「らーめん 大雅(たいが)」に到着。小豆色のノレンに「たいが」と白抜き文字。平日の午後1時半を回っていたせいか、ほとんど待たずに店内へ。11人ほど座れるカウンター、それにテーブル席。村長はカウンター席に座ると、定番の「味噌らーめん」(800円)を注文した。店内は開放的だが、「純連」系には秘伝のワザがあり、それは企業秘密になっている。厨房の肝心なところはカウンターからでも見えない。

          大雅④ 
          久しぶりのご対面

待ち時間は7分ほど。大きめのドンブリにまるで地獄谷の温泉のようなあの「味噌らーめん」がやってきた。「これでお揃いでしょうか?」店員の女性の対応は明るく感じがとてもいい。これだこれだ。どろりと透明なラードが厚い膜となって、北海道直送の味噌をベースにした濃厚なスープを覆っている。サイの目切りにしたチャーシューがぼこぼこと浮いていて、刻みネギとメンマがむふむふむふと合いの手を打っている。

          大雅⑥ 
          こってり濃厚のうーむ

まずはスープ。熱い。だが、その奥からかなり濃い複雑な味がじわじわと広がってくるのがわかった。快感のアブラ味噌地獄。そんな言葉が脳内エンドルフィンを誘発する。旨いが濃い。濃いが旨い。麺は中太の黄色い縮れ麺。札幌ラーメンの麵だ。コシがほどよくある。村長は固めが好きなので、もう少し固い方がいいのだが。メンマはしゃきしゃきしている。刻みネギが多めで、これも純連と同じ。

         大雅⑦ 
         これだこれだ
         大雅⑨ 
         ぶつ切りチャーシュー

サイの目切りの豚バラチャーシューがこの店の特徴で、それは実に柔らかく煮込まれていて、量もある。なぜか以前ほどの感動はなかったが(ひょっとして麵が変わった?量も少なくなった?)、満足感はほとんど十分だった。さすがにスープを完飲みしなかったが。ポケットからそっとリピトールを取り出して、コップの水をグイッと飲む。北埼玉に咲いた純連系札幌ラーメンの心意気。初心を忘れないでほしい。村長は万が一これで倒れても本望だ、そう思うのだった。



本日の大金言。

旨い札幌味噌らーめんほど人を魅了するものはない。その濃厚な豊饒(ほうじょう)はまさに北海道の大地そのものだと思う。


                      大雅13 

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プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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