明日の新聞、2014年大予想

 本日は大みそか特別編で行こうと思います。まずは苦い前菜。

ウマズイめんくい村村長として、今年巳年の一年は、反省の多い年になってしまった。やりたいことの半分もできなかったことをここに告白いたします。その大きな理由は「怠惰」です。人生は思い通りにはいかない、という以前の問題です。来年はこの怠惰克服が大きなテーマになりそうです。改めて山登りの極意、頂上を見ず、足元を見て一歩ずつ、で行こうと思っています。何だか辛気臭くなってきたので、今年一年を締めくくる一句。

頭蓋骨りんごのように確かめる

皆さんの頭がい骨はどういう状況でしょうか? 今年は自分の頭がい骨を掌で触ってしみじみ確認することが何度かありました。普段、立ち止まって頭上の空を見上げることがほとんどないように、世界を作っているはずの自分の頭がい骨を確かめるなんてことはしないもんでしょ? これやってみると案外、面白いですよ。

メーンディッシュは「あしたの新聞 2014年大予想」です。当たるも八卦、当たらぬも八卦です。全体にピリ辛味です。

その1
ドジャース田中マー君、衝撃デビュー。初登板完封勝利もその後味方打線の援護なく、負けが込み、オールスター前に故障者リスト入り。結局、9勝6敗でシーズンを終える。ダルビッシュがツイッターで「夜遊びのし過ぎ」とからかう。ダルビッシュは18勝7敗でサイヤング賞受賞。
その2
アベノミクス破たん。日経平均が1万円を割り込む。4月の消費税増税が引き金。中小企業の倒産相次ぐ。潤ったのは一部の大企業だけ、と庶民の不満が爆発も時すでに遅し。
その3
サッカーW杯ブラジル大会で、日本予選敗退。主力のケガがひびく。ザッケローニ監督「ブラジルはW杯の会場としてふさわしくない」とコメント。
その4
芦田愛菜ちゃん、ロサンゼルスで普通の小学生になっていた。ハリウッド映画デビュー以来、消息が謎となっていた天才子役の近況を週刊S誌がスクープ。「もっと大きい女優になるための充電期間です」と両親がコメント。
その5
あの大手出版社が倒産。社長が「時代を読み切れなかったことと社内の意識改革が出来なかった」と痛恨のコメント。次はあの新聞社か、とマスコミ業界に衝撃が走る。
その6
富士山周辺で鳥と鼠の姿が消えるなど異変続出。気象庁が「噴火の可能性が高い」と異例の緊急声明。大地震の前兆か、とメディアが騒ぎ立てる。
その7
「ぷちぴいブーム」広がる。女子高生が火付けとなって、「ぷちぴい」(プチハッピー)が流行語となる。ユーチューブで、ぷちぴい動画コンテストが人気に。「ふて寝」もブームに。
その8
福島第一原発で抑え切れないトラブル発生。安倍首相が「ご安心ください。状況は100%コントロールされている」とコメントするが、誰も信用せず。
その9
安倍首相立ち往生、体調不良を理由についに退陣表明。「裏にアメリカの陰謀」と週刊誌が書きたてる。
その10
村上春樹、3度目の正直でノーベル文学賞受賞。ストックホルムの授賞式で「ボクはたった一人の読者のために書き続ける」とコメント。

デザートは除夜の鐘です。

今年一年、ありがとうございました。心から感謝いたします。皆さん、よいお年を!




                     築地場内 






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「池袋みそ麺」で胃袋から考える

 ヘビーだった巳年も残るところあと2日。日本列島も弥生人も縄文人もすっぽりと冷凍庫の中に入ってしまったような日々。2012年は50年後に「あの年が歴史の転換点だった」と言われる年になるかもしれない。縄文人の遺伝子が67%の彦作村長は、「こんなシバレル時は、味噌ラーメンに限る」と東京・池袋の東口をとぼとぼと歩いている。目指すはラーメン激戦区。ここに札幌ラーメン横丁に負けない味噌ラーメン屋があると北海道出身の知人が教えてくれたからである。

           花田① 
           味噌ラーメンのみそ

その人気店「麵処 花田」のノレンをくぐる。時間が午後2時過ぎだったのでこの程度で済んだが、お昼時は行列ができる店だそう。ほとんど待たずに入れた。店はL字のカウンター席のみ。数えてみたら13席ほどで、ギュウギュウ詰め状態だった。スタッフは3人。店主らしい目の鋭い職人型オッサンが片手の中華鍋をゴツゴツと操り、強力な炎でモヤシなど野菜を炒めていた。味噌スープの芳醇ないい匂いが充満している。札幌ラーメン横丁に紛れ込んだような、期待できそうな気配。

            花田3 
            札幌ラーメン横丁?

メニューは基本的に「味噌」(790円)「辛味噌」(790円)「味噌つけめん」(890円)「辛味噌つけめん」(890円)とシンプル。村長はその中から定番の「味噌」(790円)を選んだ12~3分ほどで、黒いどんぶりにどっかと盛られた味噌ラーメンがやってきた。中央にはタマネギと長ネギが白髪ネギのようにふわりと山盛りになっていた。その下には重量級のモヤシとメンマ。どんぶりの3分の2くらいを覆うようなチャーシュー。さらに、見るからに濃厚そうなスープと黄色い太縮れ麺が両手を広げていた。

            花田② 
            定番の味噌ラーメン
            花田⑥  
            太縮れ麺
            花田⑦ 
            ドロッとしたスープ

スープは豚骨ベースで、そこに特製赤みそと白みそをブレンドして使って仕上げている。そのせいか柔らかい色味。見た目はドロリとしているが、脂のギトギト感はない。背脂を過剰に使っている感じはない。赤いレンゲですくって口に運ぶと、濃厚で深みのある甘さが口中に広がった。ひょっとしてすったジャガイモを加えているかもしれない。ニンニクとタマネギの甘みも感じる。よく見ると細かいニンジンの姿も。年季の入った本格的な味噌ラーメン。

麵は西山製麺ではないが、東京では浅草開花楼とともに評価の高い三河屋製麺の特注麵を使っているようだ。もっちり具合といいコシといい申し分ない。充実した歯ごたえ。モヤシと絡めて食べると、味噌の粒つぶも絡みついてくるようで、胃袋から大いなる大地の満足感が立ち上がってくる。チャーシューもメンマも高いレベル。半分ほど食べてから、唐辛子と酢と胡椒を加えてみる。じんわりと優しい濃厚にピリリとした緊張が漂い、これはこれで旨い。この内容で790円は高くないと思う。

            花田⑨ 
            柔らかいチャーシュー
            花田2   
            3種の仁義?

日本は単一民族ではない。不安と憎しみと差別という人類の不治の感情が2013年は一段と増幅してしまった。その先に何があるのか。味噌ラーメンを食べながら、胃袋から人間を考える。共生は不可能なのか。どんぶりの中の深い隠し味。味噌のみそ。街に出て、1年の締めくくりに味噌ラーメンを食べるのも案外いいかもしれない。


本日の大金言。

愛国心は外から強制できるものではない。味噌ラーメンのように中からじんわりに限る。強制より共生。きれいな手で危機をあおるヤツに気を付けろ。



                       花田1

暮れの築地の「究極あなご丼」

 師走の築地市場の混雑は半端ではない。ウマズイめんくい村の今年の喰い納めカウントダウンは、ここに決めた。エンターテインメント新聞社が築地にあった時代から、彦作村長にとっては築地市場は「特別な場所」である。場内と場外があるが、食べるなら場内に限る。観光化が進み人が殺到し、昔のように、明け方からビール片手に新鮮な魚介類を楽しむ余裕はない。

午前11時過ぎ、場外市場の雑踏に揉まれながら、場内市場に入ると、ターレット(場内運搬車)やリフト車が、所狭しと走り回っている。村民2号は「危ないわよ」プンプン怒っている。マグロの頭が転がっていたりする。これだこれだ。久しぶりの場内に村長の胸は小躍りする。だが、飲食店が集まっている6号館や8号館前に行くと、メディアなどでよく取り上げられる人気店の前はものすごい行列。外国人の観光客もいる。値段も市場とは思えないほど安くない。村長は、その中でも実力の割には待ち時間の少ない「あんこう屋 高はし」にターゲットを絞った。ここの穴子丼は魚を仕入れに来るプロの間でも評価が高い。

           築地場内③ 
           美味まで30分

それでも、「高はし」の前には、8~9人ほど並んでいた。3軒隣りの「海鮮丼の大江戸」はオーバーではなく30~40人の行列。店の人が行列の整理に出ているほど。紺地のノレンの下に、「当店名物あなご丼 1300円」と紙にマジックで書かれた表示が、いかにも築地らしい。

            築地場内④ 
            パブロフの犬

30分ほど待って、ようやく中に入れた。狭い店内はカウンター席のみで、9人ほどしか座れない。奥が厨房になっていて、そこで白衣にゴムのエプロン、長靴という築地スタイルの板さん(たぶん二代目と三代目)が料理を作っていた。村長は「あなご丼」(小鉢、味噌汁付き1300円)、村民2号は「せっかく築地市場に来たんだから刺身に限るわ」と「刺身定食」(ご飯、小鉢、味噌汁付き1300円)を頼んだ。運のいいことに、村長が頼んだ瞬間「あなご丼はこれでヤマです!」(注文打ち切りの隠語)。ツイてる、ぎりぎりセーフ!

           高はし③ 
           喧噪の中の至福の時間

あなご丼が来るまでの間、「菊正宗」(1合500円)を熱燗で頼んだ。小鉢の切干大根と里芋の煮付けをつつきながら、今年一年を振り返っていると、10分ほどで、主役の「あなご丼」がやってきた。穴子は近海で取られたもの。見るからに柔らかくふっくらと煮付けられた一匹分の穴子さま。その上にどんと乗っかった本ワサビ。穴子の下には刻み海苔が敷かれ、全体として、確かに、プロの料理人が絶賛する雰囲気を漂わせていた。

           あなご丼①  
           お待ちしておりました
           あなご丼⑨  
           究極のあなご丼
           あなご丼⑤ 
           言葉はいらない

箸を付けると、オーバーではなく穴子が崩れ落ちそうになった。姿かたちを崩さずにここまで柔らかくふくよかに煮付ける腕前に感動を覚えながら、まずはひと口。穴子は口の中でふわりと立ち上がり、意外に薄味で、とろけるような余韻とともに、ノドの奥へと消えて行く。炊き立てのご飯(たぶんコシヒカリ)にかけられた甘辛だれは、あんこうの出汁(肝も入っている?)を加えていて、これが実に旨い。ワサビを付けて、ほろほろと崩れそうになる穴子とご飯を一緒にかっ込む。その幸福な時間。村長がこれまで食べた「あなご丼」の中で間違いなくベスト3に入る美味さ。食べ終えるのが惜しいと思ったほど。

            あなご丼⑦ 
            およしになって

「刺身も本マグロとブリと鯛だけど、いつも食べるのと違う。さすがの味。1300円は安くないけど、この内容だと仕方ないわ。待ち時間はどうにかして欲しいけど」
「期待以上の味だった。これだけ観光化されてしまって、この味を維持していくことは大変だと思う。店の人のストレスも感じたよ。いい魚がどんどん値上がりして、『この値段でやっていくのが大変なんですよ』ってこぼしてたけど、案外本音かもしれない
「客がこれだけ入っても儲からないとも言ってたわね。それはどうかと思うけど、頑張ってほしいわ。村長も来年はもう少し頑張って稼いでね」
「深海に逃げたくなってきた。私は穴子になりたい・・・」
「・・・・・」

本日の大金言。

世界一の巨大な胃袋「築地市場」。今や国内だけでなく、海外からの観光客まで飲み込もうとしている。その出口問題にも目を向けたい。


                      あなご丼⑧ 

「大学いも界」のチョモランマの味

 先月のこと、京都のグルメ亀仙人が東下りした折に、浅草でちょっとした会合を持った。その際にグルメ亀仙人が「大学いも 千葉屋」の紙袋を手にしているのを、彦作村長は目ざとく見てしまった。さすが、と彦作村長は唸った。大学の偏差値の頂点は東大だろうが、こと大学いもとなると、浅草の千葉屋を押す人が意外に多い。東大を超えて、大学いも界のチョモランマ、かもしれない。ん?

浅草には明治9年(1876年)創業の「おいもやさん 興伸」もある。ここのスイートポテトは特に絶品で、大学いもも旨い。種類も多く、東京を中心に15店舗を構えるまでになっている。だが、「大学いも 千葉屋」は、昭和25年(1950年)創業以来、言問通りの「雷5656会館」の並びで、手を1センチも広げずに、戦後の匂いを残す小さな店で、大学いもを作り続けている。メニューは「大学いも」とスライスした「切揚」のみ。それも少量しか作らない。チョモランマというよりイリオモテヤマネコのような存在。

            千葉屋⑧  
            昭和にタイムスリップ!

            千葉屋② 
            切揚は売り切れていた

彦作村長とウマズイめんくい村の一行は、「正ちゃん」でホッピーと牛めしを堪能した後に、ほろ酔い家分で、「千葉屋」に足を運んだ。午後3時を過ぎたばかりだというのに、「切揚(きりあげ)」(400グラム700円)はすでに売り切れていた。かろうじて、「大学いも」(400グラム700円)がホーロー挽きの器に残っていた。甘い素朴な蜜の匂いと木枠が昭和にタイムスリップした気分。奥が厨房になっていて、頭にねじり鉢巻き姿の中年男性と女性が、年季の入った大鍋で大学いもを作っている最中だった。ここにも職人がいる。

            千葉屋⑥ 
            作り立てダス
            千葉屋⑦ 
            黄金色の美味

村長は400グラムを買い求めて、浅草をそぞろ歩きしながら、揚げ立て、作り立ての大学いもを2個だけ賞味してみた。外側の蜜は意外にさらっとしていて、中のさつまいもの旨味を引きたてる意図を感じた。「おいもやさん 興伸」の蜜は水飴のようにドロリとしているが、「千葉屋」は甘さが控えめで、蜜の存在を適度に抑えた味。それは好みの問題でもあるが、正直に言うと、村長の好みは「おいもやさん」の方。だが、その判断は甘かった。

ウマズイめんくい村に持ち帰って、翌日の朝、本格的に賞味することにした。買ってから17時間ほど経過していた。備前焼の小皿に乗せて、改めてしみじみと見た。黄金色の蜜のテカり。黒ゴマの点々。只者でない雰囲気。静かになめんなよ光線を放っていた。
「揚げ立ても美味かったけど、それよりも馴染んで来るのかしら。姿がよくなっている気がするわね」
村民2号も見入っている。

            千葉屋①  
            17時間後
            千葉屋⑤ 
            チョモランマ!

賞味すると、外側の蜜はやや濃厚さを増していて、甘さがより馴染んでいた。だが、中のさつまいもはホクホクのままで、冷たくなっているにもかかわらず、蜜のトロリ感との相性が絶妙と言わずにいれない。揚げ立ての時には感じなかったほのかな塩加減も効いている。口中に残る後味がうむと唸りたくなるほどいい。うむむむ。つい、電話であれこれ聞いてみたくなった。

「さつまいもは季節によって変えてます。今の時期は鹿児島の紅さつまを使っています。買ってから翌日までに食べてください。えっ、なぜ千葉屋なのかですか? 創業当時に千葉のサツマイモを使っていたからなんですよ。えっ、じっくりと低温で揚げているかですって? 最後に表面を高温で固めるのかですって? ま、そのあたりは秘伝ですよ」
店主らしい男性が、最後はあきれ返るように笑った。


本日の大金言。

たかが大学いも。それにスタイルを変えず1か所に根を下ろして作り続ける。その素晴らしさ。谷岡ヤスジの「才能のある奴は一杯いる。オレは10年やって、初めて認める」という名言を思い出した。それが63年の重み。




                       千葉屋⑥ 




浅草ホッピー通りの「牛めし」

 ときどきふらりと浅草に行きたくなる。スカイツリーができてから、浅草の観光地化はさらに進んだが、一方で、「原浅草」とも言うべき人間の匂いのする場所も所々に残っている。その一つ、ホッピー通り(煮込み通りとも言う)の名物居酒屋「正ちゃん」で、飛び切りのB級ドンブリを猛烈に食いたくなった。ブレーキの壊れた車状態。村民2号も看護士のように付いてきた。

伝法院通りから映画街の方に向かっていく途中にホッピー通りがある。戦後の浅草の匂いを色濃く残すこの一帯は、昼間からホッピーや煮込みを出す居酒屋が並んでいる。ここにも観光化の波が押し寄せているが、ほとんどが屋台の名残りを残していて、戦後のバラックの匂いが今でもかすかに漂っている。

            正ちゃん① 
            戦後浅草の原点の世界

「正ちゃん」は、この界隈でも抜けた存在で、店自体は小さく、8人ほどしか座れないL字のカウンターしかない。だが、店先には日除けパラソルと周りをビニールで覆った安手の椅子席が広がっている。青空の特等席も。これがいいのである。午後1時半を回ったばかりだというのに満席で、猫が入る隙もない。村民2号が息を飲んでいるのがわかった。客の7~8割は男で、それが真っ昼間から、ここの名物「牛すじ煮込み」をつついてはホッピーやビールや酎ハイをあおっているのである。

            正ちゃん② 
            年季の入ったメニュー

しばらく待っていると、「店の中なら空いてるよ」というオヤジさんの言葉。村民2号効果かもしれない。縫うようにして、中に入って、狭いがいい雰囲気の木のカウンター席に腰を下ろす。まずは「ホッピー」(白450円)と「ぜんまい煮」(300円)を頼んだ。村民2号は「牛めし}(500円)。この「ぜんまい煮」が意外に絶品だった。ぜんまい、メンマ、こんにゃく、油揚げを甘辛に煮込んだものだが、意外にあっさりした甘さで、後を引く旨さ。B級の絶品と言ってもいい。ホッピーを流し込みながら、浅草の戦後の原点を確認する。これだこれだ。

            正ちゃん③ 
            まずはホッピーとぜんまい煮

ほろ酔い状態になったところで、村長も「牛めし」(500円)を頼んだ。5分ほどで、隠れB級キングがやってきた。牛めしというより、「牛すじホルモンめし」と言った方が正確かもしれない。濃い飴色の世界からいい匂いがぐわんと立ち上ってきた。「牛煮込み」(450円)を熱々のご飯の上に乗っけただけのものだが、これが実に旨い。化学調味料だとか健康にどうだとか、有無を言わせぬ旨さ。甘めの甘辛で、牛すじと内臓に付いた肉が、柔らかさとかジューシーだとかという表現を超えている。ぷるるん、こりこり、その奥にある曼荼羅(まんだら)の世界。

           正ちゃん⑤ 
           噂の牛めしの登場
           正ちゃん⑥ 
           唐辛子をパラパラ
           正ちゃん⑧ 
           言葉を超えている

「牛煮込み」は、長い時間をかけて、牛すじと内臓をぐつぐつと大鍋で煮込み、そこにタマネギとこんにゃくを加えたもの。昭和28年に創業してから、約60年間ずっと継ぎ足し続けているツユの味は、一朝一夕にできた味ではない。それを乗せた締めの「牛めし」。つゆだくのご飯もまさにB級の旨さ。どんぶりの底に引きつけられるように、あっという間にかっ込んでしまった。五臓六腑に力がみなぎってくるのがわかる。「うむ」と村長が立ち上がった。村民2号も満足そうに「ごちそうさま」とすばやく外に出た。青空が目に滲みた。「トイレがきれいだったわよ。意外だったけど」村民2号がつぶやいた。


本日の大金言。

浅草の屋台の大鍋には、戦後の人間の営みも煮込まれている。スカイツリーの足元にあるB級の飛び切りの世界。上を見る前に下を見ろ。そう無言で語っているようだ。




                       正ちゃん11 

サンタが運ぶ「焼きたてバームクーヘン」

 本日はクルシミマスイブ。柄にもなく、本日は特別にジョン・レノンの「ハッピークリスマス」をBGMに流しながら、このブログを書いている。ジョン・レノンがこの曲をアメリカでリリースしたのは1971年(昭和46年)12月1日。歌詞の中でジョンは「世界はひどい過ちを犯しているけど ハッピークリスマス」(バックコーラス「戦争は終わるよ それを望みさえすればね 」)と繰り返し歌っている。それから42年。世界のひどい過ちはさらにひどくなっている。だが、この曲は、この季節の定番となって、途切れることなく世界中で流れている。ジョンは意図したとおりに、人類の心に永遠の希望のロウソクを残した。改めてすごい人だなあと思う。

            クラブハリエ 
            クラブハリエ Bスタジオ

先週末、クリスマスソングが流れる池袋へ。アンハッピーな人の忘年会に出席するためである。開始まで1時間ほど時間があったので、久しぶりに東武百貨店のB1を散策することにした。ふと、吸い寄せられるように買い物客でにぎわっている一角に目が行った、第二次バームクーヘンブームの火付け役になった「クラブハリエ Bスタジオ」だった。パティシエがガラス張りの中で、バームクーヘンを焼いていた。近江八幡市に本店がある和菓子屋「たねや」のバームクーヘンブランドで、カフェコーナーまであるのは東京では日本橋三越本店とここしかない。ガラス張りのシャレたカフェ。サンタ姿のウエートレスがちらりと見えた。これは入るっきゃない。
 
            クラブハリエ① 
            手焼きの世界
            クラブハリエ②  
            引き返せない

バームクーヘンをデザインしたテーブルに腰を下ろして、「焼きたてバームクーヘン」(473円)とアッサムティー(557円)を頼んだ。焼きたてのバームクーヘンを食べるのは初めて。しかも、あのクラブハリエ。5~6分ほどでサンタがしなやかに運んできた。卵とバターとバニラのいい香りがふわりと漂った。村長は宮仕え時代に、銀座・松坂屋で「ねんりん家」の行列に並んでバームクーヘンを買って食べたことがある。それを思い出した。

           クラブハリエ④  
           主役の登場
           クラブハリエ⑦ 
           アッサムティー
           クラブハリエ⑥ 
           ハッピークリスマス?

目の前のクラブハリエの焼きたては、年輪の部分はしっとりとしたきれいな黄色で、4つにカットされていた。表面のいい焼き色と砂糖を煮詰めて作った糖衣(フォンダン)が半透明の見事な蜜の世界を作っていて、パティシエの手焼き感がにじみ出ている。フォークでまずはバーム(木)の部分をひと口。柔らかい。しっとり感とふわり感。卵とバターとかすかなリキュール。甘さは控えめ。口の中で溶けて行く感じは、フツーのバームクーヘンの歯ごたえとは違った。ややもすると、物足りないと思うほどの柔らかなしっとり。

            クラブハリエ⑨ 
            ま、ひと口

次にフォンダンとともに賞味。ザクッとした甘いフォンダンがバームクーヘンをさらに引きたてる。ブームを作っただけのことはある。品のいい抜けて行くような美味さ。生クリームも付けると、ミルクのいい香りが舌の上から鼻腔の奥までをくすぐって、一瞬目を閉じたくなる。そのままサンタの膝枕で寝てしまいたくなる。ねんりん家の焼き立てとほぼ同水準の美味さだと思った。

あえて言うと、合計1030円の出費だったが、できれば、セット価格にして、900円以内にしてくれればありがたい。せめてクリスマスシーズンくらいは、ね。そんなことをブツブツ言いながら、レジに向かうと、またも「ハッピークリスマス」が流れていた。ジョン・レノンはバームクーヘンが好きだったのか気になった。


本日の大金言。

争いも戦争も過ちも繰り返す。ハッピーもアンハッピーも繰り返す。あまりに悲しい現実。今日ぐらいは何ができるか、じっくり考えるのも悪くない。




                         クラビハリエ 



利休の後の「すき家のカレー」

市川海老蔵主演「利休にたずねよ」(田中光敏監督)を観た後、久しぶりにフードコートの「すき家」で遅いランチ。エンタテインメント新聞社時代には「すき家」と「まつ屋」の牛丼はよく食べた。特にフトコロがぴゅうぴゅう寒いときなどはありがたかった。安くてそれなりに旨い。今回は、この秋デビューした「旨ポークカレー」(並450円)に目が行った。ポークとジャガイモなど野菜が「ごろごろ」という言葉で強調されていた。吉野家の「こく旨カレー」が330円(並)ということを考えると、450円はかなり強気の設定である。ちなみに松屋は「オリジナルカレーがみそ汁付きで350円(並)。

            すき家 
            すき家だい好き
            すき家② 
            旨ってホント?

自販機で「旨ポークカレー」を押して、待ち時間は5分ほど。雑踏の中の孤独も悪くない。可愛らしいバイトの女の子からお盆に乗ったカレーを受け取る。楽しいのう。大きくて黒いどんぶりの中の旨ポークカレーは、確かにジャガイモと人参がほどよい大きさでゴロゴロ。ポークは5個ほどゴロゴロとはいかず、コロコロ。カレーは脂がほどよく浮いていて、高めの価格設定をするだけのことはある見晴らしだった。村長の頭の中には、映画の中で使われた楽家初代長次郎の黒楽茶碗の残像がまだ残っている。目の前にはすき家のカレーの黒いどんぶり。

            すき家③ 
            この見事なお姿
            すき家④ 
            ごろごろごろ

カレーは中辛で、コクもある。甘みもある。どこかその甘みにタマネギだけでなく、チョコレートのようなかすかな香りを感じる。まさかチョコも入れている? スパイシーさもほどよくある。フツーに旨い。ジャガイモと人参とポークはたぶん注文を受けてからバイトの子がルーと合わせているのだろう、形が崩れていない。その分、味がしみ込んでいない。きれいな、マニュアルのカレー。それも悪くない。多分、男女、世代を問わず、最大多数が80%満足する味わいを追求するとこうなるのだろう。ライスも以前すき家で食べたものより一ランク旨くなっている。福神漬けも真っ赤ではなく、自然な茶色。すべてがよくできたカレー。

            すき家⑦ 
            ポークとジャガイモと人参
            すき家⑧ 
            ライスも意外

村長はファストフードのライトな満足感に浸った。頭の中には「利休にたずねよ」の余韻がまだ残っている。本物志向の強い、よくできた映画で、映像の美しさや、北政所や側室が片膝を立てて座っているところなど時代考証にも相当な力を入れていることがわかった。ただ一点、秀吉の描き方に不満が残った。凄味のリアリティがない。80%の人の秀吉像をそのまま演じているような、類型的な秀吉。惜しいなあ。ふと、きれいに平らげた黒いどんぶりを見る。ありゃりゃ、その中に映画の余韻もすっぽり入っていた。何でこうなるの?


本日の大金言。

大衆消費社会の進化と職人。相容れないこの二つを結びつけることは不可能なのか?




                      すき家10 

神田・竹むらの「あわぜんざい」

 東京・神田須田町の甘味処「竹むら」は、和スイーツ界でも一目置かれている。あの池波正太郎が、この店を贔屓(ひいき)にしていたこともあるが、昭和5年(1930年)創業の入母屋造りの古い店構えは、遠い江戸の昔の風情を残している、都内でも数少ない場所でもある。真向いには天保元年(1830年)創業のあんこう鍋「いせ源」、明治17年(1884年)創業の江戸そば「まつや」もすぐ近くにある。一杯ひっかけた後に、「竹むら」でおしるこを食べる楽しみを、池波正太郎がエッセイで書いている。よくわかる。

            竹むら10 
            歴史的建造物

彦作村長は、この「竹むら」に約15年ぶりに足を運んだ。ここの粟(あわ)ぜんざいを食べたくなったからである。浅草・梅園、上野・みはしと粟ぜんざいの名店を制覇した最後に、ここの別格の味を賞味しようと思った。「梅園」も「みはし」ももちろん美味いが、粟ではなく実際はキビを使っている。ほとんど見分けがつかない。だが、この「竹むら」だけは、未だに粟(あわ)を創業当時からの杵(きね)でついているという。昔のままの作り方へのこだわりといい、店舗を広げずに、この一軒の暖簾(のれん)を守り続けている姿勢といい、村長が感嘆した京都・北野天満宮前の「粟餅所 澤屋」をほうふつとさせる。

            竹むら① 
            暖簾をくぐると
            竹むら② 
            そこは別世界だった

時刻が夕方だったために、いつもは行列のできる店内にスムーズに入れた。「揚げまんじゅう」(450円)もここの名物だが、村長はテーブル席に座ると、当初の目論見どおりに「あわぜんざい」(760円)を頼んだ。テーブル席は8つほど、それに入れ込みの座敷。まず、桜湯がやってきた。お湯に桜の花びらが浮いている。この風情は竹むらならでは。続いて、「あわぜんざい」がお盆に乗ってやってきた。横にはシソの実の塩漬け。

            竹むら⑤ 
            いらっしゃいまし

黒塗りのお椀は上野・みはしと同じように小ぶり。ふたを取る。湯気とともに、黒味の強い見事なこしあんが現れた。上に大納言小豆が7~8粒ほど乗っている。粟(あわ)の姿は見えない。このあんこが絶品だった。ふうふうしながらひと口、口中に箸で運ぶと、その滑らかさが只事ではない。小豆のいい風味がふわりと広がる。甘さといいかすかな塩加減といい、絶妙としか表現のしようがないものだった。裏側に熟練の手作業を感じさせる。小豆は北海道十勝産のものを使っているという。

            竹むら⑥ 
            昔のままのお姿

さらに箸を入れると、黄色いあわ餅が現れた。杵でついた粟餅は、粒つぶがほどよく残っていて、ほのかな風味が立ち上がってくる。こしあんとの相性はさすがのもので、これがたぶん東京の粟ぜんざいの最高峰ということを十分にうかがわせる。余韻がとてもいい。だが、とシニカルな村長は思う。こしあんの量がもう少し欲しいと。760円という高めの舌代に文句を言うつもりはない。これは好みの問題だろう。

           竹むら⑦ 
           貴重なあわ餅
           竹むら⑧ 
           こしあんの凄味

感心したのはシソの実。きりっとしていて、村長がこれまで食べた箸休めのチャンピオンだと思う。食べ終わってお茶を飲む。次第に村長の心に、ここの粟ぜんざいはこの店の、この周辺の、江戸・東京の消えゆく面影とともに味わうものではいないか、という思いが芽生えてきた。あの東京大空襲から逃れた数少ない戦前の東京の街並み。それを愛した池波正太郎。外に出ると、ほろ酔いの池波正太郎が懐手で十歩先を歩いている。そんな気がするのだった。


本日の大金言。

京都の澤屋といい、亀末廣といい、暖簾(のれん)を広げずに一か所で味を守り続ける老舗もある。一所懸命の伝統の価値。




                        竹むら⑨ 

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超人気ラーメン店のドロドロスープ

一部の方に ご心配をおかけしましたが、本日はめでたい。今年の夏から悩まされてきた消化器問題がようやく解決した。済生会栗橋病院の名医から、「特に致命的な病気は発見できませんでした。でも油断は禁物です。暴飲暴食に気を付けてくださいね」とほとんど無罪判決。細かいことは気にしない。検査検査で明け暮れたこの3か月を思うと、涙が2~3滴落ちてくる。自業自得、それがどうした?

彦作村長は「出所祝い」に、病院からポンコツ車で20分ほどの埼玉でも有数の人気ラーメン店へと向かった。あの「麵堂 稲葉(いなば)」の久喜店である。古河に本店があり、今年4月に久喜に支店がオープン。あっという間に行列のできる店になっている。ここの濃厚とりそばを賞味しようと思ったのだ。午後3時スレスレに到着。時間が時間だけに、待たずに入れた。

         稲葉  
         埼玉の超人気店
         稲葉② 
         あっさり系と濃厚系

ここはつけ麺も有名だが、まずは定番の濃厚系「とりそば(塩味)」(700円)にした。新しい店なのに木造黒作りの一軒家で、木の長いカウンター席と、4人用テーブル席が二つしかない。カウンターの対面が厨房になっていて、黒シャツ姿の男性2人が汗だくでラーメン作りに励んでいた。BGMはB’Z。オーナーがB’Zの熱烈ファンで店名もそこから取ったほど。そのカウンター席に座って、10分ほどで「とりそば」がやってきた。

          稲葉③ 
          いい面構え

黒いどんぶりに黄色い世界が揺蕩っていた。黄金色というよりもドロリとした鶏の黄色みがかったスープ、長方形のデカい豚ばらチャーシュー、穂先メンマ、万能ねぎ、みじん切りのタマネギ、海苔という構成。ドヤ顔がサマになっていた。村長はおもむろにレンゲでスープを口へと運んだ。ドロリというよりトロリとしていて、意外にあっさりした塩加減。鶏の出汁がほどよい甘みをじゅわりとかもし出す。「鶏を弱火でじっくり炊いた」というだけのことはある。

         稲葉④ 
         中細のストレート麵
         稲葉⑦ 
         豚ばらチャーシュー
         稲葉⑥ 
         穂先メンマ


その下の麺は中細のストレート麵で、加水率が低いのだろう、コシが強く、ボソッとした歯ごたえ。悪くない。トロリとしたスープによくからむ。チャーシューもほどよい柔らかさ。感心したのは穂先メンマ。柔らかさとシャキシャキ感がいいバランスで、全体的に濃厚な世界にいい合いの手となっている。

         稲葉⑤ 
         どろりスープ
         稲葉⑨ 
         魔法のゆずコショウ

村長はこのトロリとしたスープの正体が気になった。くず粉を入れているのではないか? 鶏のゼラチンなのか? その正体は特定秘密のようで、「鶏を弱火でじっくり炊いた」としか明かしていない。旨いにはうまいが、村長はやや味わいに単調さを感じた。備え付けの「自家製ゆずコショウ」を加えてみた。すると、味に微妙な変化が起きた。イケる。旨い。それは出所祝いにふさわしい劇的体験だった。ほとんど完食。その瞬間、頭の中のおんぼろステージに日本酒とワインと美女が現れ、舞い踊り始めた。めでたい。


本日の大金言。

一寸先は闇。一寸後も横も闇。今、手に持っているマッチ棒の灯りで足元を照らせ。はしゃぐのは早すぎる。




                      稲葉11 

「ダロワイヨのオペラ」を食べに行く

 チョコレート好きの村民2号が珍しく憂うつな顔をしている。この季節になると、かつてたまに行った銀座のカフェを思い出すらしい。ウマズイめんくい村にクリスマスは来ない。チョコレートも来ない。仕方がない。彦作村長は残り少ない財布の中身を確かめてから、猫のようにぎっくり腰を伸ばして立ち上がると、「今年の締めに銀座のカフェに繰り出そう!」と宣言した。

          銀座ダロワイヨ 
          ダロワイヨ銀座本店

一年に一度の清水の舞台。目指すは「ダロワイヨ銀座本店」。1階はパンとケーキ売場、2階はカフェレストラン。ここの2階で、あのチョコ菓子「オペラ」を食べてしまおうと算段した。一人暮らししている娘のキオも呼ぶことにした。ここは人気店で、4~5組ほど待っていた。キオが珍しく着飾って合流。村長はよれよれの綿スーツ姿。

          ドロワイヨ② 
          お好きなものを・・・

こげ茶を基調にしたシックな店内にOLやおばさんのグループが師走の午後のひと時を楽しんでいる。メニューの中から、「おすすめケーキセット」(1470円)を頼むことにした。好きなケーキ一品とドリンク(コーヒー、紅茶、ワインの中から一品)の組み合わせ。全員、声をそろえて「オペラ」。飲み物はキオと村長は紅茶、村民2号はコーヒーを選んだ。銀のスプーン、ナイフ、フォークがセットされる。

          ドロワイヨ④ 
          オペラとカシスシャーベット

12~3分ほどで、白と金の模様入りの磁器皿にオペラとカシスのシャーベットがきれいに盛りつけられてやってきた。カシスのシャーベットは甘いソースがかかっていて、フランス人の好むえぐい果実味がジュワリと口中に広がる。悪くない。
「これ溶けてくると、ソースみたい。この濃厚な甘酸っぱさが大人の味ね」
キオと村民2号が声をそろえる。しばし沈黙の時間。

          ドロワイヨ⑤ 
          濃厚な時間

本命のオペラは、なるほどという味わいだった。表面のグラサージュ(ビターチョコレート)、アーモンド風味の生地、コーヒー風味のクリーム、ガナッシュ(チョコレートと生クリーム、洋酒)などが数えてみたら何と七層になっていた。コーティングされたチョコの上には小さな四角い金箔が乗っている。これは、信長の幻の安土城ではないか? 信長はどこにいる? 七層と金箔がそんな連想へとつながってしまった。

         ドロワイヨ⑥ 
         オペラ!
         ドロワイヨ⑧ 
         七層でござる

「美味いとしか言いようがないわ。濃厚なチョコレートと複雑な味が入り混じっていて、緻密な甘さの中に気品がある。アーモンドの風味がふわりとくる。説明するのが難しいわねえ」
「ナイフで切るのに苦労するわ。説明するより食べるが先」
「他の店と比較しても1470円という値段は総合して考えると、メチャ高くはないかもな。伝統を感じる。今年の締めのぜい沢と考えれば、ま、大出血も善しとしよう」
「こんなぜい沢は体に毒よ」
「ウマズイめんくい村のラストクリスマスってことで」
「村長、ごちそうさま~」
「・・・・・・」


本日の大金言。

ダロワイヨのパリ本店で「オペラ」が誕生したのは1955年(昭和30年)。トヨタが初めてクラウンを発売し、ソニー(東京通信工業)がトランジスタラジオを発売した年でもある。日本はどこへ行くのか?




                       ドロワイヨ10 

アキバの原点、大衆食堂のかつ丼

 秋葉原は電気街、オタクの街、メイドカフェの街、近未来都市とここ20年ほどで大きく変貌しているが、江戸時代から昭和にかけて、ここに巨大な青果市場があったことを知る人は少なくなってきた。平成元年(1989年)に青果市場が大田区へ移転してからは、高層ビルやマンションに姿を変え、かつての面影はなくなってしまった。だが、その青果市場時代の痕跡を残す大衆食堂がある。「アキバの老舗 かんだ食堂」である。

         かんだ食堂① 
         アキバの原点?

昭和34年創業。やっちゃ場の労働者が愛した大衆食堂は、そのまま平成25年12月現在もいまだ健在である。中央通りを御徒町方面へ歩いていくと、右手の脇道に、そこだけ昭和の原色の世界がポツネンと見えてくる。おお、ここだここだ。その不敵な店構えに彦作村長は脱帽したくなる。わしらを忘れてもらっちゃあ困るぜ。素通りするわけにはいかない。村長は夜のヘビーな忘年会の前に、ここで腹ごしらえをすることにした。

         かんだ食堂10 
         昭和がそのまま

カレーライス520円、さば焼き定食630円、コロッケ定食630円・・・メニューはほとんど昔のまま。カウンターとテーブル席。白衣の料理人も働いている女性も昭和のまま。だが、客は若いカップルやオタクもいる。彦作村長は迷った末に「かつ丼」(680円)を頼んだ。みそ汁が別売り(50円)というのが悲しい。お茶で我慢。待ち時間10分ほどで、やっちゃ場のかつ丼がやってきた。溶き卵にしっかりと火が通っている。ふわとろなんて軟弱すぎる。刻み海苔のパラパラ。見るからに昭和のB級のかつ丼!

          かんだ食堂③ 
          お呼びでない?
          かんだ食堂⑤ 
          元気にやってるかい?

トンカツは揚げ立てではなく、多分揚げ置きだろう。だが、肉の厚さは1センチはあろうかというスグレモノ。デカい。肉は柔らかいロース肉で、コロモもしっかりと付いている。何より感動的なのは、トンカツの下に敷かれたタマネギの圧倒的な量。やっちゃ場の生き残り。出汁と醤油と砂糖のバランスがいい。見た目よりも薄味で、熱々のご飯とともにかっ込むと、じんわりと昭和のよき大衆食堂の味が、口中から胃袋へと滲みこんでいく。寒風にさらされた五臓六腑が生き返る。B級どんぶりキングのパワー。

          かんだ食堂⑦ 
          ロース肉、厚さ1センチ
          かんだ食堂⑧ 
          タマネギの底力
          かんだ食堂⑨ 
          B級のプライド

ご飯もA級ではなく、B級のうまさ。汁がほどよく滲んだボリュームのあるドンブリメシをあっという間に平らげると、村長の疲れた身体を大いなる満足感が包んだ。これで、メディア関係のヘビーな忘年会も乗り切れる。場外戦にも耐えられる。師走はアキバのかつ丼に限る。


本日の大金言。

12月は何かと飲む機会が多くなる。胸突き八丁を乗り切ることができるか。縁起も含めて、師走のかつ丼は貴重である。




                     かんだ食堂13 

埼玉で驚きの「あんぱん」

 ここがパン屋? 最近、美味いパン屋が多くなっているが、そのほとんどはコストパフォーマンス的に首をかしげざるを得ないことが多い。知人のグルメ特派員からのメールで、「意外な場所に不思議としか言いようのないパン屋さんがある。イーストと天然酵母のパンを少量しか作らない。それなのに焼き上がる時間には客が殺到する。村長も一度、覗いてみてはいかがですか?」と挑発するかのような文面だった。またか、と思いつつ、ダメもとでポンコツ車を走らせた。時刻はちょうど昼飯時。パン好きの村民2号が鼻歌を歌っている。

          cimai① 
          どこにもない場所? 看板もない

それが、埼玉・幸手市の「cimai(しまい)」というパン屋だった。幸手市役所の裏手の通りに面しているが、看板もない。白を基調にした、中古の二階建て。木のドア。よく見ると、壁の左に小さく「cimai」というロゴ。言われなければ、そこがパン屋だとは知る由もない。だが、ドアを開けて一歩入った途端、密度の濃い、香ばしいパンの匂いが押し寄せてきた。目の前に焼き上げられたばかりのパンと焼き菓子が、どこかフランス下町の駄菓子屋風に並べられていた。パンの焼き上がりはオープン時の正午がイースト発酵のパン、午後4時が天然酵母のパン。その間にスコーン類やキッシュなども焼いているようだ。

         シマイ② 
         この香ばしさは何だ?

奥が広い厨房になっていて、そこで店名の由来でもある姉妹がパン作りに精を出していた。他に若い女性スタッフが2人。アンティークなインテリアが今流行の軽さを感じさせるが、どうしたわけか浮ついた感じはしない。只者でないこだわり方。右手に小さなテーブルが二つあり、そこでコーヒーを飲むこともできる。村民2号が「リンゴケーキ」(1カット260円)と「スパイスチョコ」(200円)コーヒー(400円)を頼んだ。村長は、目ざとく「あんぱん」(150円)を追加した。値段は安くはないのに、次々と車でスノッブな客がやってくるのがわかった。埼玉の片田舎に、日本なのに日本ではない場所。

          シマイ⑤ 
          絶妙あんぱん、めっけ

「リンゴケーキ」は天然酵母で発酵させたパン、と言ってもいいような焼き菓子で、外側がカリッとしていて、中の生地は蜜煮した半透明のリンゴとナッツが散りばめられていて、食感はねっとりしていた。甘さはかなり控えめで、その素朴な味わいに感心した。だが、村長が驚いたのは「あんぱん」だった。素材は小麦、乳、イーストとしか書いていない。焼き色がきれいなきつね色で、手で割ろうとすると、別れるのを惜しむかのように、生地が離れようとしない。そのもっちり感は只事ではない。

          シマイ⑧ 
          あんぱん、リンゴケーキ、スパイスチョコ
          シマイ5 
          外側カリッ、中はムニュ
          シマイ2 
          恐るべきあんぱん

つぶあんも自家製で、風味が立っていた。甘さが控えめ。ここでも余分な砂糖は使わないという姉妹のパン職人の決意のようなものを感じる。これだけの美味いあんぱんをメニューの一つとしてさり気なく作っていることに、あんこマニアで辛口の村長もポカンと口を開けるだけだった。

          シマイ7 
          チョコのパン

「こんなところにこんなパン屋があることがまず驚き。埼玉でも隠れナンバーワンという人もいるらしいわ。でも、ちょっと値段が高い。内容から見てそれは仕方がないかもしれないけど、お金があるときしか来れないわ」
「とにかく小さいのに圧倒的なパン屋だと思う。毎日は無理だけど、週に一回くらいはここのパンを食べに来てもいいね。パンの美味さが半端ではない。あんぱんには驚いたよ」
「村長の稼ぎじゃ、週一も多すぎよ。すぐに売り切れちゃうのも痛し痒し。でも、こういう店はこのままがいい。そっとしといてあげたいわ」
「教えたくない店ということかもなあ。ブログに書くのもやめようかな・・・」
「バレバレよ。オシマイってダジャレで締めたいんでしょ?」
「・・・・・・」


本日の大金言。

高くて美味いと安くて美味い。B級の王道は安くて美味いだが、高くても美味いを容認したくなる店もたまにはある。こだわり方にお賽銭・・・。




                       シマイ 



「あんこ入りコーヒー」秘密の味

 このところ、見世蔵の街・茨城県結城市にはまっている。首都圏からも近いし、何より、同じ蔵の街でも人気の埼玉・川越ほどの大混雑がない。村長のモットー「人の行く裏に道あり花の山」を地で行く。首都圏エリアの隠れた蔵の街として、観光界のきゃりーぱみゅぱみゅみたいな存在になるかもしれない。美味いものも意外に多い。

          真盛堂 
          明治36年の蔵カフェ

村民2号とその結城の街を散策中に、実に奇妙なスイーツに出会った。あんこマニアとしては避けて通れない。明治時代の蔵を改装した「甘味茶蔵」という看板。和菓子の老舗「真盛堂」のカフェだった。1階がアンティークなテーブル席になっていて、2階が板張りの部屋と畳張りの部屋になっていた。古いものを上手い具合に利用している。

          あんかふぇ① 
          魅力的なメニュー

最近この手の店が増えたとはいえ、斬新なメニューの数々に彦作村長の好奇心がむくむくと動き始めた。2階の畳張りの部屋に陣取ると、その中から、「あんかふぇ(ホット)」(500円)を頼んだ。作務衣姿の若い女性スタッフが、「つぶあんとこしあん、どちらに致しますか?」と聞いてきた。村長はつぶあん、村民2号は気乗りしない表情でこしあんを選んだ。

「コーヒーにあんこなんて、いくらなんでも邪道すぎるわ」
1日にコーヒーを3杯は飲まないと、機嫌が悪くなるほどコーヒー好きの村民2号が、村長の顔をあきれ返りながら見る。
「あんかふぇ、なんてネーミングもいいじゃないか。若い人のアイデアだと思うけど、スイーツの世界も何でもありになって、面白いと思うよ。見る前に飛べ、論ずる前に食べよ、だっぺ

          あんかふぇ② 
          あれまあ~

10分ほどで、「あんかふぇ」がお盆に乗ってやってきた。陶器のシンプルなコーヒーカップの脇につぶあんとこしあんが置いてあった。想像の範囲内。コーヒーはドリップ式の深煎りで、村民2号が「コーヒーは美味いわ」とあんこを入れずに味わった。彦作村長は内心シメシメで、まずはつぶあんを賞味することにした。つぶあんは北海道十勝産のいい小豆を使っていて、むしろゆで小豆風にとろっとしていた。いい風味。さすがに和菓子屋のあん。コーヒーに入れて、木のスプーンでかき混ぜてから、グビビとひと口。ン?なんだこれは? つぶあんがコーヒーのパワーに押されて、その存在感がまるでない。

          あんかふぇ③ 
          つぶあんか?
          あんかふぇ⑥ 
          こしあんか?
          あんかふぇ⑦ 
          コーヒーとの恋愛の行方

これはミスマッチでは、という失望のまま、次に村民2号が手を付けようとしないこしあんへ。こしあんは塩が効いていて、その分甘みもいい具合に広がってくる。こちらはつぶあんよりもコーヒーにマッチしていた。こしあんの風味がコーヒーのパワーにささやかな抵抗を試みている。悪代官に手籠めにされそうな町の小娘が精一杯抗っているよう。おとなしうせい、わしの言うことを聞け、むふふふ。あれーっ、お代官様、堪忍してください・・・。畳の座敷のせいか、そんな妄想が湧いてくる。

          トマト大福② 
          トマト大福(180円)

「普通の白玉しるこにすればよかったんじゃない?」
「新しいものにチャレンジすることに意味があるんだよ」
「トマト大福も食べたでしょ。そっちはどう?」
「イチゴ大福よりトマト大福の方が意外性がある。結城のフルーツトマトとの相性はそれなりにあるよ」
「苦しそう。あんかふぇを飲んでいるときの村長の顔は悪代官そのものだったわよ。無理しなくていいの」
「無礼者め。おまえにはあんこ道の厳しさがわからぬのか。そこに直れ」
「あれ~、っていうかと思ったでしょ? バーカ」
「・・・・・・」


本日の大金言。

あんこをレディ・ガガにすることに意味はあるのか? あんこはあんこ、が原点。その素材の素晴らしさをどうやって生かすか、そこにこそアイデアが生きると思う。



                       あんかふぇ⑨

「ちたけのつけ汁」で常陸秋そば

 「常陸(ひたち)秋そば」は、茨城が生んだ玄そばの最高峰と言われる。香りと味わいが際立っているそう。そば通を自称する友人が、「ここの新そばを食わないで、そば好きとは言えねえ」とドヤ顔でこの彦作村長に語ったほど。先月、病院入りしたためにその新そば祭りに行くことができなかった。で、その真相とリベンジを果たしに、首都圏から比較的近い結城市のそば処「赤ざわ」へと乗り込むことにした。

          赤ざわ 
          ついに常陸秋そば!

「赤ざわ」は「アド街ック天国」(テレビ東京系)などメディアでもよく取り上げられる有名店。ウマズイめんくい村の怪しい一行が、ポンコツ車を飛ばして到着したのは正午だった。「常陸秋そば」の幟(のぼり)が古い建物の前ではためいていた。暖簾をくぐる。年季の入った老舗の雰囲気が全開していた。分厚い一枚板のテーブルが4つ、小上がりにも2つ。メニューはかけ600円、もり600円と手ごろな値段。この店の一番の目玉は「常陸秋そば ちたけ入り茄子(なす)せいろ」(1200円)で、店の女将さんによると「皆さん、これをお食べになります」とか。

          赤ざわ③ 
          これっきゃない?

少々高いと思ったが、きのこ好きの村長は「ちたけ入り」にグラリと来て、「ではお願いします」と注文してしまった。村民2号も「じゃあ、私もそれ」。15分ほどのやや長い待ち時間で、「ちたけ入り茄子せいろ」が登場。村長はまずその姿に見入ってしまった。いかにも手打ちという見事な不揃いのそばで、やや緑がかっていた。星というより模様と言いたくなる挽きぐるみの点々が、素朴な存在感をかもし出していた。二八かと思って聞いてみたら、「七三です」。常陸秋そばは七でつなぎが三。この正直さは好感。

          赤ざわ④ 
          素朴な田舎そば
          赤ざわ10 
          この手打ち感

熱々のつけ汁は、ほんのりと脂が浮いて、見事なちたけがごろっとテカっていた。薄いナスとタマネギも入浴していた。いい出汁の予感。まずはひと口。常陸秋そばはぼそぼそした歯ごたえで、風味はフツーにあるが、期待していたほどの新そばの風味は感じられない。エッジもコシもあまりない。だが、そのぼそっとした田舎の素朴は悪くない。これがこの店の売りのようだ。

          赤ざわ⑦ 
          ちたけの存在は?

つけ汁はかなり甘めで、味りんと砂糖を大目に使っているようだ。だが、ちたけの出汁の旨味がにじみ出ていて、この素朴な常陸秋そばによく合う。ちたけ自体は多分夏に採った天然物だろう、こちらもぼそぼそしていて、期待していたほどではなかった。

          赤ざわ⑨ 
          甘めのつゆとそばのお・も・て・な・し

「このつけ汁が旨いわ。この甘辛加減はくせになりそう。そばも素朴で旨いと思う。問題はコストパフォーマンスね。1200円はちょっと高いかな」
「石臼挽きでちたけ入りのそばを食え店はあまりないよ。しかも常陸秋そばの新そば。ま、確かに、もりが600円ということを考えると、せめて980円くらいにしてくれると助かるなあ
「差額分、帰りは高速使わないで、下で行きましょう」
外に出ると、ぴゅうーっと寒風が体を撫でて行った。
「フトコロは常陸冬そば・・・」


本日の大金言。

秋に採れたそばは年内までは新そばと呼んでもいいと言われる。今年もあと19日ほどで終わる。ぬる燗と新そばで、一年をじっくりと振り返るのも悪くない。


                      赤ざわ11 

元祖武蔵野うどんの「塩肉ネギ」

 最近、「武蔵野うどん」という看板をちらほら見かける機会が増えている。すでに、このブログでも「元祖田舎っぺ さきたま古墳店」や「竹国 渋谷店」などいくつか取り上げているが、武蔵野うどんという言葉自体が、古くからあったわけではないようで、どうやら「昔から武蔵野地方で食されていたうどん」という程度らしい。その特徴は、田舎の素朴な手打ち麺で、麵が異様にぶっ太いこと、コシが強いというよりも固いこと、などなど。彦作村長にとって、この武蔵野うどんは謎のうどんでもある。先日行った平林寺「池田うどん」などは、「武蔵野うどん」という看板すら掲げていない。

          田舎ッぺ① 
          武蔵野うどんの元祖?

ポンコツ車で埼玉・熊谷市をぷかぷか走行中に「くまがや 元祖田舎っぺ」という看板を見つけた。熊谷市役所前。ン? 約1年5か月前に食べた「さきたま古墳店」と同じ店かと思った。あのぶっ太くて、恐るべき固さのうどんと格闘したことを思い出した。だが、佇まいから微妙に違う気もする。本日の昼飯はここに決めた。「元祖」の上に「くまがや」と付いているのが気になった。

          田舎ッぺ②  
         つけめんうどんの世界

入ると、10人ほど座れる木のカウンターと4人用テーブル席が二つ。カウンターの前が広い厨房になっていて、そこで中年女性が力強くうどんを打っていた。スタッフは他にもう一人。うどん屋らしいいい雰囲気。メニューはつけめんうどん中心で、他に煮込みうどん。彦作村長は、その中から温かいつけ汁うどん「塩肉ネギ」(並400グラム 630円)を選んだ。ついでに名物「半きんぴら」(105円)も注文。
「塩肉ネギのつけ汁って珍しいね」
「ええ、普通の醤油ベースの肉ネギの他に、塩肉ネギをメニューに出したのはウチが最初なんですよ」
「へえー。ここはさきたま古墳店と同じ店?」
「元々は同じですけど、麵もつゆも少し違うようです。その辺はくまがや本店の厨房店が詳しいですよ」

         田舎っぺ②  
         のびやかな手打ち

そんな会話をするうちに、「塩肉ネギ」が登場。うどんは黄色みがかっていて、かなりの太さ。よく見ると、その太さがまちまちで、いかにも手打ちうどん、といった感。以前食べた「さきたま古墳店」が無骨の極みなら、このうどんはある意味でより洗練されている。塩肉ネギのつけ汁は、豚ばら肉がピンク色で、長ネギとともに実に旨そうに揺蕩っていた。

         田舎ッぺ⑥ 
         この太さ
         田舎ッぺ⑦
         塩肉ネギのつけ汁
          田舎ッぺ④ 
         きんぴらもぶっ太くて柔らかい

うどんは太い部分は割り箸よりもぶっ太い。しかも一本が驚くほど長い。それをつけ汁に付けて、口に運ぶ。塩肉ネギのつけ汁は出汁と塩の加減が絶妙で、第三の味「まろやかな旨味」が吹き上がってくるようだった。うどんはコシがかなり強いが、つるりとしていて、噛みごたえも悪くない。もっちり感もある。以前食べたさきたま古墳店より進化している。まるで関西のような深みのあるまろやかなつけ汁が効いている。素直に旨い。武蔵野うどんの無骨なイメージが脳内で次第に変化していった。これは武蔵野うどんなのか?

          田舎ッぺ⑨ 
          意外な進化

後日、気になって、本店の厨房店に電話で取材する。
「田舎っぺうどんは元々は熊谷でスタートしたんです。その後、3系統に分かれて、今では、北本店系列と熊谷店系列の二つになりました。武蔵野うどんという言葉自体は、昭和48年に元祖田舎っぺが熊谷で創業して人気を呼んだ時に、評論家が命名したものなんですよ。その意味では、元祖田舎っぺが武蔵野うどんの元祖ということになります」
武蔵野うどんの謎が少し解けた。それにしてもややこしい。


本日の大金言。

メディアなどで一人歩きする武蔵野うどん。その豪快な素朴がうどん戦国時代の新しい英雄になる日は近いかもしれない。



                      田舎っぺ 
                      

みはし本店の「あわぜんざい」

 東京の粟(あわ)ぜんざいといえば、浅草「梅園」や神田「竹むら」という名前がすぐ浮かぶが、上野「みはし」も季節限定ながら、あんこファンの評価が高いことで知られている。彦作村長は、土曜日の午後に二度ほどここに入ろうとしたが、あまりに待ち客が多くて、断念している。上野界隈を散策中に、あんこネットワークの知人の「寒くなると、みはしのあわぜんざいを食べたくなる。絶品だよ」という言葉を思い出した。頭の中はすでにあんこ色。

          みはし① 
          「あんみつ みはし」上野本店

時計を見ると、平日の午後3時半。チャンスかもしれない。師走で賑わう上野中央通り「ABAB」の並びにある「みはし本店」に到着。それでも3~4人ほどが中の椅子で順番待ちをしていた。5分ほどで1階のテーブル席に案内された。説明するまでもないが、ここはあんみつが有名で、老舗の佇まいながら、創業は昭和23年(1948年)とそう古くはない。

          みはし1 
          素晴らしき世界

お盆と緑茶が先に出された。メニューには「あんみつ 450円」「田舎しるこ 550円」「いそべ巻 450円」など梅園や竹むらに比べると比較的庶民的で好感。村長はむろん「あわぜんざい」(550円)を注文する。周りを見渡すと、客はほとんどが「昔美人」で、若いカップルも混じっている。

見ていると、「あんみつ」はすぐに運ばれてくるのだが、「あわぜんざい」は作るのに手間がかかるのだろう、なかなか来ない。その分期待することにしよう。待ち時間12~13分ほどで、小ぶりのお椀が箸休めの塩昆布とともにやってきた。ふたをそっと開ける。この瞬間がたまらない。湯気とともに黄金色のあわ餅と、それに寄り添うように見事なこしあんが現れた。半々の割合。今年8月に食べた梅園のものに比べると、全体の量は少ない。だが、こちらの方があわ餅の黄金色とこしあんの小豆色が艶やかで濃い。スススと帯を解き始める妄想。どうぞ食べておくんなんし。小柄の美女の深情け・・・なんてね。

         みはし④ 
         来たァ~
         みはし⑤ 
         時間よ、止まれ

何はともあれ、まずひと口。あわ餅は搗(つ)き立てのように伸びがよく、甘めのこしあんの風味とのバランスがとてもいい。ピュアでなめらかなこしあん。北海道十勝産小豆を厳選しているそうで、原料自体は梅園とそう変わらない。だが、梅園の野暮ったさを前面に押し出したあわざんざいと比べると、こちらの方が村長の好みに近い。味わいにピュアな深みを感じる。

         みはし⑥ 
         あわ餅の伸び
         みはし⑨ 
         こしあんの絶妙

量が少なめということもあるかもしれない。ほどよい腹加減。小粋でけな気なあわぜんざい、そんな言葉が出てきた。それはむろん、好みの問題とも言えるが、価格設定も含めた敷居の低さも村長にとっては好ましい。ただひと言言えば、箸休めは塩昆布ではなく、シソの実の塩漬けの方が風情があると思う。待ち時間はどうにもならない。アワてて食べるとろくなことがないよ、ということなのか。


本日の大金言。

師走のぴゅうっとした寒風も、どうってことない。フトコロの寂しさもどうにかなる。あわぜんざいはそんな気にさせるから不思議である。



                      みはし10 

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肉屋直営立ち飲み「驚異のメンチ」

 師走になると、東京・上野アメ横に行きたくなる。築地もいいが、アメ横の妖しい魅力も捨てがたい。買い物客の雑踏に揉まれながら、魚屋のオヤジのだみ声と客のやり取りを聞いているだけで、「あ、今年ももうすぐお終いだな」などと実感する。B級至上主義の彦作村長のよれよれの目に、「肉の大山」の看板と人だかりが見えた。知る人ぞ知る食肉卸し「肉の大山」直営の立ち食い・立ち飲みスポットである。村長の胸のピコピコが高鳴った。

          肉の大山①  
          B級の穴場

店先でメンチやコロッケなどを揚げていて、その右手が立ち食いコーナー。その安さと種類の豊富さに驚く。「やみつきコロッケ」(1ケ50円)、「やみつきメンチ」(100円)、「カレーコロッケ」(100円)、「ハムカツ」(70円)、「エビフライ」(1本120円)、「から揚げ」(3ケ120円)などなど。その揚げ立てのいい匂いがあたり一帯を支配していた。

          肉の大山④ 
          これで軽く一杯
          肉の大山⑧ 
          ドリンク類もこの値段

村長はここの目玉「やみつきメンチ」と「やみつきコロッケ」、それに売り切れ御免のレアもの「匠の和牛メンチ」(1ケ400円)を奮発してゲットした。「匠の和牛メンチ」は安くはないが、黒毛和牛の最高クラスを使っているそう。これを賞味せずして、宇宙には帰れない。まだ日は高かったが、飲み物は「ジョッキ赤ワイン」(300円)を頼んだ。舞台は整った。

まずは「やみつきメンチ」(100円)。楕円形のグラマラスなボディ。専用の紙の包みに入れてガブッと行く。味がほとんど薄い塩味のみで、肉の旨みがそのままストレートに伝わってきた。予想していたよりも美味だった。肉の存在感。それとタマネギの甘み。肉は牛と豚のミンチだそう。表面のこんがり具合といい、その見事にぎっしり詰まった具といい、「肉屋だからこの値段でできるんですよ」と店のスタッフが言うのもうなずける。素晴らしきコスパ。

          コロッケ① 
          やみつきメンチ100円ナリ
          肉の大山⑦ 
          ギッシリ感、どないでっか?

次にメーンの「匠の和牛メンチ」(400円)に挑んだ。このネーミングはいただけない。村長はズバリ「頂点大メンチさま」と命名したくなった。その実物は衝撃的。円形で直径11センチ、厚さ3センチはあろうかというデカさ。只者ではないぞ光線が放射している。だが、見かけ倒しかもしれない。
 ガブリと行くと、まず肉の柔らかさにウムと唸る。次に肉汁がじゅわりとくる。ラードとサラダ油の香ばしい匂いがフェードアウトしていく。口内に確かに圧倒的な肉の良さが残る。具は他にタマネギのみ。生姜も入っていない。こちらも味付けはほとんど薄い塩味のみ。ソースを付けて食べると、肉の旨味がさらに引き立った。だが、コスパが問題。できれば300円くらいにしてほしい。

         肉の大山⑨ 
         レアな「匠の和牛メンチ」
         400円メンチ③    
         黒毛和牛の圧倒
         コロッケ② 
         こちらはやみつきコロッケ、50円ナリ

「やみつきコロッケ」(50円)には特に感心した。ご近所の主婦がわざわざ買いに来るほどで、ギッシリ感はないが、きれいな男爵イモと点々と入った挽き肉がいい具合にミックスしている。こちらも素材勝負の薄い味付け。この肉屋直営のB級の心意気に村長は脱帽した。ジョッキ赤ワインをきれいに飲み干してから、再びアメ横の師走の雑踏に入ると、ほろ酔いの村長をある種の感動が包み込んでいくのだった。天国まで8マイル。


本日の大金言。

アメ横の立ち飲みメンチの至福。ここから永田町の迷走を見るのも悪くない。あきらめてはいけない、そう肝に銘ずる。




                     アメ横① 

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「ゆでまんと田舎まん」の絶妙コンビ

 結城紬(ゆうきつむぎ)で知られる茨城・結城市はゆでまんじゅうの街でもある。テレビや雑誌などメディアでもよく取り上げられる「真盛堂」を初めとして,市内には10軒ほど和菓子屋がある。ウマズイめんくい村の探索隊はここで、地元の人の情報から、「テレビに出るとそりゃ客が大勢来るけど、わしらがよく行くのは別の店だ」という情報をつかんだ。それが「手造り和菓子 山田屋」だった。

          結城市・山田屋 
          隠れた名店?

駅近くの結城観光物産館の裏手に、いかにも田舎の和菓子屋さんという風情でノレンを下げていた。入ると、すぐに「ゆでまんじゅう」(1個84円)と「田舎まんじゅう」(95円)が目に入った。その存在感。親子三代の和菓子屋で、ちょうど二代目と女将さんが出ていた。田舎のよきご夫婦といった感じ。朝早くから、あんこ作りからまんじゅう作りまで手作業で行っている。三代目の息子さんは奥で、まんじゅう作りの作業中のようだった。

         山田屋③ 
         ゆでまんじゅう(右)と田舎まんじゅう(左)

ゆでまんじゅうは関東地方でも作る店が少なくなっている。昔はあんこを包んだまま釜で茹(ゆ)でたが、崩れやすいため、今では、生地を別にして茹でてから、あんこを包むやり方に変わってきているようだ。彦作村長は、半透明の皮とその奥にうっすらと見えるあんこのお姿に胸がときめいた。さらに、田舎まんじゅうのもっちりとした黄色い姿に見入ってしまった。その素朴な安さに心温まる。それぞれ3個ずつゲット。

ウマズイめんくい村に持ち帰って、さっそく賞味となった。まずは「ゆでまんじゅう」。真ん中から割ると、北海道十勝産小豆を煮込んだつぶしあんがぎっしり詰まっていた。あんは甘め。半透明の皮はよくこねたうどんかすいとんのような食感で、そのつるっとしたもっちり感が、甘めのつぶしあんによく合っていた。独特の食感。

          山田屋⑧ 
          ゆでまんじゅうの凹み
          山田屋⑨ 
          中のつぶしあん

村長は、「田舎まんじゅう」が気になっていた。手で包み上げた形。見事な黄色み。それは重曹の色だという。
「今は炭酸で膨らます店が多くなって、重曹を使っているのはウチだけ、って女将さんが行ってたもんね。でも、このツヤとどっしりとした存在感は確かにスゴいわねえ」
村民2号がため息。
割ろうとすると、皮のふかふか感と弾力感が拮抗しながら抵抗するかのように別れて行き、中から厚みのあるつぶしあんが現れた。がぶりとひと口。あんこはゆでまんじゅうよりもやや控え気味の甘さ。皮の小麦の風味と重曹の素朴な香りとのバランスがとてもいい。田舎の絶妙。

         山田屋12 
         田舎まんじゅうの存在感
         山田屋11  
         皮とあんこ

「これは美味いね。村長はこちらの方が好きだな。田舎まんじゅうの実力としてはかなりのレベルだと思う。値段も含めてこれだけのものは、そうはないんじゃないかな」
「無添加だから、日持ちはあまりしないわね。今回もわかったけど、テレビやメディアが伝えない裏の方に実はいい店がある、ということ。ま、ハズレもあるけど」
村民2号が、村長の顔を見て、含み笑いをした。
「村長もハズレ馬券?」
含み笑いがガハハ笑いに変わっていった。ぐやじいー。


本日の大金言。

人の行く裏に道あり花の山。この言葉の意味をたまには噛みしめたい。




                        山田屋①

神保町の名物「黒いカツカレー」

 久しぶりに神田・神保町の古本の迷路にはまり込んでいるうちに、お腹がグーッと鳴った。時計を見ると、午後2時半を回っていた。いけねえ。昼めしかっ込むのを忘れちまってた!(神田なので急に江戸弁風になっちまったぜ)。たまにはガッツリ行ってみることにしよう。真っ先に浮かんだのが「キチン南海 神保町店」だった。「キッチン南海」の総本山で、ここのカツカレーはカレーファンなら一度は行かなければならない味だとか。行列ができることでも有名。有名を検証するのも悪くない。

        キッチン南海① 
        総本山(キッチン南海神保町店)

すずらん通り。時間が時間だけにさすがに行列はなかったが、店内はほぼ満席で、活気にあふれていた。20人ほど座れそうなカウンターとテーブル席が4つほど。広くはない。本格的なコック帽をかぶった3人のコックが、カウンター席の対面の狭い厨房で、見事な流れ作業を分担していた。コックの存在感。カツを揚げる音と旨そうな匂い。ふと、ここはカレー屋というより古きよき洋食屋なのだということに気づいた。

        キッチン南海② 
        少ないメニュー

メニューはカレー中心で種類は多くない。ほとんどのお客がカツカレーを旨そうに食べていた。そのボリュームと色に改めて驚かされる。彦作村長も「カツカレー」(700円)を注文。ほかに「キチンカレー」(650円)、「カレーライス」(500円)など。この安さが日本のカルチェラタンの歴史と凄味を感じさせる。

10分ほどで「カツカレー」が登場。大皿に並んだ揚げ立てのトンカツ、その下のライスが見えない! 上から限りなく黒に近いこげ茶のカレーが広範囲にわたって広がり、実に見事な世界を作っていた。キャベツの千切りの量と鮮度、脇役の自家製福神漬け。村長は一瞬にして、このカツカレーに職人のプライドを感じ取った。

        キッチン南海11 
        うーむ
        キッチン南海⑥ 
        カツとカレーの絶妙
        キッチン南海10 
        ま、ひと口

カレーはじっくりと煮込まれたことを示す濃度とトロみがあるカレーで、それほど辛くない。スパイスが口に入れた4~5秒後にじんわりと広がってくる。よく見ると、細かいサイコロ状の牛肉が点々とある。玉ねぎはルーの中に溶け込んでいる。この黒さは何だろう? カラメル色素でも入れているのか、それともイカスミ? 小麦粉の炒め方で? 作り方は秘伝中の秘伝だそう。この場合の秘伝は「特定秘密」に値すると思う。話は飛ぶが、永田町は「ペテンノヒミツ」。

       キッチン南海⑦ 
       福神漬けの実力

トンカツは大きいが、薄い。だが、サクサク感にあふれていて、肉も柔らかい。ライスがとてもいい。やや固めで、それは村長の好みでもある。多分コシヒカリ。福神漬けの自然な旨みにも感心した。スプーンと箸を出してくれるのもマル。コストパフォーマンスといい、ケチを付けるところが見当たらなかった。ぐやじい。あえて言うと、お客に女性が少ないことか(?)。それと、ランチタイムは避けた方が無難。ボリュームもかなりあるので、ダイエット中の人は要注意。美味い店には女性が集まる、という定理はどうやらこの店には当てはまらないようだ。


本日の大金言。

カツカレーの元祖は銀座スイスと言われるが、キッチン南海もかなり古い。店名の由来はオーナーが南海ファンだったというのも、歴史を感じさせる。

 


                      11キッチン南海  

ヴァリエで見つけた「にぎり天」の謎

魚介類の 練り物は彦作村長の好物の一つ。比較的安くてうまい。これを肴(さかな)に一杯やると、胃の腑から幸福感がじんわりと広がって来たりする。グレーだった世界が微笑み始める。ヒビが融和し始めたりする。この楽しみと苦しみ。面白い。埼玉・新越谷駅「ヴァリエ」の1階フードコーナーを散策中に、ふと見つけたのが豪快な「にぎり天」だった。そこだけスポットライトが当たっているようだった。
          大川水産① 
          ま、おいでなさい
          大川水産② 
          めっけ!

大川水産の魚売り場。大川水産は東京、神奈川、千葉、埼玉など首都圏で展開する魚屋さん。木桶に豪快に盛られて、「にぎり天(具だくさん) 1本130円」の文字が見え、長靴姿の魚屋さんスタイルの男性が、「これ、うまいですよ~」と叫んでいた。見ると、「ごぼう天」「たまねぎ天」「えだまめ天」「いか天」の4種類。1本が長さ20センチは悠にある大きさだった。

         大川水産④   
         フライパンで温める
         にぎり天①     
         生姜をする

すぐに「ごぼう天」と「たまねぎ天」をゲット。合計260円ナリ。ウマズイめんくい村で、今夜の晩酌のアテにすることに決めた。チンしてもいいが、村長はフライパンで温めることにした。生姜をすり下ろして、地酒「武州」をぬる燗にする。まずは「ごぼう天」から賞味。白身魚のすり身はコシが強め。具はごぼうの他にニンジン。ニンジンは柔らかいが、ごぼうはシャキッとしていて、えぐみとほのかな土の香りを口内に運んでくる。すり身のプリッとした感触とごぼうのぶっきら棒の相性が悪くない。仲がいいのか悪いのかわからない夫婦のような味わい。長さを測ったら、22センチだった。デカい。

         にぎり天⑥ 
         ごぼう天である
         にぎり天⑤ 
         こちらはたまねぎ天

村長は「たまねぎ天」の方が好みである。こちらにもニンジンが入っているが、たまねぎの甘みがすり身のぷりぷり感とよく合っている。生姜醤油に付けると、旨味がさらに広がってくる。こちらは相性のいい夫婦のよう。こちらは長さが20センチ。「ごぼう」より小さめだが、デカいことに変わりはない。

師走の夜、にぎり天を肴にぬる燗をちびりちびりと流し込む。そのうちに、「にぎり天」のことが気になってきた。にぎり天って何だ? 本で調べてもネットで調べても出てこない。謎のにぎり天! 楽しむどころではなくなってきた。眠れなくなる。で、翌日、取材を開始。この「にぎり天」が岡山市の川上食品のものであることを突き止めた。すぐにテル。詳しい人が出てくれる。

「にぎり天って瀬戸内海周辺で昔から作られているんですか?」
「いえいえ、うちの社長が20年くらい前に作ったものなんですよ」
「へえー、意外なお話ですね」
「それまでは四角とか丸の形ばかりでした。だから、ウチが棒状にしたにぎり天の元祖なんですよ。石臼を使って擦って、手づくりで、つまり手にぎりの形にするんです。おかげさまで人気商品になりつつあります」
そーだったのか。調べても出てこないわけがわかった。これでとりあえず今夜はぐっすり眠れる。天を仰ぎながら、今夜もにぎり天・・・。


本日の大金言。

駅ビルの食品売り場には山があれば海もある。畑もある。デパ地下よりも庶民に近いB級グルメワールド。



                        にぎり天⑦ 










真面目なパン屋のアンドーナツ

郊外で安くて美味いパンを作り続ける。言葉にすると簡単だが、実際はそう簡単なことではない。その裏にある親子三代にわたる毎日の積み重ね。今回はそんな田舎のパン屋さんの話である。きっかけは、時々ふらりと現れ、美味いものの極秘情報を教えてくれる赤鼻のトナカ・・・失礼、敏腕税理士だった。「村長、このアンドーナツ、食べてみてくださいよ」。冷えていたが、それが意外に美味かった。

          まつむらパン 
          パン屋の原点?

ウマズイめんくい村一行がポンコツの愛車をぷかぷか走らせる。目指すは北埼玉の遊園地「むさしの村」のすぐ近く、国道125号沿いの「まつむらパン店」。
「あそこじゃない? 埼玉でもパン好きの間では結構評判になってる店よ」
パン好きの村民2号が指さした。通り沿いに森のパン屋さんのような、いい雰囲気の一軒家。
「ドイツ製のパン釜で焼くパンはかなりのレベルらしいわ。親子三代、家族でやってるパン屋さんで、特にクロワッサンとアンドーナツは熱烈なファンがいて、早めに行かないと売れ切れちゃうらしいわ」

         まつむらパン③ 
         こちらはフランスパン
         まつむらパン④ 
         売り切れになるアンドーナツ

午後1時過ぎに到着。ウッディな店内には窓から明るい陽射しが入り、焼き上げたばかりのパンのいい匂いがそこかしこに漂っている。すでにクロワッサンは売り切れていた。村長は、目的の「アンドーナツ」(95円)と珍しい「焼カレーパン」(100円)、それに「フィッシュバーガー」(195円)を選んだ。右手がちょっとしたカフェスペースになっていて、そこで買ったパンを食べることもできる。吹き抜けの天窓から青空が見える。「窯焼きコーヒー」は300円でお代わり自由。

          まつむらパン⑥ 
          このふっくら感
          まつむらパン⑦ 
          あーん

焼き上げ1時間半後の「アンドーナツ」は村長がこれまで食べたアンドーナツの中でも、五指に入る美味さだった。パン生地のふわりとしたもっちり感と中のこしあんのやや控えめな甘さのバランスがいい。こしあんは栃木のあんこ屋に特別注文して、このアンドーナツに合うねっとり感を出すことに注力したという。アンドーナツが口中で溶けるという感覚はあまりないと思う。二代目の傑作で、今やこの店の人気定番メニューになっている。

          まつむらパン⑧ 
          焼カレーパンどす
          まつむらパン⑨ 
          ガブッと行ってくんねえ

「焼カレーパン」は、油で揚げていない珍しいカレーパン。これもパンの美味さが際立っていて、噛むと小麦のいい風味がもっちり感とともに口内に広がってくる。カレーはやや辛め。「フィッシュバーガー」もパンの旨味がすべてに優先している。白身魚のフライとキャベツ、キュウリ、レモン、それにマヨネーズ、ソースのバランスも悪くない。

         まつむらパン10 
         パンの存在

「パンの美味さがすべてね。焼きたてだから特に美味いのかもしれないけど、この値段でよくやってると思うわ。小麦粉は国産とカナダ産をブレンドしてるそうよ。店主が親子三代の家族経営だからできると謙遜してたけど、地道で真面目な作り方といい、志しが高くなければできないと思うわ」
「高くて美味いパンはあるけど、安くて美味いパンを作り続けるのは大変だと思うよ。コスパがすごいと思う。ここに来ると、街のパン屋の原点を見る思いがするんじゃないか」
「ホントね」
「ウマズイめんくい村も原点に帰らなきゃ」
「最近は原点じゃなく、一字違いの減点ばかりだからねえ」
「・・・・・」


本日の大金言。

真面目なパン職人。真面目という言葉が、軽くなりつつある今日この頃。この言葉を改めて噛みしめてみる。





                      まつむらパン12 

グリル銀座ライオンの「ステーキ重」

「ねえ村長、師走に入ったことだし、たまには銀座あたりに繰り出して、パーッとランチでもしない? 明日の心配より今日の喜びだって大事よ」
消化器系の検査を控えた彦作村長を挑発するかのように、村民2号が明るい声で言った。
「一理ある。でも、うちの金庫にどのくらい残ってる?」
「大丈夫よ。東京でバリバリ働いているキオを誘って、おごってもらうから。たまにはいいのよ。老いては娘にたかれ、よ」
「うむ、いいアイデアだ」

                 銀座① 
           アーユーレディ?(銀座ミキモト前で)

その約15時間後の午前11時半、銀座で娘のキオと待ち合わせて、銀座ライオン2階のレストラン「グリル銀座ライオン」でランチを取ることにした。エンターテインメント新聞社時代に、彦作村長は、ここの1階ビアホールに何度か足を運んだ。現存する最古のビアホールでデキシーランドジャズを聴きながらビールをがぶがぶあおったりしたものだ。2階のレストランは初めて。銀座ライオンの中でもこの7丁目店だけは特別で、昭和初期のよき時代の銀座の香りを残している。他の銀座ライオンはイマイチだが。

                 銀座ライオン 
           日本最古のビアホール

コック姿のシェフがステーキを焼く姿が見える。歴史を感じさせる壁のステンドグラスとテーブル、チョッキ姿のスタッフ・・・悪くない。日曜なので、ホリデーメニューがテーブルに置かれていた。村長は、「ステーキ重」(1680円)、村民2号は「オムライス」(1000円)、キオは「熟成ローストビーフセット」(1480円)を頼んだ。ついでに生ビールも。久しぶりのぜい沢。

         銀座ライオン③ 
         ステーキ重
         銀座ライオン13 
         オムライス
         銀座ライオン15 
         熟成ローストビーフ

「オムライス」「ローストビーフ」「ステーキ重」の順番でやってきた。村長の「ステーキ重」は、ふたを開けると、ホタテのフライが2個、ミニトマト、シシトウ、スパゲティが脇を固め、主役の座には中ぶりのサーロインステーキがドシッと横たわっていた。焼き上がったばかりの肉のいい匂いが鼻腔をくすぐる。この「ステーキ重」はホリデーメニューで、ここでしか食べれない。よく見ると、ステーキは1.5層になっているではないか。切り口からミディアムの赤と脂身が「おいでおいで」していた。数えてみたら8切れ!

         銀座ライオン⑥ 
         うむむ二段重ね

味付けは塩と胡椒、それにタレがうっすらとかかっていた。最初のアタックはやや固いと思ったが、噛むと肉感があり意外に柔らかい。肉は国産ではなくアメリカ産熟成肉を使用しているそう。ステーキの下にはスライスしたタマネギが敷かれていて、ライスとともにかっ込むと、フツーにうまい。メチャウマではないが、全体としてまずまずのお味。スパゲッティが昔ながらの洋食屋の味だった。

         銀座ライオン⑧ 
         ま、ガブッと行っておくんなさい
         銀座ライオン10 
         ライスは普通

オムライスは当たりだわ。卵がふわふわで、デミグラスソースもいい。値段も一番安い」
熟成ローストビーフはここの目玉料理だけど、思ったほどではないわ。期待が大きすぎたかもね。マスタードを付け過ぎちゃったし」
「ま、ここはビールがやっぱり美味い。それと雰囲気の隠し味。もう一杯お代わりしていいかな?」
「明日検査でしょ。私が代わりに飲んであげるわよ。キオ、お代わりィ~」
「・・・・・・」


本日の大金言。

あっという間に師走に突入。すでに銀座はクリスマスムードだが、外国人排斥のデモと物々しい警備の警察の姿、ジャンボ宝くじ売り場の大行列・・・。すべてが2013年12月1日の現実を切り取っていた。日本はいずこへ?




                     銀座ライオン12
プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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