利休も食べた?「肉桂餅(にっきもち)」

 今日ご紹介するのは東京・日本橋高島屋のデパ地下で見つけた珍しい和菓子について。村長がたまに散策する「味百選・銘菓百選」で、大阪・堺の菓匠「八百源」の「元祖肉桂餅(ニッキもち)」が目に入った。3個入り650円(消費税込み)。堺の「八百源来弘堂」は創業が江戸時代中期という老舗で、「肉桂餅」は創業以来の商品。それを東京でゲットできるとは思ってもみなかった。
           日本橋高島屋デパ地下 
           和菓子のメッカ
           肉桂餅 
           元祖肉桂餅めっけ!

堺は室町時代から戦国時代にかけては南蛮貿易の中心地として栄え、「東洋のベニス」と称された国際都市だった。千利休の出身地でもある。「八百源」の初代・八百屋宗源はその堺で貿易商としても活躍したようで、東南アジアから入ってくる香料や香木からシナモンの一種、肉桂(にっき)が生まれ、それがやがて和菓子にも取り入れられていく。

「八百源」の「元祖肉桂餅」はその流れを汲む和菓子で、京都の八つ橋なども肉桂(ニッキ)を練り込んでいるという点で同じ流れを汲んでいる。その「元祖肉桂餅」をウマズイめんくい村に持ち帰って賞味することにした。
           肉桂餅① 
         二百数十年の時を超えて

焦げ茶の紙箱を開けて1個取り出し、包みを解くと、くず粉が雪のようにかかったニッキ色の小ぶりな餅が現れた。抹茶でいただきたいところだが、煎茶でがまん。二百年以上の時を超えた「元祖肉桂餅」を食べるのはむろん初めて。
           肉桂餅② 
           少しずつ・・・
           肉桂餅④ 
           見せておくれ

備前焼きの小皿に乗せてから、二つに割ろうとすると、餅(ぎゅうひ)の伸びがすごい。糸を引くように伸びる。ニッキの香りがほのかに漂った。中はきれいなこしあんが詰まっていた。
           肉桂餅⑤ 
           この存在感
           肉桂餅⑥ 
           横から見る
           肉桂餅⑧ 
           およしになってぇ・・・

「へえー、こんなの初めてだわ。二百年前だったら、お公家か大名しか食べれなかったものね」
と村民2号。
「肉桂も砂糖もそりゃあ貴重なものだったからねえ。上菓子をこんな簡単に食っていいのかな?」
と心にもないことを村長。

そんな他愛のない会話をしながら、まずはひと口。ニッキの独特の香りが口中に広がり、その後に品のいいこしあんの風味が舌の上に残る。こしあんはほどよい甘さで、ニッキを練り込んだ柔らかい求肥(ぎゅうひ)餅と絶妙に合う。意外な相性。
           肉桂餅⑨ 
           言葉はいらぬ
           肉桂餅10 
           利休は食べたか?

「織田信長や秀吉はこれを食べたことがあるのかしら?」
「千利休も食べたと思いたいところだけど、時代が合わない。茶菓子として肉桂餅が使われたのは江戸時代に入ってからではないか」

「ロマンがないわねえ。堺ときて、肉桂とくれば、戦国の世の茶会に何らかの形で肉桂餅があったかもしれないでしょ? そのほうが面白いわ」
「千利休はいろんなものを茶菓子にしたようだから、記録に残っていないところで肉桂を使った可能性はあるかもなあ」

「タイムマシンで行って調べてきてよ。で、そのまま戦国時代に残って村長が本にする。それを四百数十年後に私が出版して大儲けする。印税は10%として、儲けは・・・・」
「・・・・・・」

本日の大金言。

往時の堺の夢を伝える元祖肉桂餅。ニッキの香りにははるかな南蛮貿易の匂いもする。今ではかなりの想像力が必要だが。




                          肉桂餅11 

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「冷たい肉そば」の意外な場所

 埼玉・大宮は村長にとっては首都圏の隠れた大都市。最近ここに行く用事が増えたこともあり、ついでに「どこかに旨い店は隠れていないか?」表通り裏通りをあちこちと嗅ぎまわっている。今のところ、いい店はあるが、街自体に思ったほどの奥行きがないので、ガッカリさせられることも多い。

そう思い始めていた矢先のこと。東口周辺、高島屋の裏通りをブラ歩きしていると、スタンドメニューに「冷たい肉そば」の文字が見えた。もうすぐ正午。どこかで昼飯を食べなければならない。「冷たい肉そば」だって? 矢印通りに横道に入ると、高級そうな料理屋が見えた。「地鶏割烹 河松(かわしょう)」と白地の暖簾が下がっていた。うむ。
           かわしょう 
           冷たい肉そばだって?

夜はおそらく1万円はしそうな店構え。だが、ランチメニューとあり、意外な穴場かもしれない。入るか入るまいか、迷っていると、スポーツ評論家の杉山愛似の女性スタッフがふいに店から出てきた。どこかに用事があるようだった。二言三言会話を交わす。
           かわしょう① 
           高そうな店構え

「よかったら、どうぞ。オーナーが山形出身で比内地鶏の料理の店です」
「それで冷たい肉そばがあるんだ。山形に行ったとき食べて旨かった。まさか大宮に冷たい肉そばがあるなんてビックリだよ」

正午前だったために客はいなかったが、右手が白木のカウンターになっていて、そこにきりっとした板前(たぶん店主)と若い修業中の板前が二人。左手はテーブル席と個室になっているようだった。カウンター席に座って、「お昼のしながき」のメニューを見た。「冷たい肉そば」は750円なり。「親子丼」(1000円)も旨そうだったが、即決。
           かわしょう② 
           ランチが狙い目

12~3分ほど待って、大きな陶器のドンブリに収まった「冷たい肉そば」がやってきた。柴漬けが添えてある。「冷たい肉そば」は山形・河北地区の名物で、卵を産まなくなった親鳥の肉でダシを取り、具はその固めの肉と白髪ねぎ、甘辛のツユ、それにコシの強い田舎そばが実に旨い。
           かわしょう③ 
           軽い驚き

冷たくすることで、そばの伸びを抑え、大正時代には馬肉を使っていたが、戦後、親鳥の捨て肉を使ったところ、これが意外に旨いということで地元を中心に大人気となった。今や全国にもファンが増えている。
           かわしょう④ 
           上空より

それが目の前にある。山形で食べたものよりもドンブリが大きく、透き通ったスープ、白髪ねぎの量も多い。鳥の脂がうっすらと浮いて、キラキラしている。これは当たりか? 木製のレンゲでまずはスープ。きれいで奥深い甘辛。やや塩分が強め。鳥の出汁がよく効いていて、そこに鰹節と昆布ダシの隠し味がほのかに伝わってくる。うむむと唸りたくなる。山形で食べたものと遜色ない。いや、それより洗練を感じる。
           かわしょう⑥ 
           ツユの美味
           かわしょう⑦ 
           親鳥の肉もどっさり
           かわしょう⑧ 
           田舎そばのコシ

そばも田舎そばで本場と変わらない。コシがかなり強い。それは村長の好みでもあるが、ここで手打ちしているのだろうか? 板前さんにそっと聞いてみる。「そばは山形から取り寄せています」とか。村長の見たところ器械打ちだが、全体が洗練されていて悪くはない。ボリュームも予想外にある。
           かわしょう⑨ 
           昼の隠れ名店

店は3年になるという。高級割烹店で味わう750円の美味。夜は高そうなので、お金に余裕がなかったら昼めしが狙い目。旨いもの探しでは大宮という街にやや失望しかかっていたが、それは早すぎると思い直した。大宮の奥に入る楽しみが出来た気がした。むふむふ。

本日の大金言。

結論を急いではいけない。行き止まりと思ったところから意外な道が見えてくるだってある。



                       かわしょう10 




「甘党のパラダイス」でもん絶寸前

 最近お友達になったシバの女王のお誘いで、埼玉・久喜市西大輪の閑静な住宅街にある謎のスイーツカフェに行くことになった。木金の週2日のみ営業で、自家製のケーキが美味しいらしい。宣伝もしないのに口コミで人気が広がり、1か月先まで予約が埋まっているとか。集まったのはスイーツ好きを自認する猛者7人。恐るべき食通のドン圭氏もいる。

シバの女王の先導で埼玉県道3号線(さいたま栗橋線)から住宅街に入る。午前11時半に到着。JR鷲宮駅もそう遠くはない。まさかかような場所に・・・というところにそのカフェ「おぐら」があった。表札のように「おぐら」というプレート。自宅を週2日だけカフェとして開いていることがわかった。入り口で靴を脱いで、スリッパに履き替えてから店内へ。入り口には野菜が置いてあった。うむ。 
           おぐら① 
           スイーツの隠れ家
           おぐら 
           まさかの場所

店内は個性的な木のテーブルが4つほど。最近多いメルヘンチックな世界だが、よく見ると、さり気なく和装物やアンティークな陶器などが置いてあり、女性店主の趣味のよさがわかる。シバの女王がすでに予約していて、和室の特別室へと案内された。
           おぐら③ 
           単品でも頼めるが・・・

ちょっとした料亭の一室のような空間。メニューの中から全員が「ケーキ盛り合わせセット」(飲み物付き1000円)を選んだ。シバの女王以外は初めて。全員息を飲みながら、小さな(?)胸をときめかせている。待つ間、大食いタレントアンジェラ佐藤を尊敬する佐渡おけさ嬢がなぜか日本舞踊を披露し始めた。ありゃりゃありゃら・・・この後の展開は誌面の都合で割愛。
           おぐら⑦ 
           甘いランチ

15~20分ほどして大きな白い絵皿に乗った「ケーキの盛り合わせ」がやってきた。おおおという歓声が上がる。聞きしに勝るワンダーな世界。村長も思わず息を飲んだ。ほうれん草のシフォンケーキ、フォンダンショコラ、苺のショートケーキ、フルーツケーキ、チーズケーキ、ひまわりの種クッキー、クルミのケーキ・・・数えてみたら7種類の手づくりケーキがベタに盛られていた。それが7人前! さつまいもの蜜煮はサービスとか。うむむ。
           おぐら④ 
           これで一人前盛り合わせ

レモンティーが遅れてやってきた。ウエッジウッドの器。氷の入ったミネラルウォーターも置かれた。戦闘開始。村長はまずフルーツケーキをひと口。一瞬にして新鮮な卵と生クリームのさわやかな香りが口中から鼻腔へと抜けて行った。スポンジの柔らかさと風味がいい。手づくり感にあふれる生クリームの中にはマスカット、マンゴー、ブルーベリーが入っていて、ここの女性店主がかなりの腕のパティシエだとわかる。うむむむ。
         
           おぐら⑨ 
           ゆっくりと楽しむ
            おぐら⑧ 
           絶妙なフルーツケーキ
           おぐら6 
          クルミのケーキ

特に感心したのはフォンダンショコラ。外側がガサッとした食感で、すぐ後から生チョコをそのまま食べているような、濃密でビターな波が押し寄せてくる。まるで大人の禁断の味わい。「薄力粉を使わずに焼いてるんですよ」(店主)とか。スイーツ好きにとっては夢のような時間が流れる。ワイワイしゃべりながら2時間ほどかけて、全員がきれいに平らげた。これで1000円というのが驚きでもある。全員の血糖値がどのくらい上がったか、などとは考えない。
           おぐら11 
           フォンダンショコラ
           おぐら12 
           夢の歯型・・・

「商売でやっているというより、美味しいケーキを食べて喜んでもらえるのがいいみたいよ」
シバの女王が言うと、ドン圭氏がボソッと言った。
「こんなにケーキを食ったのは初めてだよ。これでケーキ(景気?)もよくなんべえ。だけど、ちょっと野菜とか果物があればもっといいなあ」
佐渡おけさ嬢も「漬け物とか食べたくなったわね。柴漬けなんか合うんじゃないかしら」。

むろん村長にとっても「ケーキ盛り合わせの昼飯」は人生で初めての体験。幸福感で頭がクラクラしてきた。添えてあったレモンで口の中をスイープしてから、頬をつねりたくなった。これは現実か?

スイーツ好きにとっては、ひょっとしてここは天国ではないか。「あまり知られたくないから、ブログには書かないでほしいよ」帰りがけにドン圭氏が釘を刺した。糠(ぬか)に釘だというのに。

本日の大金言。

人生最後の時を何で過ごすか。スイーツ好きにとって、これは重大問題である。その一つの答えがここにあるかもしれない・・・なんてね。





                     おぐら14 

カレーパンの新星か、キーマカレーの中身

 北欧から一時帰国した友人と埼玉・浦和で合流。お互いに多忙な身ゆえ、ほんの2時間ほどお茶を飲んで小歓談となったが、その帰りに西口近くで夕闇に浮かぶレトロな洋館が視界に入った。寒いがポエム。洋館と見えたものはこのところ売出し中の「呵哩&カレーパン 天馬」だった。カレーをわざわざ「呵哩」と表記している。
           天馬 
           カレーパン行列
           天馬② 
           並べ方もウマい?

欧風カレーレストランの一角にカップルや若い客が並んでいた。そこに村長の目が吸い寄せられた。好奇心旺盛な友人も一緒に並ぶ。見事なカレーパンが4種類ほど並べられていた。その場で揚げている。むむむ。カレーパン好きとしてはこれは見逃せない
           天馬③ 
           むむむ

調べてみると、「天馬」は「洋麺屋五右衛門」や「星乃珈琲店」など渋い人気店を成功させている日本レストランシステムの新ブランドだった。道理で店づくりから売り方まで上手いはずだ。自由が丘や青山、新横浜などにも店がある。小じゃれた街ばかりというのが気にくわないが、商売上手ということがよくわかる。

村長は「辛口キーマカレー」(税込み250円)と「とろ~り半熟卵カレー」(同250円)を買い求めた。友人は「ビーフカレー」(同250円)をまとめ買いした。北欧にはカレーパンはないらしい。

翌日のウマズイめんくい村の朝食。カレーパンはすっかり冷めていたので、店の女性スタッフが教えてくれた通り、レンジで温めてからオーブンで軽く焼いた。最近ハマっている無調整豆乳でスパイシーなモーニングとシャレ込んだ。浦和で見た揚げ立てが再現していた。
           天馬④ 
           レンジで温める
           天馬⑤ 
           オーブンで焦がす

カレーパンは食べてみないとわからない。軽井沢の「三笠ホテルの幻のカレーパン」など、見た目は旨そうだったが、ひどいものだった。1個350円もしたが、具の少なさに怒りを覚えたものだった。空振りもまた楽し、と頭を切り替えるのに苦労したほど。

マナ板を用意し、表面に唐辛子が練り込んであるような円形の「辛口キーマカレー」を二つに割る。具がいっぱい詰まっていた。ルーの中に唐辛子が点々。いい匂いが立ち上がる。当たりの予感。表面がカリカリしていて、ほどよい厚みのパン生地は伸びやかでいい食感。次の瞬間、キーマカレーの辛さが口中一杯に広がった。辛いが旨い。挽き肉の多さも好感。
           天馬② 
           辛口キーマカレーどす
           天馬⑧ 
           近うちこう

「とろ~り半熟卵カレー」は楕円形で、マイルドな味わい。確かに卵は半熟で、それが香ばしいルーとパン生地の間から溶岩のように流れ落ちそうになっている。卵が入ることによって味にさらにまろみが出る。
           天馬1 
           とろ~り半熟カレーどすえ
           天馬4 
           どうでっしゃろ?

「具もぎっしりだし、私がこれまで食べたカレーパンの中でもこの二つはかなり上位だわ」
「カレーパンと恋愛は食べてみないとわからない」

「食べたらガッカリということもよくあるからねえ」
「確かに。まるでギャンブルだ」

「食べてもわからないということだってあるかもね」
「怖いなあ。カレーパンのような人生・・・こりゃ売れない映画のタイトルみたいだ」
たかがカレーパンで、具のない会話がしばらく続くのだった。

本日の大金言。

あんパンと同じく日本で生まれたカレーパン。元祖には諸説あるが、昭和の初め頃に誕生したようだ。エログロナンのよき時代。そこから坂道を転げ落ちるように戦争へと突き進んでいった。気をつけろ。その結果、日本だけで約310万人ともいわれる死。



                      天馬5

「たいめいけん」の特製ラーメン

 東京・日本橋の「たいめいけん」と言えば、池波正太郎も通った老舗洋食屋としてあまりに有名。村長にとっては敷居の高い店で、よほどの用がなければ立ち寄ることはない。ところが・・・。ここにラーメンの立ち食いコーナーがあることをご存じだろうか? 教えてくれたのは食通を自任するMだった。高級な洋食屋というイメージしかない村長にとって、それはちょっとした驚きだった。
            たいめいけん① 
            日本橋たいめいけん

ある会合に出席するために銀座に向かった際、ふと日本橋に寄ってみようと思った。午後3時過ぎ。小腹がすいていたので、「日本橋たいめいけん」でラーメンというのも案外オツでは?と思った。

でも、あの「たいめいけん」でラーメンだけ食べるなんてことがありなんだろうか? 

その昔、一度だけ2階で「たんぽぽオムライス」を食べたことがあるが、その時はビールも飲んでいる。

茅場町から歩いて、「日本橋コレド」の裏手にある「たいめいけん」に到着。確かに目立たないところに「ラーメンコーナー」があった。昼食時は行列だそうで、1杯が750円というのも好感。人けがない。ふと、表に回ってみた。老舗の洋食屋の風格がそこはかとなく漂っている。メニューが出ていたので覗いてみると、名物のオムライス(1700円)や「ハヤシライス」(1980円)などに混じって、特製ラーメン(750円)の文字が見えた。
            たいめいけん③ 
            ラーメン一杯でもOK?
            たいめいけん④ 
            貴重な時間・・・

1階が比較的カジュアルで、2階が高級と区分けされている。1階でもラーメンだけを頼むことができるのか、入り口でウエイターに聞いてみた。「ええ、どうぞ」と通される。うむ。時間が時間だけにダークブラウンのテーブル席は空席がいくつかあった。一番奥の席に座ってから「特製ラーメン」(750円)のみを注文した。奥が厨房になっていて、コック帽コック服姿の熟練シェフが4~5人見えた。奇妙なリッチ感。
           たいめいけん② 
         かようなメニューがあったとは・・・

10分ほどで白い磁器製のラーメンドンブリがやってきた。下に錫の皿が敷いてあった。いい匂いと湯気が立ち上ってくる。そのビジュアルに思わず唸った。食紅で縁どりされた大きめのチャーシュー! ぶっ太いメンマが6~7本、黒々とした海苔、さやえんどうが一つ、多めの刻みネギ、それらがキラキラと透明な醤油スープにゆったりと浮かんでいた。風格のあるどこか懐かしいラーメン! 
           たいめいけん⑤ 
           お待ち~ィ
           たいめいけん⑥ 
           ほぼ完ぺきな伝統

まずは白いレンゲでスープをひとすくい。あまりにまろやかで奥深い味わい。鶏ガラで取った出汁にブイヨンを加えているそうで、洋食屋たいめいけんならではの特製スープだとわかった。麺は細ストレート麺。自家製ではないそう。もう少しコシがあるのが好みで、ここだけが不満
           たいめいけん10 
           スープの美味
           たいめいけん⑨ 
           細ストレート麵
           たいめいけん⑧ 
           感動のチャーシュー
           たいめいけん11 
           こ、これは・・・?

今どき珍しい縁の赤いチャーシューは秀逸で、ヘンに柔らかくなくしかも固すぎず、肉自体が美味。一番感心したのはメンマ。太さと量も規格外だが、噛んだ途端、柔らかさときりりとした輪郭が絶妙で、もしメンマ界に格付けがあったら、これは東の横綱格だと思う。むろん村長の独断だが。

一滴残らずきれいに平らげると、しばらくいい余韻が口中に残った。「日本橋たいめいけん」が村長の中で敬遠リストから外れていた。

本日の大金言。

たかがラーメン、されどラーメン。ラーメンを大事にする高級洋食屋というものが確かに存在する。行列の時間帯を避ければ、ラーメン一杯が至福の時間になることもある。



                      たいめいけん12 


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桃とカツサンドと黒糖フレンチトースト

 このところの陽気で桜の開花情報が出たが、花桃の季節でもある。ポンコツ車で花見の下見に出かけた。茨城県古河市へ。ここは日本でも有数の花桃の名所で、「古河桃まつり」(3月20日~4月5日)が始まっていた。まだ三分咲きだが、「古河桃むすめ」や大道芸が人気を呼んでいた。村長はむろん、花桃よりも桃むすめ。あまり関係ないが、上田桃尻子は大丈夫だろうか?
           古河桃祭り④ 
           花ももは三分咲き(茨城・古河公園)
           桃娘 
           こちらは五分咲き?

喧騒から離れて、古河市周辺をポンコツ車で散策することに。渋滞を避けるように、佐野古河線を佐野方面へと向かうと、左手に南欧のイメージのポエムなレストランが見えた。「粉とクリーム 石窯夢工房」という看板が見えた。パスタのレストランかと思ったが、パン屋さんだった。これが、当たりだった。
           粉とクリーム 
           めっけ!

店内に入ると、パンを焼くいい匂いとバラエティーに富んだ手づくりパンが所狭しと並べられていた。人気のパン屋さんらしく、客が引きも切らない。奥に石窯があり、パン工房になっていた。ケーキ類も置いてある。

「気に入ったわ。ここでランチにしましょ」

入り口の右手がちょっとしたイートインコーナーなーになっていて、そこにコーヒーポットとティーポットがあり、「コーヒーと紅茶は無料です」(スタッフ)とウソみたいなサービス。
           粉とクリーム① 
           こちらは満開?
            
「村長も気に入ったよ。美味そうなパンが一杯ある。高くないのもいい」
カレーパン、カツサンド、あんぱん、ピザ、フレンチトースト・・・気の多い村長向き。

迷った末に村長は「ロース豚かつサンド」(税抜450円)とユニークな「黒糖のおやつ」(同150円)を選んだ。「黒糖のおやつ」は黒糖ラウンドパンのフレンチトースト。黒光りした切株状の形状にパウダーシュガーが夢のようにかかっていた。村民2号は「石窯ピザ」(同160円)を選んだ。むふむふ。
           粉とクリーム④ 
           カツサンド
           粉とクリーム③ 
     黒糖切株のフレンチトースト(黒糖のおやつ)
           粉とクリーム⑥ 
           〆て760円のリッチ

「ロース豚かつサンド」は厚切りの柔らかな食パンと厚さ1センチはある国産の豚ロースのバランスがいい。焼きたてと揚げ立て。やや甘めのソースとキャベツ、ほのかにマーガリンとマスタードの風味。何より感心したのはパン生地。耳がしっかり付いていて、パン生地は手でつかむと指の形が残るほどしっとりとして柔らかい。
           粉とクリーム⑧ 
           ロース豚かつサンド
           粉とクリーム⑨ 
           おおおの世界
           粉とクリーム10 
           失礼します

さらに感心したのは、「黒糖のおやつ」。かなりのボリュームで、手で裂こうとすると、もっちり感と伸びやかさが只事ではない。そこに練り込まれた黒糖が見事で、手でちぎって口中へ運ぶと、ねっとり感と複雑でミルキーな風味が口いっぱい広がる。黒糖ラウンドパンを卵とミルクに付け込んでから鉄板で焼きあげたもの。どうやらこの店のオリジナル。
                  粉とクリーム2 
           そそり立つ美味
           粉とクリーム4  
           きぬぎぬの別れ?

「石窯ピサも具とモッツレアチーズがしっかりあって、レベルが高いわ。コスパ的にもいい店。コーヒーと紅茶がタダというのもいい。石窯焼きの食パンをお土産に買って帰ろうかな」
「こんなパン屋があるとは古河も捨てたもんじゃない。桃むすめ後の手づくりパン屋、頭の中はすでに満開だよ」
「後は散るだけね。外見はすっかり散ってるけど」
「・・・・・・」

本日の大金言。

梅、桃、桜・・・花見の季節はまだまだ続く。桜の樹の下には・・・何が埋まっているのか? そこに想いを馳せることも大事だと思う。



                         粉とクリーム8 





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路地裏の「手打ち武蔵野うどん」

「 武蔵野うどん」を看板に掲げるうどん屋が増えている。その中心の「元祖田舎っぺ」は熊谷や行田、北本など埼玉を中心に数店あり、村長は3年ほど前に「さきたま古墳店」で賞味したが、その恐るべき固さ(コシではない)と太さと長さに驚嘆したものだ。角材のようにぶっといキンピラにも驚いた。東京・渋谷でも「武蔵野うどん」を食べたことがある。

東京での所用の帰り大宮で途中下車し、西口周辺を散策。ソニックシティを左に見ながら、桜木町方面へと歩く。村長のセンサーに反応する店が見当たらない。よくある「1+1=2の店」ばかり。時計を見ると午後1時半。どこかでランチしたいが、踏ん切りがつかない。ふと右手の路地裏に入ってみた。

大宮は路地裏の少ない街だが、路地裏には夢の名残りと忘れかけた生活がある。村長のセンサーにビビビと来た。「本格手打ち武蔵野うどん」という古い看板が見えた。「手打ち一本」と書かれた派手な墨文字。店の名前はどうやら「秀吉うどん」。一歩間違えれば、田舎のドラッグストアのような佇まいだが、そこに職人がいる気配を感じた。ガラス越しに左手に打ち場が見えた。飛び込め。
           秀吉うどん② 
           うーむの世界
           秀吉うどん① 
           路地裏の派手

店内は山小屋のようで、大きな明るいウッドテーブルが三つ。武州の素朴でシンプルな木の気配が心地よい。左手が板場になっていて、大きなうどん釜からいい匂いが溢れ出ているようだった。頭にタオルを巻いた店主とおばさんスタッフが2人。大きな声でガハハと笑っていた。陽気であまりに開放的な世界。嫌いではない。券売機で人気1位だという「肉汁うどん」(750円)を選んだ。
           秀吉うどん③ 
           定番の肉汁うどん

期待半分、ハズレもある。15分ほど待つと、番号を呼ばれ、取りに行く。学食のよう(?)でもある。だが、大釜で茹で上げられ、冷水で〆られたうどんを見た瞬間、村長の懸念は吹っ飛んだ。極太だが、ややクリーム色がかった見事なうどん。見ただけで柔らかさとコシといい風味がそこから立ち上ってくるようだった。
           秀吉うどん⑥ 
           期待半分
           秀吉うどん⑨ 
           見事な武蔵野うどん
           秀吉うどん10 
           発見か?

