頂点か?銀座鹿乃子のあんみつ

 「先日、銀座鹿乃子の豆大福のブログ興味深く拝見しました。私は銀座鹿乃子はやはりあんみつだと思います。あのあんみつを食べずしてあの店は語れないと思います。村長がそれをスルーしたのが大変残念です。ああもったいない(涙)」
知人のスイーツ好き女性からそんなメールが届いた。これは挑発か?
           銀座鹿の子① 
     鹿の子あんみつやでえ~(銀座すずらん通り)

それが頭に残っていた。東京会館で行われる「ペンの日」に出席する機会を利用して、夕暮れに包まれた銀座すずらん通りに再び立ち寄ることにした。あまり時間がない。2階の喫茶室へ急ぐ。眼下に銀座4丁目交差点を見下ろせる見晴らしのいい席はほとんど埋まっていた。白人女性客の姿も見える。だが、たまたま奥の席が空いた。そこに案内された。ゲット・ラッキー!
           鹿乃子 
           2階喫茶室へ急げ

眼下のきらびやかな晴海通り。和光と三越がネオンの海に浮かび上がっている。村長はメニューの中から人気1位の「鹿乃子あんみつ」(税込み1380円)を選んだ。正直、値段を見て、引き返そうかと思った。銀座値段だと思い直して、飛び込むことにしたのだ。ここで今食べないと一生後悔することになるかもしれない・・・。今でしょ。
           鹿の子③ 
           銀座値段

10分ほどで、お盆に乗った「鹿乃子あんみつ」がやってきた。ほうじ茶付き。まずその器の大きさに驚く。その中の世界は鹿乃子という店名そのままにさまざまな種類の豆が色とりどりに散らばり、甘い小宇宙を作っていた。その量もフツーのあんみつの2倍はあるのではないか? 
           鹿の子④ 
           絶景とあんみつ

中央には蜜煮した大栗がつぶしあんの上に乗り、その周囲に2種類の花豆、赤えんどう豆、青えんどう豆、虎豆、それに2種類の白玉が色鮮やかに配置されていた。その下には寒天の海。主役級のつぶしあんは備中大納言、その他の豆は北海道産と表記してあった。なぜか果物はない。目で楽しむことも念頭に置いている、そんなあんみつ。
           鹿の子⑤ 
           豆好きにはたまらない

蜜は黒蜜も選べるが、素材を楽しむために白蜜を選んだ。それを二周させてから、花豆、虎豆、青えんどう豆の順にスプーンを運ぶ。かなり甘い。甘味中毒者の村長が甘いと感じるほど。塩気の赤えんどう豆でバランスをとる。大栗はきれいな味、主役級の備中大納言のつぶしあんに取り掛かる。ねっとりとしていて風味も十分にある。色もいい。いい小豆であることはわかった。これもかなりの甘さ。
           鹿の子⑥  
           白蜜をかける
           鹿の子⑧ 
           花白豆と紫花豆
           鹿の子10 
           赤えんどう豆と青えんどう豆
           鹿の子⑨ 
           虎豆どす
           鹿の子13 
           たまらないあんこ

寒天はやわらかめ。村長はもっときりっとした歯ごたえのある寒天が好きだが、これは好みの問題かもしれない。白玉がもっちりしていて美味。抹茶入りの白玉も風情がある。食べ進むうちに、ふと村長は思った。これは気が多すぎるあんみつではないか。気の多いあんみつ姫。バラエティーに富み過ぎて、印象が散漫になる。二番バッターばかりの野球チーム。そんな感じ。
           鹿の子11  
           寒天の存在

期待が大きすぎた分、1380円のやや期待外れ。素材はそれぞれ素晴らしいのに感動が来ない・・・。だが、甘味中毒者のサガで、あっという間にきれいに平らげた。むろんこれは好みの問題である。空になった器の先に銀座の輝ける夜が広がっていた。この夢のような夜景。これだこれだ、このロケーション込みの値段なのだ。そう考え直して、村長は急いでレジへと向かうのだった。フトコロに風・・・。


本日の大金言。

銀座鹿乃子のあんみつは日本経済新聞が行った「ツウが選ぶお取り寄せあんみつ」で堂々1位に輝いている。お取り寄せは値段も安い。今度はお取り寄せにしてみようっと。



                        鹿の子14 




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紅葉の中の「和豚かつバーガー」

 箱根美術館でピークは過ぎたものの見事な紅葉を見た後、強羅駅近くで噂の「田むら銀かつ」で豆腐かつ煮を食べようとなった。時刻は午前11時半過ぎ。だが、店の前には大行列。青い目の外人さんまでいる。ケッ、と村長がつぶやくと、村民2号もボソッと「並んで食べるほどではないわ」。メディアの露出は恐ろしい。富士屋ホテルでジョン・レノンが愛したアップルパイを食べるのとはわけが違う・・・などと妙な理屈でその場を離れることにした。
           箱根美術館② 
           箱根美術館の紅葉
           田むら銀かつ 
           田むら銀かつ亭の行列

すぐ隣に「銀かつ工房」の看板が見えた。そう混み合ってはいない。メニューを見ると、カレーやサンドウイッチ、スイーツ類中心。「田むら銀かつ」経営で、ファストフードスタイルのカフェ。値段が安めなのがいい。その中で「銀かつバーガー」(税込み500円)にビビビと来た。「和豚もちぶた使用」と書いてあった。和豚もちぶただって?
           銀かつ工房 
           隣りは穴場か?(銀かつ工房)

「行列に並ぶバカ、スマホ頼るバカ、裏に道あり花の山だってえの」
村長がしたり顔でつぶやくと、
「ここんとこちょっと贅沢しすぎだから、ここで締めなきゃね。でも私はコーヒー(350円)も頼むわ」
と村民2号。
結局、銀かつバーガーとコーヒーを頼んだ。合計850円なり。
           銀かつ工房1 
           和豚もちぶたのバーガー

銀かつバーガーはロースかつバーガーで、餅のように柔らかいブランド豚「和豚もちぶた」を使用している。それを挟んだバーガーが目の前にある。窓の外には紅葉も見える。バンズは小ぶりで、その間に挟まった和豚もちぶたのとんかつは厚さが優に2センチほどあった。予想外の分厚さ。その上にはキャベツが3センチほどの厚さで乗っかっていた。だが、すき間が多い。
           銀かつ工房③  
           絶景かな~
           銀かつ工房④ 
           小ぶりだがこの高さ
           銀かつ工房⑤ 
           わて、どうどす?

手でぎゅっと押してから、ガブリと行った。ソースとマヨネーズがしたたり落ちるのがわかった。バンズはフツーだが、とんかつのジューシーさが心地よい。キャベツがほどよい合いの手。口中で「私、案外イケるでしょ」とささやきかけるよう。和豚もちぶたのロース肉はピンクがかったきれいな色で、実に柔らかい。脂身がない。もう少し脂身があった方が好みだが。
          銀かつ工房⑨ 
          言葉は不要?
          銀かつ工房10 
          やめてえ~

ラードで揚げているのかと思ったが、「体にいいこめ油です」(スタッフ)とか。舌の修行が足りない。全体のボリュームはさほどない。
「中満足だけど、コーヒーも飲めたし、いいランチになったわ。コーヒーは100円高いと思うけど、カロリー的にもダイエットになるわ」
和豚になりかけている(?)村民2号がつぶやいた。隣りの行列がさらに凄いことになっていた。


本日の大金言。

大満足ばかり求めてはいけない。中満足や小満足も満足の内。足るを知る、を噛みしめる。



                       銀かつ工房11

幻の豚のポークジンジャー

 今回は箱根・湯本で見つけた高座豚のポークジンジャーについて。「画廊喫茶ユトリロ」で昼飯を食べようと、湯本駅からトボトボ歩いていると、ユトリロは満杯だった。仕方なく、その先を見たら、「浅乃(あさの)」という喫茶店が見えた。ユトリロほど個性がない、どこかのんびりとした古い喫茶店。だが、その店先に「手づくりハンバーグ」と「高座豚を使用 ポークジンジャー」という手書きの黒板が見えた。
           浅乃① 
           期待せずに・・・(箱根湯本「浅乃」)
           浅乃 
           高座豚だって?

ユトリロがどこか高ビーならこちらは庶民的で、中から気さくなオバサンが出てきそうだった。高座豚は地元のブランド豚で、「幻の豚」と言われたもの。市場に出回ることも少ない。その肉質には柔らかくきめ細かいという。脂身の質が高いことも知られている。これは入るっきゃない。

店内に入ると、意外に広く、ベージュの壁には花の絵が飾ってあり、茶色いソファのテーブルが4つと10人ほど座れそうな席が一つ。奥が小さなカウンター席になっていて、厨房がその奥にあるようだった。想像通り、おばさんが3人で切り盛りしていた。
           浅乃② 
           箱根価格?

村長は、その幻の高座豚を使った「ポークジンジャー」(ライス、お新香、スープ付き 1100円)を頼んだ。牛肉好きの村民2号は一日15食限定だという和牛の「手づくりハンバーグ」(同 1150円)を注文した。待つこと15分ほどで、大根の浅漬けとコンソメスープが登場、続いて鉄板に乗ったポークジンジャーがジュウジュウといい匂いを立ててやってきた。ハンバーグも続いて登場。
           浅乃③ 
        高座豚のポークジンジャー登場
           浅乃⑥ 
           こちらは和牛のハンバーグ

大根の浅漬けがさっぱりとした旨さで、おばさんコックの腕が確かなことが見て取れた。ポークジンジャーはロース肉の大きい切り身が3枚、ドヤ顔で乗っかっていた。醤油ベースの自家製タレがかかっていて、その下に炒めたもやしとキャベツ、たまねぎがどっさりと敷かれていた。湯がきしたブロッコリーも2個。一見ごくフツーのように見えるが、ていねいな作り方で、これは当たりかも、と直感した。
          浅乃2 
         漬け物に感心
          浅乃④ 
          柔らかな豊饒

高座豚のロース肉は実に柔らかく旨みが凝縮しているようだった。真っ白い脂身のきれいな甘み。「確かにこれはひと味違うな」という奥行きの深い味わいだった。炊き立てのライスも旨い。上質な家庭の味。村民2号も手づくりハンバーグに舌鼓を打っていた。ライスが少ないのが少々残念だが、「お代わり、できますよ」とおばさん。それもクリア。ミカンを2個、「これ、よかったら」とサービスしてくれたり。
          浅乃⑦ 
          幻ではない
          浅乃⑨ 
          旨味がひと味違った
          浅乃10 
          野菜の美味

「意外と言っては失礼だけど、旨いですねえ」
村長が言うと、
「まあヒマですから、手間ひまかけて作ってるんですよ。醤油タレですか? これはちょっと自信があるんです。店を始めて16年ですけど、継ぎ足し継ぎ足しで寝かせているものなんですよ。だから、旨味が出てくるんだと思います」
おばさんが気さくに応じる。のどかな箱根の時間。ついついコーヒー(550円)まで追加注文してしまった。予算オーバー。
           コーヒー 
         コーヒーまで頼むことに・・・

「結果的にユトリロに行かなくてよかったわ。コーヒーもサイフォン式で、美味かった。くじ引きで当たった気分だわ」
「絶望の隣に希望があるってことか?」
「オーバーねえ。これで夕食はアルコール抜き。コーヒー代分、取り戻さなきゃ」
「まさか・・・・」
「希望の隣に絶望が潜んでいるってこともあるのよ」
「・・・・・・」


本日の大金言。

人生もB級グルメもは双六(すごろく)かもしれない。行ったり来たり。悪いことだけが続くわけではない。


                       浅乃11 







ジョン・レノンが食べたアップルパイ

 もうすぐ12月8日。紅葉を見ながらジョン・レノンが愛したアップルパイを食べに箱根に足を伸ばすことにした。今年5月に箱根に行った時には、不覚にもジョンがアップルパイ好きだったことを知らなかった。ましてや富士屋ホテルでアップルパイを食べていたなんて・・・。
              ジョン・レノン②     36年前のジョンとヨーコ手前はショーン=嶋写真館)

スウェーデンから帰国中の瘋癲北欧先生からその話を聞いて、村長は大いに後悔の念に駆られた。村長は渓流斎さんや北欧先生のようなフリークではないが、心のどこかにいつもジョンがいる。ジョンは軽井沢万平ホテルのアップルパイも愛していて、ヨーコや幼いショーンと一緒によく食べていたともいう。時空を飛ぶアップルパイ。これは行かずばなるまい。 

箱根・宮ノ下にある富士屋ホテルに着いたのは午後2時を回っていた。ジョンはいつもその1階にある「オーキッドラウンジ」の壁から3番目の席に座って、アップルパイと紅茶を楽しんでいたという。だが、ホテルは凄い混みようで、「少しお待ちいただきますが」「どのくらい?」「あるいは1時間半から2時間くらいになるかもしれません」ウエイターとそんな会話を交わす。むむむ。ホテル内を見学しながら、フロアのソファで待つことにした。
           富士屋ホテル② 
           オーキッドラウンジ(箱根富士屋ホテル)

約1時間ほどで名前を呼ばれた。ツイテル? 3番目ではなく、7番目の席に案内された。テーブルと椅子が素晴らしい。ガラスの向こうに見事な庭園の紅葉が見える。辛口の村民2号も「さすが明治11年(1878年)創業、日本有数の老舗ホテルだけのことはあるわ」と感心しきり。スタッフの対応もケチのつけようがない。村長も次第に「ハード・デイズ・ナイト」から解放されてくる・・・。
           富士屋ホテル2 
           窓から見事な紅葉
           冨士屋ホテル② 
           ジョンも見た?メニュー

「アップルパイと紅茶」のセット(1530円=税込み)を頼んだ。アップルパイは温と冷が選べる。村長は温を選んだ。村民2号も温でコーヒーのセット。安くはないが、この出費は納得済み。15分ほど待っていると、白磁のティーポットに入った紅茶、白磁の皿に乗ったアップルパイがやってきた。そのシンプルな姿に圧倒された。デカい。厚さは5センチくらいはある。フツーのアップルパイの2倍くらいありそう。
           アップルパイ 
           ついにアップルパイ!
           富士屋ホテル⑤  
           この圧倒

「ハーブとか生クリームとか何にも付いていないわ。よほど自信があるのね」
村民2号が目を丸くしながら、ポツリ。
「そりゃあ、明治時代から同じ作り方をしているんだからな。時流に流されないアップルパイなんてあまりない」
村長が付け焼刃のセリフを吐く。

ナイフとフォークで切り込みを入れ、まずはひと口。甘さはかなり抑えられていて、半透明のリンゴの甘みと酸味、それにバターの風味の効いたパイ生地が口中で混じり合う。シナモンの香りがかすかに漂う。柔らかく蜜煮したリンゴはひとかけらが大きめで、それがぎっしりと詰まっている。あまりに素朴であまりに自然な美味。添加物の気配はない。
           富士屋ホテル⑥ 
           悲しい別れ
           富士屋ホテル⑦ 
           美味の伝統 
           富士屋ホテル⑨ 
           言葉はいらない

「このリンゴはどこのリンゴ?」
ウエイトレスに聞いてみた。「スター・リンゴです」というダジャレを期待したが、甘かった。
「青森の紅玉です。それを1個分使っているんですよ」
さり気なくかわされる・・・。

「恥ずかしいわ。ジョンが天国でまたバカが1匹来たぞって笑ってるわよ」
丸ごと1個ぺろりと平らげた村民2号が、満足そうにコーヒーを飲んでいる。オノ・ヨーコはアップルパイを食べているのか、気になった。


本日の大金言。

ジョンはスイーツ好きで、ソフトクリームやアイスクリームもよく食べたようだ。12月8日はジョンの34回目の命日。世界はジョンの願いとは反対にどんどんきな臭くなっている。もう一度、イマジンを聴くことにしよう。



                        富士屋ホテル10 

あの「日光そば祭り」に乱入する

新そばの季節、である。 3連休のど真ん中。エンターテインメント新聞社時代の友人夫妻に誘われて、そば界のビッグイベント「日光そば祭り」に行った。聞きしに勝る混み具合で、道路は大渋滞、いくつかある広い駐車場も満杯、そばを楽しみに来たつもりが「そばのそばでそばを食えずに帰ることになる」そんな冗談を飛ばしたくなったほど。だが、紅葉がまだきれいで、それだけでも来た甲斐があろうというもの。
           日光そば祭り  
           会場は凄い人出(日光だいや公園)

窮余の一策、裏道で路チューを決行することにした。午前11時30分過ぎ、ようやくそば祭りの会場「日光だいや川公園」に足を踏み入れることに成功・・・だが、ここでも大行列の渦。今年はそば屋、そば打ち会が合計21ほど出店していて、いずれも長い列が続いていた。どの店も美味そうに見えるから不思議である。

そば通の友人と意見が一致、まずは「信州ぼくち蕎麦 石田屋一徹」の最後尾に並ぶことにした。30分は覚悟しなければならない。ふと見ると、あんこ餅の文字が見えた。一皿300円ナリ。そばもいいが、あんこ餅の誘惑には勝てない。それにただ並んでいるだけでは芸がない。並びながら食べることにした。あんこ餅は搗きたての大きめの餅が3個、地場の小豆は上質で、ややあんこの量が少ないものの、満足できる美味さ。
           日光そば祭り② 
           幻の信州そば?
           日光そば祭り④ 
           あんこ餅めっけ!
           日光そば祭り⑥   
           行列の骨休め

「石田屋一徹」は長野・飯山市のそば屋で、北信州独自の「ぼくち蕎麦」が売りの店。一部では幻の信州そばとも言われている。「ぼくち」とはヤマゴボウとも言われる植物のことで、「ぼくち蕎麦」とは、それをつなぎとして使ったもの。石田屋一徹は十割そばにそのぼくちをつなぎに使用している。今回が初出店だそうで、そば通の友人も「食べたことがない」
           信州ぼくち蕎麦 
           信州ぼくち蕎麦(石田屋一徹)

そばのメニューは3種類。「冷かけ 500円(並)」、「温かけ 500円」「温きのこ 700円」。全員「冷かけ」を選んだ。朱色の器の底に入った新そばはやや少なめ。新そばらしい明るい色合いで、底にツユが潜み、上に刻みネギがかかっている。最初のアタックは腰の強さ。エッジが立っていて、まさに筋金入りのそば。その食感は悪くない。
           日光そば祭り10 
           十割冷かけ
           日光そば祭り1  
           腰とエッジ
           日光そば祭り2 
           新そばの美味

ツユは甘めだが、鰹節と昆布の出汁とかえしがまろやかで、腰の強いぼくち蕎麦との相性がいい。だが、新そばなのに香りはやや弱い気がした。これは寒さで舌がマヒしているのか? それとも飯山市の店に行って食べた方が美味いのか? 全体的には美味な発見と言える。ちなみに店では量ももう少し多く、950円だそう。

村長と村民2号はもう一軒、「常陸秋そば」に行くことにした。「いばらき蕎麦の会」の出店。十割の新そば。常陸秋そばはそば界の評価も高く、村長は大いに期待した。行列に並んで「もり」(600円)を注文。だが、これは期待以下だった。
           日光そば祭り4  
           二杯目は常陸秋そば
           常陸秋そば1  
           期待したが・・・
           日光そば祭り11 
           あれれ?
           日光そば祭り8 
           がっかり大賞?


量があまりに少ないうえに、テーブルの上にチューブのワサビがポンと置いてあった。そば自体も新そばの風味がほとんど感じられなかった。100円高い理由がわからない。これでは常陸秋そばの名前が泣こうというもの。「がっかりね」という声も他のテーブルからも漏れ聞こえた。

「日光の紅葉とそば祭りの空気を吸っただけで満足だわ。あんこ餅も美味かったわ」
村民2号がお腹をポンポンさせて言った。友人夫妻には感謝しつつ、日光そば祭りの将来が少々心配になった。


本日の大金言。

そば祭りは単なるお祭りと知るべし。そこに美味を求めてはいけない。あまりにビジネス化すると、やがてそば好きからしっぺ返しを食らうことだってある。


                       日光そば祭り13 

人気駅弁、厚岸の「かきめし」

旅に出ると、駅弁を食べたくなる。だが、今や旅に出なくても、「駅弁フェア」などで、人気の駅弁を食べることができる。とはいえ、なかなか手に入りにくい駅弁もある。北海道根室本線厚岸(あつけし)駅の「かきめし」もその一つ。1917年(大正6年)創業の氏家待合所の「かきめし」弁当は駅弁大会などで必ずと言っていいほど上位に入る駅弁だが、村長はこれまで食べたことがない。
                             かきめし弁当1 
           行列の向かう先

JR青梅線拝島駅で人だかりができていたので、覗いてみると、「駅弁大会」だった。北海道カニめしや富山鱒ずしなどに混じって、氏家待合所の「かきめし」(税込み1080円)が並べられていた。緑色の、あの地味なパッケージ。村長にとってはまさかのかきめし。行列に並んでゲット。こいつは立冬から縁起がいいわい。
                             かきめし弁当② 
           駅弁大会が・・・
                             かきめし弁当③ 
           めっけ!

賞味期限は約一日なので、ウマズイめんくい村に持ち帰って、賞味することにした。駅弁はフタを取る瞬間が一番わくわくする。だが、緑の表紙を取ると、透明なプラスチックの蓋が現れ、やや興醒め。昔のように経木のフタというわけにはいかない。これは仕方がない。
                             かきめし弁当④ 
           ようやくゲットしたが・・・

その下に広がるかきめしは、あのかきめしだった。醤油と味りんで煮込んだ見事な牡蠣(かき)が4つ、駅弁の胸のあたりに旨そうに並んでいた。まさに海のミルク。そのお姿はエロティックでさえある。厚岸の牡蠣はオホーツクの冷たい海水と淡水が入り混じる場所で養殖しているために、実が厚くふっくらしていて旨味が凝縮していているという。一年中牡蠣を出荷できるのは日本では厚岸だけだそう。
                              かきめし弁当⑦ 
           フタを取ると・・・

割り箸でそれをまずはひと口。醤油と味りんのバランスがいいのか、柔らかく煮込まれていて、牡蠣自体の旨みが生かされている。薄味の中の凝縮感。ほのかな甘み。
                             かきめし弁当⑥ 
           エロティックな光景

その下の炊き込みご飯はつややかで、じわじわと「うまそー光線」を放っていた。牡蠣の煮汁で炊き上げたもの。ひじきがいいアクセントになっている。見た目の濃さと違い、炊き込みご飯は穏やかな薄味で、牡蠣の煮汁が一粒一粒に滲み込んでいて、実に美味。よく見ると、つぶ貝やアサリも入っていた。一見単調に見えるが、複層的な旨味。
                             かきめし弁当11 
           ミルク感たっぷり
                             かきめし弁当⑨ 
           つぶ貝とあさりも
                             かきめし弁当10 
         どないでっか?

たくわんとフキの煮付けが箸休め。ふと、シイタケ煮がないことに気付いた。村長の好きなシイタケ煮の姿がないのは哀しいが、どんどん箸が進み、あっという間にきれいに平らげてしまった。ほどよいボリューム。食べ終えると、木箱ではなく、発泡スチロール製の器がさめざめと残っていた。夢の跡。駅弁に昔の木の香りと手触りを求めるのは単なる郷愁かもしれない。

あれっ、私の分は? 残してないなんてひどいわ」
お茶をズズズと飲んでいる村長に、会合から帰ってきた村民2号がすっくと立っていた。秋ナスとかきめしは嫁に食わすな・・・。


本日の大金言。

駅弁はローカル線とともにある。現地に行かずして、郷愁を求めてはいけない。



                         かきめし弁当13 



超レア「かのこな豆大福」

 「銀座にすぐ売り切れちゃう豆大福があるんだよ。銀座のホステスに持ってくと喜ばれてね。モテる小道具として利用させてもらったよ」
ある出版社のOBがこう言って、意味ありげに目尻を下げた。それが銀座すずらん通り「鹿乃子」の豆大福だった。

銀座「鹿乃子」は終戦直後の昭和21年に創業、かのこ専門の和菓子屋として評判を呼んだ。今では2階の甘味処であんみつを食べ、「花かのこ」や「豆大福」を手土産にする客も多い。
           鹿の子② 
           銀座の昼と夜の名物

村長は銀座に出たついでに、「鹿乃子」に立ち寄ってみた。時間が正午前だったので、「豆大福」はまだ店頭に残っていた。護国寺の群林堂や原宿瑞穂のような豆大福ではない。一個一個パッケージされていて、外側からは赤えんどう豆の姿は見えない。これが豆大福?という印象。それを一箱4個入り(1個180円、税込み777円)を買い求めた。
           鹿の子① 
           あった、あった

賞味期限は「本日中」なので、その夜、ウマズイめんくい村に持ち帰って、賞味することにした。パッケージから取り出すと、中ぶりの大きさ。個人的な好みで言うと、豆大福はパッケージしてほしくない。豆大福に衣装はいらない、と思う。だが、この豆大福には不思議な気品がある。

でん粉が多めにかかっていて、手に取ると、ずっしりしている。赤えんどう豆はどこにあるのだろう、そう思いながら、二つに割ると、外側の餅の中に、赤えんどう豆とピュアなつぶしあんが目に飛び込んできた。よく見ると、赤えんどう豆がつぶしあんの周りを囲むように配置されている。そのぎっしり感。むむむ・・・かような豆大福は見たことがない。
           鹿の子④ 
      1個1個パッケージされている
           鹿の子⑤ 
       あれっ、赤えんどう豆の姿がない?

これはひょっとして、かのこを餅で包んだ珍しい形の生菓子ではないか? さすが「鹿乃子」の豆大福。感心しながらひと口。餅は求肥のように透明感があり極めて柔らかく、杵つき餅とは少し違う。それは好みの別れるところだが、中のあんこがとてもいい。つぶしあんは甘さをかなり抑えていて、さらしあんのようでもある。ふっくらと炊かれた赤えんどう豆はほんのりと塩気があり、風味がふわりと立ち上がってくる。その食感と風味が絶妙で、人気の秘密がわかった。口中鹿乃子のサーカス!
           鹿の子⑥ 
           お隠れになってたのね
           鹿の子⑦ 
         赤えんどう豆とつぶしあん!
           鹿の子⑨ 
           珍しい同居生活

餅があまりに柔らかいので、少々時間を置いても固くはならないのでは? そう思って、半日後の翌朝、残りの2個を食べることにした。これが村長にとっては当たりだった。意外や旨みが増していた。餅は少々固くなっていたが、それがほどよい固さで、まだ十分に柔らかい。中のあんこもしっとり感がなじんでいた。赤えんどう豆もしっとり感が増し、さらにいい味わいになっていた。半日後の美味。
           鹿の子① 
           半日後の奇跡?
           鹿の子② 
           絶妙な味わい

「村長はヘンよ。賞味期限の本日中に食べた方が美味いに決まってる。私は昨日の方が美味かったわ」
と村民2号。半日後の美味というのもある。これはわかる人にしかわからない・・・ふっふっふ。


本日の大金言。

かのこ(鹿の子)は江戸時代中期に登場して、全国に広がっていったようだ。和菓子の中でも小豆の風味を最も感じさせるもので、ファンも多い。





                         鹿の子10 

最高峰?思い出の「春木屋」に行く

 久しぶりに中央線沿線の友人たちとの「芋煮会」に参加。秋川渓谷の紅葉を楽しみながら、真っ昼間から「多摩自慢純米酒」を飲み飲み、バーベキューを堪能した。拝島駅近くの「庄屋」で反省会(二次会)を行い、帰る頃には、すっかり日が落ちていた。

途中でふと、荻窪の「春木屋」に立ち寄りたくなった。伝説の春木屋! 村長にとっては思い入れの強い中華そば屋で、三鷹に住んでいた時代には行列を覚悟でよく通った。「丸福」や「丸信」よりも「春木屋」。村長の中ではこれまで食べた中でナンバーワンのラーメンだと思う。
           秋川渓谷② 
           紅葉の秋川渓谷

午後6時半。荻窪駅で降り、北口に出て、青梅街道沿いへ。およそ8年ぶりの春木屋。行列はなかった。だが、店内に入ると、12席ほどのL字のカウンター席はほぼ満員で、奥のテーブル席も埋まっていた。白衣のスタッフが2人、一人が目の前にドンブリを並べて、大鍋から見事な手つきで平ザルを操り、ゆで上がったラーメンを切っていた。もうもうたる湯煙り。これだ、これだ。春木屋の中華そば!
           春木屋① 
           懐かしの春木屋!
           春木屋③ 
           高いか、そうでないか
           春木屋12 
           これこれ、この雰囲気!

村長はカウンターに座って、定番の「中華そば」(800円)を頼んだ。相変わらず安くはない。12~3分ほどの待ち時間で、いい匂いとともに春木屋の中華そばが目の前に置かれた。ドンブリも同じ。見た目もほとんど変わらない。チャーシューが変わっていた。薄く大きくなっていた。煮干しの風味の強い濃いめの醤油スープ。透明な脂がキラキラと浮いている。その下の太い見事な縮れ麺・・・。
           春木屋④ 
           最高峰の中華そば

まずはスープをひと口。煮干しの出汁がフワッと来る。深くまろやかな旨み。昔と同じだ・・・と思った瞬間、いやいやちょっと違うぞ、という思いがかすかに舌に残った。脂が多くなったのではないか? タマネギの余韻とともにラードのような甘みが口中に残る。9割は昔のままだが、残りの1割が変化した感じ。
           春木屋⑥ 
           煮干しの醤油スープ

自家製の太縮れ麺は灰色がかった黄色で、昔とそう変わらない。この麺の美味さは他に比べようがない。ゴワッとした、素朴な食感。かん水を見事に効かせた縮れ麺・・・それにスープがよく絡む。チャーシューの薄さに不満が残るが、箸がどんどん進み、あっという間にスープまできれいに飲み干してしまった。ボリュームは相変わらず少なめ。大盛りにすると1000円だが、ここは大盛りにした方がいいかもしれない。

           春木屋⑦ 
           たまらない瞬間
           春木屋10 
           麺の凄味
           春木屋⑧ 
           チャーシューの変化
           春木屋⑨ 
           シナチクの絶妙

酔い覚ましの懐かしい味わいに浸っていると、スープの余韻がいつまでも消えない。かすかに化学調味料のような匂いも残る。腹八分の満足感。村長が変わってしまったのか、美味いには美味いが、昔のあの感動がない。記憶の中でさん然と輝いていた中華そばが少し後退した。コスパを超えるあの感動はどこへ行った? 店の雰囲気もスタッフの鮮やかな手つきも変わらないのに、全体の味わいがどこか微妙に時代に合わせ過ぎているような感覚・・・。外に出ると、寒風にぶるぶるっと来た。


本日の大金言。

舌の記憶も変わるのかもしれない。ラーメンのレベルが昔よりどんどん上がっているのかもしれない。彼は昔の彼ならず・・・たかがラーメン、されどラーメン。


                     春木屋11 


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目からウロコ、中津川の栗きんとん

 信州・小布施の栗きんとんの美味さは格別だが、今回取り上げるのは岐阜・中津川の栗きんとん。知人から「これ、美味いよ」と言われてポンと手渡されたのは、「満天星(どうだん)一休」の栗きんとんの詰め合わせ(6個入り1650円)だった。きれいな包装紙を解いて、箱を開けると、3種類の和菓子が詰まっていた。1個1個和紙で丁寧に包まれていた。

「わあきれい。でも包装代がもったいない」と村民2号。
                  一休②  
        栗きんとん箱詰め(中津川「満天星一休」)
           一休③ 
           3種類の美味・・・

さほど期待せずに一番シンプルそうな「栗きんとん」(1個220円、期間限定品)の包みを解くと、茶巾絞りの栗きんとんが現れた。小布施の栗きんとんやおせち料理の栗きんとんのイメージとは違っていた。まるで栗そのままを裏ごししたようなホッコり感。その自然で素朴な容姿に軽く驚いた。これが栗きんとん? 
           一休① 
           栗きんとん、現る
           一休③ 
           意外なお姿と味わい

賞味すると、ややパサパサした食感で、普通の栗きんとんのような砂糖で煮込んだねっとり感はまるでない。栗のいい風味がストレートに口中に広がった。その感覚は悪くない。
 
不思議に思って原材料名を見ると、栗と砂糖とトレハロースだけ。砂糖が入っていることがわからないほど、栗の自然な甘みが前面に出た上生菓子だった。栗は宮崎産のようだ。栗を蒸してから2つに割り、砂糖を少し加えて炊き、さらに裏ごししたものだった。調べてみると、中津川は小布施に負けないくらいの歴史を持つ栗の町で、市内には30軒くらいの栗菓子屋があることがわかった。秋深し知らぬは村長ばかりなり。

続いて、「杣の木漏日(そまのこもれび)」(1個325円、期間限定品)の包みを解いた。見事な干し柿・市田柿が現れた。2つに割ると、中には栗きんとんがぎっしりと詰まっていた。手の込んだ上生菓子。食べると市田柿そのままで、そこに栗きんとんの味わいがかぶさってくる。美味いには美味いが、思ったほど1+1が3になっていないのではと思った。

「干し柿が強すぎて、栗きんとんの良さが消されているわね」と村民2号。
           一休⑤ 
           ただの市田柿ではない
           一休⑧ 
           栗きんとんがぎっしり

最後の「森の水鏡」(1個200円)は栗きんとんをくず餅で包んだもの。村長はこれが一番気に入った。本くずを使ったもっちりした半透明の餅が栗きんとんの素朴な旨味を引き立てている。下に敷かれた栗の葉の香りがさり気なく漂っている。いただき物とはいえ、村長にとっては思わぬ発見。
           一休10 
           くず餅との相性
            一休11 
           むむむ
           一休12 
           ま、ひと口

「くず餅のいぶし銀が効いている。自分をわきまえているのがいいわね。まるで私と村長の関係だわ」
「どっちが栗きんとん?」
「言わぬが花よ」
「・・・・・・?」


本日の大金言。

常識は常識に非ず? 自分の中の常識と世間の常識の落差。かつて「日本の常識は世界の非常識」と放言した文化人もいた。その逆もある。常識は非常識でもある。



                         一休13 

そば通が通う畑の中の隠れ家

 やっぱり世の中は広い。先日、ネットにもほとんど載っていない埼玉・羽生市郊外の田んぼの中のそば屋をご紹介したところ、辛口のそば通の知人が連絡を寄越し、「あまり教えたくない店だけどねえ」と村長を幸手市郊外へと案内してくれた。こちらはほとんど畑の中。「ここもメディアにあまり出てませんよ」と入った店は、そば打ちひと筋、筋金入りのそば職人の店だった。信州出身で、石臼挽き自家製粉、野菜も自家菜園という徹底ぶりに村長は軽く驚いた。これが確かに美味だった。
           夕づる① 
           そば通の隠れ家?

ウマズイめんくい村に帰ってからその話を村民2号にしたら、「抜け駆けはずるいわ」とプンプンし始めた。仕方がないので、日を改めて、幸手市郊外にあるその隠れ名店「夕づる」にポンコツ車を飛ばした。中川崎の畑のまん中の一軒家。午後1時に到着。駐車場に止まっている車のナンバーを見たら、東京からの客も多いことがわかった。
           夕づる 
           地味な入り口だが

すでに20年の歴史のあるそば屋で、入り口の暖簾の横の見えない場所に「昔のまんまのそばを打ちます」という小さな立て看板が見えた。暖簾をくぐって店内に入ると、歴史博物館に置いてあるような古いはた織り機が置いてあった。テーブル席と小上がり。右手には障子戸で区切られた日本間が二つ。奥が広い板場になっていて、店主と若い職人が忙しそうに働いていた。大釜からは湯気が立ち上っている。古いそば屋の活気。
           夕づる⑤ 
           一歩入ると・・・

日本間に入って、メニューの中から「もりそば」(500円=税別)を選んだ。挽きくるみの二八そば。さらに村長は「ぜんざい」(500円)の文字を見つけた。前回はうかつにも気が付かなかった。女将に聞くと、小豆ではなく「栗あんのぜんざいです」とか。9月に小布施に行った時に「栗あんぜんざい」を食べたが、それは餅入りだった。ここはそばがき入り。極めて珍しいメニューで、それがさり気なくあることが気に入った。それを追加で頼む。
           夕づる③ 
          まずはもり
           夕づる④ 
           ここは信州である

しばし待っていると、お茶、漬け物の順でやってきて、その後に本命の「もりそば」が登場。まず年季の入ったザルの器に目を見張った。「本物ね」と村民2号。その上に鎮座するもりそばはグレーがかった見事な細打ち。これだけ細く正確に打つにはかなりの腕前と修業が必要だろう。荒めの挽きくるみで、星が点々としている。口に含むと、そばの風味がほどよい。コシがしっかりしていて、出汁のよく効いたツユにくぐらせると、今いる場所が信州のような錯覚に陥る。
           夕づる⑥ 
           もりそばの登場
           夕づる⑦ 
           見事な細打ち二八そば
           つゆ  
           甘すぎず辛すぎず
           夕づる1 
           風味とのど越し

「これが500円とはちょっと驚き。天盛りはそう安くはないけど、もりそばは狙い目だわ。さり気ないところにこだわりが見えるのも好感。こんなそば屋さんを今まで知らなかったとは・・・村長の情報収集力も大したことないわね」

「ま、そう言わずに。栗あんのぜんざいはどう? これだけ素朴な風味と味わいはそうはない。そばがきはボソッとしていて、原そばがきって感じ。小布施の竹風堂で食べたぜんざいより栗の風味が実に素朴だ。ボリュームもあるし、こっちの方が好みだよ」
           夕づる5 
           珍しい栗のぜんざい
           夕づる3 
           素朴なそばがき入り

「竹風堂が怒るわよ。でもいい店を見つけたって感じ。そこだけは村長に感謝するわ」
「ツルの恩返し・・・」
「何それ。笑えない」
「・・・・・・」


本日の大金言。

メディアと食べログの世界がすべてだと思っていると、本物を見落とすかもしれない。どうやって名店を探すか、そこが問題だが。









                         夕づる7 






まさかの味わい、晩秋のかき氷

 たい焼きが一年中楽しめるようになったが、まさかかき氷も? 所用で埼玉・熊谷までポンコツ車を飛ばした帰り、八木橋デパート裏手をブラ歩き中にかき氷の旗が冷たい風に揺れていた。まさか・・・村長は目をこすった。朝晩も冷え、冬の気配が忍び込むこの時期にかき氷の店が営業しているとは・・・。
           慈げん① 
        まさかのかき氷屋(熊谷市仲町)

調べてみたら、かき氷界では有名な「慈げん」だった。午後4時過ぎ。さすがに店の前は閑散としていたが、夏は2~3時間待ちがザラという超人気店でもある。「日本で一番暑い街」の称号もある熊谷。だが、今は晩秋である。この時期のかき氷も案外悪くはないかもな、と思い直して、村長は入ることにした。かき氷苦手の村民2号は危険(?)を察知して、八木橋デパートへ逃げている。
           慈げん② 
      古いかき氷機が店の前に
           慈げん③ 
           ミルクあずき!

店内は木の匂いのするレトロな雰囲気で、カウンター席とテーブル席、小上がりという構成。村長はメニューの中から定番の「ミルクあずき」(730円)を頼むことにした。他に「和三盆」(730円)や「ミルクココア」(750円)など。そう安くはない。ふと見ると、入り口の窓側に「只今のかき氷」と表記された季節のメニューが並んでいた。「ザ・りんご(品種秋映)」(800円)や「安納芋ミルク」(780円)などオリジナルメニューが十種類ほど並んでいた。ザッツ・かき氷ワールド。
           慈げん13  
        こんなメニューもあるでよ

客は他にカップルが一組だけ。10分ほど待たされて、「ミルクあずき」がやってきた。白い陶器の器に真っ白い雪の山がテンコ盛り状態で「こんな季節にようこそ」と微笑んでいた。見るからにふわふわ感が漂っていた。よく見ると、ミルクが夢のようにかかっていた。スプーンでまずはひと口。氷の柔らかさに軽く驚く。さらに驚いたのは冷たさが感じられないこと。歯に滲み込む感じがまったくない。なぜだ?
           慈げん⑥ 
           ミルクあずきさま
           慈げん⑦ 
           日光の天然氷だった
           慈げん⑧ 
           小豆さま~

しぼり立ての牛乳のような甘さ控えめのミルクが柔らかい氷とともに舌の上で消えてゆく。スプーンで突き進むと、中からふっくらとした小豆が現れてきた。小豆は柔らかく炊かれていて、大納言小豆も混じっている。こちらも甘さはかなり抑えている。その分小豆の風味がストレートに伝わってくる。量もかなり多い。柔らかな氷とミルク、それに粒つぶのふくよかな小豆。これはひょっとしてかき氷界の頂点ではないか、と思ってしまった。
           慈げん⑨ 
           ミルクのベール
           慈げん11 
           自家製ミルク

「この氷は熊谷の雪くまですか?」
店の女将にあれこれ確かめてみた。夏だったら忙しくて話もできないだろう。
「いえ、うちは日光の天然氷を使ってます」

「ミルクは練乳ではないでしょう?」
「ええ、自家製のミルクです。練乳ほど甘くはないので、甘さが足りないという人もいるんですよ」

「この小豆が美味いねえ。これだけのかき氷はそうはない」
「あのう、それだけは自家製ではないんです。うちのかき氷に合う小豆をあちこち探してようやく見つけたものなんですよ(笑)」
           慈げん12 
           絶妙である

一家で店を始めて今年で14年目になるという。駐車場がないのが難点だが、ほのぼのとした明かりの下、晩秋の意外すぎるかき氷を味わいながら、思った。冬のかき氷はポエムである。今度は真冬に来てみることにしよう。


本日の大金言。

冬のかき氷は狙い目である。行列店に行くなら、真夏より真冬にかぎるかもしれない。人の行く裏に道あり花の山。





浅草・千葉屋の希少「切揚(きりあげ)」

食通の ドン圭氏と銀座で立ち食いステーキを食べた後、2丁目の蕎麦屋「流石」まで足を伸ばし、「ひやかけそば」をかっ込む。これが絶妙に美味い。このひやかけそばについてはすでに書いているので、今回は省略。

「確かにウマいね。でも、あの店はメニューが多すぎる」

店を出た後、歩きながらドン圭氏がボソッと言った。
「今度は夜来ましょう。いい酒を飲んで、最後にひやかけそばで締めるのもいいですよ」
と村長。村長がトイレに行っている隙に「お品書き」を見たようだ。素早い。

突然、ドン圭氏が「浅草に行きたい」と言い出した。浅草寺に用があるようだ。村長はそのついでに、大学いもの「千葉屋」に立ち寄ることにした。ここの大学いもをドン圭氏は知らなかった。浅草寺の用を終えた足で言問通り沿いにある「千葉屋」を覗く。午後2時過ぎだというのに4~5人が並んでいた。相変わらずの人気。
           千葉屋① 
        お客がひっきりなし(東京・浅草「千葉屋」)
       
ここの大学いもの美味さについて書くのはもどかしい。昭和25年創業の大学いもひと筋の店で、メニューは実にシンプル、「大学いも」をメーンに「切揚(きりあげ)」「ふかしいも」しかない。支店も出さず、店はここ一軒のみ。その季節の一番美味いサツマイモを使用、秘伝の糖蜜を絡めたその味は、素朴に「うめえなあ」としか言いようがない。売り切れ御免で夕方にはなくなってしまうこともある。特に「切揚」は作る量も少なく、午前中に売り切れになることも。
           千葉屋② 
           残っていた!

その「切揚」がほんの少量残っていた。ラッキー! 村長は並んで400グラム(740円)を買い求めた。ドン圭氏も同じものを買ったが、それが本日の最後となった。後ろのお客が「ああ、終わっちゃったよ」と残念そうにつぶやいた。村長はこれまで7~8回はここにきているが、「切揚」はいつも売り切れていて、今回初めて手にすることができた。夢にまで見た切揚・・・村長にとってはまさかのゲット。
           千葉屋12 
           ゲットラッキー

その夜、ウマズイめんくい村に持ち帰って、賞味することに。「切揚」とは薄切りにしたサツマイモを油で揚げてから糖蜜にくぐらせたもので、黒ゴマをまぶしてある。黄金色のねっとりとした糖蜜に包まれた厚さ2ミリほどの切揚の連なりはどこか懐かしい。少しだけ皿に移すときに糖蜜が糸を引く。甘い素朴な香り。
           千葉屋④ 
           袋の素朴
           千葉屋⑤ 
           中身の素朴
           千葉屋⑥ 
           夢に見た切揚さま~

口に入れた瞬間、大学いものような柔らかさではないことに気付く。歯でかむと、パリッというよりバリバリと音を立てて口中でもがく。同時にサツマイモと糖蜜と油のいい風味がふわりと滲み出てくる。ゴマの風味が追いかけてくる。素朴な後を引く美味。最初の「うむ」が「うむむ」に変わり、やがて手が止まらなくなる。これが人気の秘密なのか。
           千葉屋⑦ 
           意外に固い
           千葉屋⑧ 
           後を引く素朴な美味
           千葉屋1 
           ちょうちんの愉しみ

村長が唸っていると、村民2号がひと口手を付けただけで動きを止めた。
「私はこれはダメ。美味いけど、硬過ぎる。大学いもの方を買ってきてほしかったわ」
村民2号は歯医者通いの真っ最中だった。シメシメ・・・村長は内心喜んだ。これで「切揚」を独り占めできる、と。


本日の大金言。

大学いもも切揚も中国が源流だが、日本では東大赤門前の三河屋が大正の初期に売り出して人気となったようだ。どうやらそれが大学いもの名前の由来だが、スイーツ全盛時代にも大学いもはしっかり生き残っている。





                        千葉屋11 


噂の「立ち食いステーキ」の味

 最近お友達になったドン圭氏と東京・銀座へ。目的の一つが「銀座の立ち食いステーキ屋」。ドン圭氏は驚くべき食通で、テレビやネットに載っていない隠れ名店をあれこれ教えてくれる。その舌は確かで、彼が教えてくれた二つの店は、どちらもほとんど宣伝をしない地味な名店だった。
           ソニービル 
      午前11時過ぎ、銀座に到着!(ソニービル前)

そのドン圭氏がなぜか、今話題の「銀座の立ち食いステーキ屋をちょっくら覗いてみたい」と言ったのだ。その名も「いきなり! ステーキ」。好奇心では村長も負けないと思ったが、ドン圭氏の好奇心には敵わない。

「いきなり!ステーキ」は昨年12月、銀座4丁目に初出店。本格的なステーキを立ち食いで安く食わせてくれると、評判を呼び、その直後に銀座6丁目店がオープン。こちらも連日行列の店となっている。驚くべきことに、その後どんどん店舗を広げ、1年も経たないというのにFCチェーン店も入れて20店を超える一大立ち食いステーキ王国を作りつつある。NYへの進出も決定しているようだ。
                  いきなりステーキ1 
       「いきなり!ステーキ」銀座6丁目店
        
で、村長は第2号店に当たる「銀座6丁目店」に道案内した。銀座は村長の方がやや詳しいからだ。満を持して混み合う前の午前11時半に到着。派手ハデの看板。店内は約30人くらいは入れるくらいのスペース。ウッディーな色に統一された立ち食いのカウンターが数種類あり、正面奥がガラス張りの厨房。そこで白いコック帽にコック服姿の男性が3人、ステーキを焼いていた。肉が焼けるいい匂いが充満していた。
           いきなりステーキ④ 
           混み合う前に入る

一人前最低300グラムが基本。その後1グラム単位で注文できるというスタイル。ドン圭氏と相談。「ヒレ300グラム」(2400円)を一人前取って、それを半分づづ分けることにした。その後、銀座2丁目の蕎麦屋「流石(さすが)」にハシゴして「冷やかけ」を食べる予定になっていたからだ。「サラダ」(300円)は別々に頼んだ。一人当たり1500円なり。
           いきなりステーキ② 
           安いか高いか?

どんどん混んでくる。次第に身動きが取れなくなってきた。これはぎっくり腰には少々キツイ。15分ほど待たされて、鉄板に乗った300グラムのヒレステーキがじゅうじゅう音を立ててやってきた。厚さが4~5センチはありそう! うむむという圧倒的なボリューム。炭焼きの焦げ目。
           いきなりステーキ⑥ 
           うむという迫力で登場
           いきなりステーキ⑦ 
           この圧倒と本格

肉の素性を女性スタッフに聞いたら、「オーストラリア産の熟成肉です。あれっ、アメリカ産だったかな?」とか。ナイフで切り分けると、中から血の滴るようなレア肉が現れた。外側の焼き色と中の濃いローズ色のコントラストが見事だが、注文するときに「焼き加減」を聞かれていないことを思い出した。流行っているとはいえ、これはいささか気配り不足ではないか。
           いきなりステーキ⑧ 
           見事なレアが・・・
           いきなりステーキ12 
           ソースより塩
           いきなりステーキ13 
            柔らかいヒレ肉の旨味

だが、そのレアのヒレ肉は実に柔らかくて旨い。肉を食べている、という実感がビシビシくる。オーストラリア産?も捨てたものではない。ちなみにここでは黒毛和牛も注文できるが値段は高め。フライドガーリックとコーン、それにステーキの下に敷かれたタマネギも悪くない。だが、と村長は思った。サラダの鮮度にやや難点があるのではないか。
           いきなりステーキ10  
           ゆっくりしたいのう
           いきなりステーキ⑤ 
           サラダ

「これだけのステーキを安く食べれるのは肉好きにはパラダイスかも。でも、落ち着かないなあ。ここはペッパーランチと同じ会社の経営のようです。タイム・イズ・マネーの世界ということですね」
「うむ」
ドン圭氏は「うむ」と言ったまま、押し黙った。その胸の内は見えない。ビルの谷間の青空。怪しい二人組は次の「流石」に向かった。


本日の大金言。

本格ステーキと立ち食いを結びつけたアイデアは凄いと思う。だが、村長は昔、神田に立ち食いステーキ屋が存在していたことを知っている。資金力とビジネス展開の凄さ。その裏の危うさ。



                        いきなりステーキ2  



新星か?十割そばと卵かけご飯

 新そばの季節、である。東京・人形町甘酒横丁裏手をブラ歩き中に「十割そば500円 新そば入荷しました」の立て看板が見えた。隣りが有名な洋食レストラン「芳味亭」。「十割そば500円」と「新そば」が頭の中で結びつかない。店はまだ新しく、その外観から、「新しい立ち食いそば屋かな」と思ったほど。だが、よく見ると、居酒屋のようでもある。「SUSULU(すする)」という不思議な店名
           SUSURU.jpg 
           新星発見か?

さらによく見ると、「昼限定10食 十割そば+卵かけご飯 800円」の表記が見えた。「凄い卵登場! その名も蘭王」という文字も見えた。この辺りは旨い店も多く、ランチタイムの激戦区でもある。時計を見ると午後1時半過ぎ。派手めの外観は好みではないが、十割そばと卵かけご飯に釣られて、飛び込むことにした。
           SUSURU② 
           派手すぎかも

入ると、カウンター席とテーブル席があり、正面奥が厨房になっていた。きりっとした白衣の板前が3人ほど働いていた。いい料理屋の雰囲気。外観との落差が気に入った。2階もあるようで、お茶を運んできた女性スタッフに聞くと、「2階は宴会席になってます。今年7月にオープンしたばかりなんですよ」とか。

限定10食はまだ大丈夫というので、「十割そばと卵かけご飯」を頼んだ。値段から見て十割そばは中国産そば粉かと思ったら、「信州産の新そばなんですよ」と意外なお答え。そばの太さは3種類あり、村長は一番太い「ごくぶと」を選んだ。そばは手打ちではなく機械打ちのよう。
           すする② 
           十割新そばと卵かけご飯

10分ほどの待ち時間でお盆に乗った十割そばセットがやってきた。これが予想を超えて旨かった。グレーがかった極太の十割新そばは固めで噛むと固いそばがきのよう。その感触は悪くない。風味もまずまず。ツユはやや濃いめだが、鰹節と鯖節と昆布の出汁がよく効いていてまろやか。量が少ないのが難点だが、卵かけご飯が控えている。
           すする④ 
           ほんまでっか?
           すする⑤ 
           意外な旨さ

卵は大分・別府産の自然卵「蘭王(らんおう)」だそうで、割ると、濃いオレンジ色の黄身が現れた。そのツヤと盛り上がり方が半端ではない。箸で突いてみる。崩れない。うむむ。特製醤油を垂らし、箸でかき混ぜてから、炊き立ての銀シャリの上にそっと流し込む。卵かけご飯好きにはたまらない瞬間・・・。
           すする⑥ 
           蘭王どす
           すする⑦ 
           特製醤油をたらり
           すする⑧ 
           炊き立てのご飯に・・・
           すする⑨ 
           黄金の世界?

懐かしき良き正統派の卵かけご飯! 卵のさわやかな濃厚が醤油の風味とともに熱々のご飯を盛りたてる。くせのない旨味。村長がたまに食べる生活クラブの卵に勝るとも劣らない。黄身の色があまりに濃すぎる気もするが、あっという間にかっ込むと、五臓六腑から満足感がじゅわりと滲み出てきた。全体として量が少ないのが難点だが、それ以外は思わぬ拾い物をした気分。外観と違って、板前の腕は確かだと思った。


本日の大金言。

どこかでB級の新しい星が誕生しているかもしれない。メディアに出る前にそれを発見する楽しみ。


                       すする10 

秋深し・・・浅草の天然たい焼き

 秋が深まり、朝晩肌寒い季節になってくると、無性にたい焼きか今川焼きを食べたくなる。あんこ中毒者のサガ。東京・浅草に出たついでにひさご通りから言問通りに出る。大学芋の「千葉屋」を素通りして、その先の路地を左に入る。そこが今回のターゲット、「たい焼 写楽」である。
           写楽① 
           たい焼きの季節!

ここのたい焼きは一丁焼きで、いわゆる「天然物」。8年ほど前に創業。テイクアウト専門だが、今では浅草でも指折りの人気店の一つになっている。たい焼きだけでなく「もなかアイス」や「どらやきアイス」などもメニューにして、若者向けの売り方も取り入れている。村長が立ち寄ったのは午後3時過ぎ。大学生が4~5人、カメラを撮っていた。聞くと、「写真部でーす」とか。 
           写楽④ 
           メニューはシンプル

入り口横に縁台があり、そこで食べることもできる。村長はたい焼きを注文した。1匹150円。浪花家と同じ値段。メガネをかけた林家正蔵風の店主が一丁焼きの金型を器用に動かしていた。いい雰囲気。これで飲み物がサービスで付けば言うことはないのだが、世の中そう甘いものではない。京都のようなわけにはいかない。
           写楽⑦ 
           ドヤ顔だって?
           写楽⑨ 
           ナイスバディ?

焼き立てのたい焼きが紙に包まれて手元に来た。手のひらに熱さが伝わってくる。これがたまらない。たい焼きは浪花家の物とよく似ていた。皮がかなり薄く、パリッとしていて、ふうふうしながら真ん中で割ると、見事なつぶしあんが現れた。皮が薄い分、あんこのボリュームが目立つ。湯気が鉛色の空に立っている。た、たまらん。
           写楽⑧ 
           なめんなよ
           写楽10 
           たまらん!
           写楽11 
           ま、ひと口

ひと口パクリ。北海道富良野産エリモ小豆の甘くいい風味が口中に広がる。塩がかなり効いていて、それが甘みに厚みを与えてくる。ふくよかでいい煮方。あんこは尻尾まで詰まっていて、たい焼きを一匹一匹しっかり作っていることがよくわかる。砂糖は上白を使っているようだ。美味。

「浪花家と似ているね」
仕事の合間に店主に聞いてみた。
「たまにそう言われますが、違います。でも、この一丁焼きの金型はもともとは浪花家と同じものなんですよ。ほら」
店主はサービス精神が旺盛なようで、村長に金型を見せてくれた。浪花家の文字が見えた。だが、浪花家よりも尻尾が長い気がする。
          写楽12 
          残りの人生

西浅草にもう一店舗あるという。浅草には「浪花家浅草店」もある。「たい焼 勝」もある。「くりこ庵」もある。いつの間にか、一年中美味いたい焼きが食べられるようになってしまった。「クロワッサンたい焼き」などというものまである。季節感がなくなるのも仕方がない? センチメンタルあんこジャーニー。だが、村長は帰りに町屋に立ち寄ることにした。「博多屋」の今川焼きを無性に食べたくなったからだ。あの素朴な今川焼き・・・。


本日の大金言。

たい焼き黄金時代だが、今川焼きだってあるぞ。



                       写楽13

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シバレンも愛した新宿の「とん丼」

久しぶりに東京・新宿へ。知人とお茶してから、一人で新ぶら。伊勢丹本店周辺でJAZZバー「DUG」にでも行こうか、それともどこかに旨い店はないか思案していると、「とんかつ 王ろじ」のセピア色の店構えが視界に入った。
           王ろじ① 
            紺地の暖簾がいい
           王ろじ 
           創業大正十年

「王ろじ」は大正10年(1921年)創業のとんかつ屋で、ここの名物「とん丼」は元祖カツカレーともいうべきカツカレー丼で、村長は遠い昔に一度食べたことがある。「王ろじ」とは「路地の王を目指す」という意味だとか。小腹がすいていたので暖簾をくぐることにした。

ランチの時間がとっくに過ぎていたので、店内はさほど混んではいなかった。年季の入った木のカウンター席とテーブル席が5つほど。村長はカウンター席に腰を下ろした。目の前が厨房になっていて、そこに白いコック姿の二代目店主がりゅうと立っていた。その存在感。女将さんらしき女性がいい雰囲気で手際よく働いていた。若いコックも一人。よき時代の洋食屋の雰囲気そのまま。
           王ろじ② 
           大正のとんかつ

メニューはそう多くはない。むろん、「とん丼(カツカレー) 1000円」を頼んだ。「揚げ物には12分ほど時間がかかります」と書いてある。ふと壁を見ると、柴田錬三郎の直筆の色紙が飾ってあった。「好店三年客をかえず 好客三年店をかえず」と書いてある。しょっ中店を変えてはあーだこーだとブツブツ言っている村長にとっては富士山のようなお言葉。月見草の意地。注文してから店主が揚げ始めている。その軽やかな音がここちよい。

しばらくすると、お新香が置かれた。これが美味だった。薄切りの大根を味噌麹で浅漬けしたもので、いい風味。続いて、主役の「とん丼」がドンと置かれた。ドンブリが受け皿にくっついていて、これは昔と変わらない。その中身の姿に息を飲む。分厚いとんかつが三つ、やぐらのように天高く組まれていた。その上にはとんかつソースが黒々とかかっている。さらにその下には黄土色のカレーの海! 
           王ろじ③ 
           スプーンと箸
           王ろじ⑤ 
           黙って食え

入谷「河金」の河金丼によく似ているが、河金丼にはソースはかかっていない。河金丼はキャベツが敷かれているが、ここはキャベツはない。ちなみに、カツカレーの元祖は銀座スイス(1948年、昭和23年)と言われているが、それよりも30年前の1918年(大正7年)に「河金」の初代が浅草で洋食屋台を営んでいた時に、「カツカレー丼(河金丼)」を出していたようなので、むしろこちらが元祖だと思う。「とん丼」もその元祖の時代に誕生している。
           王ろじ④ 
           上空から

さて、本題。「とん丼」のとんかつはパン粉が粗めで、そのカラッとした歯ごたえが悪くない。何よりも肉の柔らかさに驚く。カレーはルーだけで、じっくりと煮込んだカレーの旨みがやさしい。やや酸味があるのはヨーグルトを入れているのか。思ったほど辛くはない。その下のご飯はかなり柔らかめで、そこは好みの別れるところ。
           王ろじ⑦ 
           ソースもあるでよ
           王ろじ⑧ 
           カレーもあるでよ
           王ろじ⑨ 
           ヒレでっしゃろ?

「これはヒレ肉でしょう?」
と村長。
「いえ、うちはすべてロースなんですよ。叩いて叩いて柔らかくしているんですよ」
と女将さん。創業当時の作り方のままだという。

とんかつのボリュームに圧倒されるが、ご飯が少なめなので、きれいに食べても腹九分目の納まり具合。みそ汁が付いてないのが少々残念(とん汁は別売り)だが、満足感は十分ある。勘定を支払う時にふと「シバレンさんはよく来たのですか?」と聞いてみた。「はい、最後は病院を抜け出して来ていたようです」。女将の目が懐かしそうに波打った。ここにもよき時代の東京が残っている。


本日の大金言。

いまではカツカレーはどこにでもあるが、大正時代にこのアイデアはコロンブスの卵だった。元祖には諸説あるが、「ソースかつ丼」にしても「卵とじかつ丼」にしても、ブームはドンブリから始まっているようだ。



                        王ろじ12 






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日本でここだけ?「なまず寿司」の味

 「連休の前日、凄いとこ、発見しちゃったわ。川魚の料理屋さんなんだけど、なまず寿司なんてメニューにあったのよ。これが意外や意外、美味かったのよ。多分日本でもここだけのメニューだと思うわ。村長も機会があったら行って食べてみるといいわ」
知り合いのグルメおばさんが、晩酌中の村長にわざわざ電話してきた。なまず寿司だって? 村長の脳裏にあのなまずのコミカルな顔が浮かんだ。

なまずの天ぷらは何度か賞味したことがあるが、なまずの寿司なんて食べたことはない。第一食えるのか? その翌日、青いポンコツ車が国道354号線をひた走っていた。すでに陽が落ちていた。群馬県館林から邑楽郡板倉町へと向かう。グルメおばさんが教えてくれた店「川魚料理 うおとし」の看板が夕闇に浮かんでいた。駐車場は広く、料亭のような大きな店構えで、その意外性に軽く驚かされた。
           うおとし18 
     隠れ名店か?「うおとし」(群馬県邑楽郡板倉町)

調べてみたら、板倉町で120年の歴史のある川魚専門料理店で、8年ほど前に国道354号線上に新しく建て替えたことがわかった。店内は広く、高い天井には古民家から移築したような見事な梁(はり)がのたうっていた。BGMはなぜかピアノ曲。右手奥が広い厨房になっていて、3~4人の板前さんが忙しそうに調理中だった。
           うおとし③ 
           この奥になまず様

左手の仕切りの付いた客席に案内され、そこでメニューを見る。
「鯉こくが旨そう。なまずの刺身もあるわ。食べたことない」
村民2号が素っとん狂な声を上げる。
           うおとし④ 
           日本でここだけ? 
           うおとし⑤ 
           ちょっと驚く

村長は目的の「なまず寿司」(4かん648円)を頼んだ。ついでに、地酒「分福 純米酒」(1合475円)も注文。ついでのついでに「川の恵みセット」(鯉のあらい、なまずの刺身、鮒の甘露煮など 675円)も頼んだ。ここまで来たからにはなまずの刺身も賞味したくなったからだ。全体的に値段が高くないことも好感。

さて、なまず寿司。この店には日本なまずとアメリカナマズの2種類を扱っている。どちらも養殖もの。なまず寿司はアメリカナマズを使用している。その特徴は日本ナマズに比べて脂がのっていること。ひと目見た瞬間、透き通ったきれいな白身とその奥のワサビにぐっと引き込まれた。酢飯は近くの北川辺産コシヒカリ。
           うおとし11 
           なまず寿司一人前4かん
           うおとし⑦ 
      鯉のあらい(左)となまず刺身(右)(川の恵みセット)
           うおとし⑧ 
           鯉こく(648円)

これが意外にも美味だった。言われなければ平目の刺身と間違えそうになる。弾力のある歯触りとジワリとくる旨味。淡泊なのに旨さに厚みがある。ほのかに甘みさえも滲んでくる。酢飯の旨さもマル。目をつむると、気品のある高級魚の趣き。村民2号も「これはホント平目だわ。美味い」と戸惑いつつ、驚いている。地酒の「分福純米酒」はぶっきら棒な味で、まろやか好きの村長の好みではなかったが。
           うおとし13 
           驚きの味わい
           うおとし12 
           醤油を垂らして・・・

「鯉こくが気に入ったわ。白みそと赤みそのみそ仕立てで、深いこくと甘い脂が何とも言えない。鯉のあらいもこれだけきれいに作るのは相当な腕前だと思う。この店、あまり知られていない分、関東の穴場かもね」
「こういう店が昔からあることに驚くよ。村長の知識なんて、大海のメダカ以下だということがよくわかった」
「今ごろ? 川魚がこんなに美味いこと、私も知らなかったから、エラソーなことは言えないけど」
「帰りの運転は頼んだ。で、もう一杯、別の銘柄を頼もうかな」
「じゃあ、私はなまずの天丼頼もうっと」


本日の大金言。

なまずや川魚は誤解されているかもしれない。いい料理屋で食べると、臭みとかの偏見はとたんに崩れる。なまずの神様にこれまでの無礼をお詫びしなくちゃ。



                       うおとし15
プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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