穴場、日本橋デパ地下のNY風カフェ

東京・ 茅場町での会合の帰り、日本橋高島屋に足を伸ばした。ここのデパ地下は村長にとってはスイーツの隠れ家。特に味百選・銘菓百選コーナーは全国の主な老舗の味が揃っていて、ここを見ているだけで天国にでもいる気分になってくる。大好きな小城羊羹を買ってから、デパ地下内をブラ歩きした。ルビーが転がっていた。高級感のある洋菓子屋が視界に入った。うむ。
           グラマシー 
       美味の予感(日本橋高島屋デパ地下)

それが「グラマシーニューヨーク」だった。本店はニューヨークか? 美味そうな洋菓子がズラリと並び、その一角にカウンターだけの小さなカフェコーナーが見えた。「ニューヨークチーズケーキセット」(ドリンク付き 税込み1080円)、「苺のロールケーキセット」(同 972円)・・・。迷った末、苺(いちご)のロールケーキを選んだ。1000円札一枚で済むか済まないか、が選択の重要ポイントになった。単なるケチかもしれないが。
           グラマシー⑧ 
           イートインコーナー
           スラマシー2 
           苺のロールケーキセット

女性スタッフが可愛いことも気づいた。L字のカウンター席は10席ほど。女性客ばかり。ドリンクはブレンドコーヒーにして、「苺のロールケーキセット」を頼んだ。どうやら新商品のよう。真っ赤な口紅の女性がカウンターの向こうから、「白い磁器製の大皿に乗った「苺のロールケーキ」をスッと置いた。バニラアイスが添えられていた。続いてブレンドコーヒー。優雅でいい香りが漂う。
           グラマシー② 
           ハイレベル
           グラマシー2 
           ひれ伏すか?

ロールケーキは徳島のブランド苺「さくらももいちご」と「あまおう」を生クリームをスフレケーキで包んだもの。生クリームは北海道産だそう。見るからに美味そうで、実際、ナイフで切ってから一片をフォークで口中に運ぶと、さわやかなバニラと卵黄の香りがふわりと鼻腔に抜けた。苺ソースの酸味も楽しめる。
           グラマシー④ 
           たまらん

ふわふわ感に溢れたスフレケーキと生クリーム、それに新鮮な苺(いちご)が三位一体で押し寄せてきた。濃厚なバニラアイスを付けてさらに食べる。うむむうむむ。脳内の闇が輝いてくる。キラキラ星。ハイレベルの絶妙・・・と言わざるを得ない。
           グラマシー⑤ 
           飛び込め
           グラマシー⑥ 
           アイス乗せ

ブレンドコーヒーはやや酸味が強く、それがいいバランスとなっている。価格は安くはないが、これほどの店を出している「グラマシーニューヨーク」という店が気になって、シークレットの諜報機関を使って調べてみた。高島屋のデパ地下を中心に現在12店舗。ニューヨークに本店があるのかと思いきや、何と愛知県の会社が親会社だった。

「名古屋には感動を覚えるお菓子がない」ことに一念発起、約30年ほど前にニューヨークの雰囲気と文化を押し出した洋菓子作りに取り組んだことがわかった。パリ発とかニューヨーク発とかの冠が付くと、日本人のブランド志向が刺激される。そこを巧みに使った店舗展開・・・それも悪くはない。豊臣秀吉を輩出した名古屋からニューヨーク経由の新しいスウィーツが誕生した。そう思えば、村長の心がどこかウキウキしてくるのだった。


本日の大金言。

ニューヨークだろうがパリだろうがローマであろうが、それらを飲み込んでしまうのが日本の食文化。東京のスイーツは世界一かもしれない。


                       グラマシー⑦
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ガード下の懐かし味噌ラーメン

 東京・上野駅から御徒町にかけてのガード下は、有楽町ガード下とは違う味わいがある。アメ横を抜け、新しくなった吉池を横目にブラ歩きしていると、「味噌らーめん」の幟(のぼり)が見えた。札幌味噌ラーメンの老舗「えぞ菊」だった。今でこそ札幌系味噌ラーメンの旨い店が増えたが、ここは昭和43年(1968年)創業の、東京における札幌味噌ラーメンの元祖みたいな店。
           えぞ菊1 
           御徒町ガード下の昭和

かつては都内各地に店舗があり、ハワイ・ワイキキにも進出したこともある。今では高田馬場本店も約2年半前に閉鎖し、御徒町店を入れて3店舗にまで縮少してしまった。ラードを使い、濃厚でこってりした純連系の味噌ラーメンとは一線を画したさっぱり系の味噌ラーメン。胃にも優しい、昭和の味噌ラーメンの味わいをこよなく愛するファンも多い。
           味噌ラーメン 
           札幌味噌ラーメンの老舗
           えぞ菊① 
           変わらない世界

午後3時を過ぎていたが、村長はふらりと入りたくなった。オレンジ色のL字型カウンターが懐かしい。男性スタッフが二人。一人は中華鍋を操り、もう一人は仕込みの最中だった。ラジオからは演歌が流れていた。素朴でけだるく、牧歌的な世界。券売機などはない。うむ。定番の「味噌ラーメン」(800円)を頼んだ。
                      
炎が上がる中華鍋で玉ネギ、大量のモヤシを炒め、豚足、鶏ガラ、野菜ベースのス-プを加える。秘伝の味噌ダレを入れたドンブリにスープを注ぐ。そこに平ザルで湯切りした麺を入れ、最後に炒めたモヤシ類を乗せる。メンマも多めに置き、ワカメを置き、最後にチャーシューを乗せて完成。山のようなモヤシ・・・いい匂いが立ち上がってくる。懐かしい光景
           えぞ菊③ 
           いい雰囲気

金属のレンゲでまずはスープをひと口。純連系のこってり味噌味に慣れた舌には物足りないかもしれない。だが、自然な味噌味はどこかホッとする。味噌は3種類のブレンドと隠し味で、昭和43年当時のままだそう。そういえば昔の札幌味噌ラーメンはこんな感じだった。濃厚で脂ギトギトがエスカレートし、いつの間にかそのジャンクっぽい味に慣れてしまったことに改めて思い至る。
           えぞ菊④ 
           これぞ札幌味噌ラーメン?
           えぞ菊⑤ 
           上空より
           えぞ菊⑧ 
           素朴なスープ

麺は黄色みが強い中太縮れ麺で、コシはほどほど。村長はもう少しコシがあった方が好みだが、これはこれで悪くはない。チャーシューは一見大きいが、薄くて固め。昨今の人気店のチャーシューと比べると見劣りする。多めのメンマはマル。大量のモヤシ、少量のタマネギ、少量の挽き肉、刻みネギ、ワカメ・・・すべてが昭和の正統派札幌味噌ラーメン
           えぞ菊⑨ 
           中太縮れ麺
           えぞ菊⑦ 
           モヤシの存在感
           えぞ菊⑥ 
           チャーシューは薄い
           えぞ菊11 
           辛味噌を入れてみる

辛味噌を加えてみた。味がきりっとした。それでも今どきの味噌ラーメンよりもやさしい味わい。ここからもう一度再スタートを切れないものか? 人気店のラード、背脂、魚粉・・・それを否定するつもりはないが、カロリー過多と健康への影響については気になる。「えぞ菊」の味噌ラーメンの希少価値を改めて思う。せめて今残っている3店は生き残って欲しい。村長は舌に残る遠い余韻とともに御徒町のガード下を後にするのだった。夕暮れまではまだ間がある・・・。

本日の大金言。

東京の札幌味噌ラーメンに記憶遺産があるとしたら、「えぞ菊」かもしれない。どこか隙のある応対もそう悪くはない。昭和は遠くない。



                       えぞ菊13 


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こだわりカフェの「ハーフ&ハーフ」

歩くことは楽しい。目と鼻の散歩。埼玉・行田でさきたま古墳群を観た後、市内に入ってポンコツ車を駐車場に止め、あっちウロウロこっちウロウロ。美味い店はないかいな、隠れたいい店はないかいな。古都・行田にはそういう楽しみもある。「足袋とくらしの博物館」近くの路地裏で村長の足が止まった。午後3時過ぎ。ちょうどおやつタイム。
           日和カフェ① 
           うむむ

黒板のスタンド看板に、「日和Cafe(ひよりかふぇ)」の手書き文字。その先に古い小さな平屋の民家。あばら家のようにも見える。むむむ。
なんかいい感じね。ちょうどコーヒーが飲みたかったところ」
           日和カフェ 
           お店です

村民2号がさっさと入って行った。店に一歩足を踏み込んだ途端、どこかイタリアの片田舎のカフェにでも紛れ込んだような錯覚に陥った。アンティークなテーブル席が三つほど。奥がカウンター席になっていて、その対面にうら若き女性店主が・・・。

奥のテーブル席に腰を下ろすと、店主のお母さんだという感じのいい女性が水とおしぼりを持ってきた。スイーツ類が充実しているようで、すべて店主の手作りだそう。村長はメニューの中で「ホワイトチョコとブルーベリーのチーズケーキ」と「しっとりチョコケーキ」に目が行った。ホワイトチョコを使うというのは珍しい。
           日和カフェ② 
           自家製スイーツ

「ハーフ&ハーフにもできますよ」
迷う村長の気の多さを見透かしたように女性店主。決まり。その2種類のケーキの「ハーフ&ハーフ」と紅茶(ダージリン)で880円。村民2号はチョコケーキとアールグレイ風味のブリュレの「ハーフ&ハーフ」に日和ブレンド。こちらは910円ナリ。
           日和カフェ1 
      チョコケーキとチーズケーキのハーフ&ハーフ
           日和カフェ③ 
      こちらはチョコとブリュレのハーフ&ハーフ

この自家製ケーキが当たりだった。2種類のケーキが半分ずつ。それにバニラアイスクリームと生クリームが添えられていた。「しっとりチョコケーキ」はしっとり感がひと味違った。小麦粉を使っていないそうで、ビターで濃厚なしっとり感、ほのかにリキュールの香り。それらが口中でとろけて行った。へたな洋菓子屋よりも美味。
           日和カフェ⑨  
           濃厚なしっとり感

最も気に入ったのは「ホワイトチョコとブルーベリーのチーズケーキ」。クリームチーズとホワイトチョコの濃厚な甘みと酸味、それにブルーベリーの果実味が重層的に押し寄せてくる。絶妙な味わい。底のクッキー生地も歯触りがいい。
           日和カフェ⑥ 
           オリジナルチーズケーキ
           日和カフェ⑧ 
           ひと口、どないやろ?

「私の勘は確かでしょ。かなりこだわりのある店で、とても気に入ったわ。生クリームとバニラアイスを付けて食べると、それはそれで楽しめる。いい店、めっけってとこかな」
           日和カフェ10 
           バニラアイスを乗せる

ブルーベリージャムまで手づくりしているのがスゴイね。手抜きがないというのがいい。3年前にオープンしたそうだけど、飾り付けから料理まで店主の娘さんがすべて自分の感性で選んでいるそうだよ。お母さんは単なる手伝いだって苦笑していたけど、うらやましい母娘だな」

「ホントね。ここにはいい時間が流れているのは確か」
辛口の村民2号がいつのまにか陽だまりの猫になっていた。

本日の大金言。

犬も歩けば棒に当たる。棒も歩けば猫に当たる。猫も歩けば美味に当たる。



                         日和カフェ11 

旭川の名物駅弁の味わい

知人宅を弔問した帰り、途中駅の 横浜駅構内で「全国駅弁祭り」をやっていた。覗いてみると米沢の「牛肉どまん中」や広島の「しょもじかきめし」など人気駅弁がずらりと並んでいた。その数、ざっと見たところ30~40種類。

村長は迷った末にその中から北海道の海鮮駅弁「蝦夷わっぱ ミックス」(税込み1000円)を選んだ。カニ、ウニ、ホタテ、イクラ・・・オホーツクの四天王がニカッととほほ笑んでいたからである。北海道でも人気の駅弁。あんた、アタシらを食べないと絶対に後悔するべさァ。
                              蝦夷わっぱ② 
                          おっ、名物駅弁がズラリ(横浜駅構内)
                              蝦夷わっぱ1 
           旭川の名物駅弁「蝦夷わっぱ」

発売元は明治32年(1899年)創業の旭川立売株式会社。現地に行って食べるのが一番だが、財政赤字を抱える村の村長としてはここは踏ん張りどころ。というよりも現地に行かずして北海道の味を賞味できることに感謝しなければならない。これもぜい沢。賞味期限は本日午後10時まで、と書かれている。本物の駅弁。
                             蝦夷わっぱ③ - コピー 
           美味の予感?
                             蝦夷わっぱ④ - コピー 
           器が意外にいい

夕暮れ時、ウマズイめんくい村に持ち帰ると、村民2号がみそ汁を作って待ち構えていた。早め夕飯となった。「蝦夷わっぱ ミックス」のパッケージを取ると、朱色の丸いお重のような器が現れた。プラスチック製だが、いい器。食べた後に弁当としても使える。フタを取る。海の匂い。中央にイクラがあり、それを取り囲むように煮ウニ、カニ、煮ホタテ、菜の花、錦糸卵、漬け物が鎮座していた。写真で見るよりもやや少なめだが、悪くはない。
                             蝦夷わっぱ⑤ - コピー 
           フタを取ると・・・
                             蝦夷わっぱ⑥ - コピー 
           北海道の海の幸

「旨そうねえ。ウニのあたりが私の支配区域よ。リーチ」
備え付けの割りばしでまずはカニの密集地帯にピンポイント攻撃。カニはズワイガニとオオエンコウガニ。それを甘酢で薄く味付けしてある。ご飯は北海道産を使った酢飯。この時期のカニは特に美味。甘い風味がいい具合の酢飯と合う。うむ。
                            蝦夷わっぱ10  
          カニが2種類
                            蝦夷わっぱ⑧ 
           ウニの誘惑

ウニは焼きウニかな。ダシ醤油で甘めの味が付いているわ。ボソッとした食感でウニの風味がよく出てる。生ウニの方が好きだけど、これも悪くないわ」
煮ホタテも健闘している。もっと大きいともっといいけどな。錦糸卵はフツーかな」
「イクラを乗せると、味わいが濃厚になるわ。これだけの海の幸を同時に味わえるのはかなりのお得感があるわ」
                             蝦夷わっぱ2 
           煮ホタテ
                             蝦夷わっぱ11  
           たまらんだべさ
                             蝦夷わっぱ13 
           酢飯がいい

「このミックスは気の多い人向き。全体的に薄味でそれが旨味を引き出しているね」
「駅弁に添加物は付き物だけど、これは添加物の存在をあまり感じない」
「でも、しっかり入ってるわよ。村長の舌はまだ修業が足りない」

「昨日と今日はいろいろあった日だけど、明日は大先生の手術がうまく行くといいね」
「絶対大丈夫よ。もともと神様みたいな人だから、胃の一つくらいなくなっても平気よ。すぐに元に戻るわ。村長とは精神力が違うわよ。ほら、茶柱が立ってる。これは吉兆よ」
確かに茶柱が見事に立っていた。ウソみたいだが、京都方面が明るくなっていくのだった。

本日の大金言。

旭川の駅弁を食べてからお茶を飲む。しみじみと生きている実感。あらゆるものに生が宿っている。



                                               茶柱①  








大ボスも唸った「しらすのつくだ煮」

 久しぶりに東京・佃島(つくだじま)に足を運んだ。村長の好きな街の一つで、歴史的には徳川家康が江戸に幕府を開いたときに、摂津州佃村から移ってきた漁師たちが定住した場所。佃煮(つくだに)の発祥地でもある。東京湾が隣接していて、有名人が住んでいる高層マンション群も見える。そこに江戸の昔にタイムスリップしたような一角があり、村長の目的は佃煮の「丸久(まるきゅう)」である。                                         佃島② 
           創業天保8年(1837年)の「天安」
           佃島① 
           創業天保14年(1843年)の田中屋

宮仕え時代に大ボスが「佃島に江戸時代から続く老舗が三軒あるんだよ。天安、田中屋、丸久。どこが一番美味いか知ってるか? 一番地味な丸久だよ」。そう言ってニヤリとした。当時、メディアによく取り上げられていたのは日除け暖簾が見事な天安。続いて田中屋だった。大ボスの食べ物に関する好奇心と知識は並大抵ではなかった。村長がいい店や食べ物に関心を持つきっかけの一つはこの大ボスの影響もある。
           丸久⑤ 
           こちらが「丸久」、創業は安政6年だ

その丸久は創業が安政6年(1859年)。老舗三軒の中では一番新しい。約5年ほど前に耐震の関係で店を建て替えたために、かつての風情はないが、久しぶりに暖簾をくぐると、以前と同じように、奥から当代がのそっと出てきた。天安や田中屋のようにスタッフが大勢いるわけではない。建物は新しくなっても、最も手づくり感のある店だと思う。売り切れ御免の店でもある。
           丸久③ 
           店内は実にシンプル

一番人気の「あさり」(100グラム720円)と「しらす」(同720円)を買い求めた。「あみ」(100グラム411円)、「まぐろの角煮」(同617円)は予算の関係で今回は断念した。その後、赤坂に寄る用があり、「あさり」を手土産にしたために、手元に残った「しらす」をバッグに入れ、夜遅くウマズイめんくい村に帰った。
           丸久② 
           あさり
           丸久① 
           こちらがしらす

翌日、その丸久の「しらす佃煮」で昼ご飯を食べることにした。村民2号が胚芽米でご飯を炊き、大根と油揚げの味噌汁を作る。包みを解き、しらすの佃煮が現れる。琥珀色(こはくいろ)に煮詰められた丸久の佃煮は以前とまったく変わりない。まずは箸でひと口。懐かしい美味が立ち上がってくる。
           丸久 
           風情のある包み
           丸久① 
           美味まで1マイル
           丸久② 
           これで100グラム

代々継ぎ足しのタレで油断なく煮詰められたしらすは、きりっとしていて、やや甘めだが、雑味がない。1匹1匹に深い旨みが詰まっている、とでも表現のしようがない。スーパーで買う佃煮とは比較できない職人の味わい。噛みしめると、歯と歯の間から旨みがにじみ出てくる。つい海で泳いでいた時のしらすに想いが行く。醤油と味りんと歴史の海をくぐり抜けてきた美味の円環。
           丸久④ 
           しらすの夢?
           丸久⑤ 
           最高のぜい沢?

炊き立てのご飯にのせる。これは最高のぜい沢かもしれない。何杯でもご飯が進む。唾液がどんどん出てくる。頭の中がキラキラしてくる。
           丸久⑦ 
           ご飯の上の天国
           丸久⑨ 
           人生が変わる?

「そこでストップ! もっと大事に食べましょうね」
村民2号の 声がなければ、軽く3杯は行っていた。その後、たまたま小津安二郎監督の「お茶漬けの味」を観た。年に一度くらいは「つくだ煮の味」も悪くない。次があるのか、もわからないというのに・・・。

本日の大金言。

シンプルの至福。ロングアンドワインディングロードの先。果たしてそこまで行けるか?


                       丸久10 


アトリエカフェの限定ハンバーガー

 「友人の画家ファミリーがカフェを始めたのよ。アトリエカフェって珍しいでしょ。ランチも始めたから、行ってみない?」
自分でも絵筆をとる村民2号が村長の耳元で囁いた。
「へえー、そりゃまた春からめでたい。スイーツもある?
「もちろんよ。チーズケーキとかアップルパイとか揃っててすべて自家製よ」
「あんこ類は?」
「自分の目で確かめたら?」
           オレンジベル 
       まさかの場所に・・・(埼玉・羽生市郊外)
           オレンジベル2 
           ヨーロッパの田舎?
           アトリエオレンジベル 
           ベルの先の世界は?

約1時間後、青いポンコツ車が埼玉・羽生市上岩瀬のあまりに牧歌的な場所に止まった。空が高い。近くには渋澤牧場もある。かような場所にかようなメルヘンがあるとは・・・目的の「アトリエ オレンジベル」がポエムに建っていた。「カフェ&ギャラリー」の文字。オープンしたのは昨年の暮れ。イギリスから帰国したアクセサリーデザイナーの娘さんも手伝って、画家・彫刻家でもある夫妻で店を始めた。どちらも料理好きということもカフェを開く動機になったようだ。
            
店内は手づくりのテーブルやソファが4つほど。室内にはファミリーの作品がきれいに展示され、グッズ類、カバンなども販売している。それらを見ているだけでも楽しい。ちょうど「大沢末利子・鈴木美恵子二人展」(今月25日まで)を開催中で、午後2時だというのに店内はほぼ満席だった。
           オレンジベル6 
           ランチメニュー
           オレンジベル5 
           本日の発見か   

村長はランチメニューを見て迷った。「ミートパイのフライドポテト添え」にするか「エビとアスパラのトマトクリームパスタ」にするか。どちらもサラダ・ドリンク付きで900円(税込み)。ふと別のメニューがちらりと見えた。「完全限定 ベルズバーガー」(フライドポテト・ドリンク付き1000円)。村長の好きな自家製ハンバーガー! 「バンズも自家製 100%ビーフ」の文字。即決。ドリンクはコーヒーを頼んだ。
           オレンジベル3 
           こだわり

ハンバーガーは主人の担当のようで、奥の厨房からビーフを焼くいい匂いが漂ってきた。BGMはアメリカンロックに変わっていた。約12~3分後、「ベルバーガー」がやってきた。自家製だというバンズがいい焼き色。卵白のテカり、白ゴマが悪くない。その下は輪切りのトマト、ピクルス、チーズ、中央には大きめのビーフハンバーグ、その下にレタスが敷かれていた。いいビジュアル。
          オレンジベル② 
          うむむ
          オレンジベル① 
          美味の予感?

7層を上からギュッと押して、ガブリと行った。バンズはやや固めだが、手づくり感にあふれている。小麦の香り。続いてジューシーな酸味。メーンのビーフハンバーグがいい歯ごたえで口中に広がった。肉汁の存在感。多分マヨネーズとトマトソースで作ったオリジナルソースがこぼれ落ちそうになる。紙の袋が欲しいところ。
          オレンジベル⑥ 
          どないでっか?
          オレンジベル⑦ 
          ギュッ・・・手づくり感

「バンズまで自家製にするのはこだわりがいかにもアーティストだね。マスタードも欲しいところだけど、値段的に考えてもこれはいいスタートだと思う」
「ミートパイとかパスタが一番人気らしいわよ。今度はそれを食べたいわね。土日月の週3日営業だから、今週末にまた来ない?」

「あんこがなかった。悲しい。あんこサンドなんかメニューにしてほしいなあ。それからあんみつパスタとかさ」
「何それ、アートとは無縁の村長じゃあ、話にならないわ。こういうアトリエカフェが誕生したことが凄いことなのよ。ここにいるだけで私はとても癒されるわ。村長さえ視界から消えてくれればね」
「・・・・・・」

本日の大金言。

新しい名所の誕生。一粒の麦。そこから新しいストーリーが生まれるかもしれない。


                         オレンジベル⑨ 

「元祖親子丼」の大行列に並ぶ

 恐るべき食通・ドン圭氏と連れ立って、東京・人形町へ。ちょっとした縁で、赤坂の日枝神社の新年会に出席する前に寄り道して「玉ひで」で早めのランチを楽しもうとなったからである。村長にとっては数年ぶりの「玉ひで」。目的はここの元祖親子丼。創業が宝暦10年(1760年)という東京でも老舗中の老舗。行列ができる店としてもあまりに有名な店。
           玉ひで行列 
    午前中だというのに・・・(東京・人形町「玉ひで」)

平日の午前11時半に到着。それでも12~3人ほどが並んでいた。なかなか進まない。40分ほどで係の女性の合図で店内に入る。そこからさらに靴を預けて、番号札をもらい、ひたすら待つ。係の女性はテキパキと指示を出し、客はひたすら言われたとおりに待つ。まるで東京ディズニーランドの人気アトラクションのよう。待てば海路の日和はあるか?           玉ひで9 
         人気店ならではの光景
           玉ひで① 
         ここから親子丼が始まった

注文と支払いは前金システムになっていて、席に着く前に、昔の映画館の切符切りのような窓口で、村長は「元祖親子丼」(税込み1500円)を頼み、支払いを済ませる。好奇心旺盛なドン圭氏が「ここは随分儲かってるな」と頭のソロバンをはじく。ドン圭氏は「玉ひで」初体験。
           玉ひで③ 
           まずは鳥スープ
           玉ひで⑤ 
           主役の登場 

1階の広間のテーブル席(掘りごたつ式)で相席。お茶とおしぼりが出され、さらに10分ほど待つ。鳥スープが出され、続いて、金の蒔絵の見事な漆器のドンブリがやってきた。うむ。殿様にでもなった気分になりかかる。ばか殿未満だが。ここまで来るのに都合1時間ほど。この店は待つことを楽しむ気持ちが大事と知る。人生修業にもいい店。

鳥スープはお椀の下三分の一ほどの量だが、まろやかで美味。主役の「元祖親子丼」は蓋を取った瞬間、湯気といい匂いとともに、半熟の溶き卵の黄色い世界が広がった。一瞬、ベートーベンの「運命」が聞こえた気がした。親子の運命・・・ある種の感動。あちこちに泡が浮き、半熟というより、上の方は生たまごのよう。おそらく3個ほど使っているのではないか。
           玉ひで⑥  
           この瞬間がたまらない
           玉ひで⑧ 
           明治24年の味どす

鳥肉は東京ブランドの軍鶏肉「東京しゃも」を使い、それが胸肉ともも肉2種類。1センチほどの角切りで、12~13個ほどが黄色いホットな海に浮かんでいる。具はそれだけ。シンプルな絶景。明治24年に五代目山田秀吉の妻とくが考案したそのままで、軍鶏(しゃも)の旨さを一番引き出す、一子相伝の味だそう。

箸は置いてない。朱塗りのレンゲしかない。それですくって口中に運ぶ。濃いしゃもの卵の風味と甘めの割下がいい具合で広がった。胸肉は柔らかめだが締まった味わい。もも肉はコリッとした固めの食感。ご飯はやや固めに炊かれていて、ツユダクなので、ふわふわの卵、しゃも肉とともに口中に運ぶと確かに美味。シンプルな芳醇という言葉が頭に浮かんだ。これが980円くらいなら御の字なのだが。
           玉ひで10 
           ふわとろを超えた味
           玉ひで11 
           東京しゃもの胸肉
           玉ひで7 
       七味をパラり・・・こちらはもも肉
           玉ひで3 
         親子丼の最高峰?

