「銭湯→加須うどん」まさかの黄金コース

 何ということだ。居酒屋と銭湯の街・北千住で、埼玉・加須市にある風情のある銭湯「ときわ湯」の話を聞き、一度行ってみたいと思っていた。加須はうどんの街でもあり、浴衣姿でときわ湯に浸かってからうどんを賞味しようと機会をうかがっていた。だが、その黄金のプランがもろくも崩れてしまった。

           ときわ湯① 
       ときわ湯に到着したが・・・(埼玉・加須市中央)

「ときわ湯」が今年6月末に閉店していたのである。戦前に創業、東京オリンピック前の昭和38年に建て替え、北千住の銭湯にも負けない桧(ひのき)の大黒柱、木組みの番台、ペンキ絵、吹き抜けの高い天井・・・それらがガランとした廃屋となっていた。たまたま二代目の店主がいて、写真を撮らせてもらったが、「後継者がいない」という理由で、約50年の歴史に幕を閉じた。「時代の流れですよ」二代目は寂しげに首を振った。

           ときわ湯② 
           何ということだ
           ときわ湯④ 
           往時の名残りが・・・
           ときわ湯⑥ 
         高い天井とペンキ絵

来るのが1か月遅かった・・・。村長は頭を切り替えて、加須市久下にある「手打ちうどん・そば こぶし」の暖簾をくぐることにした。ここはうどん通の知人が「加須の中でも特に美味い」と教えてくれた店。風情のある古い一軒家で、入ると、すぐ右手に打ち場があり、テーブル席、小上がり、座敷がゆったりと広がっていた。

           こぶし① 
      加須うどんの三ツ星?(久下「こぶし」)

メニューの中から「もりうどん」(税込490円)とお好み天ぷら「舞茸天」(1個110円)を選んだ。合計600円。我ながら渋い選択。15分ほど待つ。注文してから天ぷらを揚げているようで、厨房から油が軽やかにはねる音が聞こえてくる。大釜でうどんを茹で上げ、冷水に晒しているのもわかった。

           こぶし③ 
           もりうどんだっぺ

もりうどんは太麺だが、さぬきほどではない。地粉100%で、手でこねた後に足踏みし、さらに寝かせに時間をかける。丁寧なつくりのうどんで、絹のような光沢と口に入れた途端、つるっとした食感が心地よい。さぬきのような強いコシではなく、モチモチッとしたうどん。コシもしっかりある。村長はこれまで加須うどんは数軒食べているが、正直に言うと、玉石混交で、「田舎のうどん」の域をほとんど出ていない。だが、ここはマル。

           こぶし④ 
           もりうどんと舞茸天
           こぶし⑤ 
         むむ・・・絹の光沢
           こぶし⑧ 
           かなりのレベル
           こぶし11  
           醤油をひと垂らし

ツユも鰹節と鯖節、それに干しシイタケの出汁が効いていて、かえしとのバランスがいい。甘すぎず辛すぎず。舞茸天のマイタケは加須産のもので、カラッと揚げられていた。かなりの大きさで、110円という安さも好感。ここにも職人がいる。BGMがクラシックであることに気付いた。村長は、閉店したときわ湯を想いながら、柄にもなく、感傷的な気分になるのだった。


本日の大金言。

思い立ったが吉日。人生は長いようで短い。ローカルのいい銭湯が消えるのは、永田町の建物が一つ消えるよりはるかに悲しい。



                         こぶし12
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ベーコン乱入、ホットケーキ新たな世界

爆発的人気で パンケーキの店が増えているが、スイーツとしてばかりではなく、ハンバーガーなどと同じように、主食としての立ち位置もしっかりとつかみつつある。だが、村長は、パンケーキという呼び方に違和感を覚える。日本ではホットケーキではないのか。一節にはパンケーキは厚さが薄めで具を挟んだりもするが、ホットケーキは厚めで、バターとメープルシロップで食べることが多い。

だが、東京・北千住の「カフェ コンバーション」はこの流れに逆らっているように見える。ホットケーキ専門カフェとして、隠れた人気店になっているからだ。埼玉・草加に本店があり、北千住店は約3年前にオープン、村長は一度のぞいたが、古民家を改装したどこかフランスの田舎の小さな隠れ家のような佇まいで、4~5人ほどが並んでいた。並ぶことの嫌いな村長は、その時、「ケッ」とつぶやいて、踵(きびす)を返したのだった。

          カフェコンバーション① 
       ここはどこ?(カフェコンバーション)

それから約一年。平日の午後2時過ぎ。再度のぞいてみたら、客は二組しかいなかった。ゲットラッキーか? 木の床に木のテーブルが4つほど。雑誌「アンアン」にでも出てきそうないかにも小ジャレた造りで、女性スタッフが2人、BGMはモダンジャズ。男性お断り、という張り紙があるのではないか、と探したら、特に見当たらない。村長はメニューの中から、「BLTCほっとけーき」(880円)を選んだ。

          カフェコンバーション④ 
          ホットケーキのメニュー

「BLTCって何?」女性スタッフに聞いたら、「ベーコン、レタス、トマト、チーズの略で、それを挟んだホットケーキです」というお返事。「飲み物も一品お願いします」と言われて、「おりじなる珈琲」(セットで+320円)を頼んだ。合計1200円ナリ。決して安くはない。20分ほど待たされて、まずコーヒーが登場。続いて、「BLTCほっとけーき」がやってきた。うむむうむむ。

厚さ3センチはあろうかというホットケーキが半分に分けられていて、メーンの方には、外側にベーコンが2枚ほど張りついていた。中にはトマト、チーズ、それに大きなレタスがどっかと挟んであった。サルサディップという辛いソースも添えられていた。何というビジュアル! もう半分はさらに二つに切り分けられていて、バター、メイプルシロップ、生クリームが添えられていた。二つ、いや三つの味を楽しめる、その構成に村長は唸った。

          カフェコンバーション⑤ 
        BLTCほっとけーきだって?
          カフェコンバーション⑦ 
          これがホットケーキ?
          カフェコンバーション⑨ 
          うむむむ
          カフェコンバーション⑧ 
          二つの世界

分厚いホットケーキは黄色みがかなり強い。卵と小麦粉のいい匂い。時間をかけてこんがりと焼いたことがわかった。サルサディップはトマト、ピクルス、オニオンで作られたソースで、タバスコのような香辛料が入っていて、これを付けて食べると、意外にイケる。頭の中でラテンのリズムが流れる。これはホットケーキの新しい世界ではないか。だが、と村長は少しだけ首を振りながら、次の獲物へと向かう。バターとメープルシロップと生クリームの世界へ。これだ、これだ。ホッとする美味。これがホントのホットケーキだと思う。

           カフェコンバーション10 
           ガブッと行け
           カフェコンバーション15 
         バターと生クリームとメープル

帰り際、女性スタッフに、「どうしてパンケーキと呼ばないの?」と軽く聞いてみた。すると、困った表情で、「うちはホットケーキなんです。パンケーキとどこが違うかと言われても、よくわかりません」。ホッとしない答えが返ってきたのだった。


本日の大金言。

パンケーキよりホットケーキ。世界的にはパンケーキという言い方が一般的らしいが、日本でホットケーキの新しい世界を開花させるのも面白い。ガラパゴスでどこが悪い。





                     カフェコンバーション16

老舗カレー後の400円冷やし中華

先週末、調布先生主催の 「おつな会」が日本プレスセンターで行われた。32年間続いたこの会の最終回。説明しても信じてもらえないかもしれないが、ゲスト講師への謝礼はなし、出欠も取らずという、常識では測りがたいスタイルを32年間続けた。これは奇跡と言ってもいいと思う。メディア界の裏七不思議の一つ、でもある。メンバーの約半分はマスコミ関係者で、中には有名人もいる。ビールを飲みながら、議論がエスカレートし、絶交状態に陥ったメンバーの数も両手両足を軽く超える。今回は最終回ということもあり、50人弱が出席したが、その際に出されたのが老舗レストランアラスカの「ビーフカレー」だった。

アラスカのビーフカレーは確かに美味だったが、格別の味というよりも、おつなの32年間の隠し味の方が勝っていて、悲喜こもごもの味わいという点でも「おつな」の味には及ばない。おつな会については、9月に盛大に幕引きパーティーを行うので、今回は、詳しくは書かないが、村長にとっても思い入れの深い会合だった。始まりがあれば終わりがあるとはいえ、引き際は難しい。調布先生流の見事な終わり方だと思う。地球とは思い出ならずや(稲垣足穂)。

           アラスカ① 
           アラスカのビーフカレー(日本プレスセンター)

その後、村長の頭上を通過した32年間という歳月を思いながら、村長は新橋駅方面へと歩いた。ほろ酔いの視界に「豚骨らーめん 博多天神」の看板が入った。突然、世界が変わって、冷やし中華が食べたくなった。立て看板に「具だくさん! 冷し中華400円」の文字。博多長浜スタイルの店で、半分露店、L字型の長いカウンターと小さなテーブルのみ。今どき、冷やし中華400円はあり得ない。

           博多天神② 
           むむむ?
           博多天神① 
           博多天神(東京・新橋)

老舗の高級ビーフカレーの後の400円冷やし中華。これこそがウマズイめんくい村の世界。カウンターに座って、10分ほどで、「冷やし中華」が登場した。作り方は丁寧で、錦糸卵、キュウリの千切り、春雨、湯がいたもやし、紅ショウガ、それにチャーシュー1枚。それに和辛子がどっかと付いていた。下の麺が見えない。「具だくさん!」はウソではなかった。

           博多天神④ 
           冷やし中華である
           博多天神⑤ 
           400円だって?
           博多天神⑥ 
           クロレラ麺の美味

割り箸(冷やし中華はこれでなくっちゃ)で、具の下から麺を取り出すと、麺は緑がかっていた。スタッフに聞いてみると、「クロレラが入ってるんですよ」。平打ち細縮れ麺。つるっとした食感、もちっとした歯ごたえ。しっかりとしたコシ。400円という値段から、ほとんど期待していなかった自分が恥ずかしくなった。意外な美味さ。外見で人を判断するな、値段でラーメンを判断するな、の深い教訓。ただ、酢醤油のタレはゆる甘で、もう少しピリッとしていた方が村長の好みだが。

           博多天神⑦ 
           素直に味わえ
           博多天神⑧ 
           アーユー、固定観念?

キュウリの千切り、錦糸卵、もやし、春雨など具がとても400円とは思えないレベル。チャーシューが1枚なのがやや寂しいが、これ以上望むのはぜい沢というもの。おつな最終会のゲスト講師は32年前の第1回と同じ美術評論家の萬木康博氏だった。絵を見るときの心構えとして「先入観や固定観念を捨てて観ること、子供の心で絵に向き合うこと」を話していた。これが、簡単なようで実に難しい。村長は400円冷やし中華で、萬木氏の話していたことを、なるほどと実感したのだった。


本日の大金言。

世の中は先入観や固定観念でできている。それに気が付くかどうか。勇気も必要になる。そこから第三の道が見えてくるはずだ。






                        博多天神⑨ 





クールジャパン「かき氷界の二つ星」

 関東もついに梅雨明け。毎日、暑い。それは同時に、かき氷の美味い季節でもある。そこで、今回はとっておきの極秘情報をお届けしよう。埼玉・久喜市「モラージュ菖蒲」近くに出現した「雪みるく」というかき氷屋である。今年3月にオープン、吉見の道の駅で評判の店を何故か打ち切って、菖蒲町に移転してきた店だが、「華野果市場(はなやかいちば)」という野菜・果物屋の経営。あっという間に行列店になっていた。

          雪みるく2 
          野菜・果物屋の一角(埼玉・菖蒲町)

日光の天然氷を使っていることと、果物屋ならではの新鮮なフルーツが売りのよう。土日は最低でも1時間待ちを覚悟しなければ、その天然かき氷に到達できない。そこで、村長は、平日の午後2時過ぎ、思い立って、ポンコツ車を飛ばした。すでに駐車場は満杯で、炎天の下10人以上が並んでいた。海の家のような、半露店の店構え。仕方なくモラージュ菖蒲に車を止めて、炎天下、マヌケ顔で並ぶことにした。これでまずかったら、文句言ってやろうっと。

          雪みるく12 
          ひたすら待つ

とにかく待つ時間が長い。ここで人気なのは「生いちごみるく」(700円)と「スペシャルメロン」(700円)。「スペシャルメロン」は大きなタカミメロンの半分をそのまま器として使うという恐るべきもの。「生いちごみるく」はすでに売り切れていて、お客の半分くらいは、「スペシャルメロン」か「生マンゴーミルク」を頼んでいるようだった。その圧倒的なビジュアルに驚かされる。

          雪みるく② 
          かき氷のパラダイス?
          雪みるく③  
          ドヒャー、たまげた
          雪みるく1 
          スペシャルメロン(700円)

へそ曲がりの村長は、財政事情もあって、「本格抹茶あずきみるく」(500円)を頼んだ。番号札を渡されて、ひたすら待つ。テーブルは5つほど、外にも2つほど。40分ほど待ってから、ようやく番号を呼ばれた。手渡されたかき氷は、うむと唸りたくなる代物だった。富士山というよりはエベレストのようなかき氷で、本格的な抹茶ソースが上から雪崩れ込むように滲みこんでいた。練乳の姿も見える。その頂上には白い雲のようにスライスした氷がかかっていた。

                 雪みるく⑤ 
          本格抹茶あずきみるく(500円)

日光・松月氷室の天然氷だそうで、まずはスプーンでひと口。抹茶ソースも小豆も自家製というのが好感。天然氷は実にきめ細かい。ざらざら感とかシャキシャキ感がまったくない。絹のようなフワッとした食感で、お腹に来ない。抹茶ソースのまろやかな苦みが悪くない。小豆は中に入っていて、ふっくらと炊かれた手づくり感あふれる粒あんだった。甘さがかなり控えめで、抹茶氷とともに食べると、本物感がじんわりと伝わってくる。人気が出るのがよくわかる。

          雪みるく⑥ 
          只者ではない
          雪みるく⑦ 
          自家製あずきどす
          雪みるく⑧ 
          舌触りが違う

だが、と村長はあえて言いたい。器とスプーンがプラスチックで、水もない。何より、かき氷のだいご味の一つはガラスの容器とスプーンにもあると思う。中身が美味ければすべてよし、というものではない。そのくらいは投資してほしい。かき氷は風情とともに楽しむものだと思う。粒あんの量も少なくはないが、やや物足りない。それさえクリアすれば、埼玉一、いや日本一のかき氷屋にもなれるかもしれない。いい店だけに、惜しい。


本日の大金言。

今、かき氷が面白い。この庶民の夏の定番が、新たなスイーツに進化しつつある。




                      雪みるく10 

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おからドーナツと珈琲の「まさか」

 上州で独り暮らししているゴッドマザーのお見舞いの帰り、コーヒー好きの村民2号が、「安くていい穴場見つけたのよ。そこで美味いドーナツ食べて、美味いコーヒーを飲むというのはどう?」歌うように言った。こういう時は逆らってはいけない。ポンコツ車をその店がある羽生イオンの駐車場に止めた。

久しぶりの羽生イオン。その1階フロアの目立たない場所に、「常盤珈琲焙煎所」が都会的な、シャレた店構えで、オアシスのように広がっていた。埼玉・大宮に本店があり、この羽生イオン店は2軒目だそう。白を基調にしたオープンなつくりで、「注文を受けてから、生豆を焙煎します」というスタイルが受けて、埼玉のコーヒー好きの間では少しずつ知られてきている。

          常盤焙煎所 
          常盤珈琲焙煎所(埼玉・羽生イオンで)
          常盤珈琲焙煎所①  
          どこを見るか?
          常盤珈琲焙煎所1 
          生豆がズラリ

コーヒーのいい匂いが漂っている。コーヒーの苦手な村長の気配を察したように、村民2号が「ここははらドーナッツとコラボしていて、それが意外に美味いのよ」とささやいた。「はらドーナッツ」は神戸の老舗豆腐屋のおからと豆乳を使ったオーガニックなドーナツが売りで、最近メキメキをと店舗数を増やしている。店の右側がカフェコーナーになっていて、そこで、挽きたて淹れたてのコーヒーとちょっとしたスイーツを楽しめる。

村長は「常盤ブレンド」(240円)と「ホワイトチョコドーナッツ」(1個150円)、村民2号は「「常盤ブレンド」と「はらドーナッツ」(1個120円)を注文した。大きな焙煎機が稼働している。テーブルはウッディーで、価格の安さといい、珈琲豆の本格的な造り方といい、村長はコーヒーの世界にも新しい波が来ていることを感じた。

           常盤珈琲焙煎所⑤ 
           はらドーナッツとコラボ
           常盤珈琲焙煎所 
           安くてリッチなカップル

「はらドーナッツ」のホワイトチョコは、上半分にホワイトチョコがかかっていて、それがおからの風味のドーナツとよく合う。以前京都でも豆腐屋のカフェでおからドーナツを食べたが、やさしい味わいで、アメリカ発のギタギタドーナツも日本人の手にかかると、見事に和の世界になってしまう。過剰な甘さと油感がない。日本人の換骨奪胎の能力は天才的だと改めて実感。
 
          常盤珈琲焙煎所⑥ 
          おからとホワイトチョコのセクシー
          常盤珈琲焙煎所⑦ 
          後ろもセクシー
          常盤珈琲焙煎所⑧ 
          豆腐屋のドーナツ?

「ここのコーヒーは砂糖が要らないのよ。まろやかさが自然で、コーヒー豆の本来の美味さをきちんと引き出している。しかも、この安さ。おからドーナツとここのコーヒーがあれば、あとは何にもいらないわ」
確かに砂糖がなくても飲める。コーヒーの美味さはわからないけど、何と言っても安いのがいい。おからドーナツも気に入った。あとは美女と美味いワインがあれば何にもいらない」
「そういう村長もいらない」
「・・・・・・」


本日の大金言。

できるだけ安くリッチな気分を楽しむ方法は探せばいくらでもある。公園のベンチで空を見上げて、雲に名前を付けていく。あれっ、「瘋癲北欧日記」に書いてあったっけ?






                       常盤珈琲焙煎所3

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東京下町の絶妙いなり寿司

 「あーた、ご存じ? BSで北千住の居酒屋を取り上げますよ。北千住通を自認する村長なら、ほとんど行った店でしょうが、ま、ご参考までに。ヒッヒッヒ」
京都の調布先生から突然、糸電話がかかってきた。いつもながら、愛情あふれる情報に、村長は地団駄を踏んだ。もし知らなかったら、穴に入るしかない。村長は覚悟を決めて、その番組を見た。

3軒紹介していたが、そのうちの2軒は知らなかった。1軒は高ビーな店で、どうでもよかったが、もう一つの1軒が気になった。居酒屋ではなく「いなり寿司屋」だったが、村長の琴線に触れる店だった。グヤジイ。江戸での野暮用の帰りに思い立って、そのいなり寿司屋「松むら」に行くことにした

           北千住大和湯 
           銭湯の下町

東口から13~4分ほど歩くと、昔ながらの小さな商店街・柳原商店街がある。銭湯「大和湯」の前を通り抜けると、いかにも下町の風情の庶民的な店構えで、「稲荷寿し 松むら」の暖簾が見えた。ガラガラっと引戸を開けると、京都の下町にも通じるような小ざっぱりとした板場で、眼光鋭い白衣の大将と女将さん、それにきれいな娘さん(?)がいなりとのり巻きの作業中だった。

          松むら① 
          めっけ!
          松むら⑤ 
          シンプルなメニュー

ここは持ち帰り専門で、小さなテーブルが一つあるが、店内で食べるシステムではないようだ。村長は壁に張られたメニューから「まじり」(いなり4個とのり巻き5個 630円)を頼むことにした。注文してから大将が見事な手つきで作り始めた。待ってる間、娘さんが冷たいお茶を入れてくれた。外連味や飾りのない下町の応対に村長の汚れちまった心が洗われる。大将は南千住の本店で修業したのちに、この場所で暖簾を下げたそう。以来50年。地元では知る人ぞ知る店になっている。

          松むら③ 
          大将のワザ

ウマズイめんくい村に持ち帰って、缶ビールで賞味することにした。いなりは見るからに東京のいなりで、1個が大きめ。ふっくらと色濃く煮締めたお揚げにケシの実がぱらぱら。その牢名主のような存在感。「おいトウヘンボクめ、ちゃん喰えよ」と言われたような気がしたほど。がぶっとひと口かじると、手作り感にあふれた甘辛が中のふっくら炊かれた酢飯と絶妙なバランスで口内に広がってきた。具は何も入っていない、まさに東京の稲荷ずし。

          松むら1 
          東京・下町のおいなりさん!
          松むら3 
          ふっくら感と煮締めた手づくり感
          松むら4 
          酢飯との絶妙
          松むら5 
          ガブッと行っておくんなさい

スーパーのお稲荷さんとは全然違うわ。味は濃いけど、その濃さがやさしい。おいしいわ。のり巻きもかんぴょうの柔らかさと美味さがひと味違う」
「確かに。いなりはかなり甘いけど、その甘辛が五臓六腑に滲みてくるような美味さだな。大将と雑談したけど、すべて手づくりで、かんぴょうは栃木の最高のものを使ってるって言ってたよ。そのさり気なさがいい。本物がここにいるって感じ」
「まがい物にダマされやすい村長もたまにはいいものを見つけるのね」
「・・・・・・」


本日の大金言。

関東の稲荷ずしは米俵の形、関西は三角形。味も見た目も違うのに、本物はどこか奥深くどこか懐かしい。



                    松むら6 

「一子相伝」氷あずきの微妙

 蔵の街・栃木市に足を伸ばすことにした。ここにある甘味屋「冨士屋」は、村長のお気に入り。以前、「小倉ソフト」(330円)を賞味して、その小倉あんとソフトクリームのあまりの美味さに仰天、栃木味覚文化を見直すきっかけとなった店。ここは今川焼き(志”まんやきと称している)も絶品だが、夏のこの時期は、小倉ソフトに限る。ここで、村長は「氷あずき ソフト付」を目ざとく見つけた。

          冨士屋①  
          「冨士屋」の店構え(栃木市)
          冨士屋② 
          これに決めた!

ここは何と言っても「あんこ」の美味さが際立っている。昭和17年創業で、現在の当主は二代目。北海道十勝産の小豆をじっくり炊いているが、その粒あんの作り方は一子相伝で、「当主以外には立ち入ることさえできない」か。砂糖はザラメを使っているようだ。「北斗の拳」のような一子相伝のあんこづくり。その秘伝は三代目に引き継がれる。

と前置きしたところで、今回は初めて「氷あずき ソフト付」(360円)を頼んだ。店内にも小さなテーブルと椅子があるが、外の縁台で食べることにした。この店の評判は富に高まっているようで、観光客や地元の常連客で賑わっている。5分ほどでお盆に乗っかった「氷あずき ソフト付」がやってきた。ドヒャー。

          冨士屋⑤ 
          何という風情

透明なガラスの容器に「氷あずき」が鎮座し、その上には、見事な色の粒あんが乗っかり、さらにその上にソフトクリームがそびえていた。ここのソフトクリームにはこしあんが入っていて、そのベージュがかった色合いはマーベラスである。かき氷と粒あんとこしあんソフトクリーム。問題はそのバランス。「小倉ソフト」がほとんど完ぺきなだけに、村長は、慎重にスプーンを入れていく。

まずはソフトをひと口。こしあんの風味がかすかに漂い、村長は、うむむと頷く。次に見事な粒あんへ。ふっくら感といい色合いといい、これだけの粒あんはそうザラにはないと思う。ふくよかな甘さが冷たい美味となり、村長の口内に広がる。うむむうむむ、と頷くしかない。続いて、ソフトと小倉とかき氷と自由に組み合わせてみる。「うむむうむむ」が「あれれ」に変わっていった。小倉ソフトほどの感動の波が来ない。

          冨士屋⑧ 
          こしあん入りソフトクリーム
          冨士屋⑦ 
          粒あんの魔力

その理由はすぐにわかった。かき氷の目が粗すぎることと、この三者の相性がそもそもあまりよくないのではないか。粒あんとソフトは相思相愛の関係だが、そこにかき氷が入ると、冷たい三角関係になってしまう。三すくみの状態。そういうことではないだろうか。

          冨士屋⑨ 
          三角関係?

粒あんの量が小倉ソフトよりやや少ない。この比率を変えれば、未来は明るくなるはずだ。そこで、あんこ大好き村長の提案だが、メニューに「氷あずき ソフト付 粒あん特盛」を加えてほしい。400円にしても村長は納得する。粒あんを正妻にすることによって、微妙な三角関係も納まりがよくなり、蜜月関係も少しは復活するはずだ。一子相伝のワザもさらに光り輝くと思うのだが・・・。


本日の大金言。

主役と脇役の関係はバランスを間違えると、たちどころにその世界は崩壊する。それ故に作り手は細心の注意を払う必要がある。






                       冨士屋11

そばの隠れ里の「限定30食」

 3連休の中日は、久しぶりの晴れ間。その前日、豪雨で流れるとばかり思っていた東京・足立の花火大会を見逃してしまった村長は、頭を切り替えて、「そばの里 永野」へとポンコツ車を飛ばすことにした。東北道を北上、栃木インターで降りて、さらに30分ほど走ると、そば好きの間では評価の高い、鹿沼市粟野地区「そばの里 永野」がある。地元の農家が共同で営むそば屋で、とにかく安くて美味い。土日しか営業しない、というのも希少価値を高めている。

           そばの里① 
           関東の穴場だんべ(「そばの里 永野」)
           そばの里③ 
           地粉そばと見事なワザ

村長は折に触れてここに来る。今回は花のお江戸で奮戦中の村民3号キオも一緒。ちょうど正午に到着すると、土の駐車場はほとんど埋まっていた。村民2号が気を利かせて、順番待ちの紙に名前を記入する。17~8分で、名前を呼ばれた。いつもは座敷席だが、今回は初めてテーブル席。村長は、限定30食の新しいメニュー「そばの里セット」(900円)を頼んでみることにした。もりそば、野菜天ぷら、刺身こんにゃく、しゃくしな漬け、そばゼリーというラインアップ。村民2号とキオは「もりそば」(450円)と「野菜天ぷら」(3品220円)を頼んだ。

          そばの里11 
          うーむ、これにしよう
          そばの里② 
          この安さは希少

「消費税増税で少し値上げしたわね。それでもまだ安いからうれしいわ」
と目敏い村民2号。
10分ほど待たされて、「そばの里セット」が順番にやってきた。まずは刺身こんにゃくと漬け物。続いて、もりそばが登場。刺身こんにゃくは薄い刺身こんにゃくが3枚。見るからに貧弱で期待が大きかった分、少々がっかり。味噌ダレも付いていない。「醤油かそばつゆでお召し上がりください」とのお返事。うーむ。

          sobanosato.jpg 
          ドヒャー、の登場
          そばの里④ 
          挽き立て、打ち立て、茹で立て
          そばの里12 
          そばの醍醐味

もりそばは二八の挽きくるみで、グレーがかった、手打ち感にあふれるそばで、風味といい、コシといい、相変わらず美味。つなぎに山芋を使っているという人もいるが、実際は卵白を使っている。そばつゆは出汁とかえしのバランスがよく、甘すぎず辛すぎず。
「太さがバラバラなのがいかにも手打ちって感じ。天ぷらも揚げ立てで、美味いわね」
とキオ。
村民2号も「これこれ、私はここのそばが大好き。値段が安いのも大好き」と相槌を打っている。

          そばの里⑥ 
          野菜天3種盛り
          そばの里⑦ 
          そばゼリーは美味

だが、しかし。村長は「そばの里セット」に900円を払うことに少々後悔した。天ぷらが来るのが遅すぎたし、時間がたつとややベチャッとしたのも気になった。人気と多忙にかまけて、全体的に雑になっている印象。そば自体と、そばゼリーはマルだったが、「限定30食」につられた感じ。村民2号とキオの方が正解で、2人の満足そうな表情を見ながら、村長は、ここに職人意識を求める方が間違っている、そう思い直すのだった。


本日の大金言。

栃木路はそばの名所。美味い店も数多くある。温泉も多い。細かいことを考えるより、目の前の人生を楽しめ。




                     そばの里10 


農協食堂の「熟成梨入りカレー」

 「リンゴが入ったカレーは聞いたことがあるけど、梨入りのカレーなんて聞いたことある?」
村民2号が首をかしげながら、農作業中の村長の下にやってきた。
「それがどうした?」
「すごい人気らしいのよ。一体どんな味かしら。一度行ってみない?」

           農協食堂① 
           到着!

ちょうど昼飯時。その1時間後、ウマズイめんくい村の青いポンコツ車が、埼玉・久喜市菖蒲にある「農協食堂」の駐車場に止まっていた。梨入りのカレーをメニューにしているJA南彩が営んでいる食堂だった。平日だというのに広い食堂には客がドドドと入っていた。手打ちそばや手打ちうどんが目玉のようで、お客の多くは麺類を注文しているようだった。

           農協食堂③ 
           社員食堂?
           農協食堂② 
           ホントにあったよ

だが、よく見ると、カレーライスを食べている人も多い。村長は目的の「熟成梨入りカレーライス」(580円)を注文した。村民2号も「ホントにあるのね」と同じものを注文した。巨大な社員食堂のよう。厨房ではおばさんスタッフが10人ほど、忙しく働いていた。マイクで次々と番号が呼ばれ、セルフで取りに行くシステム。5分ほどで、村長の番号が呼ばれた。

見た目はフツーの田舎のカレーで、そこからいい匂いが立ち上っていた。ルーもライスもかなりのボリューム。キャベツのサラダとらっきょう・福神漬けが付いていた。
「梨がゴロッと入っているのかと思ったら、じゃがいもとニンジン、タマネギ。豚肉もそれなりにある。どこに梨が入っているのかしら」
村民2号が怪訝な表情で、カレーを口に運んでいる。

           農協食堂⑥ 
           ついに登場

村長もまずはひと口。濃厚なルーで、最初のインパクトは酸味の濃さ。スパイシーというよりも基本的には素朴なおばさんカレーで、村長の好きな味ではある。この酸味が梨の存在を匂わせている。ご飯は多分、彩のかがやき。さすが農協というふっくらとした炊き上がりで、梨入りカレーとのバランスは悪くない。

           農協食堂⑤ 
           素朴な田舎カレー
           農協食堂10 
           豚肉もあるでよ~
           農協食堂11  
           梨はいずこに?

気になって、店のスタッフに「熟成梨入り」の謎を聞いてみた。
「すり下ろした梨を加えているんですよ。菖蒲は梨の産地で、いい梨が採れるんです。それをカレーに入れられないかと随分研究したんです。リンゴの入ったカレーはあるけど、梨の入ったカレーなんてないでしょ?最初は角切りにして入れたり、いろいろやってみて、たどり着いたのがすり下ろしてピューレにして加えるという今の形です」。

           農協食堂13 
                             100円の美味

「カレーに梨を入れるという発想がすごいわね。他では絶対真似しないと思うわ」
腹九分の満足。村長は口直しに、「青菜のごま和え」(100円)を頼んだ。これが意外に美味だった。


本日の大金言。

カレーライスの世界も広い。桃入りやぶどう入り、キウイ入りなどもイケるかも。果物カレーシリーズなんて受けるかもしれない。








                          農協食堂12 





これが立ち食い?驚きの十割そば

 久しぶりに東京・神田神保町へ。S出版社のグルメ親父とお茶で四方山話。「この近くに立ち食いそばで凄い店ができたんだよ。石臼挽きで十割そば。嘘みたいな店だよ。昼間は凄い行列だけど、時間をずらすと大丈夫。村長もいっぺん覗いてみたらいいよ」とのたまった。

古本屋を回って、その足で、グルメ親父が教えてくれた「蕎麦・冷麦 嵯峨谷(さがたに)」を覗いてみることにした。午後3時を回っていた。田舎家づくりのいかにもという店構えで、入り口でメニューを見ると、「もりそば」(280円)、「天ぷらそば」(380円)などなど立ち食いそばの値段。しかもすべて「十割そば」と書いてあった。誇大広告ではないか? 

           嵯峨谷 
           十割そばってホント?(神田・神保町)
            嵯峨谷③ 
           立ち食い価格

中に入ると、右手に「石臼」の機械が置いてあり、長い木のカウンターが伸びていた。左手にはテーブル席。その奥が厨房。古民家にでも入ったよう。BGMは津軽三味線が流れていた。村長は、メニューの中から「名物あじねぎ天そば」(400円)の冷たい方を選んだ。調べてみると、この店は都内に数店あり、「炭火焼干物食堂 越後屋」が経営するそば屋だった。業界で注目の店であることもわかった。

           嵯峨谷① 
           名物あじねぎ天そば(冷)

5~6分で呼ばれて、「名物あじねぎ天そば」を取りに行く。焦げ茶の陶器の器に、平打ちの太麺の姿が見え、その上に大きめの鯵と葱の天ぷらが乗っかっていた。そばの色は茶グレーで、十割そばというのもあながちウソとも思えない。千切りしたナルト、みずみずしい刻みネギ。テーブルにはワカメが入った小さな壷が置いてある。箸もプラスティックではなく、木の箸だった。すべてがあきれるほど「立ち食いのレベル」を超えていた。

           嵯峨谷⑥ 
           ワカメはサービス

問題は味。村長は気合を入れて、そばを口に運んだ。コシが意外に強く、ほどよい風味が口中に広がった。ツユは昆布とかつおの出汁がよく効いている。甘辛具合もバランスがいい。あじねぎ天は揚げ置きだが、からりと揚げられている。鯵はすり身のようで、姿は見えないが、鯵の存在がわかる。葱の風味もちゃんとある。しっかり塩で下味が付いていて、村長は、むむむと唸るしかない。

           嵯峨谷⑦ 
          十割だぞ~
          嵯峨谷⑧ 
          立ち食いレベルではない
          嵯峨谷9 
          あじねぎ天

店のスタッフに、「ホントに十割?」と聞いてみた。「よく聞かれます。本当に十割です。入り口にある機械の石臼で挽いているんですよ。そばは、まあ中国産のものですけど」と率直に教えてくれた。ついでに「そばは手打ち?」と畳み掛けると、「そばは普通は切るんですけど、うちは特注の押し出し式の機械で作っているんですよ。そこもスゴイところです」。

ボリュームもフツーにある。立ち食いそばの進化がついにここまできたことを村長は思い知らされた。同時に、昔ながらの手打ちそば屋の今後が気にかかった。村長は二極化の中で、むろん手打ち職人のそばを愛するが。


本日の大金言。

バーチャルとリアルの戦い。バーチャルの恐るべき進化のスピードに、リアルの足元がどんどん狭まっている。





                     嵯峨谷10

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不思議なパン屋の生真面目なかき氷

 埼玉・行田で「昔ながらのナポリタン」を賞味したウマズイめんくい村の怪しい一行は、かき氷の店を探して再び街中をウロウロした。村民2号は「美味いパン屋」も探している。ふと、古民家の前で村民2号が立ち止った。村長も立ち止まった。
「本町のパン屋 翠玉堂(すいぎょくどう)」と控えめな店名。入り口のガラス戸に、手書きの墨文字で「エアコンあんまり効いてないよ」「ややかき氷始めました」などと書いた張り紙。うーむ。村長は、ガラガラと引戸を開けることにした。

           翠玉堂② 
           これがパン屋?(埼玉・行田)
           翠玉堂③ 
           ややかき氷始めました・・・ン?

不思議なパン屋で、店内はそれほど広くない。右手には天然酵母を使った旨そうなパンが十数種類くらい並んでいた。奥が一段高くなっていて、4人ほど座れる大きめのテーブル、すぐ左手には皮張りのレトロなソファが二つ。右手奥がちょとした厨房になっていて、ピンクのTシャツに黒いハンチングをかぶった吉本の芸人みたいな店主が一人。かき氷機をシャカシャカ回して、かき氷を作っているところだった。店主がかなりユニークな人物であることがすぐに見て取れた。

          翠玉堂④  
          不思議なパン屋
          翠玉堂17 
          ユニークなメニュー

村長は「かき氷」を頼むことにした。いちご、焼きとうもろこし、もも、トマト、ピクルス、カレー・・・まともなのはいちごやももくらいで、ピクルスのかき氷とかカレーのかき氷って一体どんな味がするのか、好奇心が刺激されたが、ここはまずは定番の「いちご」(小200円)を頼むことにした。それにミルク(プラス50円)を付ける。隣りの子連れ客が食べていたのがいちごミルクで、それが美味そうだったからでもある。
 
          翠玉堂⑧ 
          いちご+ミルク

透明なガラスの容器に山盛りにされたいちごミルクのかき氷。ともすれば冗談みたいな店の雰囲気だが、それは見事なかき氷だった。氷はきめ細かく、たっぷりとかかったいちごソースとその上から練乳が夢のように雪崩落ちていた。スプーンですくって口に運ぶと、いちごの粒つぶ感と甘い酸味がとてもいい。冷たい美味。小でこれだけのボリュームで、しかも250円という価格設定に軽く感動を覚えた。

          翠玉堂11 
          むむむ
          翠玉堂12 
          あーん

この店主、何者? 「このいちごソースは自家製?」「はい、ボクが作ってます」「氷は天然?」「そんなものは使っておりません」生真面目なシャイが言葉の端々からにじみ出る。客が次々に入ってくるので、話を聞く暇もない。帰りに南部小麦と天然酵母で作っているという「食パン」(400円)を買った。「パンもボクが作ってます」。その晩、賞味したら、かなりのレベルのパンだった。辛口の村民2号が、珍しく「人もパン屋も見かけによらないわね」と星三つの感想を漏らした。

          翠玉堂15 
          只者でない食パン
          翠玉堂  
          天然酵母と南部小麦


本日の大金言。

ユーモアとギャグは紙一重。基本がしっかりしている店のユーモアは、格別の味わいが加味される。



                     翠玉堂14

古代蓮と元料理屋のナポリタン

今、古代蓮がきれいらしいわよ。たまには古代の花を見て、ぐじゃぐじゃの頭の中をきれいにしたら?」
村民2号が提案した。そう言えば、最近、頭の中に土石流がたまっている。
ポンコツ車をプカプカ飛ばして、埼玉・行田市の「古代蓮」を見に行くことにした。近くには「さきたま古墳群」や「のぼうの城」でも有名になった忍城がある。村長の頭の中には、すでに古代蓮→美味いランチ→かき氷の方程式が出来あがっていた。むふむふ。

           古代蓮③ 
           ゆく川の流れは絶えずして(埼玉・行田)

古代蓮は縄文時代の蓮で、工事中にたまたま発見された蓮の種が掘削地の池で「太古の眠りから目覚めるように」開花したもの。今では10万株以上も咲いている。今年はいつもより早い時間に行ったためか、ピンク色の古代蓮の花弁がきれいだった。だが、頭の中の土石流は取れない。

正午近くに行田市内を、特に裏通りを歩き回ってみた。ここもダメ、あそこもダメ、9000歩ほど歩いて腹の虫がわめき始めたあたりで、「CAFE茶馬古道(ちゃばこどう)」という京都の町家のような古い建物が視界に入った。いい店構え。村民2号が「ここにしましょ」。観光地によくあるしゃれた今どきのCAFEの匂いもする。玄関の屋根に猫のオブジェ。それが気に入ったので、村民2号の後に続いた。

           茶葉古道③ 
           目立たぬ場所に
           茶葉古道① 
           屋根の猫と入り口

店内はアート感覚にあふれ、モダンジャズが流れていた。京都にお住いのへそ曲がりグルメ仙人なら、「あきまへん」と出て行ってしまいそうな造り。村長はメニューの中から「昔ながらのナポリタンセット」(フレッシュサラダ、飲み物付き 900円)を選んだ。飲み物は紅茶にした。村民2号も同じもので、マイルドコーヒーを選んだ。客は他に一組しかいない。

           茶葉古道④ 
           今どき?それとも
           茶馬古道 
           未来の選択

店主は女性で、一人で切り盛りしていた。10分ほどでコンソメスープがやってきた。やさしい味でこれが意外に旨かった。うむ、と村長がつぶやく。「いい味ね」と村民2号。続いてやってきたサラダも地場の野菜を使っているそうで、鮮度の良さがすぐにわかった。メーンの「昔ながらのナポリタン」はかなりのボリュームで、アルデンテの細いパスタ、甘めのトマトソース、それに薄切りのロースハム、タマネギ、ピーマンがほどよく絡んでいる。トマトスースは自家製で、確かに昔ながらのいい雰囲気を出していた。

           茶葉古道⑤  
           結構なボリューム
           茶葉古道⑦ 
           サラダに感心
           茶葉古道⑥  
           昔ながらに粉チーズ

女性店主と雑談。店をオープンしたのは2012年3月だそう。建物のことを聞くと、実家が営んでいた料理屋を改装したものだという。ご主人が彫刻家で、屋根の上の猫や店内のオブジェも作品の一つだそう。マティスや久里洋二の作品も置いてあった。まがい物ではなく本物がさり気なく置いてある。「茶馬古道」という店名は唐の時代からあった中国とチベットの交易路が気に入って付けたそう。

           茶葉古道⑧  
           手抜きがない

「コーヒーも本物よ。この内容で900円は高いとは言えない。意外な発見と言えるかな。古代蓮よりこっちの方がいいわ。」
パスタ、コーヒー、マティス・・・すべて村民2号の好みだった。だが、村長の頭の中の土石流はまだ取れない・・・。


本日の大金言。

古代と現代をつなぐ糸があるとしたら、バックボーンがあるかないかだと思う。古代蓮も種子がなかったら咲くはずがない。





                      茶葉古道11 


冷たい美味、初夏の「さくら饅頭」

 今回は村長の取って置きの和菓子をお届けしよう。不思議な和菓子屋の存在を知ったのは、桜の名所、埼玉・幸手「権現堂」の桜祭りでだった。7年ほど前のこと。地場の日本酒や物産の出店の中に、「さくら饅頭」(6個入り)を見つけた。シンプルな包装が村長のセンサーにビビビと来た。これが実に美味だった。「和菓子の早稲田屋」というクレヨンで書いたようなロゴもよかった。

           早稲田屋 
           和菓子屋というより工場? (埼玉・幸手市)

以来、折に触れて幸手市内にある「早稲田屋」に足を運んだ。店というより下町の工場のような店構え。お世辞にもきれいとは言えない。ここ数年はご無沙汰だったので、久しぶりに覗いてみた。ここは北条食品という業務用のあんこ製造所で、ささやかに「早稲田屋」という名前で和菓子も作り、ささやかに販売しているというユニークな形態を取っている。冬はたい焼きも売っている。

           早稲田屋② 
           うーむという店内

当主は二代目で、「和菓子の早稲田屋」でホームページを作っていて、あんこ作りの過程を動画でも公開している。驚くべき動画で、本来秘伝のはずの職人技をここまで公開しているのは、村長の知るところ「早稲田屋」だけである。あんこ好きには堪えられない動画だ。村長が訪ねたときもちょうど二代目が一人で動画の作成中で、これが商売とどういう関係があるのかわからないが、かなりユニークな考え方の持ち主であることがわかる。街の発明家のような雰囲気も村長の好みではある。

ここの小豆羊羹と白小豆羊羹が絶品で、それも買おうかと思ったが、「いまは黒糖羊羹しか作ってない」というお返事。「いい羊羹でも地味だと売れないんですよ」とか。村長は「それは残念。黒糖羊羹はノーサンキューだなあ」と悲しく首を振るばかりだった。で、本命の「さくら饅頭」(6個入り 税込800円)を買い求めた。「冷蔵庫に入れると1週間は大丈夫です。冷やしても美味いですよ」と二代目。

          早稲田屋① 
          志と夢
          早稲田屋② 
          冷蔵庫に入れると・・・

ウ マズイめんくい村に持ち帰って、冷蔵庫で冷やして、賞味することにした。包装を取って、白い紙箱を開けると、「さくら饅頭」が現れた。見るからにもっちりした白い皮、その頂上にきれいに塩漬けした桜の花びらが乗っかっている。ひんやりした饅頭の手触り感が心地よい。それを二つに割ると、桜の香りとともに見事な白あん、それも薄紅色の桜あんがどっかと現れた。塩漬けされた桜の葉が点々と混じっていた。ほとんどが白あんで、雪のような半透明の白い皮は羽衣のように薄い。

          早稲田屋③  
          職人技
          さくら饅頭  
          もそっと近う・・・
          早稲田屋⑨ 
          どないどす?
          早稲田屋⑥  
          初夏の隠れた美味

口中に含むと、白インゲン豆の風味と桜の風味がフワリと立ち上がってきた。塩加減が絶妙に効いている。相変わらずの美味。手抜きはない。砂糖はザラメを使っていて、「やっぱりザラメが一番だと思う」と二代目。皮はもちっとしていて、ふわふわしていない。それがこの桜あんによく合う。「実は米粉を加えているんですよ」と二代目。「ここまでの味を作るのに随分試行錯誤したんですよ」とも。冷たい「さくら饅頭」を味わいながら、村長は、不思議な発明家のような二代目がどこへ向かっているのか気になった。


本日の大金言。

和菓子の世界に辺境があるとすれば、早稲田屋はその最北端かもしれない。辺境から新しい世界が生まれる可能性だってあるはずだ。



                     早稲田屋① 

ついに潜入、行列のお化けうどん屋

 ゴッドマザーの快気祝いを兼ねて、群馬県桐生市相生町にある「めん処 ふる川 暮れ六つ」に行くことにした。桐生にはうどんの美味い店が多い。ここはこれまで二度入ろうとしたが、あまりの行列に断念した店である。今回は平日、それも正午30分前に乗り込むことにした。これで入れなかったら、もう二度と来ないぞという気持ちで乗り込んだ。

           ふる川③ 
           正午前でこの待ち人

それでも駐車場は一杯で、入るまでに15分ほど待たされた。店内はかなり広く、右手が板の間の座敷になっていて、左手がテーブル席。中央が通り道になっていた。ウマズイめんくい村の怪しい一行は左手のテーブル席に案内された。奥が板場になっているようで、外からは見えないが、数人の料理人がいるようだ。

           ふる川④ 
           うどんは待つためにある?
           ふる川⑤ 
           3種の仁義
           ふる川⑥ 
           ひもかわだっぺ

ここの名物は幅広うどん「ひもかわ」。むろん普通のうどんもある。村長は「肉なすつけ汁」で「ひもかわ」(税込920円)を頼んだ。村民2号は「なすつけ汁」で普通の「うどん」を選んだ。ゴッドマザーは「しめじつけ汁」で「そば」を頼んだ。温と冷えらべるが、全員「温かいつけ汁」を選んだ。だが、なかなか来ない。村民2号が「イライラしてきた」と文句、ゴッドマザーは「ここで昼寝したくなってきた」とボヤく。

結局、30分以上待たされて、順番に料理がやってきた。「肉なすつけ汁 ひもかわ」は村長の想像の範囲を超えていた。怒りが吹き飛ぶほどの衝撃。村長はこれまで埼玉・鴻巣「馬力屋」の川幅うどんや同じ桐生市の老舗「藤屋本店」のひもかわなど、驚嘆の幅広うどんを賞味しているが、こと幅広さという意味では、ここが一番。ゆうに10センチはあろうかという幅の、一反もめんのようなうどんがきれいに畳まれて、皿の上に鎮座していた。なんだ、こりゃ?

           ふる川1 
           なんだこりゃ?
           ふる川11 
           想像を超えていた

どうやってかようなものを茹で上げているのか、普通の茹で方で茹でているとは思えない。それを何とか箸ですくってみる。まるでワンタンか湯葉のようなのに、切れそうで切れない。せいぜい1ミリほどの薄さ。それが数えてみたら8枚!つるっとした食感で、想像していた大味ではない。意外な風味と美味。

温かいつけ汁は大きなドンブリにたっぷり入っていて、大きめの豚バラ肉となすがごろごろ浮かんでいた。脂がキラキラ浮いている。合い間に長ネギも見える。かなり濃い目の関東の甘辛味で、一反もめんのようなひもかわを何とかつけて口中に運ぶ。意外やつけ汁の濃さが冷たいお化けひもかわと絶妙に合う。口まで運ぶ工程のややこしさを一瞬だけ忘れる旨さ。すっかり食べ終えると、腹が5センチほど膨らんだ気がした。

          ふる川⑨ 
          肉なすつけ汁
          ふる川13 
          お化けだぞ~

「うどんはまあ普通かな。うどん屋でこんなに待たされたのは初めて。私もひもかわにすればよかったわ」
「アタシもだよ。そばはこんなに待たされてまで食べたいとは思わないよ。アタシの快気祝いなのに、村長が一番おいしいところを持ってったよ。待ち疲れで、また病気になりそうだよ」
「・・・・・」


本日の大金言。

待たされてまずかったら、腹が立つ。待たされても美味かったら、顔が立つ。待つ間に人はさまざまな妄想を抱く。









                       ふる川14 


嵐の前の爆裂アイスクリーム

昨日は嵐の前の静けさ。久しぶりの暑さで、急にアイスクリームを食べたくたった。テレビが超大型台風8号の情報を伝える中、「コールドストーン」のアイスクリームを食べに東北道を走り、佐野プレミアムアウトレットへとポンコツ車を飛ばした。平日なのでここの「コールドストーン」は狙い目。土日は行列でとても並ぶ気がしない。

           コールドストーン 
           ゲットラッキーか?

午後2時に到着。思った通り、意外に空いていた。アリゾナ生まれの「コールドストーン」が日本に上陸したのは2005年11月。六本木ヒルズで大人気となり、以来、可愛い女性スタッフが歌を歌いながら、マイナス9度の御影石の上でアイスクリームとトッピングを練り込むパフォーマンスとともにあっという間に日本列島を席巻した。その威力は大型台風並み?

           ゴールドストーン 
           このパフォーマンスで半分満足
           コールドストーン④ 
           マッドに行け!

ナッツ好きの村長はダントツ一番高カロリーの「ホワイトマッドパイモジョ」を選んだ。サイズは一番小さい「ライクイット」(500円)。それでも427キロカロリーもある。カップにしてもらったが、サーティワンなどと比べても安くはない。小鳥のようなスタッフが歌いながら冷たい御影石の上でアイスクリームを混ぜる姿はポエムである。500円の半分を食べた気分になってしまう。ちなみに「モジョ」とは誘惑という意味らしい。 

外のパラソルのテーブル席で食べることにした。「ホワイトマッドパイモジョ」は店の説明によると、「フレンチバニラアイスクリームにオレオクッキー、アーモンド、ピーナッツバター、ホイップクリーム、チョコファッジをミックスしたもの」。カロリーが一番高いのも頷ける。

           コールドストーン⑨ 
           狙い目の時間

だが、熱さのせいか、それともマイナス9度が少しぬるくなっているのか、カップの中のアイスクリームは少し溶けかかっていた。以前、東京・青山で食べた時はもっとシャキッとしていたように思うが、気のせいかもしれない。スプーンですくって口に運ぶと、アーモンドとピーナッツクリームとチョコ、それにオレオのビスケット食感がアイスクリームと混然一体となって口中に広がった。甘美を超えた爆発的な濃厚。複層的な甘さ。ヨーグルトのような甘酸っぱい酸味もある。

           コールドストーン③ 
           この爆発的誘惑・・・
           コールドストーン⑦ 
           もっとお側に
           コールドストーン10   
           あーん

美味いには美味いが、このアクの強さは村長でも戸惑ってしまう。あらゆるものが過剰で、変な例えだが、レディ・ガガを賞味しているような気分。村長は次第に頭がクラクラしてきた。ここはどこ? 私は誰? それでもスイーツ好きのサガ、427キロカロリーをあっという間に腹に収めてしまった。サーティワンのナッツトゥユーが懐かしい。これが日本の若者をトリコにしているかと思うと、これはひょっとしてアメリカによる日本骨抜き工作の高等戦術の一つではないか? そんな妄想まで起きてくるのだった。ちなみに村長はレディ・ガガの大ファンでもある。


本日の大金言。

ハーゲンダッツもアメリカ発。世界を席巻する人気のアイスクリームチェーンはアメリカの独壇場だが、「コールドストーン」の日本での運営会社は築地銀だこ。何やら集団的自衛権のスイーツ版のよう。




                     コールドストーン11

宗谷岬の名物ホタテラーメン

 「北海道の最北端にある有名なラーメン屋がなぜか埼玉の久喜にあるそうです。 ホタテラーメンの店で、私は昔、宗谷岬で食べたのですが、大変旨かったことを覚えています。稚内に1軒しかないはずなのに、どうして久喜にあるのかわかりません。村長ならその謎を解いてくれることと思います」
ラーメンシンジケートの知人からそんな挑発的なメールが入った。

調べてみたら、「間宮堂」という稚内市宗谷岬の名物ラーメン屋で、オホーツク海で採れたホタテ(帆立)を使ったラーメンやカレーライスが美味という一部ラーメン好きの間では知られた店だった。それが、埼玉の果て、久喜市青葉台に暖簾を下げていることがわかった。村長はポンコツ車を飛ばすことにした。

          間宮堂① 
          謎の本州初出店(埼玉・久喜市)

青葉台団地近くで「宗谷岬 間宮堂」の看板を見つけ、「元祖帆立ラーメン」の提灯が下がった店に入った。8席ほどのL字のカウンターとテーブル席が三つほど。カウンターの奥が厨房になっていて、男性スタッフが3人。村長は券売機で定番の「元祖帆立ラーメン」(塩780円)を選んだ。「ホタテ丼」(780円)にも惹かれたが、ここは我慢。

           間宮堂③ 
           これこれ

10分ほどで湯気とともに「ホタテラーメン」がやってきた。黄金色の半透明スープに大きなホタテが丸ごと1個、「よく来てくれたなあ」と浮かんでいた。それにスープを吸った乾燥麩、ナルト、メンマ、刻みネギ。その下に細麺が揺蕩っていた。ホタテが白いので、ビジュアル的にはメリハリに欠けるが、じっと見ているとオホーツクの世界が広がってくるようだった。

           間宮堂④ 
           稚内の味そのまま
           間宮堂⑥  
           ホタテの存在感

まずはレンゲでスープをひとすくい。ホタテの出汁がじゅわり。美味と言うほかはない。乾燥麩の存在がスープによほどの自信があることを裏付けている。麺はストレート細麺で、コシもそれなりにある。何よりも丸ごと1個のホタテが圧倒的。貝柱の甘み、内臓の旨味。スタッフに聞くと、「稚内から空輸したホタテで、本店と同じものを使っています。スーパーのホタテとはひと味違うと思います」とか。

あっという間に食べ終える。スープは完飲み。メンマもシャキッとしたいいメンマで、気に入った。だが、細麺が村長の好みとは少々違った。「麵は賞味期限の問題で本店に近いものを近くの製麺所で作ってもらってます」ということだが、縮れとコシの強い方が合うのではないか。

          間宮堂⑧  
          ストレート細麺
          間宮堂13 
          貝柱の旨味
          間宮堂12 
          出汁の浸みこんだ麩

最後に最初の疑問をぶつけてみた。
「どうして、宗谷岬に1軒しかない間宮堂が埼玉の、しかも久喜にあるんですか?」
「支店を出すとしたら、東京というのがフツーかもしれませんが、元々、久喜に地縁があったんですよ。で、稚内の本店で修業して、暖簾分けのオーケーをもらってから、去年の8月にここでオープンしたんです」
「稚内の本店と同じ味?」
「ほとんど同じ味です。ホタテが同じものですから。チャーシューを使うよりもコストが高いのが悩みですが、頑張りますよ。今度はホタテカレーやホタテ丼をぜひ食べてください」
謎が氷解した。結果をシンジケートの知人にメールしなければならない。


本日の大金言。

チャーシュー全盛の時代に、オホーツク海のホタテが埼玉でラーメンになる。これもラーメンドリームではある。


                      間宮堂14

昭和レトロな「野菜スープカレー」

グランドパレスホテルで行われた 友人の経済ジャーナリストを忍ぶ会に出席した後、ぶらりと歩きたくなって、御茶ノ水方面へと向かった。赤ワインを4~5杯飲んだので、ほろ酔い。極楽とんぼが一匹。夕暮れ。神保町から駿河台の坂を上ると、「エチオピア」などの有名カレー店が軒を並べていた。その中の一軒が村長の目に止まった。ネオン文字で「スープカレー屋 鴻 オオドリー」わざとレトロに右から読ませているのが渋い。

          オードリー① 
          上海ではありません

「スープカレー」は数年前、東京駅八重洲口の北海道アンテナショップで食べたくらいで、村長にとっては未開拓の分野。昭和モダンのレトロな店構え。ダイブすることにした。洋館のイメージの1階と中2階。BGMは1980年代のJポップが流れていた。場所柄なのかカップル客が多い。スープが2種類あって、「黒」は豚骨ベース、「赤」は国産鳥の手羽ベース。村長は「黒」を選び、メーンは「野菜」(800円)を注文した。辛さも4段階あり、選択できる。村長は「中辛ぐらいです」という一番辛くない「1」を選んだ。ちなみに「4」は「責任持ちません」の辛さだとか。

          オオドリー③ 
          黒か赤か?
          オオドリー④  
          一番安い「野菜」

10分ほどの待ち時間で、いい匂いとともに「野菜スープカレー」がやってきた。ライスの器も同じ形。黒っぽいスープカレーの中にデカいじゃがいも、人参、ナス、ブロッコリー、ピーマン、それにゆで卵がどかどか入っていた。むむむというビジュアル。
「この黒さは何?」
スタッフに聞いてみると、「焦がしタマネギの色です」とか。

          オオドリー⑦ 
          おぬし、できるのう

まずはスプーンですくってひと口。八重洲のアンテナショップで食べたスープカレーよりもこってり感があり、最初のアタックはタマネギと野菜を煮込んだスープのマイルドな甘み。その奥から旨みがにじみ出てくる。ベースの豚骨が効いているのだろう、五臓六腑にジワリとくる。その後からスパイシーな辛さが広がってくる。イケる。汗がひとすじ。

          オオドリー⑧  
          野菜がごろごろ

ライスは固めで、そこにスプーンでスープカレーをかけて口に運ぶと、絶妙と言いたくなる旨味で、よく考えると、イカ墨入りカレーのおじやみたいだが、ライスが固めに炊かれている分、食感がひと味違う。それが意外に合う。じゃがいもやニンジン、ナス、ブロッコリー、ピーマン、ゆで卵のデカさが北海道の大地を思わせるのも悪くない。鈴木宗男や松山千春が潜んでいるよう。イトーケースケも潜んでいるかもしれない。

          オオドリー12 
          ライスにカレースープを・・・
          オオドリー14 
          黒というより焦げ茶の旨味

スープカレーの量も十分で、800円というお代もこれなら納得できる。ここ数年で都内でも北海道にしかなかった「スープカレー」を出す店がかなり増えたが、村長は遅まきながら、その理由の一端を体感したのだった。


本日の大金言。

スープカレーは普通のカレーライスより割高。カレーライスやラーメンのような広がりはないだろうが、日本グルメ地図の中ですでに一角を占めている。



                        オオドリー15 

築地「福市だんご」と仙太郎の「老玉」

京都にお住いの調布先生が東京の有名出版社にいた頃、築地の「福市だんご」にご案内したことを思い出した。先日、北千住のどら焼きを書いたところ、珍しくコメントをくれた。そこに「福市だんご」のことが書いてあったからだ。随分昔の話なのに、調布先生の記憶力に驚かされる。「杉村春子の色紙」うんぬんは村長の記憶からは消えていた。恐るべし、調布先生。その福市だんごは後継者難ですでに店を閉じている。

調布先生には烏丸御池の「亀末廣」をはじめ、緑壽庵清水の金平糖、奈良の「みむろ最中」などなどメディアに毒された村長が知らない世界を教えてもらった。これまた先日、新宿伊勢丹で物凄い人気になっている京都「仙太郎」のぼた餅について書いたところ、「京都ではおはぎは仙太郎より今西軒です」とメールをいただいたこともある。

          仙太郎ウバタマ 
          ひと目ぼれ

で、本題。今回はその「仙太郎」の「老玉(うばたま)」(9個入り648円)を取り上げることにした。村長が「仙太郎」の評価を迷うのは、美味いには美味いが、値段が高いこと。丹波産の小豆を使うなど素材にこだわっているのはわかるが、庶民の味であるはずのぼた餅が1個260円というのはコスパ的に「かなんなあ」である。それでも行列ができる意味が村長にはわからない。内緒の話だが、行列に並んでいる女性に聞いたら、「みんな並んでいるので、私も並んでみたのよ」と面白い答えが返ってきた。

「老玉(うばたま)」はその敷居の高い「仙太郎」の中で、良心的な値段だと思う。「老玉」とは京菓子の一つで、黒糖入りのあんこ玉のこと。あんこ玉好きの村長はその姿と値段を見て、ひと目で気に入った。その漆黒と表面を覆っている寒天の見事なテカり、さらに金粉のような白ゴマが二粒・・・。さすが京都の和菓子、と唸った。

          仙太郎 
          パッケージもいい
          老玉② 
          黒いダイヤ?

だが、村長にとってはビミョーな味だった。黒糖の風味が強すぎて、せっかくのこしあんの風味が消えかかっている。満月を愛でていたら、突如風が吹いて、雲に邪魔されてしまったよう。甘さは控えめで、品のいい味わいであることはわかる。黒糖さえなかったら、とつい思ってしまった。「何いうてはりますのや。それが老玉の味いうもんですわ」ということなのだろう。

          仙太郎1 
          あんこ玉の極致?
          仙太郎3 
          10秒前
          老玉⑦ 
          5秒前
          老玉⑧ 
          あーん

黒糖好きにはたまらない味かもしれないが、あんこ好きの村長にとって、悪くはないが期待したほどではなかった。どちらかというと、「目で楽しむ」を優先した和菓子だと思う。「舌だけで京菓子を判断したらあきまへん。五感で楽しむのが京菓子というものです。会津にはこの洗練、わかるかなー、わからへんやろうなー、ヒッヒッヒ」調布先生の声が空から落ちてきた・・・気がした。


本日の大金言。

京都は確かに奥が深い。だが、最近は「エセ京都」も増えているらしい。昔からの京都人は「エセ京都」のはびこりを嘆いているという声も聞いている。本物を見分ける目が問われている。



                        老玉⑨ 


築地より安い?桐生のバラちらし丼

 ゴッドマザーが退院したが、その後のお見舞いで、群馬・桐生市へ足を運んだ。歴史のある街だけに、あちこちに優れた建物や施設がある。だが、地方の疲弊は激しく、桐生市の財政も苦しいという。村長は厚生病院の近くにある斬新なデザインの市民文化会館が好きで、その周辺をたまに散策する。今回ご紹介するのはその1階で見つけた「和ダイニング 飛天」の「おまかせバラちらし」である。

           飛天① 
           意外な穴場?

この店は桐生市の老舗寿司屋「美喜仁(びきに)」の直営店。桐生郊外生まれの村民2号がこの店の存在を仕入れてきた。
「昼どきは混むらしいので、早めに行きましょ」
正午前に到着。モダンな店構えで、入るとすぐ白木の長いカウンターがあり、寿司職人が「らっしゃい~」。その奥が仕切りのあるテーブル席になっていて、窓の外には新緑の世界が広がっていた。

           飛天② 
           これこれ

村長はメニューの中から、「おまかせバラちらし」(880円、税込み950円)を選んだ。村民2号は「飛天御膳」(925円、税込み999円)を頼んだ。村長はちらし寿司が好きで、東京・築地でもよく食べた。だが、築地の観光化とともに、値段も市場とは思えないほど高くなっている。築地は今や安くて美味い魚を食べる場所ではなく、市場気分を楽しむ観光スポットととらえた方がいいと思う。

15分ほどの待ち時間で、「おまかせバラちらし」がやってきた。ミニサラダとみそ汁付き。スタッフに聞くと、魚は築地から仕入れているそう。黒いどんぶりにマグロ、イカ、サーモン、むき海老、カンパチなどが層になっていた。その上にいくらがどっかと乗っていた。錦糸卵も散らしてある。まず、そのビジュアルに軽く圧倒された。物流の発達で、わざわざ築地までちらしずしを食べに行かなくてもいい。値段も同じレベルの丼ぶりと比較してもむしろ安いのでは、と思った。

           飛天③ 
           当たり~

魚の鮮度も申し分ない。醤油にワサビを溶かして、それを上からかける。それを温かい酢飯と一緒にかっ込む。箸とスプーンを交互に使う。マグロとイカが特に気に入った。マグロはバチでたまたまなのか中トロも混じっていた。得した気分。イカは紋甲イカで、いい歯ごたえ。いくらの量もむしろ多すぎるくらい。

           飛天④ 
           築地ではありません
           飛天⑤ 
           言葉はいらない
           飛天⑨ 
           わさび醤油をかける
           飛天11 
           美味の層

「この値段でこれだけのボリュームはコスパ的には申し分ない。酢飯が固めなのも好みではある。意外な場所で意外な発見」
「ここが美喜仁寿司の店って聞いて、ひょっとして当たりかもって思ったのよ。でも、私の飛天御膳は今イチだわ。ローカルの温泉旅館のお膳みたい。今回は村長の勝ち」
「美喜仁って名前の方がいいのに、なんで飛天なんてしたんだろう?」
「ビキニって、昔からビキニなのよ。村長、ヘンな想像したんでしょ?」
「ビキニで赤身を食べる・・・赤貝、むき身も食べる・・・ポエムだなあ」
「回し蹴り、イエローカード! はい伝票」
「・・・・・・」


本日の大金言。

かつて鮮度が勝負だった寿司だが、冷凍技術と物流の発達で全国どこでもそれなりに美味い寿司を食べれるようになった。山奥で「へい、にぎり一丁」の時代も悪くない。





                        飛天13 




消えた最中と北千住のどら焼き

 東京・北千住駅東口に「なか井」といういい最中(もなか)屋があった。村長はここの求肥入り最中が大好きで、仕事の帰りによく買ったものだ。8年ほど前、突然、この「なか井」が閉店した。その理由が凄いものだった。最中職人が病気で引退してしまい、同じ味は作れないので店を閉めることにしたというものだった。村長はその理由を知って驚くと同時に店主の覚悟のようなものに触れた気がした。同時にその味を惜しんだ。あの、洗練された「なか井」の最中はもう食べられない。

あれから8年も経ってしまった。村長はその「なか井」があった場所を左手に見ながら、右手にそびえ立つTDU(東京電機大学)の高層ビルを素通りして、「どこかに隠れたいい和菓子屋はないか」とアテもなく歩いた。下町には意外な発見がある。犬も歩けばあんこに当たる・・・かもしれない。すると、左手に「御菓子処 ひので家」という古い佇まいの和菓子屋が見えた。

          ひので家① 
          めっけ!(東京・北千住「ひので家」)

暖簾をくぐると、女将さんらしい高齢の女性が出てきた。どら焼きが売りのようで、「開運どら焼き」(1個130円)がすぐに目に入った。「もうここで40年以上店をやっています」と女将。1個1個きれいに包装されていた。「どら焼き」の上に「開運」が付いているのが下町らしい。3個買い求めたが、買った後に「もうすぐ焼きたてができるんですけど」。ガクッ。だが、村長の判断ではどら焼きは焼き立てよりも1日くらい経ってからの方が味がなじんで美味いと思う。

          ひので家② 
          ラインナップ

村長は近くのカフェに入って、密かに「開運どら焼き」を賞味することにした。袋を開けると、グラマラスなどら焼きが現れた。「うさぎや」のどら焼きほどは大きくないが、厚みがかなりある。表面がいいキツネ色に焼かれていて、スポンジが厚め。卵の黄色みが強い。女将によると、1個1個手焼きで、中のあんこも北海道十勝産小豆を使用、砂糖もザラメを使っているそう。

          ひので家③ 
          袋がいい
          ひので家④ 
          丁寧な仕事

まずはひと口。どら焼きの横綱「うさぎや」と比べるとややふくよかさとしっとり感には欠けるが、小結か関脇くらいのうま味はある。ハチミツは入れていないとかで、小麦と卵の風味が勝っている。中のあんこはつぶあん。どっしりと作られていて、やや甘め。量もほどよい。全体的に丁寧に作られたいいどら焼きだと思う。この店も最近、メディアに取り上げられ始めたようで、店の入り口には雑誌の切り抜きが張られていた。

          ひので家⑤ 
          あちきでありんす
          ひので家⑥ 
          どっしりしたあんこ
          ひので家⑦ 
          スポンジの厚さ

「なか井」のあった場所は飲食店になっていた。いい和菓子屋が消えるのはさびしい。図書館が一つ消えるよりもさびしい。村長が愛した築地の串団子屋「福市だんご」も今はない。良きものが消え、悪しきものが残る。集団的自衛権より「なか井」の最中。村長は「ひので家」を見つけたささやかな喜びを腹に収めて、飲み屋横丁へと向かった。極楽とんぼに開運はあるか?(あるはずネーだろ!)


本日の大金言。

いい店ほど経営が苦しくなる、という逆説。後継者不足の問題。いい和菓子屋を取り巻く環境はどんどん厳しくなっている。



                        ひので家⑨

ミスキック後の「銀だら煮魚定食」

 サッカーW杯の合間を縫って、埼玉・春日部をぷらぷら探索中のこと。「美味い魚を食べさせてくれる小さな食堂があるんですよ」という情報をつかんだ。教えてくれたのは、春日部の情報発信「ぷらっとかすかべ」の美人スタッフ。「ちらし丼が特に絶品です」と村長の好奇心をくすぐるセリフ。「有名ではないんですけど」という言葉にもくすぐられた。村長は、東口から歩いて5分ほどのその店へと急いだ。午後1時を過ぎていたからである。

           春日部1 
           隠れ名店か?(さか菜や食堂)
           さか菜や食堂 
           ちらし丼やーい

「和食処 さか菜や食堂」という店で、入り口には、ランチメニューがズラリと書かれた立て看板。入ると左手にカウンター席が5席ほど、その向こう側が厨房。それに4人用テーブル席が4つほど。近くのサラリーマンが3~4人ほど食事していた。客がそう多くないのがいい。テーブル席に座って、女性スタッフに「ちらし丼、ありますか?」と聞いたら、「すいません、売り切れてしまいました」というお返事。目の前から白いハトが消えて行った。

           さか菜や食堂② 
           シュート前

「今あるのは、煮魚定食だけです」。選択肢はない。「煮魚(銀だら)定食」(800円)を頼んだ。待っている間、女性スタッフと雑談。
「ちらし丼が美味いと聞いたんだけど、いつ来たら食えるの?」
「ちらし丼は限定3食なんです。すいません。すぐになくなってしまうんですよ」
ちらし丼も800円で、ほとんど開店と同時に売れてしまうそう。何という現実。村長のシュートは蹴る前から枠を外れてしまったようだ。

だが、やってきた「銀だら定食」を見て、そう失望することはないと思い直した。この店はもともとは魚屋だったそうで、約3年前に食堂として生まれ変わったとか。魚の仕入れ先は大宮市場。魚へのこだわりが見て取れる。年季の入った和帽子の板前(店主?)が、寡黙に仕事をしているという印象。

          さか菜や食堂④ 
          煮魚銀だら定食

銀だらは村長の好きな魚の一つで、その脂の旨味は垂涎ものである。北太平洋の深海で採れた銀だらは、焼いても煮ても美味い。「さかや菜食堂」の銀だらは、日本酒と醤油と砂糖・みりんの加減がいい。生姜の香りもほんのり。箸でつつくと、一枚一枚がはがれるように身を持ち崩す。その脂の乗った白い肌と旨みは悪くない。

          さか菜や食堂⑧ 
          た、たまらん!
          さか菜や食堂⑦ 
          身は崩れるためにある



だが、と村長は思う。ほうれん草とかゴボウが添えられていないのは寂しい。美味だが、やや彩り(色気)に欠けるというのが村長の率直な感想。ご飯は柔らかめでフツーの美味さ。ちらし丼をゴール前で外してしまった村長は、八分の満足で外に出た。ブラジルでゴールを外してしまった選手のその後が気になる。


本日の大金言。

ゴールを外しても人生は続く。ミスキックの後にどう態勢を立て直すかの方が重要だと思う。すべてはこれからだ。














                     春日部 





プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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