温かい肉汁は薄めの豚肉で3枚ほど、それに油揚げ、長ネギが揺蕩っていた。少し物足りないほどの優しい甘辛で、さば節の出汁が効いている。うどんがやはり秀逸で、噛んだ途端、小麦の風味が口中に広がる。もっちり感が際立っていて、コシも十二分にある。ほのかな塩。太さがややまちまちで、それがいい味わいとなっている。エッジとねじれ加減がとてもいい。
          秀吉うどん⑦  
          七味をパラリ
          秀吉うどん11 
          太くて長い
          秀吉うどん12 
          愛のカップル

食べ終えてから、店主と雑談。
「さぬきうどんみたいですね」
「いや、さぬきは足で踏む。空気をどんどん出して固くする。でも、ウチのは手ごねで、空気をあまり出さないようにしているんですよ」
「それでコシがどしっとあるのが面白い。もっちり感も凄い」
「コシと固さは違うんですよ。皆さん誤解してるんです。ウチの生地は柔らかいんですよ」

話しているうちに、店主がコック出身で、「田舎っぺ」でも修業していたこともわかった。それを自分流に改良して、見事な武蔵野うどんを作り上げたこともわかった。つけ汁にやや不満はあるが、大宮の路地裏でいいうどん屋を見つけた思いだった。

本日の大金言。

メーンストリートよりも路地裏が面白い。チェーン店や妙な横文字がない。むろんハズレもあるが、宝石が転がっているかもしれない。



                        秀吉うどん13 




「ラブミー農場」後の絶妙草もち

 突然だが、深沢七郎にハマっている。恐ろしい不朽の名作「楢山節考」は映画化もされ、「風流夢譚」など衝撃作を世に送り出している。作家でありギタリストでもあり、その人生は謎と伝説に包まれている。三島由紀夫が割腹自決した時に「自然淘汰」と言い放ったこともある。当時三島由紀夫ファンだった村長は、その言葉に腰を抜かしそうになったものだ。
            
その晩年を過ごしたのが南埼玉郡菖蒲町(現久喜市菖蒲町)で、若者二人と「ラブミー農場」と銘打って農業的な共同生活を送った。その跡地が今どうなっているのか突然見たくなり、ポンコツ車を飛ばした。菖蒲町役場近くで、農作業中のオヤジさんがいたので、あれこれ話をする。まったくの偶然だが、生前の深沢七郎と交流があったお方だった。
           ラブミー農場跡① 
         ラブミー農場跡(埼玉・久喜市菖蒲町)

「変わった人だったなあ。家にも何度も来たことあるし、オレも遊びに行ったりした。外で釜で飯を炊くんだけど、藁(わら)で炊くんだよ。電気釜だってあるのに、薪だってあるのに、どうしたわけか藁なんだよ。一度どうして?って聞いたら、電気釜だと百姓らしくないっていうんだ。藁(わら)が一番百姓らしいって(笑い)。東京から踊り子たちが来たりもしてたよ。お土産にイチゴを上げたりしてたなあ。背は? 小さかったよ。声? 高くてせっかちだったなあ」

ラブミー農場の跡地はすっかりきれいになっていて、梅が夢の跡のようにポツンとほころんでいた。作業小屋があり、そこに「LOVE ME RUNCH」と表記してあった。村長は近くで寝ころんでポカンと空を見た。オタマジャクシがポカン、ポカン、ポカン。
           ラブミー農場跡③ 
           何思う梅

その後、菖蒲市内をブラ歩き。深沢七郎がよく来たという本屋さんを覗いてみる。深沢七郎の著作はなかった。その向こうに古い和菓子屋が見えた。「御菓子司 飯田」という看板。「草もち」という張り紙に目が吸い込まれた。飛び込む。
           飯田① 
           飛び込め

この時期は桜もちか草もちに限る。草もち好きの村長は、見るからに見事なよもぎ色の「草餅」(1個86.40円=消費税込み)を4個買い込んだ。合計345円。店主は「今の時期だけで、少ししか作りません。添加物は使ってません。すぐ固くなるので今日中に食べてください」と言った。
           飯田③ 
           発見か?

ウマズイめんくい村で賞味。改めてしみじみと見る。どっしりとした茶巾包みで、口中に運ぶと、餅の柔らかさとよもぎの香りがふくよかに広がるのがわかった。中のつぶしあんは上質で、甘さがちょうどいい。北海道十勝産の小豆、上白糖、それに塩だけ。かような場所にかような草もち。         
           飯田⑥ 
           お茶を入れてっと・・・
           飯田1 
           見事な草もち
           飯田⑧ 
           むふむふ涙・・・
           飯田⑨ 
           素朴な上質

深沢七郎がこの草もちを食べたという証言は得られなかったが、最晩年、東武線曳舟駅そばで今川焼き「夢屋」を営んだくらいだから、ひょっとして店に来ていたかもしれない。よもぎのいい香りと小豆のいい風味を楽しみながら、村長の空想はしばらく続くのだった。深沢七郎のホモ説は本当だろうかなどなど。おりんがどこかにいるかもしれないのに。

本日の大金言。

天才とは置き換えの効かない才能だとしたら、深沢七郎や稲垣足穂は天才中の天才ということになるが、百年後が気になる。



                   ラブミー農場⑦  





市場の「ジャンボかつカレー」

巨大市場は楽しい。 東京・築地の中央卸売市場や北千住の足立市場は村長にとっては特別な場所である。だが、埼玉の台所、大宮市場には行ったことがない。これはいかん。イメージだけで「大宮市場=大したことない」と決めつけていたきらいがある。思い上がりも甚だしい。

思い立ったが吉日。村民2号が友人と会いに渋谷に行った隙を狙って、ポンコツ車を飛ばした。市場には必ず旨い料理屋がある。国道17号線(中山道)を吉野町交差点で曲がった辺りに大宮市場の看板が見えた。さいたま市北区。さいたま市だが上尾市に近い。「市場内食堂巡り」の文字が「おいで、おいで」していた。
           大宮市場③ 
           おおっと、大宮市場!

広い駐車場に止めた途端、大宮市場が想像以上の大きさであることがわかった。魚市場と青果市場に別れていて、「業者が合わせると約100社ほどあります」(卸売組合)というスケール。とりあえず魚市場に一歩踏み込むと、そこは北千住の足立市場を超える世界で、新鮮な魚介類ばかりでなく肉類、乾物類などが所狭しと並べられていた。
           大宮市場① 
           築地にも負けない世界

見事な本マグロのカマ(1000円)と鯖の文化干し(2枚200円)を買い、ねじり鉢巻きの店員に「どこか旨い店はないですかね」と聞いてみた。
「俺らは『キッチンニューほしの』に行くよ。洋食屋だけどここはいいよ。何でも旨いけど、ジャンボかつカレーが名物だよ」
大宮市場には約11軒の食堂がある。「キッチンニューほしの」はその中でも人気の洋食屋で、正午になると、行列ができるとか。
           ニューほしの① 
           予想外の本格洋食屋

時刻は午前11時40分。急いで教えられた方向へ行くと、「キッチンニューほしの」の看板が見えた。調べてみると、大宮市場が誕生した昭和45年創業という老舗。予想外の本格的な洋食屋だった。コック服コック帽が4~5人ほど。カウンター席とテーブル席があり、村長はテーブル席に座ると、その「特薦ジャンボかつカレー」(1000円)を頼んだ。
           ニューほしの④ 
           うむむ
           ニューほしの⑤ 
           これこれ

