ダフト・パンクと赤羽のスイートポテト

 第56回グラミー賞を席巻したダフト・パンクの「ゲットラッキー」を口ずさみながら、彦作村長は、東京・赤羽駅の「エキュート赤羽」の中を散策していた。ビートルズ米国上陸から50周年ということで、ポールとリンゴの競演で大きな話題となったが、村長が最も感動したのはスティービー・ワンダーが登場した時だった。WOWOWでそのあり得ない光景を目のあたりにして、背筋がぞくぞくした。ボーカルのファレル・ウィリアムスが「カモン、スティーヴ!」と指差した時などは、夢でも見ているみたいだった。これだからグラミーはやめられない。

その光景を思い出しながら、「エキュート赤羽」にゲットラッキーはないか? 村長はダフト・パンクのような動きで、美味いもの探しを続ける。ほとんど危ない人である。「ポテトピカソル」という看板が目に入り、美味そうな丸いスイートポテトが目に入った。かわいい女性店員も視界に入った。ゲット・ラッキーか? 「ポテトピカソル」はチーズケーキやスコーンなどで有名な「代官山ピカソル」の新しいブランドで、赤羽店だけのメニューもある。

            ピカソル④ 
            ゲットラッキーか?

「スイートポテト 5個パック」(660円)と赤羽店限定商品の「さつまいもブラウニー」(360円)を買い求めた。ウマズイめんくい村に持ち帰ると、さつまいも好きの村民2号がニコニコ顔で待ち構えていた。さっそく品評会となった。スイートポテトはプレーンが3個(1個120円)、ハニーが1個(140円)、期間限定のココアチョコ味が1個(160円)、合計5個というラインアップ。「さつまいもブラウニー」はブラウニーの中に砂糖漬けのさつまいもが点々と入っていた。

            ピカソル①  
            スイートポテト!

まずはプレーン。紅さつまをそのまま練って固めたような実にきれいでシンプルな味。ボソッとした食感。だが、これはスイートポテトと言えるのか? 
「私はこのシンプルさが好き。かすかに砂糖と他の何かも感じるけど、これだけほとんどさつまいもそのままのスイートポテトは初めてかな。裏側にさつまいもの皮を付けているのもクールなアイデアだわ」
「正直言って、これを食べるなら、さつまいもをそのまま食べた方がいいと思うよ。でも取材したら、液状のこんにゃくも入れているようだ。ヘルシーに徹しているのはわかるけど、味の感動はあまりない」

             ピカソル⑦ 
            プレーンの世界
            ピカソル⑧ 
            そのまま

次にハニーに移った。はちみつを加えていて、飴色の小さな四角いゼリー状のものが点々と練り込まれている。
「これはスイートね。この四角いものは何かしら?
固形のはちみつらしいよ。それがゼリー状になっていて、ポテトの黄色にいいアクセントを付けている。村長はこっちが気に入った。植物性のホイップクリームも加えている。自然で甘みも食感もまろやか。スイートポテトはやっぱりスイートでなくちゃ」

           ピカソル10 
           ハニーに恋してる
            ピカソル11 
           固形はちみつとのコラボ
           ピカソル⑨ 
           ココアチョコ味

「ココアチョコは中に砂糖漬けのさつまいもが入っていて、これはこれで面白い味だわ。ココアの風味が強いのが好みの別れるところかな」
「これはアイデアとしてはあると思うけど、邪道だと思うな。さつまいもブラウニーはどう?

           ブラウニー① 
           さつまいもブラウニー
           ブラウニー② 
           アイデアの力?

「普通のブラウニーに砂糖漬けのさつまいもが入っていて、これは美味い。バサッとしていて、口の中でさーっと溶けるよう。メチャウマではないけどフツーに美味い」
「360円という値段はどう? ちょっと高くはないか」
「うーん、難しいところね。スイートポテトにしてもやや高めの設定だと思うわ。気持ち安くしてくれた方がありがたいけど」
今回はゲットラッキーとはいかなかったけど、アンラッキーでもない。グラミー賞のような感動はそうはないってことかな」
「ナニ言ってるのかさっぱりわからないわ。熱でもあるんじゃないの?」
「・・・・・」


本日の大金言。

ダフト・パンクとは「愚かなパンク」という意味らしい。売れる前にイギリスの音楽誌メロディ・メーカーが彼らの音楽を「愚かなパンク」と評したという。それをそのままユニット名にしてしまった。「愚かな」の裏に栄光が潜んでいることだってある。




                    ピカソル12 
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「足尾から来た女」と「豚バラ丼」

2回に渡って放送された NHK土曜ドラマ「足尾から来た女」を見て、感動した彦作村長は、思い立ってその舞台になった渡良瀬川沿いに広がる渡良瀬遊水地(旧谷中村)へとポンコツ車を飛ばした。埼玉、栃木、群馬、茨城4県にまたがる県境に位置する渡良瀬遊水地は、今ではハート形の谷中湖が青々と輝き、野鳥の生息地として絶景のロケーションを誇る場所となっている。明治30年代にここが足尾銅山鉱毒事件の舞台になったとは思えない。だが、現在の福島第二原発事故そのままの構図が、明治の日本にも起きていたことはしっかりと記憶に刻みたい。

           いな穂 
           「道の駅 北川辺」のレストラン

彦作村長は、途方もなく広がる青空の下、遠くに男体山や赤城山、さらには視線を動かすと富士山まで見渡せる場所で、ふと昼飯を食べていなかったことを思い出した。この変わり身の速さはほとんどビョーキである。腹が減っては戦が出来ぬ、などと自己弁明しながら、すぐ近くの「道の駅 北川辺」へとポンコツ車を滑らせた。北川辺はブランド米「北川辺産コシヒカリ」の産地で、道の駅の中にある「レストラン いな穂」は行列のできる農村レストランとして知る人ぞ知る場所である。

            いな穂③ 
            メニューの豊富さに驚く
            いな穂④ 
            コシヒカリの垂れ幕

実演付きの手打ちそばが人気だが、メニューが豊富で、「なまず天重」などというレアなものまである。彦作村長は、迷った末に「豚バラ丼」(600円)を選んで、自販機のボタンを押した。那須郡司牧場の豚肉を使い、ご飯は北川辺産コシヒカリという豪華版。広くて天井の高いウッディーな空間で、平日の午後1時半過ぎなのに、7~8人ほど中高年客が食事をしていた。村長は自分でお茶を入れ、10分ほど待っていると、「豚バラ丼の方~」と呼ばれた。

           いな穂⑦ 
           土俵入り

お盆に乗った「豚バラ丼」は飴色の旨そうな豚バラが10枚くらい折り重なるように乗っかっていた。その上に紅ショウガ。下には千切りキャベツが敷かれている。これぞB級というドンブリだった。みそ汁とお新香付き。手づくり感十分の田舎みそのみそ汁をひと口すすってから、主役の豚バラ丼を攻略にかかった。豚バラ肉は柔らかく、脂身はきれい。甘辛醤油ダレがかなり甘め。好みの問題だが、みりんと砂糖が村長には多すぎると思った。もう一つの「塩豚バラ丼」にすればよかった、と少々後悔。

            いな穂⑨ 
            甘めの豚バラ
            1いな穂1 
            まずはひと口

期待していた北川辺産コシヒカリは、旨いには旨いが、期待値が高かった分、80%の満足度。豚バラの甘さをどうにかできないものかと、備え付けの七味唐辛子をパラパラとかけてみた。これがうまく行った。味が締まり、茫洋としていた豚バラ丼がキュートに締まった。紅ショウガとおしんこがいいアクセントになる。全体のボリュームもほどよい。食べ終わった後、B級の温もりと満足感が胃袋から立ち上がってくるようだった。

           いな穂10  
           地産地消?

ツマヨウジでシーシーしていると、「この幸せモンめ、おまえらがこうしていられるのも、わしらのおかげだぞ」という叫び声が上の方から聞こえた。天国の田中正三翁の姿がちらと見えた。そんな気がするのだった。


本日の大金言。

食べ終えたらドンブリの底をじっと見る。ドンブリの底には人間の営みが隠れている。そこまでに至る長い長い人類の営み。




                        いな穂13 





九段南の絶品「シナモンフレンチトースト」

 知人の大学教授から、東京・九段南の画廊の案内をもらった。「リタイアした大学の同僚が面白い画廊を始めたので、彦作村長も覗いて見てはいかがですか?」という手紙が入っていた。それが「耀(よう)画廊」だった。コンサートと絵を融合させた企画を行ったり、詩と絵画のアートイベントを企画したりと、新しい試みにチャレンジしてる画廊だった。こじんまりとしたモダンな画廊で、大学教授の第二の人生にささやかに乾杯したくなった。ウイーっ、アブサンをくれーっ!

「ウマズイめんくい村もギャラリーを開いたらどうかしら?」
「それよりもたい焼き屋を開きたいよ」
「夢がないのね」
「金もない。たい焼きは泳げない」
「ウソばっかり」
「ナイナイ尽くしで飛べない危ない。傘もない」

            ファクトリー⑦  
            こんなところに・・・

村民2号と夕暮れ前の靖国通りをそんな低次元の言葉遊びをしながら歩いていると、ニューヨークかパリの裏通りにありそうな、シャレたパン屋が視界に飛び込んできた。カフェもある。「ファクトリー」という店名で、すぐ向こうには靖国神社が見える。パン好きの村民2号が「ここでお茶して、パンを買って帰りましょ」。否も応もない。3人の若いパン職人がパン作りに励んでいた。香ばしい匂いが充満していた。

           ファクトリー③ 
           国境はない
           ファクトリー② 
           シナモンフレンチトーストめっけ

棚には見事な焼き立てのパンが10数種類と有機小麦のビスケット、シフォンケーキなどが目に入った。ここは昼は天然酵母のピザやサンドイッチ、カレーライスなどもメニューにしていて、行列ができる人気店だということがわかった。村長は奥の木のテーブル席に腰を下ろして、目を付けていた「シナモンフレンチトースト」(280円)とアールグレーティー(400円)を頼んだ。村民2号は「ナッツとチョコのクッキー」(1枚130円)とコーヒー(380円)を注文。

            ファクトリー1 
           イケてる
           ファクトリー2 
           わおー

ふと見ると、ひっきりなしにお客が出入りし、ほとんどが女性客で外人さんもお茶している。ここはどこ? 私は誰? 「シナモンフレンチトースト」は国産の全粒粉を使った厚切りのレーズンパンで、スライスされたアーモンドと喜界島産の黒糖がキラキラとかかっていた。見た目も味わいも圧巻としか言いようのないスグレモノだった。牛乳と卵とバターの風味がレーズンパンに滲み通っていて、ガッと食らいつくと、重厚なしっとり感とともに、シナモンの香りと複雑な甘みが口中に広がった。恐るべきもっちり感。アーモンドのカリカリと黒糖の甘いざらつきが追いかけてくる。その余韻。それを温かいアールグレイでノド奥へと流し込む。うむむうむむ。村長が食べたフレンチトーストの中でもベスト5に入る美味さ。国籍不明のささやかな幸せ感に浸る。

            ファクトリー4 
            芳醇としっとり
            ファクトリー3 
            言葉はいらない

「ここは有名な麹町カフェのパンも作っているらしいわ。コーヒーも美味いし、クッキーもマル。でも、パンを買って帰るのは止めたわ。オーガニックなので、値段が安くない。コンビニのパンで我慢することにするわ」
「エライッ。何だか、たい焼き屋が開けそうな気がしてきた」
「でも、その前に村長の毎月の小遣いを没収しなきゃ。それを20年くらい続ければ、たい焼きの道具くらい買えるかもね」
「泳ぐ前に死んじゃいそう・・」


本日の大金言。

いいパン屋が確実に育っている。チェーン店ではなく、パン作りに夢を求める若いパン職人たちの挑戦を見守りたい。

 


                       ファクトリー7

驚くべき「半天然たい焼き」発見

たい焼きの美味い季節である。東京・浅草で天然たい焼きと遭遇したと思ったら、今度は、群馬・館林市内をぶらぶら探索中に、驚くべきたい焼きに出くわした。寒風の中、「たい焼」の赤いのぼりが翻っていた。「ヤギヤ」という看板で、出店風の小さな建物だった。地元の女性客が何人か並んでいた。ま、よくあるたい焼き屋だろうな、とタカをくくって覗いてみた。目が点になってしまった。

            ヤギヤ 
            ヤギヤのたい焼き
            ヤギヤ② 
            一種類のみ

一丁焼きの天然ものでもない、養殖ものでもない。3連式とでも言った方がいいのか、珍しい3匹ずつの金型で、まるで一丁焼きのように、くるくると回しながら、若い焼き職人が、見事なワザで焼いていた。かなり年季の入った黒光りした3連式金型。それが6台ほど。村長が初めてみる焼き方だった。1匹100円という安さ。焼き上がったたい焼きは見事な面構えだった。村長はすぐに3匹買い求めた。

                ヤギヤ1 
                珍しい3連焼き

「ヤギヤ」は地元では有名な店で、創業は昭和44年。夏は天然かき氷、秋から春にかけてはたい焼きを専門にしている店だった。イートインではないため、仕方なく車の中で賞味することにした。紙包みを開けると、経木(きょうぎ)が敷かれていて、湯気とともに、「半天然」の見事な面構えのたい焼きが現れた。こんがりキツネ色というよりかなり焼き色が強い。尻尾が長い。ふてぶてしい顔つき。中のあんこが透けて見えていた。そのぎっしり感に気圧される。

            ヤギヤ④  
            この焼き色

ふうふうしながら、二つに割ると、中からいい色のつぶしあんがどろりと現れた。皮は外側がパリパリサクサクとしていて、内側はもっちりしていた。レベルの高い皮であることが最初のアタックでわかった。面白いことに、胴体の部分より尻尾のほうがあんこがぎっしりと詰まっていた。皮が破れてあんこがはみ出しそうだった。たい焼き好きの村長でもめったにない、ひれ伏したくなる凄味。

            ヤギヤ⑦ 
            あんこがはみ出そう
            ヤギヤ⑨ 
            尻尾の驚き

つぶしあんは北海道十勝産を使っているそうで、やや甘めで、口中に入れた途端、皮と小豆のいい風味がどどどと立ち上がってきた。塩加減もちょうどいい。ある種の感動。100円でこれだけのたい焼きはそうはないと思う。村長にとっては、たい焼きの新たな発見だった。包んだままだと、すぐに湯気で柔らかくなってしまうのが難点と言えば難点か。冷めたときの味も気にならないわけではない。

それを超えて、ローカルのかような場所で、かようなたい焼きさまと出会えるなんて。村長はその素朴でふてぶてしい面構えを見ながら、運命の赤い糸を感じるのだった。


本日の大金言。

世の中は改めて広いと思う。メディアに露出している店だけがすべてではない。たい焼きの世界においても、意外な発見はまだまだある。



                         ヤギヤ2 

目白の穴場でツナサンド

東京・目白は彦作村長の好きな街の一つ。学習院や日本女子大などがあり、山の手のハイソなイメージが強いが、目白駅から左手の目白通り沿いにはどこかパリの下町のような匂いがする。シャレた洋菓子屋、カフェ、小さなブティック、さらにはいい和菓子屋、そば屋などがさり気なく佇んでいる。本物はさり気ない。

             カフェアコリット 
             この佇まい

ウマズイめんくい村の東京特派員のキオが、目白から京王線沿いに引っ越すことになり、その引っ越し手伝いで、久しぶりに目白に降り立った。友人たちがすでに引っ越し作業に入っているという連絡を受けたので、彦作村長と村民2号はこれ幸いと、以前から何度か行っている「カフェ アコリット」で、ゆったりとランチを取ることにした。目白駅改札を出てすぐ左手、古い石の階段を降りて行くと、「カフェ アコリット」がさり気ない店構えで佇んでいた。黒板にランチメニュー。「Cランチ ツナサンド(サラダ、珈琲or紅茶付き)780円」に目が行った。目白ランチの意外な穴場、である。

             カフェアリコット① 
             ふむふむ

ジャン・ギャバンにでもなった気分でらせん階段を下りて行くと、エディット・ピアフのシャンソンが流れ、自家製ケーキが目に入る。白壁と煉瓦(れんが)とチョコレート色のウッディーな世界。左手が長いカウンター席になっていて、白髪のバーテンダースタイルの女性と若い男性スタッフ2人が切り盛りしていた。白髪の女性バーテンダーは只者ではない雰囲気。テーブル席も多く、天井からはアールヌーボーの渋いシャンデリア。すべてがさり気ない。

            カフェアリコット⑦  
            自家製ケーキ

歴史が滲みこんだ丸い木のテーブルに腰を下ろして、目を付けていた「ツナサンドランチセット」を頼んだ。飲み物は紅茶。村民2号はコーヒー。10分ほどで、ツナサンドがやってきた。厚切りの食パンにレタスとツナペーストがいい具合に顔をのぞかせていた。ゆで卵とサラダにはホワイトソースがかかっていた。

            カフェアリコット⑨ 
            むむむの世界

ひと口ガブリと行く。パンはしっとりしていて、具のツナペーストは多分マヨネーズと細かいタマネギが入っていて、ツナの風味の奥にかすかな甘み。パンにはマーガリンとホワイトマヨネーズが塗られていて、レタスが1枚。ツナペーストは多くはないが少なくもない絶妙さで、パンがしっとりしている分、意外に食べやすい。胡椒(こしょう)の風味はない。ほどよい満足感。

           カフェアリコット④ 
           ま、まひと口
           カフェアリコット⑤                       そっと覗いて見てごらん                                                      
           カフェアリコット⑥ 
           皿とサラダ

「目白でこの雰囲気でこの値段は当たりね。よく見たら、皿はイギリス製でミントン。コーヒーも美味い。これ見よがしに宣伝もしていない。目白にはこういう店が潜んでいる。奥が深いわ」
「本物はさり気ない。利益率ばかり追求する世界ではない。職人の世界に近い。ツナペーストの量がもう少しあると言うことはないのだが、値段を考えると、それはぜいたくというものかもな。こういう店があるとうれしくなるよ。キオの代わりに目白に2年くらい住みたくなったよ」
「ウマズイめんくい村はどうするのよ」
「村民2号にあげるよ」
「慢性赤字の村なんて、犬も食わないわ」
「うー、ワン・・・」


本日の大金言。

古い街には文化がある。フェイクがあふれ、本物が脇に追いやられている昨今、玉石混交の中から玉を見つけるのも楽しい。



                       カフェアリコット⑧ 

ポンギで見つけた黒豚生姜焼き定食

 久しぶりにウマズイめんくい村の怪しい一行が、東京・六本木の街に降り立った。京都にお住いのヒヒヒの目利き、調布先生ご推薦の日本画家・木島櫻谷(このしまおうこく)の個展を見るためである。途中省略。会場の泉屋博古館分館を出たとき、絵画好きの村民2号が「竹内栖鳳(せいほう)もよかったけど、私はこっちの方が好きかな」とため息交じりにポツリ。村長も全く知らなかった画家で、「お宝鑑定団」でもお目にかかったことがない。村長にとっては目からウロコの世界で、「月下老狸」が特に印象的だった。老狸への眼差しに尋常ならざる孤独と反転するユーモアを感じた。

                              木島櫻谷展 
                              泉屋博古館分館

その足で六本木交差点まで戻り、饂飩坂(うどんざか)を下った辺りで、腹の虫がぐうっと鳴いた。時計を見ると、午後12時半を回っていた。「流れで、タヌキうどんの店でも探そうか」と村長。「肉を食いたくなった」と村民2号。月下ではなく太陽の下での狸とキツネ2匹の昼飯を巡る攻防は2分後、「あそこにしましょ」という村民2号のひと言で決着した。見ると、黒いノレンに「黒薩摩」の看板。その上に「黒豚・地鶏・さつまあげ」と書かれていた。お先真っ黒? 入り口に旨そうなランチメニューがおいでおいでしていた。

                               黒薩摩② 
           黒薩摩の黒いノレン
                              黒薩摩④ 
           黒豚と地鶏

和のモダンな店内で、BGMはモダンジャズが流れていた。剥き出しの黒い天井、小さなカウンターと4人用のテーブルが4つほど。2階もあるようで、夜はギョーカイ人がたむろしていそうな雰囲気だった。村長はメニューの中から「黒豚生姜焼き定食」(900円)、村民2号は「黒豚ロースカツ定食」(950円)を選んだ。黒豚はサツマイモで育てた鹿児島産の六白豚を使用しているそう。「柔らかさも旨味もひと味違います」と店のスタッフ。15分ほど待つと、お盆に乗って黒豚様が同時にやってきた。

                                  黒薩摩⑤ 
            黒豚生姜焼き定食でごわす
                                 黒薩摩13 
            こちらは黒豚ロースかつ定食

まず目についたのは大盛りのサラダ。キャベツがこれでもかとワイルドに盛られていた。黒豚生姜焼きは脂身がきれいで、量もかなりある。飴色のタマネギ。それにスライスされた白い長ネギが乗っかっていた。ぜんまいと黒こんにゃくのそぼろ煮の小鉢、漬け物、みそ汁、ご飯というマツコデラックスな構成。村民2号の黒豚ロースカツにしても、全体のボリュームに圧倒されてしまった。「小鉢、サラダ、ご飯、味噌汁はお代わり自由です」とスタッフ。うーむ。

                                黒薩摩⑦ 
            六白黒豚でごわす
                                黒薩摩⑨ 
            唐辛子をパラパラ

黒豚生姜焼きは、かなり甘いタレを使っているようで、正直、もう少し甘みを抑えた方がいいと思った。肉の柔らかさと旨味が確かにひと味違った。肉自体に品のいいほのかな甘み。それだけに甘すぎるのが少々残念だった。むろん好みの問題だが。途中で七味唐辛子をパラパラと振ってみた。これが案外効いて、味がキュッと締まった。ご飯は期待以上の美味さ。

                                黒薩摩12 
            ご飯の意外な実力

「肉が柔らかくて、これだけボリュームがあると、さすがに満腹って感じ。ご飯もみそ汁もお代わり自由って言ってたけど、とてもとても。六本木でこのボリュームと内容でこの値段はリーズナブルだと思うわ。満足満足」
「サラダのキャベツを半分残してしまったよ」
村民2号がお腹をポンポン。村長もポンポン。ポンギで時ならぬキツネと狸のポンポコ腹鼓合戦。あまりのくだらなさ。日本は平和である。


本日の大金言。

六本木のランチは高い。ラーメン屋が多すぎる。1000円以内で美味いランチを探すのも一苦労である。



                                                                 黒薩摩14

元女子バレー選手の仰天カフェ食堂

 「埼玉の加須にいいカフェレストランがあるらしい。ロケーションも食事の内容もいいレベルで、ボクらのギョーカイで、ちょっとした話題になってるんですよ。今度見に行ってみようと思っているけど、村長も一度覗いてみてくださいよ」
彦作村長のもとに、埼玉・熊谷の人気カフェのオーナーから、そんな極秘情報が入った。

           ラフ  
           かような場所に

フットワークを売り物にするウマズイめんくい村の村長としては、これは一応は行かずばなるまい。正直に言うと、このところカフェにはいささか食傷気味だが、人気カフェのオーナーが言うほどだから、ひょっとして、という気分だった。ポンコツの愛車を飛ばして、加須市の三俣小学校を目指した。「食堂カフェ ラフ」はそのすぐそばの貯水池の畔にあった。こんなところにという殺風景な場所だった。

           ラフ② 
           別世界が

グレーと白を基調としたしゃれた外観。店内に入ると、入り口には自家製のスイーツ類が美味そうに並んでいた。そこから別世界が広がっていた。中央には12人ほどがゆったりと座れる大きな長方形の木のテーブル。4人用のテーブルが4つ、2人用のテーブルが2つほど。さらに2人用のカウンター席もある。それぞれのテーブルがウッディーで、こじゃれていた。テラスまである。何より驚いたのは目の前が小さな湖のような貯水池で、そのロケーションを背景として取り込んでいたことだった。絶景なり。むむむ。

            ラフ④ 
            ここはどこ?
            ラフ③ 
            選ぶランチメニュー

村長はランチメニューの中から、「お好み惣菜2品とメイン1品」(税込1000円)を選んだ。惣菜もメインもいくつかから選ぶというシステム。村長は惣菜に「グリーンサラダ」と「いんげんのピーナツ和え」、メインは「サーモンのオーブン焼き」を選んだ。スープとご飯付き。村民2号は「アサリと菜の花のペペロンチーノ」を選んだ。

            ラフ⑤ 
            サーブとレシーブ
            ラフ⑧ 
            オーガニック!
            ラフ10 
            幸せなサーモン?

厨房からいい匂いが漂ってきた。見るとイケメンのシェフ。さらに背の高い凛とした女性が忙しそうに動いていた。12~3分ほどで、料理がやってきた。「サーモンのオーブン焼き」はガーリックソースで、オニオンや香草などがかかっていた。タマネギ、大根、人参をさいの目切りにした奥深いコンソメスープをひと口味わってから、ご飯とサーモンを賞味した。サーモンは外側がカリッとして、ガーリックソースがいい具合に食欲をそそった。素材選びからオーガニックにこだわっていることがわかる味だった。感心したのは惣菜の「いんげんのピーナツ和え」。ピーナツと味噌と砂糖のバランスがよく、いんげんの鮮度のよさとともに、手抜きのない家庭的な味だった。和と洋の融合。

           ラフ⑨ 
           イケてるいんげん君

「ここが埼玉の田舎だとは思えないわ。軽井沢かどこかにでもいるみたい。不思議な現実。ゆったりとした時間が流れていて、料理もまずまず。今度はぜひスイーツを食べに来たいわ」
村民2号がしきりに感心している。
彦作村長はずっと気になっていたことを背の高い美女にズバリと聞いてみた。
「あのー、ご夫婦ですか?」
「いえいえ、シェフは私の弟です(笑)。母も手伝っているんですよ。家族ぐるみです。私は実業団で女子バレーをずっとやっていて、引退してから、家族でこういう店をやってみたいと思っていて、ついにといいますか、ここで1年前に始めたんです。毎日大変ですけど、充実してます(笑)」

強烈なスパイクだった。何と目の前の垢抜けた美女は実業団バレーで活躍していた田中弓貴さんの転身した姿だった。村長は腰を抜かしたまましばし動けなかった。完敗。


本日の大金言。

スポーツ選手の第二の人生はさまざま。家族でカフェ食堂という選択にカンパイ、乾杯!




                        ラフ12

「ベジポタつけ麺」初体験の驚き

 つけ麺の中で、彦作村長が以前から気になっていたのが「ベジポタつけ麺」なるもの。ベジポタとはベジタブルポタージュの略で、つけ汁がどろりとしたポタージュ状の摩訶不思議なもの。2008年ごろに東高円寺の「麵屋えん寺」をはじめとして、横浜の「大ふく屋」、渋谷の「つけ麺大臣本店」などが切り開いた新しい味で、今では、吉祥寺「えん寺総本店」なども人気となっている。ドロドロ系なのに、野菜ペーストがたっぷり入ったポタージュのつけ麺ということで、女性ファンも多いとか。ほんまかいな。

           えん寺① 
           ベジポタって何だ?

たまたま怪しい企画会議に出席するために、ラーメン激戦区の池袋駅北口周辺を歩いているときに、「元祖ベジポタつけ麺 えん寺」の看板が目に入った。時刻は午後4時過ぎ。会議まで40分ほど間があった。妙な時間帯だが、これは入るっきゃない。自販機で定番の「ベジポタつけ麺」(800円)を押す。メニューは基本的にベジポタつけ麺のみで、味玉入りが900円、肉増しが1000円、辛つけ麺850円など。かなり高めの設定だった。

店内は10席ほどのL字のカウンターのみで、3人の男性スタッフが忙しそうに働いていた。この時間帯なのに、3分の2ほど席が埋まっていた。カップルが一組と残りは男性客。村長が腰を下ろすと、「麺は胚芽麺ともち麺、どちらにしますか?」と聞いてきた。胚芽麺は小麦の胚芽も練り込んだ極太麵で、最近メディアにも取り上げられることも多い。村長はしばし迷ったが、珍しモノ好きの好奇心で胚芽麺(並220グラム)を選んだ。「麺の茹で時間は約10分ほどかかります」と表記してあった。うーむ。

            えん寺② 
            胚芽麺と驚くべきつけ汁

13~4分ほど待って、噂のベジポタつけ麺が目の前に置かれた。何というお姿。胚芽麺は茶グレーの極太麵で、不敵な面構え。それがドンブリの中でどっかと胡坐(あぐら)をかいていた。問題のつけ汁はどろりとしていて、ところどころに小さな白いものが浮いていた。よく見ると山芋のようだった。豚骨と鶏ガラのスープをトロトロになるまで煮込み、そこに鰹や鯖、煮干しなど魚介系の出汁を加え、さらにオリジナルの野菜ペーストを入れて、ポタージュ状に仕上げているという。見るからにドロリとしていて、それが湯気を立てていた。見方を変えるとある種不気味な光景。三つ葉がなかったら、底なしの泥沼のよう。過剰な背脂などは浮いていないことは好感。

            えん寺④ 
            コシの強さと押しの強さ
            えん寺⑤ 
            ドロドロつけ汁とチャーシュー
            えん寺⑦ 
            新しい世界?

胚芽麺はかなりコシが強く、そのくせツルリとしていて、まるで固めのさぬきうどんのような食感だった。噛んだ途端、小麦の風味が口中にぐわんと広がった。胚芽効果。つけ汁は野菜のポタージュが効いていて、豚骨魚介系のクセをまろやかに中和している。中に厚くて柔らかいチャーシューが2枚とメンマが潜んでいた。うむむ、うむむ。予想以上に旨い。ドロドロ系なのにヘルシーという不思議。これが人気の秘密なのか。
「このつけ汁の食感と奥深い甘みの正体は、じゃがいもなのでは?」
スタッフに聞いてみると、「じゃがいもだけではなく野菜はいろいろ入っています」とひと言。どうやらそれ以上は秘密らしい。

800円は安くはないが、締めで和風スープ割りを加えて、つけ汁をすっかり飲み干すと、「ベジポタ、恐るべし」という言葉が胃袋から漏れてくるのだった。


本日の大金言。

ラーメンの世界は今や国境を越えて、進化し続けている。そのうち和食のように、ラーメンも世界遺産になる日が近い。




                        えん寺⑨ 






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浅草で老舗の「天然たい焼き」と遭遇

 よく考えてみたら、この冬はたい焼きを食べていなかったことに気づいた。夕暮れ時。浅草・国際通りをブラ歩き中に、ホテル京阪浅草のあたりで、寒風に乗って、たい焼きのいい匂いとともに、ぼおーっと灯りが見えた。海老茶の暖簾と「浅草浪花家」の看板。浅草浪花家だとお? 近寄ってみると、黒ずくめの若い男が、一丁焼きでたい焼きを焼いていた。ほとんどのたい焼きは一度に大量に焼く「養殖もの」だが、一丁焼きは焼きゴテで一匹ずつ。別名、「天然もの」とも言われる。

            浅草浪花家  
            あの老舗の天然もの?

聞いてみると、あの明治43年創業の麻布十番「浪花家総本店」で修業して、「暖簾分けした店です」とか。奥が簡素なカフェになっていて、そこで焼き立てを賞味できるという。一生懸命に作っている感じが気に入った。これは入るっきゃない。この冬初めてのたい焼きが浪花家とは、ツイてる。メニューを見ると、フツーの甘味屋のようで、あんみつや焼きそば、カレーうどんまである。たい焼き一匹(150円)でもオーケーだが、彦作村長は、少々見栄を張って、「たいやきと飲み物セット」(500円)を頼むことにした。飲み物は煎茶、ほうじ茶、コーヒー、抹茶の中から「煎茶(長崎県産)」を選んだ。

            浅草浪花家② 
            たい焼きセット
            浅草浪花家③ 
            凝った構成

7~8分ほどで、白い磁器の急須に入った煎茶とともに、たい焼きクンが登場した。よく見ると、皿はたい焼きの形の大きな竹細工だった。悪くはないが、もっとシンプルに木か陶器の皿の方がたい焼きが引き立つのではないだろうか。たい焼きは天然もの特有のいい焼き色で、外側がパリッとしていて、真ん中で割ると、中から見事な粒あんが湯気とともに現れた。粒あんは北海道十勝産を8時間かけてじっくり炊いたもの。砂糖は上白糖を使用。「たい焼きには上白糖が一番合うと思います」ときっぱり。これを毎日作っているという。焼き立てなので、溶岩のようにどろりとしていた。

           浅草浪花家④ 
           100年前と同じ?
           浅草浪花家⑤ 
           たまらん!
           浅草浪花家⑥ 
           見事な粒あんと皮

皮の薄さがひと目でわかる。まずはひと口。外の皮はパリッとしていて、薄いのに内側がもっちりしていた。ひょっとして、山芋か何かを加えているのかもしれない。粒あんはちょうどいい甘さで、ほのかに塩が効いている。口に入れた瞬間、小豆のいい風味がさっと広がるのがわかった。尻尾までしっかり入っている。麻布の総本店とほとんど同じだが彦作村長には粒あんの量が気持ち少なめな気がした。というよりも、総本店より焼き方もきれいで、洗練されていると言った方がいいかもしれない。ここは好みの問題。

煎茶はまろやかで、この大寒の中、浅草でまさか浪花家と出会えるとは思っていなかった分、村長の心までほっこり。入り口には女子高生や若い女性がたい焼きの焼き上がるのを待っていた。春は遠いようで近い。


本日の大金言。

スカイツリーの下の一丁焼きのたい焼き。浅草にも新しい波が押し寄せている。



                       浅草浪花家⑨

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高いか安いか、椿山荘のそば処

 彦作ぎっくり腰村長のもとに、隣村のロボコップ村長から、「雑司ヶ谷七福神をめぐって、椿山荘で昼飯でもいかがですか?」というお誘いがあった。椿山荘だとお? 村長は迷った。安くないうえに、そこは会津藩のかつての敵、山縣狂介(有朋)の屋敷跡でもある。「そば処なら比較的安く済みます。敵陣に舌で斬り込むのもオツなもんですよ」とも。逃げるわけにはいかない。村長は、スニーカーに履き替えて、都合10人の隊列に加わった。いざ出陣。

           雑司ヶ谷① 
           七福神巡り

雑司ヶ谷七福神を5つほど巡ったら、ちょうどランチタイムになった。椿山荘はビストロやフランス料理のレストラン、和食の料亭など高ビーな店ばかりだが、ロケーションを楽しみながら、比較的安く済ませるには、「そば処 無茶庵」に限る。人気のそば処でもあるので、行列を覚悟で乗り込んだが、正午10分前ということもあってか、意外やすんなりと入れた。隊列は二つに分断されたが。村長は目の前が庭園の大きい黒塗りのテーブル席に案内された。琴の音が流れ、白滝が岩肌を流れ落ちている。風流である。

            椿山荘① 
            そば処無茶庵でござる
            椿山荘② 
            高いか安いか

村長はそっと財布の中身を確認してから、「三種のそば膳」(1500円)を頼んだ。ついでに、他のメンバーにならって(?)、「お銚子」(沢の鶴 700円)もぬる燗で頼むことにした。5分ほどでお銚子。「海老センベイ」が先付のように置かれた。この心配りは悪くない。その後、10分ほどで、本命の「三種そば膳」がやってきた。

            椿山荘③ 
            うむむの世界
            椿山荘④ 
            三種のそば膳

三種はきのこそば、黒海苔(岩海苔)そば、とろろそばで、外側が黒と内側が朱塗りの小さなお椀にそれぞれ盛られていた。それに穴子の煮付け、デザートのそば寒天という構成。目た目もよく考えられた、如何にもという和の小宇宙である。そばは多分手打ちの二八そばで、北海道産そば粉を使用しているそう。挽きぐるみなのか、黒い星もところどころに見える。やや太めのそばで、コシが強め。村長の好きな食感。ノド越しもまずまず。

            椿山荘⑦ 
            コシの強いそば
            椿山荘⑧ 
            岩海苔がどっさり
            椿山荘10 
            そば寒天

ツユはカツオの出汁が効いたあっさり系で、きのこ、岩海苔、とろろそれぞれの味をそつなく支えている。合い間に煮穴子をつつきながら、ぬる燗をちびりちびり。煮穴子は可もなく不可もなく。すべてがまずまずの世界。無茶のない無茶庵の世界。ロケーションの素晴らしさがなければ、78点の満足度。最後の黄な粉のかかったそば寒天もまずまずの美味さ。〆て2200円(サービス料別)なり。総合的に見て無茶高ではないと思う。都心でちょっとリッチな気分を味わいたいときには意外な穴場かもしれない。ほろ酔いのちゅうくらいかなおらが春。会津藩足軽の末裔は、長州藩の末裔の庭園で、いつの間にか刀が竹光になっていた。ざんねーん!


本日の大金言。

B級だって、たまにはA級の中に紛れ込むこともある。A級の中で、いかにB級を楽しむか。それも悪くはない。




                         椿山荘11 








銀座の隠れ家、路地裏のチーズケーキ

 今回は東京・銀座。10人中8人くらいが「へえー、こんなところに」と驚く路地裏のカフェの話である。ここで賞味した「カマンベールチーズケーキ」が実に美味かった。銀座の醍醐味は路地裏にあるとはいえ、普通の人はなかなか行けないし、気が付かない。彦作村長もその一人だが、エンターテインメント新聞社時代に時折、迷路のような銀座の路地裏を探索したりした。

松屋を背にして、プランタン方面へと向かいながら、ふと左手へと足を延ばす。「SABWEY」の看板が見えたあたりで中央通方面へ10歩ほどのところに、すき間のような路地裏を見つけた。銀座ビルというビルの陰。入り口に「4F カフェ オハナ」という看板がさり気なく置かれていた。「オハナ」とはハワイ語「家族」の意味。

            カフェオハナ①  
             ようこそ路地裏へ

銀座特有のどこか秘密めいた都会の匂い。2~3人がようやく入れるほどの狭いエレベーターで4階へ。そこが「カフェ オハナ」だった。入り口が狭いのに店内は意外に広く、ハワイかどこかのリゾート地のカフェにでも紛れ込んでしまったようだった。客のほとんどは女性で、最近この手の店が増えてきているとはいえ、8年前ほどの時点で、銀座でかような店はそう多くはなかったはずだ。
 
久しぶりに銀座をブラ歩き中に、村民2号が「美味いコーヒーとチーズケーキを食べたい」と言い出した。ちょうどおやつタイムの午後3時。銀座には美味いケーキを出す喫茶店はいっぱいある。どこにしようか迷っていると、ふとこの「カフェ オハナ」を思い出した。

「隠れ家みたいな面白い雰囲気の店がある。チーズケーキももあるはずだ。コーヒーはまあ普通かな」そう言って、数年ぶりに路地裏の狭いエレベーターに乗って、ドアを開けた。背の高いカウンター席、剥き出しの白壁の天井、4人用のリゾートソファが二つと2人用のテーブルが8席ほど。猫の絵本がポイントポイントにきれいに置かれていた。相変わらず客のほとんどは女性で、ほぼ満員だった。

            カフェオハナ③ 
            高いか安いか

メニューの中から、少々高いが、「ケーキセット」(1100円)にした。ケーキはむろん「カマンベールチーズケーキ」を選んだ。村長は紅茶、村民2号はコーヒー。7~8分ほどで「カマンベールチーズケーキ」が登場した。大きさはそれほどではないが、表面を白カビ風のシュガーパウダーがうっすらと覆っていた。その重厚な本物感に辛口の村民2号が「これはいいかもね」とポツリ。

           カフェオハナ④ 
           カマンベールチーズケーキのお成り~

濃密でぼそぼそとした固めの食感。口に入れた途端、カマンベールそのものの風味がガブリ寄りしてきた。甘さはほとんどなく、ケーキという言葉からはほど遠い素朴な味わいで、チーズ小屋からそのまま抜け出てきたような風味。底のビスケット生地と生クリームがいぶし銀を引きたてている。
「甘さがあまりないのがいい。チーズそのものみたいなチーズケーキだわねえ。この濃厚な味は口の中からしばらく消えそうもないわ」
店の人に聞いたら、あの湯島のタント・マリーから直送していると言ってた。美味いわけだ。もっともチーズ好きの人にとって、だけどな」

            カフェオハナ⑧ 
            素朴な重厚
            カフェオハナ⑨ 
            乳と白カビの世界

「コーヒーは特別うまいわけじゃない。雰囲気が癒し系で、ゆったりできるというのがいいところかな。ホントに隠れ家だわ」
「ここで4年ほど前に調布先生の送別会の流れで、二次会をやったんだよ。美女も何人か駆けつけて、いろいろプレゼントしてたよ」
「へえー、モテモテだったのね。今はどうなのかしら」
「今ごろ京都でクシャミしてるんじゃないか」
西の方から、風に乗って、ハックション、という声が聞こえた気がした。


本日の大金言。

銀座はスイーツのメッカだが、路地裏のメッカでもある。地名の由来は江戸時代初期の貨幣鋳造所から来ていて、当初は京都にあったものが日本橋蠣殻町に引っ越してきたという。京都と銀座を結ぶ意外な点と線。



                        カフェオハナ11 

生菓子の隠れ名店?「かのこ」に驚く

 佐野ラーメンを賞味した足で、佐野市街を散策することにした。佐野は面白い街で、ラーメンの街という他に関東でも有数のショッピングモール「佐野プレミアムアウトレット」を持ち、土日などは首都圏からも若い客が殺到する。古さと新しさが混在した街で、意外な場所にひっそりといい和菓子屋があったりする。佐野厄除け大師の周辺で、彦作村長の目がピカリと光った。

            十三夜2  
            当たりかハズレか?

「美味豆大福」「草もち」という文字が見えた。かなり古い建物で、まるで目立つことを極力避けるような佇まい。「御菓子司 十三夜」というややさびれた感のある大きな横書きの看板。ダメもとで彦作村長が足を踏み入れた。すぐ目の前に古いショーケースがあり、そこに生菓子や和菓子が並べられていた。大福帳でも置いてありそうな気配。女将さんだろうか地味系の女性が一人。聞いてみると、「創業120年になります」という。「四代目が毎日銅鍋であんこを作ってるんですよ」とも。これは当たりかもしれない。

            十三夜② 
            120年の歴史

「草もち」(1個130円)と「かのこ」(130円)、それに「元祖厄よけ饅頭」(100円)を買い求めて、ウマズイめんくい村で賞味することにした。「元祖厄よけ饅頭」はまずまずの美味さ。皮も中のこしあんも真面目に地味に作り続けていることがわかる味で、村長は好感をもった。次に「できれば今日中にお召し上がりください」という「草もち」に移った。

            十三夜⑧ 
            丁寧なワザ
            十三夜3  
            うむむ

「よもぎの色が自然できれい。丁寧に作られていることがわかるわ。スケッチしたくなる」
と、絵心のある村民2号。
なかなかの味わいだった。餅はよもぎの香りがこの時期でもかなり強く、餅のほどよいやわらかさが印象的。中のこしあんは雑味のないきれいなこしあんで、甘さがほどよい。そのしっとりとした初春の風味は、店の実力がかなりのものであることを示している。メディアなどにもあまり登場していないことが村長の心をくすぐる。これは隠れた名店ではないか。

            十三夜11 
            かのこの隠れた実力
            十三夜12 
            まずはひと口

最後に村長が一番気になっていた「かのこ」へ。外側の北海道十勝産の大納言小豆はお見事、そう言いたくなる色合い。表面を包む透明な寒天。その素朴の恐るべき輝きと存在感。これは東京の老舗にも負けないかもしれない。そう思いながら、恐るおそるひと口。大納言はちょうどいい固さで、中のこしあんはしっとりとなめらかな舌触りで雑味がない。控えめな甘さの奥にかすかな塩分。大納言と小豆の風味が口中に広がると、村長は、隠れた名店を発見した気分になった。脳天の窓がエンドルフィンで開き始める。青い空。



本日の大金言。

隠れた名店は案外足元にあるかもしれない。情報に頼り過ぎないこと、自分の五感を研ぎ澄ますこと。自戒を込めて。




                   佐野厄除け大師① 

老舗佐野ラーメンの意外な餃子

 本日は久しぶりにラーメンのメッカ・佐野である。去年あまりいいことがなかった彦作村長は、思い立って、関東三大師・佐野厄除け大師で、厄払いしてもらうことにした。3連休最後の日。一月中は初春厄払い月間で、遅い初詣を兼ねた参拝客でにぎわっていた。手を合わせて、厄払いしてもらうと身も心もすっきりするから不思議である。で、本来の目的である「うまいラーメン屋探し」に繰り出した。

            岡崎麵12 
            お掃除小僧

ポンコツ車を9号線沿いにぷかぷか走らせると、黄色いビルが見えて、駐車場は満杯、さらに店の中には何人か佇んでいた。かなりの人気店で、創業が昭和47年(1972年)という「岡崎麵」だった。時刻は午後1時15分。15分ほど待って、厨房に面した5席ほどのカウンター席に案内された。他に4人用テーブルが三つ、小上がりの座敷もあり、そこにはテーブルが二つ。目を引くのは厨房の広さだった。白タオルを頭に巻いた男性が3人、麺づくり、餃子づくりと忙しそうに働いていた。ひょっとして家族経営かもしれない。

            岡崎麵① 
            岡崎麵の黄色
            岡崎麵② 
            どれにしようか?

メニューから「ラーメン」(600円)、それに餃子(5個350円)も頼んだ。村民2号も同じものを頼んだ。麵は佐野ラーメンの特徴でもある青竹手打ち麺で自家製、餃子も皮から手づくりしていた。これは期待できるかも。まず「ラーメン」がやってきた。昔ながらの小さめのどんぶりで、佐野特有の透明なスープ、チャーシュー、メンマ、刻みネギ、それにナルトが乗っていた。スープが少なめなのとチャーシューが薄いのが気になったが、正統派の佐野ラーメンといったところか。

            岡崎麵③ 
            ラーメン登場
            岡崎麵⑨ 
            餃子も登場

続いて餃子もやってきた。叶姉妹のようなグラマラスなボディーから「旨いぞウフフ光線」を放っていた。まずは、ラーメン。スープをひと口。基本はやや甘めの鶏ガラ醤油スープで、そこに豚骨とラードの匂いがぷんと漂った。ややくせのあるスープ。麺は細めの平縮れ麺で、よく見ると太さがまちまち。それが返って手打ち感を強調していて、いい感じである。

            岡崎麵⑤ 
            麵がいい
            岡崎麵⑦ 
            チャーシューは薄い

麵はコシがあり、つるりとした食感。スープもよくからまり、食べやすい。
「旨いわ。上等のチキンラーメンみたい」
村民2号が辛口なのか甘口なのかわからない表現で寸評した。
「麵が細いのにコシがしっかりしていて、レベルが高い。でも、チャーシューがイマイチだな。もっと厚みが欲しい」

            岡崎麵10 
            圧巻の餃子さま
            岡崎麵13 
            ま、ひと口

「餃子が秀逸ね。外側の焼き面がパリッとしていて、中のあんは野菜と挽き肉がちょうどいい具合で、とてもジューシー」
「冷凍はせずに、すべて手作りでその日限りで作っているようだ。ニンニクも効いている。旨いはずだ」
「ラーメンより餃子の店って感じ」
「200店ある佐野ラーメン店の中でもここは古い店で、メディアにもよく取り上げられるようだ」
「あれっ、村長のポリシーに反するんじゃ?」
「今回は人の行く表にも道あり花の山、になってしまったかな」
「もう一度、佐野厄除け大師に行きましょ」
「・・・・・」


本日の大金言。

佐野ラーメンには餃子の旨い店が意外と多い。餃子の街・宇都宮より首都圏に近い餃子の街。




                       岡崎麵11

浅草の穴場、土蔵の納豆スパゲティ

 3連休の初日、東京・浅草の雷門周辺は観光客で身動きができないほどの混雑ぶりだった。いくらなんでもこれはひどすぎる。スウェーデンから一時帰国した瘋癲先生を囲んで、初春居酒屋ツアーとシャレ込んだつもりが、とんだ野暮になりかねない。彦作村長は焦った。集合時間にはまだ1時間以上、間がある。今さら集合場所を変えるわけにもいかず、村長はこの大混雑からしばしの間、抜けることにした。こういう時はランナウェイ、に限る。

            エフ 
            穴場かも

雷門の対面を江戸通りに出て、百歩も行かないうちに、右手にレトロな雰囲気のカフェがあった。雷門2丁目。安手のレトロではなく、ハイカラ文化の匂い。それが「ギャラリー エフ」だった。雷門の大提灯からちょっと離れただけで、人通りが驚くほど少ない。テレビやネットや雑誌の情報に動かされて、そこで取り上げられている人気スポットに集中する人の波。人の行く裏に道あり花の山。村長は、ここで遅いランチを取ることにした。

           エフ②
           スパゲティの一番下

手前がカフェ、奥が慶応4年に建てられた材木商の土蔵を改修して16年ほど前からギャラリーとして使っている。ちょうどこの店のアイドル猫だった「銀次親分」が昨年暮れに亡くなり、ギャラリーは祭壇になっていた。猫好きの村長は、お線香を上げて、丸い木のテーブルに戻ると、グラスの水をぐっと飲んでから、おもむろにメニューに目を通す。「オムライス」(840円)にするか「納豆とベーコンのクリームソーススパゲティ」(950円)にするか迷った。どちらも旨そうだった。味な悩み。珍しいもの好きの村長は、110円の差を乗り越えて、納豆スパゲティを選んだ。サラダ付き。

            エフ④ 
            どひゃー

15分ほど待つと、サラダとともに、「納豆とベーコンのクリームソーススパゲティ」が登場した。白い磁器皿の中央には卵の黄身がどんと鎮座し、それを囲むように粒つぶの納豆、拍子切りのベーコン、海苔、万能ねぎ。その下には茹で上げられたパスタが湯気を放っていた。何という風景。こんなのアリ? フォークで卵の黄身をかき混ぜてからパスタをすくって、まずはひと口。うむむ。口中一杯に納豆の風味と和風ソース、それにかすかに生クリームの香り。パスタはアルデンテ(固め)。

            エフ⑥ 
            ミスマッチ? ハウマッチ?
            エフ⑧ 
            味な浅草ハイカラ文化


和風ソースはうどんのツユを使っているそうで、それが和洋折衷の摩訶不思議な甘辛の味わいを作っている。驚くべきは、パスタの下に生クリームの沼が広がっていたこと。「浅草の牛乳屋さんの生クリームを使っているんですよ」とママさん。ミスマッチ? いやいや、ひょっとしてこれは、古い文化と新しさが融合した和洋折衷の街・浅草の新しい結晶かもしれないぞ。村長の頭が混乱する。旨い、マズいを超えたまさにウマズイ美味。

「夜はバータイムで、いろんなライブも企画しているんですよ」とママさん。「浅草は皆さんが知らないところにも見てもらいたい場所がいっぱいあるんです」とも。その約5時間後、二次会をここでやろうとしたが、カラオケ派に実権を奪われ、彦作村長もツツとそちらになびいてしまった。気が付いたら、カラオケは大いに盛り上がり、村長も3曲も熱唱していた。途中メディカルチェックで9人が去り、最後に残ったのは3人になっていた。外に出ると、寒風の中、夜空にスカイツリーが妖しく浮かんでいた。ハ、ハックション!


本日の大金言。

スカイツリーと浅草寺だけではない。ガイドブックを捨てて、街を歩こう。浅草の魅力は案外、表通りの裏にある。





                        エフ10 

玉子焼き屋のコロンブスの卵

 東京・築地の場外市場は、この十年ほどで随分と変わってしまった。海鮮どんぶり屋が急増し、観光客もさらに押し寄せ、最近ではこれまで使っていなかった古い建物の上層階を使って、しゃれたバーやカフェなどもオープン。「新たな夜のグルメスポット」としても脚光を浴び始めている。築地には夜もあるでよ、というわけだ。

だが、築地の場外市場はやはり朝がいい。彦作村長は、宮仕え時代に、築地の玉子焼き屋で、よく玉子焼きを買った。贔屓(ひいき)の店は「松露(しょうろ)」で、ここの「親子焼き」や「山菜焼き」「う焼き」は特に好みだった。「松露」の他に「大定(だいさだ)」「山長」、それにテリー伊藤さんの実家「丸武」など玉子焼き屋がしのぎを削っている。

                  築地・大定① 
            築地・大定の新しい冒険?

久しぶりに場外市場を散策していると、おばさん(観光客?)や若い女性の行列ができていた。「大定(だいさだ)」の前。焼き立ての玉子焼きを「ほか玉」(1個100円)というネーミングで切り売りしていた。これを椅子に座って食べたり、歩きながら食べたり。昔はなかった光景。観光地でよく見られる光景。そのすぐ隣で「玉子たっぷりプリン」(150グラム250円)が売られていた。こちらにも長い行列。パステルの「なめらかプリン」好きの村長は、珍しい「玉子焼き屋のプリン」の方に、ぐらりと体重が移動した。ミーハーの面目躍如。

           大定③  
           コロンブスのプリン?

それをウマズイめんくい村まで持ち帰って、賞味することに。地鶏卵を使ったプリンで、まず色が黄色とオレンジの中間のような色で、見るからに濃厚さが伝わってくる。村長の好きなカラメルシロップは少ない。大きい器のふたを開けると、ミルクと卵の香り、それにバニラの香り。卵の黄身の香りがやや強めで、それがこのプリンの出生を証明している。

            玉子たっぷりプリン① 
            大きいカップ 
            玉子たっぷりプリン④ 
            玉子たっぷり感

スプーンですくってひと口。今流行のなめらかでもなく、とろり感もない。だが、それが悪くない。素朴な玉子豆腐のような食感。甘さも控えめ。極上というよりも、極下の美味さ。B級の美味。よく考えてみると、牛乳メーカーがプリンを出し、ケーキ屋もプリンを出す。スーパーにはプリンが溢れている。玉子焼き屋がプリンを出したっておかしくはない。これまで出さなかった方がむしろおかしいくらいだ。玉子焼き屋のプリン。ひょっとして、これはコロンブスの卵かもしれない。



本日の大金言。

築地場外の夜の再利用といい、玉子焼き屋のプリンといい、これまでにない柔軟な発想の小さなベンチャーが起き始めている。小さなコロンブスの未来が気になる。


                      玉子たっぷりプリン② 

昭和モダンの香り残す浅草の絶品カレー

 所用があって、昼めしどき、浅草をぶらり歩きすることになった。伝法院通りからホッピー通りを抜けて、ふらふらと合羽橋方面へと歩いているうちに、ふと彦作村長の好きなエノケンの顔が浮かんだ。「オレ~は村中で一番」というフレーズが頭の中を流れ、その歌の舞台は銀座なのに、エノケンにはやはりデビュー地である浅草が似合う。大正ロマンと昭和モダンの匂いが残る浅草。村長は全身田舎者のミーハーだが、ハイカラ文化(この言葉はほとんど死語だが)には郷愁を感じる。レディー・ガガやブルーノ・マーズが好きなのも、エノケン好きの延長線上だと思う。腹の虫がぐうっと鳴いた。

            ピーター② 
            時を超える「ピーター」

自然に足が知る人ぞ知る「喫茶 ピーター」へと向かった。この店の名物でもあるカレーライスを改めて食べたくなったからだ。7~8年ほど前に京都にお住いのグルメ仙人のお声掛けで、ここでカレーライスを賞味したことがある。名物ママの作るカレーは意外なくらい美味だった。創業が昭和39年。SKDのダンサーだった女性が始めた喫茶だが、その2年後の昭和41年に現在のママが引き継いで、名物のカレーライスはこのママが作ったもの。カレーライスの他にハヤシライス(750円)も名物で、おでんやお汁粉などもある。

            ピーター⑥ 
            レトロなどではない本物

そこだけ時が止まったような店構え。店内はモダンの名残を残す黒のテーブル席が三つ。奥は黒の長いソファ席。その上に紙芝居作家の加太こうじが描いた有名な巨大壁画が広がる。チャプリン、ターキー、シミケンなど昭和モダンを彩った懐かしのスターが塗り込められてる。むろん中央にはエノケンもいる。デンスケもいる。永井荷風もいる。飛び切りの世界。村長は、目的の「カレーライス」(600円)を頼んだ。ママはご高齢だが、声に華やかさとツヤがあり、一言二言話しただけで、感性が若々しいことがわかる。ファンが多いのもうなずける。

            ピーター⑧ 
            伝説的なカレーライス
            ピーター⑤ 
            加太こうじ作の壁画

15分ほどで、コンソメスープが置かれ、続いて白い楕円の大きな磁器皿に乗った「カレーライス」が登場した。かなりの時間煮込まれたカレーで、タマネギもポークも人参もほとんど溶け込んでいるのがわかった。半透明の輝くようなライス。福神漬けではなく、小鉢にキュウリと大根の漬け物も。コンソメは奥深い味で、それを二口三口ほどすすってから、カレーライスをスプーンで口へと運んだ。一瞬、濃いと思った。だが、次にその濃厚さの奥から何とも言えないやさしい旨味がふわりと立ち上がってきた。ざらっとした自然な甘みも。うむむ。この感触は溶け込んだじゃがいもの感触だろう。 さらにスパイシーな辛さが口内に広がってきた。ライスの旨味とともに、次々に変身する、この複雑な美味さはどこから来るのだろう?

            ピーター3 
            よく煮込まれたカレー
            ピーター2 
            輝けるライスと一緒にお口へ

「とにかくよく煮込むんですよ。煮込めば煮込むほどうまくなる。小麦粉は使いません。カレー粉だけです。タマネギ、ニンジン、じゃがいも一杯入れて、ポークも入れて、よく煮込む。カツオと昆布の出汁も加えているんですよ。出来上がりとさらに煮込んだ味は違うんですよ。出来上がりが好きという人もいるし、煮込んだ方が好きだという人もいます。毎日味が違ってくる。それを楽しみに1週間続けて食べに来る人もいるんですよ」

余分な気取りがないママの話を聞きながら、壁画のエノケンを見ながら、このB級という言葉をはるかに超えた絶妙なカレーライスの至福の時間はあっという間に終わった。寒風の中を六区に向かって歩く。2014年のモボ・・・ではなくヨボの頭の中に、再び、エノケンの歌声が流れていた。バカめ。


本日の大金言。

昭和レトロ、という言葉より、昭和モダン。よく煮込まれた個性的なカレーライスには、歳月を超えて未来へとつながる道がほのかに見えてくるようだ。




                        ピーター4 



老舗の「牛ホルモン汁つけうどん」

 これも武蔵野うどんなのか? うどん通の知人の情報で、埼玉・鴻巣市の「手打ちうどん いしづか」にポンコツ車をぷかぷか走らせた。JR鴻巣駅にも近い旧中山道沿いに、山吹色の暖簾を下げたいかにも老舗の佇まいの店が見えた。駐車場を探して、車を止め、暖簾をくぐる。創業百年という文字が見える。うどん屋というより料理屋という雰囲気は悪くない。照明の暗さとモダンな和の灯り。ウマズイめんくい村の怪しい一行は、入り口近くのこげ茶のテーブル席に陣取った。

            いしづか① 
            いい佇まい
            いしづか②
             どれにしようかな

ここのつけ汁が美味いという情報だったので、村長はメニューに目を通した。「牛肉汁うどん」(730円)にするか「牛ホルモン汁うどん」(730円)にするか迷った。いずれにせよ、牛肉というのは珍しい。しかも国産牛を使用しているという。珍しさの度合いで、村長は「牛ホルモン汁うどん」を選んだ。ナス好きの村民2号は「揚げ出しナス汁うどん」(750円)。「当店は注文を受けてから茹でるため10~15分ほどお時間をいただきます」という張り紙。これは期待できそう。

            いしづか④ 
            牛ホルモン汁うどん

5分ほどで「ひじきの小鉢」が登場。15分ほどで、お盆に乗った「牛ホルモン汁うどん」がやってきた。うどんは「熱もりもできます」ということで、熱もりにしてもらった。長野産の地粉をつかっているそうで、太めのうどんはやや黄色みがかった小麦色で、熱々の湯気を放っていた。軽く驚いたのは、牛ホルモンのつけ汁。牛もつがごろごろ浮いており、長ネギ、ニラもどっかりと入浴していた。白ゴマもぷかぷか。小皿には白菜の漬物が山盛り。薬味には生姜と刻みネギ、それにコチジャンのような辛味噌。さらに、ラー油まで用意されていた。よーく考えると、かなり異色のラインナップである。これが武州流のお・も・て・な・しなのだろうか?

            いしづか14 
            湯気が立つ熱もり
            いしづか⑦ 
            牛ホルモンつけ汁

熱もりのうどんは、モチモチ感といいい強めのコシといい申し分なかった。いい小麦の香りが鼻腔へと抜けて行く。問題はつけ汁。出汁に国産の牛ホルモンも入っていて、かなりのレベルであることはすぐにわかった。だが、かえしの醤油と塩が効きすぎていて、かなり濃い味付け。ここは好みの別れるところだろう。洗練と無骨が入り混じったような、不思議な世界。薬味を入れて、さらに辛味噌とラー油を加えてみた。関西の味付けとは対極の濃い曼荼羅(まんだら)の世界が、ぐわんと口中に広がった。悪くはないが、これだけのこだわりの世界を持っているのに、も・っ・た・い・な・い。正直そう思った。もう少し塩を抑えた方が、村長の好みなのに。

            いしづか12 
            ズルッととやっておくんなさい

「揚げ出しナス汁はとても美味いわ。値段もリーズナブルで好感をもったわ。うどんがいい。さぬきより好きかも。村長の舌がおかしいんじゃないの?」
「牛ホルモンの脂がキラキラ浮いていて、それをつけ汁にしていることはいいアイデアだと思うけど、漬け物にしても薬味にしてもちょっと過剰だと思う。いい店だけに惜しい。何も足さず、何も引かず。村長の今年のモットーは足るを知る、だからなあ」
「この武蔵野の国のおもてなしがわからないとはね」
「善意の武蔵野うどんということかな。善意は難しい」
「何わけのわからないことを言ってるのよ。この店の百年の歴史がすべてよ。今度は牛肉汁うどんを食べてみたいわ
目の前のラー油が、きれいにうどんを平らげていた。何だい、この結末は?


本日の大金言。

昨年、おもてなしが流行語大賞になったが、おもての裏には、無関心も潜んでいる。おもてなしの国の垂れ流し。




                       いしづか13 

銀座でめっけ、岩手の絶品ベーコン

 村長も歩けばお宝に当たる。今年最初の掘り出し物を東銀座・歌舞伎座近くで見つけてしまった。東京には全国の物産館があちこちにあるが、その一つ、歌舞伎座の向かい側にある岩手県のアンテナショップ「いわて銀河プラザ」を散策中のこと。買い物客(主におばさん)が群がっていた。

            岩手銀河プラザ② 
            銀座の岩手

好奇心で覗いてみると、「銀河プラザ売上ナンバー1」という立て札が。その下に、ピンク色の実に旨そうな「切落としショルダーベーコン」(200グラム 380円)が、かぐや姫のように輝いていた。「切落とし」というのも気に入った。こいつは春から縁起がいいや(?)。

           岩手銀河プラザ③ 
           新春掘り出し物?

「岩手県産豚肉使用」で「380円」という値段の安さにも目を見張った。売り切れそうだったので、すぐにゲット。そのまま歌舞伎座の周辺をぶらぶらして、ウマズイめんくい村に持ち帰って賞味することに。チリ産の安くて美味い赤ワインを用意して、品評会となった。真空パックを開くと、まずその自然な色味に軽く驚く。ベーコンはばら肉を使うことが多いが、このベーコンはショルダー部分を使っている。そのため、脂が極めて少ない。ちょっと見にはベーコンというよりハムのよう。

            切落としショルダーベーコン③ 
            これで切落としとは
            切落としショルダーベーコン① 
            初春品評会

うん、美味いわね。口に入れた途端、肉の旨味と甘みが広がってくる。塩は薄口で、いぶしの煙の風味も抑え目。切落としといっても、これだけボリュームがあれば十分。普通の塩分と脂の多いベーコンのイメージとはちょっと違うわね」
村民2号が感触を確かめるようにチェックする。
「このふくよかで芳醇な甘みが特徴だな。ベーコンなので、添加物はそれなりに使っているけど、これだけの味はなかなか出ないと思う。人気ナンバーワンというのもなるほどと思わせるものがある」

            切落としショルダーベーコン② 
            絶妙な味わい

「製造者は岩手畜産流通センターってなってるけど」
「花巻の少し上にある紫波町に本社がある岩手の食肉加工業者で、ハムやソーセージから菜園まで手広くやっていて、東北でも注目の会社だ。通称いわちく(笑い)」
「宮沢賢治と関係がありそう」
「父方と母方の祖母が紫波町の出らしい。ま、宮沢賢治のルーツと言ってもいいわな」

「何となくポエムを感じる切落としショルダーベーコンだわ。値段といい、これは確かに掘り出し物かも」
「えっへん。注文の多いレストランでホメられた気分だ」
「どういう意味? まずい村長を食べようなんてこれぽっちも思わないわ」
「ああ酔っぱらってきた。今年は春から縁起が思ったほどよくないようだ・・・」
「銀座に行ったら、またこのベーコン買ってきてね」
「・・・・・・」

本日の大金言。

魚でも肉でも切落としは狙い目である。旨さは同じで安い。形にとらわれない発想も今年のキーワードになる。





                  いわて銀河プラザ 

正月早々不思議な「スコーンランチ」

「スコーンランチだって? そんなのありィ?」
ランチメニューに目を通している最中に、ある一点で、村長の好奇心の虫がむくむくと動き始めた。 550円という安さにも興味をひかれた。サラダとスープ、さらにドリンク付き。村民2号はすでに「スパイシーカレー」(800円)、キオは「真鯛とイクラとアボガドの丼ぶり」(1000円)に決めていた。スコーンと空振りのランチかもしれない。

            パサルキッチン① 
            パサルキッチン

正月休みで帰省中のキオを交えたウマズイめんくい村の一行3人が、グルメシンジケートからの確かな極秘情報で、オンボロ車をぷかぷか飛ばして、埼玉の北の果て、加須市125号線沿いのカフェレストラン「パサルキッチン」に到着したのは午後1時半過ぎだった。「バサルキッチン」とはインドネシア語で「市場の食堂」という意味だとか。市役所の近くにあり、白を基調にしたちょいおしゃれな外観。冬だというのにウッドデッキもある。ウッドデッキにはさすがに客はいなかったが、ドアを開けて店内に一歩足を踏み入れた途端、そこは「うどんの街・加須」とは思えない別世界だった。

            パサルキッチン③ 
            スコーンランチめっけ

時計がインドネシア時間で止まってしまったようなゆったりした空間に、10個ほどのテーブル席、左手には木のカウンター席。椅子も広めで、床は板張り、何から何までリゾート地のテイストなのだ。中央にストーブがあるのがどこか変だが、客のほとんどは女性で、正月5日だというのに、満席だった。カウンター席に腰を下ろして、ガラスを通して目の前に広がる緑の樹木を見ながら、辛口の村民2号とキオが同時に「気に入ったわ」。B級好きの村長はお尻のあたりがムズムズして、やや居心地が悪い。

            パサルキッチン⑤ 
            これで580円とは

「スコーンランチ」はまずサラダが登場。続いて、木のプレートに乗ったスコーン2個、とコーンポタージュスープがやってきた。さらにドリンクとして頼んだ紅茶がポットで。器は白い磁器で統一している凝りよう。スコーンはプレーンと気まぐれプレーン(この日はホワイトチョコのスコーンだった)の組み合わせを選んだ。こちらは580円。「ちょうど焼き立てです。ええ自家製なんですよ」と女性スタッフ。

           パサルキッチン⑦ 
           サラダ記念日?
           パサルキッチン⑥ 
           スコーン2種(手前がプレーン、奥がホワイトチョコプレーン)

サラダもコーンポタージュも手抜きが感じられない。主役のスコーンは、外側がキツネ色のいい焼き上がりで、フォークで刺そうとすると、崩れ落ちそうなほど。プレーンはミルクと卵とバターの香りが口中にふわりと広がり、ほどよい甘さとかすかな塩が効いている。悪くない。クリームチーズを付けると、濃厚な旨みがさらに広がる。お尻のムズムズ感が消えて行く。

           パサルキッチン⑧ 
           まずはプレーンスコーン
           パサルキッチン13  
           クリームチーズで変化球
            パサルキッチン11 
           こちらはホワイトチョコプレーン

ホワイトチョコのプレーンはプレーンよりもやや甘めで、中のビスケット生地がさらにしっとりしている。生クリームを付けるとデザートを食べている気分。紅茶は2杯分はある。村長はこれで580円ということに軽く驚いた。おせち料理とアルコールで領土拡張したお腹にはちょうどいい量だった。正月早々得した気分・・・。

「アボガドのドンブリもマル。友だちに教えなきゃ」
キオが満足顔で言った。
「こんなところにこんな店があるとはね。スパイシーカレーもヘルシーで合格点の美味しさ。スタッフは丁寧で好感が持てるけど、ちょっともたもたしてるかな」
とコーヒーを飲みながら村民2号。
「ワシの選択が一番じゃないかな。580円の福袋に当たったみたいだよ。今年はシンプルに、足るを知る、で行こうと思うよ」
「村長の場合は”樽を知る”じゃないの? 酒樽にビヤ樽にウイスキー樽・・・そのうち樽の中でタルんじゃったりして」
「タル人は追わず」
「新年早々、くっだらない・・・。もう帰りましょ」
「・・・・・」

本日の大金言。

メニューの中に掘り出し物を見つける。身の回りに掘り出し物を見つける。視点を変えれば、まだまだお宝はある。




                         パサルキッチン12 


池袋で見つけた伊勢の絶妙ういろう

本日は 正月らしく伊勢の絶妙蒸し菓子をご紹介しよう。大正12年(1923年)創業「虎屋ういろ」の生ういろうである。本店は伊勢神宮近くにあり、内宮前にも支店がある。たまたま東京・池袋の東武百貨店のデパ地下を散策中に、買い物客が群がっていた。好奇心で覗いてみると、数種類の生ういろうが並べられていた。彦作村長は和菓子の中でもういろうだけは苦手である。あのボヨーンとした輪郭のはっきりしない味のどこが美味いのか、と今でも基本的には思っている。だが、昨年、山口県萩市の生ういろうを食べてから、生ういろうだけは例外となった。その生ういろうが、目の前にあった。

            虎屋ういろ2 
            まさかの生ういろうと遭遇
            虎屋ういろ③ 
            この手作り感

10種類ほどの生ういろうの中から、村長は「小倉ういろ」(1本483円)と「栗ういろ」(1本525円)を選んだ。値段が意外に安いのも気に入った。
「首都圏ではここでしか買えないんですよ。いつも千葉からここまで買いに来るんですよ」
大久保佳代子そっくりの買い物客のおばさんがなぜか親切に彦作村長に教えてくれた。
店員さんが「生なので、本日中に食べてください。冷蔵庫で2~3日です」と念を押す。

            虎屋ういろ① 
            このレトロ感
            虎屋ういろ② 
            おおーっ、栗と小倉クン
 
ずしっと重い生ういろを手土産にウマズイめんくい村に帰ると、村民2号があきれ気味に、「冷蔵庫の中は和菓子だらけよ。入る隙間もないわよ」。「大丈夫、あっという間に食べるから」と村長。すぐに賞味することになった。栗の方が少々高いが、あんこマニアの彦作村長は「小倉ういろ」に感心した。栗ういろが栗の味が出過ぎていて、こしあんの風味があまり感じられなかったのに対して、「小倉ういろ」は、北海道産の小豆のいい風味が立ち上がってきた。こしあんのういろうと小豆の粒つぶ感が絶妙で、口の中で品のいい小豆の甘みがスーッと溶けて行く。行かないで、を歌いたくなる。

           虎屋ういろ④ 
           パブロフの犬状態
           虎屋ういろ⑥ 
           甘い関係
           虎屋ういろ⑦ 
           パクっと・・・

「私は栗の方が好きかな。ういろうの控えめな甘さとしっかり蜜煮された栗のバランスがいい。ういろうは米粉なのかしら? 蒸し菓子はこうでなくちゃ」
虎屋ういろは米粉ではなく、小麦粉で作っているようだ。昔ながらの手作業でね。ういろうの本場・名古屋をはじめ普通は米粉なのに対して、伊勢は小麦粉。だから、うどんのようなすいとんのようなもちっとした食感なんだと思うよ」
「へえ~、甘いものになると途端に詳しくなるのね。伊勢には伊勢うどんもある。伊勢神宮まで行かなくてもこうして伊勢の味を味わえる。平成26年はいいことあるかな」
信じる者は救われる。信じない者も掬(すく)われる。伊勢に向かって柏手(かしわで)・・・」
「足元をすくわれないように、ね」
「ヒンズースクウーワット!」
「くっだらない・・・・・・」


本日の大金言。

伊勢のういろうで新年を迎える。その伊勢神宮には安倍首相も行く。どう考えても今年は波乱含みの年となりそうだ。




                   虎屋ういろ⑧ 

アメ横裏通りの初春「海鮮丼」

 酔っぱらっているうちに平成26年ウマ年がスタートしてしまった。早いものでもう3日です。今年も元気にヨタヨタと食べ歩きに東奔西走する決意です。遅ればせながら、本年もどうぞよろしく。

たまたま京都にお住いのグルメ仙人から印象深いメッセージが届きました。いい内容なので、ブログキング渓流斎先生を真似て、今回だけ特別に、ご本人の了解なしで、さわりだけお伝えいたします。座禅中の渓流斎先生もきっと深く頷かれると思います。

「多くの人は気づいていませんが、日本は大変な時代に突入する、新年だと思います。(中略)20代、30代と、その子供の世代は、やりたくないはずの戦争にかかわり合いを持つことになる世相が遠からずやってきます。これは今の大人がしっかり政治を監視せず、いつまでも”経済成長信奉者”で”足るを知る”ことを知らないからです」

足るを知ることを知らない。うーむ、いつもながら名言だ。銀の座布団一枚。ウマズイめんくい村の本年の戒めにいただき、です。

            魚万歳① 
            白エビもあるでよ

さてさて、本年は日本のB級市場のメッカ・上野アメ横の裏通りからスタートすることに致します。人の行く裏に花あり花の山。混雑するアメ横を避け、その裏通りの散策を楽しむことにした。上野駅を出て、丸井の横「上野御徒町中央通り」に入ったところで、彦作村長の目がピカリと光った。「富山湾直送鮮魚の海鮮丼」というメニュー板。「富山湾直送」の看板を掲げた「魚万歳(さかなばんざい)」という店だった。市場スタイルのラブリーな女性スタッフの姿がちらりと見えた。B級の竜宮城ではないか?

            魚万歳14 
            むむむ

1階がカウンターと立ち飲みで、地下がテーブル席という構成。村長は迷うことなく、1階へ。よく言えば富山湾の魚市場の匂いのする造り、悪く言えばドラマのセットのような雰囲気。村長は5人ほどしか座れないカウンターに腰を下ろした。「海鮮丼」(790円)を注文。ついでに富山の名物「イカ墨作り」(400円)と地酒「銀盤」(400円)も頼むことにした。奥の調理場には中年の板前の姿が見えた。

            魚万歳④ 
            イカ墨作りで一杯
            魚万歳⑤ 
            海鮮丼の登場

まずはイカ墨作りで一杯。本場のイカ墨作りが食べれるとは・・・こいつァは春から縁起がいいや。スルメイカを肝と墨と酒で発酵させた真っ黒なイカ墨作りは、塩辛よりも独特の風味と甘みがあり、日本酒の肴によく合う。スミに置けない墨作り。7~8分ほどして、女性スタッフが「海鮮丼」を持ってきたまさに魚市場のドンブリめし。聞くと、「魚は富山の魚市場から直送したもので、その日によって、中身が違うんですよ。今日はシロガツオ、ヒラマサ、アオリイカです。すべて天然物です」。年末の正月も休みなしだという。

            魚万歳⑥ 
            わさび醤油をたらーり

シロガツオとは、富山湾の血合いが少ないカツオで、ヒラマサもアオリイカも高級魚として知られている。色味で鮮度のよさはわかる。全体のボリュームはさほどではないが、790円という値段を考えると、まずまず。ご飯は富山産のコシヒカリの酢めし。わさびを醤油で溶いて、さっと上からかけて、かっ込む。シロガツオもヒラマサも鮮度のいいあっさりとした甘み。アオリイカが特に旨かった。もっちりとした甘み。富山湾の海底から美味の使者となって、2014年の口中に広がっていく。ご飯の量も少なめ。ガッツリ系にはちょっと物足りないかもしれないが、村長にはちょうどいい。

            魚万歳10 
            富山湾のシロガツオ
            魚万歳⑦ 
            ヒラマサさま
            魚万歳⑨ 
            アオリイカとコシヒカリ

足るを知る海鮮どんぶり。めでたさも中くらいなりおらが春。まだオープンして4が月ちょっとだそう。店全体に初々しさがあり、一所懸命さが伝わってくる。案外、上野の新しいB級グルメの星になるかもしれないぞ。


本日の大金言。

行列の有名店より、未来の店。B級グルメの激戦区、上野周辺には新しい店がどんどんできている。むろんその陰で潰れる店も。メディアの情報より自分の舌で。今年も肝に銘じたい。



                      魚万歳13 



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プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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