「伝説のサンドゥイッチ」秘伝の味

 東京・有楽町にある「伝説のサンドゥイッチ」の店に足を運んだ。知る人ぞ知る「はまの屋パーラー」。約1年半前の2011年12月、45年間続いた店がほとんど誰にも告げずにひっそりと幕を閉じた。理由はマスターの高齢と言われている。その味を惜しんだファンがその後、マスターのもとに通い「伝説の秘伝」を教えてもらって、翌年の2月リニューアルオープンにこぎつけた。二代目はまの屋パーラーの誕生となった。それからまた1年3か月ほど時は流れた。味に変化はないか?

          はまの屋11 
          この店構えのさり気なさ

「特に玉子サンドゥイッチが絶品」という評判を聞きつけた彦作村長は、新有楽町ビルの地下にある「はまの屋パーラー」の前に立った瞬間、ある種の感慨に襲われた。ガラス張りの、昭和の雰囲気が香り立つような店構えだった。店の造りはそのまま継承しているそう。透明なガラスの上には「はまの屋」という大きめの縁取り白文字とそのすぐ下に小さい字で「PARLOR&SNACK」の黒文字。パーラー?スナック?この言葉は今ではほとんど死語だが、昭和30年代から40年代にかけて銀座の、いや日本にとってモダンな、新しい時代を予感させる流行語だったからだ。

          はまの屋12 
          パリのビストロ風?

お断りしておくが「パーラー」はパチンコ屋の代名詞ではない。元々はフランス語で「いこいの場所」を意味していて、軽食喫茶のような意味合い。今でも銀座「資生堂パーラー」はこの言葉を死守している。その「はまの屋パーラー」。ブラウンを基調にした店内はテーブルが16席ほど。2人用と4人用があり、カウンターの奥がちょっとした厨房になっていた。若い男性がそこでサンドゥイッチを作っていた。他に女性スタッフが2人。お客への対応は悪くない。

          はまの屋パーラー① 
          よき時代のコーヒー

時刻は午後3時30分。ランチタイムはすでに終わっていた。彦作村長はメニューの中から「玉子サンドゥイッチ」(580円)を選んだ。この店は卵ではなく「玉子」、サンドイッチではなく「サンドゥイッチ」。玉子は良しとしても「サンドゥイッチ」は「ゥ」と「ッ」を小さく発音することになぜか強烈なこだわりを持っているようだ。村長はそこが気に入ってしまった。銀座の古き良き頑固!

「玉子と野菜を半々にすることもできます。こちらを頼む方が多いです。ハムでもオーケーです。2種類選べるんですよ」
感じのいい若い女性店員さんのアドバイスに従って、「玉子と野菜」にしてもらった。コーヒー「はまの屋ブレンド」をセットにしてもらう。セットだと380円が250円になる。合計830円ナリ。

         はまの屋パーラー③ 
         伝説のサンドゥイッチ

作るのに時間をかけているようで、待ち時間は15分ほどナプキンが敷かれた白い大皿にきれいな玉子サンドと野菜サンドが乗っていた。これが伝説のサンドゥィッチか。玉子サンドは厚焼き玉子を使っていた。ゆで卵をマヨネーズで合えるというのが一般的な玉子サンドだが、ここはそうではない。関西に多い厚焼き玉子だった。薄切りの食パンにマヨネーズを塗って、そこにレタスが敷かれている。厚焼き玉子はかなりのボリュームでその上にグラマラスに横たわっている。初期のマリリン・モンローかブリジット・バルドーのよう。清楚な妖艶・・・。

          はまの屋パーラー④ 
          秘伝は素材か?

ひと口ガブリと行く。パンはしっとりしていて普通に美味い。玉子は中が柔らかい。半熟に近い。それが実に新鮮なことに気が付いた。マヨネーズが薄めに塗られているだけ。塩加減も薄味。素朴な、実に素朴な美味さだった。秘伝がどこにあるのか、探しても見当たらない。それなのに美味い。この美味さはどこから来るのだろう? シンプルな素材の美味さとでも言ったらいいのだろうか。

         はまの屋パーラー⑤ 
         ふんわりとした玉子焼き

野菜サンドもトマトときゅうりとレタスが新鮮で、それ以外に特別なものは感じなかった。45年続けたマスターの秘伝の正体は最後までわからなかった。「素朴に美味い」。この意外と忘れられがちなシンプルこそが秘伝なのだろうか? 常連客によると、これでもまだ先代の味の域には達していないという。石原裕次郎の「夜霧よ今夜もありがとう」がLP盤レコードで流れる中、彦作村長はズレてしまった越中ふんどしを締め直すことにした。目の前に夜霧はなかったが。



本日の大金言。

パーラーとサンドゥィッチ。これは戦後から高度成長期にかけての日本の食における希望の星だったと思う。さて、2013年における希望の食とは?





                 はまの屋パーラー⑨ 
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ギャグか?「谷中の猫焼き」に舌鼓

 東京・銀座のプランタン地下2階はスイーツのメッカでもある。それ故に若い女性客が多い。彦作村長は時折、ここを訪れて、何かうまいもんはないかいな、と不思議の国のアリス気分(ちょっと無理あるが)でつまみ食いをしたりしている。たまたま、「谷中銀座の福にゃん焼き」なるものが出店していた。福にゃん焼き? 猫好きの村長の目が点になった。「招き屋」という店だった。本店は昨年12月に谷中銀座にオープン。たい焼きをアレンジした「招き猫焼き」ともいうべき珍妙なものだった。これはおもしろそー! 味も気になる。

          招き猫⑥ 
          一見たい焼き風だが・・・

4~5人ほど座れるカウンター席が設置されていて、「招き屋」の女性スタッフが2人ほど、目の前でたい焼きを焼くように「福にゃん焼き」を焼いていた。十勝あん(150円)、抹茶あん(180円)、Wカスタード(180円)などいくつか種類があった。彦作村長はむろん「十勝あん」(150円)を注文した。ついでに「抹茶」(200円)も頼んだ。谷中の本店では飲み物は出していないそう。それは残念。

          招き猫① 
          にゃお~ん

「珍しいねえ。猫焼きなんて。まるでギャグみたいだね」
若い女性スタッフとしばし雑談。
「『釣りバカ日誌』の北見けんいちさんが福にゃんをデザインしてくれたんです。谷中は猫のメッカでもあるんですよ。招き猫を置いてる店も多いんですよ。ぜひ谷中の本店にも来てください。このプランタンの店は2週間だけの期間限定なんですよ」
「問題は味だね」
「私が言うのもなんですが、スゴクうまいですよ」

          招き猫② 
          抹茶と福猫?
          招き猫③ 
          何かいいことあります?

焼き上がったばかりの「福にゃん焼き」は確かに北見けんいちのキャラクターだった。左手に小さな鯛を持っていて、右手を招き猫のようにぴょこんと挙げていた。キツネ色にこんがり焼けている。いい匂いもおいでおいでしていた。正直なところ、面白さ第一のキワモノで、美味さはあまり期待していなかったが、いい意味で期待が外れてしまった。まず皮。外側がパリッとしていて、中はカステラのような風味ともっちり感が同居していた。小麦粉と卵という材料表記だが、ハチミツなども隠し味として使っているのではないか。

          招き猫⑧   
          研究し尽した味

中の粒あんもかなりのレベルだった。北海道十勝産の小豆を使用しているようだが、実にふっくらと炊かれている。特徴的なのは塩味がやや強いこと。このあたりが評価の別れるところだろう。ほんのりとしたいい小豆の甘みの中に塩加減が絶妙のバランスでふわりと立ち上がってくる。小豆の美味さを引き出す塩加減。文字通りのいい塩梅。これだけの味を作るには相当な努力と研究があったことを想像させる。粒あんの量も多くもなく少なくもなく。皮との相性がある種、極まっていると思う。150円は高いか安いか?

         招き猫⑤ 
         粒あんと皮が絶妙

ここまで来ると、ただのウケ狙いのキワモノではないと思う。たい焼き御三家もうかうかしていると、新しい職人の登場にシッポをつかまれてしまうかもしれない。海老で鯛を釣る、ではなく、猫で鯛を釣ろうだなんて。このギャグ感覚もそれほど悪くはない。



本日の大金言。

よく考えるとたい焼きがあるのだから、猫焼きがあってもおかしくはない。「ワンワン焼き」が出てきてもいい。





                    招き猫⑦

「埼玉の会津ラーメン」の微妙な味

 関東甲信越地方が今日梅雨入りした。雨好きの美熟女・村民2号が不愉快なほどうれしそうである。
「雨のシーズンは花がきれいなのよ。白岡の薔薇園にも行きたいし、鴻巣のポピーも今がきれい。菖蒲(しょうぶ)が咲いたり、紫陽花(あじさい)も咲くし、梅雨の季節って本当は大事なのよ。で、美味いラーメン屋の情報・・・」
頭の中が豪雨状態の村長の気も知らないで、村民2号が鼻歌混じりで、耳打ちしてきた。耳がくすぐったい。
「春日部にある会津ラーメンの店なのよ。村長にピッタリでしょ。私の友人のラーメン通が美味いって太鼓判を押していたから、村長も行ってみれば?」

         会津ラーメン和② 
         ラーメン屋とは思えない店構え

江戸表での極秘の仕事の帰りに春日部に寄ることにした。時刻は夜9時を過ぎていた。ララ・ガーデン春日部の近く。村長は時々ここで映画を見る。暗闇の中にモダンな照明がその一角に当たっていた。自然木を見事にデザインしたオブジェのような看板が屹立していた。「会津ラーメン 和」という店だった。コンクリートの階段があり、全面ガラス張りの正面入り口。それが暗闇に浮かんでいる。ここが埼玉の春日部であることを一瞬忘れさせてくれるほどアートな店構えだった。春日部はクレヨンしんちゃんの街だけではない。

入り口には玉砂利が敷いてあり、木のカウンターと仕切りのあるテーブル席が。女性客が多い。美味い店には女性が寄ってくる。会津ラーメンのイメージとはあまりに落差のある店内の雰囲気に少々戸惑いながらも、村長はしっかりチェックすべきところはチェックしていた。