次々と客が入ってくるのがわかった。豚かつを揚げる軽やかな音と香ばしい匂い。15分ほど待つと、白い大きな磁器皿に盛られた巨大なカツカレーがやってきた。かなりデカい豚かつ、その上にかかった黒っぽいカレー、新鮮な千切りキャベツ、つややかなライス・・・ひと目見ただけでこの店の実力が疑いのないものであることがわかった。
           ニューほしの⑦ 
           デカいが本格派
           ニューほしの10 
           どないどす?
           キッチンニューほしの 
           コックの煮込み方

数えてみたら、豚かつは6切れ。たぶん国産豚のロース肉で、きれいな赤身と脂身の具合がいい。肉の厚さは優に1.5センチはある。パン粉がしっかりと付いていて、肉は柔らかい。黒っぽいカレーは和牛のスジでじっくり煮込んだスープから作っているとか。飴色のタマネギが艶めかしい。
           ニューほしの13 
           たまらん!
           ニューほしの14 
           たまらんらん

豚かつを黒っぽいカレーに付けて口中に運ぶと、ルーのまろやかな舌触りと豚カツの肉汁がたまらなく旨い。ライスは固めで、立っている。東京・神田神保町のカツカレーの名店「キッチン南海」を連想してしまった。すっかり食べ終えると、腹周りが3センチほど膨らんでいた。ただ一点、残念なのは福神漬けがなかったこと。らっきょうもぜひ置いてほしい。

本日の大金言。

人生に疲れたら、市場に行こう。新鮮な魚を見て、肉を見て、長靴をはいた店員さんを見て・・・それから食堂に行けば、余計なことが頭から吹っ飛ぶ。


                         ニューほしの17 


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「ソースかつ丼299円」の驚き

本日は極秘情報。スーパーで見つけた絶品の「ソースかつ丼299円」をご紹介しようと思う。村長にとっては目からうろこの出会い。群馬・桐生へゴッドマザーのお見舞いでポンコツ車を走らせた。どこかでランチしようと思ったが、村民2号が「いい店があるのよ、ふふふ」とのたまった。

それが桐生市の郊外、新里町にあるスーパー「アバンセ新里店」のお惣菜コーナーだった。ヒマさえあればスーパーの食品売り場を散策するのが大好きな村長だが、この日は志多美屋あたりで桐生名物の「ソースかつ丼」でも食べようかという腹づもりだった。
           アバンセ① 
           発見か?(アバンセ新里店)

「財政事情を考えてよ」とは言わなかった。
「ダマされたと思って、とにかく文句を言わずに食べてみてよ」
と意味ありげな村民2号。
 
「アバンセ」は群馬を中心に埼玉にも進出しているフジタコーポレーションの新ブランド店。「社長の奥さんのおはぎ」(1個99円)などヒット商品もある。果物、野菜、肉類ばかりでなくお惣菜が充実していることでも知られつつある。
 
ここの「ソースかつ丼」(299円、税別)が絶品だというのである。特に新里店は「秘密のケンミンSHOW」(日本テレビ系)で取り上げられ、それを見た村民2号が先月、一人で来たとき実際に食べたところその安さと旨さに驚いたというのが経由だった。
           アバンセ3 
           お惣菜売り場

ガラス張りの広い厨房で女性スタッフが4~5人で惣菜作りに励んでいた。ちょっとしたレストランの厨房のようで、力の入れ具合が見て取れた。「あっという間に売り切れてしまうのよ」と村民2号。ゴッドマザーと村民2号の妹の分、合計4個買って、ゴッドマザーのホームで賞味となった。
           アバンセ 
           驚きのソースかつ丼

プラスチック製のドンブリは小ぶりだが、フタを取ると、ソースだれをくぐらせたかなりデカい豚ヒレカツが2個どんと乗っかっていた。紅ショウガとレモン、パセリが添えられていた。作ったばかりでのようで、スーパーのお惣菜とは思えない本格的な旨そう光線を放っていた。うむむむ。
           アバンセ③ 
           フタを取ると・・・

まずはガブリとひと口。まだ温かみが残っていて、カサッというパン粉の感触がいい。ヒレ肉は厚さが1~2センチほどもあり、それが実に柔らかい。その下のふっくらと炊かれたご飯もいい。甘めのソースだれのかけ具合も絶妙で、思わず唸りたくなるほどの驚き。こ、これで299円? 先日、東京・茅場町で食べた200円かけそばに続く衝撃・・・。
           アバンセ⑤ 
           秀逸なヒレカツ
           アバンセ⑥ 
           うむ
           アバンセ⑦ 
           まさかの展開
           アバンセ⑧ 
           ユメピリカの美味

「さすがに肉は国産ではないようだけど、同じグループ会社のレストラン『いっちょう』のソースかつ丼とほとんど同じもののようよ。米は北海道ユメピリカで道理で旨いはずよ。299円でよくやっていると思うしかないわ」

「ボリュームがイマイチかと思ったけど、ヒレカツがデカいので、意外にお腹にちょうどいい。これはちょっとした発見だな。ヨーカドーとか大手もウカウカしてられないな」

「こういう地方のスーパーがいい仕事をしているって何だかうれしくなってくるわ。それに比べて村長は最近、いい仕事をしてないわねえ・・・。食べるものもぜい沢になってきたし、遊びまくっているし・・・」

「人生には山もあれば谷もある。富士山には月見草がよく似合う・・・」

「あれっ、山なんてあったっけ? 月見草というより枯れすすきじゃないの?」

「・・・・・・」

本日の大金言。

地方のスーパーの生き残りをかけた工夫と努力にはすごいものがあると思う。中央よりローカル、大手より中小にこそ目を向けたい。



                         アバンセ10 



大宮「さぬき手打うどん」の微妙

 最近、埼玉・大宮に立ち寄ることが多い。むろん埼玉の中心地である。ダサイタマなどと言われたこともあるが、実に不愉快である。そういう東京こそが頭狂かもしれないぞ。というマクラから、今回取り上げるのは、大宮駅東口のさぬきうどんの名店「やま泉(やまいずみ)」のカレーうどんである。
           やま泉 
           大宮駅東口の名店

食べログなどでの評価が高い。あの東京・人形町の「谷や」とほぼ同じくらいの高評価。村長は約10年ほど前にぶっかけを食べたことがあるが、予想外に旨かったことを覚えている。今回食べたのは「味自慢 ビーフカレーうどん」(950円)。「当店のお肉は全て和牛を使用しております」と注釈がしてあった。
           やま泉① 
           いい雰囲気である

カレーうどんは群馬・みどり市の老舗「山本屋」が村長の好みで、その味わいと安さとボリュームにうなったものだ。田舎を侮ってはいけない、と思った。それを基準に考えたい。「やま泉」の店構えは素晴らしい。右手の打ち場もいい雰囲気である。木のカウンター席に座って、高めのメニューの中から「ビーフカレーうどん」を頼んだ。
           やま泉② 
           期待がふくらむ

10分もかからずにお盆に乗った「ビーフカレーうどん」がやってきた。いい匂いと湯気。ドンブリは大きくない。淡泊な色合いで、薄切りの見るからに高級そうな和牛(ばら肉?)がいいアクセントになっていた。タマネギはこの店の特徴なのだろう、それほどに煮込んでいない。
           やま泉③ 
           ボリューム感は?
           やま泉④ 
           薄切り和牛が・・・

分葱をパラパラと乗っけて、まずはカレーつゆをレンゲでひとすくい。意外にもトロみも辛さもあまりない。出汁の効いた品のいい味。好みの問題かもしれないが、村長にとっては物足りない。うどんは中太でコシももっちり感も悪くはない。「谷や」の本格的なものと比べると、コスパ的にも格落ちの感。10年前の方がもっと本格的だったと思う。
           やま泉⑦ 
           口中へ
           やま泉⑥ 
           淡泊な味
           やま泉2 
           手打ち

薄切りの和牛は美味。だが、固めのタマネギは好みではない。食べ終えると、やはり物足りなさが残った。腹七分の満足感。期待しすぎだった? ふと見上げると、「特製いなりずし 200円」の文字が見えた。合計1150円の出費となるが、これに期待することにした。酢飯には何も入っていず、油揚げはきれいでうすら甘い。関西風かと期待したが、関西風でもなく関東風でもない。
           やま泉⑨ 
           特製いなりずし
           やま泉10 
           特製の意味

「このいなりはさぬき風ですか?」
店主に聞いてみたら、「どこ風でもありませんよ」という答え。うむ。これをどう評価していいのか戸惑った。食べログは旨い店探しの一つの基準だろうが、鵜呑みにすると間違うこともある。好みの問題とはいえ、勘定を払い、外に出ると、「食べログの店」というシールが寒々と見えるのだった。

本日の大金言。

期待は裏切られるためにある。本場は安くて旨い。高くて旨いは当たり前、高くてフツーの店が増えている気がするのだが・・・。





                        やま泉12 

「行列のできるシュークリーム」と遭遇

 本日は3.11からちょうど4年。まずは黙とう。静かに足元を見ていたい気分だが、悲しいかなウマズイめんくい村に休みはない。よーい、スタート!

所用で花のお江戸は築地へと足を運んだ際に、面白いスタンド看板を見つけた。築地本願寺前。「築地名物 行列のできる即日完売スイーツ」と書かれてあり、美味そうなシュークリームと店の所在を示す矢印が見えた。東銀座方向。矢印通りに100メートルほど行くと、「セリスイーツファクトリー」が見えた。行列はなかったが、3~4人ほど並んでいた。
           セリスイーツ① 
         これは何だ?(東京・築地で)
           セリスイーツ1 
           行列のできる店・・・
           セリスイーツ③  
           美味そうなシュークリーム!

いつの間に「築地名物」ができたのか? 調べてみると、約2年前、2013年6月にオープンしたことがわかった。それが今年1月放送の「いきなり!黄金伝説」(テレビ朝日)で取り上げられ、「真冬でも並びたい行列のできる即日完売グルメベスト15」で見事1位の座に輝いた。それが人気にさらに拍車をかけたようだ。
           セリスイーツ④ 
           今どきのやり方

とはいえ、いきなり「築地名物」は軽すぎないか? 村長はそのあまりに節操のなさが気になった。で、覗いてみた。美味そうななシュークリームが並んでいた。その名も「行列のできるシュークリーム」(1個220円)。焼き立てを売りにしていて、注文を受けてから冷たい新鮮なカスタードクリームを注入する。それを4個買い求めて、近くの喫茶店でこっそり賞味することにした。
           セリスイーツ⑤ 
           職人がいる?

シュークリームは焼きたてということもあるのだろう、袋から取り出しただけで香ばしさが立ち上がってきた。表面がごつごつしていてパウダーシュガーがきれいにかかっていた。それを半分にして、ガブリと行った。
           セリスイーツ⑥ 
           焼きたての香ばしさ
           セリスイーツ⑧ 
           第一位のシュークリーム
           セリスイーツ100 
           後ろから失礼

ガサガサという食感とともにシュー生地の香ばしさとカスタードクリームの美味さが口中に広がった。シュー生地はオーブンで二度焼きしているそうで二層になっている。表面はサクサク、中はもっちり。村長はサクサクよりしっとりが好きだが、これはこれで悪くはない。

感心したのは中の冷たいカスタードクリーム。ぎっしりと詰まっていて、その新鮮な風味がいい。量産できないカルピスバターを使い、卵の香りとバニラビーンズの香りが鼻腔に抜けていく。生クリームも入っているのではないかというさわやかな濃厚。グラニュー糖のきれいな甘み。人気があることがわかる味わいで、「即日完売」もあり得ると思った。
           セリスイーツ12 
           秀逸なカスタードクリーム
           セリスイーツ13 
           最高峰か?

とはいえ、メディアと連動したあまりに軽い宣伝戦略にいささか危惧も覚えた。そこには寡黙な職人の顔が見えない。「今どきのやり方」ではあるのだろうが、長い視点が足りないのではないか。名物とか老舗とかは一朝一夕にはできないと思う。情報はあっという間に消費される。定番になり得るせっかくのいい味がもったいない。

ウマズイめんくい村に持ち帰り、6時間後に残りの2個を食べて見た。美味いにはうまいが、ごくフツーのシュークリームになっていた。村民2号も「これ、本当に即日完売のシュークリーム?」と怪訝な表情。焼きたてに限る、なるほどと思った。

本日の大金言。

メディアに乗り過ぎると、メディアに殺されることだってある。基本は職人の技だということを肝に銘じたい。



                        セリスイーツ14 


「名物オムライス」の深すぎる味

 B級グルメの知人から「大宮の名物オムライス」の存在を聞いたのは5年ほど前。「24時間営業の古い喫茶店でね、煙草を吸う人も一杯いる。その中でほとんどのお客がオムライスを注文する。とにかくデカい。昔のオムライスなんだよ」と友人はまくしたてた。友人はヘビースモーカーだった。

埼玉・大宮に所用があり、そのことを思い出した。ランチタイム。洋食「紅亭」にでも行こうかと思ったが、あいにく懐が寒かった。その名物オムライスを食べてみようと思い立った。東口から北に歩いて5~6分ほど、一番街に入り、その奥に昭和の匂いの残る本格的な老舗喫茶が佇んでいた。それが大宮では知る人ぞ知る「伯爵邸」だった。
           伯爵邸① 
           昭和のいい雰囲気

広い店内に足を踏み入れると、ステンドグラスのランプがあり、テーブルもソファも昭和の高級感にあふれていた。左手にはバーカウンターがあり、奥が厨房になっていた。煙草を吸っている人もいるが気にならない。メニューは豊富でとんかつやスパゲティ類、アメリカンクラブハウスサンドなどなどレストラン並み。村長はむろん「懐かしのオムライス」(800円)を頼んだ。
           伯爵邸② 
           メニューがいい
           伯爵邸1 
           老舗の貫録

10分ほどでその名物オムライスがやってきた。大きいシャレた絵皿に見事なオムライスがドテッと寝そべっていた。普通のオムライスの1.5倍くらいはある。バター(マーガリン?)の匂いとトマトケチャップの匂いが食欲をそそる。卵はふわとろなどではなく、しっかりときれいに焼かれている。トマトケチャップの量が少し少ない気もするが、下町の正統派オムライス!
           伯爵邸③ 
           懐かしのオムライス
           伯爵邸④ 
           かぶりつきたい

コンソメスープとちょっとしたサラダが付いていた。見事な、懐かしいグラマー・・・いやオムライスにスプーンを入れる。卵の焼き具合に感心しながら、口中に運ぶと、やや固めのチキンライスが昭和の匂いとともに旨みが広がってきた。メチャウマではなく、ノスタルジックな旨さ。食べ進むうちに具が極めて少ないことに気付いた。
           伯爵邸⑦ 
           見事な焼き加減

玉ネギが少しとマッシュルームが思い出したように存在している。チキンか合いびき肉が欲しいところだが、たまたまなのかカケラも見当たらない。グリーンピースも見当たらない。中はほとんどチキンライスの世界。うーむ。村長は考えた。店のオーナーは沖縄出身で、創業は昭和48年。ひょっとして、これは戦後の原点を思い出させようという深い味わいではないか? 哲学的なオムライス・・・。
           伯爵邸⑧ 
           チキンライス!
           伯爵邸3 
           具の姿が・・・
           伯爵邸⑨ 
           玉ネギ発見
           伯爵邸10 
           マッシュルーム発見

戦後日本は高度成長期を経て、日本列島改造期を経て、バブルへと突入していった。そして平成不況に突入し、3.11を迎えた。その真摯な反省もなく、次第に記憶も風化し、奇妙な現実遊離感覚が世の中を覆い始めている。足元を見ることが必要なのに視線は別の方向へと向かっている・・・のではないか? そこにこのリアルなオムライス。
           伯爵邸2  
           最高のぜい沢?

いい気になっていはしないか? 具の少ない巨大なオムライスが問いかけている。村長はきれいに平らげると、昭和の懐かしい充足感に包まれた。ケチャップがやや少ないことなど気にならない。具がもっとほしいだと? 今生きていて、この美味を味わえること、そのこと自体の意味を考えなさいよ・・・巨大オムライスがそうつぶやいているような気がするのだった。

本日の大金言。

料理がしゃべることだってある。オムライスが説教をすることだってある。それを素直に聞ける耳がありやなしや。



                       伯爵邸12

酒蔵見物後の佐野ラーメン

 酒仲間でもある山田酒店の若旦那から「これ、旨いですよ」と教えられたのが、栃木・佐野市の「開華 純米吟醸生原酒」(第一酒造)だった。これが驚くほど旨かった。思い立ったが吉日、村長は翌日、ポンコツ車を東北道から国道50号を足利方面へ飛ばし、第一酒造に向かった。むろん、佐野ラーメンも視野に入れている。
           第一酒造② 
           342年の歴史の酒蔵

創業が延宝元年(1673年)という酒蔵を見学、今しかない「袋搾り 無濾過生原酒」(1800ミリリットル 2800円)を買い込んだ。ムフムフの気分。その足で近くの「佐野ラーメン ハ竹(はたけ)」へ。国道50号線沿いにあるこの店は佐野市のほとんど最西端にあり、ラーメン好きの間で評価が高まっている注目店でもある。
           第一酒造⑤ 
         袋しぼり無濾過原酒めっけ

昭和60年(1985年)創業、トラック食堂として根強いファンもいたが、2年前にリニューアルして佐野ラーメン店となった。店内に入ると、すぐ左手が広い厨房になっていて、店主がいい雰囲気でチャーシューを切っていた。時刻は午後2時過ぎ。忙しさのピークは過ぎていて、客はまばら。
           ハ竹①     
           佐野の穴場「ハ竹」

村長はテーブル席に腰を下ろして、「佐野ラーメン」(醤油600円)を頼んだ。ふと見ると、「食堂時代からの常連客多し」というサイドメニューの「からあげ」が目に入った。ご飯とセットで300円。ご飯は遠慮して、「からあげ」のみを頼んだ。ムフムフムフの気分。
           ハ竹② 
           うーむ     
           ハ竹⑤ 
           ムフムフ・・・

唐揚げは注文してから片栗粉をまぶして揚げているのがわかった。約12~3分ほどでいい匂いとともにラーメンが登場、続いて唐揚げがやってきた。サラダとタクワンが付いていた。
           ハ竹⑥ 
           あ~よいよい
           ハ竹⑦ 
           惜しげない世界
           ハ竹⑧ 
           常連の多い「からあげ」

ラーメンはかなりデカい豚バラチャーシュー、かなりの量の刻みネギ、ナルト、穂先メンマが透明な醤油スープに浮かんでいた。うむ、と唸りたくなる重量級の存在感。その下には手打ちの太ちぢれ麺がゆったりと控えていた。

まずは醤油スープ。鶏ガラ、豚のげんこつ、魚介、野菜をじっくりと煮込んだスープはまろやかで旨い。かすかにラードの匂いを感じたが、「ラードは使っていません」(店主)とか。
           ハ竹11 
           滋味深いスープ
           ハ竹⑨ 
           喜多方ラーメン?
           ハ竹13 
           チャーシューの秀逸

豚バラチャーシューは手切り感があり、大きいばかりでなく厚みもある。よく煮込まれていて、柔らかくて美味。メンマは長いものが3本ほど。太縮れ麺は佐野ラーメンというより喜多方ラーメンのようで、コシともっちり感とツルリ感がいい。ボリュームもある。
           ハ竹14 
           唐揚げの秀逸

サイドメニューの鳥の唐揚げはデカいものが3個。常連客が付いているのがよくわかる旨さで、サクサク感とジューシーさが店主の腕の確かさを物語っている。食べ終えると、腹十分の満足感。やや食べ過ぎた感じもあるが、トラックの走る国道50号線沿いにしっかりした料理人がいることがうれしくなった。佐野はやはり奥が深い。ムフムフムフが30秒ほど続くのだった。

本日の大金言。

佐野は水がいい。いい地酒、いいラーメン・・・そこに美女がいるともっといいのだが、そこは確信が持てない。



                      ハ竹15

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久しぶりに「焼き豚界の最高峰」

 宮仕え時代に当時の上司から佃島に絶品のチャーシューがあるよ。T社長から教えられてね。ホントに旨かった。キミもいっぺん行ってみたらどうだい?」というのが、今や佃名物ともなった「肉のたかさご」の「やき豚」だった。会社から歩いて15分ほどの距離。東京湾からの潮風をモロに受けながら相生橋を渡ると、右手に「肉のたかさご」の派手な看板が見えてきた。
           肉のたかさご 
           久しぶり!「肉のたかさご」

ドヒャーとひっくり返りたくなるほどの見事な焼き豚だった。世の中にこんなに旨いものがあるのか、オーバーではなく感動した。絶妙な柔らかさとふくよかさ。創業が昭和22年(1947年)、「秘伝のタレは継ぎ足し」と聞いた。以来、事あるごとに「肉のたかさご」に行っては出来上がったばかりの焼き豚を一本買うのが楽しみとなった。汐留のD社の幹部に手土産にしたところ、後日「あんな旨いチャーシュー初めてですよ」と喜ばれたこともある。

そのうちにテレビや雑誌などメディアに登場し始め、一躍行列のできる店になった。それをきっかけにして、徐々に遠ざかって行った。先日、茅場町に行ったついで「たかさご名物 やき豚」を賞味したくなった。約6年ぶりの「肉のたかさご」。店構えはほとんど変わっていなかったが、客がまばらだった。
           肉のたかさご① 
           いい匂いが漂ってくる

真空パックも昔より多く並んでいたが、出来上がったばかりの「やき豚」を1本(715グラム 3718円)選んだ。以前と同じ見事な焼き豚で、100グラム当たり520円。安くはない。「脂身の多いものと少ないもの」があり、村長は「多い方」にした。
           肉のたかさご② 
           これこれ
           肉のたかさご③ 
           見事なやき豚

ウマズイめんくい村に持ち帰って、たまたま友人からもらった「新政」の限定酒を熱燗にして、久しぶりにリッチな晩餐会となった。タコ糸を外してから包丁を入れ、5~6枚ほど厚めに切る。ここで違和感が芽生えた。寒さのせいなのか、肉の色が以前のような肉汁溢れる感じが見られない。脂身もどこか素っ気ない。うむ。
           たかさご① 
           お元気ですか?
           たかさご④ 
           この重量感
           たかさご⑥ 
           厚めに切る
           たかさご⑨ 
           タレをかける

特製ダレ(これは以前と同じだった)を付けて口中に運ぶ。旨いには旨いが、以前のような感動が来ない。赤身も脂身もあの驚くほどの深みのある肉汁と甘さが感じられない。村長の舌が変わってしまったのか? 「十分に旨いわよ。村長の舌がぜい沢になっただけよ」村民2号は旨そうに食べている。
           肉のたかさご2 
           オーブンで温めてみた
           肉のたかさご3 
           フツーに旨いが・・・

アルミホイルに包んでオーブンで温めて見た。だが、やはり以前の感動は来ない。翌日、電話してみた。
「昔と作り方を変えました?」
「いえ、同じ作り方ですよ」
「肉は鹿児島産の黒豚でしたよね」
「いえ、今はメキシコ産ですよ。その時一番いい豚肉を使ってるんですよ。昔から同じですよ」
村長はキツネにつままれたような気分に陥った。「チャーシュー界の最高峰」が霧に包まれていくようだった。

本日の大金言。

舌は変化する。あるいは店が変化する。ゆく川の流れは・・・方丈記の一節がベンベンと鳴る。



                        たかさご13 

思わぬ拾い物「五島のさば寿司」

 「こけし展が今日でおしまいなのよ。案内が来てたことをすっかり忘れてたわ。ねえ、ポンコツ車走らせない?
ひな祭りの昨日。村民2号が、野良作業中の村長の下にやってきた。
「こけしには興味がないなあ」
村長が渋った。
「フフフ・・・そう来ると思った。別の階で大九州展もやってるのよ。九州の旨いものがどっさりあるはずよ」

その約3時間後、青いポンコツ車が埼玉・熊谷の八木橋デパート駐車場に滑り込んでいた。すでに夕暮れ時。「松井貞夫こけし展」はすっかり人影もまばら。ひと通り見てから、7階で行われている「大九州展」へと足を運んだ。九州は北海道に負けない旨い物の宝庫だと思う。首都圏のデパートでも北海道に次ぐ集客力を誇っている人気のイベント。
           平野屋 
           九州の旨いもの大集合

こちらは人が多かったが、村長の目は「五島のさば」という墨文字に釘付けになった。「大村ずし 平野屋」の看板。長崎の五島列島は世界でも有数の魚介類の宝庫で、そこの鯖(さば)とは見逃せない。実演はすでに終了、「鯖寿司」(税込み1296円)も売り切れていた。く、ぐやじい~。村長はダメもとでスタッフのおばさんに「もう、おしまい?」と聞いてみた。
           平野屋② 
           五島のさばだって?
           平野屋① 
           最後の一個ゲット

人生、あきらめてはいけない。その一言が意外な方に転んだ。「ちょっと待ってくださいね。一つだけありますよ」。ゲット、ラッキー! 銀色の鈍い光を発する、見事な鯖の棒寿司が現れた。かなりの肉厚で、それが8切れほど。これで1200円(税抜き)はちょっと信じがたい。かつて京都の「末廣」で買った鯖寿司は驚くべき旨さだったが、一本3700円だった(現在は4000円)。

単純には比較できないが、これは買い得ではないか? その夜、ウマズイめんくい村の食卓はリッチ。辛口純米酒の熱燗を相方に、五島の鯖寿司の賞味となった。パッケージを取ると、見事な鯖の棒寿司が姿を見せた。五島から持ってきた鯖だそうで、「浅めに〆たもの」とか。それが確かに8切れ(末廣は12切れ)。
           平野屋③ 
           このテカリ、うむむ
           平野屋2 
           ラップが邪魔・・・
           平野屋⑤ 
           リッチな時間

乾燥を防ぐためだろう、一切れずつラップで包んであった。これを解くのにひと苦労。鯖は見るからに新鮮でその厚さが酢飯と同じくらい分厚い。醤油を付けずにまずはひと口。「浅めに〆た」ことがよくわかる。鯖の旨みがストレートに来た。酢飯も酢がきつくない。穏やかな旨味。醤油を付けると、旨味が広がった。
           平野屋④ 
          五島の鯖の分厚さ
          平野屋⑨ 
          醤油にちょい漬け
          平野屋11 
          酢飯はやや固め

「末廣と比べると、脂の乗りや酢飯の奥行きが物足りないけど、この値段でこの味はかなりのものだよ」
「末廣と比べちゃいけないわよ。鯖が若いのかもしれないわね。淡泊な旨味で私は好きよ」
「こういう発見があるからデパートの物産展はあなどれないな。でも、ラップはどうにかしてほしい。取るのにちょっとイライラする」
「村長を相手にするよりイラつかないわ。楽して美味い物を食べようと思うな、よ。修行が足りないわねえ」
「・・・・・・」

本日の大金言。

デパートの物産展は総じて高い。特に北海道展は高すぎると思う。その中で掘り出し物は必ずある。それを見つける楽しみ。



                      平野屋12

まさかの場所に絶品「鹿の子」

 ポンコツ車で東奔西走していると、メディアに紹介されていないいい店に出会うことがある。埼玉・羽生で旨いラーメンを賞味した後、車を止めたまま人通りの少ない市街を歩いていると、今にも崩れ落ちそうな(失礼)古い小さな町家が視界に入った。「御菓子司 紅屋」という屋号。ガタピシしそうなガラス戸。そこに「さくら餅」と書かれた和紙が。さらに遠慮がちに「あんこ有ります」という張り紙。うむむ。
           紅屋① 
           この情緒はなんだ?(羽生市中央2丁目)
           紅屋② 
           いい店発見か?

村長のセンサーが反応した。調べてみたら建物は築百年ほどで、「紅屋」はここで70年ほどの歴史のある和菓子屋さんだとわかった。現在は二代目。建物は古くて今にも倒れそうだが、隅々にまで神経が行き届いていることが見て取れた。いい和菓子屋発見の予感
 
引戸をガラガラッと滑らすと、そこは昭和の世界だった。右手には和菓子が並んでいた。見事な鹿の子、焼ききんつば、どら焼き、シベリアまである。女将さんが奥から出てきた。
「あのう、さくら餅はありますか?」
「あらっ、午前中で売り切れちゃったんですよ。すいません」
「残念です。でも他のも美味そうなのでちょっと見させてください」
           紅屋④ 
           見事な鹿の子
           紅屋⑥ 
         かような場所にかような世界
           紅屋⑤ 
           あまりに素朴な世界

そんな会話を楽しみながら、見るからに美味そうな「鹿の子」(1個110円)、「きんつば」(1個100円)、それに「シベリヤ」(1個110円)を買い求めた。ウマズイめんくい村に戻ってから、賞味することにした。

この「鹿の子」が当たりだった。北海道十勝産の大納言が見事な世界を作っていた。寒天の薄い透明な膜とその大納言のきれいな配列は、ここに昔ながらの和菓子職人がいることを証明していた。二つに割ると、中から手づくり感の伝わるこしあんが現れた。ぎっくり腰だが、正座してそれを口中へ。
           紅屋⑦ 
           胸が高鳴る

大納言小豆のきちんとしたふくよかな味わい、中のこしあんの風味、やや強めの塩気、ほどよい甘さ・・・意外な場所で意外な発見という他はない。村民2号も「これ、素朴に美味いわね」と目を丸くした。
           紅屋⑨ 
           最強の鹿の子?
           紅屋11 
           言葉は不要・・・

「焼ききんつば」は乾燥を防ぐためにパッケージされていたが、皮から何からすべて手づくり。中のつぶしあんはやはり塩気が強めで濃厚な甘み。素朴な味わい。
           紅屋10 
           焼ききんつば
           紅屋12 
           手づくりの技

「シベリヤ」は小さいが、カステラが凝縮した固さで、中は練りようかんそのもの。ふわふわしたシベリアしか知らない村長にとっては、このどっしりとした歯ごたえのあるしっかりと作られたシベリアは意外だった。大きさがもう一回り大きければ、と思ったが、値段を考えるとそこまで求めるのはぜい沢というものかもしれない。
           紅屋⑧ 
           しっかりしたシベリヤ
           紅屋13 
           ふわふわしてない

後日、電話すると二代目店主が出て、「紅屋の由来」を聞いてみた。「紅屋」という屋号は越後や北陸、長崎などにもある。
「先代が付けたもんですから、その辺りのことはわかりません」
「三代目はいらっしゃるのですか?」
いえ、私の代でお終いでしょう。私ももう70歳です。ほとんど手づくりでやってますから、身体もキツイ。冷蔵庫を使わないので、鹿の子も季節的にもうすぐおしまいです。出来合いのものを使えばいいのですが、それはしたくないんですよ」

話しながら、店主が想像通り、昔気質の和菓子職人であることがわかった。かような店が地元以外にほとんど知られていないことに驚きながら、電話を切った。村長はしばしの間、複雑な思いに捉われるのだった。

本日の大金言。

職人がいなくなった国に未来はない。そう断言してしまおう。日本が今向かっている方向には何かが根本的に欠けている。一個の鹿の子に未来を見る。なんてね。





                        紅屋14 






元和菓子屋の手打ち中華そば

利根川を背にした 埼玉・羽生市はここ数年「ゆるキャラサミットの街」としても知られているが、さびれた中心街には「50円今川焼き」の甘太郎など古い昭和がそのまま点在する街でもある。孤独にタイムスリップしたいときにはこの街を歩くと意外な発見がある。中華料理「伊勢屋」を見つけたのもふとしたきっかけ。

ポンコツ車を駐車場に止めてから、その甘太郎で1個50円の今川焼きを買って、駅の方に向かうと、「純手打らーめん」の看板が見えた。街の中華屋さん。ちょうどお昼時。「伊勢屋」という和菓子屋のような店名で、人気店らしく地元の客が次々に入っていく。家族連れも多い。うむ。村長の好奇心がむくむくと動いた。
           羽生伊勢屋① 
           和菓子屋?中華屋?

店内はテーブル席と奥が小上がりになっていて、右手奥が厨房になっていた。中年女性が1人テキパキと動いていた。厨房には店主と奥さんらしい女性が料理作りに励んでいた。テレビが流れている。よき昭和の匂い。モロヘイヤ入りの「王様のワンタン」や「彩りニラレバ」、「チャーハン」なども人気のようだが、村長は看板の「純手打らーめん」が気になっていた。その「らーめん」(450円)を頼むことにした。
           羽生伊勢屋③ 
           昭和の値段
           羽生伊勢屋② 
           地元に愛されている

10分ほどで純手打ちの「らーめん」がやってきた。これが当たりだった。鶏ガラ出汁の透明な醤油スープ、平打ちの縮れ麺、煮チャーシュー、メンマ、海苔、ナルト・・・ラーメンというよりも正統派中華そばで、白い大きめの中華ドンブリも好感。うっすらと脂が浮いた醤油スープは淡泊な旨味がじんわりと滲み込んでくる。かすかにラードの匂い。
           羽生伊勢屋⑤ 
           うむという登場
           羽生伊勢屋④ 
           職人の気配
           羽生伊勢屋⑦ 
           自然な醤油スープ

自家製の手打ち麺はコシがあり、つるりとしたノド越しで、佐野ラーメン系だと思う。煮チャーシューも柔らかい肉感で悪くない。メンマが多めでシャキッとしている。昭和のよきラーメンに出会った気分。450円という値段も好感。
           羽生伊勢屋⑨ 
           自家製手打ち麺
           羽生伊勢屋10 
           どうだす?
           羽生伊勢屋11 
           煮チャーシュー

店名の由来を調べてみると、元々は和菓子屋だったようだ。それが昭和42年(1967年)、中華料理を始め、その後自家製の手打ちラーメンを始めたところ評判を呼び、メニューを広げていった。「伊勢屋」は和菓子屋時代の店名を引き継いだこともわかった。

子ども連れの家族が幸せそうにラーメンやカツ丼を食べている。その当たり前の光景が当たり前に存在している。かつてこういう時代があった。村長は時間旅行者のような気分になって、しばらくその光景を眺めていたくなった。

本日の大金言。

安くていい中華料理屋のある街はいい街だと思う。店主がフライパンを操る音、生活感のある笑顔、古くてもきれいなトイレ・・・いい中華料理屋は大事だ。



                      羽生伊勢屋12 

プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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