酔い覚ましの絶品ジェラート

居酒屋で 思いもよらぬ山形の料理と地酒を堪能したウマズイめんくい村の怪しい一行は、そのまま宿泊所に戻ることにした。地元の人と話したら、「歩くとかなりありますよ」。七日町から30~40分くらいの距離だそう。財布の中も気になる。是非もない。星空の下、トボトボと歩くことにした。午後8時過ぎ。
「まさかあんなに旨い料理に出会えるとは。日ごろの行いがいいのかな」
「それはないと思うな。少し節約しなきゃ、ね」

宵の口だというのに人通りは少ない。ここでも地方都市の疲弊を感じる。きれいに整備されたメーンストリートを山形駅に向かって歩く。その途中で、村民2号の足が止まった。小さな灯り。「自家製焙煎珈琲と手づくりジェラートの店 チャオ」の文字。外から覗くと、7席ほどのカウンターだけの小さな店だった。ガランとしていた。

           チャオ①   
           チャオ!

「こういう店がいいのよ。多分、コーヒーが美味いと思うわ。歩き疲れたところで、食後のコーヒーは悪くない。村長はデザート代わりにジェラートを食べればいいわ」
「さっき、節約しなきゃって言ってなかったっけ?」
「そんなこと言った? この店、安いから大丈夫よ」

           チャオ 
           遠くにマスターの後ろ姿

「もう閉めるところでしたけど、どうぞどうぞ」
熟年の品のいいマスターが怪しい一行を迎え入れてくれた。客はいないが、村長はこの店に親近感を覚えた。メニューから村長は「ジェラート ダブル」(350円)を選んだ。マスター手作りのジェラートで、「ミルク、ラムレーズン、抹茶、ごま」の4種類から選べる。「どれにしますか?」と言われて、「ラムレーズンとごまでお願いします」。村民2号は「チャオブレンド」(400円)を選んだ。

           チャオ③ 
           メニューはシンプル

このジェラートが絶品だった。空気の含有量となめらかさが絶妙で、熟したラムレーズンがいい具合に舌に絡まってくる。やや甘め。村長の好み。ごまの方はごまの風味が自然で、その粒つぶが歯に当たるたびに幸せ感がにじみ出てくる。
「アイスクリームよりも脂肪分が少なくて、卵黄も入っていないんですよ。私は空気の量を多くしているんです。なめらかなのはそのせいです。その分溶けやすくなりますが」

          チャオ④ 
          手づくりジェラート登場
          チャオ⑦ 
          まずはラムレーズン
          チャオ⑧ 
   続いてごま・・・(ここでカメラの電池が切れる。ああ)

マスターが突然、「これを飲んでみてください」と、コーヒーを楽しんでいる村民2号に「エスプレッソ」を差し出した。村民2号はコーヒー好きだが、エスプレッソは苦手で、ほとんど飲まない。
「エスプレッソは日本では誤解されています。本物は苦くはないんです。私の作るエスプレッソは本場のイタリアにも行きましたが、負けないと思います。いや、本音で言うと私のエスプレッソは世界一のエスプレッソだと自負しています」

村長はあわててカメラを向けたが、電池が切れてしまった! ぐやじい。店を出てから、村民2号が感想を漏らした。

「ホント、苦みがまったくなかったわ。最初はストレートで、それから砂糖を入れ、最後にミルクを入れたものを飲んだわ。味がどんどん変わっていった。あのマスターはマジックですよ、と言ってたけど、ホント、そんな感じだった。山形にああいう店があることに驚くわ。今日はすべて当たり、だった。村長も美味かったでしょ? みんな私のおかげということね。うっふっふ」
「・・・・・・」

本日の大金言。

ガイドブックに頼らない旅。犬も歩けば旨いものに当たる。むろんハズレもあるが、その分、満足度が倍加する。




                        山形1 



スポンサーサイト

居酒屋で「山形の底力」に完敗

 山形市内のぶら歩きは約2年ぶり。その時は「栄屋本店」で評判の「冷やしラーメン」を食べたが、最初は旨いと思ったが、食べているうちにその単調な味に飽きが来てしまった。氷が味を薄めるのも気になった。村長の中でいささか失望が残った。今回は晩めし。同じ七日町周辺をぶらぶら歩いて、自分のセンサーで隠れ名店探しを行うことにした。当たるも八卦、当たらぬも八卦。

40分ほど村民2号と「あーでもない」「こーでもない」と歩き回り、足が棒になり始めた頃、居酒屋「味山海(あじさんかい)」の日除け暖簾が目に入った。山形の味を売り物にしているようだ。よくある今どき和風の店構えで、その小ぎれいな外観から「ま、ハズレはないだろう。そこそこの味ならよしとしよう」くらいの軽い気持ちで入ることにした。他にビビビとくる店がなかったこともある。

           味山海  
           当たりかハズレか? 

だが、その高ビーな思い上がりは数十分後、回し蹴りを食らわされる羽目になった。照明を落とした店内はL字のカウンター席とテーブル席、それに座敷もある。東京にもよくありそうな和風の店内。カウンターの対面が調理場になっていて、店主らしい作務衣姿の男性が2~3人のスタッフとともに料理作りに励んでいた。客はそれほど混んではいない。

仕切りの付いたテーブル席に腰を下ろして、メニューを見る。十四代を始めとして山形の地酒が豊富に揃っていた。うむむ。悩んだ末、村長は「東北泉 純米吟醸しぼりたて生酒」(大グラス700円)に的を絞った。村民2号は生ビール。

           味山海② 
       山形の地酒約80種類の中から選ぶ
           味山海④  
           串焼きとステーキ

料理は定番の「山形芋煮」(550円)、「三元豚串焼き」(2本 500円)、それに奮発して「山形牛ステーキ」(1500円)を頼んだ。村民2号が「焼きおにぎり」(醤油・みそ 380円)を頼んだ。「これはウチだけの限定です」と言いながら、店のスタッフが「東北泉 しぼりたて生酒」を持ってきて、グラスになみなみと注いだ。下に敷かれた皿にこぼれる。これだこれだ。火入れをしていない生酒。吟醸香がふわりと立ち上がってきた。

           味山海2  
           これこれ
       
日本酒度は+2度。やや甘めだが、凛とした品格とふくよかさが同時に花開いたような名酒だった。少し前の仲間由紀恵のような。山形の地酒の実力に改めて舌を巻く。「山形の芋煮」が登場。いい具合に煮込んだ里芋と牛肉、その出汁の旨味は文句のつけようのないものだった。「三元豚の串焼き」「山形牛のステーキ」も当初の軽い気持ちをいい意味で裏切る出来だった。

           味山海⑧ 
           山形の芋煮に舌つづみ
           味山海⑥ 
           平田牧場の三元豚串焼き
           味山海⑨ 
         山形牛ステーキを大奮発
           味山海10 
           言葉が消える
           味山海13 
           絶品の部類

「山形が好きになっちゃったわ。出される料理がすべて旨い。焼きおにぎりもいい。こういう経験はあまりないわね」
「スタッフに聞いたら、山形牛はA4ランクだってさ。焼きおにぎりの米はつや姫。料理に化学調味料は一切使ってないそうだよ。只の居酒屋だと侮ったのが間違いだったよ。回し蹴りを食らってしまった気分だ」
「でもよかったじゃない。いい回し蹴りで。そのまま天国に行きたいんでしょ? 私からも回し蹴りを・・・」
伝票がスッと手渡された。天国まで8マイル・・・。


本日の大金言。

本当の名店はメディアに乗る有名店より、自分の足の先にあるのかもしれない。それを探す楽しみもまた。




                       味山海15 


山寺で味わった「冷たい肉そば」

 秋晴れの中、会津若松から山形市の「山寺(立石寺)」へと青いポンコツ車が向かった。山寺は松尾芭蕉が名句「閑(しずか)さや岩にしみ入る蝉の声」を詠んだ場所でもあるが、ウマズイめんくい村一行の最大の目的は、むろん食べること。ここの門前のはずれにある老舗「瀧不動生蕎麦(たきふどうきそば)」はそば好きの間でも知られている。蝉の声より寒ざらしそば! 