          会津ラーメン和③ 
          どれにすんべ

カウンターに腰を下ろして、メニューの中から「和特製醤油ラーメン」(650円)を選んだ。あっさりスープと濃厚スープに別れていて、村長はあっさりスープを選んだ。麺は太麺と細麺を選択でき、太麺好きの村長は迷うことなく太麺を選んだ。オノコと生まれたからには「フトメン」でいかなくちゃ。喜多方ラーメンもそうだが、会津ラーメンも基本は太麺である。

          会津ラーメン和④ 
          こだわり方が半端ではない

この店は主人が会津の出身で、麵からチャーシューまですべて自家製だという。店の奥には製麺室まである。こうでなくちゃ、会津は名乗れない。全身すべて自家製の彦作村長vs自家製会津ラーメンのイケメン対決。待つこと10分ほど、大きめのドンブリに「和特製ラーメン」が登場してきた。煮干し系のやんわりとしたスープの匂い。鶏ガラの出汁も効いている。うーむ。大きめのチャーシューとナルト、柔らかそうなシナチク、それに水菜。ゆったりと入浴中の麺は確かに太麺だが、喜多方や会津のものよりも縮れ具合が少なく柔和な印象。

         会津ラーメン和⑤ 
         麵まで自家製
         会津ラーメン⑥ 
         和のスープ

スープは和の出汁の旨味と風味がじんわりと効いてくる。化学調味料は使っていないだろう。ちょっと物足りないくらいのやさしい味だ。麵はつるっとした食感でもっちり感も十分にある。チャーシューに感心させられた。肉の味を引き出すような和のチャーシューで、実に柔らかい。全体としてはインパクトは弱いが、奥深い仕上げになっている。これがこの店の特徴なのだろう。きれいに完食、きれいに完敗。

          会津ラーメン⑦ 
          チャーシューに感心

脂がギトギトでインパクトの強いラーメンが主流のラーメン戦国時代の中で、この味わいは少数派である。店主に聞いてみたら、元々が和食の料理人だったそう。そのこだわりやよし。幕末の会津のようになってはいけない。時流に流されず、時流に逆らわず。山本覚馬のような会津ラーメンになってほしい。祖先が会津藩の下級武士だった彦作村長は、この埼玉・春日部の「こだわりラーメン」に静かにエールを送るのだった。



本日の大金言。

NHK大河ドラマ「八重の桜」は暗すぎる。出だしはよかったのに、あまりに歴史に忠実過ぎるのも、ドラマとしては如何なものか。救いのない歴史より、救いのある歴史へ。山本八重の前半が長すぎると思う。NHKの番組プロデューサーに言いたい。春日部の会津ラーメンを一度食べてみてくなんしょ、と。




                   会津ラーメン⑧ 




意外な穴場、湯島のタレカツ丼

 東京・上野の不忍池は彦作村長にとって懐かしい場所である。パンダを見た後にこのあたりをデートした記憶もある。下宿していたこともある。少々小銭を稼いだので、洋食の「黒船亭」でメンチカツかハヤシライスでも食べようとエレベーターに乗って4階で降りた。平日の午後1時だというのに行列がずらっと椅子に座っていた。アカン。「黒船亭」はメディアでの露出も多い老舗の洋食屋だが、いくらなんでもこの人出は異常である。食べる前にヘトヘトになったら何の意味もない。

          タレカツ丼② 
          湯島の越後へ

村長は頭を切り替えて、自分の足で「美味い店」を探すことにした。最近、テレビや食べログなどの情報で実際行ってみるとガッカリさせられることも多い。参考にはなるが、頼り切ってはいけない。自分の足で自分の舌で「美味い店」を見つける。発掘する。これが「ウマズイめんくい村」の原点でもある。で、湯島周辺まで足を延ばした。ふと「越後」の看板と「へぎそば」「タレカツ丼」の文字が目に飛び込んできた。「こんごう庵」という越後料理の店だった。村長は人を見るのと同じように店構えを見る。まずは合格。「新潟名物 タレカツ丼」というメニューが謙虚である。先日新潟でオムライスにハマってしまい、タレカツ丼を食べ損なった恨みもある。

          タレカツ丼③  
          こんなところにタレカツ丼!

「黒船亭」と違って店内は2組ほどの客のみ。小上がりとテーブル席、奥には座敷もある。小ぎれいな気配がこの店の客に対する気配りを漂わせていた。テーブル席で、「タレカツ丼とへぎそばセット」(950円)をすすめられたが、「タレカツ丼」(730円)1本勝負で行くことにした。へぎそばは普通は2人前以上という店が多いが、この店は1人前でも出してくれるようだ。

          タレカツ丼④ 
          あちきでよござんす?
          タレカツ丼⑤ 
          シンプルな豊饒

「タレカツ丼」は量的には少なめだった。最近、なぜか少食になってしまった村長にとってはこれぐらいがちょうどいい。キツネ色の大きいタレカツが3枚、どんぶり一杯に乗っかっていた。タレカツ丼は会津や桐生や長野のソースカツ丼と違って、醤油ベースの甘辛ダレをくぐらせている。キャベツを敷くこともない。薄切りの豚肉をカラッと揚げて、それを炊き立てのご飯の上に乗っけるだけ。そのシンプルに味覚の醍醐味が詰まっている。

          タレカツ丼⑥ 
          肉は薄いが・・・
          タレカツ丼⑦ 
          立ってるご飯

何よりもカツがカラリと揚げられていて、この店のタレカツ丼が本格的なものであることがすぐにわかった。カラッとした食感の後に、肉の柔らかいジューシーが押し寄せてくる。多分ヒレだろう。新潟名産のもち豚を使用しているという。パン粉のきめの細かさと醤油ベースの甘辛ダレが自然な味わいで、時々チェーン店などで見かけられる化学調味料の匂いはしない。ご飯も新潟のコシヒカリを使っていて、一粒一粒がふくよかに立っている。タレのかかり具合もちょうどいい。なめこ汁とお新香もかなりのレベル。自分の足で歩いていると、こういう発見がある。道端で50円玉でも発見したような気分。ここは日本海の魚と日本酒も売りのようで、今度は夜、こっそり来たくなった。



本日の大金言。

情報は自分の足と目と舌で確認すること。情報過多のメディア社会においては、特にこの原点を忘れないこと。自戒を込めて。



                      タレカツ丼⑨ 

「スープ入り焼きそば」って何だ?

 「スープ入り焼きそば」というメニューを見たとき、またB級のキワモノか、と思った。東北自動車道上りの人気サービスエリア「那須高原SA」でのこと。珍しモノ好きでキワモノも嫌いではない彦作村長。どんなもんか、食べてみることにしよう。ひょっとして大発見かもしれない。好奇心がむくむく湧き起ってしまった。

          スープ焼きそば③ 
          旨そうな気配が・・・

「麵屋りんどう」というフードコートのしゃれたラーメン専門店。厨房には白いシェフ姿のスタッフ、それに白と黒のユニフォームの店員さん。何やら原宿とか青山にでもありそうな都会的なファストフードレストランのよう。そこに「スープ入り焼きそば」(750円)が「那須塩原名物」として写真とともに大きく入っていたのである。これは当たりかハズレか。

          スープ焼きそば② 
          挑戦するっきゃない

「スープ入り焼きそば」は確かに那須塩原のご当地グルメで、昭和30年頃から、「釜彦食堂」や「こばや食堂」などで出されているようだ。ウースターソースで炒めた焼きそばにキャベツやもやしや鶏肉などで作ったスープを入れるという面白い製法で、青森県黒石の「つゆ焼きそば」などもほぼ同じものだそう。作り方は店によって若干違うようだが、スープと焼きそばを合体させるというのがミソ。フツーに考えるとありえない合体である。

          スープ焼きそば④ 
          当たりかハズレか

待つこと5分ほど。番号を呼ばれていくと、白めのどんぶりにキャベツの目立つスープ入り焼きそばが。スープの色が濃く、そこからソースの匂いが漂ってくる。見た瞬間、当たり馬券が飛んで行った。写真とは少々違って、きくらげの姿が見えない。キャベツが多く、人参となぜかナルトが千切りにされて乗っかっている。鶏肉が3~4かけらほど、これは旨そうに沈んでいた。その鶏から出た脂だろうか、スープの表面にキラキラと浮いている。期待とガッカリが半ずつ村長の頭の中を支配していた。

          スープ焼きそば⑤ 
          感動が来ない・・・

麵は細麺で、手づくり感はない。何やらインスタントラーメンのような食感だった。旨くもなくまずくもなく。ソースの匂いと風味が漂ってくるスープ。それが、「これがスープ入り焼きそばか」という思いを改めて思い出させてくれるだけだった。あくまでも個人的な感想だが、寝ぼけたような中途半端な味だと思った。ひょっとして未来はこんな味になるのか?突如村長の舌にそんな味気のない思いが広がった。人の手の、職人の匂いのしない味。量的にも多くはない。これで750円とはね。他の人はわからないが、村長はちょっと損した気分だった。多分、元祖の「釜彦食堂」とか「こばや食堂」などに行けばまた違う感動があるのかもしれないが。





本日の大金言。

人生にだって当たりはずれがある。晴れの日あれば、大雨の日もある。未来だってきっと同じだろう。



                    スープ焼きそば⑧ 

まさかの場所に「絶品メンチかつ」

 彦作村長の知人で敏腕税理士K氏は大のB級グルメ。埼玉と東京を股にかけて活躍中の大変多忙なお方だが、メディアに載っていない旨いもの情報を教えてくれたりする。以前書いた埼玉・鴻巣「一福」の絶品いがまんじゅうもK氏の情報。そのK氏が久しぶりに「極秘情報」を耳打ちしてくれた。

「村長、利根川沿いの電車も通ってない場所にあるお肉屋さんですが、ここのコロッケとメンチは絶品です。熱狂的なファンが付いていて遠くからわざわざ買いに来るほどです。ダマされたと思って、一度行ってみてはいかがですか?」
ネットで調べてもほとんど出てこない店だった。

        田上① 
        まさかの場所

マスコミが報じない隠れた名店を探すのも「ウマズイめんくい村」の使命の一つである。確かにすごい場所だった。タヌキでも出てきそうだった。北埼玉・加須市大越地区。隣が大越郵便局。「肉と惣菜 田上(たがみ)」という古い看板の下に、いい雰囲気の日除けノレンがかかっていた。「男しゃく和牛コロッケ」「評判のメンチかつ」という染め抜き文字。かような場所にかような店があるとは・・・。

        田上② 
        隠れた名店めっけ!

半信半疑で覗いてみると、近くの常連客らしき主婦がコロッケとメンチを20個ほどまとめ買いしていた。注文してから油で揚げるらしく、何とも言えないいい匂いが漂ってくる。この道一筋の、いかにも人のよさそうな主人と奥さん二人で営業しているようだ。コロッケとメンチの値段が105円で同じというのも驚くが、出来上がったコロッケとメンチの旨そうなこと。村長は東京・吉祥寺の行列店「肉のさとう」を連想してしまった。都内とド田舎。環境はあまりに違うが、これは味わってみる価値があるかも。そう思ってそれぞれ2個ずつ買った。

        田上④ 
        左が和牛コロッケ、右がメンチかつ

ウマズイめんくい村で試食となった。まずは和牛コロッケ。大きくて厚みもある。外側のパン粉がしっかり付いていて、その香ばしいこんがり具合が食欲をそそる。割ると中から飴色の男しゃくいもが出てきた。和牛のミンチがいいアクセントになっている。甘めの味。塩と胡椒の風味もかすかに感じる。ソースを付けて食べても美味い。この内容とこの味で105円というのは納得である。

       田上⑨ 
       飴色の絶妙なポテト

感心したのはメンチかつ。コロッケよりもほんの少し大きめで、こんがり具合も濃いめ。こちらは豚と牛のミンチとタマネギがぎっしり詰まっていた。村長はコロッケよりもこちらによろけてしまった。外側のパン粉と具のジューシーな甘みが絶妙だった。ひょっとして揚げ立てだから特に旨いのかもしれないが、この味に固定ファンが付くのもなるほどと思った。

        田上⑥ 
        メンチでござる

「私もメンチに一票。コロモの固さが冷めてくると気になるかもしれないけど、本当に隠れた名店ってあるのね。今度は国産鳥の唐揚げも食べてみたいわ」
辛口の村民2号も星三つの評価だった。

一概には比べられないが、吉祥寺さとうのメンチカツは牛肉で値段も安くはない。単純に比較しても、105円でこれだけのメンチを作り続けているのは驚きである。東京で売り出したら、かなりの人気を呼ぶのではないか。村長は「行列のできるさとう」に負けないメンチを発見した気分だった。こんな場所にかようなメンチカツ。中央ではほとんど知る人がいない、ということにも村長は大いなる満足を覚えるのだった。



本日の大金言。

行列はメディアが作る部分もかなりあると思う。そこから漏れている名店を探す。食べログなどの情報ではない情報にも金の価値があることを肝に銘じるべし。





                田上13 



夏日の夜は「千住の冷したぬき」

このところ夏日が続いている。富士山でも爆発するかもしれない。彦作村長は友人との会合に参加した後、久しぶりに北千住に寄り道をした。ジャズでも聞こうと思って、本町センター通りを「ゆうらいく」目指してそぞろ歩きしていた。一見風流だが、実態はさにあらず。ぎっくり腰がひどくなっていて、さらに様々なことが重なり、頭の中のマグマが富士山の前に爆発しそうだった。芸術は爆発だ、と言った岡本太郎は天国でも同じことを叫んでいるだろうか。

         柏屋② 
         街行灯が「おいでおいで」

夕闇の中に街行灯(まちあんどん)がボオッと見えた。江戸か明治にでもタイムスリップしたような錯覚に陥りそうだった。北千住で有名な老舗そば処「柏屋」の街行灯だった。「冷したぬきそば」という文字も見えた。ジャズを聴く前に冷したぬきそばを手繰る(たぐる)のも粋ってもんじゃあございませんか。粋とはほど遠い彦作村長の耳に十代目馬生の声がしたような気がした。

         柏屋① 
         敷居は高くない

村長は冷したぬきそばのファンで、エンターテインメント新聞社の宮仕え時代には5月の声を聞くと週に3回は冷したぬきを食べていた。特に越中島「宝盛庵」の冷したぬきそばが好みで、ドンブリに入ったあまりに野暮ったい味は洗練とはほど遠く、それ故にへそ曲がりの村長にとっては愛すべき味だった。

北千住の「柏屋」は明治37年(1904年)創業の老舗そば屋だが、神田「藪」や「砂場」「更科」のような洗練された味ではない。暖簾をくぐって中に入ると、他に2組の客がいるだけだった。1階と2階があり、村長はむろん1階のテーブルに腰を下ろした。昔ながらのメニューを書いた木札がずらりと並んでいる。ちゃきちゃきした女性店員に「冷したぬきそば」(650円)を注文した。

          柏屋⑧ 
          古いよき時代のそば屋

奥が厨房になっていて、注文を受けてから大釜でそばを茹で始めたのがわかった。やがて冷水で水切りしている気配も感じる。待ち時間は15分ほど。かなり長いが、これが昔からの江戸前のそば屋の常識でもある。待つ身が楽しい、マツノアケミ。

          柏屋④ 
          見事でござる

お盆に乗った「冷したぬきそば」がやってきた。大きくて深めのどんぶりにきゅうり、ワカメ、紅ショウガ、出し巻き卵2枚、刻み海苔、それに天かすが見事な配置で、まるで吉原の花魁のように横たわっていた。ワサビが多めなのも好感が持てる。全体のボリュームに圧倒される。

          柏屋⑥
          茹で立てのそば
          柏屋⑦ 
          いよっ、出し巻き卵

まずはひと口。そばは多分二八だろう、コシが強めで、やや単調な味わい。ツユは辛めでカツオやサバ節などの出汁がよく効いている。煮干しの風味も感じる。妙に甘くないのがいい。ダシ巻き卵が秀逸で、錦糸卵を多用する昨今の冷したぬきそばよりも村長の好みに近い。しかし、天かすがカラッとしていない点が気になった。たぬきの命は天かすだと思う。そばをどんどん手繰りながら、村長はその一点が不満だった。この内容で650円という価格設定は高くない。手繰り終えると、頭の中のマグマが半分以上消えていた。夏日は江戸前の冷したぬきに限る。爆発の前に冷したぬきそば。


本日の大金言。

関西はキツネ、関東はタヌキ。うどん文化とソバ文化。キツネとタヌキの化かし合い。それを同時に楽しむことも姿勢として大事である。




                      柏屋⑨ 



サラリーマンのメッカで噂の豚丼

 サラリーマンのメッカ、東京・新橋。彦作村長は知人の出版パーティーに出席するために久しぶりにSL広場前にいた。時計を見るとパーティー開始にはまだ50分ほどある。そうだ、「豚大学」で豚丼を食べることにしよう。大手広告代理店の友人から「ニュー新橋ビルにある豚大学の豚丼はいいですよ。とにかくボリュームがすごい。食べると元気が出るよ。B級グルメを自認するのなら、絶対に行くべき」という情報を得ていたことを思い出していたからだ。

         豚大学⑦ 
         こちらは外側

「豚大学」は1階にあった。外からも中からも入ることができる。「豚丼」という派手な看板と幟(のぼり)ですぐにわかった。店内は12人ほど座れるカウンターのみ。奥が厨房になっていて、黒いTシャツ姿の若い男性が3人ほど忙しそうに働いていた。平日の昼飯時などは行列ができるという。豚丼は「小 480円」「中 630円」「大 780円」「特大 990円」という構成。村長はどれにするか迷ったが、パーティーで食事が出ることを考えて、「小 480円」を選んだ。ついでに「みそ汁 50円」も。合計530円なり。

         豚大学⑧ 
         自販機で迷う

注文してから作り始めるようで、奥の焼き場からいい匂いが漂ってきた。煙も立ち上っている。神経質な人にはこの匂いと煙が気になるかもしれない。タキシードでは食えない、まさにB級の店。迷路が好きな村長にとっては、この感覚は悪くない。10分ほどして、威勢のいい声と同時に目の前に豚丼が置かれた。黒いどんぶりに豚ばら肉が8枚ほど、渦巻き状に乗っかっていた。ちょこんと野菜のおひたしが乗っているのが笑える。これが「大」だったら、一体どのくらいの量になるのか、次回は体調を整えて来たくなったほど。

         豚大学② 
         これぞ十勝豚丼
         豚大学③ 
         元気が出そう?

豚ばら肉はうな丼のタレのような甘辛ダレがかかっていて、にじみ出た脂身とともにギラギラしていた。ところどころ焦げ目が強いのが気にはなったが、それも手作業故と思い直した。ひと口、ふた口かっ込んでみた。豚肉は意外に柔らかく、独特の甘みもある。七味唐辛子をかけても旨い。ご飯はやや固めだが、タレがほどよく滲みこんでいて、普通に旨い。直ぐ後からにんにくの匂いが立ち上がってくる。うーむ。確かに元気は出るが、商談の前より商談の後に食べた方がいいと思う。

         豚大学④ 
         この焦げ目がいい
         豚大学⑤ 
         ごはんも立ってる

ここの豚丼は北海道・十勝地方の豚丼に分類されると思う。吉野家などの煮込んだ豚丼とは明らかに違う。以前、埼玉・春日部の「十勝亭」で食べた豚丼とほとんど同じ。具のほとんどないみそ汁を飲みながら、あっという間に平らげてしまった。普通に食べるなら「中」くらいがいいかもしれない。めでたさも中くらいなりおらが腹・・・。北海道の大地を感じさせる豚丼の味わい。A級ではなくB級の旨さ。極上の旨さではなく、カネ二つの旨さ。ちょうどいい具合に小腹を満たした彦作村長はツマヨウジをくわえると、サラリーマンで一杯のSL広場へ向かった。



本日の大金言。

十勝豚丼には野菜がほとんどない。そのためか女性客が少ない。タマネギでも敷いてくれると、女性ファンがもっと増えると思う。最もこれ以上元気になられると困る人もいるが。







