白河ラーメン本流の味に戸惑う

 会津からウマズイめんくい村への途中にラーメン王国・白河がある。昔は関所があり、通行料を取られたが、現代においては高速料金を支払わなければならない。いつの時代も渡る世間に金はいる、である。時計を見ると午後4時過ぎ。ここはやはり白河ラーメンを賞味しなければ、村長としての威厳を問われる。信用にもかかわる。

「まだお腹いっぱいで、もう入らないわよ」という村民2号を何とか説き伏せて、南湖公園ほとりの「あずま食堂」に向かった。白河市内で情報取集中に「昔ながらの白河ラーメンで旨い店と言ったら、あずま食堂よ。とら食堂は有名過ぎて、地元の人はあまり行かない」というディープな情報を得たからである。

        あずま食堂① 
        白河ラーメン!

「お食事処あずま 白河手打ラーメン」という看板が見えた。一軒家の食堂だった。紺地の暖簾。広い店内。テーブルと座敷、それにカウンター席もあり、土日の昼食時などはほぼ満席になるという。この店は「白みそタンメン」も人気だが、ここはやはり定番の「ラーメン」(550円)である。基本的に家族経営らしく、厨房には昔気質の店主がいて、脇を女性陣が固めているよう。ギスギスした雰囲気はなく、空気に素朴な温かみがある。うむ。

        あずま食堂④ 
        いい雰囲気である

「すべて手打ちです」というラーメンがやってきた。大きい磁器製のドンブリ。透き通った醤油ベースのスープ。鶏ガラ中心のスープは醤油の色がかなり濃く、透明な脂が玉状で浮いている。これが白河ラーメンの特徴で、太くて縮れの多い平打ち麺がその下でゆったりと控えている。食紅で縁どりされた自家製チャーシュー、ナルト、輪切りのゆで卵、ホウレンソウ、海苔、刻みネギ。見ただけで「これぞ白河ラーメンの本流だ」とわかる。「あずま」は白河市内で昭和47年に創業、平成7年に郊外の現在地に引っ越してきた。素材にこだわり手間ひまを惜しまず、が店主のモットーだという。

        あずま食堂⑤ 
        見事なお姿

まずスープをひと口。色味からいってかなり濃い味かと思ったが、むしろほどよくあっさりしている。深みはそれほど感じない。麺は村長の好みの太い縮れ麺。つるっとした食感でもっちり感もかなりある。かなりのレベルの手打ち麵だと思う。脂分のないチャーシューも肉感があり、大きさもある。シナチクもコリッとしていて悪くはない。ホウレンソウは見事な色で、その新鮮さに感心させられた。全体のボリュームも十分。

        あずま食堂⑥ 
        この手打ち麺・・・
        あずま食堂⑧ 
        このスープ・・・

と書いてきて、次第に隔靴掻痒(かっかそうよう)の感が漂ってきた。何かが足りない。それが旨味と深味であることに思い至った。旨いッ、という感動よりも「へえー、素朴なラーメンだなあ」という感覚。スープも麵もチャーシューも旨いには旨いが、それ以上の旨さを感じない。もちろん、それは村長の個人的な感想だが。

        あずま食堂⑨ 
        この手づくり感

「本当に素朴なラーメンて感じ。私は好きよ。化学調味料も使ってないと思うわ。村長はハードルが高すぎるのよ」
「見た目は素晴らしい。完ぺきに近い。しかし、奥行きがちょっとなあ。白みそラーメンも食べる必要があるかもな。餃子も。踏ん張って、いま食べようかな」
「勝手にすれば」
「・・・・・・」



本日の大金言。

2年以上経つのに、3.11で一部崩れた白河城の石垣の修復がまだ終わっていない。築城から400年以上一度も崩れなかった石垣である。3.11がいかに凄まじい地震だったかがわかる。それを見てから、白河ラーメンを味わうのも一考だと思う。


                    あずま食堂10 



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元祖清水屋の不思議なB級グルメ

 会津若松から猪苗代湖へと抜ける途中に、知る人ぞ知る「強清水(こわしみず)」がある。800年近い歴史を持つ名水で、親が飲むとおいしい酒になり、子が飲むとただの水という伝説もある。ここには茶屋が4軒ほどあり、地粉のそばや独特の天ぷらなどを看板にして、観光客などの人気を集めている。中でも一番古いのが「元祖清水屋」である。100年以上の歴史を持つ。

        元祖清水屋① 
        元祖清水屋

ここの名物でもある天ぷらが少々変わっている。イカの天ぷらは生イカを使わずに乾燥したするめを使う。海のない山国ゆえの昔からの食材の知恵だが、彦作村長は幼少(ガキ)のころに、何度もこの固いイカの天ぷらを食べている。するめを水に浸して少々柔らかくしてからコロモを付けて揚げるのだが、それでもまだ固い。固くて噛みきれない。コロモだけ食べて、するめを捨ててしまったこともある。「秘密のケンミンSHOW」などで少々有名になってしまった「まんじゅうの天ぷら」も昔からある。さらには「ニシンの天ぷら」も名物である。

ウマズイめんくい村一行約2人は、会津からの帰途、この「元祖清水屋」に立ち寄ることにした。昼時は混むので、午前11時20分と早めに到着した。彦作村長にとっては約25年ぶりの強清水である。まずは水場に行って清らかな湧水を飲む。無料なのでペットボトルに汲む人が順番待ちの状態。相変わらず冷たくて美味い。酒には変化しなかったが。

        元祖清水屋② 
        こちらは裏側

それから「元祖清水屋」の暖簾をくぐる。広くて開放的で雑然としている。おばちゃん店員が7~8人ほど忙しく動き回っている。昔からそうだったが、庶民的なそば屋でもあるので、洗練とか優雅とは無縁な世界で、会津のがさつがそのまま目の前に広がっている。人気スポットになってしまったために、そのがさつがさらにパワーアップしていた。客が来るたびに、おばちゃん店員が走り回っている。

        元祖清水屋③ 
        開放的な雰囲気

メニューの中から「名物 天ぷら」を単品(1個80円)で頼むことにした。ニシン2個、イカ1個、まんじゅう2個。合計5個(400円)。村長はさらにこの店の隠れ逸品「おろしあげもち」(2個320円)を注文。村民2号は「地粉10割ざるそば」(500円)。天ぷらは注文してから揚げる。7~8分ほどでいかにもそば屋の天ぷらというコロモの多いお姿でやってきた。昔のままだ。ある種の感動を覚えながら、まずはニシンにかぶりつく。醤油を付ける。天つゆなどはない。身欠きニシンは昔より柔らかくなっていて、意外に旨い。厚めのコロモとの相性がいい。

        元祖清水屋④ 
        〆て400円ナリ
        元祖清水屋⑨ 
        ニシンの天ぷら
        元祖清水屋⑤ 
        イカの天ぷら
        元祖清水屋13 
        まんじゅうの天ぷら

するめは昔よりも大幅に柔らかくなっていた。ソフトするめを使っているのだろうか。それでも切れない人のためにハサミが置いてある。食べやすい。問題はまんじゅう。自家製のまんじゅうにコロモをたっぷり付けて揚げているのだが、ちょっと油っこいのとまんじゅう自体が甘すぎて、確かに昔のままの田舎の味だが、会津若松市内で食べたものと比べると、あまりに野暮ったい。このドヤ顔のもっさり感は村長の好みではない。醤油を付けてもその印象は変わらなかった。

        元祖清水屋10 
        おろしあげもち
        元祖清水屋16 
        うーむ

「おろしあげもち」は美味だった。餅にうっすらとコロモを付けて油で揚げたものに大根おろしときざみ海苔をかけただけのシンプルなB級グルメだが、醤油を垂らしてから口中に運ぶと、絶妙な旨味を奏でる。餅の表面のかりっとした食感も心地いい。みずみずしい大根おろしとの相性もいい。これは一つの発見だった。320円という安い価格設定も好感が持てる。おばちゃん店員が走り回っても腹が立たない。

「このざるそば、意外に旨いわよ。湧水と猪苗代の地粉を使ってるんだから、旨いのは当たり前と言えば当たり前なんだけど、店の雰囲気からあまり期待してなかったのよ。つけ汁も鰹節の出汁がよく効いていて、返しも甘すぎず辛すぎず。まんじゅうの天ぷらにはがっかりだけど。市内で食べた方が洗練されていて旨かったわ」
強清水のB級グルメについて、村民2号が締めっくくった。ペットボトルにはしっかりと湧水が入っていた。



本日の大金言。

強清水の伝説には意味がある。真面目に働く親と大なまけものの息子。その親が飲むと酒になり、息子が飲むとただの水。なぜだと訝(いぶか)る息子の枕元に弁財天が現れて、息子の行いをたしなめるというもの。息子はそれで自らの行いを悔い改めるのだが、今の日本には弁財天もいなければ、反省という言葉さえ色あせている。





                     元祖清水屋14

これだこれだ会津・伊勢屋の生くるみ餅

 会津には古くからある和菓子屋が多い。だが、美味しい生菓子を出す店は少なくなり、彦作村長が愛した丁寧な串あん団子などはきれいになくなってしまった。もちろん、探せばいくつかあるが、悲しいかな、餅がダメだったり、こしあんがイマイチだったりする。手間ひまのかかる作業は割に合わないということと、後継者が不足していることがその大きな要因だと思う。

        椿餅② 
        この歴史的な店構え

そんな中で、かつての会津のメーンストリートだった大町通りにある「亀齢堂 伊勢屋」は異色である。創業約180年。朱色のべんがら壁の木造2階建ての店構えはそれだけで一見の価値がある。ここの「椿餅(つばきもち)」は創業当時のままの作り方で、あの白虎隊も食べたと言われている。京都のような椿の葉に包まれた米粉餅ではない。「くるみゆべし」と言った方が実態に近い。

彦作村長は長い間、この「伊勢屋の椿餅」に一歩距離を置いていた。あんこが入っていないからである。小麦粉と米粉に砂糖と醤油で味付けしたもので、上層部にはくるみが散りばめられている。餅のように柔らかく伸びるということはなく、むしろ外郎(ういろう)の食感に近い。蒸し菓子なので、歯ごたえがいい。食べると、くるみとゆべしのバランスが絶妙で、後を引く素朴な旨みと甘さがこの店の長年の人気を支えている。

        椿餅① 
        先祖は伊勢松坂から?

「元祖伊勢屋 椿餅」と染め抜かれた白地の暖簾をくぐり、ガラガラッと引き戸を開けて中に入る。「椿餅」だけでなく、美味そうな生菓子や上菓子が並んでいる。彦作村長は、最もシンプルで、幕末の会津藩士も賞味しただろう「元祖 椿餅(生)」(1個73円)をバラで5個買い求めた。山本覚馬や八重も食べていた可能性が高い。ここでしか買えない「椿餅」の生(なま)は賞味期限が2日ほど。

        椿餅③ 
        あったあった

「創業が江戸時代後期ですが、もっと古い気がしますが」
と店主らしい男性に聞く。
「戊辰戦争で店が焼かれてしまい、記録が残っていないんですよ。口伝では蒲生氏郷公が伊勢松坂から会津に入封したときに一緒に付いてきたと言われています。伊勢屋という屋号もその時からと聞いてます」
「1590年あたりか。豊臣秀吉の時代ですね。伊勢屋という屋号は今では全国至るところにあるけど、ここは歴史が違うということですね。確かにそんな気配があるなあ」

          椿餅② 
          山本八重も白虎隊も賞味した・・・
          椿餅⑥ 
          昔のままのお姿
          椿餅⑦ 
          後を引く素朴な味

生椿餅は昔よりくるみが細かくなっていた。歯ごたえや味わいは昔のままだったが、くるみの食感が違った。ここは好みの別れるところだろうが、村長にとっては昔のごろっとしたくるみの方が美味しかった。だが、1個73円という低価格を今でも守っていること、店をあまり広げずに、この歴史のあるべんがら壁の本店で暖簾を下げ続けていることなど、そのポリシーには敬意を表したくなる。あまりに素朴であまりに頑固な美味さ。ならぬものはなりませぬ。生椿餅には会津の老舗の意地も詰まっているようだった。



本日の大金言。

和菓子の美味いところには、歴史と文化がある。あるいは、歴史と文化のあるところにいい和菓子屋が多い。ワインと同じで、テロワールが重要な要素なのかもしれない。




             
                椿餅④ 
                

「会津名物」有名わっぱ飯の微妙

 NHK大河ドラマ「八重の桜」で、綾瀬はるか演じる山本八重がついにスペンサー銃を持って立ち上がる前半のクライマックスシーンが放送された。会津のビジネスホテルでそのシーンを見た彦作村長は、久しぶりに半分アルコールの血が騒いでしまった。先祖が会津藩足軽で火縄係だった彦作村長ゆえに、八重の姿にはオッたまげてしまった。実際の史実に忠実に従ったドラマ作りには敬意を表するが、見ていてつらくなるシーンが多く、正直なところ視聴率の低下も気になっていた。だが、このシーンには、鳥肌が立ってしまった。ひょっとしてNHKの大河ドラマスタッフはこのシーンのために、「八重の桜」を作ったのではないか。悲しいかな、彦作村長にはスペンサー銃はないが。

        田季野12 
        この雰囲気

翌日、その綾瀬はるかや西郷頼母役の西田敏行らが食事をしていったという「元祖輪箱飯 田季野」(元祖わっぱめし たきの)で夕食を取ることにした。会津西街道にあった江戸時代の陣屋を移築した重厚な店構えは一見の価値があると思う。テレビや雑誌などでも会津の老舗の名料理店としてたびたび取り上げられるが、店自体は昭和47年(1972年)創業で、それほどの歴史はない。この店の目玉はわっぱ飯で、もともとは奥会津の木こりが食べていた弁当である。それを重厚な店構えとその他の会津郷土料理をそろえて、高級な会津料理として売り出したというところがクールである。

        田季野② 
        綾瀬はるかも来た

入り口の提灯に灯りがともる時刻、ウマズイめんくい村の一行約2名は、いい雰囲気の暖簾をくぐった。敷居は低くない。江戸の昔にタイムスリップしたような黒光りした重層な造りは、入った瞬間に少々値段が高くても「しょうがねえべ」と思わせる。江戸時代そのままの帳場まである。大広間に通されて、歴史がしみ込んだような和テーブルの前に腰を下ろす。土日は観光客などで満席だそうだが、平日の夕方ということもあり、客の入りもそれほどではない。

        田季野③ 
        安くはない

メニューから一番安いわっぱ飯「けっとばし 輪箱飯」(1000円)を注文。少々ぜい沢だと思いながら、会津の郷土料理「鯉のうま煮」(780円)と日本酒「会津娘」(一合530円)も頼むことにした。村民2号はしっかり「五種輪箱飯」(1840円)を選んだ。いずれもみそ汁と小鉢が2品付き。

        田季野⑤ 
        けっとばしの登場

「けっとばし輪箱飯」は会津名物でもある馬肉のわっぱ飯。桐で作った丸い曲げわっぱにご飯と具を詰めて蒸すのがわっぱ飯。待つこと10分ほどでパカラッパカラッとやってきた(ン?)。作務衣姿の若い女性スタッフはとても感じがいい。だが、「けっとばし輪箱飯」は想像と違った。ゴボウの千切りがほとんどで、馬肉は少ない。まるで体のいいキンピラごぼうのよう。そこに紅ショウガと青菜とだし巻き卵が一切れ乗っているだけ。ゴマ油で炒めたのだろうゴマの香りがする。ラー油の辛味も感じる。味付けは薄味の甘辛じょうゆ。優しいが、薄っぺらい味。さすがに会津産のコシヒカリはつややかで旨い。全体としてはやや拍子抜けのする味わいだった。

        田季野⑥ 
        ゴボウが多い
        田季野⑦ 
        ご飯はさすが

鯉のうま煮は一般的には甘露煮と呼ばれるが、会津ではうま煮。完成度は高く、旨いには旨いが、砂糖の分量がかなり多く、煮込み汁がトロリとしている。鯉の内臓が絶品だが、村長には少々甘すぎる。そこは評価の別れるところだが、昔食べた鯉のうま煮は骨まで軟らかく煮込んであり、もっと旨かった。本当のうま煮だったと思う。

        田季野⑨ 
        鯉のうま煮
        田季野④ 
        こちらは五種輪箱飯

「私の五種わっぱ飯は旨かったわよ。鮭とぜんまい、きのこ、カニ、卵の味は素朴でやさしい味。満足したけど、値段を考えるとちょっと高いかな」
「村長は小鉢の昆布の煮ものが気に入った。自然な薄味で感心した。でも、それ以外はコストパフォーマンス的にはよくないと思う。あと200円~300円は安くして提供してほしいよ。綾瀬はるかや西田敏行はどう思ったのかな。さすけねえ、とでも言ったのかな?」
「ここは店の雰囲気代込みの値段なのよ。そう考えれば、この全体的な高さも納得よ。入場料を払って食事をする。そう思えばいいのよ。その価値もあるわ。じゃないと、腹の虫が騒ぎ出す」
村民2号がスペンサー銃を構えそうだった。



本日の大金言。

店構えと老舗とはひょっとしてイコールではないのかもしれない。身なりの立派な人が中身も立派な人とは限らないように。




                    田季野10 

本格カレー790円ランチの驚き

 87歳の大叔母の入院お見舞いの帰り、村民2号が目を付けていた小じゃれたカフェレストランに立ち寄ることにした。午後1時15分。きちんと食事をしないと血圧が下がる村民2号のお腹がキューンと鳴いているのに気付いた。
「私が見つけた素敵な店よ。期待していてね」
「お姉さんが言うんだから間違いないかもね。ちょっと不安だけど・・・」
雨に煙る群馬・桐生市市役所近く。近くに住む村民2号の妹君も一緒だった。

        エム① 
       ここはどこ?

「ダイニング エム」という店名の、黒と茶を基調とした外観は、たぶん若い女性受けする今どきのイケてるカフェレストランだった。桐生はかつては「西の西陣、東の桐生」と呼ばれたほど織物で栄えた街で、その名残はいたるところにある。晩年の坂口安吾がここを終の棲家(ついのすみか)にしたことも少し理解できる気がするほど。

        エム② 
        目が行ってしまった

市役所や厚生病院、市民文化会館も近くにあり、周囲はきれいに整備されていて広々としている。店は新しく、入り口に「スペシャルランチ」という黒ボードが。村長の目が「790円」という数字と「オリジナル本格カレー」という文字に行った。「ポークジンジャー」や「パスタ」「ピザ」もある。いずれもスープ、サラダ、デザート付き。ま、これで790円とは、多分、内容もそれなりなんだろうな、そう期待せずに、ここは村民2号の顔を立ててやろう。そう軽く考えて中に入った。

       エム③ 
       女性客が多い

店内はここはどこ? というほどクールだった。フローリングの床とシーリング(天井)ファン。ゆったりしたテーブルが5つほど、奥は小上がりになっていて、そこにもテーブルが二つ。小さなカウンターもある。BGMはジャズ。何やらトレンド誌から抜け出てきたような、青山かどこかにでもいるような雰囲気。彦作村長の苦手な世界でもある。

       エム④ 
       スープを半分飲んだ後にサラダが・・・

村長と妹君は「本格カレー」、村民2号は「ピザ」を選んだ。村民2号がニコニコしているのが不気味である。まず、スープが出てきた。わかめの自家製コンソメスープ。うむ。続いてサラダ。意外にボリュームがあり、和風のオニオンドレッシングと合っていた。うむ。メーンの本格カレーが真っ白い磁器製のカレー皿に盛られて登場した。イカスミでも入っているのか、ほとんど黒いカレーだった。半熟の温玉が夜中のお月さまのように、ちょこんと乗っていた。スパーシーな、いい匂いが周囲1メートルを支配した。うむむむ。

        エム13  
        ほとんど黒いカレー
        エム12  
        うむむむむ
        エム⑦ 
        半熟卵との恋愛

量は多くもなく少なくもなく。スプーンでまずはひと口。ルーはやや甘めで、そのすぐ後からじわじわと辛さが追いかけてくるよう。確かにスパイスのよく効いたコクのあるカレーだった。ポークやタマネギやニンニク、その他さまざまなものがじっくりと煮込まれて溶け込んでいる。イケメンのマスターに聞いてみると、スパイスは10種類ほど使っているという。ライスがやや固めなのが村長の好みで、新潟産のコシヒカリを使っているそう。杏仁豆腐のデザートも旨かった。これで790円というのは、ちょっとした驚きである。それほど期待していなかった分、満足度は高かった。

       エム10 
       意外?デザートもマル

自家製のピザをふうふうして食べながら、村民2号が満足顔の村長をちらりと見た。ドヤ顔だった。
「どう、わかったでしょ? 私の目に狂いはない」
そう言っているようだった。グヤジイ。



本日の大金言。

「今どき」を否定する奴に未来は微笑まない。桐生の新しい芽に枯れすすきがなびくこともある。




                     エム11

昭和の黄金スープラーメン

小雨降る中、彦作村長は東京・茅場町に降り立った。秘密ペンクラブの編集会議に出席するためである。だが、その前にウマズイめんくい村村長としての重要な仕事があった。以前から目を付けていた「昭和」というレトロなラーメン屋探訪である。茅場町から兜町にかけての一帯には隠れたいい店が多い。東京証券取引所もあり、日本のウォール街と呼ぶ人もいるが、江戸時代から明治・大正・昭和と東京の中心として栄えてきた街でもある。その歴史と文化が街のいたるところに息づいている。

        昭和ラーメン① 
        こんなところに昭和が・・・

「昭和」という看板のラーメン屋はその店名だけで村長の心をくすぐった。単なるノスタルジーかもしれないが。入り口からレトロ。店に入ると、そのレトロ感は筋金入りだった。カウンター席が9つほどしかない狭さ。今どきの妙に過剰な清潔感はない。タイムスリップして、昭和30年代のNHK人気番組「お笑い三人組」の世界に紛れ込んだような錯覚に陥ってしまった。三遊亭小金馬が今にも出前の岡持ちを下げて出てきそう。

        昭和ラーメン② 
        メニューは多くない

ここの一番人気は「昭和ラーメン」(780円)。店主が昭和30年代の名店の味を再現したという、鶏がらダシの塩ラーメンである。かなりの歴史があると思いきや、下町の匂いのするご夫婦が7年ほど前に始めた店。それにしては昭和の匂いが隅々まで滲みこんでいる。最近流行のわざとらしいレトロさがない。メニューは多くない。「ぶっかけ麺」も気になったが、ここはやはり「昭和ラーメン」である。

       昭和ラーメン③ 
       絶景かな

冷たい麦茶を飲みながら、15分ほど待つ。先に来ていた常連客らしい老紳士がうまそうに「昭和ラーメン」を食べている。何とも言えないいい匂いが鼻腔をくすぐる。やがて大きな正統派の磁器ドンブリが湯気をふんわりと漂わせながら、目の前に置かれた。仕込みに3日かけるという黄金色の澄んだスープの上に、旨そうに寝そべっている炙(あぶ)りチャーシューに目を見張らされた。何という大きさ。国産豚の肩ロースを炙ったステーキとも言うべきチャーシュー。こんがりと焼けた表面からは肉汁がじんわり滲んでいる。その下に潜む小麦の黄色がかった細麺、1センチ角のシナチクが2本、湯切りしたもやし・・・。

        昭和ラーメン⑧ 
        黄金のスープと炙りチャーシュー
        昭和ラーメン⑤ 
        黄色い細めん

鶏がらの塩スープはあっさりしたきれいな味わい。だが、すぐにそのシンプルさの陰に絹のような、実にデリケートな深みが漂っていることをすぐに理解する。塩加減がやさしい。細麺はコシが意外にあり、しかもつるっとしている。特注の麵だそう。太麺好きの村長は、当初、これがもう少し太くてもっと縮れていたらなあ、と思ったが、これはこれで一つの完成形だと思い直した。

        昭和ラーメン⑥ 
        シナチクの存在

炙りチャーシューはデカすぎるとも思うが、肉の旨味を生かした柔らかい噛みごたえが心地よい。輪郭のあるメンマの旨さにも感心させられた。もやしは湯切りしただけのシンプルなもので、これは微妙な存在。全体としては食べ終わった後に、五臓六腑からじんわりと広がってきた幸せ感がすべてだった。背脂や魚粉を使ったドロドロ系のラーメン全盛の時代に、この驚くべき淡麗(たんれい)。添加物を使わずにこの奥深い旨味。満足感。昭和は遠くなりにけり。だが、しかし。昭和はまだ死んではいない、村長はそう確信したのだった。



本日の大金言。

昭和は日本の歴史の中でも激動の時代だと思う。光と影も深い。況やラーメンにおいておや。


                    昭和ラーメン10 

三軒茶屋の絶妙「豆乳豆パン」

東京・三軒茶屋のレストランで久しぶりに友人と美味い料理とワインを楽しんだ彦作村長は、15分ほど時間があったので、渋谷でヒカリエに立ち寄った。目的はシンクス地下2階。ここはスイーツ類の宝庫でもある。花を競うように美味そうでシャレた店が並んでいた。ふと見ると、パン屋さんが3軒ほど。その一つ、「三軒茶屋 濱田家(はまだや)」の「豆乳豆パン」(1個161円)にツツツと目が行った。「当店人気ナンバー1」と表記されていた。その隣の「当店人気ナンバー2」という「ブリオッシュ こしあんバター」(1個231円)にも目が行った。見るからに美味そうなパンだった。

        濱田家① 
        美味そうなパン屋さんが・・・

タレントかモデルのような子連れの若い主婦がその「豆パン」を買っていた。ウマズイめんくい村周辺には生息していない、テレビドラマの中のワンシーンのような、どこか現実感のない、夢のような世界。ええ眺めじゃのう。そう思いながら、一方で、心配性の彦作村長はそのあまりに絵になる姿にいささかの不安も覚えるのだった。地に足が付いていないような、全体の、このバーチャル感はひょっとしてどこかおかしいのではないか。ここはどこ? わたしは誰? どう見ても自分の方がおかしいのに・・・。

気が付くと、「人気ナンバー1」と「ナンバー2」を買い求めていた。単に若い主婦の真似をしてみただけかもしれない。ある意味でAKBの総選挙の1位と2位を独占した気分だった。ん? ウマズイめんくい村に持ち帰って、翌日の朝食で賞味してみた。まずは人気ナンバー2の「ブリオッシュ こしあんバター」。「三軒茶屋 濱田家」は国産の小麦粉と酵母にこだわって、日本人に合う和のペーストのパン作りを目指している注目のパン屋さん。

        濱田家① 
        吾輩はパンである

あんぱんとバターを組み合わせたパンは、最近のトレンドでもある。銀座・木村家の「あんバターホイップ」(221円)はその頂点の一つだと思う。ソフトフランスパンと粒あん、無塩バターの組み合わせが独特の旨味をかもし出していた。「三軒茶屋 濱田家」はどうか。

        濱田家② 
        ブリオッシュこしあんバター
        濱田家⑧ 
        期待感が高まる

形が真四角で、こんがり焼けたブリオッシュ生地は悪くはない。だが、絶品というほどの感動はなく、中のこしあんの量がちょっと少ないと思う。バターの量も木村家ほどの「うーむ」と唸るほどの豪快さはない。もちろん好みの問題だが、全体のバランスがまとまり過ぎて、それ以上でもそれ以下でもない、隔靴掻痒(かっかそうよう)の感。焼き立てを食べるとちがうのかもしれないが、期待が大きかった分、少々がっかり。

だが、人気ナンバー1の「豆乳豆パン」は期待以上の美味さだった。大粒の赤えんどう豆がぎっしりと詰まって、いい豆大福の変化球のよう。そのほのかな糖分と塩分が、実にもっちりと焼き上げられたパン生地と絶妙な世界を作っている。

        濱田家③ 
        豆乳豆パン
        濱田家④ 
        ちょっとだけよ~
        濱田家⑥ 
    マーガリンとの相性もいい  

豆乳を加えた和風のテイストが成功していると思う。このもっちりしっとり感はスゴいと言わざるを得ない。無添加にもこだわる姿勢も好感が持てる。いい小麦の香ばしさとほんのり放射する和風の甘みが、「わて、どないどす?」と京都弁でささやいてくるよう。
バーチャルではない自然な旨味。調べてみたら、オーナーは京都人だった。本店のある三軒茶屋と京都を結ぶ点と線。ありゃ、あまり関係ないが、これはガルーダ博士と調布先生の線でもある・・・。



本日の大金言。

このところおいしいパン屋さんが増えている気がする。その分競争も激しい。パン屋さんがパン屋食い競争の行方は?




                濱田家③ 



南米ボリビアB級グルメの実力

 ウマズイめんくい村のB級グルメネットワークも捨てたものではない。彦作村長自身がかつてB級エンターテインメント紙のデスク兼記者だったキャリアもあり、あちこちから様々な情報が入って来たりする。
「村長は南米のボリビア料理を食べたことがありますか? 日本人の口に合って、これが実に旨い。日本にはきわめて少ないですが、首都圏では埼玉・久喜にボリビア家庭料理を食わせてくれる店があります。B級グルメを名乗るからには行かないと後悔しますよ。ピラニアもいるかもしれませんが(笑)。南米にもぜひ目を向けるべきです」
知人の中年編集者からこんなメールが届いた。彼は年に最低一回は南米のいずこかへ旅行するほど南米にハマっている。彼の目当ては食事より南米美女ではないかと睨んでいるが。村長もいつかは南米!そう心に誓っている。

          トウカン② 
          わっ、ラテンだあ

その店は久喜自動車学校の近くにあった。「南米ボリビア家庭料理 TUCAN(トゥカン)」という看板が曇り空の下で目立っていた。ピンクの外壁、白いドア、緑色の庇(ひさし)、青緑の窓。日本のワビさびとは対極的な世界がそこに存在していた。千利休の世界も好きだが、村長は南米のラテン的な世界も好きである。太陽の匂いのする、心躍る原色の世界・・・。ちなみにツゥカンとは南米に生息する派手な鳥の名前だそう。

店内はボリビアの雑貨なども置いてあり、信じられないほどメルヘンチックな、南米的な明るさを放っていた。テーブルは6つほど。平日の午後1時半過ぎなのに食事を楽しむ客でにぎわっていた。ボリビア生まれの日系の姉妹が店を切り盛りしていた。家庭的ないい雰囲気だった。

         トウカン③ 
         ボリビアの家庭料理

村長はランチメニューの中から「エンパナーダセット(スープ、サラダ、デザート付き 850円)を選んだ。エンパナーダとはスペイン語で具入りのパンとかパイという意味だそう。エンパナーダにも3種類あり、村長は「ヒゴテ(鶏肉と野菜入り)と「ケソ(チーズ入り)を選んだ。どちらもボリビアでは軽食でよく食べられるという。単品だと一つ250円。まさにB級グルメである。

          トウカン④ 
          これがピーナツスープ
          トウカン⑤ 
          エンパナーダのランチセット

スープは日本にはないピーナツスープだった。すり潰したピーナツを入れ、ジャガイモ、ニンジン、鶏肉を加え、塩で味付けしたスープで、ピーナツの風味とざらざらした舌触りが悪くない。意外に旨い。
「日本人向きに味をやさしくしているの?」
「ボリビアの家庭料理そのままです。皆さん、ボリビアの味が日本人に合うのでびっくりするんですよ」
明るい声で、妹が答える。日本人が失った大らかさが全身から発散しているような、それだけでこの店が地元客に愛されていることが理解できた。ちなみに日本語は流暢(りゅうちょう)で、日本人と変わらない。日系だから当たり前かもしれないが。

          トウカン⑥   
          ヒゴテの勇姿
          トウカン⑧ 
          うむむ、うむむ

注文してから作り始めるようで、待ち時間は15分ほど。来た。予想よりデカい。一個20センチくらいあるんじゃなかろうか。具をパイ生地で包んで油で揚げたものだが、まるで大きなミートパイ。先に「ヒゴテ」をナイフで二つに割ると、中から湯気とともにじゅわりとスープが流れ出て、鶏肉とジャガイモ、ニンジンなどが熱々のままいい匂いを放っていた。
手でつかんで食べる。パイ生地がいい小麦の風味とともに中の具を引きたてる。かすかにカレーのようなスパイシーさ。塩加減がちょうどいい。イケる。「ヤッファ」というトマトとタマネギで作ったソースを付けると、これがまた旨い。

          トウカン⑦ 
          こちらはケソ(チーズ入り)
          トウカン11 
          あーん

もう一つの「ケソ(チーズ)」は外側に砂糖がまぶしてあり、真ん中から割ると、中は空洞状だが、甘くていい匂いが立ち上がってきた。チーズはすっかり溶けていて、パイ生地に半分滲みこんでいる。パイ生地の外側のパリッとした食感と中のチーズを含んだもっちり感が砂糖の甘さといいハーモニーを作っている。ボリビアではおやつとしてよく食べられているそう。イケる。事前の予想を超えた旨さだった。ボリビアのB級グルメの実力は侮れない。トイレもきれいだった。厨房に下がっているワイングラスを見て、村長は次は夜来なければ、と思った。



本日の大金言。

南米の底力は経済力だけでは語れない。お隣のブラジルにしても、オーパの世界である。サッカーのフェデレーションカップで日本の「ええじゃないか」文化がどこまで底抜けのラテン文化に対抗できるか。そこにも注目したい。



                     トウカン15

こんな場所に・・・「花味まんじゅう」の甘い衝撃

 不思議な蔵でおにぎりセットを賞味したウマズイめんくい村一行約2人は、その足で「とらや和菓子工房」を目指した。和菓子に目のない彦作村長はデザートに出された和菓子の素朴な美味さが気になったからである。調べてみると、地元では知る人ぞ知る和菓子屋だった。「とらや」と言ってもあの「とらや」ではない。埼玉・見沼区にある「とらや工房」である。

        とらや② 
        隠れた名店

「染谷しょうぶ園」からクルマで20分ほどの距離だった。住宅街が隣接しているので、ちょっとわかりづらい。蔵造りの店構えで「とらや菓子工房」の看板が見えた。ガラガラッと引き戸を開けて(そう言う気分)中に入ると、女将さんらしい女性が一人。どら焼きやうぐいす餅、金つばなどの生菓子から手の込んだ生菓子まで並んでいる。すべて手作りで、こしあんまで自家製というこだわりぶり。ひと目見ただけで和菓子職人の昔ながらの呼吸と意地が伝わってくるようだった。

        とらや③ 
        儲かってまっか?

驚きべきはその安さだった。ちょっと見ただけで「豆大福90円」「どら焼き110円」「金つば100円」「うぐいす餅100円」という価格設定。これは発見かもしれない。彦作村長の小さな胸が躍った。数種類まとめ買いをして、ウマズイめんくい村に持ち帰って賞味することにした。

          どら焼き① 
          この存在感

まずはどら焼き。皮も昔ながらの作り方で一枚一枚手焼きしているという。あんこは北海道産の小豆を使った粒あん。あんの量は少なめで甘さもかなり抑えている。素朴で野暮ったいあん。あんには特筆すべきものは感じないが、皮が旨い。卵とハチミツのいい匂いとしっとりしたスポンジ。ていねいに作っているのがわかる。

         とらや① 
         花味まんじゅうの衝撃
         とらや③ 
         手が込んでいる

豆大福は餅が実に柔らかい。それなりに旨いが、期待ほどではなかった。だが、「花見まんじゅう」(150円)はちょっとした衝撃だった。小ぶりの白まんじゅうの上に塩漬けの桜の花びらがちょこんと乗っている。まずはそのきれいな色味に惹かれた。手で割ると、中からピュアなこしあんが現れた。雪の下の春を待つ大地を思わせる。桜の思いをイメージして作っているのかもしれない。あんは塩加減がちょうどよく、いい小豆の風味をよく引き出している。このもっちした絶妙な美味さは何だろう? よく見ると、あんと皮の間にゼラチンのような半透明の層があることに気づいた。気になって、思い切って店の女将に問い合わせたら、「道明寺です」というていねいな説明をしてくれた。道明寺とはもち米を蒸かしてからすり潰したもの。さり気ない、この手の込みようと美味さに少々感動を覚えてしまった。甘い感動。

         とらや⑦ 
         金つばのつぶやき

金つばとうぐいす餅もかなりのレベルで、金つばは小豆の間に栗の小さな粒を入れていた。よく見ないと見落としてしまうほど。甘さをかなり抑えた素朴な逸品で、手づくり感にあふれる皮との相性が実にいい。浅草・徳太楼ほどの洗練はないが、これだけの味と添加物を使わない作りで1個100円とは正直驚かされる。きっと儲けを度外視しているに違いない。何気なく食べるとわからないところにワザを入れている。主人は2代目だそうで、残念ながらお顔を拝見することはできなかったが、埼玉の田舎にかような和菓子職人がいる。そのことに村長は静かな感動を覚えるのだった。



本日の大金言。

日本も捨てたものではない。本物の職人がどれだけいるか。あるいは本物の職人を目指すして修業している人がどれだけいるか。そのことがこれからの日本の未来につながっていると思う。




                    染谷しょうぶ園④ 

摩訶不思議な蔵の「おにぎりランチ」

 「ねえ、染谷しょうぶ園に行ってみない? 花ショウブがとてもきれいよ。アジサイもきれいよ」
美熟女の村民2号が、大叔母の介護で少々疲れ気味の表情で言った。村長と違って愚痴をこぼさないタイプだけに、こういう時は何かある。
「この前、浮野の里に行ったばかりだろ?」
とは言えない雰囲気だった。彦作村長は「うむ」とうなずくと、さいたま市・見沼区にある「染谷しょうぶ園」までポンコツ車を飛ばすことにした。その帰りに近くで旨いものでも食べようという考えもちらと浮かんだ。

        染谷しょうぶ園⑤ 
        見事な花ショウブ
        染谷しょうぶ園① 
        アジサイ

入園料500円を払って「染谷しょうぶ園」で約2万株の見事な花ショウブを堪能してから、近くの旨いもの屋を探すことにした。村民2号が地元の住人からすぐ近くに「蔵をそのまま再利用した面白い軽食・喫茶」あるという情報を仕入れてきた。
「旨いかどうかはわからないけど相当ユニークな店みたいよ。おにぎりもあるらしいわ」
おにぎり好きの村長は、駐車場に車を置いたまま、草履姿で歩いて行くことにした。

        蔵① 
        うーむの世界

距離にして500メートルくらい。あった。築約100年という蔵と古民家が見えてきた。「軽食・喫茶 ひびき 画廊 蔵 」という看板。いい雰囲気である。「ひびき」は漢字で書いてあったが、「広辞林」にも載っていない漢字だった。それだけでもここの主人が相当ユニークな人物であることが容易に想像できた。
「大丈夫よ。村長もかなりの変人だから」
自分のことを棚に上げて、村民2号がそう言ってから中に入った。蔵の中は雑然とした摩訶不思議な空間だった。

入り口にはセンベイやら和菓子やら自然食品やらが売られている。一枚板の大きくて見事な自然木のテーブルが5つほど。2階がギャラリーになっていて、和ダンスやら版画やら陶器やら竹細工やらが置いてある。1階の奥には陶器類や小物類が盛りだくさんに置いてある。何やらタイムスリップして民芸品店の物置にでも入ってしまったような錯覚に陥ってしまった。

         蔵⑧ 
         食事は数種類

メニューからちょっと高いかな、と思いながら、「おにぎり」(1050円)を選んだ。「但しスープ、そうざい、果物等付」という文字にも期待したからだった。他に常連らしい中高年客が2組ほど。細身の店主は愛想がよく、一人で店を切り盛りしているようだった。
サービス精神旺盛のようで、香木や香草を持ってきて、「これ、聞いてみませんか? よかったら当ててみてください」などと言ったかと思うと、自分で作った黒にんにくを試食させてくれたり。その間に厨房に入ってはおにぎりセットを作って一品ずつもってくる。その目まぐるしさは村長の好きな世界でもある。苦手な人もいるかもしれないが。蔵が建つよりキャラが立つの世界。

        蔵② 
        いいノリ

スープから始まってコンニャクと漬け物の小鉢、トマトジュース、デザートの果物、和菓子が次々と出てくる。手焼きのセンベイまで出てきたのには驚いた。メインはパリッとした海苔に包まれたおにぎり3個。ご飯がちょっと柔らかいのが村長の好みではないが、山口・萩市にあるふりかけの老舗「井上商店」の「しそわかめ」や「夏みかんわかめ」をまぶしていた。ご飯は胚芽米かと思ったら白米だった。萩地方伝統の乾燥わかめのふりかけは悪くない。塩分がほどよくて、まずまずの旨さ。店主はよくしゃべる。善意の説明なのか商売熱心なのか境目がわからない。

        蔵④ 
        しそわかめ
        蔵⑥ 
        和菓子はマル

「雰囲気が好きか嫌いかで店の評価も変わるわね」
「和菓子が旨かったよ。店主のサービス精神と一生懸命さは微妙なところだなあ。全部で7品も出てきたのには正直驚いた。そう考えると1050円は高くはない。まあ、あえて言うと、600円ぐらいの食事セットも作ってほしいが」
「器もいいものを使っているし、果物にしてもセンベイにしても素材はいいものを使っていると思うわ。それを組み合わせている。でも、何かが過剰で、何かが足りない気がする」
「ショーバイはむずかしいなあ」
「そこが面白いところなのよ、きっと。でも、村長より苦労してそう」
「・・・・・・」



本日の大金言。

古い蔵を再利用したビジネスは急増している。喫茶店にしたりレストランにしたり。地域活性化のシンボルの一つでもあるが、成功している例は意外に少ない。蔵だけに蔵を開けるカギが問題で、そのカギとはキーマンの能力かも。



                    蔵⑦ 




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居酒屋の街の「ごまみそパスタ」とは?

 お江戸での秘密会議に出席した後、赤羽彦作村長は大好きな北千住で疲れた羽根を休めることにした。時計を見ると、午後7時半を回っていた。これまた大好きな西口の飲み屋横丁をぷらりぷらりしていると、かつてあれだけいた客引きのチャイナガールの姿がきれいに消えていることに気づいた。尖閣領有問題がここまで波及しているのだろうか? 裏社会の核心的利益の行方も気になる。

        カタロー④ 
        何を語るか?

彦作村長のオンボロのレーダーにふと「下町バル カタロー」が映った。スペイン風?イタリア風?バルとビストロを足して2で割ったような雰囲気が気に入ってしまった。店の前のボードに書かれた「海の幸のカルパッチョ 名物!5点盛り 680円」の居酒屋風のコピーも悪くない。ワインもそれなりに充実している。「ごまみそクリームカルボナーラ」という文字も見えた。ん? ごまみそクリームカルボナーラ? B級グルメハンターとしてはここは避けては通りない。

        カタロー⑤ 
        いい雰囲気

10人くらい座れそうな、いい木肌のカウンターが見えた。4人掛けのテーブルが三つほど。若い女性がグラスワインと料理を楽しんでいる。戦後の怪しげなマーケットの匂いの残る飲み屋横丁にも新しい波が確実に押し寄せている。かつてよく通った新宿ゴールデン街の変貌が北千住でも起きている。ま、悲しむ話ではないが。

        カタロー⑥ 
        このお通しはマル

カウンターの隅っこにちょこりと腰を下ろして、「海の幸のカルパッチョ」(680円)と気になる「ごまみそクリームカルボナーラ」(780円)を注文した。イタリアの白ワイン(グラス550円)もしっかり注文。カウンターの奥が厨房になっていて、店主らしきマスターが「お通しです」と「合鴨のローストとキノコとナスのトマトソース煮」(280円)を静かに置いた。これが予想以上に旨い。お通しでこの味が出せるなら、他もきっとうまいに違いない。

        カタロー⑦ 
        海の幸カルパッチョ

「海の幸のカルパッチョ」は旬の魚介類を出しているそう。真っ白い磁器皿にカツオ、ホタテ、タコ、カンパチ、サーモン、アジがそれぞれ独自のソースをかけられてデザイン的にもまずまずの世界を作っていた。その今風の凝り方は好感が持てる。
「これは白ワインに合いそうだ。あれっ、一つ多い。6種類あるよ?」
と村長が軽いジャブ。
「今日はいいカツオが入ったんで、おまけです」
とマスター。いい奴だ。カルパッチョも平均以上の旨さ。白ワインが進む。財布の中身が気になって、一番安い白のグラスワイン(380円)に切り替えた。ワインの味が少々落ちたのは仕方がない。グスン。

         カタロー⑨ 
         ごまと味噌と生クリーム

問題の「ごまみそクリームカルボナーラ」がやってきた。ごま味噌のふくよかな香りがふわりと立ち上がった。パスタは乾麺だが、白ごまと白みそ、それに生クリームを合わせた濃厚なソースに絡んで、白いドレス姿のカンツォーネ歌手のような、かすかなオーラを放っていた。ベーコンが谷間に潜み、分葱(わけぎ)が彩りを添えている。うーむ、うむうむ。卵を使わずに白ごまと白みそでカルボナーラを作るという発想がクールだと思う。

        カタロー11 
        新しいカルボナーラ

ひと口。白ごまの風味がやや強めだが、悪くはない。白みそと生クリームの甘みが茹で立てのパスタの後ろから、いいテノールとなって一つの世界を作っていた。ヘルシーでいて、ちょうどいいくらいに濃厚な旨さ。80点の旨さ。これはこれでいい。ヘルシー志向の今どきの先端を行く独創パスタをしっかりと堪能する。若い女性やカップルにウケるだろうな。彦作村長はぎっくり腰を押さえて舌代を払い終えると、そう思いながら、よろよろと外に出た。キャバクラの黒服が所在無げに立っていた。



本日の大金言。

尖閣領有問題は別の見方をすると、胃袋の問題でもある。核心的利益とは強欲な胃袋の利益ということでもある。故に中国とは巨大な胃袋の代名詞である。故に胃酸過多に陥りやすい。まさか?



                     カタロー13 



開高健も通った店の「スープ入ヤキメシ」

 東京・有楽町ガード下沿いにある「純広東料理 慶楽(けいらく)」。昭和25年に創業したこの店は、健啖家の作家・開高健や吉行淳之介も通った知る人ぞ知る広東料理の名店である。彦作村長はエンターテインメント新聞社時代に何度かこの店を利用したことがある。「赤坂璃宮」や「楼蘭」ほど高くはなく、それでいてどこか香港にでもいるような本格的な広東料理を出してくれる。味にうるさい人を連れていくには格好の店の一つだった。

        慶楽③ 
        まるで香港

この店の名物の一つが「上湯炒飯(スープ入ヤキメシ)」(1000円)。炒飯(チャーハン)に熱々の白湯スープをたっぷりと注ぐという恐るべき発想で、「慶楽」の初代が創業当時からオリジナルメニューとして出しているもの。スープ入り水餃子もあるのだからスープ入り炒飯があってもおかしくはないが、案外これはコロンブスの卵かもしれない。ひょっとして初代は日本のお茶漬けをヒントにしたのかもしれない。

        慶楽② 
        63年の歴史

午後1時50分。1階の深緑色のテーブル席に座って、小雨降るガード下の通りを眺めながら、年季の入ったチャイナドレスのおばさんウェイトレスに「スープ入ヤキメシ」とひと言。食在広州。「四本足で食べないのは机、飛んでるもので食べないのは飛行機だけ」という中国人のブラックジョークを噛みしめながら、サソリまで食べてしまう中国人の胃袋をぼんやり考えていると、目の前に湯気とともに大きな白磁のドンブリがさっとやってきた。

        慶楽⑤   
        スープ入ヤキメシ!

鶏ガラや野菜などを長時間煮込んで取った白湯(パイタン)スープの下に見事な炒飯がゆったりと沈んでいた。旨そうなムキ海老が3匹乗っかっている。見ただけでかなりのボリューム。シンプルな中に広州の混沌が渦巻いているよう。思わず引き込まれてスキューバダイビングしたくなる。危ない、危ない。

        慶楽⑦ 
        恐るべき混沌?

まずは熱々のスープをレンゲでひと口。あっさりした塩味。さり気ない深み。炒飯は細かく刻んだ本格的なチャーシュー、卵、ネギが彩りを添えていて、形の崩れていないライスとともにすくうと、炒飯のいい香りが鼻腔をくすぐる。白湯スープとの相性は悪くない。ぷちっとしたムキ海老がいいアクセントになっている。

        慶楽⑨  
        ここだけの味わい

次第に炒飯が白湯スープを吸い込んでくる。そのオジヤのような食感も悪くはない。レンゲの回転がどんどん速くなる。こういう旨さもあるんだ。だが、村長にはこの単調さが気になった。旨いには旨いが飽きがくる旨さ。単調の中に奥の深さを感じられるか否か。きっと炒飯だけの方が旨いだろうな。村長の単調な前頭葉にそんな思いがチラとかすめるのだった。


本日の大金言。

あらゆるものを食べまくる「食在広州」。だが、今や食在日本かもしれない。二本足で食えないのは政治家だけ。




                   慶楽11 

埼玉の果て加須うどんのかき揚げ

 讃岐うどんや水沢うどんほど有名ではないが、埼玉の「振り向けばほとんど群馬県」に位置する加須(かぞ)市に「加須うどん」がある。背景に利根川を擁し、昔から小麦の産地でもある人口約11万強の田舎町だが、市内の中心は不動岡不動尊・總願寺(そうがんじ)の門前町として古い歴史を持つ。そこで参拝客にふるまわれたのが「加須うどん」の始まりといわれる。「うどんの街」として売り出そうとしているが、イマイチ盛り上がらない。

                浮野の里④ 
         浮野の里あやめ祭り

市内には約40軒ほどのうどん屋さんが「加須手打ちうどん会」を作っている。適度に太く適度にコシがあり、適度にノド越しがいい。彦作村長はポンコツ車をぷかぷか飛ばして、「浮野の里」で開催中のあやめ祭りを楽しんだ後、その中の人気店「新川うどん店」のだだっ広い駐車場に滑り込んだ。土と砂利の駐車場である。一瞬、砂煙が青空に舞い上がる。見上げると、東北自動車道。目と鼻の先が羽生SAという側道沿いの立地で、このローカルさが気に入った。

          新川うどん店⑧ 
          加須うどんの人気店

店内は明るく開放的で、テーブル席が5つと座敷があり、そこにも和テーブルが4つほど。田舎のおばちゃん店員(ひょっとして女将?)が太った体でテキパキと動いて、客をさばいていた。奥が厨房になっていて、店主らしい男性とスタッフが手打ちうどんを釜茹でしていた。村民2号が「うどん屋らしいうどん屋ね」とひとくさり。暑かったので、メニューの中から「天ざるうどん」(540円)を選んだ。「田舎かき揚げ」と書いてあった。かき揚げにわざわざ「田舎」と表記するのはどうしたわけか?

          新川うどん店② 
          手ごろな価格設定

10分ほどで、ざるに盛られたうどんと小皿に盛られたかき揚げがやってきた。かき揚げは作り置きで、「田舎」と表記した理由がわかった。立ち食い屋でも揚げたてを出すほど競争の激しい時代に、こののんびり具合は凄いとしか言いようがない。うどんは地粉を使っていて、讃岐うどんほどは太くない。手コネと足踏みと寝かせに時間をかけ、短時間生干しするのが加須うどんの特徴で、そのために適度に歯ごたえがあり、食感がつるりとしている。

         新川うどん店③ 
         天ざるうどん
         新川うどん店⑤ 
         コシとノド越し

新川うどん店のうどんは量はそれほど多くはない。だが、うどん自体に風味がある。つけ汁は鰹節や鯖節などの出汁がじわりと効いていて、返しも強くはない。あっさりとした深み。中太のもっちりつるりの麵とよくからむ。フツーに旨い。かき揚げはほとんどが玉ネギで人参もわずかに入っている。作り置きなので期待せずに口に運んだが、外側がカリッとしていて、意外に旨い。讃岐うどんのかき揚げのような、ある種の洗練さえ感じられた。田舎の野暮ったい洗練。ヤボセンうどんもまたよし。

         かき揚げ 
         田舎かき揚げ

「これで540円なら、私は満足よ」
「量もちょうどいい。後味も悪くない。だけど、加須うどんをもっと広めるには何かが足りない」
「讃岐とか稲庭とか水沢とか、このところ村長がハマっている伊勢うどんのようなインパクトがちょっと足りないかな」
「うどん界の胡乱(うろん)な奴。過疎地のうどん。キャッチフレーズはすぐ浮かぶんだけどなあ」
「そんなダジャレばかり言ってるから、村長は尊重されないのよ」
「・・・・・」



本日の大金言。

旨い店には客が寄ってくる。遠くからでも来たくなる味。それを極める努力と腕。それとPR力。「うどんの街」の課題は多いようで。



                    浮野の里⑦ 




素朴な仰天「名物ジャガイモ入やきそば」

 「ジャガイモ入り焼きそば」は栃木市のB級名物だとばかり思っていたが、古都・足利市の郷土料理でもある。足利を散策中に「ソース焼売」とともに、「ジャガイモ入り焼きそば」の暖簾をいくつも見かけた。足利も栃木県内。ジャガイモ入り焼きそば文化圏、略して「ジャガそば文化圏」。彦作村長は栃木市ではすでに2軒ほど賞味している。ジャガイモと焼きそばはミスマッチかと思っていたが、意外に旨かった。

カカア天下の上州に住む不死身の大叔母が庭で転んで足を骨折してしまった。緊急入院して、手術となり、そのお見舞いに行った帰り、彦作村長はふと足利の「ジャガイモ入り焼きそば」を賞味してみようと思った。どうせ食べるなら安くて旨い店がいい。村長の焼きそばシンジケートに聞くと、「それなら大安だよ。市内からちょっと離れてはいるが、地元の人が行く隠れ家みたいな店でもある。こっそり行け」。

         大安① 
         この佇まい

国道50号を南大町交差点で左手に曲がり、東武伊勢崎線を超えた田舎町の目立たない場所に「大安(たいあん)」という看板が見えた。「足利で当店だけの味 ポテト丼 焼きそば」の文字も見えた。店は田舎の古い、庶民的な店構え。「うどん そば」という暖簾が下がっていた。午後6時過ぎ。店内は4人ほど座れる座敷があるだけ。テーブルが3つ。目の前が厨房になっていて、これぞニッポンのお母さんという女性が2人、地元の常連さん相手に雑談していた。メニューが出番を待つ役者のように短冊で下がっていた。

          大安③ 
          むむむむのメニュー

初めて聞く「ポテト丼」(600円)にも心が動いたが、初志貫徹。「二代目六十年の味 ジャガイモ入やきそば」(400円ヨリ)を注文した。陽性の元気な元祖ニッポンのお母さんがドクダミ茶を出しながら聞いてきた。女将だった。
「あんたならそんなに食えないかな。普通でいいかい?」
「400円ヨリって書いてあるけど、400円って普通盛りのこと?」
「そう。若い人だと量を増やすんだ。あんた、感じがいいからみそ汁もサービスしてやるよ」

         大安⑤ 
         これで普通盛り

厨房から陽気な声とともにいい匂いが漂ってきた。「急ぐ旅ではない」と言ったことで、「じゃあ旨いのを作ってあげるよ」とジャガイモから茹で始めた。何という手づくり感とのんびり感! 時間を忘れるほど時が経ち、出てきたのは圧巻の焼きそばだった。「普通盛り」なのにかなりのボリューム。男爵イモがゴロリゴロリと入っていた。3個分だそう。キャベツと厚切りの豚モモ肉が合いの手を入れている。その中央には旨そうな匂いとテカリをぐわぐわと放つ中太の焼きそばが・・・。「あたいを賞味するのかい?」と挑発するように身を横たえていた。その迫力に思わずたじろぐ。

         大安⑥ 
         素朴な旨味と圧倒
         大安⑧   
         ジャガイモがごろごろ

気合を入れてひと口。麺は昔からの特別注文だそうで、それがソースソースしていないソースとうまく絡まっている。月星ソースという地元で100年以上の歴史のあるソースを使っているそう。甘さと酸味と旨味がひと味違う。ほのかに漂うラードの匂いが悪くない。「ラードをちょっと使うのがコツなのよ」と秘伝の一端を明かしてくれる。この大らかさ。

          大安10 
          絶景かな

ジャガイモはさすがに作り立ての旨さで、月星ソースとの相性がいい。定番の海苔をかけ、紅ショウガを加えると、別の風味が混じってくる。これもこれでいい。ぶつ切りのキャベツと厚切りの豚肉が、このあまりに素朴な圧倒をさらに引き立てていると思う。それにしてもこの量と質はただ事ではない。これはB級の横綱ではないか。女将のオヤジさんの代から同じ味だという。これで400円とは。隠れたB級の名店を発見した気分だった。すべて食べ終えると、お腹まわりが1センチほど膨らんでいた。



本日の大金言。

三浦雄一郎はスゴすぎるが、街中にも田舎にもスゴい人はいる。庶民の中のフツーのスゴさ。




                     大安11 

渋谷系武蔵野カレー汁うどんの味

 所用で久しぶりに東京・渋谷の街に降り立った赤羽彦作村長。小腹がすいたので、B級グルメハンターの団子鼻をひくひくさせながら、片目でしっかり渋ガールを観察した。ウマズイめんくい村周辺には生息していない小森純やしょこたんタイプのギャルがあっちに一匹、こっちに一匹。生活感のないモデルもどきの外側と多分砂のような孤独な内面。見事な体形。バーチャルとリアルが貼りついた表情に、ある種の戦慄と痛ましさを感じてしまうのだった。妖しい妄想もないわけではないが・・・。うむむむ、汗、バタリ。

        武蔵野うどん① 
        このB級さがたまらない

明治通りを恵比寿方面へと歩いてすぐ、ラーメン屋の並びに、「肉汁うどん」「昭和29年創業 武蔵野うどん」という大きな屋号が目に入った。白地に墨字で「竹國(たけくに)」というノレンが下がっている。いかにも、というB級の雰囲気が奥から漂ってきた。近づくと「カレー汁うどん 580円」という旨そうな立て看板メニュー。さらに目を凝らすと、小さな文字で「数量限定50食 プラス40円で、地粉うどんに変更できます」という文字。「おいでよ、お兄さん。だまされたと思ってさあ」とささやいているよう。

               武蔵野うどん③ 
       ちょいとお兄さん・・・

一見老舗のようで立ち食い屋のようで、テレビドラマのセットのような、この何とも言えない嘘くさい匂いが気に入った。入るとすぐに13~5人くらいしか座れないコの字型のカウンター。左手の自販機で「カレー汁うどん」(580円)と「地粉」(60円)券を買い求めた。合計640円ナリ。外の立て看板には「プラス40円」と書いてあったのに、自販機では「60円」。「20円、違う」というと、黒い作務衣姿の男性スタッフが「あっ、すいません。先日値上げしたんです」。この渋谷的ないいかげんさが彦作村長の心をさらにとらえた。昔の道玄坂周辺の怪しさを思い出させたからである。渋谷はこうでなくちゃいかん。

        武蔵野うどん④ 
        ホントに武蔵野うどん?

ほとんど待たずに地粉の「カレー汁うどん」がカウンターの上に置かれた。武蔵野うどんは無骨でぶっとくて硬くて長い。その武蔵野の大地を思わせる、リアルで素朴な圧倒が魅力のうどんである。だが、目の前の武蔵野うどんは違った。中太で洗練されていた。量も少なめ。カレーのつけ汁はどろりとした本格的なルーで、ヨーグルトが渦巻き状にかかっていて、いい匂いを放っていた。武蔵野うどんの渋谷的しょこたん的変換。薬味は分葱とタマネギのみじん切り。

        武蔵野うどん⑤ 
        地粉で食べやすい
        武蔵野うどん17  
        このカレーつけ汁は予想外

地粉麵はもっちりしていてそこそこコシがあり、しかもつるっとしている。国産小麦のいい香りもかすかにする。驚いたのはカレーのつけ汁。意外やこれが本格的で美味だった。どろりとしていて、インドカレーのスパイスが効いている。塩加減と酸味が絶妙。辛さもジワジワと効いてくる。奥からいい甘みが「どう?あたし、案外イケるでしょ?」と立ち上がってくるよう。豚肉もどっかと2切れほど入っている。期待が低かった分、その落差に軽く驚く。

        武蔵野うどん11 
        豚肉もあるでよ

どろりとしたメコン川のようなカレー汁に地粉うどんを沈ませる。あっという間に平らげてしまった。大満足ではなく、中満足とでもいうべきささやかな幸福に包まれてくる。砂漠の中の数秒の安堵。そば湯ならぬ「釜湯」をもらって、残ったカレー汁に注ぐ。湯気が立ち上る。その向こうに明治通りを歩くサラリーマンや若い女性の姿。バーチャルとリアルの壁が崩れていく・・・。



本日の大金言。

その昔は深い谷だった渋谷は武蔵野うどんでさえ飲み込んでしまう。若い女性を呼ぶために食べやすく、見た目もきれいにする。リアルに引き込むためのバーチャル。近藤勇が佐藤健にどこまで変換できるか?その落とし穴は?





                      武蔵野うどん15 

人気1位ラーメン屋に潜入、平ザルに驚く

 久しぶりにお江戸で仕事にいそしんでいる娘のキオが帰ってきた。一泊二日。「ああ疲れた」と言いながらも、激務にもまれてキリッとしたいい顔になってきていた。若い時の苦労は買ってでもせよ、は真理かもしれない。
「佐野ラーメンのう~んと美味い店に行きたいなあ」
10分もしないうちに、元のキオに戻っていた。大の字になったまま、足先でテレビのリモコンをつけてから、そうのたまった。村長も負けじと逆立ちしながら渋茶を飲んだ。村民2号が、あきれ顔でコーヒーを飲み飲み「でん六バタピー」をポーンと口に放り込んだ。ストライク!

村民2号が友人たちと食事に出かけたので、村長とキオは東北道を栃木・佐野までポンコツ車を吹っ飛ばすことにした。目指すは目下佐野ラーメンでネット人気1位の「麵屋ようすけ」。昨年10月にオープン、あっという間にラーメン好きのハートと舌をとらえた人気爆弾印の店である。店主は老舗の人気店「田村屋」で修行したらしい。午後1時半到着。

        麵屋ようすけ① 
        佐野ラーメン人気1位

店は新しく、駐車場も広い。その駐車場はほとんど満車状態だった。ノレンをくぐると、待ち客が12~3人ほど。店内は左右に広く、対面式のカウンターとテーブルが6つほど。右手は座敷になっていた。正面奥が厨房になっていて、「一麺一心」と書かれた額がかかっていた。黒いTシャツ姿のスタッフが4~5人ほど忙しそうに働いている。ふと見ると、白いタオルを頭に巻いた店主らしい男性がゆで上がった麺を大きな平ザルで湯切りしていた。筒ザルではなく平ザル! 久しぶりに見たその本格的なお姿にこの店がかなりのレベルのラーメン屋だと確信した。平ザルを操るには相当の年季と腕と自信が必要だからである。

        麵屋ようすけ③ 
        気合が入っている

多分バイトだろう若い女性が注文を取りに来た。村長は定番の「ラーメン」(580円)、キオは「ワカメラーメン」(680円)、それに「餃子」一人前(280円)を注文した。待ち時間は合計40分ほど。登場したラーメンは見た目はごくフツーの佐野ラーメンだった。透明な醤油ベースのスープと青竹手打ちの自家製平太麺。きれいなナルト、豚バラのチャーシューは2枚、シナチク、刻みネギ、それにホウレンソウが彩りを添えていた。だが、よく見ると、平凡のように見えて、すべてが洗練されていることに気づく。

        麵屋ようすけ⑥  
        このバランス

スープをひと口。あっさりしていてやさしい味わい。鶏ガラと魚介と野菜の甘みと深みが奥の方からじんわりと立ち上がってくる。麺は佐野ラーメンにしては縮れが少なく太い。噛むとコシがある。しかもつるっとした食感。村長はもっと縮れがあった方が好みだが、辛口のキオは感嘆したように「この麺は好き。私が食べたラーメンの中でもベスト3に入る。スープもきれいで旨味が奥にあるわ」。キオはいつの間にかラーメン通になっていた。

        麵屋ようすけ⑦ 
        イケメンである
        麵屋ようすけ⑧ 
        チャーシューの主張
        麵屋ようすけ14 
        すっきりしたスープ

チャーシューは2枚だが、それほど大きくはない。柔らかくて肉と脂身のバランスもいいが、個人的にはもう少し厚みが欲しい。ワンポイントのホウレンソウには感心した。これだけきれいで、全体のバランスを考えたプラスアルファは◎である。全体としては「うーむ、よくできました」という印象。

         麵屋ようすけ⑤ 
         土俵入り
        麵屋ようすけ12 
        キャベツの主張

「餃子」についても触れたい。ボリュームのある見るからに旨そうなデカ餃子が3個。こんがりパリっとした焼き面とやや厚めのもっちりした皮はかなりのレベルだと思う。具はキャベツとニラをわざと大きめに刻んでいる。肉は少ない。キャベツの存在が大きくて、これが特徴でもあるが、好き嫌いの別れるところだろう。旨いには旨いが村長は星3つ、キオは星4つとほぼ最大級の評価だった。佐野ラーメンの新しい伝説をつくりそうな予感はある。平ザルと「一麺一心」の額が、彦作村長のザル頭と「一行一心」の気合いと共鳴し合うようだった。



本日の大金言。

伝統を守るということは湧水のようなものかもしれない。同じように見えて、いつも新しい。佐野ラーメンの未来は明るい。




                    麵屋ようすけ13

谷中で超人気メンチとコロッケとは?

 「夏のあんみつ」を賞味したB級ハンター・彦作村長の目は、もう一つの目的であるメンチカツとコロッケに向かっていた。谷中銀座の中でも最も人気の高い「美味しい肉のすずき」。夕方の4時過ぎ、すでに5~6人の行列ができていた。この肉屋は創業が昭和8年、ぜいたくにもランクの高い黒毛和牛の端余り肉をミンチにしてメンチカツやコロッケにしているという。吉祥寺「さとう」と同じポリシーのようだ。

        肉のすずき② 
        谷中の行列店

店頭には取材に訪れたテレビ番組やタレントの写真が満艦色のように飾られている。すぐ近くの「肉のサトー」もメディアの写真をド派手に飾っていた。粋ではなく野暮の世界。「おい、トウヘンボクめ。冗談言っちゃいけねえ。世の中は生存競争に勝たなきゃ意味がないってもんよ。肉屋に粋なんて必要ねえ。それこそ無粋ってもんだ」そんな声が奥から聞こえてきそうだ。

        すずき② 
        すぐに売れていく

店の奥が厨房になっていて、そこからいい匂いが店先まで漂っている。ここは昔からラード(豚の脂)とヘット(牛の脂)を混ぜ合わせて揚げているという。彦作村長は最後尾に並んで谷中名物の「元気メンチカツ」(1個200円)を3枚、もう一品「おいものコロッケ」(1個90円)を2枚買った。「元気メンチカツ」は大人の握りこぶし大のデカさで、見るからにごつごつした手づくり感があり、「これが肉屋のメンチだ」という代物。「昔ながらの味 おいものコロッケ」はメンチほどデカくはないが、スーパーのコロッケよりも大きめ。こんがりといいキツネ色の揚げたてだった。牛肉入りだという。 

村長は「元気メンチカツ」はウマズイめんくい村へ持ち帰り、コロッケをぶらぶら歩きながら賞味することにした。谷中では缶ビール片手に賞味するのも流行っているそう。夕焼けだんだんを上る。夕焼けにはまだ少々早い。階段を上りきった左側に知る人ぞ知る「大島酒店」があった。入り口にはお世辞にもきれいとは言えない酒のケースで作った椅子が5~6個ほど並んでいて、常連らしきオヤジさんや昔美女がコップ酒を楽しんでいた。谷中本来の姿の一つでもある下町の飲ミニュケージョン。村長の好きな世界だった。

        すずき③ 
        昔の肉屋のコロッケ
        すずき④ 
        もそっと近くに・・・

そこに腰を下ろして、生ビールの小200円を買った。店の女将さんがキュウリとなすの漬け物をツマヨウジで刺してサービスしてくれた。この下町の心遣いに心の中に一足早く夕焼けが広がる。青空酒場。目の前を観光客が行き交っている。肉のすずきの「昔ながらの肉屋の味 おいものコロッケ」を紙袋から取り出す。ひと口ガブリと行く。パン粉はやや細く、それがサクサクとしていて、中のジャガイモの甘みとマッチしている。牛のミンチは極めて少ないが、探し出して噛むと奥歯からいい甘みがにじみ出てくるようだ。ある種、懐かしい昭和の匂いのするコロッケ。ごくフツーの旨さ。生ビールでノドをうるおしながら、ステテコ姿のオヤジさんとバカ話をしていると、初対面なのに「袖すり合うも多生の縁」というほとんど死語となった言葉が、頭の中を渡り鳥のようによぎっていくのだった。

        すずきメンチ② 
        デカい!超人気のメンチカツ
        すずきメンチ③  
        圧倒的な和牛のミンチ力

ウマズイめんくい村に帰って、「元気メンチカツ」を賞味。改めてしみじみ見る。楕円形のあまりにグラマラスなボディ。「あたいを甘く見ないでよ」とメンチを切っている。揚げてから半日ほど経ってしまったので、ジューシーさは半減していたが、それでも牛肉のミンチの塊のような具はどっしりとしていて、したたかな肉汁の旨味を放っていた。タマネギも入って入るが、その存在感は薄い。ショウガの香りがかすかにある。砂糖と塩で味付けされていて、ソースなしでも旨い。吉祥寺さとうのメンチより、牛のミンチの存在感が素朴で圧倒的。そこが好き嫌いの別れるところだと思う。安ワインを飲みながら、彦作村長は、揚げたてを食うべきだったと少々後悔した。


本日の大金言。

谷中銀座はメンチカツとコロッケの激戦区でもある。その中でも値段の高い「肉のすずき」のメンチが人気1位なのは伝統だと思う。旨味の裏にある下町の肉屋の伝統。




               すずき⑥ 

女が群がる「夏のあんみつ」を賞味

 東京・谷中は彦作村長の好きな街の一つ。東京の中の京都のようで、寺町と下町が同居していて、古いいい店が何気なく暖簾(のれん)を下げたりしている。近年は女性誌やテレビなどメディアの影響もあり、「谷根千(谷中、根津、千駄木)」は若い女性の人気スポットになっている。全身ミーハーの村長にとって、時々行きたくなる街でもある。

        和栗や12 
        暑い日は甘味ダス

梅雨入りしたはずなのに連日の青空で、彦作村長は谷中にふらりと立ち寄ることにした。お目当ては谷中銀座で若い女性や元若い女性にすごい人気だという甘味どころ「和栗や」。ここの「限定1日20食 夏のあんみつ」なるものを賞味してみようと思い立ったのだ。こう暑いと涼しい甘味に限る。行かずんば甘味マニアの名前もすたる。

        和栗や② 
        超人気店

店はすぐにわかった。女性がたむろしていた。「和栗や」と書かれた白地の暖簾。今どきの雰囲気を巧みにつかんでいる店構え。オープンしてまだ2年だという。伝統とは無縁なのにいきなり老舗のような佇まい。この手の店が最近は多い。ま、それも悪くはない。外には縁台があって中年女性が「和栗ソフトクリーム」をペロペロなめていた。
 
中に入ると、ゆったりした空間に2人用のモダンな和テーブルが三つほど。畳敷きの小上がりもあり、6人ほど座れるテーブルもある。京都や鎌倉の甘味どころのような、実に絵になる世界で悪くはない。男の客は怪しい姿の村長だけ。作務衣姿の男性スタッフに案内されて、たまたま空いていた2人用のテーブルに腰を下ろした。メニューを見る。迷わず「夏のあんみつ」(950円)を指さす。ちょいと見栄を張って、「厳選茎焙じ茶(くきほうじちゃ)」(セットで250円)も注文。合計1200円なり。チクリと痛い。

        和栗や⑥ 
        滝川クリステル?

待つこと15分ほど。透明なガラスの器に入った限定1日20食の「夏のあんみつ」がやってきた。モンブランのような栗のあんの山の頂上に栗の甘露煮がちょこんと乗っかっていた。下には栗の寒天、それに白玉が3個ほど。うむむむ。シンプルできれいな景色というしかない。

        和栗や⑦ 
        た、たまらん!

この店の特徴は茨城・笠間産の大栗を使用していること。すべてが自家製の栗のスイーツという徹底したコンセプトがユニークである。「夏のあんみつ」も小豆は使用せず、栗のあんを使用している。すべて素材にこだわり、添加物を使用せず、「これが栗やが考えた独創・栗あんみつです!」と高らかに説明されている。

「最初は栗蜜をかけないで、素材の味をお楽しみください。栗と砂糖しか使っておりません」
男性スタッフがていねいに説明する。
確かに品のいい甘さで、栗の自然な味わいに感心する。だが、やはり栗蜜をかけた方が村長の好みに近い。栗あんを崩すと中は栗のアイスクリームだった。これも栗の風味とアイスクリームの甘さがよく調和している。栗の甘露煮、栗の寒天、白玉もレベルはかなり高い。全体としてよくまとまっている。シンプルな美味さ。

        和栗や⑧ 
        すべてが高レベル
        和栗や⑨ 
        冷たい口福

だが、と村長は思う。店のポリシーとはいえ、こだわりを説明しすぎだと思う。最近、こうした説明型の店が増えている。素材に対する不安が大きい時代の反映かもしれない。そう理解もするが、こだわりぶりをここまで説明されると、へそ曲がりの村長には何だか高い値段設定の理由を聞かされているような気分になってくる。江戸しぐさの伝統とは違う。店は古今亭志ん生も住んでいた東京・谷中だが、本社は茨城だったことを思い出した。



本日の大金言。

女性の心をつかむのはモンブランに登るより大変かもしれない。だが、財布のひもをつかむのもそれと同じくらい難しい。






                   和栗や11 



東京のへそで「じゃこ天」と生ビール

彦作村長が江戸表への用事の際に、ふらりと立ち寄る居酒屋がある。日本プレスセンター裏手を西新橋側へ向かった、閑静な場所にある「はら凹(はらぺこ)」だ。居酒屋でもあり家庭料理屋でもあり、こじゃれた和風食堂でもある。ランチタイムは近くの虎ノ門や霞が関からサラリーマンやOLがどどどと押し寄せる人気店でもある。安くて旨い、彦即村長にとってはとっておきの店でもある。

        ハラペコ① 
        さり気ない入口

村長がエンターテインメント新聞社時代に大変お世話になった作家・高杉良さんが、新刊「第四権力」(講談社刊)の中でこの店を重要なシーンで使っている。アンタッチャブルなテレビの世界に斬り込んだ力作で、彦作村長もあっという間に読み終えた。

ここで久しぶりに隠密同士の飲み会があり、彦作村長は時間より早めに行くことにした。梅雨入りしたはずなのに空は高く日差しは強い。暑い。で、この店の隠れ名物「じゃこ天」で生ビールをぐいっと・・・と考えたからだった。午後6時過ぎ。まだ誰も来ていない。シメシメ。隠密なので、何人来るかわからない。最低でも10人は来そうな予感。人数が多そうなので、場外乱闘戦になる前に旨いものを賞味してしまおうというB級グルメの悲しいサガ・・・。

        ハラペコ② 
        ツマミは旨い

ここの女将は長崎出身で、鳥の唐揚げや長崎直送の焼きあご(飛び魚の稚魚)など安くて旨いサカナ類が揃っている。女将がいぶし銀のような出来物で最近多い過剰な説明書きがない。中身に自信のある人は虚勢を張らない、を地で行くような店である。1階がカウンター席になっているが、主戦場は地下。テーブル席や仕切りのある小上がりもある。「じゃこ天」(500円)と生ビール(大430円)を注文した。もう一品「ポテトサラダ」(420円)も追加注文。

        ハラペコ④  
        絶品のじゃこ天!

「じゃこ天」と生ビールが登場。「じゃこ天」はいわしやアジなど雑魚を骨ごとミンチにして油であげたもの。グレーの色味と素朴な旨味があり、練り物好きの村長は「黒はんぺん」などとともに漁港がそのまま凝縮したようなこの風味を愛している。宇和島が有名だが、その「じゃこ天文化」は長崎にも及んでいる。大きな切り身が4枚、こんがり日焼けした地黒美女のように中皿で箸を付けられるのを待っている。それにおろしショウガ。

        ハラペコ⑦   
        これこれ・・・

おろしショウガに醤油をかけて、地黒美女をひと口。こりっとしたいい食感。これだこれだ、この味だ。雑魚の風味がおろしショウガと醤油の伴奏で絶妙な甘みと旨味をかもし出してくる。口内が海になっていくようだ。その余韻を生ビールで洗う。B級の至福。

        ハラペコ⑧ 
        ポテサラもひと味違う

続いて自家製の「ポテトサラダ」が登場。これも村長の好みで、新鮮な素材を使っていることがすぐにわかる味。居酒屋の基本はポテトサラダだと改めて思う。と、突然、隠密が1人2人とやってきた。ま、まずい。手の内を知られてしまう。慌ててカメラに収めるのを止めた。その後はあっという間に人数が増え、いつものように場外乱闘へとなだれ込んでいったのだった。楽しくおいしい場外乱闘・・・。



本日の大金言。

安くて旨くて雰囲気がいい。そこにさり気ないという隠し味があれば。そういう店は意外な場所にある。A級ではなく、B級の楽しみ方。



                   ハラペコ⑤ 




ポピーとトマトパスタで巡礼気分

 「ねえ村長、ポピーがそろそろ終わりなのよ。埼玉・鴻巣のポピーがすごくきれいらしいわ。会津のお母さんの巡礼になるかもよ。その帰りに北本に寄って美味いパスタを食べる。知人のパン屋さんがおすすめのパスタよ。マスターがイケメンなんだって」
美熟女の村民2号が「わたしは誰?ここはどこ?」状態の彦作村長の耳元でささやいた。
うむ、案外いいかもしれない。巡礼ブームであるし。色彩のある巡礼・・・。

          笑顔14 
          ここは天国?

ポンコツ車を久しぶりにぷかぷか飛ばすことにした。荒川河川敷に広がるポピー畑は壮観だった。ピンクとオレンジのポピーが曇り空にくっつきそうなほど広がっていた。ここはひょっとして天国かもしれない。これほどのポピーを見たのは初めてだった。ところどころに観光で来ているご高齢の集団がいる。天使はどこにいるのだろう?

「ポピーを見たら、お腹がすいてきたわね。次はパスタ、パスタ」
天使が重すぎて地上に落下していた。時計を見ると午後1時を回っていた。ポンコツ車を飛ばして、北本駅東口の駐車場に滑り込む。北本にはなぜか美味いイタ飯屋が多いそう。村民2号の知人のパン屋さんは実家が北本にあり、その太鼓判の店が「レリーサ 笑顔」だった。レリーサとはイタリア語で「笑顔」の意味。イケメンの笑顔というのも気になるが。

        笑顔① 
        噂のイタメシ屋

9人ほど座れるL字型のカウンター席とテーブルが二つほどのモダンなイタ飯屋だった。ブラウンとオレンジ色を基調としたインテリアはそれなりに落ち着いている。ジミー・スミスのファンキーなジャズが流れていた。カウンターの中にオダギリジョーのような雰囲気のマスター。黒シャツが決まっている。それに若い女性が一人、笑顔で注文を取りに来た。

        笑顔② 
        どれにしようか?

村民2号がランチメニューの中から「北本トマトとモッツァレラチーズの塩味パスタ」(サラダ・ドリンク付き 1200円)を選んだ。ドリンクはブレンドコーヒー。村長も右にならえ。ドリンクは紅茶にしたが。オダギリジョーは多分イタリア料理を本格的に修行したのだろう、テーブル席からはすべては見えないが、パスタを茹で上げる動作やフライパンを揺する雰囲気がいい。できればシェフ帽をかぶってほしいが。

        笑顔④ 
        新鮮なサラダ
        笑顔15 
        主役の登場
        笑顔⑥  
        ムムム・・・おぬし、できるな

10分ほどで見るからに新鮮な「サラダ」が登場。北本市は農業も盛んで、トマトやミニトマトの種類も豊富。その「北本トマト」をぜいたくにアレンジした主役のパスタが続いてやってきた。白い陶器の大皿の上にベビーリーフ、ミニトマトがパスタと絡んでどっかどかと実に美味そうに乗っかっている。オリーブオイルがきらきらしていて、さらには雲海のようなモッツァレラチーズ・・・。よく見るとミニトマトの色が違う。どうやら数種類のミニトマトを使っているようだ。バジルの上に粗塩がぱらぱらと「旨味の結晶」のように振りかけられている。ケッパーのピクルスもさり気なく入っている。うむむむ。

        笑顔⑨ 
        ごっくん
        笑顔⑧ 
        隠し味がさり気なく・・・

「塩味がシンプルで私の好みの味だわ。麺は乾麺を使っている。それ以外は自家製だと思う。ちょっとボリュームがあり過ぎだけど、美味いからペロッと食べちゃった。体重が心配。確かにこのパスタはマルよ」
「味以外にイケメンマスターの評価も入ってるんじゃないか? 食いっぷりがやけにいいぞ」
「どこかのふんどし村長とは比較できないわよ。同じ人類とは思えない。今度は夜、来たいなあ。ワインでも飲みながら・・・」
「天使」は後50年は地上にとどまりそうだ。



本日の大金言。

そう言えば、レディー・ガガやマドンナもイタリア系。太ったり痩せたり、天使になったり悪魔になったり。その原因の一端が美味過ぎるパスタにあるのかもしれない。




                   笑顔13 

プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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