「山寺は一度来たかった場所。1050段の階段を絶対登りきって見せるわ」
杉木立に囲まれた石の階段をぜいぜい言いながら登る。途中5回ほど休んで、約1時間後、頂上の五大堂に到着。そこから見た眺めの素晴らしさと壁に書かれた落書きの多さ。その落差。
「芭蕉を想って一句。閑さも岩も隠れる人の声
「くだらない。芭蕉が怒るわよ。早くそば食べに行きましょ」

           山寺⑤  
       はや紅葉? 五大堂は目の前(立石寺)

「瀧不動生蕎麦」は創業が江戸時代末期で、観光案内所によると、「寒ざらしを食べさせてくれるのはここだけ」とか。秋に収穫した玄そばを月山の湧水に浸し、それを長時間かけて乾燥させ、さらに石臼で挽くという手間暇のかかる作り方をしている。そのためそば自身の風味がひと味違うという。暖簾をくぐると、見事な欅(けやき)づくりのテーブル(8人掛け)が5つほど。さらに座敷が2部屋もある。巨木の柱と囲炉裏もある。村民2号がひと言「気に入ったわ」。
       
           瀧不動① 
           瀧不動生蕎麦

メニューの中から、村民2号が噂の「寒ざらしそば」の板そば(1600円)を選び、へそ曲がりの村長はもう一つの逸品「冷たい肉そば」(750円)を選んだ。「冷たい肉そば」は山形ならではのそばで、本場は近くの河北町谷地だが、この「瀧不動生蕎麦」も評価が高い。こちらのそばは寒ざらしではなく田舎そば。

           直し    
           いいお値段
           瀧不動② 
           目は冷たい肉そばへ

10分ほどで「寒ざらし 板そば」が到着。長方形の板の器に盛られた寒ざらしそばは、ややグレーがかった中細の手打ちそばで、量がざるそばの1.5倍ほどもある。値段が高いのもやむを得ない? 続いて、「冷たい肉そば」がやってきた。縦に長い、底の深いどんぶりに真っ黒い田舎そばが沈んでいた。その上には斜め切りされた鶏肉、わらび、ぜんまい、きのこ、刻みネギが乗っかっている。只者ではない雰囲気が漂っていた。

           瀧不動⑥ 
           どひゃー、寒ざらし板そば
           瀧不動④  
           これが冷たい肉そば

村長は「冷たい肉そば」のスープをひとすくい。冷たさがしみ入る。すぐにやや甘めの、鳥のまろみのある出汁が口中に広がった。悪くない。黒いそばは中太で、コシが強い。いや、強いというよりむしろゴワゴワした食感。鳥肉は出汁を取り終えた親鳥の肉を使っているのだろう、コリコリした歯ごたえ。面白い食感。それにきのことわらびとぜんまい、ネギがいいハーモニーを作っている。B級の美味。

           瀧不動⑦ 
           親鳥の肉と具・・・
           瀧不動⑧ 
        黒い田舎蕎そばの歯ごたえ
           瀧不動12 
         鳥の甘みたっぷりのツユ

「最初、肉って豚肉かと思ってたよ(笑)。親鳥の肉だったとは。ボリュームもかなりある。暑いときに食べたらもっと旨いと思う」
「寒ざらしそばはコシと風味が確かにひと味違ったわ。食感がシャキッとしていて独特。香りは思ったほどではなかったけど、この前食べた戸隠そばと比べても負けていない。鰹の出汁の効いたツユの旨さもマル。値段だけが問題だけど。ま、その分、村長が補ってくれたけど(笑)」
「ネ、ネ・・・寒ざらしをちょっとだけチョーダイ・・・」

本日の大金言。

「寒ざらし」と「冷たい肉そば」。山形の味覚文化は想像以上かもしれない。藤沢周平の小説でもその一端が垣間見える。



                      瀧不動13 




衝撃の「ロースソースかつ丼」

年に一度、 ある出版社の編集者からの案内で、直木賞作家・早乙女貢さんの墓参に行く。早乙女さんは無宗教だったが、様々な経由があって、今は近藤勇も眠る会津若松市・天寧寺に碑が作られ、遺骨も納められている。村長はエンターテインメント新聞社時代に約10年間担当した縁だが、6年前にバタバタと亡くなられた。「ボクは最低でも100歳まで生きるよ」と豪語して快活に笑っていたあのお姿が忘れられない。毎年この時期は「会津祭り」と重なる。祭りの最大のクライマックス、「会津藩公行列」に西郷頼母役で馬に乗るのが恒例だった。その姿をもう見ることはできない。

その会津若松で昼食を取った。会津はソースかつ丼の店が多く、長野駒ヶ根、群馬桐生、福井とともに「ソースかつ丼の四大メッカ」として知られている。村長はこれまでかなり多くの店でソースかつ丼を賞味したが、その大きさで他を圧倒している「白孔雀」と「むらい」は入ったことがない。デカければいいというものではない。とはいうものの、村長はふとした気まぐれで、ソースかつ丼好きの間でも最近評価が高い「むらい」の暖簾をくぐることにした。

          むらい① 
    超特大ソースかつ丼の店(会津若松市「むらい」)

神明通りからポンコツ車を飛ばして10分ほど、門田町に「食事処 むらい」の看板が見えた。一軒家。人気店なので、正午前だというのにすでに駐車場はいっぱいだった。店内は意外に広く、テーブル席と座敷に別れていて、ふと見ると、驚くべき光景が繰り広げられていた。3センチは優にあるかという厚さのとんかつがドンブリからはみ出ている。いや、はみ出ているというよりも、やぐらのように積み重なっていた。とても食いきれないのだろう、小皿が用意され、そこに何切れかが移動されている。村長はオーバーではなく息を飲んだ。

          むらい② 
          メニューは安くない

村長は「ソースかつ丼」の中から、一番人気だというその噂の「ロースかつ丼」(みそ汁・漬け物付き1400円)を頼むことにした。村民2号はあまりの大きさに方針転換、「海老・ひれかつ丼」(同1300円)を頼んだ。15分ほどで「海老ひれかつ丼」が登場、そこからさらに5分ほど遅れて、お盆に乗った「ロースかつ丼」がやってきた。あまりに肉が厚いので揚げるのに低温で17~8分はかかるという。うむむ。

          むらい③ 
          海老・ひれかつ丼
          むらい2 
          ロースかつ丼!

特製ソースだれをくぐってきた、目の前のとんかつは確かに驚くべき厚さ。揚げ立てのいい匂いをジュウジュウ放っている。コロモが薄いために肉の厚さがさらに強調されている。それが丸太のように積み重なっていた! 数えてみたら、合計7切れ。下が見えない。このままでは到底食べれないので3切れほど小皿に移して、ようやく全体像が見えてきた。

           むらい⑥ 
           何じゃこれは?
           むらい⑦ 
           言葉がない
           むらい⑨ 
           3切れを小皿に移す
           むらい12 
           一切れで充分?

キャベツが敷かれ、その下の会津産コシヒカリがつやつやと控えていた。とんかつに比べてご飯の量は少なめ。まずはとんかつをガブリ。意外に柔らかい。圧倒的な肉の存在感。脂身も少ない。だが、肉自体の旨味と肉汁感は期待したほどは感じられない。特製ソースはやや甘めで、薄いコロモはからっとしていて好感。ラードではなくサラダ油で揚げている。キャベツは新鮮。極上の旨さではないが、まずまずの旨さ。

だが、4切れを踏破したものの、全部はとても食べきれない。3切れを持ち帰り用のパック(別料金10円)に入れて、ホテルに持ち帰ることにした。
「私の方が勝ちね。エビフライもひれかつも旨かったわ。話題性より中身よ。村長は無理しすぎ。そのうちバタッと行くわよ。1400円というのも高い。後でその3切れ、私にもちょうだい。夕食にして夕食代を節約しなきゃ」
「・・・・・・」

           むらい15 
           3切れはお持ち帰り

本日の大金言。

デカいことはいいことだ、という時代があった。その後スモール・イズ・ビューティフルになり、さらに「中庸の精神」が説かれたりもした。デカさも再利用する知恵が試されている。



                      むらい14 


埼玉産?「京都高級料亭」の本モロコ

約 半年前のこと。京都にお住いのグルメ先生から突然、糸電話がかかってきた。
「あーた、知ってた? BS見ててびっくりしたんだけど、京都の高級料亭で使っている本モロコが埼玉の加須で養殖されたものだってこと。鈴木養魚場というところでしたよ。これはエライことですよ。琵琶湖の本モロコがブラックバスとかブルーギルに食われてしまって、どんどん捕れなくなってしまった。それで加須の養魚場からも仕入れるようになったらしい。あーた、いっぺんポンコツ車飛ばして行ってみたらよろしい」

京都の高級料亭がまさか? 調べてみたら、本当だった。本モロコは京都の料亭などでは欠かせない高級食材で、琵琶湖で捕れなくなり、滋賀県が保護に乗り出していることもわかった。だが、苦戦していて、そのため価格もさらに上昇していることもわかった。グルメ先生が東下りした際に、ちょうどいい機会と、ご当人をポンコツ車に乗せて、北川辺にある「鈴木養魚場」へと案内することにした。

           鈴木養魚場① 
        まさか、こんなところに・・・(鈴木養魚場)

利根川と渡良瀬川に囲まれた一帯に「鈴木養魚場」は存在していた。本モロコばかりでなく鮒(ふな)や鯰(なまず)、うなぎなども養殖し、それを場内の一角にある店舗で販売もしていた。店内に入ると、そこは広々とした板場になっていて、白衣の調理人が3人、大きなまな板の上でうなぎをさばいているところだった。白い仕切り暖簾が下がっていて、どこか古い料理屋の板場にいるような錯覚に陥る。

           鈴木養魚場② 
           店内は別世界

目の前の木のショーケースには煮上げられたばかりの「鮒の甘露煮」(1パック1080円)や「もろこ煮(本モロコ)」(同1080円)などが並べられていた。甘い醤油と味りんの匂いが漂っている。こんなところにまさかの世界。

           鈴木養魚場④ 
           そう安くはないが・・・

「では、もろこ煮を1パックください」
グルメ先生が巾着を取り出して買い求める。
「では、私たちは鮒の甘露煮にしましょ」

その夜、日本酒を飲みながら、味見となった。村長は正直なところ、川魚は苦手。だが、特に本モロコは味付けが意外に薄味で、養殖のせいだろう、川魚の臭みがまったくない。言われなければワカサギと間違えてしまいそう。滋味深い、品のいい味わいで、日本酒とぴったり合う。鮒甘露煮の方が味が濃いが、お隣の古河市のベタな甘露煮に比べると、やや薄味で食べやすい。こちらはイワシの甘露煮のよう。砂糖と日本酒と味りんで7~8時間ほど煮込むそう。むろん添加物などはなし。

           鈴木養魚場⑧ 
           京都の料亭にも行く(本モロコのもろこ煮)
           鈴木養魚場⑦ 
           こちらは鮒の甘露煮
           鈴木養魚場 
           京は近いどすえ~
           鈴木養魚場12 
           意外な美味
           鈴木養魚場10 
           日本酒とよく合う

「こんな僻地のウマズイめんくい村で琵琶湖の珍味を味わえるとは、お釈迦さまでもご存じあるめえ」
「行ったことないけど、京都の高級料亭で食べてる気分だわ」
「舞妓はんがいないのが残念。芸妓さんや~い」
三者三様の思いが夜遅くまで交差したのだった。

本日の大金言。

食材のネットワークは想像以上に進んでいる。スーパーに並ぶ食材だけ見ていると、気が付かないこともある。意外な高級食材本モロコはその一端でもある。



                     鈴木養魚場13 







続きを読む

「ゆでめん食堂」の郷愁焼きそば

振り向けば群馬県の埼玉・羽生市はB級グルメの意外な穴場である。最近は「ゆるキャラサミット」でも名前が知られてきたが、セピア色の昭和の匂いの残る店が点々とある。

「村長もネタが苦しいようなので、いい情報をお教えしましょう。羽生に安くて面白い食堂があるんですよ。そこはゆでめんを製造もしていて、そのゆでめんが実に旨い。おすすめは焼きそば。騙されたと思って、一度ポンコツ車を走らせてみてください」
そんなメールが、埼玉シンジケートの知人から届いた。先日、「甘太郎」で50円今川焼きを食べ、その味とあまりの安さにフンドシがずり落ちそうになってしまったことを思い出した。

           小川うどん店① 
       昭和のままの佇まい(「小川ゆでめん」

その「小川ゆでめん」は地元では知られた店で、創業60年ほど。戦後、ゆでめん製造業を営み、その後、食堂も始めた。羽生駅東口を背にメーンストリートを市役所方面へ向かうとすぐ左手に古いレンガ色の小さなビルが見え、「うどん そば」の巨大な文字が見えてくる。雰囲気のある紺地の暖簾。そこが「小川ゆでめん」である。村民2号は「ゆでめん」という言葉に反応はイマイチ。

店内は大小のテーブルが5つほど、それに小上がり。壁にはバラエティーに富んだメニューが貼りついている。うどん、そば類からカレーライス、かつ丼などドンブリ、定食類まであり、古い田舎のうどん屋食堂の趣き。値段も昭和のまま。村長は「やきそば」(410円)、村民2号はここの名物「大天ひもかわ もり」(450円)を頼んだ。午後1時半過ぎだったので、すでに忙しさのピークは過ぎていた。

           小川うどん店② 
           やきそば、めっけ!
           小川うどん店12 
           大天ひもかわ

店は女将が一人で切り盛りしているようだった。注文を受けると、奥の厨房へと消え、しばらくすると、焼きそばを炒めるフライパンの音がして、甘いソースのいい匂いが漂ってきた。ええのう。村長はお茶をすすりながら、待つ。「ゆでめんを堂々と打ち出しているうどん屋さんなんて初めて。あまり期待はしてないけど」村民2号はつまらなさそうに天井を見ている。

7~8分ほどで「やきそば」がやってきた。自家製の蒸し麺は太い縮れ麺で、ジュウジュウと音のするようなソースと脂のテカりを放ち、見るからに旨そうだった。具はキャベツと人参だけ。その上から青のりが盛大にかかっていた。紅ショウガがどっかと控えている。村長の好みとしては豚こま切れが欲しいところだが、そんな月並みな欲求を抑える何かが潜んでいる気がした。

           小川うどん店④ 
           意外な発見
           小川うどん店⑧ 
           ひと味違う旨味
           小川うどん店⑦ 
           麺と出汁

最初の一口で、この焼きそばが意外なスグレモノであることに気づいた。ゆでめん屋も併業しているだけあって、太めの縮れ麺のモチモチした食感がいい。添加物がない素朴な蒸し麺。ソースがひと味違うのもわかった。ソースのどぎつさがない。B級なのに奥深い素朴な旨味・・・。

「これ、出汁を入れてるでしょ? それもかなり複雑」
村長が女将に聞くと、
「うどんの出汁を加えてるんですよ。出汁は鰹節、鯖節、昆布・・・いろいろ入れて、しっかり作ってるんですよ。毎日大変ですけどね(笑)。昔から同じ作り方です」
女将があっけらかんと答える。ラードは体によくないので使わない、とも。

           小川うどん店③ 
           大天ひもかわ
           小川うどん店⑨ 
           ゆでめんをナメるな

「ゆでめんだからって、軽く見ていたけど、とんでもない間違いだった。ここはひと味違うわ。ツユが出汁が効いたやさしい味で意外な旨さと言うしかない。A級ではない旨さもあるのね。ひもかわもかなりぶっ太いけど、ぼそっとしたホウトウみたいな食感で、ツユとよく合っている。天ぷらは揚げ置きだけど、これだけ手の温もりが伝わる素朴な旨さはそうはないと思うわ。今日は当たり!」
辛口の村民2号の表情が来た時とすっかり変わっていた。

本日の大金言。

ローカル都市の古いノレンには味がしみ込んでいる。数字を超える長年の手の温もりがそのセピア色の世界を支えている。






                        小川うどん店13 









浪花家総本店の「和三盆ロール」

 東京・麻布十番にある浪花家総本店はたい焼きで有名だが、ヘそ曲りの村長は「浪花家ロール」にハマっている。明治42年(1909年)創業のこの老舗たい焼き屋は、人形町「柳屋」、四谷見附「わかば」とともに「たい焼き御三家」だそうだが、2階は和カフェになっていて、甘味屋といってもいいほど、メニューをそろえている。商売上手。

          浪花家① 
    レトロ感全開やでえ(麻布十番「浪花家総本家)
          浪花家② 
          和三盆ロールケーキ
          浪花家2 
          一丁焼きたい焼き職人さん

明治・大正の白熱電球の雰囲気を残した薄暗い1階の一丁焼きたい焼き場から2階に抜けると、そこは甘味屋の世界。照明がランプ色なのはレトロ感を出すためだろう。2人用の木のテーブルが9つほど。女性スタッフが2人、忙しそうに客をさばいている。客層は若いカップルから中高年女性まで幅広い。村長はメニューの中から「浪花家ロールセット」(飲み物付き800円)を選んだ。飲み物は煎茶、ほうじ茶もあるが、「そば茶」にした。

          浪花家③ 
          たい焼きにするかロールにするか

「浪花家ロール」は和三盆を使ったロールケーキで浪花家総本店のオリジナル。お土産で買うこともできるが、カフェで浪花家の粒あん付きのセットを食べた方が美味いと思う。浪花家のたい焼きが人気なのもこの粒あんの存在が大きい。6~7分で白い陶器皿に盛られた「浪花家ロール」がやってきた。分厚く切られた和三盆ロールケーキとその上にどっかと寄り添った粒あん。ひと目見ただけで、村長のスイッチが入った。

          浪花家④ 
          これこれ「浪花家ロールセット」

ロールケーキは和三盆のいい風味が滲みこんでいた。フワッとしていてしっとりしてもいる。白砂糖の甘さとは微妙に違うほのかな甘みが心地よい。渦巻き状の生クリームがその甘みに入り込んでくる。脳内エンドルフィンが噴出してくる。そこに絶妙な粒あんが訳あり熟女のように折り重なってくる。こ、これはイケない。

浪花家の粒あんは北海道の契約農家の小豆を使い、上白糖と塩だけで作られている。そのもっさりした素朴と塩気が特長で、洗練されたあんこではない。村長は白ザラメの方が好みだが、これはこれで悪くはない。

          浪花家⑤ 
          ちょっとお、重すぎよ~
          浪花家⑥ 
          和三盆ロールのしっとり感
          浪花家10 
          粒あんの素朴な存在感

どんどん食べ進む。粒あんの冷たい粒つぶ感、しっとりとした和三盆ロールケーキ、それらが次第に甘味中枢に入ってくる。ふらふらとどこかへと飛んでいきそうになる。あわや風船おじさん・・・危ない、危ない。急須に入ったそば茶は3杯くらいまで飲める量。これがいい中和となる。一時の至福の中で、しみじみと思う。私は泳ぐたい焼きになりたい・・・。


本日の大金言。

同じ老舗の一丁焼きでも、人形町「柳屋」にはカフェコーナーはない。浪花と江戸の違いかもしれない。




                         浪花家11

渋谷ヒカリエのアサイーボウル

 所用で東京・渋谷に立ち寄った際に、時間があったので、渋谷ヒカリエをウロウロすることにした。そのときにB3で見つけたのが「アサイーカフェ」だった。ブラジル原産のアサイージュースなど体にいいジュースを飲ませてくれる店で、カウンター(3席)のイートインコーナーもある。渋谷らしい小ジャレた女性がけだるそうにジュースを飲んでいた。ウマズイめんくい村とはえらい違い。

          アサイーカフェ① 
          どんな夢を見る?(アサイーカフェ)

ふと見ると、「アサイーボウル」や「アサイーワッフル」のメニューもある。去年軽井沢で初めて食べ、今年もレディー・ガガの幕張公演後にエキナカカフェで賞味した。軽井沢の方が本格的だったが、ここはどうか? カウンターに座って、メニューの中から「アサイーボウル オリジナル」(レギュラー620円)を選んだ。愛くるしい女性スタッフのマニュアル笑顔がまぶしい。

          アサイーカフェ1 
          美味そうなメニュー

5~6分で「アサイーボウル」がやってきた。白い紙の器に見るからに新鮮なバナナ、イチゴ、ブルーベリー、さらにグラノーラ(シリアルの一種)がどっかと乗っかっていた。その下に赤紫色のアサイースムージーの海。ひと目で、幕張のものより本格的なことがわかった。木のスプーンで、バナナを食べ、イチゴを食べ、ブルーベリーを味わい、本命のアサイースムージーをひと掬い。

          アサイーカフェ② 
        アサイーボウルオリジナルどすえ
          アサイーカフェ③ 
          この鮮度!
          アサイーカフェ④ 
          反対側からパチリ

シャーベット状のアサイースムージーは、口に入れた瞬間、いい酸味と甘い果実味が広がった。アマゾン産の果実の香りが北極経由で口中を支配していくのがわかった。一瞬目を閉じたくなる。量は少なめだが、軽井沢のものと比較しても劣らない。むしろ都会的に洗練されていて、それは好みの別れるところだが、都会の中の孤独を一瞬だけ癒す効果は十分。

          アサイーカフェ⑦ 
          アサイーのスムージー
          アサイーカフェ⑧ 
          イチゴもブルーベリーもマル

バナナもイチゴも新鮮だが、ブルーベリーとグラノーラが特にいい。グラノーラは大麦クッキーのような食感で、いいアクセントになっている。それをアサイースムージーと一緒に食べると、アマゾンとハワイと渋谷が冷たい美味となって脳天を抜けていく。心も体も洗われた気分になる。お腹にももたれない。

          アサイーカフェ10 
          残りの人生

かつては渋谷村と呼ばれた谷底の台地にそびえ立つヒカリエ。コンピューターでコントロールされたその地下3階で、一瞬の至福をかみしめる。現代が幸福なのか不幸なのか、誰にもわからない・・・。


本日の大金言。

ヒカリエには時間も空間もマネーさえも凝縮されている。バーチャルとリアルの交差点。そこから何が生まれるのか、どんな未来が見えるのか?



                      アサイーカフェ11 




「おつな幕引き後」の佐野ラーメン

 メディア界の裏七不思議の一つ、33年も続いた「おつな会」の幕引きパーティーが13日(土)、日本プレスセンターで行われ、約80人が33年の山あり谷ありの歴史に惜しみない拍手を送った。この会は稀有な会で、「出欠も取らない、ゲスト講師には謝礼を払わない、激論・喧嘩もどうぞご勝手に」を33年間も通してきたことは奇跡としか言いようがない。

この主催者が調布先生で、このお方でなければ、多分1年も持たなかっただろう。お疲れさま、と心から申し上げたいところだが、このままパタッといかれると困るので、最低でも後二十年は茶々を入れて行きたいと思う。

その調布先生を無理やり拉致(?)して、北千住経由でウマズイめんくい村まで連行した。村民5号がしずしずと夜伽を申し出たが、丁寧に断られた・・・というのは冗談だが、全身マッサージを施し、ほんの少しだが疲れを取っていただき、翌日、佐野ラーメンを食べに栃木・佐野市へと向かうことにした。司馬遼太郎が万感の思いで終戦を迎えた地で、調布先生をラーメンで慰労するというのが狙いである。このあたり意味不明だが。

           森田屋① 
           正午前に到着・・・(「森田屋東店)

ポンコツ車が止まったのは、「森田屋 東店」。「森田屋総本店」は約200軒ある佐野ラーメン店の中でも老舗の大看板で、東店は数店ある中で最も新しくノレン分けした店。総本店で15年修業した店主が、2012年11月にオープンした。3連休の真ん中とあって、午前11時45分と早めに到着したのに、駐車場は一杯で、すでに10人くらい並んでいた。

20分ほど待って名前を呼ばれ、中に入る。カウンター席(4人)と2人用のテーブル席が4つ、それに奥に小上がりの個室。それほど広くはない。カウンターの向かい側が厨房になっていた。そこに店主と男性スタッフがラーメン作りに励んでいた。女性スタッフは2人ほど。ウマズイめんくい村一行約3人は小上がりの個室に案内された。女性スタッフが調布先生のやんごとなき手提げ紙袋の立ち姿を見て、「これは只のお方ではない。テーブル席や狭いカウンター席に案内すると祟りがあるかもしれない」ととっさに判断したのがわかった。

           森田屋③ 
           メニューは多くない

調布先生はしばらくメニューとにらめっこ。「中華そば600円」と「手作り餃子(3ケ)250円」を選んだ。村長も同じ。村民2号は「中華そば」のみ。12~3分ほどで男性スタッフがいい匂いとともに中華そばと餃子を運んできた。ドンブリが正統派のラーメンどんぶりで、透き通った佐野ラーメン特有の醤油ベース鶏がらスープがたっぷりと揺蕩い、見るからに旨そうな豚バラチャーシュー2枚、それにメンマと刻みネギが浮いていた。その下に佐野ラーメンにしてはかなりぶっ太い縮れ麺がゆらりと寝そべっていた。餃子が追いかけるように登場した。

          森田屋④ 
          お待ちィ~
          森田屋⑥ 
          森田屋の中華そば
          森田屋10 
          脂が浮いた鶏がらスープ

これはいい。スープがいい。変なのが入っていないのがいい。コクがあって、もっちり感のある手打ち麺といい、ホクッと崩れそうなチャーシューといい、これはいい。餃子もいい」
調布先生が独り言のようにつぶやく。

「餃子はデカいし、皮のもっちり感といい肉汁たっぷりの具といい、かなりレベルが高いけど、味が付いていない。もう少し隠し味があった方が村長の好み。ラーメンは麺が太過ぎで、旨いには美味いけど、手もみ感のある精養軒にはちょっと負けると思う。佐野ラーメンとしては好みの別れるところかな」
村長がぼそっと水を差す。
           森田屋⑦ 
           ぶっ太い縮れ麺
           森田屋⑧ 
          秀逸なチャーシュー

「喜多方ラーメンみたいだけど、美味い。チャーシューの柔らかさと味付けがとてもいいわ。私の好み。調布先生の舌はさすが。それに比べて村長は・・・」
村民2号が言いかけて、その後の言葉が止まった。

調布先生が中華そばのスープをすすりながら、ケイタイのメールを打ち始めたからである。その間、口も休みなく動き続けている。しゃべりながら麺をすすり、餃子を味わい、ケイタイを打ち続ける調布先生のお姿にしばらくの間、口をポカンと開けたままだった。オーパの表情が次第に畏敬の眼差しに変わっていくのだった・・・。

           森田屋11 
           餃子の存在
           森田屋13 
           具と皮のバランス


本日の大金言。

凡人は箸でラーメンを食べる。秀才は頭でラーメンを食べる。才人は言葉でラーメンをすする。天才は棺桶に入っても出前を取り続ける。






                       森田屋14 

究極か?立ち食いの松茸そば

 秋といえば、松茸(マツタケ)さま、である。秋のグルメの頂点にそそり立つ、このキノコの王様について説明は無用である。東京・渋谷で井の頭線乗り場近くをウロウロしていたら、「赤字覚悟! 売り切れ御免」の文字とともに「松茸そば 時価600円~800円」の看板が視界に入った。松茸そば? 時価? 見ると、立ち食いそば界ではちっとは知られた「そば処 信州屋」だった。

           信州屋① 
       松茸そばだとお?(東京・渋谷「信州屋」

財政事情がひっ迫している今のウマズイめんくい村にとって、「松茸」という言葉は「純粋」という言葉とともに無縁の二文字。だが、目の前に、「600円~800円」という手が届きそうな数字がひらひら。「信州屋」は新宿にも支店があり、信州更科産の石臼挽きそば粉を使用していることを売り物にしている。そば粉の比率は不明だが、かけ・もりが250円、天丼470円・・・という価格も良心的。こいつは秋から縁起がいいわい。村長は飛び込むことにした。

           信州屋② 
           いい店構え

券売機はない。入るとすぐ両側にカウンター席があり、奥が厨房になっていた。立ち食いスペースもある。揚げ立ての天ぷらが旨そうに並んでいる。スタッフは店長らしき男性が一人、それにおばさんスタッフが2人。いい感じで働いていた。
「松茸そばを食べたいんだけど、今日の時価はいくら?」
「えーと、630円です」

           信州屋③ 
           人生は捨てたものではない

即決。注文してから茹で始めるようで、立ち食いそば屋にしては6~7分と待ち時間が長め。立ち食いそば屋で松茸そばが食べれるなんて・・・長い間人間をやっていると、こういう幸運に当たることもあるんだなあ、食べる前からしみじみと喜びをかみしめていると、女性スタッフが「松茸そば」を運んできてくれた。好感のもてるサービス。

有田焼きのドンブリから湯気がほんわかと立ち上り、そこに松茸さまが横たわっていた。薄切りだが、白いお姫様のよう。数えてみたら8切れ!その横に揚げ玉と刻みネギ。礼儀として、まず匂いを嗅ぐ。濃いめのツユのかえしとカツオ節のすき間から、松茸特有のあの香りがほのかに漂ってきた。思ったほどの香りではないが、値段が値段なのでこの際、ぜいたくは言えない。

           信州屋④ 
           ほのかな香り
           信州屋⑤  
           松茸さまぁ~
           信州屋⑥   
           信州そば

そばは細めでそこそこの旨さ。コシもそこそこある。ツユはかなり甘めで、七味唐辛子をぱらぱらかけると、そばとの相性も悪くない。立ち食いそば屋のレベルとしてはかなり高いと思う。何よりも松茸が予想以上に新鮮で、歯ごたえも食感も「松茸を食べてる」という実感が口中に広がり、鼻腔へと抜けていく。630円の至福。

           信州屋⑧ 
          どないどす?

食べ終えてから、つい余計なことを聞いてしまう。
「この松茸、どこの松茸? まさか国産ではないよね?」
女性スタッフが、店長らしき男に聞きに走った。

「あのう、産地まではわからないそうです」
申し訳なさそうに肩をすくめた。松茸は松茸だ。村長は松茸の残り香を脳内に留めたまま、雑踏に出た。思わず一句。松茸に出はどこかと問うしめじ。お粗末。

本日の大金言。

立ち食いそば屋で松茸そばを食う。このあり得ない世界が現実に存在する。イリュージョンを超える立ち食いの世界に脱帽したくなる。



                        信州屋10 














重量級の衝撃「タルトモンジュ」

 東京・日本橋を散策中に「コレド日本橋」で見つけた重量級の甘い衝撃をご紹介しよう。日本橋周辺はエンターテインメント新聞社時代の村長が毎日のように歩いたエリアで、「丸善」に立ち寄ったついでに、ふと「コレド日本橋」のB1でパンでも買おうかとに足を伸ばした。ここにはパリに本店があるあのブーランジェリー(ベーカリー)「メゾン・カイザー」がある。評価の高いパン屋。

           メゾンカイザー⑨ 
     メゾン・カイザー(東京・日本橋コレド店)
           メゾンカイザー3 
           つい見入ってしまった

「クロワッサン・オ・ザマンド」(324円)に見とれていると、隣にいた女性たちが奥にあるカフェコーナーに移動し始めた。フェロモンの法則なのか、村長も自然とそちらに移動する。そこで、美味そう光線を放っている「タルトモンジュ」(単品452円、飲み物付き850円)を発見してしまった。タルトモンジュって何だ? 店のスタッフに聞いたら、「うちのオリジナルで、洋菓子では人気ナンバーワンの大人のタルトです」。むむむ。その紅色の重厚なビジュアルに村長の胸が高鳴った。有無を言わせぬ圧倒。

           メゾンカイザー1 
           流し目が・・・

カフェコーナーは女性ばかりで男は見渡しても村長一人。穴があったら入りたい。飲み物はアイスティーを頼んだ。3~4分で、白い磁器皿に乗った「タルトモンジュ」が登場。その甘い威厳に、「いよっ、女王様!」と掛け声を掛けたくなった。一辺が7~8センチくらいありそうな真四角で、厚さは4センチくらいありそう。デ、デカい。一番上はラズベリー、チェリー、カシス、ブラックベリーが透明なゼリーで固められていて、赤紫と赤と黒紫が宝石のように閉じ込められていた。思わずため息が出かかる。

           メゾンカイザー② 
           タルトモンジュ登場
           メゾンカイザー③ 
           どきなさい    
           メゾンカイザー④ 
           5層の衝撃

その下はフロマージュブラン(クリームチーズと生クリーム)とタルトが交互に層になっていた。数えてみたら全部で5層。これを食べていいのか、迷いつつ、フォークを入れる。口に運ぶ。ゼリーに包まれた4種のベリーの酸味と甘い果実味が口中に広がる。そこにフロマージュブランが濃厚でねっとりとした甘みで絡んできた。来た来た来た。反則すれすれ。リキュールも入っているのだろう、脳を酔わせる官能的な美味という他はない。

           メゾンカイザー⑤ 
           甘党にはたまらない

一番底のタルトはざくっとしていて、複雑な甘みにアクセントをつけている。真ん中のタルトはフロマージュブランの侵出を受け、スポンジのように柔らかくなっている。かなり大きいので、とても一人では食えないという不安もあったが、あっという間に食べてしまった。パン屋の洋菓子にしては美味過ぎる。甘味中毒者の後ろめたさ。この罪悪感はどこから来る?

           メゾンカイザー⑥ 
           ベリーが4種
           メゾンカイザー⑦ 
          ガブリの余韻

「これって、パリでも全く同じもの?」
村長がスタッフに聞くと、
「多分同じだと思います」
しばしアイスティーで興奮を鎮める。これはスイーツ界の禁断の世界かもしれないぞ。村長は何故かアダムになった気分で、「メゾン・カイザー」を後にした。残暑の空の下。怪しすぎる後ろ姿・・・。


本日の大金言。

洋菓子より和菓子。だが、時に魂消た洋菓子に出会うこともある。和魂洋才。洋魂和才。洋魂洋才・・・。




                       メゾンカイザー⑧

続きを読む

「草上の昼食」後のトマト煮カレー

 久しぶりに六本木・新美術館へ。絵画好きの村民2号に耳を引っ張られるように「オルセー美術館展~印象派の誕生」を観るためである。一昨年パリに行ったときはちょうど休館日で入れなかったので、その時のリベンジ?の意味もある。マネの「笛を吹く少年」やミレーの「晩鐘」などはやはり琴線に触れる。今回の目玉はモネの「草上の昼食」だが、マネの挑発的な「草上の昼食」がないのが寂しい。同時に展示できないものか無性に思った。悲しいかなパリに行くお金はもうない。

           A971  
    オルセー美術館展(東京・六本木「新美術館」)

その後、「ビルの中の昼食」を取ることにした。村長の狙いはむしろこちら。時計を見ると午後12時半。目的の店に行くと、すでに「売り切れ」の表示。ひどすぎる。何が「黒毛和牛のひつまぶし」だ。「晩鐘」の世界とは対極の八つ当たりの世界。気持ちを切り替えて、ミッドタウンに行くと、「スパーシートマト煮カレー」(930円)が流し目を送ってきた。六本木にしては高くはない。「A971」というNY風のレストランだった。

           A971① 
           ビルの中の昼食(「A971」)

店内は配管剥き出しの高い天井が今風で、白と黒のスタッフが忙しそうに動いていた。70~80人は入れそうな大箱だが、さすが「ミッドタウン」といいたくなる夜の匂いが残る造り。ウマズイめんくい村とはえらい違い。女性スタッフに聞くと、「オープンしたのは7年前です」とか。あまり期待せずに「スパイシートマト煮カレー」(税込930円)を頼んだ。村民2号は「温泉卵とアボカドのネギトロ丼」(930円)。どちらも飲み物付きの値段。それぞれアイスティーとブレンドコーヒーを選んだ。

           A971④ 
       ランチメニューはリーズナブル

15分ほどでいい匂いとともに「スパイシートマト煮カレー」がやってきた。中央にはライスの丘、そこにオニオンリング3個とハンバーグが寄り添い、その下にはトマト煮カレーの毒々しい海が広がっていた。サラダ菜と赤キャベツが同時に盛りつけられ、コールスローがたっぷりとかかっている。よく見ると福神漬けもちょこんと乗っかっていて、これがカレーであることを思い出させてくれた。

           A971⑤ 
      予想外の「スパイシートマト煮カレー」

これが予想以上の旨さだった。店の雰囲気から言って、こけおどしの大雑把な味かと思ったら、オニオンリングはカラリと揚げられていて、タマネギの甘みが滲みる。ハンバーグも小さいが本格的なもので、フライパンの味がした。トマト煮カレーはかなり濃いめの味で、ライスとともに口に運ぶと、香辛料が口中にピリピリと広がり「案外、美味いでっしゃろ」とラテンのノリで囁きかけてくる。ライスも悪くない。意外な拾い物。

           A97112 
           濃厚なトマト
           A971⑦ 
           ま、ひと口
           A97115 
           ハンバーグの意外

温泉卵とアボカドのネギトロ丼はイマイチだわ。水菜が多すぎて、味が流れる感じ。コーヒーは美味いけど」
「村長の方が当たりだったね。ただトマトを煮込んだカレーはちょっと味が濃すぎるかもな。福神漬けはこの構成だといらないと思う」
「ボリュームもあるし、若い人にはいいかも。私はやっぱり草上でランチしたいわ」
「モネとマネ、どっち?」
「村長こそどっちよ。マネでしょ?」
「夢の中のマネ、現実のモネ・・・」
「逆でしょ?逆マネだってあるのよ」
「・・・・・・」


本日の大金言。

昼食はどこで食べても官能的で楽しい。「ビルの上の昼食」もクールだと思う。現代のモネ・マネが出る日も近いかもしれない。





                        A97110 

黄金スープの「にんにく塩ラーメン」

 「最近あまり春日部の情報が出ませんね。村長は煮干しラーメンがお好きのようですが、春日部に埼玉でも指折りの煮干しラーメンがあること、ご存じでしょう? 知らないとしたら、村長失格です。一度、自慢のポンコツ車を飛ばしてみてください」
埼玉・春日部に住むB級シンジケートの知人からかようなメールが入った。村長はフンと鼻先で笑った。

「井之上屋」であることくらい知ってらあ。だが、食べたことはない。ポンコツ車ではなく電車で途中下車することにした。午後1時過ぎ。東口の「ぷらっと春日部」に立ち寄って雑談。「ああ、あそこは美味いですよ。すごい人気です。煮干しラーメンもいいですけど、元々は確か塩ラーメンが看板のはずです。ここからは随分歩きますけど、行く価値は十分あります」とスタッフ。

           井之上屋 
           歩いて20分

バスもあるが歩くことにした。確かに遠かった。西口からメーンストリートを汗をかきかき20分ほど。通りに面して、春日部地方庁舎の向かい側に「らぁ麺 井之上屋」の木の看板がかかっていた。5000歩くらいは歩いたろうか? ちょうど塩分が欲しくなった。店は11年前にオープン、店内は4席ほどのカウンターが二つ、それと大きなテーブル席があり、そこに「団体用」と書かれた札が置かれていた。カウンターの向かいが厨房になっていて、イケメン風今どき髭の店主が一人で作業に没頭していた。シンプルな静ひつ。悪い雰囲気ではない。

           井之上屋① 
           埼玉有数のラーメン屋
           井之上屋② 
           安くはない

煮干しラーメンではなく「塩旨らぁ麺」(730円)にすることにした。ニンニク風味、と表記してあった。ニンニク風味の塩ラーメンとはどこにでもあるようだが、意外に珍しい。10分も待たずに「塩旨らぁめん」が対面から出された。やることに無駄がない。スープが印象的で、白濁した半透明がキラキラと黄金色に染まっている。中央に豚バラのきれいな煮チャーシュー、それに水菜と海苔、その下に輪郭のしっかりした細麺がゆったりと控えていた。食欲をそそるいい匂いが立ち上っている。

           井之上屋⑤ 
          シンプルな旨味の予感

脂がうっすらと浮いたスープはたぶん鶏ガラ中心の出汁で、すっきりとした塩味だが、奥深い旨味がじわじわと来た。ニンニクの匂いがまろやかなシンプルの底から立ち上がってきた。幾種類もの隠し味が潜んでいるような旨味。麺は三河屋製の中細ストレート面、やや固めで、それがいい歯ごたえとなっている。村長の好みの麺。チャーシューは大きく、崩れそうなほど柔らかい。水菜の中和力。よく計算されたシンプル。欠点を探そうとしたが、欠点がないことが欠点と言うしかない。

           井之上屋⑥ 
           いい仕事、してる?
           井之上屋⑦ 
           ま、ひと口
           井之上屋』7 
           硬めの細麺
           井之上屋⑧ 
           誘惑の予感

「いい仕事、してるねえ」
中島誠之助気取りで店主に話しかけてみた。どう見ても、怪しいオッサンにしか見えないのに。
「元々は塩ラーメンしかやってなかったんですよ。醤油ラーメンも加えて、メニューを増やしましたが、全部一人でやっているので大変ですよ。煮干しラーメンですか? 土日だけ限定で出してます」
「へえー、土日だけか。また来るよ」
村長は店を出ると、すぐに春日部のB級シンジケートの知人にメールを送った。ただひと言「マル」。


本日の大金言。

情報はありがたい。いい情報でも悪い情報でも、そこから何かが生まれる。







                      井之上屋⑨ 




まさかの前衛的「冷やしカレーうどん」

 江戸表の用事で茅場町に立ち寄った後、久しぶりに北千住で途中下車。ジャズバー「ゆうらいく」に行くには時間が早い。残暑の夕暮れの中、宿場町通りをブラ歩きする。すると、「カレー屋さんの冷やしカレーうどん」の幟(のぼり)が目に入った。冷やしカレーうどん? 先日「冷やしカレーライス」をメニューにしている店はないかと情報網を駆使して探したが、発見できなかった。「冷やしかつ丼」があるのだから、「冷やしカレーライス」があってもおかしくない、そう思ったからだ。

           JSカレー① 
        むむ 「冷やしカレーうどん」だとお?
           JSカレー 
            国籍不明の店構え

その空振りを埋め合わせするかのように、「冷やしカレーうどん」の幟(のぼり)。これは入るっきゃない。「J’Sカレー」というカレー屋で、今年5月にオープンした店だった。不思議な店で、「大江戸の黒カレー」や「赤カレー」が売りのようで、「千住葱(ねぎ)」をメニューに入れてもいる。アジアンテーストの匂いもする。

          JSカレー③ 
          大江戸のカレーって何だ?

厨房を囲むように半円のカウンターがあり、椅子は10席ほど。村長はすぐに「冷やしカレーうどん」(750円)を頼んだ。スタッフは男2人。
「珍しいね。冷やしカレーうどんなんて初めてだよ」
「うちのオリジナルなんですよ。シェフが和食の料理人だったので、工夫して作ったものです。夏の間の限定メニューです」
店主らしい男がそう説明する。

シェフは無口で、黙々と「冷やしカレーうどん」を作っている。12~3分ほどで、その珍しいものがやってきた。白い角形の平皿に黄色い冷やしカレーうどんが盛られ、その上にはタマネギのドデカいかき揚げ、さらにその上には白髪ねぎ(千住葱)が盛られていた。レンゲには肉味噌が盛られている。何というビジュアル。それだけではない。高菜に包んだ大きいおにぎりが皿の隅に乗っかっていた。

          JSカレー⑥ 
          ドヒャーッ1
          JSカレー⑦ 
          ドヒャーッ2
          JSカレー⑤ 
          ドヒャーッ3

このあまりに前衛的な冷やしうどんを分類するのは止めにした。目の前にある物がすべて、と思うしかない。村長はまずはうどんを口に運んだ。つるっとした食感、もちもちしたコシ、ノド越し。はなまるうどんのような食感で、悪くはない。カレーのルーは小麦粉とカレー粉をベースにしたスパイシーなカレーで、奥に和風の出汁の存在も感じた。

          JSカレー⑧ 
          冷たいB級の美味
          JSカレー10 
          ニッポンの正統

肉味噌を箸で溶かしながら食べると、これが意外に美味。冷たいうどんが生きている。タマネギのかき揚げはカラッと揚げられていて、それなりに美味いが、欲張り過ぎの感じがしないでもない。高菜のおにぎりは中にシーチキンが入っていて、フツーに美味い。野心的で、実に斬新なメニューで、わけがわからない点もないではないが、その意気やよし。北千住の新しい名物になる可能性だってある。

村長は食べ終えると、ひょっとしてこれは明治維新後あんぱんやかつ丼を発明した日本の「何でもありの文化」の正当な後継かもしれないと思い直した。


本日の大金言。

事実は小説より奇なり。イギリスの詩人バイロンが、もしこの「冷やしカレーうどん」を食べたら何というか聞いてみたい。織田信長なら喜ぶかもしれない。




                        JSカレー12 


「東京駅の牛タンカレー」でリカバリー

 東京駅八重洲口近くの「ルノアール」で村長が関わっている会報誌の打ち合わせ。エンターテインメント新聞社時代とはまったく違う編集方針なので、エイリアンにでもなった気分。真面目に生きることも大事と思い直し、高いコーヒーを飲みながら、2時間かけてゲラチェック。
疲れて外に出ると、残暑の中に秋の兆し。どんよりとした空を見上げながら、今年夏の異常気象は、ひょっとして地球=人類の終わりの始まりの前触れかもしれないぞ、そんな妄想が脈絡もなく頭をよぎる。

夏の疲れが全身を包んでいるのを自覚。時計を見たら、午後3時。昼飯を食うのを忘れていた。やっぱり疲れている。去年オープンした東京駅グランルーフ地下に「伊達の牛たん本舗」があることを思い出し、そこに直行。ここの「牛たんカレー」で、夏の疲れを一気に吹き飛ばそうと考えた。牛たんカレーで華麗(加齢?)なるリカバリー。

           伊達の牛たん① 
         伊達の牛たん(東京駅グランルーフB1)

「伊達の牛たん本舗」は仙台に本店があり、都内にも数店オープンしている。グランルーフ店はその中でも最も新しい店。高級感のある入り口の暖簾をくぐると、L字のカウンターがあり、テーブル席もある。場所柄なのか午後3時だというのに結構混んでいる。女性客が多い。女性がこういうところでスタミナをつけていることに何故か感動する。

           伊達の牛タン 
           安くないメニュー

村長は座るなり、「牛たんカレー」(サラダ付き 970円)を頼んだ。安くはないが、これがメニューの中で一番安い。7~8分ほどで結構ボリュームのあるサラダと主役の「牛たんカレー」が登場。「牛たんカレー」は白い磁器の深皿の中で、旨そうな匂いと湯気を放っていた。黒々とした牛たんが茶褐色のルーの沼の中でゴロゴロ、その量が半端ではない。炊き立ての「ひとめぼれ」は固めでボリュームもかなり多め。

           伊達の牛たん②  
           牛たんカレー!
           伊達の牛たん④  
        焦がしタマネギの乗ったサラダ
           伊達の牛たん⑦ 
        濃厚な恋愛

心の中で合掌してから、スプーンで牛たんをすくって口中へ。ごめんね、牛ちゃん。深いコクと酸味のルーとともに、柔らかい牛たんが歯の間でホロホロと崩れ落ちる。美味の崩落。牛たんはかなり煮込んでいるのがわかる。スパイスが後から来る。それほど辛くはない。これは和牛かそれとも? 気になって店のスタッフに聞くと声のトーンを落とし、「オーストラリア産を使っています」。全体の印象は高級なレトルトのような味。

           伊達の牛たん⑥ 
          牛たんがゴロゴロ
           伊達の牛たん⑨ 
         コクの海

タマネギとか野菜の姿が見当たらない。溶け込んでしまったのか、スープとして使っているのかわからない。牛たんは飽きがくるほどの量で、食べているうちに自分が牛になってくるような気がした。食べたつもりが食べられているかも。何とか平らげると、モオ~と鳴きたくなった。これで夏の疲れが回復するか?


本日の大金言。

日本で最初にカレーを食べたのは山川健次郎だという説がある。明治4年(1872年)渡米した際に船舶の中で賞味したというもの。山川はライスのみを食べてカレーは残したという。笑えるエピソードだが、元会津白虎隊の意固地も感じる。



                      伊達の牛たん10

女神湖ペンションのモーニング

 旅の楽しみの一つが旅館など宿泊施設の食事。戸倉上山田温泉の老舗「亀屋本店」は源泉かけ流しの温泉もよかったが、食事がよかった。一泊2食付で一人1万円の安めのコースを選んだが、夕食には信州アルプス牛の朴葉焼きも入っており、しめじの土瓶蒸しとともに秀逸な味だった。建物も部屋もがイマイチだったが、それを埋め合わせする内容で、「これで1万円は高くはないわ。ご飯の美味さも予想を超えていたわ」と辛口の村民2号が星二つの評価。

          スノーバード 
   女神湖湖畔のオアシス(ペンション「スノーバード」)

女神湖湖畔のペンション「スノーバード」のモーニングも雰囲気込みで印象に残った。オーナーは東京出身のカメラマンで、28年前に夫婦でこの地に移住、女神湖湖畔でも指折りの人気ペンションになっている。奥さんが料理を担当、ご主人はパン担当とか。夜明け前に大雨が降って、女神湖湖畔はうっすらと煙っていたが、白亜のペンションの窓から濃い樹林が見える。食堂は1階で、BGMにはエンヤが流れている。

          スノーバード 
          夕食の「牛ほお肉の煮込み」

モーニングは最初にアップルジュース。信州産リンゴのやや甘めのジュースを飲むと、全身が洗われた気分。
「ここにいたら時間が止まってしまいそう。昨日食べた「「夕食の牛ほお肉の煮込み」が美味かった。二日間煮込んだそうよ。信州牛ではないようだけど、とても柔らかくて、フォークを入れるとホクッと崩れるほどだった」
「それよりこのモーニングも信州らしい。野菜とオレンジ、スクランブルエッグ、ロースハム、それに自家製パン。どれから食べようか」

          スノーバード②  
          グッモーニング!
          スノーバード⑤ 
          信州の実力
          スノーバード⑦ 
          ルバーブジャム

目の前のモーニングはひと目で鮮度の良さがわかった。信州はこうでなければならん。村長が気に入ったのが、パンに付けるジャム。スモモのジャムだとばかり思っていたがルバーブという野菜のジャムだそう。オーナー手作りのジャムで、「茎だけ使って煮込んでるので赤いんですよ。酸味が特長です」と説明してくれた。果実の甘さと酸味としか思えない。オーナーには申し訳ないが、パンは特筆するものは感じなかったが、ルバーブジャムが美味だった。

          スノーバード8 
          ポテトサラダ

「あえて言うと、モーニングに牛乳も欲しいね。一泊2食付で8000円(税抜き)だから、あまりぜいたくは言えないけど」
「途中の牧場で充分飲んだでしょ。それよりこのポテトサラダ、美味いわよ。ロースハムも厚くて好感。女神湖の環境込みで私は大満足よ。足るを知る。村長にはこの5文字を噛みしめてほしいわ。文句ばっかり言ってないで」
「・・・・・・・」
村民2号が一瞬だけ女神に見えた。


本日の大金言。

足るを知る。普段忘れがちな言葉だが、信州の大自然が人間のちっぽけさとともに、その大事な心構えを思い出させてくれる。足るを知る。いや、樽を知る・・・いえねえ、また邪心が・・・。





                       スノーバード10 


搾り立て牛乳とメロンパン

 ポンコツ車の旅で見つけた掘り出し物をご紹介しよう。信州・東御から県道40号線を白樺湖方面へとドライブ中に、広大な牧場が見えてきた。「蓼科第2牧場」で、霧に煙る荒船山をバックに馬が放牧されていた。その美しさに村民2号が感嘆の声を上げた。その入り口にロッジ風の一軒家。「牛乳専科もうもう」の看板。牛乳好きの村長の好奇心がむくっと起き上った。

          蓼科牧場① 
          絶景かな~(蓼科第2牧場)
          もうもう 
          牛乳専科もうもう

入るとウッディーな造りで男性スタッフと女性スタッフが数人働いていた。頭上にメニュー板があり、「冷たい牛乳 大250円 小200円」「コーヒー牛乳 320円」「ソフトクリーム350円」などなどの文字が見えた。搾りたての牛乳! 村長は「冷たい牛乳 小200円」と、入った時に目を付けていた「メロンパン(180円)」を頼むことにした。村民2号は「ホットコーヒー290円」と「クルミパイ(210円)」

           もうもう① 
           ひと味違うメニュー
           moumou.jpg 
           焼きたて自家製パン

パンはここで焼かれていて、奥からパンの香ばしい匂いといい牛乳の香りが漂ってくるようだった。驚いたことに牛乳はビールジョッキで、そこにアルミの大きなヤカンからどくどくと搾りたての牛乳がほとばしった。牧場の豪快な注ぎ方! 窓から牧場が見える。いつの間にか高校生の団体がドドドと入ってきた。ほとんどがソフトクリームを注文し美味そうになめていた。

           もうもう③ 
           豪快な注ぎ方
           もうもう⑤ 
           正統派メロンパン

牛乳は濃厚で、ひと口で新鮮さがひと味違った。ほのかな甘みと牧草の匂いがする。メロンパンは正統派のメロンパンで、ビスケット生地が厚めで、中のパン生地はふわっとしていてしっとり感もある。ここにも牛乳の美味が流れている。意外な掘り出し物に村長の胸がピコピコした。これだからポンコツ車の旅は止められない。

           もうもう⑨ 
         ビスケット生地と中のしっとり感
           もうもう11 
        クルミパイの美味
           もうもう10 
           絶望することはない

「クルミパイもイケるわよ。パイ生地が厚くて、中はカスタードクリームに細かく砕かれたクルミが入っているわ。甘さよりも塩気が効いていてそれがいいわ。コーヒーは普通かな」
「ソフトクリームとコーヒー牛乳もきっと美味いだろうな」
「ダメよ~、ダメダメ。予算がないわ」
「いいじゃないの~」
あまりにくだらない会話がしばらく続くのだった。日本は平和である。

本日の大金言。

信州は北海道に劣らない自然の味覚の宝庫だが、ガイドブックにない意外な美味があちこちにある。それを探す楽しみ。







                       もうもう13 


ワイナリーの後の栗あんしるこ

 マンズワイン小諸ワイナリーで、500円を払って、同社が力を入れているプレミアムワイン「ソナリス」を試飲した。「信州小諸シャルドネ樽仕込み」「信州シャルドネ樽仕込み」「信州カベルネソーヴィニヨン」「信州小諸メルロー」の4種類。ビンテージは2011~2013年と若い。そのため美味いというより硬さが目立ち、赤はやや期待外れ。もう少し熟成を待ちたい。シャルドネの方が美味かった。小諸シャルドネはなぜかシャブリのような石灰のブーケがした。記憶はここまで。

           小諸ワイナリー③ 
      500円の天国?(マンズワイン小諸ワイナリー)
           小諸ワイナリー② 
           夢の中へ

食い意地飲み意地が過剰なためか、数十種類ある無料の試飲も片っ端から飲んでしまったため、ほろ酔いを通り越して、完全に酔っぱらってしまった。ポンコツ車の運転を村民2号が肩代わり、泥のように眠ってしまった。気が付いたら、次の目的地小布施に到着していた。村長が来たかった「栗の町」である。200年以上の歴史がある「桜井甘精堂」を始め「小布施堂本店」「竹風堂本店」」「栗庵風味堂」などが小京都のような街並みに並んでいる。栗あん好きにとってはメッカである。

           竹風堂① 
           目的の竹風堂本店

村長はその中の竹風堂本店」(明治26年創業)に飛び込むことにした。珍しい「栗あんしるこ」(530円=税抜)を賞味するのが目的。おそらく日本広しといえど栗あん100%のおしるこを食べさせてくれるのはここしかない。酔いざめのおしるこの美味さはかの池波正太郎も書いているが、この美味さは「左党のあんこ好き」にしかわからない。しかもここは栗あんしるこ!

あきれる村民2号を置いて、村長は2階のレストランへと駆け上がった・・・つもりが酔いが残っていたのだろう、階段を踏み外してしまい、弁慶の泣き所をしこたま打ってしまった。酔いと痛みと栗あんしるこ。まるで人生そのもの。席について「栗あんしるこ」を注文する。若い女性スタッフの愛想がいいのが救い。

           竹風堂② 
       ここでしか食べられない「栗あんしるこ」

注文してから餅を焼いているようで、12~3分ほどかかって、「栗あんしるこ」がやってきた。木のお椀の蓋を取ると、中から栗あんの海に小さめの切り餅が2個浮かんでいた。湯気。箸休めにはシソの実の塩漬け。栗あんは国産の栗で、昔のように完全小布施産ではないようだ。砂糖は白ザラメを使っている。むろん添加物はなし。

           竹風堂④ 
           来たあ~
           竹風堂⑤ 
           初めての世界

少しだけ焼き焦げのある餅を栗あんにどっぷりと付けて口中へと運ぶ。柔らかな餅とどろりとした栗あんの相性は悪くない。栗かの子と同じもっさりとした栗のいい風味が立ち上がってくる。村長も初めての世界。甘さがかなり抑えられている。あっという間にきれいに平らげてしまった。だが、期待が大きすぎたためか、小豆あんほどの感動は湧いてこなかった。美味いには美味いが、おしるこ番付風に言うと、関脇の美味さ。

           竹風堂⑧ 
           喰いねえ、くいねえ
           竹風堂10 
           黄金の甘み?

「ワインを飲みまくってから栗あんしるこを食べるなんて、小布施の栗に対する冒涜よ。味覚が変になってるはずよ」
村民2号が1階で買ってきた「栗のどら焼き」のお土産を手にしながら、村長にまたも手裏剣を飛ばした。痛みがぶり返してきた。人生は思うようにはならない・・・。


本日の大金言。

小布施の栗かの子の美味さは特筆もの。栗どら焼きも美味かった。次回は飲み過ぎずに小布施を食べ尽くすことにしよう。




                       竹風堂12
プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

最新記事
カテゴリ
彦作のつぶやき
最新コメント
月別アーカイブ
カレンダー
08 | 2014/09 | 10
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 - - - -
最新トラックバック
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR