丸善「元祖ハヤシライス」の微妙

 久しぶりに花のお江戸へ。東京・日本橋「三和堂」で開催中の「備前焼 曽我尭展」を観に行く。まだ30歳の新進陶芸作家で、村長の友人のご子息でもある。村民2号が気に入ってしまい、台所事情が火の車なので、小皿を2枚だけ購入。小皿というところが渋すぎる。その分、昼めしは立ち食いにしようかと思ったが、心と足は互いに逆方向を向く。破滅の予感。何故か丸善3階にある「丸善カフェ」の前に立っていた。

           丸善カフェ 
           丸善カフェ

ここは「ハヤシライスの元祖」を自認するカフェで、丸善の創業者・早矢仕有的(はやし ゆうてき)が明治の初めごろに「野菜と肉を煮込んだハヤシライスを考案した」としている。「早矢仕」が「ハヤシ」になったと力説している。ハヤシライスの誕生については諸説あり、村長は「ハッシュドビーフ」から来ているとばかり思っていた。上野精養軒のコック・林某が考案したという説もある。真相はハヤシの中というしかない。

           丸善カフェ① 
            元祖ハヤシライス

何事も体験しないと気が済まない村長は、元祖の味を賞味してみることにした。本屋としての丸善は老舗中の老舗だが、カフェについてはわからない。開放感のあるカフェに腰を下ろすと、さっそく「ポーク早矢仕ライス」(1030円)を頼んだ。村民2号は「早矢仕オムライス」(1250円)。値段は安くはないが、丸善だから仕方がない。

          丸善カフェ③ 
          元祖です、それが何か?
          丸善カフェ④ 
          こちらは早矢仕オムライス

ほとんど待たずに、4~5分ほどで「ポーク早矢仕ライス」がやってきた。ウェイトレスの対応は悪くない。銀座・資生堂パーラーのようにせめてミニサラダくらい付けてほしいが、それはぜい沢というものか。シックな大皿の端っこに金型のライスが置かれ、その裾野にはデミグラスソースベースのルーの海が広がっていた。刻みパセリがパラパラ。その風情は「これが元祖か」と思わせるものがある・・・気がする。

           丸善カフェ⑨ 
           濃厚な甘み
           丸善カフェ⑦  
           マッシュルーム

まずはスプーンでひと口。かなり甘い。その奥から酸味がじんわりとにじみ出てくる。タマネギとトマトの甘みと酸味だけとは思えない。タマネギとポークは十分煮込まれているためだろう、ほとんど形がない。溶け込んでいる。マッシュルームだけが形を留めている。ライスはかなり固めで、緩めのルーとの相性は今一つ。フツーの美味さで、特別美味というほどでもない。

           丸善カフェ10 
           オムライスの中身

甘過ぎるのが好みの別れるところかな。オムライスの中のライスがチキンライスではなくて、ただのライスというのもちょっと微妙だわ。でも、村長よりはこっちの方が満足感があると思う」
「ボリューム的には少なめ。女性にはいいかもしれないが、男にはちょっと物足りないかもな。この店を運営しているのは、クレアという外食産業で、どうやら元祖の味を再現したということらしいよ。その意味では純粋に老舗ではない。資生堂パーラーとは違う。こういう方法もありかな、ということだな」
「コーヒーを飲みたいけど、予算オーバー。オリジナルブレンドが1000円もする。ここは雰囲気はとてもいいので、それを楽しむつもりで来るというのが正解かな」
「お足もハヤシ・・・」


本日の大金言。

老舗と元祖はイコールではない。老舗とは継続である。継続には創業者の職人意識が不可欠だと思う。味わいの底に流れる職人の汗があるかないか。




                       丸善カフェ14
スポンサーサイト

福井の伝説?「わらじカツ丼」を賞味

 花のお江戸で修業中のキオが代休を取って久しぶりに帰ってきたので、村長はこれ幸いと佐野プレミアムアウトレットに行くことにした。「夏のスーツが一つ足りない」というので、それを探すのが目的。村民2号もどさくさに紛れてTシャツを買おうと目論んでいる。だが、村長の真の目的は、「越前食堂」の名物「わらじカツ丼」である。あの福井のヨーロッパ軒の元祖ソースかつ丼の流れを汲む「わらじカツ丼」。前々から目を付けていたもの。

          越前食堂① 
          タイムスリップ(越前食堂)

「越前食堂」はこの佐野プレミアムアウトレットにしかない。店構えは昭和レトロ。まずは食べることから始まる。わらじのような巨大なトンカツがどんぶりを覆うように乗っかっている写真を眺めながら、その「福井名物 わらじカツ丼」(800円)を頼んだ。キオは「ネギトロサーモン丼」(1000円)、村民2号は隣の「宮武讃岐うどん」を選んだ。

          越前食堂② 
          名物わらじカツ丼

フードコートなので、ベルを持たされて、テーブルでじっと待つ。パブロフの犬が3匹。10分ほどで呼ばれて、実物の「わらじカツ丼」とご対面。写真と同じように、わらじのようなトンカツが3枚、黒いどんぶりを覆っていた。まず、そのビジュアルに圧倒される。村長はこれまで会津、桐生、新潟などソースかつ丼のメッカを食べ歩いたが、この福井のソースかつ丼はそのいずれとも違った。キャベツは敷いていないし、パン粉も実に細かい。一枚一枚が巨大で、よく見ると、厚みがない。薄くてデカい。わらじとはよくネーミングしたと感心。

          越前食堂④ 
          ため息

ヨーロッパ軒のソースかつ丼とほとんど同じスタイル。肉は豚ロースで、オリジナルソースはウースターソースに味りんを加えたような甘さで、それがご飯の上にもほどよくかかっていた。パン粉が細かいためか、コロモはサクサクではなく、むしろ竜田揚げのような食感。肉の厚さはせいぜい3~5ミリくらい。

わらじのようなトンカツは肉も柔らかく、あっさり味で美味。3枚も食べると十分な満足感がある。ご飯が少ないので、ボリューム過多の会津ソースかつ丼のような満腹感はない。そのあたりは胃袋の大きさと好みの問題。みそ汁は普通。これだけのものをプレゼンスしているのに、ほんのちょっとしたものが足りない。お新香がない。丼ぶりには付き物だと思う。カツ!

          越前食堂⑤ 
          和辛子を付けてっと・・・
          越前食堂⑥ 
          薄さがたまらない
          越前食堂⑦ 
          ご飯とソースだれ
          越前食堂⑧ 
          完食まで残り2枚

「ネギトロサーモン丼の1000円はちょっと高いかな。美味いのはうまいけど」
と、このところ食べ物にうるさくなったキオ。
「讃岐うどんは天ぷらも入れて全部で600円よ。コスパは私が一番ね」
と、Tシャツ狙いの村民2号。
「さ、目的も達したし、帰ろうか」
村長がジョークを飛ばした。
その瞬間、毒矢が両側から飛んできた。スーツとTシャツの逆襲・・・。

本日の大金言。

ソースかつ丼の歴史は諸説ある。福井、長野駒ヶ根、会津、桐生、東京・・・それだけソースかつ丼が広がっているということになる。元祖より未来。





                       越前食堂⑨ 



「どまんなか」不思議な本格パン屋

あちこちドライブする楽しみの一つが「 道の駅」。地場の野菜や名産などがバラエティー豊かに置かれていて、村長の好奇心をむくむくと刺激する。その中で村長が目を見張った道の駅をご紹介しよう。栃木県佐野・田沼線沿いにある「どまんなか田沼」である。今回はこの中の直営店「パン工房 麦畑」を取り上げたい。こんなところにまさか本格的なベーカリーがあるとは・・・村長が驚いたパン屋さんである。

「どまんなか田沼」は2001年秋にオープン。田沼が日本列島のど真ん中に位置していることから「どまんなか田沼」と命名した。「パン工房 麦畑」はその10年後2011年秋にオープンしている。村長は施設内にある「足湯」に浸かったりして、昼飯をどうしようかと迷っているうちにシャレたベーカリーが視界に入り、つい中に入ってみた。それが「パン工房 麦畑」だった。

           麦畑  
           「パン工房 麦畑」(道の駅どまんなか田沼)

最初は田舎のパン屋とタカをくくっていたが、焼きたてのパンは実にバラエティーに富んでいた。カレーパンやあんぱんだけで数種類はある。天然酵母パン、食パンなども何種類も置いてあり、都心でもこれだけのパン屋は少ないのではないかと思われる充実ぶり。ドイツの「プレッツェル」まで置かれていたのには驚いた。日本列島のど真ん中でまさかの発見。

村長はその中で、ムムムという不思議系パンを見つけた。「おすすめ!」と書かれた「トマチー」(118円)。見た目はカレーパンかピロシキみたい。トマチ―って何だ? 「プチトマトとチーズが入ってます」と説明されていた。「当店のオリジナルです」とスタッフ。まずはそれをゲット。もうひとつ、不思議系の「道明寺桜あんパン」(140円)もゲットした。