                     豚大学⑥

江戸の串あんだんごと青豆大福

 人口81万人強の新潟市内にはしゃれたレストランが多い。山形の酒田市に行ったときにも感じたが、日本海の港のある街はどこか洗練されたバタ臭さがある。どこか海の向こうの街につながっているような、文化的な開放感がある。少なくても「ウマズイめんくい村」のようなド田舎ではない。2時間ほどあちらこちらと歩いていると、「新潟名物 笹だんご」の旗が見えた。そうだった。彦作村長の目的の一つは美味い和菓子の発見である。新潟には洋ばかりでなく和の世界のスグレモノもあるはずである。

           市川屋①  
           敷居が低い

外見はただの生菓子屋だった。だが、よく見ると看板には「創業 弘化4年」と表記されていた。弘化4年だとお?1847年?まさか・・・次に彦作村長の目が一点に釘付けになった。ガラスのケースの中に「串あんだんご」(1本80円)の貴重なお姿を発見したからである。だんごは4個ひと串。関東では普通の数だが、違うのはそれらが一つ一つこしあんで包まれていた。これは手作業でしかできない。日暮里の羽二重団子もこの古き良きスタイルだが、敷居と値段が高すぎる。村長は感動を覚えて、狭い店の中に入った。

          市川屋13 
          まさかの串あんだんご

奥から普段着の愛想のない中年女性が出てきた。アンガールズの山根かと思った(失礼)。
「あのう、この串だんごは村長が求めていたものです。その昔、故郷の会津では串あんだんごはほとんどこういうものでした。こうでなければいけません」
「他は知りませんが、ウチは昔からこのやり方なんですよ。ええ餅は新潟産のコシヒカリの米粉を使っていますよ。小豆は北海道産ですが」
女性は女将さんなのかもしれない。いぶかしげな表情。村長の怪しい風体を見ればそれも当然だろう。余計なことは話さない。一億総スマイルの2013年において、この愛想のなさが気に入った。ウソのスマイルよりホントの無愛想・・・。創業166年の無愛想・・・。これだこれだ。

          市川屋⑦ 
          こしあんで包んでいる

串あんだんご(1本80円)と笹だんご(5個700円)、それに村長のセンサーにビビビと来た「青豆大福」(1個115円)を買い求めた。笹だんご以外は「本日中に食べてください」とのこと。帰路、ウマズイめんくい村まで待てなくて、途中の関越自動車道の赤城赤城高原SAで賞味することにした。串あんだんごはたった5時間ほどしか経っていないのにやや固くなっていた。それとももともと固めなのか。その固めが好き嫌いの別れる所だと思う。こしあんは甘めで風味がいい。村長はもう少し餅が柔らかい方が好み。

         テイク2  
         これが青豆大福
          市川屋⑧ 
         粒あんもすごい

意外な発見は「青豆大福」だった。赤えんどう豆ではなく青えんどう豆というのは珍しい。餅が搗(つ)き立てのようで、実に柔らかくて伸びがあり、手にくっつくほど。村長は京都「出町ふたば」の豆餅を思い出していた。粒あんも秀逸だった。ここまで柔らかく風味豊かに作るには相当な熟練が必要だと思う。やや甘めだが、餅とふっくら炊いた青えんどうの塩分がいいハーモニーとなって、1+1が3の世界を形作る。犬も歩けば棒に当たる。村長も歩けば逸品に当たる。一つの発見だった。

          市川屋⑨ 
          笹だんご

ウマズイめんくい村に帰ってから賞味した「笹だんご」は会津の笹だんごより小ぶりで、よもぎがたっぷり入った餅と粒あん(こしあんもある)はいい風味で美味い。かなりのレベルだと思う。だが、後継者不足で3年ほど前に閉店してしまった会津の「山田だんご」の笹だんごほどの感動はなかった。



本日の大金言。

越後と会津はどこか通底している。歴史的なつながりも深い。海の国と山の国。作家の井上ひさしは「会津は東北ではない。むしろ越後だ」ということをエッセイで書いている。半分当たっているかもしれない。




                市川屋12 

元芸者置屋の仰天オムライス

国元・会津で童謡「月の沙漠」が流れる中、 87年の生涯を閉じた母の葬儀を終えた赤羽彦作村長は、その足で磐越自動車道を新潟へと向かった。新潟には食べ物の思い出がいっぱいある。幼少(ガキ)のころに小林デパート(現在は三越)のレストランで食べたランチの美味かったこと。古町で食べたソースかつ丼(昔はタレカツ丼とは言ってなかったと思う)、洋菓子、笹飴・・・。盆地の会津にとって新潟は開けた大都会で、江戸の昔から、北前船の寄港地として京都や大阪などから新しい文化や物産品がどんどん入り込み、明治維新後も日本海の重要な港として発展し、それ故に美味いものも多い。

彦作村長の目的は「Bar 町田」だった。ここのオムライスが絶品だという情報を友人から聞いていたからである。バーと言っても、いわゆる止まり木のある狭いバーではない。むしろレストランと言った方が近い。花街として発展した古町の中でもこのあたりは別格の一帯で、弘化3年(1846年)創業の老舗料亭「鍋茶屋 光琳」が当時の建物のまま営業をしていたりする。「Bar 町田」は路地を挟んでちょうどその「鍋茶屋 光琳」の斜め向かいに位置している。昭和初期に建てられたという古い木造二階建ての町家づくり。以前は芸者置屋だったという。

          バー町田① 
          この店構えに驚く

京の町家のように入り口は質素で、「町田」と書かれた表札があるくらい。メニューの書かれた小さな黒板が置いてなければ、ここがレストランバーだとは到底思えない。1階がカウンターのあるバーになっていて、2階がレストラン。感じのいい男性が案内してくれて、2階への木の階段をトントンと上る。サーモンピンクのテーブルクロスがかけられたテーブルが5つほど。マティスの絵がさり気なくかけられている。ランチメニューの中から「スパイシーオムライス」(コーヒー、紅茶付き 1155円)を注文した。

          バー町田② 
          窓から「鍋茶屋」が見える

「驚いたわ。バーというイメージとは全然違う。これだけの雰囲気でこの値段は何だか申し訳ない気がする。本日のランチコースくらい頼めばよかった。3150円だけど」
「いや、これでいいのだ。見栄は無用。雰囲気は二重丸だけど、味はまだわからないぞ。これからこれから」
「それもそうね。味が楽しみ、ウッヒッヒ」

          バー町田③ 
          水ではなくレモネードだった

雰囲気を楽しんでいると、オムライス用のスプーンとフォーク、それに水が運ばれてきた。水ではなく自家製のレモネードだった。ほんのりと甘くて美味い。続いて、「スパイシーオムライス」が登場した。あの日本橋「たいめいけん」のたんぽぽオムライス(1850円)と同じふわとろのオムレツが乗っかっていた。真ん中で割ると、溶岩のように半熟の中身が流れ出るスタイルだ。違うのはチキンライスではなくカレーピラフであること。自家製のトマトソースがオムレツの上にかかっている。香菜が彩りを添えている。見事な色合いと言わざるを得ない。

          バー町田④ 
          うーむ
          バー町田⑤ 
          むむむむ

卵はおそらく3個は使っているのではないか。スプーンで割ると、中から見事なふわふわ半熟卵が、露わ過ぎるほど妖艶な姿態を押し出してきた。生つばごっくん。カレーピラフはタマネギ、しめじ、人参、ピーマン、鶏肉が惜しげもなく混入されていて、多分コシヒカリとともにバターでいためられている。カレーの風味が立ち上がってくるが、味付けは薄味で、オムレツと自家製トマトソースとのバランスを考えた構成になっている。

         バー町田⑥ 
         真ん中で割ると・・・
         バー町田亜⑦ 
         カレーピラフの絶妙

「量的にもちょうどいい。新潟でこんなに本格的なオムライスを食べれるとは思ってなかったわ。私は大満足よ。コーヒーも一流ホテルのコーヒーと遜色ないわ。この値段を考えると、不満は言えない。東京なら行列のできる人気店になると思う」
「辛口でいうと、すべてが80点という感じ。確かに値段を考えると驚きだよ。次は夜来てみたいよ。1階のバーでワインかスコッチを楽しんでから2階で食事。それからおもむろに花街へと繰り出す。それからそれから・・・」
「勝手に妄想してれば」

村長の救いようのない頭の中を「月の沙漠」がよぎっていった。旅のラクダはどこへ向かうのか?



本日の大金言。

誰の人生にも終わりはある。誠に人生一瞬の夢。たった一つの壮大な物語。だが、悲しんでいる時間はない。




                   バー町田⑨ 

那須高原、涙の「特大かき揚げそば」

 国元に異変があり、3日ほどウマズイめんくい村を留守にしてしまった。その道々、東北道下り那須高原SAで休憩を取ることにした。時計を見ると正午過ぎ。朝から何も食っていない。彦作村長は簡単な食事を取ることにした。那須高原SAは東北道でも指折りの人気スポットで、食堂も充実している。白河ラーメンにするか豚ドンブリにするか迷っていると、「めんや 芽吹き」の前が高齢者の集団でにぎわっていた。

          那須高原SE⑨ 
          天国は遠い
          那須高原SE10 
          揚げたてとは

ここのおすすめは「特製旬かき揚げそば」(600円)。そのかき揚げの巨大なこと。日本橋の「よもだそば」も顔負けの大きさだった。しかも、目の前でどんどん揚げている。作り置きではなく、揚げたてというのが気に入った。サービスエリアとひと口に言っても、当たりはずれがある。見かけはよくても、食べてみると、値段ばかり高くて、ガッカリさせられることも多い。

         那須高原SE④ 
         お待ちィ~

しばらくの間、かき揚げを揚げているおばさんの立ち振る舞いを見ていて、これはハズレではない、と確信を持った。番号を呼ばれて、目の前に置かれた「特製旬かき揚げそば」はアンバランスだった。かき揚げの巨大さとかけそばの地味なシンプル。だが、ツユは鰹の出汁が効いていて、地元那須の醤油を使った返しとの相性は悪くない。やや甘めだが、それなりに旨い。ツユが少ないのが少々残念だが、そばも地粉を使っているのだろう、挽きぐるみ風の黒っぽい細打ち麺だった。こちらもまずまずの旨さ。

          那須高原Se⑦ 
          ツユは少ない
          那須高原SE⑥ 
          かき揚げは巨大

やはり主役はかき揚げの天ぷら。タマネギとニンジン、それに干しエビという構成。旬の野菜を使っているという。直径12~3センチ、厚さが5~6センチはありそう。そばの上の乗っけると、下のそばが隠れてしまうほどだった。揚げたてということもあるかもしれないが、カラッとしていて、しかも間に空気がきちんと入っていて、箸を入れると、食べやすく崩れる。あの「よもだそば」のかき揚げより食べやすい。もっとも「よもだそば」ほど独特の旨味には欠けるが。

          那須高原SE⑧ 
          半分にしてもこのデカさ

高齢者の集団やファミリーに混じって、那須高原の清浄な空の下、「特製旬かき揚げそば」を賞味できる幸せ。生きていることの現実をしみじみと味わう。何も足さず何も引かず。最高級の旨さとは言えないが、東北道のSAでこれだけの味を打ち出しているのはB級グルメファンにとっては悪いニュースではない。去来する様々な思い。彦作村長は箸を置くと、風雲急の国元へと急ぐことにした。



本日の大金言。

高速道路は今や旨いものの宝庫と言える。デパ地下にも負けないほど。立ち食いそばの進化にも目を見張らされる。それだけで一冊の本が書ける。




                   那須高原⑨ 

銀座で「広島お好み焼き」と格闘

 日本吟醸酒協会主催の新酒祭りに出席するために久しぶりに花の銀座に降り立った。腹が減っては戦が出来ぬ。どうせグテグテに酔っぱらってしまうのである。少々遅い昼飯を取ろうと、銀ブラを楽しんでいると、「広島ブランドショップ TAU」というビルが目に入った。最近は「観光物産センター」などと言わずに、アンテナショップとかブランドショップとかいうらしい。ちなみに「TAU(たう)]とは広島の方言で「届ける」という意味だとか。意味が届いていないと思うのだが。

          三匠① 
          銀座の穴場

好奇心が人一倍の彦作村長がビルの中に入ると、「広島お好み焼き 三匠(さんしょう)」という看板が見えた。2階へと通じる階段。大阪などでは何度もお好み焼きを食べてはいるが、本格的な広島お好み焼きは食べたことがない店の入り口には女性客が4~5人ほど並んでいた。決まった。「美味い店には女が寄ってくる」というグルメの法則を思い出したからだ。

          三匠②  
          値段は高め

右手は小さなカウンター席、左手奥は8人ほど座れるステーキ屋のような鉄板焼きのカウンター席。黒いバンダナとシャツ姿のスタッフが3人ほど鉄板の上でお好み焼きを焼いていた。年配の男性がチーフのようで、その鮮やかな手さばきにしばし見とれてしまった。メニューの中から一番安い「スタンダード」(920円)を注文した。肉、玉子、イカ天、そば入りと表記されている。この店は去年の7月にオープンしたという。

          三匠③ 
          労力と時間

薄い小麦粉のタネを伸ばして、それとは別に焼きそばを炒め、キャベツともやしを乗せて、それを蒸すようにしながら、薄焼き卵を作って合わせる。豚の三枚肉と広島産のカキも乗せている。見ているだけでかなりの手間ひまと時間がかかるのがわかる。「広島産カキ入り」(1400円)がうまそうに焼き上がっていく。ボリュームも凄いが値段も高い。20分はかかっている。隣の客に先に「スタンダード」が置かれた。美味そうに食べ始めている。

年配のチーフが「はいっ」と村長の目の前に「カキ入り」を置いた。
「あれっ、スタンダードを頼んだのですが?」
「えっ、カキ入りでしょ?」
どこでどう間違えたのか、彦作村長のアクセントがおかしかったのか、目の前に来たのは「広島産カキ入り」。え~い、しょうがない。これがホントのカキイレドキダ。480円ほど高いが、うまそうだったので、甘んじて受けることにした。

          三匠④ 
          広島産カキ入り

ふっくらした本場「広島産のカキ」が5個ほどいい焼き色で乗っかっている。スタンダードのお好み焼きにプラスされたもの。ソースと青のりと鰹節の粉がかかっている。焼きそばがパリパリ状態で控えている。ヘラでまず4等分にしようとしたが、うまく切れない。蒸し焼きにされたキャベツが分厚い層になって、ヘラの進出を許さない。技術が未熟なのはわかっている。何とかかんとか切り離して、口中へと運ぶ。鉄板の熱さがそのまま伝わってきて、熱い。熱いがうまい。うまいが熱い。ふうふうヒイヒイ。その繰り返し。

          三匠⑦ 
          見事なカキ
          三匠14 
          何層にもなっている

お好み焼き自体には味はない。ソースとマヨネーズを多めにかける。悪くない味わい。次第に疲労を感じてきた。カキのうまさは本場ならではのもので濃厚な旨味を感じる。目の前で料理が仕上がる光景を見れるのも素晴らしい。だが、それ以外は驚くほどの感動がなかった。料理時間と食べ終えるまでの時間がかかり過ぎると思う。

ここは忙しい人には不向きかもしれない。焼きそばの麵まで、注文してから茹でるというこだわり方は凄いと思う。「本場のやり方をそのまま銀座で」というのがこの店のポリシーのようで、そこには素直に敬意を表したい。

          三匠⑧ 
          マヨネーズをかける

だが、しかし。それにしても値段が高いと思う。場所が銀座とはいえ、値段も本場並みに近づけることはできないものか。少なくとも「広島の物産を広める」のが目的の一つなら、一番安い「スタンダード」をせめて700円台にしてほしい。それをベースにしてプラスしていく。お好み焼きは元々がB級グルメで極めて庶民的なものだった。何よりもカキイレドキを間違えてはいけないと思う。あまりのボリュームと熱さとの格闘でヘトヘトになった村長は1400円ナリを払うと黙って外に出た。頭の上で、太陽が「大バカものめ」と叫んでいるようだった。



本日の大金言。

関西お好み焼きと広島お好み焼き。その違いは混ぜるか、混ぜないかだという。浪花文化と長州・毛利文化の違い?




                     吟醸酒祭り 

「天然物たい焼きカフェ」の意外な場所

趣味が高じて 自分で粒あんを作り始めている彦作村長。コーヒーを一日3杯飲まないと不機嫌になる村民2号。ウマズイめんくい村の平和は本日も波乱含みながら、辛うじて保たれている。その怪しい村民約2名が埼玉の北本市へ旅することにした。何故に? ここにコーヒーが埼玉でも指折りの美味さで、しかも天然物たい焼きを出してくれるカフェがあるという極秘情報を聞きつけたからである。平和の維持に食べ物は欠かせない。

          からく② 
          ここは軽井沢?

人通りの少ない北本駅西口「ファッションセンターしまむら」のあたりをウロウロしていると、村民2号が声を上げた。
「あれじゃない?タイヤキっていう旗みたいなのが見えるわ」
近づくと小さなテラスがあり、「カフェ タイヤキ Karaku(カラク)」という看板。軽井沢とか那須あたりにありそうなコジャれた雰囲気の店だった。テイクアウトもしているようで、たい焼きを待つ客が3~4人ほどいた。驚いたことに女性職人が一丁焼きでたい焼きを焼いていた。店内には4人ほど座れるカウンターがあり、テーブル席が3つほど。多分夫婦なのだろう、カウンターの前で男性がいい匂いとともにコーヒーを立てていた。

満席だったので、10分ほど待って、テーブル席に腰を下ろした。村長は、「タイヤキセット」(500円)、村民2号は「おからシフォンケーキセット」(650円)を注文した。一丁焼きのたい焼きとコーヒーを売り物にしているカフェは珍しい。しかも埼玉の果て(失礼)のかような場所で。一丁焼きは天然物とも言われ、金型で同時に何個も焼く養殖ものと区別されている。人形町「柳屋」や麻布十番「浪花家総本店」などと同じ昔からのやり方。一個一個手作業で焼くので、手間ひまとそれなりの技術がいる。

          からく⑦ 
          異種格闘技戦?

コーヒーは自家焙煎で、本日のコーヒーは「アフリカのウガンダコーヒー」だった。ウガンダのコーヒー? コーヒー好きの村民2号も初めてのコーヒー。たい焼きは注文してから焼き始める。10分ほどで尻尾の大きい天然物たい焼きが運ばれてきた。アツアツなのでふうふうしながら、二つに割ってみると、表面のパリパリと中のモチモチ感がよくわかる。皮がいい。粒あんは尻尾まできちんと入っていて好感が持てる。粒あんの量としては人形町柳屋ほどではないが、女性にはちょうどいい量かもしれない。

         からく⑧ 
         見事な天然物たい焼きクン
         からく10 
         皮とあんのバランスがいい
         からく15 
         お呼びでない?

粒あんは自家製ではなく、東京の製餡業者に特注で作ってもらっているという。ふくよかな風味があり、甘さがちょうどいい。
「この店はコーヒーの種類がすごい。凝り具合がメニューでわかるわ。ウガンダは苦みや酸味がとても少ない。自然なやさしい味で有機栽培の豆なんじゃないかしら。私はもう少し苦味の強いほうが好み。シフォンケーキはおからとアーモンドの粉を使っていて、パサパサしているけど、しっとり感もある。しっかり作っていて、私の好みの味だわ」
「本音で言うと、粒あんが自家製でないのがちょっと残念。手間ひまと時間はかかるけど、粒あんはたい焼きの命だからね。これだけこだわった店なのに、そこだけがちょっとなあ」
「いろいろ事情があるのよ。ウマズイめんくい村にも事情があるように」
「財政事情が悪化しているってこと?」
「ギリシャみたいなものかもね。歳出削減しないと、あっという間に破たんするわよ」
「・・・・・」



本日の大金言。

美味いコーヒーと旨い鯛焼き。発想さえ変えることができれば、両者は共存できる。固定観念に未来はない。




                からく①

下町「石窯カレーパン」の問いかけ

 カレーパンの美味いパン屋さんはどこの街にも一軒くらいはあるが、ピロシキのように油で揚げるというのが共通している。カレーパンの元祖といわれる東京・森下「カトレア(旧名花堂)」のカレーパンがそのルーツとも言われている。彦作村長は、浅草から入谷を散策中に「石窯パン工房 グーテ・ルブレ」という看板を見つけた。東京の下町も下町。人通りは少なく、すぐ近くには入谷市場もあるが、「とにかく客がいない。もうここらでは商売ができないよ」(文具店店主)という嘆きも聞かれるほどの閑散とした通り。

          グーテ・ルプレ① 
          下町の本物めっけ!

だが、その「石窯パン工房 グーテ・ルブレ」は買い物客でにぎわっていた。地元では大人気のパン屋さんだ。ヨーロッパの古いパン屋さんのような佇まいに、村長の錆びれつつあるセンサーがビビビと反応した。入ると大きなスペイン製の石窯が目に入った。フランスパンや食パンからメロンパンなどの菓子パンまで実にざまざまなパンが「焼き立て」という表示とともに美味そうに並べられている。すべて天然酵母で発酵したパン生地を使用しているという。それを石窯で焼く。値段が安めというのも、高いパン屋が多い中で、これだけの客を集めている大きな要因だとすぐに理解できる。

          グーテ・ルプレ③ 
          知る人ぞ知る

村長はパンの種類の多さに驚いたが、この店の人気の一品に目が行った。「石窯カレーパン」(180円)。このカレーパンは知る人ぞ知るカレーパンだ。油で揚げずに石窯で焼くというのも珍しいが、カレーのルーがカレーの名店「デリー」のカシミールカレー(激辛で有名)を参考にして作ったという点も目を見張らされる。まずはこれをゲット。

          グーテ・ルプレ② 
          爆発だあ

村長はさらにもう一つのカレーパン「カリーボンバ」(250円)にも目を付けた。「半熟たまごが丸ごと入ったカレー爆弾」というキャッチフレーズが気に入った。「かぶりつくと玉子の黄身が飛び出ることがあります。ご注意ください」という注意書きもシャレている。残りは1個。これもゲット。こちらは油で揚げられていて、見た目は普通のカレーパンだった。

ウマズイめんくい村に持ち帰って、少々時間が経ってからの賞味となった。レンジでチンしてみた。「石窯カレーパン」は表面がパイ生地のようだが、中は天然酵母で発酵しているからだろう、伸びやかでもっちり感が半端ではない。かなり苦労して手で割ると、牛肉と豚肉のひき肉とタマネギ、それに強烈な香辛料の混じったこげ茶色のルーがどっかと鎮座していた。「ナマステ(こんにちわ)」とインド美女が微笑んだ気がした。下町のインド美女と出会えるとは・・・。

          グーテ・ルプレ① 
          パン生地が違う石窯カレーパン
          グーテ・ルプレ④ 
          ルーも違う

ガブリと行くと、かなりの辛さ。ジワジワくる辛さ。デリーのカシミールカレーほどではないが、強烈な香辛料ではある。だが、その強烈さがパン生地のもっちりした甘さと溶け合うと、厚みのある複層的な旨味へと変身していく。しばしシビレるような快感に酔い痴れる。パン生地に干しブドウが練り込められているのに気が付いた。この干しブドウは不要かもしれない。村長は違和感を感じたが、これがいいというファンも多い。

続いて賞味した「カリーボンバ」もビックリもの。カレーのルーは普通の甘めのルーで、「石窯カレーパン」ほどのインパクトはない。だが、半熟卵がホントに丸ごと1個入っていたのはちょっとした驚き。ムニュッと溶岩のように流れ出てきそう。これはアイデアものだと思う。こちらもパン生地の旨さがひと味違う。1個250円というのはこの店にしては高めの設定だが、内容を考えると、これはこれでありだと思う。

         グーテ・ルプレ⑤ 
         こちらはカリーボンバ
         グーテ・ルプレ⑥ 
         半熟卵がとろ~り

パン好きの村民2号がため息をつきながら言った。
「カレーパンより私は天然酵母の田舎パンが気に入ったわ。ハーフサイズで190円というのも安い。こういう本物のパン屋さんが下町にあって、地元に愛されている。そこがすごいと思う。青山とか渋谷とかじゃない。本物は場所を選ばないということね。村長も埼玉のへき地でへこんでちゃダメよ」
恐れ入谷の村民2号、である。



本日の大金言。

グーテ・ルブレに行くと、パンについていろいろと考えさせられる。パンの美味さと値段の関係とか。パンと街の文化についてとか。本物とモドキの差についてとか。人はパンのみにて生きるにあらず。パンは人のみにて生きるにあらず。





                     グーテ・ルプレ⑥ 

これはうどんか?「川幅うどん」の仰天

 ひと口にうどんと言ってもその形も中身も実に様々。このブログでも幾度か取り上げたが、絹糸のような秋田の稲庭うどんからコシのない伊勢うどんまで人間以上にバラエティーに富んでいる。彦作村長はそのうどん界の中でもギネス級のうどんを食べてみようと思い立った。B級グルメでも売出し中の埼玉・鴻巣(こうのす)の「川幅うどん」である。

          馬力屋② 
          川幅うどんの人気店

江戸時代から中山道の宿場町として栄えた鴻巣市。徳川家康も鷹狩でちょいちょい来ていたというこの街に、彦作村長と村民2号の怪しい二人がポンコツ車を飛ばしてやってきた。目指すは川幅うどんでは人気トップの「手打ちそば 馬力屋」。県道27号線沿いに大きな看板とともに、いい雰囲気の一軒の古民家が。駐車場は混み合っていて、隣のセブンイレブンの駐車場まではみ出すほどだった。

           馬力屋① 
           うろんな奴め

「川幅うどん」とはどこにも書いてない。入り口には下足置きがあり、よっこらしょと腰を下ろして草鞋(わらじ)を脱ぐ。何やら老舗旅館にでも上がるような気分。若い女性に案内されて右手の広い座敷へ。自然木のテーブルが8つほど。床の間には鎧(よろい)が置かれている。お品書きを見る。そばとうどんは書かれているが、川幅うどんとはここにも書かれていない。店を間違えてしまったか、やや不安になる。

          馬力屋③ 
          川幅の文字がない

「川幅うどんを食べたいんですけど、お品書きにも載ってないようで・・・」
と村長。
「あっ、大丈夫ですよ。川幅で、と言っていただければオーケーです。川幅は人気があって、なくなることもあるんですよ。限定メニューなんです」
女性店員の話でやや納得。だが、しかし。これはメニューに書くべきではないだろうか。女性店員の感じがよかったので、ま、よしとしよう。

          馬力屋④ 
          お成り~ィ

一番人気の「鴨汁うどん」(850円)を川幅うどんで注文することにした。待つこと20分ほど。ややシビレを切らしかけた途端、ざるに乗った川幅うどんがやってきた。噂には聞いていたが、実際に目にするとビックリする。グレーがかった小麦色のそれは、幅は優に4~6センチはある。厚さは2~3ミリほど。馬室産地粉を使った手打ちなので幅は揃っていない。きしめんのお化けというか、ゲゲゲの鬼太郎の一反もめんがスヤスヤ眠っているよう。その自然なお姿は悪くない。

          馬力屋⑤ 
          うどんだって?
          馬力屋⑦ 
          鴨肉のつけ汁

予想外な美味さだった。見た目からは大味だろうと思ったが、もっちり感とコシの強さが見事に同居している。長ネギと鴨肉それにゴボウのささがきで作ったつけ汁は熱々で、鴨肉の脂がキラキラと浮いている。やや甘めだが、川幅うどんとの相性がいい。すするというよりは「かじって噛む」と言った方が近い。

          馬力屋⑥ 
          ひと口とはいかない

「この川幅うどんがうどんの世界に一石を投じたのは間違いない。正直言って、話題作りで単に奇をてらっただけかと思っていたよ。うどん自体に旨味があるのが人気の秘密だね。食べるのに少々苦労はしたけど、思ったほどではなかった。これは村長も見誤っていたな。でも量がちょっと多すぎると思う」
「こんなによく噛むうどんは初めてよ。でも、うまい。来るまで随分と時間がかかったのは茹でるのに普通の倍くらいかかるからもね。確かに量も随分多い。見た目よりもお腹にずっしりくる。これでまずかったら、もう来ないと思ったけど、また来たい。今度は普通の田舎うどんを食べてみたいわ」
村民2号が満足げにお腹をポンポンと叩いた。
これで馬力が付いたら、そのエネルギーがどこへ向かうのか、いささか気になった。



本日の大金言。

奇をてらうB級グルメ戦線。それはそれで否定するつもりはないが、味こそが基本の基本だと思う。一度賞味してからリピーターになるかどうか。B級グルメ戦線も曲がり角に来ているのではないか。




                    馬力屋11 

明治創業のベラボーなカツカレー

 日本橋小網町と言えば、東京証券取引所のある兜町に隣接した地帯。茅場町と人形町にも近く、日本橋高島屋からも歩いて15分ほどの距離。花のお江戸のほぼド真ん中といってもいいところ。ここに明治22年創業の洋食屋がある。しかもこの洋食屋、ただの洋食屋ではない。舌代が驚くほど安い。「カツカレー」(530円)、「ハンバーグ」(480円)「ハヤシライス」(450円)などなど、タイムマシンで30年ほど前の昭和に戻ってしまったよう。いい意味でベラボーな料金と店構えで営業を続けている、れっきとした現役の洋食屋さんなのである。

          桃乳舎② 
          かような店があったとは・・・

「平成のガラパゴスだよ。株屋のボクでさえ最初は驚いたくらいだからねえ。喫茶・軽食って看板を掲げているのも昔のまま。店名が『桃乳舎』って一風変わった名前でね。ま、百聞は一見にしかず。一度行ってみるといいよ」
友人の証券マンからこの店の存在を聞いたとき、正直、きっと味はイマイチなんだろうな、と思った。日本橋周辺にはかの池波正太郎が通った「たいめいけん」(昭和6年創業)や「新川 津々井」(昭和24年創業)など老舗の美味い洋食屋が結構ある。いずれも値段もそれなりで、突如、ビンボーになってしまった彦作村長にとっては敷居が高すぎる。

         桃乳舎③ 
         日本橋とは思えない

久しぶりに日本橋に足を延ばしたついでに、ふと思い出して、その「桃乳舎(とうにゅうしゃ)」を探してみようと思い立った。時計を見ると午後1時半すぎ。茅場町から鎧橋を超えた当たりをウロウロしていると、「桃乳舎」のレトロな看板が見えた。わざとらしく作ったレトロではない。昭和8年に建てられた古い洋館で、入り口には自転車が数台置いてある。少々古ぼけたショーケースがあり、カレーライス(450円)やポークカツ(580円)、ハンバーグ(480円)、コーヒー(250円)など主なメニューが並んでいる。コカ・コーラまであるのが、昭和世代にとっては胸にぐっとくるものがある。

         桃乳舎④ 
         このシンプル

店内はよく言えば無駄なものがないシンプルな、見方によっては田舎の殺風景な食堂のような質素なテーブルと椅子。外連味(けれんみ)のない、ある種の昔の東京下町本来の匂いがする。化粧っ気のない感じのいい女性が注文を取りに来た。「ランチ」はすでに売り切れていたので、「カツカレー」(530円)にした。奥が厨房になっているらしく、そこに白いコック帽とコック服のシェフの姿が見えた。軽い驚きだった。ニューオークラのコックと同じような見事な佇まいだったからだ。

            10 
          吾輩はカツカレーである

注文してからトンカツを揚げているようで、いい匂いが質素なテーブルにまで漂ってくるよう。12~3分ほどで「カツカレー」がやってきた。大きな白い皿に熱々のご飯が盛られ、揚げたてのトンカツ、その上からカレーのルーがかかっている。カレーの具はタマネギしか見えない。トンカツの肉は厚くはないが、コロモが実にサクサクしていてジューシー。ご飯がふっくらと炊き上げられていて、その目立たないこだわりに感心させられた。

         テイク2  
         昭和のよき香り
         桃乳舎⑧ 
         肉は薄いが・・・

カレーはやや甘めでなつかしい昔のカレー。小麦粉とカレー粉をバターでじっくりと炒めたようなやさしい味である。香辛料をあまり使っていないのも村長の好みである。福神漬けの自然な美味さも好感が持てる。フツーの美味さをフツーにやっている。その奥にある意志・・・。

ただ一点、カレーのルーがもう少し多いといいのだが、それもこの値段を考えると、あまりにぜい沢な注文かもしれない。東京のど真ん中とも言える場所に、かような洋食屋がさり気なく存在していることに正直驚いた。改めて世の中は広いと思わずにはいられない。

          テイク3                     オールライス?

出がけに、この店の「桃乳舎」の由来を尋ねたら、意外な返事が返ってきた。
「創業当時は牛乳屋だったんですよ。明治の頃の話ですけど。その時の名前をずっと使っているんですよ」
「桃乳」という語感に惹かれたミーハーな村長だったが、そのような歴史があったとは。今でも証券マンばかりでなくよき時代の常連客も多いという。アベノミクスを掲げるどこかの首相はこの店を知っているのだろうか? 



本日の大金言。

東京も捨てたものではない。マスコミがあまり取り上げない、いい意味での職人が今日もどこかでいい仕事をしているかもしれない。



                     桃乳舎12

鯉のぼりと「元祖若鳥の唐揚げ」

 長いGWも本日で終わり。高速道路の大渋滞のニュースを見て、彦作村長はついこの前までの気分を思い出していた。宮仕え時代、世間ほど連休は取れなかったが、それでも最終日は「サザエさん症候群」みたいな気分になったりもした。そんなときは、空に向かって伸びでもして、無理やりにでも頭を切り替えることが何よりも大事です。村長は頭の切り替えがなかなかできなかったので(笑い)。

          加須鯉のぼり④ 
          うまそうな匂いが・・・

で、本日はGW中のB級グルメネタ。新聞で「加須の百メートル鯉のぼり」のニュース予告を見て、ウマズイめんくい村のご一行約2人で埼玉加須市の利根川沿いの会場へとポンコツ車をぷかぷか走らせることにした。彦作村長は約10年ほど前に一度見たことがある。全長100メートルのジャンボ鯉のぼりをクレーン車で揚げるという壮大なイベントだ。そのときは天候がイマイチだったが、今回は見事な晴天。だが、肝心の鯉のぼりがクレーンに引っかかって、一部が破けてしまい、午後の部はその修理のために約1時間遅れで、午後2時20分、ついに巨大な鯉のぼりが青空にひるがえった。

          加須鯉のぼり⑤ 
          アゲアゲ・・・
          加須鯉のぼり⑨ 
          みたらし団子も空へ

利根川の土手には大勢の見物客が訪れ、地元や全国からの出店が並んでいた。「横手焼きそば」などというテントまである。いい匂いがあちらこちらに充満していた。これだこれだ、この祭りの雰囲気がたまらない。
「お腹がすいて、もう歩けないわ」
美熟女の村民2号が鯉のぼりを見上げながら、土手にドテッと座り込んだ。鯉のぼりを見上げる丸大ハム・・・一瞬、そんなイメージが浮かんだが、それは間違っても言葉に出せない。
村長は目を付けていた地元の「元祖若鳥の唐揚げ」(1本400円)と「みたらし団子」(1本50円)を買い求めることにした。缶ビール(300円)も忘れない。

          加須鯉のぼり①  
          元祖の味? 
          鯉のぼり4 
          ガブリと行く

「元祖若鳥の唐揚げ」は地元加須では有名な「長沼精肉店」のもの。目の前でラードで揚げている。どんどん売れていく。唐揚げというよりもも揚げと言った方が近い。小麦粉や片栗粉をまぶしていない。たぶん醤油とみりんと何か隠し味のタレに漬けていると思う。まさに肉屋さんならではの豪快な唐揚げ。かなりデカい鳥のもも肉を慣れた手さばきで揚げていく。「元祖」の意味を聞くと、約53年前に創業した初代(現在は3代目)が加須で初めてメニューにしたときのものとか。衣を付けないというのは珍しい。

          加須鯉のぼり⑦ 
          このぜいたく・・・

「美味いわね。肉がジューシーで、味付けがいい。私が作る唐揚げとは全然違うけど、これだけのボリュームはあまりないんじゃないかしら。値段もいいけど」
「店では1本350円らしいよ。揚げたてということもあるかもしれなけど、確かにいい味だ」
「鶏肉は国産かしら。でも、国産ならこの値段では無理かも」
「ブラジル産らしいよ。いま日本の唐揚げの鶏肉はほとんどブラジル産だよ。中国産はちょっと怖い」
「そう言えば、サッカー選手の太ももみたい。美味いはずよ」
「1本50円のみたらし団子も値段のわりにはうまい。だんごチェーン・たかののものだよ」
「ジャンボ鯉のぼりと鳥の唐揚げとだんご。この組み合わせはなかなか味わえないわ。私も青空を泳ぎたい気分」
彦作村長は自分のことは棚に上げて、村民2号が青空を泳ぐ姿を想像することができなかった。


本日の大金言。

GWの過ごし方はいろいろだが、川べりに寝っ転がって、ただポカンと空を眺めるのも、たまにはいいかもしれない。・・・草に寝ころびて空に吸われし十五の心(啄木)。



                       加須鯉のぼり10 

恐れ入谷の絶品油そば

 鬼子母神で知られる東京の下町・入谷。今ではほとんど死語になってしまったが、かつては「恐れ入りました」というところを、しゃれっ気を交えて「恐れ入谷の鬼子母神」などと言ったものだ。「その手は桑名の焼き蛤」なども懐かしいセリフで、こうした日本の言葉遊びとユーモアの伝統は、「男はつらいよ」で渥美清演じる寅さんの口上くらいでしか聞く機会がなくなってしまった。「当たり前田のクラッカー」も最近は耳にしない。「東大生が食ってもハンバーカー」てえのはどうだい?(座布団一枚取り!)。

で、本題。GWの谷間、彦作村長はスカイツリーでにぎわう浅草に背を向けて、入谷方面へと歩くことにした。どんどん人が少なくなり、遠くに見えるスカイツリーがほどよい大きさになったあたりで、「油そば」の幟(のぼり)が視界に入った。「万人力(ばんにんりき)」という油そば専門店だった。時計を見ると午後3時ちょい過ぎ。

         万人力① 
         めっけ!

油そばはこれまで何度か食べている。最初は油でギトギトしているのかと思って敬遠していたが、伊勢うどんの中華版のような深いまろやかな味わいに魅了され、思い出しては食べるようになっていた。
「万人力」は田舎家のような造りで、コの字型のカウンター席のみ。15人ほどしか座れない小さな店だった。ようかん色の木のカウンターは悪くない。BGMはたまたまかもしれないが、津軽三味線が流れていた。客は他に2人ほど。黒いお決まりのTシャツ姿の若い女性スタッフ(アルバイト?)の対応はいい。明るく健気に一生懸命という感じ。奥が厨房になっていて、客席からは見えない。

          万人力③ 
          シンプルな油そば

「油そば」(並盛り140グラム 600円」とトッピングに「半熟卵」(100円)を注文。大盛り(210グラム)でも同じ値段。待つこと7~8分ほどで「半熟卵」と「油そば」の順で登場した。真っ白な磁器製のドンブリ。旨そうなチャーシューが3枚ほど、それにシナチク、刻み海苔(のり)。そのすぐ下にお湯を切ったばかりの小麦色の極太縮れ麵がゆったりと控えている。麵は浅草開花楼の特注麵だそう。

          万人力12 
          油そばの作法

油そばは北多摩東部地方が発祥の地とされている。「ぶぶか」や「珍々亭」が有名だが、彦作村長は密かにルーツは中国四川の汁なし担担麺(たんたんめん)にあるのではないかと思っている。汁なし担担麺を食べたときにそう直感したというだけだが。

          万人力④ 
          熱々のうちにかき混ぜるべし
          万人力⑤  
          旨味が立ち上がってくる

油そばの食べ方は麺の底にある醤油ダレを絡ませることから始まる。みるみるいい色合いになっていく。これでまずひと口。やや濃いめの味。だが、万人力の醤油ダレは隠し味の一つに鰹節も入っているのだろう、濃厚だがやさしいまろやかな味わい。麺によくからみついて、脂分のテカリとともにいい匂いを半径70センチに放ってくる。麺のもっちり感がこれまで彦作村長が食べた油そばの中でも特出している。素直に美味い。シナチクとチャーシューも柔らかく煮込まれている。チャーシューはもう少し厚いほうが村長の好みではある。

          万人力⑦ 
          ラー油と酢をかける
          万人力13 
          半熟卵もかき混ぜる

ラー油と酢をそれぞれひと回り半ずつかける。さらに、半熟卵を入れてぐいぐいとかき混ぜる。店員さんが「ニンニクも入れるとさらにおいしいですよ」と教えてくれたが、夕方からペンクラブの会議と飲み会があるので、ぐっと我慢することにした。それでもまずは絶品といえる味だった。ラー油と酢が味にきりっとした変化を与えている。半熟卵が濃厚なタンパク系の甘みをさらに加える。これはこれで美味い。村長の胃袋に満足という言葉が広がった。

          万人力⑨ 
          二度楽しめる

スカイツリーの恩恵も届かない入谷に店をオープンしたのは約5年前。店主が油そばの老舗「東京麵珍亭本舗」に通い詰めて研究に研究を重ねてたどり着いた味だという。人通りの少ない入谷でスタートして少しずつファンも増えている。先月にはついに文京区千石に2号店も出した。有名店の一角に旗を揚げる日も近いかもしれない。恐れ入谷の油そば、である。



本日の大金言。

スカイツリーにばかり目を向けていると、すぐそばの宝石に気づかない。人の行く裏に道あり花の山。



                    万人力10 

神田「みますや」の牛煮込み

 神田「みますや」と言えば、東京でも有数の老舗居酒屋。創業が明治38年というだけでも凄いが、東京大空襲の難を逃れて、建物が古いまま残っているというのも凄い。神田須田町や淡路町周辺(旧連雀町)には「まつや」や「竹むら」など江戸東京の面影を残す店が今も暖簾(のれん)を守っている。このあたりをうろついているだけでも、自分が何やら時代劇の中にでもいるような気分になってくる。

          みますや    
          ま、入っておくんなさい

現在の「みますや」は関東大震災の後、昭和3年に建て替えられたもの。見事な縄のれんと「どぜう」と書かれた赤ちょうちん。夕暮れどき、灯りの付いた店の前でしばし立ち止まる。そのまま透明人間になって、ずっと見ていたい気分。ここはどこ?わたしは誰? 浅草の「駒形どぜう」にも通じる江戸から明治の匂いがぷんぷん匂ってくる。銭形平次が小銭を懐にぬっと出てきそうな雰囲気。

ギョーカイ仲間とここで一杯やることになり、時間前にふと食べログなどを見たら辛らつなことが書き込まれていた。京都にお住いのグルメ仙人・調布先生もかつて、「ああ、みますやね。あんなとこに行く人の気がしれません。老舗の看板にあぐらをかいているだけ。ポテトサラダなんかどうしようもない」などと辛口だった。「みますや」でポテトサラダというのもどうかと思うが、彦作村長も「ひょっとして嫌な老舗かも」とそれなりに構えて行った。

          みますや④ 
          東京センチメンタル

店に一歩踏み込むと、三和土(たたき)になっていて、両側が小上がり、奥手にも座敷がある。壁や天井、あかり・・・すべてに江戸情緒が滲みこんでいるよう。これだけで入場料を払いたくなる。靴を脱いで小上がりの年季の入った和テーブルに座り込む。左上に黒のメニュー木札がずらりと並んでいる。近眼で乱視の村長にとって、これは苦しい。
          
お品書きを開いて、まずはビール。肴(さかな)は迷った末に「牛煮込み」(600円)にした。同時に「熱燗(あつかん)」も頼んだ。灘の「白鷹」(1合400円)を2合徳利で。「牛煮込み」にしたのは、村長の好きな北千住「大はし」の「煮込み」と比べてみようと思ったからだ。「大はし」も創業は明治の中ごろという老舗居酒屋である。残念ながら「大はし」は新しく建て替えているので、建物では「みますや」には敵わない。
         
          みますや③ 
          只者ではない

「お通し」はもやしのナムル風和え物。これが美味い。ダシのよく効いた甘辛醤油とよく馴染んでいる。そのさり気ない奥深い味。最初の一撃で食べログなどの辛口批評がどこかへと吹っ飛んだ。老舗に胡坐(あぐら)をかいているとは思えない。女性店員の対応も機敏で外連味(けれんみ)がない。うーむ。一部の評判と違うではないか。それとも村長がヘンなのか。

          みますや⑤ 
          意外な牛煮込み
          みますや⑥ 
          銀シャリがほしい?

「牛煮込み」は想像とは違っていた。牛スジをじっくり煮込んだもので、飴色のタマネギのお姿も。見ようによっては「すき家」の牛丼の具のよう。だが、しかし。吉原の太夫のような威厳もある。身を横たえて、「ぬしさまはわっちをどうなさるおつもりでありんすかい?」。ひと口。甘辛のすき焼きの旨味。スジ肉をここまで柔らかく煮るのはやはり伝統のワザがあるのだろう。にじみ出ている脂のほのかな甘みも感じる。生姜のかすかな風味も混じっている。北千住「大はし」の煮込みも絶品(味は濃い)だが、これもこれで美味い。だが、これは肴というよりご飯の上に載せて食べたくなる味だと思う。純粋に肴としては「大はし」の方が村長の好みではある。

熱燗でノドをうるおしながら、口中で「牛煮込み」と褥(しとね)を共にする。その訳ありの甘い至福。徳利がどんどん横になっていった。「みますや」の夜が時を超えて沈んでいった。



本日の大金言。

自分の目と舌で確かめること。そこから始めなければならない。縄のれんの奥の迷路。




                みますや① 

ツツジと演歌、館林超B級の味

GWである。 花のお江戸から久しぶりに娘のキオが帰ってきたので、「どこへ行きたいか」と聞くと、「館林のツツジを見たい」。おお、成長したのう。ちょっと前なら、ウインドショッピングをしたいだの、TDLだのとぬかしていたのに、花鳥風月のよさがわかってきたか。そう言えば幾分、お江戸で揉まれたのだろう、顔がきりっとして、村民2号が「私に似て、いい顔になってきたわ」とポツリ。

東武伊勢崎線で館林へ。車内で帽子にサングラス姿のタモリそっくりの孤独なオヤジを見た。ひょっとしてご本人かもしれない。
美智子皇后の実家でもある正田家を横目に見ながら、つつじが岡公園へ。鶴生田川の6000匹の鯉のぼりを見てから、入園料300円を払って公園に入る。今年はツツジがまだ二分咲きくらいで、花の量が全体としてイマイチの印象。入園料の係も「今年は花芽が少ないねえ」とぼやくほど。それでも、ところどころで見事なツツジが妍(けん)を競っていた。

          館林① 
          つつじが岡公園

昼飯をどこで食べるか、三者三様で、激論になった。
「館林に来たんだから、やっぱりうどんでしょ。街中に戻ろう」
と主張する村民2号。
「街中まで戻るのは面倒よ。公園内のレストランに入ろうよ」
とキオ。
「B級の意外性のある店がいいよ」
と村長。
30分ほど議論しながら、お土産屋や食堂、レストランを覗いては、「あーでもない、こーでもない」となかなか結論が出ない。

          館林うどん 
          観光地の大衆食堂?

そのうちに疲れてきて、ツツジの古木地帯にある「レストラン 美鳥」の前で足が動かなくなった。レストランというより何でもありの観光地の大衆大食堂。スピーカーから演歌が流れている。村長はこのうらびれ具合が気に入った。「館林うどん」というノレンも見えた。「そば大福 お土産にもできます」という手書きの紙も目に入った。

「めんどうくさい、ここでいいわよ」
村民2号がツツジの古木のような威厳で断を下した。

          館林② 
          演歌が流れ、お金も流れる

村長は館林なので「たぬきうどん」(650円)と気になっている「そば大福」(2個350円)を注文。キオは「けんちんうどん」(800円)。村民2号は「カレーライス」(700円)をそれぞれ注文した。

          館林⑤ 
          館林のたぬきうどん

全体的に値段が高い。場所柄、味はそれほど期待してないが、まさかということもある。「たぬきうどん」は「ぶんぷく茶釜」で有名な茂林寺がすぐ近くにあることも選んだ理由だった。10分ほどして、「そば大福」を従えて、「たぬきうどん」がやってきた。そば大福はプラスティックのパッケージのまま。たぬきうどんも天かすとわかめとホウレンソウ、それに薄い紅かまぼこが乗っただけのごく普通のたぬきうどんだった。つゆが少ない。七味をパラパラとかける。

          館林⑥ 
          旨いかまずいか

「こんなもんよ。初めからわかっていたことでしょ。私のカレーライスはレトルトみたい」
「けんちんうどんは旨いわよ。つゆも鰹と昆布の出汁が意外と効いていて悪くない」
「たぬきもつゆがいい。うどんも館林うどんの特徴でもあるつるっとしたコシで、讃岐のようにぶっとくない。ま、ごくフツーの旨さだな。問題は値段。100円は高いと思う。ツツジと演歌の料金も入っているのかな」

         館林10 
         まさかのそば大福
         館林11 
         B級な発見

あれこれ言いたい放題。「そば大福」はパッケージがひどいが、まさかの坂だった。そば粉で作られた皮は本格的で、中の粒あんも控えめな甘さで、予想以上の風味。350円という値段は高いが、せめて小皿に盛ってきてほしい。

「茂林寺のたぬきに煙に巻かれたような気分ね」
「でも村長は気に入ったよ。充実した時間だった。これぞ超B級グルメの世界で、ウマズイ味わいだよ。人生の落差を感じさせる味。また来年来よう」
「今日のことはブログに書いちゃだめよ。内情がばれちゃうから」
キオが釘を刺した。



本日の大金言。

たまにはローカル電車の旅も悪くない。たぬきにダマされるのもまた楽し。GW、そんなに急いでどこへ行く?



                    館林14 
プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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