あっという間にきれいに平らげる。やや物足りなさも残る。食べ終えてお茶を飲む。「ここは卵だね」ドン圭氏がぼそっと短い感想を漏らした。周りを見渡す。観光客らしい人、中国系らしい人、中高年客・・・村長はなぜか自分がブロイラーのニワトリに思えてきた。システム化された行列の後の空虚感・・・。ついコケコッコーと叫びたくなるのだった。

本日の大金言。

ガイドブックやメディアに載る有名老舗に過剰な期待は禁物である。金の卵は草鞋で探すに限る。


                       玉ひで8 

疲れたら「とんかつ屋のカツ丼」

 夜遊びのし過ぎが祟ったのか、クシャミが止まらない。鼻水も止まらない。こういうときは煮込みカツ丼に限る。それも極めつけの! そば屋のカツ丼、立ち食いのカツ丼、食堂のカツ丼・・・・頭の中をカツ丼がぐるぐる回った。こういう場合はやはりとんかつ屋のカツ丼に限る。豚肉の質と量が圧倒的だと思う。

ポンコツ車を飛ばして向かったのは埼玉・久喜市菖蒲町の「とんかつ 宮」。そう安くはないが、豚肉の厚さとデカさで知る人ぞ知る店。近くにはショッピングモール「モラージュ菖蒲」がある。埼玉でも評価の高いラーメン店「栄ラーメン」はすぐ向かい側。ちょっと見には高級料理屋のような木造の外観。「とんかつ宮」の看板が老舗感を醸し出している。
           とんかつ宮① 
           一軒家のとんかつ屋(埼玉・久喜菖蒲)

東京・板橋でとんかつ屋を営み、約30年前にこの地に暖簾を下げたという。筋金入りのとんかつ屋である。入り口を入ると、右手がテーブル席、左手には珍しい縄のれんが下がり、その奥が一枚板の見事なカウンター席、さらに板の間の座敷になっていた。カウンター席の対面が料理場になっていて、スポーツ刈りの店主がとんかつを揚げていた。いい音。うむ。女将さんと二人で店を切り盛りしているようだ。
           とんかつ宮④ 
           見事な世界

村長はマスクを取って、メニューの中から目的の「かつ丼」(豚汁・漬け物付き900円=税込み)を選んだ。とんかつを作り始めるのがわかった。いい匂いがかすかに鼻腔に届く。15分ほどの待ち時間。お盆に乗って、漆器のドンブリと豚汁がやってきた。ドンブリは優に幅20センチはあろうかという大きさ。うむ。
           とんかつ宮② 
           とんかつ屋のカツ丼

蓋をしずしずと取ると、湯気とともに溶き卵の白と黄色が視界に広がった。多分2個は使っているのでは? とんかつは大きく、8つほどの切り込みが入っていた。箸を入れると、肉の厚さがわかった。約1センチ。思っていたよりもやや薄めだが、十分な厚み。900円という価格を考えるとそれ以上を望むのはぜい沢というもの。
           とんかつ宮⑥ 
           蓋を取ると・・・
           宮 
           たまらんのう

まずはひと口。薄味。それも出汁が効いていることがわかる味わい。濃くて甘いのもいいが、この抑えた自然な味わいも悪くはない。とんかつはロース肉で、赤身と脂身のバランスがいい。コロモは薄め。その下に敷かれたタマネギとともに熱々のご飯と一緒にかっ込む。ご飯は柔らかめ。多分彩のかがやき。優しいタレ加減。この店がかなり健康を意識したとんかつ屋だとわかった。
           とんかつ宮⑨ 
           どないでっか?
           とんかつ宮10 
           脂身の美味
           とんかつ宮2 
           飛び降りたい

豚汁は白菜の間に豚肉が潜んでいて、こちらも自然な味わい。箸が進み、あっという間に食べ終えた。腹周りが確実に1センチは広がった。食後、店主としばし雑談。

「この豚肉はブランド豚ですか?」
「うちはブランド豚なんて使わないですよ。普通の国産豚です。肉屋ですから、いい肉かどうかは見るとわかる。ブランド豚って私にはよくわからない。要はいい肉かどうかだけですよ」

「油はラードですか?」
聞くのも野暮だと思いつつ聞く。悲しいサガだが。
ウチはラードは使いません。味はよくなるかもしれないけど、身体によくない。普通のサラダ油を使ってますよ」
逆説的だが、身体にいいとんかつ屋のカツ丼。確かに腹に持たれた感じはない。何となく風邪が抜けていく気がした。

本日の大金言。

疲れた時はとんかつ屋のカツ丼で自分をリセットする。日本の食文化の懐かしいおじさん。ビタミンB1の宝庫。




                        宮2 





奈良老舗の「献上三笠」の謎

 「店を広げたり、デパートに出すようになったらお終いですよ、ひっひっひ」
京都にお住いのグルメ先生の金言である。店舗を広げず、二百年以上も「一対一の商い」をかたくなに守り通している「御菓子司 亀末廣」までぶらぶら散歩がてら行くお方である。

そのグルメ先生から頂いたのが、奈良の老舗和菓子屋「鶴屋徳満」の「献上三笠」(一個税込み810円)である。本日まな板にお載せするのはこのジャンボどら焼き。古都・奈良周辺ではどら焼きのことを「三笠」とか「三笠山」と呼んでいる。形が三笠山に似ているところに由来しているそうだ。実のところ、この「献上三笠」について、書くのをためらってきた。村長の舌ではとてもその真髄に辿り着けそうもないと思ったからだ。
           献上三笠① 
           美味の予感

「鶴屋徳満」は創業が明治31年(1898年)だが、元禄15年(1702年)創業の「鶴屋八幡」から暖簾分けした老舗。奈良市内に本店を含めて3店舗しか営業していない。「献上三笠」は昭和27年(1952年)、明仁殿下(現天皇)の「立太子の礼」のお祝いとして宮内庁から注文を受け、献上したもの。

紙袋を開けて、ビニールパックを取ると、こんがりといい色具合に焼かれた巨大などら焼きが目の前に現れた。直径14~15センチほど。厚さは約4センチ。普通のどら焼きの4倍ほどの大きさ。添加物などは使っていないため日持ちは長くない。最近はスーパーなどでもジャンボどら焼きを見かけるが、そのほとんどは添加物が大量に入っていて、ただデカいだけが取り柄のお菓子に過ぎない。
           献上三笠② 
           献上三笠

終戦からあまり経っていない時期に初めて「献上三笠」を見た人は驚いたに違いない。それからやく62年後、村長は煎茶を飲みながらまん中に包丁を入れた。村民2号が巫女のように(?)見守っている。皮のスポンジが意外に厚い。卵とハチミツの香りがそこはかとなく漂ってきた。中央のあんこは粒あん。粒あんは「その時一番いいい大納小豆を使ってます。丹波もあれば北海道十勝もあります」(「鶴屋徳満」)とか。
           献上三笠③ 
           見事な焼き色
           献上三笠④ 
           絶妙なバランス

最初の一口。皮のふっくら感とかなり甘めの粒あんがフツーに美味い。粒あんは一粒一粒の中にいい風味が詰まっている。ていねいな作り。砂糖は多分上白糖だろう。「日本橋うさぎや」のようなもっちり感はない。スポンジの存在感の方があんこよりもやや上回っている気がした。
           献上三笠⑥ 
           四分の一で一人前?
           献上三笠⑦ 
           正座して食え

「『うさぎや』のようなわかりやすい感動はないけど、この大きさと雑味のなさが本物感をじわじわと押し出してくる感じね」
「グルメ先生が太鼓判を押すくらいだから、このシンプルな味わいの奥に何か潜んでいるんじゃないか」

「村長の付け焼刃の舌じゃ、探求は無理よ」
「確かに。この味の深みはわからん。村長にとっては謎だ。スウェーデンにお住いの瘋癲北欧先生ならわかるかもなあ。渓流斎先生も二日酔いでなければ、わかるんじゃないかな」

「『献上三笠』一個で話が地球規模になってきたわね。グルメ先生がクシャミしてるんじゃないかしら」
隣りの猫が鳴き、遠くでクシャミが聞こえた気がした。

本日の大金言。

京都は奥が深い。奈良も深い。添加物全盛の時代に本物を見分けるにはさらに修練が必要だと改めて思う。カツ!


                      献上三笠⑧ 

頂点か、佐野ラーメンの恐るべき新星

久しぶりに佐野ラーメンを食べにポンコツ車を飛ばした。佐野ラーメンのシンプルで深い旨味は村長の好みで、首都圏から遠くないのも気に入っている。都内に「佐野ラーメン」を看板にする店は少ない。実に不思議である。何を隠そう、村長は佐野ラーメンこそラーメン界の頂点に位置するラーメンだとひそかに思っている。

その佐野ラーメン界に凄い新星が登場した、という情報をつかんだのである。オープンして1年ちょっとだというのに、佐野ラーメン人気ランキングトップに躍り出たという。ウソか真実か、メンクイとしてはこれは行ってみるっきゃない。
           大和 
           うどん屋ではありません

午後1時過ぎ。その店「青竹手打ちラーメン 大和(やまと)」に到着。佐野中央病院からほど近い県道270号線沿い。その近くには「ゐをり」や「森田屋」「万里」など人気店がある。そこに店を出すというのも店主の自信と野心を感じる。うどん屋かそば屋のような一軒家。外観は月並み。
           大和1 
           満員の店内

足を一歩踏み入れると、店内はほぼ満員で、テーブル席や板の間の小上がりが広がっていた。おばさん店員が4~5人ほど忙しそうに動いていた。「いらっしゃいませ~」掛け声が飛び、活気が満ち溢れている。その中心に店主がいた。40歳前後か。村長はカウンター席に案内され、そこに腰を下ろした。目の前が厨房。メニューの中から、「手打ちラーメン」(580円)と「焼餃子3ケ」(240円)を選んだ。
           大和② 
           良心的なメニュー

しばらく観察していると、麺づくりは店主が一人で切り盛りしていることに気付いた。包丁でチャーシューを切り、青竹打ちした麺を茹で上げ・・・ここだけは誰にも任さないという雰囲気。そのためか、待ち時間が15~18分ほどかかり、「餃子」が登場、続いて「手打ちラーメン」がいい匂いとともにやってきた。
           大和③ 
        ようやくラーメン様の登場

大きめの白いどんぶり。きれいに透き通った醤油スープ。キラキラと脂が浮いている。大きめの豚バラ肉チャーシューが2枚。多めのシナチク。小さ目のナルト、刻みネギ、その下に揺蕩っている太めの麺。ひと目でかなりの実力だとわかった。
           大和④ 
           コショウをパラパラ

まずはスープ。最初のアタックはまろやか。その奥から恐るべき旨味がジワジワと来た。鶏ガラの他に豚骨も使っている? さらに何かが? 醤油は本樽仕込みの天然醸造(岡直三郎商店)を使っているようで、そのこだわりがわかる。
           大和⑥ 
           シンプルな奥行き

青竹打ちの麺が佐野ラーメン本流のものとはいささか違った。太さがまちまちで、わざと手打ち感を出しているようだ。つるっとした食感だが、コシとモチモチ感が際立っている。佐野ラーメンの中では「ゐをり」や「精養軒」に近い感じもするが、微妙に違う。
           大和⑧ 
           太麺の実力
           大和⑤ 
           チャーシューの実力
           大和⑨ 
           旨みの秘密

チャーシューも手切り感が伝わってくる厚さで、赤身と脂身のバランスがいい。その柔らかさ。シナチクも悪くない。580円という価格設定も誠実。村長がこれまで食べた中でもこれはベスト3に入る味わいだと思った。待ち時間が難点だが、それもその後の美味が苛立ちを鎮めてくれる。

餃子はかなりデカい。焼き加減がいい。具はキャベツとニラ、それに合挽き肉。皮が厚くてやや固い。もう少しもっちり感があれば言うことはないが、餃子のレベルが高い佐野ラーメン店の中では平均点の味だと思う。
           大和10 
           デカい焼餃子
           大和12 
           ガブリと行け

スープを一滴残さず飲み終えると、いい音楽を聞き終えたような大いなる感動に包まれた。店を出る前に、店長にひと言尋ねてみた。「どこで修業したんですか?」。すると、「佐野ではないんですよ。群馬のほうで」という答え。暖簾分けの多い佐野ラーメンの中では異端とも言えるが、それ故に佐野ラーメンをさらに進化させる可能性も感じた。佐野ラーメン、恐るべし。

本日の大金言。

鶏ガラ醤油ベースのシンプルな佐野ラーメン。その旨味は脂ギトギトラーメンの天下に対抗できる一方の雄だと思う。



                         大和14 



ビミョーな「上州牛のステーキ重」

 ゴッドマザーのお見舞いを兼ねて、群馬・桐生にポンコツ車をぷかぷか飛ばした。牛肉が大好きなゴッドマザーに「旨い牛肉を食べさせてあげたい」村民2号の思いがひしひしと伝わってくる。実は村民2号も牛肉が大好き。村長はどちらかというと魚系豚肉派だが、フトコロが温かいときは牛肉も悪くない。不労所得が少々入ったことで、村長の気がちょっぴり大きくなっている。

「どうせ食べるなら黒毛和牛がいいわ」
「牛も女も上州に限るわね。やっぱり上州牛でしょ」
ゴッドマザーを乗せてから、村長は桐生市郊外のステーキの名店「みはら」にポンコツ車を止めた。
           みはら 
           桐生の老舗ステーキ店
           みはら1 
           上州牛肉!

ステーキのチェーン店とはふた味違う高級感のある店構え。創業30年ほどの、地元では知られた「上州牛肉専門」の老舗。店内はシックなテーブル席が合計8つほど、さらに座敷もある。窓側のテーブル席の横にはサラダバーがあり、その奥には厨房が見えた。どこか高級ファミレスのようでもある。コックが焼くステーキの匂いがそこはかとなく漂っている。
           みはら② 
           お得なランチメニュー

ランチメニューの中から、村長は「みはらステーキ重」(1260円)を選んだ。村民2号とゴッドマザーは「みはらハンバーグ」(1160円)。どちらも「上州牛」で、ライス、サラダ、ドリンクバー付き。フツーに考えるとぜい沢なランチだが、内容を考えると高くはない。
          みはら2  
          サラダバー

注文してから焼くために15分ほど時間がかかった。ジュウジュウといい匂いとともに「みはらハンバーグ」が登場、続いて「みはらステーキ重」がやってきた。お重はふたを取る時がたまらない。いい焼き色の上州牛が5枚ほどご飯の上に寝そべっていた。上州牛はヒレ肉だそうで、それゆえか、いささか肉が薄い気がした。斜め切りしているのは少しでも厚く見せようということか。
           みはら④ 
           うむ

まずはひと口。柔らかい。ほのかな甘み。肉自体にいい牛肉独特の旨みが詰まっていることを実感。タレがほどよくかかっていて、ご飯とともに食べると幸せ感が口中にじんわりと広がる。ご飯が旨い。明るい女性店員に聞くと「新潟産のコシヒカリです」。海苔とご飯にかかったタレの加減がいい。
           みはら⑦ 
           斜め切り
           みはら⑧ 
           ご飯の美味
           みはら⑨ 
           へーい、一貫!

だが、いい肉なのはわかるが、肉の量が少ないので、ご飯が残ってしまった。サラダバーで取ってきた煮豆で残りのご飯をかっ込んだ。サラダバーが充実していて、野菜ばかりでなくパスタや枝豆、スープまである。これは悪くない。
           みはら10 
           美味の断層

「上州牛のハンバーグはやっぱり肉がいいわ。チェーン店のものとはひと味違う。ボリュームもちょうどいいわよ。村長もこっちにすればよかったのに」
量より質だよ。薄くても上州牛のヒレ肉。赤城の山も今宵かぎり・・・」
「何わけのわからないこと言ってるんだい。あたしゃあ、まだまだ元気だよ。上州牛食って、百までガンバルぞー」
噛み合わない会話がしばらく続くのだった。

本日の大金言。

日本の黒毛和牛が海外でも人気を呼んでいる。日本独自のとろけるような柔らかさ。その陰の様々なこと。



                        みはら11

ようやくわかった「あんみつ」の傑作

 東京・門前仲町の甘味処「いり江」は、かつて何度か足を運んだ懐かしい店。先日、築地「天まめ」のあんみつを「新しい職人の味わい」と書いたところ、友人のスイーツ好きから電話があった。

「新しい動きに敏感なミーハー村長に敬意を表すけどね、あれを書くなら、門仲の『いり江』を書かない手はないでしょ。元々が寒天屋で、今もテングサから作ってます。寒天は職人芸。あんこもひと味は違う。古い店の凄さも知るべきです」
友人は笑ながらチクリと苦言を呈した。
           いり江 
       久しぶりの訪問(東京・門前仲町)

門前仲町「いり江」のあんみつは、エンターテインメント新聞社時代に何度か賞味している。数年前、京都にお住いのグルメ先生を案内したこともある。グルメ先生は「いい店だ」と感想を漏らしたが、村長は実のところ、「品はいいがやや物足りない味だな」という評価だった。

友人の電話が頭にあったので、兜町に行くついでに、ふと足を伸ばすことにした。「いり江」は甘味処としては昭和45年(1970年)創業だが、それ以前は寒天やこんにゃくを製造していた歴史を持つ。寒天に対するこだわりは、今でも神津島産と大島産のテングサから手間ひまをかけて寒天を作っていることからもわかる。
           いり江① 
           暖簾の奥の世界

京都の町家のような店構えの暖簾をくぐる。琴の音が流れ、テーブル席が大小合わせて8つほど。シンプルだが、和が隅々まで行き届いている。夕方だったので客は一組しかいない。メニューから目的の「あんみつ」(730円)を頼んだ。女将に「蜜は黒蜜と白蜜、どちらになさいますか?」と聞かれ、あんこ好きとしてはここは「白蜜でお願いします」と答える。
           いり江② 
           あんみつ様

10分ほどで、お盆に乗って「あんみつ」がやってきた。控えめに洗練された白桃、ミカン、パイナップル、いぶし銀の求肥・・・中央にはさくらんぼ。あんみつの王道を行く小世界が有田焼の器に収まっている。目を見張るのはこしあん。あんみつのあんこは普通は中央にあり、ディッシャーで球形に盛られているが、ここは違う。中央ではなく器のヘリの方に向かってヘラで半円状に盛られている。それもかなりの分量。
           いり江③ 
           おいでやす
           いり江④ 
           白蜜の滝?

そのこしあんが絶品だった。色も風味もかなりのレベル。舌触りがさらりとしていて雑味がない。抑えた甘みとほのかな塩加減。感動がジワジワくる。これだけのこしあんはそうはない。砂糖はザラメか? 赤えんどう豆は北海道富良野産を使い、浅草の豆かんの名店「梅むら」のようなきりっとした安定感。皮がプリッとしていて、中がふっくらとしている。うむむむ。汗。
           いり江⑥ 
           こしあんの凄味
           いり江⑦ 
           あーん
           いり江⑧ 
           自家製寒天の凄味
           いり江⑤ 
           2種類の求肥

寒天は直球勝負の築地「天まめ」より柔らかい。これは好みの問題だが、繊細な風味の寒天で、海の香りもどこか春のよう。野暮好きの村長にとっては「天まめ」の野暮ったさが好みだが、「いり江」の洗練は「あんた、もう少し修業なさったら」と囁かれているような気分。かつて「品はいいが物足りない」と断定していたことがやや恥ずかしくなってきた。
           いり江⑨ 
           赤えんどう豆の凄味

2種類の求肥も美味。白蜜もいい。素材と作り方へのこだわりがこれほどだったとは。時間とともに好みが変わったのか、それとも・・・村長の脳裏をは友人のしたり顔がよぎっていった。ぐやじいのう。

本日の大金言。

足元に宝石があるのにそれに気づかない。平凡の中に洗練が潜んでいるのにそれに気づかない。愚かなことだ。自戒を込めて。




                        いり江11 







逸ノ城みたいな煮干しラーメン

 埼玉・鴻巣市吹上町で「須田剋太展」を観た後、ウマズイめんくい村の怪しい一行は、行田市さきたま古墳群方面へと向かった。目的は古墳ではない。煮干しラーメンである。B級シンジケートからの情報で、県道77号線沿いに「絶品の煮干しラーメンがある。心して食べるように」という指令が下っていたからだ。
           須田刻太展 
           「須田剋太展」へ(埼玉・鴻巣市)

その「らーめん どんぐり」はすぐにわかった。「極上煮干しスープ」と書かれた赤いノボリが寒風にはためいていた。オープンしたのは約5年前。東京・永福町系大勝軒の流れを汲む「大海軒」で修業してから、この地に旗を立てたようだ。午後12時30分。4人ほどが店の外のベンチで順番を待っていた。埼玉でも人気店にのし上がってきていることがわかった。
           どんぐり① 
       煮干しラーメンの人気店(行田市埼玉)

それほど待たずに、店内に入ると、右手にカウンター席が6つ、左手に4人用テーブル席が2つ、2人用テーブル席が2つ。カウンターの対面が広めの厨房になっていて、職人的な店主が手際よくラーメン作りに励んでいた。多分夫婦なのだろう女将、それにバイトの若い女性が二人。開放的な明るさの中で、煮干しのいい匂いが鼻腔に流れてきた。うむ。悪くない。
           どんぐり12  
          メニューはシンプル

メニューは多くない。いい傾向。村長は「ワンタンめん(210グラム) 850円)、村民2号は「らーめん(280グラム) 750円」を頼むことにした。「小」(140グラム)も同じ値段というのがいささか腑に落ちない。この選択が村民2号にとっては後悔のタネになったが・・・。
           どんぐり③ 
           横綱級の圧倒

7~8分ほどでいい匂いとともに白い陶器のドでかいドンブリがやってきた。永福町系の特徴でもあるドンブリに村民2号が感動している。「まるで大相撲の逸ノ城みたい。量も凄いボリューム、うまそー」。よく考えたら、ラーメンは麺の量はおおむね1杯150グラムくらいだから、ここは2倍近い。気づくのが少々遅かった。
           どんぐり⑤ 
           期待が膨らむ

「ワンタンめん」は透き通った醤油スープ、小さ目のチャーシュー、完熟ゆで卵、細めのメンマが10本ほど。見事なのは中細縮れ麺。中央に腹を出すようにきれいにレイアウトされていた。隅にはワンタンが7~8個ほど、醤油スープに旨そうに浮かんでいる。店主のこだわりが見て取れた。
           どんぐり⑦ 
           極上煮干しスープ
           どんぐり⑥ 
           中細縮れ麺

村長はまず「極上」と称する煮干し醤油スープをレンゲでひとすくい。脂がキラキラ浮いている。ラードの匂いと煮干しの匂いが同時に舌と鼻腔に絡みついてきた。薄味とも思えるほど意外にやさしいこってりした旨み。店主が自信を持つだけのことはある。麺は黄色みの強い中細縮れ麺で、丸富製麺の特注麵。コシはほどほど。村長はもう少し固めが好み。ひと口二口食べ進むうちに、なぜか「チキンラーメン」を思い出した。鶏ガラも入っているのだろうか? 
           どんぐり⑨ 
           ワンタンの美味
           どんぐり⑧ 
           チャーシュー

チャーシューは固めで特筆するレベルは感じない。メンマもまずまず、ゆで卵は昭和40年代のゆで卵。全体の印象は、見た目も最初のアタックも悪くない。ワンタンは具が少なめだが、つるっとしていてそれなりに旨い。むしろ、見事な見た目。だが、と村長は思った。期待したほどの感動が来ない。むろん好みの問題だが、村長には中途半端なスケールのデカさと煮干しと背脂の余韻が残った。
           どんぐり10 
           懐かしいゆで卵
            
140グラムにすればよかったわ。最初は旨かったけど、途中でギブアップ。選択肢が2つしかないのが残念。せめて170グラムくらいの設定も欲しいわね」
「煮干し系ではやはり東京・赤羽の『麵屋 伊藤』の方が村長の好みだな。ここはがっつり食べたい若い人向きということだな」

「須田剋太の油絵がよかっただけにこの胃もたれ感が計算外。やっぱり140グラムの小にすればよかったわ。頑張って4分の3まで食べたのが敗因」
「欲張りすぎた罰だよ。逸ノ城より遠藤だよ。たまにはこういう結末もいいね。ハハハ」
「村長にだけは言われたくないわ。どんぐりの背比べよ」
「・・・・・・」

本日の大金言。

身の程を知る。足るを知る。頭ではわかっていても、欲望は簡単に制御できない。ラーメンにおいておや。



                        どんぐり11 


不思議な浅草いなりと越乃寒梅

 浅草の「志乃多寿司」で手土産にいなり寿司を買おうと思って立ち寄ったが、あいにく休みだった。ぐやじい。そのまま合羽橋方面へと向かうことにした。大根おろし器を買おうと思ったからである。再発したぎっくり腰を抑えながら、ぶらりぶらりとしばらく行くと、「かっぱ橋本通り」近くで、ふといなり寿司の姿が視界に入った。濃く煮しめた油揚げの色・・・東京のおいなりさん! 村長の目が吸い込まれた。のり巻きやお赤飯、それに「越後家特製大福」の文字。飛び込むっきゃない。
          越後家 
          めっけ! (東京・西浅草三丁目)

不思議な店だった。「新日本料理 越後家」の看板と白地の暖簾が下がっていた。どう見てもきれいな和食処なのに、店の右側は下町の和菓子屋。調べてみたら、すぐ近くに本店があり、そこは創業120年を超える庶民的な和菓子屋だった。いなりやいか天巻き、お赤飯、それに「福多もち(大福)」などが売り。本店が町の和菓子屋で支店が本格的な和食処というのも珍しい。
          越後家① 
          東京のおいなりさん、大福も・・・

その支店で見つけた「いなり」(1ヶ115円)を3個買い求めることにした。さらに「福多もち」(1ヶ190円)も二つ頼んだ。この「福多もち」がユニーク。「浅草名物 越後屋特製大福」と表記され、白い和紙に一個一個包まれていた。大きく「福多もち」と書かれている。福が多くなる餅? 店の女性に聞いたら、「昔からこう言ってるんですよ。豆大福ではなく普通の餅大福です」とか。透明なビニールで包まれた豆大福は多いが、白い和紙ふうでていねいに包まれているのは珍しい。

ウマズイめんくい村に持ち帰ると、いなり寿司好きの村民2号がにこやかに出迎えた。先日、友人が手土産に持ってきてくれたあの「越乃寒梅 金無垢」(純米大吟醸)で、浅草のいなりを味わうことにした。越乃寒梅を口にするのはは約十年ぶり。滅多に飲めない酒と下町のいなり寿司の組み合わせ。デザートには「福多もち」。ムフフフ・・・これぞウマズイめんくい村の曼荼羅世界。
          越後家5 
       越乃寒梅(金無垢)との相性は?

いなり寿司は江戸前の濃い味付けで、醤油と砂糖、味りん、酒などで作ったタレでじっくりと煮詰められている。関西のように出汁感はない。大きさもフツーのものよりひと回りほどデカい。ガブッと行くと、かなり濃い甘さ。北千住の「松むら」と似ているが、もっと素朴だった。酢飯には具がない。やや固めのご飯だけ。何というシンプルないなり寿司。村長は拍子抜けした。
          越後家⑤ 
          これこれ、江戸前のいなり
          越後家⑥ 
          裏側も濃い色
          越後家⑦ 
          恐るべきシンプル

江戸前のブッキラボーな味わい。それをぜい沢にも「越乃寒梅 金無垢」で洗い流す。トロリとした、ボディーの強いやや辛口の美味さ。江戸前が越後の名酒に包まれていく。なぜか笑いがこみあげてくる。

私はこのいなり、好きよ。シンプルな中に深い味わいがあるわ。ニヤニヤしてないで、村長もこのいなりを見習ったら?」
「うむ、高級と飛び切りの低級の融合が悪くない。店の人が言ってたけど、油揚げのタレは創業以来継ぎ足し継ぎ足ししているんだってさ。あまり知られてないけど、凄いいなりかもな」
「当たり前でしょ。見た目は似てても、スーパーのいなりとは違うわよ。そろそろ、デザートにしましょ」
          越後家⑧ 
       イッツ、デザートタイム!

「福多もち」はまん丸で大きさもひと回り大きい。まるで田舎の大福のようで、餅の存在が圧倒的。固めだが、伸びやかでしっかりとした食感。あんこはきれいなこしあんで、甘さは抑えている。ごくフツーの美味さ。こしあんよりもむしろつぶしあんの方が合うのではないか、と思った。
          越後家⑨ 
          大福餅さま
          越後家6 
          餅の存在感
           
お茶をすすりながら食べているうちに、餅の尻に敷かれている気がしてきた。越乃寒梅といなりと大福・・・黄金のトライアングル・・・ある種の理想郷が近づいてきた・・・。

本日の大金言。

高級と低級はどこかで繋がっている。だからこそ面白い。人間、この不可思議な生き物に福あれ、なんてね。



                         越後屋5 




浅草人気店の「玉子らーめん」

 東京・浅草にちょっくら行ってきた。年明けから1週間経とうというのに、まだ参拝客であふれていた。お賽銭を入れて、しっかりお祈りしてから、本日のお目当て「浅草名代 らーめん与ろゐ屋」へ。ラーメン好きの友人が「確かに旨い。へそ曲がりの村長も一度は行ってみるべきだ」と勧めたこともある。
          浅草寺②  
          京都に届け!(浅草・浅草寺)

午後1時半過ぎ。メディアでもよく取り上げられ、入り口には「ぐるなびラーメンランキング1位」の文字も。素材へのこだわりが過剰なくらい説明書きされている。村長の苦手な世界。二人ほど並んでいたが、ほとんどスムーズに店内に入れた。1階は9席ほどのカウンター席、2階はテーブル席。いかにも下町風の女性(女将?)に一つ空いたカウンター席に案内される。カウンター越しが厨房になっていて、3人のラーメン職人が仕事に励んでいた。悪くない雰囲気。
          与ろゐ屋① 
          外人さんの姿も(「与ろゐ屋)
          与ろゐ屋② 
          メニューに目移り

村長はメニューの中から「玉子らーめん」(850円)を選んだ。「浅草名代」と言っている割には歴史は古くない。1991年創業。24年ほどの歴史。店主がラーメン好きで親子二代に渡る浅草っ子。醤油ラーメンの発祥が明治43年(1910年)、浅草・来々軒と言われる。いわゆる東京ラーメンだが、それを現代風にアレンジして「自分が食べたかったラーメン」を作り上げたそう。

10分ほどで、どこか懐かしい和風だしの匂いとともに、「玉子らーめん」がやってきた。シャレた陶器の器。厚みのある小さな角型のチャーシューが3枚、半熟というより完熟に近いゆで卵が二つ。よく見ると黄身が双子!これも店の売りらしい。醤油スープは穏やかに透き通っていて、豚骨と鶏ガラ、それに煮干し、鰹節から取ったスープのようだ。みじん切りされたタマネギが浮いている。海苔と三つ葉が彩りを添えている。
          与ろゐ屋③ 
          隙のない世界
          与ろゐ屋④ 
          コショウをぱらり
          与ろゐ屋⑧ 
          おっ、黄身が双子

その下に揺蕩っている麺は黄色みの強い細縮れ麺。ナルトが省略されているが、ほぼ隙のない完成された世界。まずはレンゲでスープをひと口。薄味だが、まろやかで奥深い旨味がじんわりと口中に広がった。ひょっとして無化調? 柚子も加えていると言うが、それほど強くはない。麺はそこそこのコシ。悪くない。チャーシューは肩ロースか、噛むとほっくり崩れてきた。いい感触。シナチクも柔らかいがシャキッとしている。
          与ろゐ屋⑦ 
          旨味のスープ
          与ろゐ屋⑤ 
          東京ラーメンの流れ
          与ろゐ屋⑥ 
          ほっこりチャーシュー

昔食べた東京ラーメンの野暮ったさはない。品よく穏やかで優しい味わい。よく言えば洗練、見方を変えればたおやめぶり。脂ギトギトのラーメンが大手を振るっている中で、好感のもてる自家製ラーメンではある。宣伝の上手さと説明過剰がやや気になる。お代を払う時に店主らしい男性に「無化調ですか?」と確認したら、「いえ、使ってますよ」と率直なお返事。商売上手な浅草も案外悪くはない。


本日の大金言。

浅草は京都に似ている。古さと新しさが矛盾なく同居している。ラーメンもまた然り。



                       与ろゐ屋⑨ 




掘り出し物「牛すじ玉ネギカレーパン」

 東京・銀座に行ったついでに築地まで足を伸ばした。銀座木村家から明治43年(1910年)に暖簾分けした築地木村家であんぱんを買おうと思ったからだ。銀座木村家のあんぱんは有名だが、規模が大きくなりすぎて、村長の好みは街のパン屋さんのような築地木村家である。名物のけしあんぱんを買っている最中に、「出来上がったばかりです」という声が聞こえた。見事なカレーパンが並んでいた。
           築地木村家  
           街のパン屋さん?(東京・築地木村家)

それが「牛すじ玉ネギカレーパン」(1個250円=税込み)だった。村長の目が釘付けになった。牛すじカレーパンは今の4代目が考案したカレーパンで、知る人ぞ知るけしあんぱんに続くこの店の売れ筋。カレーパンには楕円形タイプと円形タイプがあるが、こちらは円形でかなりデカい。それがジュワジュワと「うまそー光線」を放っていた。村長は慌ててそれを1個だけ追加した。
           築地木村家① 
        出来立て「牛すじ玉ネギカレーパン」!

夕暮れの中、ウマズイめんくい村に帰ってから賞味することにした。村民2号は鼻歌を歌いながら、食事の用意をしている。その間にチリワインを飲みながら食べてしまおうという算段である。オーブンで2分ほど温める。表面が出来立てのように油がチリチリしている。大きさを測ってみた。直径は10センチほどで、厚さが5センチもあった。デカいはずだ。
           築地木村家③ 
           むふふふの時間

豪快に手で二つに割ろうとしたが、パン生地が驚くほど伸びやかでもっちりしていて、思うようにきれいに割れない。築地木村家はパン生地にビールホップを入れているそうで、それがこの異様なもっちり感を産み出しているのだろうか? ようやく二つに割ると、中から本格的なカレールーが現れた。飴色のタマネギの量が半端ではない。牛すじはポツリポツリとしか見えない。ニンジンの姿も遠慮がちに潜んでいた。
           築地木村家④ 
           只者でない?
           築地木村家⑤ 
           パン生地とルー
           築地木村家⑥ 
           およしになってぇ~

カレーパンはガブリと行かなければならない。まずパン生地の美味さ。表面のカリカリ感、それに続く伸びやかなモチモチ感がとてもいい。小麦粉の風味がほのかに漂う。カレールーはタマネギの甘さが生きていて、穏やかな濃厚が口中に広がる。その後からしっかりとスパイシーが追ってくる。一見パン生地に比べてルーが少ないと思ったが、奥にルーが隠れていた。絶妙なバランスと言わざるを得ない。
           築地木村家⑦ 
           美味の予感
           築地木村家⑨ 
           ガブリと行け

合い間にチリワインを流し込む。これはミスマッチ。ビールの方が合うと思った。台所から鼻歌が消えた。角が出ていた。気がついたら目の前のカレーパンがきれいになくなっていた。し、しまった。少し残しておくべきだった。

「味見してたらあまり旨くなかったんで全部食べちゃったよ。ごめんごめん」
「いいのよ。カレーパンはカロリーが多いから。どんどん食べていいのよ」
冷や汗・・・2015年がどうなるか不安になってきた。


本日の大金言。

食べることに夢中になり過ぎると足元を忘れてしまう。足元からすべてが始まる。カライ教訓。





                        築地木村家10  



素朴な驚異「カレー南蛮うどん」

 「去年はカレーうどんを随分書いてましたね。一つ情報があります。古いうどんそば屋ですが、そこのカレー南蛮を見たら、きっと驚きますよ。ポンコツ車を走らせてみてはいかがでしょう」
去年知り合いになったグルメおばさんからそんなメールが届いた。さて、こいつは春から縁起がいいわい・・・となるかどうか。

その約1時間後、青いポンコツ車が埼玉・久喜市菖蒲町にあるその店、「手打ちうどんそば 新井屋」の前に止まっていた。菖蒲町はかつて深沢七郎が「ラブミー農場」を開いていた町でもある。周辺には田畑が広がっているが、「新井屋」は県道12号線沿いにある。近くにはモラージュ菖蒲もあり、それなりに賑わいを見せている。
           新井屋 
      昭和のうどんそば屋(久喜市菖蒲町)  
                  
昭和30年創業という60年ほどの歴史のうどんそば屋で、そのくすんだ外観がどこか懐かしい。建物の駐車場寄りの壁面に「ほんとうの手打ちうどんそば」とあまりにレトロな文字が見えた。うむ。紺地の暖簾をくぐると、昭和がそこに息づいていた。年季の入った木のテーブルが6つ。その奥が畳の小上がりになっていて、大きなテーブル。左手が板場になっていて、店主らしい男性が大釜からうどんを揚げていた。出前もやっているようで、白いヘルメット姿の店員の姿も。
           新井屋② 
           板場の年季

客はほとんど地元の常連のようで、半分くらいが「カレー南蛮うどん」を注文していた。隣のおばさんみたいな女将がテキパキと客をさばいては、出来上がったうどんを運んでいる。正統派のうどんそば屋!
           新井屋③ 
           この安さ

村長も「カレー南蛮うどん」(570円)を頼んだ。7分ほどで「カレー南蛮うどん」がやってきた。その光景に息を飲んだ。カレーというよりカレー餡と言いたくなるあまりに濃いルーがなみなみと広がっていた。下手をするとどんぶりからこぼれ落ちそうなほど。そこからいい匂いが立ち上がってきた。大きめの豚肉とタマネギの姿は見えるが、うどんの姿は見えない。
           新井屋④ 
           カレー南蛮うどん!
           新井屋⑦ 
           なみなみ

かつて浅草の「翁そば」のカレー南蛮そばに衝撃を受けたが、見た目はそっくり。翁そばはかしわだが、ここは豚肉。大きめに切られた刻みネギをかける。レンゲがないことに気付いた。女将にレンゲを頼んで、まずはそのルーをひと口。うどんつゆがたっぷり入ったカレールーはやや甘めでとろみがすごい。後からほんのりと辛みが追いかけてくる。その素朴なこってりな味わいは悪くない。
           新井屋⑨ 
           カレー餡?
           新井屋4 
           うどんの存在
           新井屋12 
           切れるか切れぬか

箸でカレー餡の海からうどんをすくい上げる。湯気が立ち上がる。すぐに手打ちとわかるぶっ太いうどん。コシはほとんどない。噛むとボソッと切れる。だが、カレー餡との相性がいい。豚肉は大きいのが2枚ほど。ロース肉のようで柔らかい。これがいいアクセントになっている。年末にみどり市で賞味した山本屋のカレーうどんほどの感動はないが、素朴な満足感。
           新井屋3 
           豚肉の美味

きれいに平らげてからふとドンブリの底を見た。身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ川のドンブリ。かつて開高健がTV番組でユーモラスにつぶやいていた言葉を思い出した。さて、凡人に身を捨てる覚悟はありや?


本日の大金言。

田舎のカレー南蛮うどんから一年を見る。驕らず妬まず諦めず。言うは易し行うは難し。されど、田舎の日々・・・。



                    新井屋13 













門前仲町・伊勢屋の「深川もち」

今回取り上げるのは「深川もち」。 門前仲町・深川不動尊赤鳥居前にある「深川伊勢屋」は村長にとってはよく通った店。きんつばや豆大福もそれなりに美味いが、伊勢名物「赤福餅」によく似た「深川もち」は手軽で美味、特別な存在だった。

「深川伊勢屋」は明治40年(1907年)創業。屋台から身を起こし、清澄庭園近くの平野町に店を構えた。昭和30年代に現在の場所に本店を移転している。池波正太郎や小津安二郎も通った「きんつば清水」(昭和56年頃に廃業)は参道奥左手にあったらしい。村長の最大の後悔の一つは清水のきんつばを食べれなかったこと。タッチの差だった。人生は思うようにならない。
           深川伊勢屋① 
           深川餅やーい(東京・門前仲町)

久しぶりに門前仲町に寄ったので、「深川もち」(12個入り 税込900円)を買い求めた。赤福は偽装表示問題以来、見た目も味も変わってしまった。たまにお土産でもらって食べても、昔の感動はない。「深川もち」はどうか? 恋人と久しぶりに再会したような気分でウマズイめんくい村に持ち帰って賞味することに。村民2号が急須を持って待ち構えていた。
           深川伊勢屋②  
           深川もち様!

包装も箱も昔のまま。経木を取る時の瞬間がたまらない。きれいなこしあんに包まれた「深川もち」が12個、整列していた。「赤福餅」はこしあんが二本の指でなぞった形だが、「深川もち」は茶巾絞り状である。こしあんの風味がとてもいい。小豆は北海道産小豆、砂糖はザラメを使っているためか、サラッとしていて、すっきりした雑味のない味わい。甘さも控えめ。
           深川餅① 
           急ぐな、恋人よ
           深川餅③ 
           この瞬間がたまらない
           深川餅② 
           壮観の連なり

餅は国産もち米を使い、搗(つ)いた餅に蜜入れをしながら煉ったもの。その柔らかな食感と歯ごたえがきれいなこしあんとよく合う。かつては「赤福餅」の野暮ったさが好きだったが、今では「深川もち」の方が村長の好みに近い。特別な美味さ。あっという間に12個のうち7個なくなっていた。
           深川餅④ 
           上質なこしあん
           深川餅⑨ 
           後ろから失礼
           深川餅⑥ 
           ガブリと行け

「赤福が心配だわ。手を広げ過ぎたのね。深川餅はそれほど手を広げていない。値段も12個入りで100円ちょっと安い。それも好感だわ」
「でも店舗は増えてきているよ。東京中心で現在11店舗。チョコ餅など新しい味にも挑戦している。あまり手を広げないでほしいがね」

「新しいお客を取り込んでいかないといけないし、古い伝統も大事にしなきゃいけないし、老舗の和菓子屋さんは大変ね。その分、村長は気楽ね。老舗でもないし新しくもない」
「そう言う村民2号は老舗の・・・」
言いかけて、村長は言葉を飲んだ。深川餅が残り3個になっていた。


本日の大金言。

いいあんこを作るには手間ひまがかかる。きんつばの清水は毎日銅鍋で8時間ほどかけてあんこを作っていたという。それが出来なくなった時、江戸時代から続く暖簾を下げた。暖簾を守るということはそういうことなのかもしれない。

                       深川餅10 

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初詣後の「海鮮どんぶり」

 あー、今年も明けちまったよ。酔っぱらって寝ているうちに元旦が過ぎ、今日が三日目。昨夜はうつらうつらしながら「小早川家の秋」(小津安二郎監督)も見ちまった。遅ればせながら、新年おめでとうございます。で、本題。2015年(平成27年)最初の外食いは、村民2号の故郷・上州はみどり市の寿司処「喜美久」で食べた「海鮮丼」である。
           貴船神社① 
        お願いごと?の大行列が・・・

このところ衰えが目立つゴッドマザーを伴って、みどり市の「貴船神社」に初詣へ。貴船神社は本社が京都・左京区にあるが、この貴船神社も村長お気に入りの神社。ここは初詣客数が群馬一を誇り、毎年約20万人もが訪れる。青いポンコツ車に気合十分の村民2号、帰省中のキオを乗せて、午前11時過ぎに到着。物凄い行列で、1時間半ほど並んで、歴史のある石段をエッチラオッチラ上り、何とか参拝を済ませた。今年こそいい年になりますように。
           貴船神社③ 
           貴船神社で初詣 

その帰り、ゴッドマザーと村民2号の連合チームが「そばかうどんを食べたい」と声を合わせたため、あちこちそばうどん屋を探したが、「正月3日までお休み」というお知らせが貼ってあるばかり。そば・うどん屋は大みそかまで営業しているので、正月三が日は休んでいる。そのうち全員のお腹の虫がぎゃぎゃあ鳴き始めたために、仕方なく前橋大間々桐生線沿いにある寿司処「喜美久」の駐車場に滑り込んだ。今年はどうなることやら。
           喜美久① 
           寿司処「喜美久」で初食い

「喜美久」は桐生市に本店があり、群馬県内に数店営業していて、寿司ばかりではなく炉端焼き、懐石料理などもメニューにしている。みどり市の「喜美久」は入り口に地酒「赤城山」の大樽が置いてあり、竹なども配置してあり、悪くない雰囲気。店内に足を踏み入れると、寿司処の白木のカウンターがあり、寿司職人が白木のすし桶で酢飯を切っているところだった。うむ、いい雰囲気。
           喜美久②  
           いい雰囲気である

ウマズイめんくい村の一行4人は、仕切り暖簾の下がった奥のテーブル席に案内された。琴の音が流れ、混み合っていた。村長はメニューの中から「本日の海鮮丼ランチ」(小鉢、味噌汁、デザート、ドリンク付き 1050円)を選んだ。他の3人は寿司ランチ。この内容で1050円は高くはない。
           喜美久1 
           ドンブリに限る?

15分ほどでお盆に乗って海鮮どんぶりがやってきた。内側が朱塗りの大きなどんぶりにイカ、タコ、バチマグロ2種、中落ち、アナゴ、玉子焼きが乗っていた。数えてみたら8種類。メチャウマではないが、まずまずの旨さ。
           喜美久③ 
           食べ初め
           喜美久⑤ 
           寿司屋の海鮮丼

今が旬のヤリイカが特に美味だった。わさび醤油を垂らしてから口中に放り込むと、旬の歯ごたえと甘みが酢飯とよく合う。酢飯の旨さに感心。玉子焼きは小さいのが少々悲しいが、値段から言って、そうぜい沢は言えない。
           喜美久⑥ 
           旬のイカ
           喜美久⑨ 
           タコタコ上がれ
           喜美久10 
           アナゴもあるでよ
           喜美久11 
           中落ち

「今年はぜい沢は厳禁よ。ランチ酒もダメダメ~」
村民2号が言えば、
「それ去年のギャグよ。今年も春から笑わせてくれるわ~」
村民2号以上に辛口のキオが突っ込みを入れる。

「お酒を飲めない正月なんて、ちっともめでたくはないよ」
ゴッドマザーがボヤキを入れる。
今年は日本もウマズイめんくい村も波乱の予感。村長は新調したフンドシを引き締めた。だが、肝心の中身はどこか遠くを見ていた。

本日の大金言。

足るを知る。ほどほどが肝心。めでたさも中くらいなりおらが春。めでたさも中ならいいかおらが春。



                        喜美久13 

プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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