           麦畑② 
           トマチーって何だ?
           麦畑③ 
           何が入ってる?
           麦畑④ 
           こんなのアリ?
           麦畑⑤ 
        いざ賞味へ(左トマチー、右道明寺桜あんパン)

「トマチー」はカレーパンのように表面にパン粉が付いていて、かじるとサクサクしていた。その中から、とろけるチーズとミニトマトが現れた。まだ揚げ立てのようで、ぶちゅーっとミニトマトの果汁が飛び出てきそうだった。パン生地はもっちりしていて、とろけるチーズが危ういバランスを保っていた。味はほとんどとろけるチーズのみの薄い塩味。翌朝、ウマズイめんくい村でも賞味したが、半日ほど経っていたので、最初の感動はなくなっていたが、おもしろいアイデアではある。

          麦畑② 
          トマチ―の内側
          麦畑⑤ 
          パンの中の道明寺

もう一品、「道明寺桜あんパン」はいい色に焼き上げられたあんパンに塩漬けした桜の葉が一枚付いていた。中を割ると、空洞の部分が多い。だが、その底にあの道明寺の桜色の米粉とこしあんが控えていた。何というビジュアル! パンの中に道明寺が1個平らになって入っている印象。アイデア倒れと紙一重。だが、やや甘めのこしあん、それに道明寺の桜の風味とパン生地がいい具合に調和している。不思議な調和。

本格的なベーカリーなのに、バラエティー番組のようなノリもある。全体的に価格は都心の同じようなパン屋よりも2~3割ほど安い。「都心から大分離れていますから、このくらいの値段にしないとお客さんが来てくれないんですよ」とスタッフ。おもしろいアイデアを練るのもそのためのようだ。目指すはベーカリー界のネプチューン? その心意気やよし。

本日の大金言。

デパ地下、エキナカとは別ルートの道の駅の可能性。都心からローカルへ。ローカルの逆襲が楽しみでもある。








                  麦畑2 

春日部の奇跡?氷あずきとあま太郎

 ザックジャパンの戦いは終わった。惨敗。村長は、歯ぎしりの中で、何故か太平洋戦争時の日本を連想してしまった。かつて山本七平が小室直樹との対談の中で、「日本人には自分をリアルに見れない何か根本的な問題がある」という意味のことを話していた。W杯前に「日本はベスト4どころか優勝する力だってあるぞ」とメディアが囃し立て、本田など主力選手もリアルな実力に目をつむり、そう思い込もうとしていた節がある。お茶の間もそれに少し酔った。無茶な太平洋戦争に突入していった日本とどこか重なる。そして、惨敗・・・。現実からの出発へ。村長ももう一度、自分の足元を見なければならない。サッカーも人生もまだまだ続く。

                  あま太郎12 
          上がれ、サイドバック!

村長は自分の足元を見に、埼玉・春日部へとポンコツ車を飛ばすことにした。車を止めて、東口辺りを歩き回っていると、「あま太郎焼 1ヶ80円」という看板が目に入った。「かき氷」の文字も見えた。「氷あずき」(220円)。まずその安さに驚いた。これは昭和の値段ではないか? 店構えも昭和のまま時間が止まってしまったような造りで、覗いてみると、小さな店なのに、左手奥にテーブルが二つほど置いてあった。

           あま太郎① 
           入るっきゃない(春日部「あま太郎」)

「あま太郎」は春日部っ子の間ではちょいと知られた店だった。春日部では「今川焼き」とは言わず「あま太郎焼き」と言わねばならないという噂もあるほど。タコ焼きも人気で、「もう店を開いて47年になります」と店主らしい男性。ファミリーなのか女性スタッフもいる。昭和の下町のいい雰囲気。村長は「あま太郎焼」(80円)を3個と「氷あずき」(220円)を頼むことにした。

           あま太郎③ 
           まさかの安さ
           あま太郎② 
           ここは昭和か?

左手の狭い小上がりでまずは氷あずきを賞味。時代遅れの扇風機が心地よい。ガラスの器に山のように盛られたかき氷と、その底に沈んでいる小倉色のあずき。見ただけでこれが220円とは信じられない。今どきの甘味屋の氷あずきはおおよそ600円はする。甘露水はあっさりとした品のいい甘さで、フツーの美味さ。だが、その底にゆったりと沈む自家製あんこが素朴でとてもいい。北海道十勝産小豆を上白糖で煮込んでいるそうで、塩がかなり効いていて小豆の風味もいい。量も少なくない。昭和の匂いの残る氷の冷たさとあずきの美味・・・。

           あま太郎④ 
           氷あずきとあま太郎焼
           あま太郎⑦ 
           自家製あんこの実力

「あま太郎焼」の最初のインパクトは皮のもっちりした弾力。山芋でも入れているのではないかと思ったほど。続いてあんこの風味に「むむむ」と唸りたくなった。塩の存在が甘さをグイと押し立てている。ウ、ウマイ! 80円という価格から、村長はやや見くびっていたが、これが大間違いだったことを思い知らされた。ゴールをあっという間に割られてしまった。この店、只者ではない。

          あまあ太郎10 
          経木の心意気
          あまたろう12 
          予想を超えた味わい

村長はいい店を発見した喜びとともに、自分のリアルを見誤っていた自分自身にがっかりした。これでは日本代表をあれこれ言う資格はない。あま太郎のリアルからの再出発へ。村長はまぬけ顔のまま、呆然と足元を見つめるのだった。


本日の大金言。

またぞろ日本はリアルを見ることを止め始めている。安倍首相とメディアがWカップ前のテレビの熱狂に重なる。「これが現実。これが自分たちの実力です」敗戦後のメンバーの言葉は重く深い。辛い代償を噛みしめる。



                      あま太郎13 

銀座に伝説の煮干しラーメン

 「自家製麵 伊藤」といえば、古くは秋田県角館にある伝説的な煮干しラーメン「伊藤」(現在休業中)がルーツ。その創業者の弟が東京に進出、その後、さらにその息子が赤羽で「自家製麵 伊藤」の看板を掲げ、熱狂的なファンをつかんでいる。浅草にも2号店を出し、「化学調味料を使わない」徹底した煮干しラーメンで今や行列のできる店になっている。

このブログでも以前、赤羽店をご紹介したが、村長はたまたま所用で東京・銀座をブラ歩き中に、銀座店がオープンしていることを知った。旧松阪屋の裏手の雑居ビルの地下。まさか銀座に進出していたとは。村長はオッたまげた。これは入らずばなるまい。飛び込むと、黒をベースにした店内は5席ほどのカウンターとテーブル席(2人用)が4つほど。そこに若い店主が一人、黙々と麺づくりに励んでいた。他にお客は二組だけ。

          銀座伊藤 
          銀座の地下の隠れ家?
          銀座伊藤① 
          これは銀座店のみ

午後1時半を過ぎていたが、これだけ空いているのが不思議だった。店主に聞くと、「オープンしたのは今年1月です」とか。赤羽、浅草に続く「自家製麵 伊藤」の3店目だそう。赤羽や浅草の行列を考えると、やや寂しいが、逆に考えると、意外な穴場で狙い目ということにもなる。「肉そば」(750円)の美味さはすでに経験済みだが、この銀座店にしかない「つけそば」(700円)を頼むことにした。

          銀座伊藤② 
          独特のつけそば!

ここの麺は細いストレート麵で、加水率が低い。そのため、食感が独特で、日本そばのようなコシとシャキッとした歯ごたえは病み付きにさせるだけのものがある。10分ほどで、熱もりの「つけめん」がやってきた。黄色みの強い細麺。海苔と柚子コショウがちょこんと付いている。つけ汁は煮干し、鶏ガラ、タマネギなどでダシを取ったもので、中に角切りのチャーシューがゴロゴロと潜んでいた。ヒレ肉のような柔らかい煮豚。

          銀座伊藤2 
          自家製麵
          銀座伊藤⑧ 
          煮干しベースのつけ汁
          銀座伊藤⑤ 
          和風の絶妙

化学調味料は使用していない。だが、煮干しの出汁がベースにあるためか、口中に含んだ途端、何とも言えない旨味が広がる。ほのかな酸味と甘み。ひょっとしてトマトとタマネギの出汁かもしれない。独特の自家製麵を付けて口に運ぶと、いわゆるラーメンの範疇を超えた食感と美味に軽く驚かされる。今流行の濃厚で脂の多いつけそばとは違う、和風の奥深い味覚。煮干しのえぐみも感じない。だが、赤羽本店で最初に食べた時の衝撃はない。

ワサビのような柚子コショウを付けると、味が締まり、それはそれで美味。ボリューム的にはそう多くはない。つけ汁の量も少ない。だが、このシンプルな味わいには禅のようなそぎ落としがあるように思える。無駄なものをそぎ落としていった末のシンプル。スープ割りをズズズと飲みながら、そんなものを感じてしまった。「まだまだ修行が足らないですよ。銀座で一旗揚げます」という若い店主の言葉が耳に残った。BGMは何故かニーヨだった。

本日の大金言。

銀座もラーメン激戦区になりつつある。銀座にラーメンは似合わない。そう思う人も多い。だが、ビッグカメラやユニクロもすでに銀座に進出している。花の銀座にも時代の流れ。




                       銀座伊藤⑨ 

老舗うなぎ屋、まさかの「とり丼」

 食べログは便利だが、その情報が正しいとは言えない。最近、あちこちの店を食べ歩いて感じることだが、行列のできる店はスマホ片手の人が目につく。村長はへそ曲がりゆえに、折を見て、スマホに頼らないいい店探しにトライしている。たまには自分の直観力を信じて探してみる。むろんハズレることもある。今回ご紹介するのは、群馬・桐生市の老舗うなぎ屋「赤松」の「とり丼」である。

ゴッドマザーの入院で桐生に行くことが多くなったが、桐生は古さと新しさを兼ね備えたいい街で、隠れたいい店も多い。それを発見するには歩くのが一番である。市内にはかの坂口安吾も通った江戸末期創業の老舗うなぎ屋「泉新」がある。村長も何度か入っている。いい店に違いないが、値段も安くはない。で、以前から目を付けていた本町通りと錦町の境目にある「うなぎ 赤松」の暖簾をくぐることにした。

           赤松① 
           「うなぎ 赤松」(桐生市)
           赤松1 
           老舗の香り

ちょうどランチタイム。狙いはうなぎではなく、「とり丼」。その値段に軽く驚かされたからである。550円ナリ。東京・築地の老舗「ととや」の焼き鳥丼は村長がこれまで食べた焼き鳥丼の最高峰だが、値段は1100円だった。「赤松」の焼き鳥丼は550円。ランチタイム以外でも「とり重」は650円という安さ。だが、万が一、まずかったら安くても意味はない。このあたりがむずかしいところ。

           赤松③ 
           「とり丼」に目が行く

店内は入るとすぐ左手が厨房になっていて、そこで職人さんが二人、一人はうなぎを捌いている最中、もう一人がウチワを片手にうなぎを焼いていた。いい匂いが鼻腔をくすぐる。右手が白木のカウンター席(6席)と小上がり座敷。二階にも座敷があるようで、階段が見えた。老舗のいい雰囲気。村長は「とり丼」(お吸い物、お新香付 550円)、村民2号は「ぶた丼(上州もち豚)」(同750円)を頼んだ。我ながら渋過ぎる注文。

注文を受けてから焼き始めたのがわかった。15分ほどの待ち時間。箸から湯呑みから唐辛子入れまで老舗のこだわりを感じる。このあたりからして、ただの安い店とは趣が違う。老舗のサブメニューは狙い目であると思う。感じのいい女将さんらしい女性が、「とり丼」を運んできた。ひと目見て、熟練の職人が作った焼き鳥丼であることがわかった。

           赤松⑤ 
           550円とは思えない
           赤松⑥ 
           こちらは「ぶた丼」

深い陶器のどんぶりに見事な焼き具合の鳥肉が大小3枚、いいテカリで身を横たえていた。刻み海苔が敷かれているだけ。築地「ととや」よりも一枚ほど少ないが、それでも十分なボリューム。鳥肉は柔らかく焼かれていて、醤油ダレの具合がいい。甘すぎず辛すぎず。それが固めに炊かれたご飯の上から多めにかかっている。そのバランスがプロの技だと思った。こういう店を発見する喜びは歩くことから始まる。

           赤松⑦ 
           唐辛子をぱらりぱらり
           赤松⑧ 
           職人の仕事
           赤松⑨ 
           タレの絶妙

「うなぎのタレも入っているんじゃないかしら。ぶた丼も美味いわ。今日は珍しく当たりィ~」
「今度はうなぎを食べに来たいね。赤城山の冷酒を飲みながら」
「村長の稼ぎ次第よ。今のままだととり丼で十分よ」
「・・・・・・」


本日の大金言。

たまには書を捨て、スマホも捨て、余分なプライドも捨て、街を歩く。そこから新しい世界が見えることだってある。














                         赤松10 



ウソみたいな下町の激安パン屋さん

 昼下がりの東京の下町、北千住。本町通りををぶらぶら散策中に、ポエムなパン屋を見つけた。「ぷちブレッド 百乃苺(ひゃくのいちご)」という看板。これが驚くべきパン屋だった。よく行くジャズバー「ゆうらいく」のちょうど真ん前。夜は気が付かなかったが、まさかこんなパン屋さんがあったとは・・・。隠れ名店の発掘に人生の半分をかける村長だが、あわや目利き失格、一発レッドカード退場もの。

           百乃苺 
           まさかのパン屋(本町通り)

店構えがポエムチックなので、軽く覗いてみた。ショーケースの前には坂下千里子似の女性スタッフが一人。奥で店主らしい男性がパンを焼いている。パンの香ばしい匂いが狭い店内に充満していた。近所のお客が出入りしている。ふむふむ、ま、よくあるパン屋だな、そう高をくくった。だが、次の瞬間、村長の目が点になった。コッペパン40円、こしあんぱん85円、クリームパン75円・・・。何だ、この安さは?

           百乃苺2 
           パンは手渡しです

左手の食パンコーナーも種類がいろいろあり、「いつもの食パン 220円」「山形ぷちブレッド(8枚) 210円」など、パンの価格が高くなっていることを考えると、信じられない数字が並ぶ。これはよほどの志しを持ったパン屋に違いない。

これでも小麦粉の高騰などで高くなったんですよ。オープンして4年になります。北千住の他にも亀有と竹ノ塚に店ができました。安くて美味いパンを、と頑張ってます。小麦粉ですか? カナダ産のものを使ってます」
と女性スタッフ。白い歯。村長のホオがつい緩む。これは掘り出し物かも。だが、待てよ。判断が早すぎる。味が問題・・・。

           百乃苺③ 
           この価格ってアリ?
           百乃苺① 
           ありゃ、こっちも

村長は、この店の人気の一つだという「クリームチーズロール」(85円)と「こしあんぱん」(85円)、「粒あんぱん」(85円)を買い求めた。近くのカフェに飛び込んで、見つからないようにリッチな昼食となった。むろん紅茶くらいは頼む。

「クリームチーズロール」はいいキツネ色の焼き具合で、割ると、中のパン生地のもっちり感が際立っていた。干しブドウの粒つぶ感。中のクリームチーズのたっぷり感。ガブッと行くと、まずパン生地のしっとりとした旨味が広がった。次にクリームチーズの素朴な甘みと酸味が波状攻撃。かなりレベルの高いパンであることがすぐにわかった。値段を忘れるほどの美味。

           百乃苺④ 
           クリームチーズロール
           百乃苺⑦ 
           しっとり感とふわふわ感
           百乃苺⑥ 
           素朴なクリームチーズの層

「こしあんぱん」は小ぶりだが、パン生地のしっとりとしたもっちり感がやはり際立っている。小麦の風味も立っている。中のこしあんは甘さ控えめで、これが85円ということに改めて驚く。「粒あんぱん」はパン生地が「こしあんぱん」よりこんがり焼かれていてパサパサ感があり、中の粒あんも塩気が強い。村長はこしあんのほうが好み。

           百乃苺⑧ 
           こしあんぱん(左)と粒あんぱん(右)
           百乃苺13 
           こしあんぱんの美味
           百乃苺14 
           こちらは粒あんぱん

「いい店を見つけたな」村長はパン自体の満足感と同時に、下町北千住の心意気に触れた気がして、久しぶりに曇っていた心が晴れて行くのだった。それからブラジルの日本代表の苦戦を思うのだった。サッカーだけが人生ではない。だが、人生はサッカーに似ている。最後のコロンビア戦後、空は晴れているか?


本日の大金言。

高くて美味いパンより安くて美味いパン。そこには数字ばかりの世界にはない職人の心意気があると思う。下町にはまだ夢がある。







                      百乃苺16 


さぬきに負けない?地粉の武蔵野うどん

「 埼玉・鴻巣市郊外にある農産物直売所パンジーハウスの中に安くて旨い武蔵野うどんがある。そこは地粉を使ったB級のモノホンです
とメールしてくれたのは、B級シンジケートの知人だった。
パンジーハウスには何度か行ったことがある。確かにその一角に「鴻巣うどん」と銘打った安普請のうどん屋があったことを村長は思い出した。鴻巣うどんも武蔵野うどんの一つではある。村長は「安くて」という部分と「地粉」という部分にピコンと反応した。すぐにポンコツ車を飛ばした。

           てらや  
           意外な穴場

「てらや 別館」という看板。場所を移転したために「別館」としたらしい。本館がすでにないのに別館とは面白すぎる。店内はまるでさぬきうどん店のようで、まずうどんを選んで、それから数種類の天ぷらやおにぎりをセルフで取るというシステム。野菜天ぷら各種50円、チクワ100円、イカ120円・・・揚げ置きだが、メチャ安の天ぷらが旨そうに並ぶ。

           てらや②  
           安ゥ~

村長は「田舎汁うどん」(並400円)を選んだ。冷たいうどんと温かいつけ汁。つけ汁の中には長ネギ、ナス、油揚げが入っているというもの。村民2号は「肉汁うどん」(並450円)。それに「さつまいも天」(50円)も付けていた。

よく見るとカウンター越しの広い厨房でおばさんスタッフが4~5人忙しそうに働いていた。広くて雑然としたスペースにテーブル席(4人用)が四つ。「武蔵野うどん」と言いながら、最近はオーストラリア産小麦を使っている店が多い。だが、この店は地粉「農林61号」を使い、自家製粉、自家製麵を売り物にしている。

          てらや⑤ 
          さぬきではありません
          てらや8 
          安ゥ~

5分ほどの待ち時間で「田舎汁うどん」が登場した。自分で取りに行く。まずはうどんに目が行った。見事な茶グレー色。しかも、割り箸よりもぶっ太い。だが、ざるはプラスティック製でやや興醒め。いやいや、このあたりがB級ということなのか。つけ汁に天かすと刻みネギをどっかと入れる。つけ汁にはナスと油揚げ、それに長ネギが潜んでいた。その量が意外に少ない。農産物直売所ということを考えると、もっとどっかと入れるべきではないだろうか?

          てらや1 
          地粉武蔵野うどん!
          てらや2 
          それほどの者じゃござんせん
          てらや5 
          つけ汁

だが、うどんは「田舎っぺ」ほどはコシが固くはないが、まずまずの強めのコシと風味。悪くない。つけ汁はやや甘みが強いが、ほどよい甘辛で、出汁が効いていた。これはマル。うどんの量は並だが、やや少なめ。腹七分の満足。村長は、追加で「ナスの天ぷら」(50円)を食べた。これもまずまずの旨さ。

           てらや9 
           なす天に醤油

「ここはこの地粉うどんに尽きるわね。それと値段の安さ。コストパフォーマンス的には二重丸だと思う。細かいことに文句は言えない」
「確かに。知人がB級のモノホンと言ったのはそういうことかな。タニタ食堂よりは全然いい。今度来たら大盛りと天ぷらを三つくらい食べてみよう」
「夕飯抜きでね」
「・・・・・・」


本日の大金言。

500円玉一枚でそれなりの満足を得る。それを探す楽しみ。そのチープな達成感。それもまたぜい沢なゲームである。




                       てらや7

佐野ラーメンの宝? ボロ家の味

 約200軒ある佐野ラーメンの中でも異色の人気店が「とかの」である。ラーメン好きの友人は「佐野の中ではとかのが一番だと思う。行列が凄いけど、並ぶだけの値打ちがあるよ」と彦作村長の好奇心をくすぐった。どう見ても外見は小さなボロ家で、清潔感に欠ける。だがその店の前には、特に土日などは凄い行列ができる。創業は昭和57年(1982年)。噂が噂を呼び、佐野でもっとも行列ができる店のひとつになっている。

上州からの帰り道、平日の午後1時半過ぎ。ふと思い出して、67号線沿いの「とかの」の前を通ると、行列がなかった。1日80食で暖簾を下ろしてしまうという噂もある。遅くとも午後2時には店を閉めてしまうという、ある意味とんでもない店。ゲット・ラッキーか? それとも評判倒れか?

           とかの① 
           この店構え

一見バラック小屋のような店に入ると、店内は6席ほどのカウンター、それに4人用のテーブル席が2つだけ。カウンターの奥にはアーチストか陶芸家のようなの初老の店主と、中年の女性スタッフが3人もいた。この狭い店でスタッフが合計4人というのに驚かされる。客は3人ほど。メニューは少ない。村長が入った途端、店の入り口に「本日の営業は終了いたしました」という札を掛けたのがわかった。ぎりぎりセーフ。

           とかの 
           メニューはこれだけ

村長は定番の「ラーメン」(600円)と「餃子」(5個400円)を注文した。券売機などはない。外見は古いボロ屋で清潔には見えなかったが、テーブルや足下などがきれいで、トイレもかなり古いのによく見ると隅々まで掃除されていた。ワビさびの世界? 注文してからしっかり作るというスタイルのようで、着丼まで15分ほどかかった。店主が職人気質なことがわかる。

「ラーメン」がいい匂いとともにやってきた。透き通ったスープ、青竹打ちの麺は細麺で、コシがかなりしっかりある。その上に太めのメンマ、チャーシュー、ナルト、刻みネギが浮かんでいた。正統派の佐野ラーメン! 村長がこれまで食べた中では 「宝来軒」のラーメンと似ている。

          とかの② 
          正統派佐野ラーメン!
          とかの⑤ 
          きれいな鶏がらスープ
          とかの③ 
          コシともっちり
          とかの⑥ 
          ていねいなチャーシュー
          とかの④ 
           メンマの存在

スープは鶏ガラの出汁がよく効いていて、意外に塩分が多いと思った。だが、それがじんわりと五臓六腑に滲みこんでくるようなシンプルな深みがある。チャーシューは特別大きくはないが、脂身が少なく、柔らかい肉質がいい感じ。メンマがシャキッとしていて美味。それらが青竹でしっかり打ったコシの豊かな細麺とよく合っている。青竹打ちを看板にした佐野ラーメンだが、本当にしっかりと青竹で打っている店は全体の1割くらいだという説もある。

          とかの⑦ 
          餃子の存在
          とかの10 
          あーん

餃子が予想以上に美味だった。1個が大きくボディーが豊満。まず皮のモチモチ感が素晴らしい。表面の焼き加減もいい。皮のうまさに驚く。中の具は春キャベツとニラ、挽き肉。それがていねいに捏ねられている。すべて手づくりだそう。ラーメンの量はフツーなので、餃子が5個あっても、あっという間に食べ終える。スープの塩分だけが少々引っ掛かったが、噂通りの店と言わざるを得ない。もっともあまりの行列は勘弁願いたいが。


本日の大金言。

ボロは着てても心は錦。そんな歌が昔流行ったが、外見が古くても隅々がきれいな店に悪い店はない。



                       とかの11

幕末から続く「元祖花ぱん」の味

 ゴッドマザーの入院で、上州に行くことが多くなった。その往復の途中で見つけたのが「小松屋」の花ぱん。桐生市本町4丁目の「小松屋」は明治29年創業。2丁目にあった本家「小松屋」から暖簾分けしたのだが、本家は数年前に店主と女将が亡くなってしまったために、店を畳んでしまった。その本家は幕末の嘉永年間に創業、そのときにすでに「花ぱん」を作って売っていたようだ。

桐生育ちの村民2号は、この小松屋の花ぱんへの思い入れが強い。花ぱんは桐生周辺でしか作られていない焼き菓子で、「小松屋」のオリジナル焼き菓子だった。それが今では「桐生名物」として、市内で数軒が製造販売している。このブログでも2度ほど紹介しているが、村民2号に言わせると、「小松屋こそが本物」。だが、本家の2丁目店と4丁目店を混同していたようで、「小松屋はもうなくなったみたい」と思い込んでいた。誤解と勘違いに付ける薬はない。

           小松屋① 
           小松屋4丁目店(桐生市本町通り)
           小松屋 
           いい雰囲気

それが本町通りに見事な蔵造りの店構えで暖簾を下げていた。明治29年創業の老舗の佇まい。そこで、「花ぱん」(1袋12個入り700円)をすぐに求めた。応対した清楚な女性は店員さんかと思ったら、「五代目です」。「花ぱんは私が焼いているんですよ」。失礼、穴があったら入りたい気分。あれこれ雑談。

           小松屋② 
           元祖花ぱん

「花ぱんって桐生だけらしいけど、どこからきたんですかね」
「南蛮菓子がルーツみたいです。ポルトガルにも同じようなお菓子があるらしいですよ。本家の初代は幕末に、多分長崎か横浜から持ってきたんだと思いますね。坂本龍馬がいた時代ですよ」
「へえー、時代はちょっと違うけど、カステラとか金平糖と同じルーツということになる。しかし、花ぱんだけ桐生だけで小さく花開いている。そこが実に面白い」
「確かにそうですね」
などなど。レアな花ぱん。

          小松屋③ 
          昔のままの包装

病院で待つ村民2号に「小松屋の花ぱん」を手に入れたことを知らせると目を丸くして驚いた。そのしばらく後に賞味となった。
「包装も袋も昔のまま。これこれ、これよ!」
花ぱんは梅の花の形をしていて、表面には糖蜜と砂糖がどっかとかかっている。その素朴な圧倒。

          小松屋5 
          先祖はポルトガル?
          小松屋3 
          この糖蜜
          小松屋2 
          裏側を失礼
          小松屋4 
          ガブリと行くと・・・

かじるとスコーンのような食感で、小麦粉と卵のいい香りが口中に広がる。きれいな黄色い美味。素朴な甘み。小麦粉と卵、砂糖、それに膨張剤しか使っていない。実にシンプル。それだけでこの味を出すには相当な技が伝承されているに違いない。
「他の花ぱんと全然違うでしょ? バターとか変なものを入れていない。久しぶりに感動したわ。村長にこの味、わかるかなあ」
村民2号の目はどこかに飛んでいた。ヤバイ・・・。

本日の大金言。

桐生に花ぱんが誕生したのは幕末の激動時代。ペリーが来航し、安政の大地震が起き、やがて明治維新へと日本が大きく変化していった。2014年の今に重なる。



                         小松屋③

浅草の「ジャンボめろんぱん」

 佐野プレミアムアウトレットで「メロンパンもここまで来たか」という「ソフトクリーム入りメロンパン」を賞味したので、反動で、メロンパンの原形を賞味したくなった。村長は以前から気になっていた東京・浅草「花月堂」の「ジャンボめろんぱん」にターゲットを絞った。テレビでお笑いタレントが「うんめえ!」などと騒いでいたことを思いだしたからだ。「美味い」と思った時に「うんめえ!」というわざとらしいリアクションは微笑ましいが、芸としては「フンドシ担ぎ」レベルだと思う。うんもで出ない。

           花月堂 
           浅草花月堂に到着

浅草花月堂は弁天堂近くにある甘味処。創業は昭和20年というから、それほどの歴史ではない。ここの売れ筋がなぜか「ジャンボめろんぱん」で、土日は一日2000個は売れるというから驚きである。江戸表に出たついでに、このところぎっくり腰が悪化している村長が、ぴょこりぴょこりと歩いて到着すると、行列ができていた。いい町家づくりの店構えで、店頭には焼きたての「ジャンボめろんぱん」(1個200円)がいい匂いを放っていた。英語で「ジャパニーズ トラディショナル ブレッド」と表記してあるところを見ると、外人客も多いのだろう。

           花月堂② 
           伝統のメロンパン

ジャンボというだけあって、かなりでかい。子供の頭ぐらいはありそう。だが、メロンパンとしては実に伝統的なメロンパンで、色も形も「キング・オブ・メロンパン」という称号を与えたくなる。200円という価格設定も大きさを考えると、メチャ高ではない。並んで、2個ゲット。ウマズイめんくい村に持ち帰ってから賞味することにした。

           花月堂⑥ 
           どうだい、いい顔だろ?
           花月堂④ 
           おっと、横から失礼
           花月堂⑤ 
           ついでに裏側も

大きさを測ってみる。完全円形で直径は130ミリ、厚さは55ミリだった。手で持つと意外に軽い。こんがり焼かれたビスケット生地の表面には格子模様が付いていて、グラニュー糖がキラキラしていた。大きさは別にして、正統派メロンパンそのもの。袋から開けただけで、バターとメイプルシロップのような香りがふわりと飛び出してきた。

           花月堂1 
           表面のビスケット生地
           花月堂3 
           パン生地のふわふわ感
           花月堂4 
           素朴なバランス

ガブリと行く。表面のカリッとした食感と香ばしい甘みがまず来た。ビスケット生地はそれほど厚くはない。次にパン生地の湿気を含んだふわり感。目は粗い。普通のメロンパンよりも低温で時間をかけて発酵させているという。シンプルなのにそれなりに美味いのはパン生地の熟成感のためかもしれない。デカいのに1個食べても思ったほどの満腹感はない。表面のグラニュー糖のカリカリ感とバターの香りが口中に残った。メチャウマというほどではないが、フツーに美味い。「うんめえ」と小さく言ってみた。馬鹿め。


本日の大金言。

メロンパンの歴史は明治・大正あたりらしい。瓜形と丸形の二つのタイプがあり、瓜とメロンの形そのもの。瓜からメロンへ。戦後の日本の形そのもの?




                        花月堂3 



「本格おむすび専門店」のおむすび

 秘密ペンクラブの打ち合わせのため東京・八丁堀で下車。そこから新大橋通りをエッチラオッチラ歩くことにした。裏通り好きの村長が途中で裏道に入ると、「本格おむすび専門店」のスタンド看板が目に入った。「おむすび」という言葉に壊れかけたセンサーが反応した。見上げると「おむすび 千米屋」という看板。「日本昔話」の世界に通じるどこか懐かしい響き。そこに「本格」と書くからにはかなりのお手前と判断した。「御免」と入る。おいおい、まるで道場破りだよ。

           千米屋① 
           いい雰囲気

店内は狭く、テイクアウト中心のようで、ケースには「塩(110円)、「紅さけ(170円)」、「雑穀米(140円)」「焼きたらこ(180円)」などなど、おむすびが美味そうに並んでいた。おいなりやメンチカツ、とん汁などのメニューもある。左手には4席ほどのイートインコーナーもある。夫婦なのだろうか、二人で切り盛りしているようだった。
        
           千米屋② 
           うむむ

村長は「おかか(150円)」が好みだが、すでに売り切れていた。だが、「プレートにあるものはお作りします」と表記してあったので、聞いてみると、「大丈夫です。お作りいたします」。もう一品「紅さけ(170円)」も頼んだ。それと「自家製とん汁」(180円)もしっかり頼んだ。

調べてみると、この店はオープンして約8年で、昼めし時には八丁堀界隈のサラリーマンやOLが行列を作る人気店だった。5分ほどで呼ばれ、イートインのカウンター席で賞味することにした。2時過ぎていたが、安くてリッチな昼めし。コンビニのようなプラスティックの透明な器ととん汁のカップが寂しい気がしないでもない。だが、おむすびは手づくり感にあふれ、温かさが伝わってくるようだった。日本昔話の世界とコンビニの世界の融合?

          千米屋③ 
          温かい手軽

おむすびの形と大きさはおむすびチェーン「権米衛」とよく似ている。まずはおかかを賞味することにした。海苔は黒々としていて、いい海苔を使っているようだ。新潟産コシヒカリのご飯は固めに炊かれていて、手で持っただけで崩れてきそうだった。かなり柔らかい握り。中のおかかは最初、あれっと思えるほど姿が見えなかったが、奥に隠れていた。分量は多くはないが、少なくもない。ほどよい加減。

          千米屋⑤ 
          固めの新潟産コシヒカリ
          千米屋1 
          ご飯とおかかのバランス
          千米屋⑥ 
          ここからが美味

紅さけも柔らかい握りで、ほどほどに旨い。紅さけ自体は中塩で、温かいご飯とよく合う。とん汁はたまたまなのかもしれないが、肝心の豚肉が一切れというのが寂しい。その分、大根はしっかり入っていた。若いサラリーマンやOLにこの「ゆるキャラ風おむすび」がウケるのはよくわかった。

           千米屋⑧ 
           紅さけ様~
           千米屋⑨ 
           たまらん
           千米屋⑦ 
           自家製とん汁

だが、村長にはやや物足りない。しっかりと握られたおむすびが頭に浮かんだ。日本昔話の世界はホントに昔話の世界になっちまったということか。都会の中の擬似日本昔話の世界。それも悪くはない。

そりゃ、おむすびではなくておにぎりだよ。あるいは握り飯。おむすびはこんなもんだよ。もっと勉強なさい。第一、若い人にウケているんだからいいんじゃないかい」
どこかから、ヒゲじいの声が聞こえた。


本日の大金言。

コンビニ文化はもはや生活の一部になっている。「美しい国」とか「取り戻す」を公言するどこかの国の首相からも、コンビニの匂いがするのは偶然ではない。コンビニ問題は難問である。



                     千米屋10 




謎の「ソフトクリーム入りメロンパン」

 「佐野プレミアムアウトレット」は村長の好みのエリアの一つで、たまに顔を出す。東北道を北上して佐野インターで下りるとすぐ。土日は大渋滞なので、乱雨の合い間の晴れ間の昨日、ポンコツ車をぷかぷか飛ばした。夏日で暑い。足下のはるか彼方、地球の裏側のブラジルはもっと熱い。Wカップはどうなるんだろう? 脳裏に様々な問題を抱えながら、あちこちの店を覗くだけで心がうきうきしてくる。それなりに美味い店も入っている。むろん、最大の目的は美味探検

           セリフランス① 
           デリフランス(佐野プレミアムアウトレット)

暑いのでフードコートに入る。ここで、面白いスイーツが視界に入った。美味そうなメロンパンの中にソフトクリームがどっかとサンドしてある、見ようによってはエロティックな写真が微笑んできた。村長のセンサーが反応した。それが「こだわりのパンオメロンソフト」」(税込390円)だった。パン屋カフェ「デリフランス」のメニューで、女性スタッフに聞いてみると、「出たばかりの新しいメニューなんです」とか。

           デリフランス② 
           なんだこりゃ?

メロンパンにソフトクリームを挟むなんて聞いたことがない。これはミスマッチかもな、一瞬その思いもよぎった。デリフランスはフランスを起点に世界を席巻しているパン屋カフェで、首都圏にも秋葉原や東京ソラマチはじめ店舗展開を広げている。日本でのライセンスは山崎パンが持っているようだが、表立っては「ヤマザキ」の名前は出ていない。東京ソラマチでは限定のメロンパンが人気になるなど商売も上手い。

          デリフランス① 
          このメロンパンに・・・

問答無用。すぐに注文する。女性スタッフがオリジナルメロンパン「パンオメロン・スペシオ」(税込200円)に切り込みを入れ、そこに北海道産の生乳から作ったソフトクリームを入れていく。ソフトクリームがこぼれないように、紙袋に入った「こだわりのパンオメロンソフト」を持ってテーブル席に腰を落ち着ける。ここでひと言、声を大にして言いたい。。最近やたら多いネーミングの長たらしさはどうにかならないものか。意味すらよくわからない。パンオメロン・スペシオって何だ?メロンパンで十分だと思うのだが。

問題の味はどうか? まずメロンパン自体が美味い。貝がら模様の表面のビスケット生地は厚めで、表面にグラニュー糖がキラキラしている。黄色みが強く、縁の部分はややキツネ色。そのこんがり感がマル。かじるとザクッとした食感で、ボロボロと崩れ落ちそうで、その身の崩れ方が素晴らしい。中のパン生地はふんわり。

           デリフランス③ 
           新たなスイーツスター?
           1  
           早くゥ~溶けちゃうわよ
           デリフランス⑦ 
           まさかのソフトクリーム
           デリフランス⑨ 
           白旗デス

これだけでも十分なのに、ソフトクリームが待ち構えている。カスタードクリームや生クリーム入りのメロンパンは多いが、ソフトクリームがその冷たい食感とともに口内に入ってくると、これはこれでアリという思いがどんどん強くなる。暑い日はなおさらである。ボリューム的にはほとんど横綱級で、カロリーも相当だと思う。だが、突然、目の前のブラジルの美女にハマってしまったみたいに、どんどんそのボリュームにのめり込んでいき、気が付いたらすっかり食べ終わっていた。最後はシュークリームを食べている感覚。脳内はすっかり天国状態。足下の地球の裏側が少し気になった。


本日の大金言。

日本で生まれたメロンパンの世界はどんどん進化している。あんぱんとメロンパン。この二つは日本が世界に誇れるスイーツである。






                      デリフランス12 




まさかの本場・大阪の串かつ屋

 上州ゴッドマザーのお見舞いの帰り、ふと太田駅で途中下車してみた。久しぶりのローカル電車。南口で下りて、飲食街を散策中に、面白い店を見つけた。「串かつ」の暖簾が下がり、入り口には、大阪・通天閣の「ビリケンさん」が置いてあった。一瞬目が点になった。ありゃりゃ、コテコテの大阪! 「前田製作所」という屋号が目に入った。大阪的なものとは対極にあると思っていた上州・太田でまさかの出会い。

           前田製作所7  
           ここはどこ?

入ると、店内は活気に満ち溢れていた。カウンター席とテーブル席があり、奥にもテーブル席が見えた。女性スタッフが忙しそうに生ビールや料理を運んでいた。ブルーのTシャツの後ろに「本場大阪 ソースの二度漬けお断り。」の文字が染め抜かれていた。笑える。気に入った。村長は本場・大阪でも串かつを賞味したし、東京・北千住の立ち飲み「天七」のファンでもある。

           前田製作所2 
           二度漬けはあかんでえ
           前田製作所④ 
           本場の串かつ

カウンターに腰を下ろして、まずは生ジョッキ(480円)と、目玉のメニュー「本場串揚げ」の中から「五本盛」(650円)を頼んだ。この季節、枝豆(280円)も欠かせない。目の前には生キャベツ(無料)と「二度漬け禁止」と書かれたソースの容器が置かれている。北千住の天七もそうだが、ソースを二度漬けしたらレッドカードが出る。

           前田製作所⑤ 
           ここは新世界?

串かつを油で揚げるいい匂いが充満してきた。まず「お先に3本です」と海老、つくね、うずらが登場。それから牛とウインナーがやってきた。コロモのパン粉はきめ細かく、キツネ色にサクッと揚げられていて、あっさり系のウースターソースとよく合う。ウインナーが特に美味だった。追加で、深谷ネギ(100円)とタマネギ(100円)を頼む。これが気に入った。深谷ネギもタマネギも地場のもので、新鮮な甘みがコロモとソースの後押しを受けて口中に広がる。その余韻を生ビールで洗う。その間、客がどんどん入ってくる。

           前田製作所⑥ 
           つくねをソースに・・・
           前田製作所12 
           牛とウインナーの美味
           前田製作所10 
           深谷ネギとタマネギ

店主は本場・新世界で串かつの修業をしたそうで、「ここまで本場をほとんどそのまま出している店は上州では珍しい」(女性スタッフ)とか。村長の見たところ、本場や北千住・天七よりもきれいにまとまっている。そこが洗練されていると思うか、やや物足りないと思うかの分かれ目だろう。

           前田製作所A 
           じゃこの焼きおにぎり

締めに「じゃこの焼きおにぎり」(2個450円、みそ汁付き)を頼んだ。みそ汁は美味だったが、これは少々期待外れ。予想よりも小ぶりで、こちらもきれいにまとまっていた。じゃこと大葉がほどよく入っていて、ダシ醤油を付けて焼かれていて、それなりには旨い。だが、期待が大きすぎた分、コテコテ度がやや足りない。だが、と村長は思い直す。上州でこれだけの試みはそうは出てこないのではないか。オープンしてまだ3年だそう。入り口のビリケンさんのテカりが本場を超える日を楽しみにすることにした。


本日の大金言。

テレビの世界は関西の笑いにすっかり押されているが、味覚の世界もダシの効いた関西に押されている。かないまへん。



                      ビリケンさん 

下町の洋食屋、驚きの「600円ランチ」

 梅雨入りの東京・北千住でエンターテインメント新聞社時代の上司らと久しぶりに酒宴を開くことになった。午後3時半開宴予定。少し時間があったので、B級ハンターとしては、その前に軽く腹ごしらえをしなければならない。マルイの反対側の東口に出て、旭町商店街をプラプラ歩いていると、以前に来たあんこの美味いカフェが消えていた。

隣の魚屋のお兄ちゃんに消息を聞いてみると、「半年ほど前に店を畳んじゃった。何だか疲れちゃって辞めたみたいだよ。結構お客は入っていたんだけどね」とか。何ということだ。突然、清志郎のサン・トワ・マミーが頭の中を流れた。

           三幸① 
           下町の洋食屋(東京・北千住)

気を取り直して、突き当りを右手に行くと、昭和の名残を残すいい雰囲気の洋食屋が視界に入った。「レストラン三幸」という看板。「ランチ500円(ライス、スープ、お新香付)」というボード。その安さに驚いた。Aチキンカツ、Bメンチカツ、Cハンバーグステーキとカニクリームコロッケの盛合せ(600円)・・・。問題は中身。店構えである程度その店の実力がわかる。これは入るっきゃない。

           三幸② 
           むむむっ?

村長はカウンター席に座ると、少々見栄を張って、「Cのハンバーグステーキととカニクリームの盛合せ(600円)をください」と頼んだ。L字のカウンターとテーブル席が7席ほど。カウンターの前が厨房になっていて、ハンバーグを手でパタパタする音が聞こえ、カニクリームコロッケを揚げる軽やかな音が聞こえ始めた。うむ、いい洋食屋の条件その一を備えている。コックは若かった。

          三幸13 
          丁寧な仕事

5分ほどで水とともにナイフとフォークが置かれ、ポタージュスープがやってきた。たぶんコックさんの奥さんだろう女性が「熱いのでお気を付け下さい」と言葉を添える。いい洋食屋の条件その二。気遣いがさり気ない。ポタージュスープはポテトで、まろやかでいい味だった。その7~8分後に、メーンのハンバーグステーキとカニクリームコロッケとライスがやってきた。デミグラスソースがたっぷりとかかっていた。

          三幸③ 
          600円とは思えない
          三幸④ 
          情熱と圧倒

たかだか600円のランチにハンバーグステーキとしっかり表記していることにある種の誇りを感じた。いい洋食屋の条件その三もクリアしている。心して食べ始める。ハンバーグステーキは厚さはないが、合い挽き肉と玉ねぎがいい具合にこねられていて、まずまずの美味さ。カニクリームコロッケも大きくはないが、しっかりと作られていて、コロモのサクサク感とクリーミーさがとてもいい。何よりもデミグラスソースがあまりこってりしていず美味。かすかに醤油の隠し味。

          三幸⑥ 
          コックがいる
          三幸⑧ 
          コックが詰まっている
          三幸12 
          必需品

村長としては、ここにポテトサラダが乗っていれば文句なしだが、600円という値段を考えると、それはぜい沢すぎる。ライスもやや固めで、村長の好み。ふと見ると、遠くから、コック帽をかぶった年配のコックさんがこちらをじっと見ていた。創業45年というこの店の店主だった。筋金入りの昭和のコックの匂い。若いコックと女性は多分、息子さん夫婦かもしれない。いい洋食屋を見つけたと思った。職人のリレー。洋食屋は下町に限る。

その数時間後、エンターテインメント新聞社時代の上司は疾風怒とうの時代を楽しそうに語った。時計が逆回転し始める。だが、黄金の酩酊にも終わりはある。清志郎の歌声。「メノマエガァ、マックラ」。帰りにエスカレーターを踏み外しそうになってしまった。


本日の大金言。

昭和も遠くなりにけり。だが、昭和のコックさんは隣の街でもしっかりと生きている。スマホを置いて街に出よ。




                       三幸11

続きを読む

大混乱、農園ガーデンのボロネーゼ

 「グルメの友だちからの情報で、いいとこ見つけたわよ」
花好きの村民2号が小鼻をひくつかせて、村長の耳元でささやいた。
「バラがきれいで、農園カフェもあるんだって。イングリッシュガーデンが広くて素晴らしいそうよ」
こういう時は逆らってはいけない。「銀座 梅林」のヒレカツサンドの一件もあり、村長は静かにうなずいた。農園ガーデンのカフェ、というからにはランチも期待できる。シメシメ。

青いポンコツ車をぷかぷか飛ばして、埼玉・久喜市菖蒲町郊外にある「実野里(みのり)フェイバリットガーデン」を目指した。平日の午後1時過ぎだというのに、広い駐車場はほとんど車で一杯だった。敷地面積約3000坪の中のガーデンにはバラばかりでなく、カンパニラやギボウシなど季節の花々が咲き誇っていた。ドヒャーという光景が広がっている。 

          実野里ガーデン① 
          埼玉の穴場?

村長には無縁な世界だが、村民2号にはほとんど天国。仕方なくしばらく付き合ってから、農村カフェ「実野里カフェ」に入った。山小屋風の一軒家。床もテーブルも木で、大きなテーブルが5つほどと小さなカウンター席。外にはテラス席もある。客のほとんどは女性で、若い男性客もいた。忙しいのか、セルフサービスが基本で、水を自分で運んでくる。

          実野里ガーデン② 
          実野里カフェ

メニューはオーガニック中心で、村長は迷った末に「具だくさん野菜と豆入りクリーミーボロネーゼ」(780円=税込842円)を選んだ。その下に、「魚沼産コシヒカリ焙煎発芽玄米フィットチーネ」とも書かれていた。うーむ。一つのメニューにこれだけの文字を使うことは犯罪的ではないか? 読み終えるまでに倒れたらどうしてくれるのか。だが、村民2号は一向に気にする気配はない。嬉々として同じものを頼んだ。

           実野里ガーデン③  
           美味そうな予感

フィットチーネとはきしめんのような幅広パスタのこと。番号が呼ばれ、6~7分ほどでその長たらしいボロネーゼがやってきた。ありゃりゃ。白い紙の器にプラスチックのフォーク。村長は拍子抜けした。名前は長たらしいのに、肝心の料理は簡素。これでまずかったら、休火山が爆発するかもしれない。5、4、3、2・・・・。

          実野里ガーデン⑤ 
          あなた様は?

だが、意外に美味だった。濃厚なミートソースはやさしい味で、アスパラ、ジャガイモ、えんどう豆、ひよこ豆、赤インゲン豆など野菜類がドカドカと入っていた。挽き肉とチーズもたっぷり。フィットチーネパスタは魚沼産コシヒカリの発芽玄米入りということもあるのか、コシがさぬきうどんのように強く、ムニュリとした独特の食感。それに濃厚なミートソースが実によく絡まってくる。うむむ。悪くない。腹立たしさと意外な美味に感情がエレーベーターのように上下する。
 
          実野里ガーデン⑨ 
          食べてから言え
          実野里ガーデン2  
          野菜の美味

「この野菜は地場もの?」
感じのいい女性スタッフに聞いてみた。
「ええ、ほとんどここの農場で作ってるんですよ」
「アスパラが特に美味い。パスタも自家製?」
「いえ、パスタは違うんですよ」

そんな会話の後、村民2号が鼻歌を口ずさみながらまた花を見に行った。
残された村長は、ついに結論を出した。評価は三角。あと100円安ければ、マル!


本日の大金言。

きれいなバラには棘がある。だが、バラだけを見て棘を見なければ、腹も立たない。




                      実野里ガーデン11

銀座梅林のヒレカツサンド

「とんかつ 銀座梅林」といえば、昭和2年(1927年)創業「銀座で初めてのとんかつ専門店」という老舗だが、村長にとってはヒレカツサンド、である。友人の片岡画伯が毎年このビルの2階にある「渋谷画廊」で、グループ展を開催し、そのオープニングパーティーで必ず「梅林のヒレカツサンド」が出る。「冷めても美味い」という評判は本当で、これを目当てに埼玉の果てからわざわざやってくる不届き者もいるほど。京都にお住いのグルメ仙人・調布先生などは、毎年この時期になると、出席できない悔しさをぐじのヒレ酒で紛らわせているらしい。

           梅林① 
           とんかつ 銀座梅林(銀座7丁目)

久しぶりに銀座で会合があったので、時間を見つけて7丁目にある「梅林」に行き、「ヒレカツサンド」(小=4切れ770円)を二つ買い求めることにした。一つは揚げ立ての味を賞味してみたかったからである。もう一つはウマズイめんくい村に持ち帰って、冷めてからの味と比較してみようと思った。

           梅林② 
           銀座のおみやげ

入り口で注文すると、「これから揚げますので、少々お時間がかかります。中でお待ちください」と女性店員。店内は白木の長いカウンターが見事で、二人のきりっとした白衣のコックがとんかつを揚げていた。待ち時間は13~4分ほど。その間、お茶を出してくれた。予想外の気配りに好感。その足で、近くの喫茶店に入った。そこで、こっそり第一回目の品評会。このスリリングさがたまらない。

           梅林③ 
           包装紙を解く・・・

包装紙を解くと、紙箱の上にはお手拭とツマヨウジ。箱を開ける。ラードのくせのある匂いではない、高級なサラダ油のような、いい匂いがふわりと立ち上がってきた。揚げ立てのヒレ肉は見事なサーモンピンク色で、厚さは6ミリから8ミリほど。上野「井泉」ほど厚くはないが、十分な厚み。コロモの琥珀色の透明感。揚げ立ては明らかにパ-ティーの時のものよりも輝いている。

           梅林⑤  
           この瞬間がたまらない
           梅林3 
           黄金色の美味

まずはひと口。まず、パンのしっとりとした柔らかさ。次に来たのは、ヒレカツの甘い、滴るような柔らかさ。10分ほど経過していたので、コロモはサクサク感が半分以上無くなっていたが、それでも揚げ立ての余韻は残っている。そのまろやかな肉汁感はさすが。自家製ソースは玉ねぎとリンゴの隠し味が効いていて、ほんのりと甘く、主役のヒレカツの引き立て役に徹している。よく見ると、バターとマスタードがわからないほど薄く塗られている。それらが重層的に村長の口内から味覚中枢にひたひたと侵入してくる。ひとまず降参。

           梅林5 
           柔らかさに驚く
           梅林4 
           ちょいと失礼

その約半日後。もう一箱を賞味してみた。すでにすっかり冷めているので、パンは少し固くなっていて、ヒレカツにもあの黄金色の輝きはない。だが、味は思ったほど落ちていなかった。肉も驚くほど柔らかい。これはこれで美味。というより、成熟した旨みとでも表現したくなるような味わいで、「冷めても美味い」を改めて確認。

          梅林① 
          約15時間後
          梅林③ 
          味が落ちない

「初めて食べさせてもらったけど、上等なお味でした。でもちょっとぜいたくすぎない? 1箱は余計だと思うわ。台所は火の車だっていうのに」
村民2号の怒りはその日一日続いた。

本日の大金言。

上野・井泉、秋葉原・万世、それに銀座・梅林。これが東京カツサンドの御三家だと思う。だが、揚げ立てを店の中で待つ楽しみは梅林に尽きる。



                      梅林④

ここはどこ?竹やぶのそば屋の中身

 上州に住むゴッドマザーのお見舞いの後、昼飯をどこにするか迷った。あちこちを物色中に、県道3号線を桐生方面へと向かう途中のみどり市郊外で、竹やぶに囲まれた茶室のようなそば屋が視界に入った。大津壁のような黄土色の土壁。臙脂(えんじ)の暖簾。只者ではない雰囲気が伝わってきた。京都にでもいるような、ここはどこ?的な状況。だが、あまりに絵になり過ぎていて、村長のセンサーが警戒音をかすかに発した。好奇心がむくむくと湧きあがってきた。

          遊庵 
          ここはどこ?(蕎麦 遊庵)
          遊庵② 
          見事な世界

それが「蕎麦 遊庵(ゆあん)」だった。店内も素晴らしい和のモダン。外国人をここで接待したら、「おー、おもてなし! クール!」と叫ぶに違いない。自然の光を取り入れた板敷の半個室に案内される。そうした部屋が数室あるようだった。ほぼ完ぺきなバーチャルの世界。だが、女性スタッフのドタバタぶりが、やや気になった。

          遊庵③ 
          おすすめ、には勝てない


メニューの中から「だし巻き玉子セット(せいろそば)」(飲み物、デザート付き税込950円)を選んだ。「だし巻き玉子」はこの店の売りのようで、「注文を受けてから焼き始めます」と書かれていた。せいろそばは北海道のそば粉を使用、とも表記してあった。村民2号は「天せいろそば」(税込1490円)を注文した。安くはない。

15分ほど待たされて、「だし巻き玉子」がいい匂いとともにやってきた。有田焼の器。意外にデカい。大根おろしを付けて食べると、焼きたての風味が口中に広がる。甘すぎないのが村長の好み。出し巻き玉子は甘さ控えめがいい。だが、京都で食べたようなじゅわりと来る奥深い出汁感ではない。やや薄い印象。まずまずの美味さ。

          遊庵④ 
          だし巻き玉子、登場
          遊庵⑥ 
          焼きたての美味

その約5分後に「せいろそば」がやってきた。ざるの器、そばつゆの陶器の器・・・すべてにこだわりを感じる。せいろそばは挽きくるみの二八で、星が点々としていた。まるで機械で打ったようにきれいな細切り。この店の主人は相当な腕に違いない。期待十分で食べ始める。コシはあまり強くない。風味も普通。ノド越しも平均的。そばつゆはかえしがきつめで、出汁感はあまり感じない。

          遊庵⑦ 
          手打ち二八そば
          遊庵⑧ 
          この細切り
          遊庵10 
          ずずずーっと
          遊庵11 
          デザート

すべてが絵になるのに、奥行きが不足している。そんな印象。デザートの後、コーヒーを持ってきた女性スタッフがコーヒーを受け皿にこぼした。慌てて取り換えに行ったが、せっかくのワビさびの世界がさびしい。
「京都と比較しちゃダメよ。天ぷらもイマイチ。ま、この雰囲気を楽しむ。そう割り切れば、ここはいい店よ」
上州生まれの村民2号がきっぱりと言った。


本日の大金言。

人も店も着るものや見かけで判断すると間違うこともある。人も店も勝手口から入れ。




                        遊庵12 



春日部午後のチーズケーキ

 埼玉・春日部は面白い。少し前、テレ東の「出没!アド街ック」でも取り上げられていたが、ビビる大木や世界チャンプ・内山高志が春日部の魅力を語っていた。中でも北陽の虻川美穂子(杉戸町出身)のコメントが面白かった。「私にとっては埼玉の大都市・大宮に出ていく前の準備段階としての春日部」みたいなことを話していた。なるほど、と感心した。

春日部市は人口24万人弱で、東武線沿線のビッグシティーだが、クレヨンしんちゃんの街としても知られている。だが、人通りは多くない。村長にとっては、そこが魅力でもある。いつものように途中下車して、あちらこちらを散策していると、市役所の前で、ウッディーなカフェを見つけた。「ギャラリーカフェ ER(エル)」で、シャレた店構え。ちょうどティータイム。「自家製ケーキセット」という文字が、甘味中毒者の脳を刺激した。パブロフの犬状態。

           カフェエル① 
           ウッディーなカフェ

店内は開放的で明るく、床からテーブルからさわやかな木の温もりが伝わってきた。ウッドデッキまであり、春日部カフェ文化の新しい風を感じさせる造りだった。村長は赤いチェックのテーブルクロスの席に腰を下ろして、メニューの中から「自家製ケーキセット」に目を向けた。バナナ、チョコレート、チーズの3種類で、しかもハーフセットまであった。これはいい店かも。

           カフェエル② 
           ハーフサイズが狙い目

「一番人気は?」と聞いてみると、「チーズを頼む人が多いですね」と女性スタッフ。「では、チーズケーキをハーフサイズで。飲み物はコーヒーでお願いします」と村長。セットで650円なり。ハーフでも十分大きいと判断したのと、懐にピューピュー風が吹いていたからである。背に腹は代えられない。

           カフェエル④
            広々感の中で

「自家製チーズケーキ(ハーフサイズ)」が真っ白い角皿に乗ってやってきた。表面が薄っすらとベイクドされたニューヨーク風チーズケーキで、ラズベリージャムが添えられていた。粉チーズが雪のようにかかっていた。いいビジュアル。フォークを入れると、クリームチーズがほろほろと崩れそうで、口に運ぶと、濃厚で柔らかい。クリームチーズのいい風味が口中に広がる。ほどよい酸味。コーヒーもまろやかで、チーズケーキによく合う。

           カフェエル⑥ 
           ニューヨーク風チーズケーキ
           カフェエル⑧ 
           濃厚と酸味
           カフェエル⑨ 
           春日部をなめんなよ
           カフェエル⑦ 
           底の生地が秀逸

底のビスケット生地にはクルミも入っていて、それがしっとりと柔らかくて美味。
「この底の生地がいいね。ビスケットの他に何が入ってるの?」
店主らしい女性スタッフに聞いてみた。
「ホントは内緒ですが、パンも入れてるんですよ。随分研究しました」
「ソコは大事だ。この店のパティシエの底力ってわけだ」
「シャレまで・・・ありがとうございます(笑)」
オープンしたのは東日本大震災が起きた2011年だという。まだ3年目。春日部にも確実に新しい風が吹いている。


本日の大金言。

春日部は江戸時代は日光街道の宿場町として栄えた。歩くとあちらこちらに歴史と文化を感じる。隠れた名店も多い。クレヨンしんちゃんになった気分で散策するのも楽しい。








                        カフェエル10 

トリュフ風味の冷やし味噌ラーメン

 江戸表のペンクラブ編集会議に出席したその足で、北千住に途中下車した。東口で下りて、梅乃湯、居酒屋「やすらぎ」あたりを性懲りもなく散策していると、「みそ味専門 マタドール」という黄色い看板が視界に入った。北千住でめきめき頭角を現してきている「牛骨らぁ麺 マタドール」の新しいブランドと表記してあった。ご丁寧にも店の前には行列用の仕切りまでセットされていた。その自信にまずは敬意。

          マタドール 
          ラーメン屋?

何事にも自信のない村長は、入ろうか入るまいか悩んだが、入り口の「期間数量限定 冷やし味噌らぁ麺~トリュフ風味仕立て 800円」というメニューに引き寄せられた。このところの猛暑に冷やし味噌ラーメンと言う文字は、猫にかつ節、である。しかも限定品とくれば、これは槍が降っても入るしかない。

           マタドール① 
           おしゃれな外観
           マタドール② 
           当たりか、ハズレか

夕方ということもあるのだろう、カウンター席のみの店内は空いていた。奥にもさらにカウンター席が見えた。きれいでモダンな店内で、ラーメン屋の雑然としたB級の雰囲気はない。村長は入ったもののお尻のあたりがムズムズする。券売機で食券を買って、「トリュフ風味の冷やし味噌ラーメンって、珍しいね」と店長らしき男性に話しかける。「まあ、他ではないでしょうね。期間限定メニューで、もうすぐ終わる予定ですが」というお返事。修行僧のような印象。

12~3分ほどで、限定メニュー「冷やし味噌らぁ麺」がやってきた。まずそのビジュアルに目を見張らされた。十分に冷やされたガラスの大きな器。その中に大きなローストビーフが一枚、白髪ねぎ、レンコン、湯ムキしたミニトマト、オクラ、水菜・・・。その下には平打ち中太のストレート麵が控えていた。何よりも味噌スープの上に黄色い脂が層になっていて、それが「美味そう光線」を放っていた。ラーメンというよりも無国籍高級料理のよう。

          マタドール④  
          冷やし味噌らぁ麺、登場
          マタドール2  
          見事な構成
          マタドール⑨ 
          冷たい美味
          マタドール⑧ 
          奥深いあっさりスープ

まずはひと口。スープは韓国冷麺の牛ガラスープとブイヨンスープを足したような味わいで、そこに味噌が溶け込んでいる印象。表面の黄色い透明な脂は鶏の脂のようで、意外にあっさりした味。見た目ほどの脂感はない。トリュフの独特の風味はかすかに感じる程度。麺はつるりとしていて、コシはさほど強くない。村長はもっと野趣を期待したが、全体的にきれいにまとめられている。

          マタドール10 
          自家製ローストビーフ
          マタドール11 
          ミニトマトの存在力

ローストビーフは見た目はきれいで、まずまずの味。レンコンを入れているのも珍しい。渋いヒット。感心したのは湯ムキしたミニトマト。これがいい箸休めになっていて、その丁寧な仕事ぶりは評価できる。だが、と村長は思う。食べ終えた後の感動が期待したほど湧いてこない。美味いには美味いが何かが足りない。ボリュームもそこそこ。ひょっとして女性客を対象にしているのかもしれないが、7割の満足度。これはまるで本田圭佑みたいだ、村長の中のリトル赤羽がそうつぶやいた。


本日の大金言。

ローストビーフとトリュフ。20年前に、誰がラーメンの世界にこの食材が登場することを予想しただろうか。恐るべきラーメンの進化と落とし穴。


                        マタドール14

続きを読む

プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

最新記事
カテゴリ
彦作のつぶやき
最新コメント
月別アーカイブ
カレンダー
05 | 2014/06 | 07
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 - - - - -
最新トラックバック
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR