浴衣美女がつくる謎の「中華そば」

 ちょっとした会合に出席するために東京・上野御徒町に舞い降りた。ぎっくり腰が治らない。1時間ほど時間があったので、ガード下沿いにあるラーメン横丁へのそのそ歩く。好奇心だけは衰えない。この一帯は改装して、ラーメン横丁も「らーめん横丁」とひらがな変換していた。「中華そば 青葉」「つけめんTETSU」「なんつッ亭」「蒙古タンメン中本」など有名店が並ぶ。
           サクラサク① 
           ガード下のらーめん横丁

その一軒に釘付けになってしまった。目の前がピンク色。べんがら壁を超える?ももいろ壁で、しかも和風の店構え。季節外れの桜のイメージ? 魔笛に吸い寄せられるように、近づくと、「中華そば チラナイサクラ」という看板。「中華そば」(750円)が旨そうだった。本格的なようで、アニメ的な不思議系の匂い。アキバも近い。とりあえず入ることにした。
           サクラサク 
           桃色吐息・・・(チラナイサクラ)

入った途端、引き返そうと思った。浴衣の女性が2人、しかもカワユイ。「いらっしゃいませ」の声に「ここはどこ?」状態に陥りそうになってしまった。左手にカウンターが伸び、右手は2人用のテーブルがいくつか。その奥にもテーブル席。スタッフは浴衣の女性だけ。
           チラナイサクラ3 
           一年中春で~す
           チラナイサクラ① 
           オーパ!

ふらふらとテーブル席に着く。「中華そば」(750円)を頼むことにした。信州産と北海道産小麦をブレンドした麺、無化調スープのこだわり、チャーシューの独自性などが書いてある。カウンターの対面が厨房になっていて、浴衣の美女が麺の湯切りをテキパキとしていた。期待半分で7~8分ほど待っていると、お盆に乗って「中華そば」がいい匂いとともにやってきた。桜のレンゲが妙である。
           チラナイサクラ② 
           信州ラーメンか
           チラナイサクラ③ 
           飛び込みたい

醤油ベースのやや混濁したスープ、その下の中細ストレート麵、何より目を引いたのは、あまりにきれいな白とピンク色のチャーシューと鶏もも肉のチャーシューの組み合わせ。

上に白髪ねぎが乗っているが、目に入らない。「これって何?」つい浴衣の美女に尋ねる。「沖縄産アグー豚のベーコンです」。よくわからないままに、まずはスープをひと口。旨みがじわり。アサリとハマグリなどの出汁と豚骨、鶏ガラの匂い。醤油にもシジミの出汁を合わせているそうで、化学調味料を使っていないそう。門前仲町の「こうかいぼう」よりも味は濃い。
           チラナイサクラ⑧ 
           貝の出汁感
           チラナイサクラ⑥ 
           アグー豚のベーコン
           チラナイサクラ④ 
           信州産の小麦
           チラナイサクラ⑤ 
           鶏ももチャーシュー

麺はつるりとしていて、食べた瞬間、素麺のようで、コシよりものど越しを優先した味わい。村長の好みではないが、悪くはない。問題のアグー豚のベーコンは独特のきれいな甘み。脂身もあっさりしている。だが、これはミスマッチだと思う。鶏もも肉のチャーシューはよく煮込まれていて、まずまずの旨さ。メンマが少ないのが残念。ほうれん草は多めで好感。

全体として、予想よりもこだわりの強い進化系信州中華そばだが、ボリュームも少な目で、村長にとっては八分の満足度。浴衣美女などビジュアルの満足度はかなりのものだが。2~3軒ハシゴした後に食べたら、案外絶品かもしれない。調べてみたら、信州ラーメンの革命児がプロデュースした店で、オープンしてまだ半年とか。斬新ではあるが、チラナイサクラの行く先やいかに? 

本日の大金言。

サクラチルに泣いた世代にとって、チラナイサクラは夢だと思う。新しいラーメンの世界に根を下ろすことができるか、根っこは大事である。


                       チラナイサクラ10 




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ついに鶏塩ラーメンの横綱に挑む

あの埼玉・大宮の有名店 「麺処 ほん田niji」に行くことにした。「ほん田」は東京・東十条に本店があり、「鶏だし塩ラーメン」の評価が異様に高く、約3年前に大宮・桜木町交差点近くに「ほん田」4軒目として産声を上げた。むろん埼玉では初めての暖簾。近くにはかのTETSU系の「つけめん102」などもあり、ラーメン激戦区と言われる場所。

半年前に行列店「つけめん102」に行ったところ、以前ほどの混みようではなかった。店員に聞くと「すぐ近くにライバル店が出来ましたからねえ」冷やかに言っていた。ラーメン戦国時代は厳しいなあ、と同情したほど。その「ほん田niji」へ。横綱に痩せガエルが挑むような気分?  まさか? 午後1時過ぎの時間帯を選んだ。行列をなるべく避けたい。だが、建物の中には4~5人ほどが並んでいた。うむ。
           ほん田 
           虹はあるか?

虹を思わせる色が散りばめられたモダンな店構えで、「ほん田」の後に「niji」をわざわざ入れている理由がわかった。思わず「オーバー・ザ・レインボー」を口ずさむ。5~6分で20人ほど座れるコの字のカウンターの一角に腰を下ろした。券売機ですでに「鶏だし塩ラーメン」(750円)を買い求めている。
           ほん田③ 
           鶏だし塩ラーメン!

面白いシステムで、「二つチャーシューをお選びください」とある。メンマも選ばなければならない。ややこしいが、面倒くせ~と思ってはいけない。郷に入りては郷に従え。チャーシューは4種類の中から「煮豚バラチャーシュー」と「しっとり鶏チャーシュー」を選んだ。メンマは穂先、極細、極太の中から「極太」を選んだ。
           ほん田2 
        選ぶのはややこしいが・・・

コの字のカウンターの中が厨房になっていて、職人風の男性が二人、黙々と作業にいそしんでいた。10~12分ほどで、まず陶器皿に盛られた具がやってきた。女性スタッフの感じは悪くない。その具を見た瞬間、うむと唸ってしまった。見事な厚切りの煮豚チャーシュー、鶏チャーシュー、海苔。上にはなぜかカイワレ大根が2~3本。つけ麺でもないのに、具が別盛りというのは珍しい。
           ほん田④ 
           うむむの別盛り

続いて、白いドンブリにゆったりとたゆたう「鶏だしラーメン」が登場した。黄金色のきれいなスープ、脂のキラキラ感。その下のストレート細麺、中央の白髪ねぎ・・・カイワレ大根がここにも。無駄のない、よく整理された、シンプルな構成。湯気が立ち、鶏だしスープのいい匂いが立ち上がっている。うむ。
           ほん田⑥ 
           シンプルの奥
           ほん田1 
           塩がきつめ
           ほん田⑧ 
           細ストレート麵

スープの旨さが際立っている。やや塩がきつめだが、それを除くと、ほぼ完ぺきに近い味わい。もっと今どきのこけおどしの味かと思っていたが、いい意味で裏切られた気分。鶏の他にホタテなど魚介の出汁の気配もある。シンプルの中の旨みで、ストレート細麺もそれによく合っている。もう少しコシがあった方が好みだが、「完璧、ときどき曇り」ふうが悪くない。
           ほん田10 
           具は予想以上
           ほん田13 
           鶏チャーシューさま

チャーシューは二つとも見事。煮豚チャーシューは厚みといい、噛むとホクッと崩れそうな味わいといいかなりのレベル。特に鶏チャーシューはその柔らかさと滲み出てくる旨味が絶妙で、文句のつけようがない。極太メンマもいいレベル。

今どきのシステムの中に、職人が潜んでいることもある。この内容で750円という設定にも好感。人気行列店というイメージだけでつい敬遠してしまうへそ曲がり村長だが、たまにはこういう裏切られ方もいい。店を出た途端、空に虹がかかっていた、と書きたいところだが、残念ながら虹はなかった。

本日の大金言。

ラーメンランキングなるものがある。それを全面的に信じると、失望することも多い。裏に作為がないとも言えない。ビジネスと職人の割合は・・・食べてみなければ真実はわからない。



                        ほん田14

人気パン屋の「アーモンドクロワッサン」

 コレド日本橋B1にある「メゾンカイザー」は、東京へ野良仕事に行ったときなどに、たまに覗くベーカリー。パリでナンバーワンに選ばれたこともある人気のパン屋さんと同じ系列店。自家製天然酵母と独自の発酵バターを使い、フランス伝統の製法を守っているのも売り。その分、値段もそう安くはない。
           メゾンカイザー① 
           メゾンカイザーコレド日本橋店

そこで以前から気になっていたのが「クロワッサン オザマンド」(税込み324円)。アーモンドのクロワッサンとでも言った方がわかりやすいかもしれない。メゾンカイザーはクロワッサンが特に人気だが、後ろに「オザマンド」が付いたものは、ほぼ楕円形で手のひら大の大きさ。厚さは2~3センチほどで、平べったい形をしている。上からパウダーシュガーが大量に夢のようにかかっている。一体、どんな味なのか?ずっと気になっていた。
           メゾンカイザー2 
           この圧倒、この存在感
           メゾンカイザー1 
             見る前に跳べ

ゴー、ヘッド! 思い立って、それを買い求め、隣接した喫茶コーナーで食べることにした。レギュラーコーヒー(450円)も買い求めた。ラム酒の入ったシロップにクロワッサン生地を浸し、アーモンドクリームを挟み込み、さらにアーモンドクリームを塗って焼き上げたもの。それが目の前にある。表面にはスライスしたアーモンドと夢のパウダーシュガーが・・・。どっしりと美味そう光線を放っている。
           メゾンカイザー4 
           夢の時間が始まる・・・

ナイフでまん中から切ると、いい焼き色のクロワッサン生地とアーモンドクリームが層になっていた。何とも言えないいい匂いが鼻腔をくすぐる。フォークを突きたてて、まずはひと口・・・あれれ、食感は想像とは違った。しっとり感がほとんどない。外側のパリパリ感と続いてくるサクサク感。続いてアーモンドクリームの濃厚なしっとり感が来れば「まいう~」となるはずが、焼きたてのせいか、むしろパサッとした印象。風味は確かに凄いが。
           メゾンカイザー5 
           むふむふむふ
           メゾンカイザー6 
           美味の層
           メゾンカイザー11 
           アーモンドクリーム
           メゾンカイザー9 
           後ろの余韻

バターのいい香りとミルククリームのような複雑な甘みが悪くはない。アーモンドの風味もフツーに考えれば高級な美味。だが、その雪の女王のような風貌から期待を過大に膨らませた分、やや期待外れ。もう少し時間を置いたら、しっとり感が増すのかもしれない。思い直して食べると、フツーに美味い焼き菓子の一種で、苦味の強いレギュラーコーヒーとよく合う。期待は裏切られるためにある・・・過剰な期待はいかん、いかん。

本日の大金言。

人生は友情と打算と裏切りで成り立っている・・・誰の言葉だったっけ? 味覚においても冷静な舌が必要かも。


                       メゾンカイザー12 

大宮の原点?冷やし中華の謎

 夏日が続くと、女性のスカートが短くなり、「冷やし中華」の季節である。いつものように埼玉・大宮を散策中に冷やし中華を食べたくなった。午後1時過ぎ。西口のあたりをぐるぐる回る。タイ料理や油そば、パスタなどの看板が意外に多い。迷った時は「中華料理 来来軒」に限る。大宮のソウルフードとして、ほとんどの大宮市民が知っている店である。
           来来軒 
           大宮のソウル店?

「来来軒」は大宮には2軒あり、南銀座店はあの日高屋グループの出発店でもある。それを知っている人は意外に少ない。今回は西口店。入り口に「冷し麺」のポスターが貼ってあり、それが正統派冷やし中華で旨そうだった。510円(税込み)という価格もありがたい。「中華そば」(390円)、「チャーハン」(430円)、「イワシフライ餃子セット」(670円)などというメニューもある。日高屋とほとんど同じ。
           来来軒① 
           正統派冷し麺!

店の客はオヤジばかりかと思ったが、老若何女、若い女性客も多い。忙しそうに動き回るおばさんスタッフにたまたま空いていた一角に案内され、目的の「冷し麺」(510円)を頼んだ。15分ほど待っていると、四角いお盆に乗って、ガラス皿に乗った冷し麺と磁器皿に乗った具が別盛りでやってきた。
           来来軒② 
           別盛りのボリューム

冷し麺は細縮れ麺で、タレは黑酢しょうゆ、端に紅ショウガと和辛子が乗っている。刻み海苔がパラパラ。ガラス皿が冷えていて、ビジュアルも悪くない。別盛りの具のボリュームに軽く驚く。錦糸卵、ハム、キュウリ、ワカメがフツーの具の量の2倍はある。質も見た目もマル。
           来来軒④ 
           高いレベル 
           来来軒③ 
           具の充実に驚く

具を冷し麺の上に置いていく。やはり冷やし中華はこうでなくてはならない。とても510円とは思えない世界。麺はコシもあり、黒酢しょうゆの風味といい、懐かしい昭和の冷やし中華そのもの。具は特に錦糸卵に感心した。多分、日高屋グループの行田工場で作られたものだが、フライパンの匂いがするような手づくり感。ハム、ワカメ、キュウリも悪くない。これで510円とは思えない満足感にしばし浸る。
           来来軒⑦ 
           細縮れ麺
           来来軒2 
           510円だって?
           来来軒4 
           ワカメとキュウリ

あっという間に食べ終えると、素朴な疑問がむくむくと湧いてきた。「来来軒」は埼玉に7軒ほどしかない。日高屋は首都圏中心に336店舗ある。経営する「ハイディ日高」は一部上場企業で、「焼鳥日高」や「とんかつかつ元」など新しい業態にも進出し、「グループ全体で365店舗です」(同社)とか。電話で素朴な謎をぶつけてみた。

「あのう、『来来軒』と『日高屋』はどこがどう違うのでしょう? メニューも値段も同じように見えるのですが」
「ほとんど同じですけど、『来来軒』の方が炒め物が少し多いんです。なぜ店の名前が違うのか? う~ん、そういう疑問は確かにわかりますが、大宮がグループの原点ということもありますね。でも、詳しいことはわかりません・・・」

街の中華屋として「来来軒」が東口南銀座でスタートしたのは1973年(昭和48年)。戦後の匂いの残る大衆食堂が目立ち、日本が元気だった時代。その前年、田中角栄が第64代首相に就任している。原点は大事である。
           来来軒3 
           冷やし中華の王道

ジャズピアニストの山下洋輔や赤塚不二夫、筒井康隆、タモリらが中心となって「全日本冷し中華愛好会」を立ち上げたのはその2年後。「冬に冷やし中華が食べれないのはけしからん。一年中食べさせろ」いうのが立ち上げの理由だった。ラーメンの陰に隠れてはいるが、冷やし中華の隠れファンは多い。

だが、悲しいかな、その試みは成功したとは言えない。「来来軒」も「冷し麺」は期間限定(5~9月)である。やはり、冷やし中華は暑い時期に限ると思う。

本日の大金言。

冷やし中華は過小評価されていると思う。「全日本冷し中華愛好会」の復活を待ちたい気もする。ただし、季節限定で。



                         来来軒5 

そばよしに匹敵?立ち食いの希望

 時々立ち食いそばを無性に食べたくなる。これまでかなりの数の暖簾をくぐったが、立ち食いそばのシンプルな旨さという点では、東京・日本橋の「そばよし」、茅場町の「亀島」が横綱格だと思う。むろん村長の中で、という意味である。だが、立ち食いの世界も奥が深い。意外な発見に驚かされることも時に出てくる。

メディア関係の会合に出席するために、新橋駅で降りた。汐留口を出る。目的は飲む前の腹ごしらえ。以前、B級シンジケートの友人から、「新橋駅前ビル1号館地下に旨い立ち食いそば屋があるから一度行ってみなよ」と言われていたことを思い出したからである。この周辺はエンタメ新聞社時代に何度も来た場所。
           おくとね 
           新橋駅ビル1号館地下1階

新橋駅前ビル1号館は昭和41年(1966年)に完成。日本が高度経済成長期をおう歌していた時代で、ちまたには「恍惚のブルース」や「君といつまでも」が流れていた。「空に星があるように」もこの年。今から思うとハチャメチャだが、夜空が抜けていたような時代。植木等の「スーダラ節」が大ヒットしたのはこの4~5年前。サラリーマンは気楽な稼業ときたもんだ・・・。今ではSFの世界。

サラリーマンの街に誕生した当時高層の駅前ビルは、今も健在で、その地下にはいい食堂や飲み屋がある。時刻は午後6時過ぎ。立ち食い「おくとね」はその一角にあった。昭和の立ち食いそば屋のシンプルな佇まい。ホントの立ち食いで、20人も入れば一杯だろうという狭さ。だが、奥の店主をひと目見た瞬間、「これは」と思った。どこかお世話になった作家の高杉良さんと似ていた。職人の気配。
           おくとね① 
           隠れるように名店
           おくとね10 
           メニューはそう多くない

券売機で「まいたけ天そば」(450円)を買うことにした。B級の友人は「まいたけ天」を薦めていたからである。見回すと、さり気なく額が飾ってあり、そこに「立ち喰いだからと侮るなかれ・・・(中略)しかとご賞味あれ」と書かれていた。うむ。店主の矜持(きょうじ)だろう。4~5分ほどで、「まいたけ天そば」が出来上がった。驚きの光景。
           おくとね11 
           うむむ
           おくとね③ 
           驚きの世界

まいたけ天が、普通イメージするものとはあまりに違っていた。丸ごと揚げるのではなく、細かく切っていて、それがまるで畳のように薄く大きく揚げられていて、それがドンブリからはみ出ていた。しかもその中央には見るからに新鮮なネギがちょこんと乗っかっている。いい加減に見えて寸分の隙もない。まるで利休の世界。
           おくとね② 
           七色をぱらり
           おくとね④ 
           極致か?

まずはツユをひと口。土佐かつおを使った出汁がシンプルに効いていた。雑味がない。まろやかな、深い旨味。そばもコシといいのど越しといい、立ち食いのレベルとしては上々。まいたけ天は揚げ置きだが、見ていると、よく売れているようで、店主が追われるように揚げていた。カラッとした歯ごたえ。かようなまいたけ天は他にないのではないか?奥利根のまいたけを使っているそう。
           おくとね⑥ 
           そばもレベル以上
           おくとね⑧  
           ま、ガブッと

店主と話がしたくなった。客がすくのを待って、少しだけ話を聞く。
「店は20年になります。出汁からしっかり作っているので、結構手間ひまかかるんですよ。化学調味料とかは一切使ってません。まいたけ天はすぐなくなる。また、揚げなきゃ」
           おくとね⑤ 
           職人がいる

首に巻いた黄色いタオルにいい汗が流れている。「そばよし」や「亀島」に負けない立ち食いそばを見つけた思い。歴史的な新橋駅ビルの地下にいい立ち食いそば屋がある。昭和の匂いのするいい職人がいる・・・それだけで、村長は幸せな気分になるのだった。

本日の大金言。

夕空を見れば星がある。下を見ればいい立ち食いがある。ポケットの中に希望はあるか・・・もう一度、原点を見つめることもたまにはいい。



                         おくとね⑨ 



「安くて旨い」驚きの隠れ立飲み屋

 居酒屋好きでもある村長にとって、埼玉・大宮は未開拓の地。「いづみや本店」以外「これは」という安くて旨い店はあまり知らない。江戸で野良仕事の帰り、東口で降りて、南銀座の飲食街をウロウロすることにした。時刻は夕暮れ時。財布の中身は野口英世さんが2枚と小銭のみ・・・寂しくはない。今日がダメなら明日があるさ。
                  なごみ① 
          夕暮れの路地裏(大宮・南銀座)

一本目の路地を左手に入る。飲み屋がポツリポツリと灯りをともし始めている。夢の名残りが地べたに滲み込んでいる。村長の好きな風情でもある。すると、「立呑処 なごみ」という看板と暖簾が見えた。比較的新しいような、古いような、悪くない店構え。「立呑処」という表記は時流に乗っているようでもあり微妙だが、とりあえず入ってみることにした。京都の居酒屋「スタンド」のような匂いもする。
           なごみ2 
           あんりゃまあ
           なごみ 
           暖簾の奥の世界

これが当たりだった。期待を超える三遊間を抜く二塁打、のような「立呑処」だった。右手に長いテーブルが三つ、立ち飲みスペースで椅子もある。右奥がカウンター席。何よりも驚いたのは左側で、まるで惣菜のように一品料理が並べられている。それも半端ではない数。それぞれに値段が書いてあり、そのあまりの安さに驚く。「もつ煮込み 100円」、「大阪焼き 100円」「だし巻き玉子 100円」「しいたけ煮 150円」・・・。
           なごみ② 
           いい雰囲気

さらに驚いたのはその奥が厨房になっていて、すべて自家製手づくりであること。店主らしい男性とおばさんスタッフが忙しそうに動いている。村長は入り口でまず「生ビール」(中400円)を頼んだ。その場で現金払いというシステム。さらにズラリと並んだ一品料理の中から「ナスそぼろあんかけ」(150円)、「だし巻き玉子」(100円)、「しいたけ煮」(150円)を選んだ。こちらも現金払い。合計800円なり。驚きの安さ。
           なごみ⑤  
           思わず目をこする
           なごみ④ 
           あんれまあ
           なごみ⑧ 
           ええんでねえの

カウンター席に腰を下ろし、まずは「だし巻き玉子」を賞味。値段が値段なので、大して期待していなかったが、食べた瞬間、出汁のよく効いた関西風の旨みが口中を襲った。やや味は濃い目。うむむ。続いて、「ナスそぼろあんかけ」へ。鶏そぼろとナスが出汁の効いた薄味に仕上がっていて、実に美味。これは・・・ちょっとした小料理屋に負けないかも。発見かもしれないぞ、村長は唸った。
           なごみ13 
           だし汁の効き方
           なごみ12 
           関西風の旨み

「しいたけ煮」でそれが確信に変わった。ダシの効き方が関西で、干しシイタケのようなあのいい香りが口中に広がった。これはウマズイ尺度で「いづみや」を超えている・・・ひょっとして選んだのがたまたま旨かったのかもしれない。店主に聞いてみると、店は「もう13年になる」そう。忙しそうなのでそれ以上は聞けなかったが、かような居酒屋がよりによって大宮に存在していたとは・・・。
           なごみ10 
           参りましたッ

一品料理は見たところ30種類はある。次々と厨房から作り立てが運ばれてくる。冷たくなったものはレンジでチンもしてくれる。全体的に大阪の匂いがする。北千住、立石、赤羽・・・居酒屋のメッカはスゴイ人気だが、大宮の裏通りで隠れた名店発見の気分。村長はそっと孤独の行脚に乾杯したくなった。残りのビールは底から2センチ。財布を確認する・・・。

本日の大金言。

安くて旨いに越したことはない。だが、それを続けるのは大変な努力がいる。この時代にかような店もあることを素直に喜びたい。




                       なごみ14

あんこ界の奇跡?「よもぎ餅」の夜

 棚からぼた餅、ということわざがあるが、犬も歩けばよもぎ餅に当たる。月旅行から帰還した当麻寺先生を囲む会が某所で行われた。その席で、当麻寺先生が「これ、みんなに」と手土産として持ってきてくれたのが「中将餅(ちゅうじょうもち)」だった。「村長も好きでしょ」とも付け加えた。気配りに涙・・・。

村長は手にしていたワイングラスを落としそうになるほど、おったまげた。「中将餅」はよもぎ餅の最高峰ともいえる存在で、奈良・葛城(かつらぎ)市にある中将堂本舗の逸品。知る人ぞ知る「あんこの本」の表紙にもなっていて、よもぎ餅とその上からヘラで擦り付けられたあんこが見事だった。一度食べてみたかったもの。そっとテーブルを移動する。
            中将餅① 
            夢かうつつか?

それが目の前にある。村長はみんなに出す前に勝手に「毒見する」ことにした。万が一のこともある・・・。包装紙を取ると、折り箱が現れた。焦ってはいけない。ゆっくりとフタを取る。「あんこの本」の表紙と寸分違わぬ、見事なこしあんが乗っかったよもぎ餅が現れた。こしあんは一つ一つヘラで擦り付けられたもの。美味の整列。3秒ほど絶句状態。合計15個入り(1200円)。
            中将餅② 
            棚からよもぎ餅・・・
            中将餅③ 
            ゆっくりと急げ
            中将餅④ 
            言葉はいらない

ムフムフの毒ミッションをしなければならない。これはあくまでも「犠牲的精神(?)による毒見」である・・・かすかに残っている良心と戦いながら、箸で一つだけ取ることにした。だが、よもぎ餅が実に柔らかくて、箱から離れようとしない。伸びるよもぎ餅。こしあんが身をよじる。何というシチュエーションか?それだけでよもぎの風味とこしあんの風味が絶妙に立ち上ってくる。

中将堂本舗は昭和4年(1929年)創業。現在三代目だが、「中将餅」は初代が當麻の里に昔から伝わる「あん付け餅」をひと口大の大きさにしたもの。当麻寺に伝わる中将姫伝説にちなんで「中将餅」と命名したようだ。中将姫は天平19年(747年)、藤原大納言の娘として生まれ、若くして仏門に入り、一夜にして當麻曼荼羅を織り上げたという伝説が残っている。かなりの美人だったそう。

よもぎは葛城の里に自生する天然物を使っている。ちょうど4月~5月、今の時期が摘み取り時期で、目の前にある中将餅は新よもぎを使っているはずだ。箸で何とか口中へ。よもぎの風味が素晴らしい。その柔らかさ。こしあんの絶妙がそれに覆いかぶさってくる。自然に笑みが漏れてくる。
            中将餅⑤ 
            風味が立ってくる

こしあんは昔の「赤福」のようだが、豊かできれいな甘みと小豆の風味が、赤福より格上。「比べるのが失礼というものですよ」当麻寺先生のような声がどこかから聞こえてきた。よもぎ餅の香りがやや勝っているが、よもぎ餅好きにはそれもまたたまらない魅力でもある。
           中将餅⑥ 
           葛城の里のよもぎ
           中将餅⑦ 
           至福の時間は短い

中将堂本舗によると、こしあんには丹波大納言も少し混ぜているそうだが、悲しいかな村長の舌には感知できなかった。ミッションの時間が短すぎたのと良心の呵責が邪魔をしたのかもしれない。次回は奈良・・当麻寺まで行かなければ、そう決意して、残りの14個をみんなの前に持っていった。

本日の大金言。

歴史のある生菓子には曰くがあるが、それを抜きにしても、「中将餅」がよもぎ餅界の最高峰の一つだと思う。「赤福」の轍を踏まないことを祈りながら。



                      中将餅⑧

ガード下の「元祖ピザトースト」

 先週は福島を小旅行した後、いろいろなことがあった。エンタメ新聞社時代の旧友たちと会食、挿絵画家の会のパーティー、宇宙旅行から無事帰還した當麻寺先生を囲む会・・・そのため江戸に出ていくことが重なった。ネタもしっかりと仕入れてきた。ムフフ。

有楽町でエンタメ新聞社の旧友たちと会う前に、「ピザトースト発祥の店」で、その元祖ピザトーストを賞味することにした。銀座で降り、有楽町ガード下をくぐって、ガード沿いに行くと、「ピザトースト 元祖の店」という文字とともに、「珈琲館 紅鹿舎(べにしか)」が夕暮れに浮かんだ。並びにはスープチャーハンでも知られる「慶楽」がある。よき時代の有楽町の風情がたまらない。
            紅鹿舎② 
            元祖の店

「珈琲館 紅鹿舎」は昭和32年創業の銀座・有楽町界隈でも有数の老舗喫茶店。入り口からして、どこか漢字の巴里(パリ)風。今の時代これだけアールヌーボー風の店構えは少ない。日本風に変換されたアールヌーボーだが・・・。入ると、店内は薄暗く、タイムマシンでモダンを謳歌した有楽町の高級喫茶店に入り込んでしまった錯覚に陥る。
            

            紅鹿舎① 
             紅鹿舎

意外に広い店内は混み合っていた。奥の左手の小さなカウンター席に案内される。そこで、目的の「ピザトースト」(単品850円、ドリンクセットだと1250円)を頼んだ。「アイスレモンティー」を付けてもらう。安くはないが、場所柄仕方ない。
            紅鹿舎1 
            タイムトンネル

すぐ目に前に蝶ネクタイをしたやせた調理係が一人いて、オーブンでピザトーストやトースト類をポーカーフェイスで焼いていた。そのスペースの狭さと流れるような動きをしばし見つめる。彼は毎日毎日、この単調な作業を繰り返している。ある種の感動に襲われる。いい匂いが鼻腔をくすぐる。
            紅鹿舎2 
            フツーの2倍はある?

15分ほどで「元祖 ピザトースト」がやってきた。大きな白い磁器皿に、厚さは優に3センチはあろうかというかなりのデカさのピザトースト! いい匂いがジュジュジュと発散している。3つに切られているが、上に乗ったピザソースとチーズの量がかなり多い。そのためチーズは溶岩のように流れ出し、食パン生地を覆い尽くしている。うむむうむむ。
            紅鹿舎④ 
            元祖でござる
            紅鹿舎⑤ 
            チーズの存在感

フォークでその一角を取り出して、ガブリと行く。チーズが糸を引く。中の具はハム、マッシュルーム、タマネギ、ピーマンといったところ。何よりもチーズの圧倒が特筆される。モッツァレラとゴーダチーズのミックスか? パン生地が意外に柔らかく弾力があり、それが溶岩のようなチーズとよく合っている。
            紅鹿舎3 
            たまらん
            紅鹿舎⑦ 
            別れたくない
             
ピザトーストでこれだけチーズを使っているのは少ない。ピザ生地とパン生地の違いしかないほど。軽食というよりヘビー級のピザトースト。バランス上サラダくらい欲しい気もするが、女将の無愛想を見ると、「これが元祖というものよ」というプライドが聞こえてきそう。余計なものはいらない。そう言っている気がする。
           紅鹿舎⑧ 
           裏側も見る

アイスレモンティーが、古き良き時代の喫茶店のていねいな作りで、それをすすりながら、ピザトーストの余韻を楽しむ。薄暗い店内から入り口のほうを見る。明るさの向こう側に、ミニスカートの女性や銀座紳士が通り過ぎていく。昭和は遠くなったが、ここは昭和のままである。値段だけは平成27年だが・・・。いざ、飲み会へ。

本日の大金言。

そもそもピザトーストに元祖があるのか、不思議な気がする。有楽町に進駐軍としてアメリカ人が行き来していた時に、ピザトーストもあったようだ。ピザトーストの元祖はイタリア系アメリカ人かもしれない。


                      紅鹿舎⑨ 




メヒカリ唐揚げとなめろう茶漬け

 福島・いわき市の夜を散策することにした。3.11以降、復興に携わる作業員や最近は大型商業施設イオンモールの建設などでそれなりに活気はある。しかし、その底に流れる厳しい現実を思うと、単純には喜べない。だが、それは旅行者の単なる感傷に過ぎないかもしれない。浜通りの気性は明るい。日々の生活がある。

南口飲食街で女将がさらりと漏らした言葉。「あれからメニューを増やしたんですよ。作業員の皆さんが肉が好きな方が多いんです。魚介類だけではやっていけないので肉のメニューを増やしたんですよ」。
           漁夫① 
           うむ、いい店構え

南口の飲み屋街は実に魅力的で、あちこちのぞく。村民2号が呆れるように「まるで水を得た魚ね」。レンガ通りで、いい店構えの居酒屋を見かけた。「沖料理 漁夫(ぎょふ)」という看板と暖簾。「ここがいいわ。きれいなのも私向き」と村民2号。調べてみると、市内に3軒あるうちの本店格の店だった。入り口のメニュー板に惹きつけられる。「メヒカリから揚げ」と「なめろう茶漬け」。決まり!
           漁夫② 
           入るっきゃない

暖簾をくぐると、すぐL字のカウンターがあり、コック帽の板さんが忙しそうに料理に励んでいた。左手が個室になっていて、奥は見えない。きれいな女性スタッフが「カウンター席でよろしいですか?」。個室は予約席だそう。暑かったのでまずは生ビール(中550円)を頼む。
           漁夫③ 
           お通しはタケノコ煮

「厚焼き玉子」や「シーザーサラダ」をつつきながら、生ビールでのどを潤す。「シーザーサラダが気に入ったわ。ジャガイモが角切りで入っているのがアイデアで旨い」と村民2号は上機嫌。だが、村長の本命は「メヒカリから揚げ」と「オリジナルなめろう茶漬け」。どちらも680円なり。

メヒカリは「いわき市の魚」として3.11以前に売り出した深海魚で、見た目はシロギスのよう。2年前にいわきに来たときにその唐揚げを食べて、脂の乗った白身の旨さに感嘆したものだ。多分、房総か東北沖のメヒカリを使っているのだと思う。頃合を見計らってまずは「メヒカリのから揚げ」を頼んだ。「末廣純米吟醸無濾過」(800円)を頼むことも忘れない。
           漁夫⑤ 
           メヒカリから揚げ

しばらくしてレモンを添えた「メヒカリから揚げ」がやってきた。これが2年前と変わらず美味だった。脂の乗ったナイスバディのメヒカリが4匹。カラリと揚がっている。レモンを絞ってから、ガブリと行く。塩加減と白身の脂の甘みが絶妙な味わい。ポン酢に付ける。うむむの時間が流れる。
           漁夫⑥  
           いわきのシンボル魚
           漁夫⑦ 
           白身の美味

締めに「なめろう茶漬け」を頼んだ。目の前のコック帽の板さんが鯵(あじ)とネギを包丁でたたき始める。軽やかな音。しばらくして、炊き立てのご飯のうえに三つ葉となめろうが盛られたお椀と鰹(かつお)の出汁の入った急須が置かれた。なめろうの中央にはウズラの卵が鎮座していた。鰹の出汁をしずしずとかける・・・。
           漁夫10 
           なめろうに熱々の出汁
           漁夫11 
           絶妙の世界
           漁夫12 
           ま、食ってくなんしょ

「シソの葉もみじん切りで入ってて、それがいいアクセントになってる。これもイケるわ。私は初めて食べたけど、こういう食べ方もあるのね。メヒカリから揚げといい、料理の出し方といい、この店は全体的にレベルが高い。いい店なのは間違いないわ」

外に出ると、「がんばっぺ!いわき」の旗が夜空にはためいている気がした。「国民の生命と財産を守る。皆さん、そうしなくてもいいんですか?」と声高に言い募るどこかの首相にとって、国民とは誰のことを指すのか。ひょっとして「自分たち」の間違いではないか? その答えが福島と沖縄にシンボリックにあるのではないか・・・まずは総理とその取り巻きから戦場へ。

本日の大金言。

どうもマスメディアもヘンだ。東京新聞を除いて、フツーのことがフツーに言えなくなってきている。山本七平の「空気の研究」が甦る。一体どうしちまったんだい?




                       漁夫14 

いわきのワンダーな「穴子丼」

 約2年ぶりに福島・いわき市へと向かう。目的の一つが小名浜の海鮮料理。3.11で小名浜漁港も大きな打撃を受けたが、「チーナン食堂」や「鮮魚食堂 うろこいち」など港付近の食堂の復活具合を見たかったこともある。石巻や陸前高田ほどの巨大津波ではなかったものの、営業停止に追い込まれた店も多い。
           小名浜漁港 
           小名浜漁港

あれから4年以上の月日が流れた。正午過ぎ、ポンコツ車が小名浜漁港に到着。抜けるように青い空、漁船・・・堤防でイワシ釣りのオヤジもいる。表面的には震災の跡は見えない。震災後、いち早く店を再開した「チーナン食堂」に向かう。漁港関係者や近くのサラリーマンなどで混み合っていた。7~8人の待ち。

もう一軒、「鮮魚食堂 うろこいち」に行ってみる。ここは魚屋が営む食事処で、入り口の横には「御支援ありがとうございます。大震災から2年、ようやく店を再開することができました」という手書きの張り紙が貼ってあった。日付は平成25年3月15日となっていた。津波の被害で店は営業休止に追い込まれていた。
           うろこいち① 
      3.11から立ち直った「うろこいち」
           うろこいち⑤ 
           滲む想い

たまたま近くにいた地元のおじさんが「ここは旨いよ。魚は放射能の問題で福島沖では獲れないので、常陸沖で獲ったものが中心だけど、鮮度もすごくいいよ」。日焼けした顔がいい。「ここにしましょ」と村民2号。
           うろこいち② 
           メニューの誘い

ここも混み合っていたが、「チーナン食堂」ほどではない。4人用のテーブル席が7つほど。その一つに腰を下ろして、メニューの中から「穴子丼」(1050円)を頼むことにした。村民2号は「刺身定食」(1500円)。どちらもカニ汁、おしんこ付き。

店は魚屋と直結していて、長靴姿の男性が行き来していた。女性スタッフの動きもキビキビしている。約15分ほどで、「穴子丼」がやってきた。ドンブリではなくお重同時に「刺身定食」も登場。見るからに鮮度のいいまぐろ、平目、甘エビ、イカ、たこ、ホタテ、かつおなどがどっかと盛られている。ご飯の盛りもレベルを超えている。
           うろこいち⑥  
           これで1050円とは・・・
           うろこいち④ 
           人気の刺身定食

「穴子丼」はふたを取った瞬間、そのボリュームにまず唸ってしまった。お重からはみ出そうなくらいぎっしりと詰まった煮穴子。立ち上るいい匂い。わさびを付けて、まずはひと口。煮穴子は実に柔らかく炊かれていて、口中に入れると、やや甘めの風味が広がった。常陸沖の穴子だそう。細かい骨も見えるが、柔らかく煮込まれているためか気にならない。
           うろこいち⑦ 
           言葉がない
           うろこいち⑨ 
           絶妙な穴子丼

ご飯は福島産のコシヒカリで、タレの滲み込み具合もいい。ふうふうしながら食べると、潮風が脳天に抜けていくようで、実に旨い。築地場内市場「高はし」で食べた穴子丼(2000円)ほどの洗練はないが、1050円でこれだけの穴子丼を出すこの店に敬意を表したくなった。フツーの穴子丼の1.5倍くらいのボリュームとふくよかな圧倒。
           うろこいち10 
           裏から失礼
           うろこいち11 
           プロの技

「刺身定食は築地で食べるよりも全然安くて旨い。平目とまぐろが特に美味だわ。カニ汁はフツーに素朴。小名浜は初めてだけど、来てよかったわ。また来なくっちゃ」

「政府も東電もひどいウソをつく。そのために福島は厳しい状況が続いているけど、こうして小名浜の海鮮料理を食べていると、人間の価値って何だ?と考えてしまうよ。長靴から、胃袋から世界を見る。肝に銘じたいよ」

「福島を他人事だと思ってる人が多いけど、福島は日本なのよね。想像力を働かせればすぐわかることなのに」

「確かに。見たくないものはないことにしてしまおう。一国の首相ともあろうものの言葉のあまりの軽さ。そして、気づいたら誰もいなくなってしまった・・・なんてね」

「状況はコントロールなどされてはいない」
「パンツだってコントロールなどできやしない・・・」
何かを思い出すように、村長は清志郎の「サマータイムブルース」を口ずさむのだった。歌もコントロールできない。

本日の大金言。

海は誰のものでもない。ましてやそれを汚すことなど論外だと思う。未だ誰も裁かれていない不思議。



                        小名浜漁港① 




「会津そばの最高峰店」で会津三昧

 久しぶりに足軽だった祖先が眠る会津若松へ。今回は母の三回忌。法事を一通り終えてから、夕闇に紛れて東山方面へポンコツ車を飛ばした。目的は会津でも指折りのそば屋「徳一(とくいち)」。以前から気になっていたそば屋だが、行列ができるほどの超人気店ということもあり、へそ曲がりの村長は避けてきた経緯がある。なんだべ?

会津には「桐屋」というそば界の横綱がいる。この系列のそば屋も2店ほどあり、村長は一度食べたことがあるが、美味さ以上に値段も高いことが印象に残っている。「徳一」はどうか? 会津が生んだ歴史的な高僧・徳一(とくいつ)と同じ名前を付けるくらいだから、相当のレベルのそば屋なのは間違いない・・・はずだ。
           徳一② 
           行列店「徳一」

一軒家の料理屋のような店構えで、白いノレンと左手の打ち場の灯りが情緒を感じさせる。なぜか、おととし終了したNHK大河ドラマ「八重の桜」のちょうちんが下がっている。これはいかん。過去を引きずりすぎではないか?

店内は囲炉裏のテーブルがあり、大広間がいくつか区切られていて、悪くない雰囲気。左手が板場。ウマズイめんくい村の怪しい一行は奥のテーブル席に案内された。おばさん店員の会津弁の応対はいい。
           徳一1 
           いつも満席
           徳一① 
           会津の凝縮?

メニューの中から「会津の天ざる」(1500円)を選んだ。高遠そばと会津の天ぷら(にしん、まんじゅう、一夜干しするめ、山菜)、それに会津では欠かせない「にしんの山椒漬け」も付いている。会津の味を楽しめる構成。商売上手で、観光客の人気になっているのもわかる。むろん、地酒「会津娘 純米酒」(750円)を頼むことも忘れない。
           徳一2 
           酒器とサービスの肴

「これはサービスです」と置いていった「こごみのごま味噌和え」などを突きながら、待っていると、御膳に乗った「会津の天ざる」ひと通りがやってきた。待ち時間は15分ほど。

もりそばは大盛りかと思うほど盛りがいい。見事な色味とエッジの立った打ち方。会津産の玄そばを石臼で挽いた二八そばで、「徳一」の名を冠するだけのことはある。コシと風味がこの時期でもさほど衰えていない。高いレベルのそば。
           徳一③ 
           ゆるりと食え
           徳一⑥ 
           会津そば  
           徳一⑦ 
           コシと風味
           徳一④ 
           会津の天ぷら群

「やっぱりいいおそばね。天ぷらも旨い。コロモが多めだけど、カリカリ感がいい。するめの天ぷらとまんじゅうの天ぷらは会津ならでは。最初は気持ち悪かったけど、食べてみると旨い。まんじゅうの天ぷらなんか、中のこしあんが甘さが控えめで、醤油に付けて食べても旨いわ」

「全体のレベルが高い。細かいところにこだわりが見えるのもわかる。だけど、そばつゆに最初から大根おろしを入れているのは残念だな。まずはそばつゆの風味を味わってから、自分の意志で大根おろしを入れるようにした方がいいと思うよ。高遠そばは本来は辛み大根だけ。ここだけは考えてほしいよ。他がいいだけに何とも残念」
           徳一⑧ 
           旬のこごみ
           徳一10 
           まんじゅう美味

「それと『徳一』の店名の由来も予想外だったわね。高僧の徳一から取ったんじゃなくて、おじいちゃんの名前から取ったとはね」
「それは愛嬌(あいきょう)としても、この店の店主も元々は『桐屋』で修業したらしいね。おばさん店員がそう教えてくれた。会津そばは桐屋なんだな」
キリのある話とキリのない話が、会津の夜空の下、明け方まで続くようだった。

本日の大金言。

会津はそばの産地としてもそば好きには知られている。喜多方ラーメン、ソースかつ丼、カレー焼きそばよりも会津そばの歴史は古い。



                      徳一11 

道の駅の「いちご大福」さま

 エンターテインメント新聞社時代の友人夫妻と「さいたまの胃袋」大宮市場を堪能した後、ウマズイめんくい村に帰る途中、ふと「道の駅 いちごの里よしみ」に立ち寄ることにした。吉見町は旧中山道を鴻巣で東松山方面へと抜ける街道沿いにある。ここはいちごの里としても有名で、約80軒ものいちご栽培農家がある。目的はむろん今が旬の「いちご大福」!
           いちごの里1 
           いちご大福や~い

大宮市場で朝からビールを楽しんだためにポンコツ車の運転は村民2号。「道の駅 いちごの里よしみ」に入る。すでに時刻は午後4時半。あと30分で店仕舞い。物産館に飛び込むと、すでに「完売いたしました」の無情な表示。涙のいちご一会。仕方なく、トボトボと「農産物直売所」へ。だが、人生、一寸先に何があるかわからない・・・ここで、もう一つの「いちご大福」を見つけた。
           いちごの里12 
           何ということだ!

残りわずか5パック! しかも時間が時間なためか、「50円引き」の表示。その「いちご大福」(3個入り380円)を大急ぎでゲット。実質330円ナリ。製造者は「Berry 吉橋洋子」と書いてあった。賞味期限はたった一日。近くのパン工房でコーヒーを飲みながら、いちご大福を賞味することにした。
           いちごの里① 
           トボトボと直売所へ
           いちごの里② 
           拾う神あり

「パン工房」に来ていた地元のおばはんと会話する。
「へえー、珍しい。残ってましたか。そっちの方が人気で、いつも売り切れていますよ」
期待がふくらむ。

いちご大福は大きめで、見るからに柔らかそうな餅の中からいちごの赤とあんこの小豆色がうっすらと透けている。表面の澱粉がいい具合である。二つに割ると、鮮やかな大粒ないちごとつぶしあんが現れた。見ただけで鮮度の良さがわかった。
           いちごの里④ 
           楽しい時間
           いちごの里⑥ 
           柔らかな感触

餅は地場のもち米だそうで、搗(つ)きたてのように柔らかい。いちごはとちおとめ。ガブリと行くと、いちごのジューシーさが際立っていた。甘さと酸味がきれい。つぶしあんは控えめな甘さで、柔らかな餅とともにいちごの魅力を存分に引き立てている。美味。
           いちごの里⑦ 
           ときめく
           いちごの里⑧ 
           いちご一会
           いちごの里10 
           絶妙なバランス

豆大福好きの村長は基本的には「いちご大福」は邪道だと思う。一般に値段が高いのも悲しい。例えば、「元祖いちご大福」を名乗る東京・曙橋の「いちご豆大福」は1個235円である。板橋・西台の「いちご大福」は173円(いずれも税込み)。昭和60年前後に彗星のように現れて、いまでは「いちご大福」は和菓子界にしっかりと定位置を確保している。例えはヘンかもしれないが、生菓子界のマツコ・デラックスみたいな存在。
          いちごの里⑨ 
          隠れた逸品

「こんなに美味いいちご大福がここだけでしか買えないとは・・・シメシメだよ」
「ホントに美味いものって意外に隠れたところにあるかもね」
「情報が氾濫しているけど、こういう出会いはうれしいね」
「珍しく意見一致ね。美味いものの宝物探しも悪くはないわ」
しばし「いちごの平和」を噛みしめる。あの「いちご白書」はいずこへ?

本日の大金言。

捨てる神あれば拾う神あり。情報に惑わされない法。いちごに聞いてみること。


                       いちごの里11 






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「焼きそら豆」と「いぶりがっこ」の夜

 東京・赤羽はディープな居酒屋の街でもある。約2年前、台風並みの低気圧が押し寄せるなか、一時帰国した北欧先生、渓流斎さんら7~8人で有名な「まるます家」で楽しい宴を張ったが、今回はメンバーの一人がすでに居酒屋を予約していた。「大勝軒まるいち」でいささか食べ過ぎてしまったので、腹減らしに「赤羽一番街」を歩き回ることにした。
           まるます家① 
           人気の「まるます家」

夕暮れが忍び寄るなか、「まるます家」、超人気の立ち飲みおでん屋「健ちゃんおでん」・・・夕方4時過ぎだというのに行列が絶えない。GWのためか昼酒を楽しんでいる。意外に若い女性が多い。居酒屋は今やフツーにトレンドになり、オヤジだけのものではなくなった。手放しで喜んでいいのか、わからない。オヤジの居場所がなくなる?
           健ちゃんおでん② 
           行列の「健ちゃんおでん」

時間になったので、待ち合わせ場所の北口改札口へ。エンターテインメント新聞社に入る前に少しだけいた広告制作会社の旧友たちと合流。その一人が予約していた店へ。「まるます家」の先の小ぎれいな居酒屋。「味わい厨房 菜菜や(さいさいや)」という今どきの居酒屋だった。ディープ好きの村長にとってはちょっとだけ残念。
           菜菜や① 
           今どきの「菜菜や」

そこで食べた中で、気に入ったのが「焼きそら豆」(480円)と「いぶりがっこ」(400円)だった。親会社が秋田市にあり、「比内地鶏」や魚介類が売りの店。生ビールで乾杯し、例によって昔話に花が咲く。深刻な病気になった友人、人気作家になったCMディレクターの話など、とりとめのない話が延々続く。
           菜菜や② 
           どれにすんべか?

生ビールから「黒龍 純米吟醸」(1合680円)に移る。比内地鶏の串焼き(1本190円)もそれなりに旨かったが、「焼きそら豆」の甘みがやや辛口の地酒によく合った。茹でそら豆もいいが、サヤごと炭火で焼いたそら豆もいい。ちょうど今が旬ということもある。
           菜菜や10 
           黒龍純米吟醸
           菜菜や⑥ 
            ささみわさび串焼き
           菜菜や④ 
           焼きそら豆
           菜菜や⑧ 
           いぶりがっこ

最も気に入ったのが「いぶりがっこ」で、秋田から直送されたもの。「いぶりがっこ」は秋田南部の漬け物(秋田の方言でがっこ)。干した大根を楢の木などで燻(いぶ)してから米ぬかに漬けたもの。雪国の知恵の結晶でもあるが、燻した煙の匂いと穏やかな甘みが絶妙。これがまた黒龍純米吟醸によく合う。天井がぐるぐる回り始める。慌てて水を頼む。

外に出るとすっかり暗くなっていた。忌野清志郎の「サン・トワ・マミー」が頭の中を回っている。小ぎれいでそれなりに旨い居酒屋も悪くはない。だが、と村長は思う。赤羽はやはり路地裏のディープな居酒屋がええなあ。EU職員さんを誘って、日を改めて立ち飲みおでん屋に来ようと思うのだった。

本日の大金言

赤羽は「住んだらよかった東京の街ランキング」で中野、吉祥寺に次いで第3位だそう。「住みたい町」ではベスト10外。そのあたりの落差がクールである。











                  菜菜や12 


山岸一雄直系?重量級つけ麺

 久しぶりに東京・赤羽でコピーライター時代の旧友と小宴会へ。腹が減っては戰が出来ぬ。開始のゴングまで少々時間があったので、ラーメンでも食べようかと思った。東口に出て、「自家製麵 伊藤」にしようか、それとも「夏海」にしようか・・・ブラブラ散策していると、「大勝軒 まるいち」の看板と大きな赤ちょうちんが視界に入った。大勝軒!
           大勝軒① 
           山岸一雄「最後の弟子」

カリスマ山岸一雄が亡くなったのは先月4月1日。弟子の数100人とも言われ、暖簾分けした「大勝軒」の数は直系の東池袋大勝軒系列だけでも63店(大勝軒のれん会含む)もある。さらに独立して、「大勝軒」を冠にした店の数となると、把握するのが困難になるほど全国に広がっている。「山岸一雄製麺所」なるものまである。

「大勝軒 まるいち」は、2007年に閉店した山岸一雄の伝説の店「東池袋大勝軒」最後の弟子を名乗る田中永一が始めた店。8年ほど前に赤羽でスタートし、店を広げ、新宿や大宮などに4軒ほどある。村長は、山岸一雄を忍びながら、ここの暖簾をくぐることにした。
           大勝軒② 
         「もりそば」ではなく「つけ麺」

「もりそば」はないかとメニューを探したが、その文字はない。「つけ麺」(750円)の表記。左右に黒いカウンター席だけのシンプルな店内。左奥が厨房になっていて、そこから「ありがとうございました!」という声が聞こえてきた。二人の男性とテキパキとした太めおばさんスタッフ。いい感じで、山岸一雄の精神が生きているよう。ふと見ると、山岸一雄の直筆の扁額が飾ってあった。うむ。
           大勝軒③ 
           カリスマの直筆

「もりそば」ではなく「つけ麺」としたのは、いろいろ事情があるのだろう。券売機で山岸一雄直伝の「つけ麺」(750円)を買い求めた。トッピングで「煮たまご」(100円)も。麺は自家製とのこと。長めの待ち時間。ていねいに作っているのが感じられ、嫌な感じはない。15分ほどで、「つけ麺」がやってきた。太めのおばさんスタッフの動きと対応がアスリートのように軽い。うむむ。
           大勝軒④ 
           つけ麺(並盛り)

白い大きなドンブリに盛られた極太麵は、東池袋店のものよりも濃い茶褐色ががっていた。熱盛りにすることもできるが、暑かったので冷や盛りを頼んでいた。麺はモチモチ感にあふれ、噛むと小麦と卵の香りが漂った。その量が並盛りなのに半端ではない。おばさんスタッフに聞くと、「350グラムです。茹であがると、600グラム以上あると思います」というお返事。うむむむ。
           大勝軒2 
           自家製麵
           大勝軒⑦ 
           つけ汁

つけ汁は角切りにしたチャーシュー(たぶん肩ロース)が4~5本とメンマ、ナルトが沈んでいて、刻みネギが浮いていた。弾力のある自家製麵をくぐらせる。酸味とほどよい甘み。豚骨、鶏ガラをベースに煮干し、鯖節などをじっくり煮込んで出汁をとった醤油スープで、東池袋店よりもかなり濃い。深みのある味わい。かすかにニンニクの匂いもした。今どきの濃厚さは進化系大勝軒とも言え、これが予想よりも旨い。
           大勝軒⑥ 
           量が半端ではない
           大勝軒⑧ 
           つけ汁の具
           大勝軒⑨ 
           進化した?煮たまご

煮たまごは見事な半熟で、しっかり味が付いている。こちらもやや濃いめ。オリジナル大勝軒はしっかり火が通っているので、こちらも今どきの味わい。チャーシューの切り方も変えている。悪くはない。

食べても食べても底が見えない。汗。山岸一雄を忍びながら、しっかり食べ終えると、腹まわりが確実に5センチは広がった。ドンブリの底をじっと見る。戦後のヒトコマが見える気がした。

ところで、あの晩年の自己肥大化は何だったんだろう? あちこちにあの白いタオルを頭に巻いた写真が増殖していった。本人はそれを本当によしとしていたのか、今となってはわからない。

本日の大金言。

カリスマはどの業界にもいるが、ラーメン界においては山岸一雄ほどの偶像は後にも先にも出てこないだろう。昭和は遠くなりにけり。

                       大勝軒10

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藤まつり後の隠れそば屋

 GWも後半に入った。前半は予想外の出来事が頻発して、ポンコツ車を美味いもの探し以外に走らせるGW(ゲンナリウィーク)となったが、村民2号がちびまる子ちゃんのような表情で「玉敷神社の藤がきれいだから、気分転換に行ってみない?」と村長の耳元で囁いた。

利根川沿いに住む孤高のアーティストを誘って、埼玉・加須市騎西町にある玉敷神社へ。ここには推定樹齢400年以上の藤棚がある。
           騎西藤祭り① 
           玉敷神社の藤

首都圏には東京・亀戸天神の藤祭りや春日部の「牛島の藤」、さらには「あしかがフラワーパーク」など有名スポットがあるが、玉敷神社はディープな穴場である。周辺には福島・双葉町から転居した人も多く住んでいて、村長の好きな町でもある。原発事故は足元で脈々と続いている。五月晴れ富士より低き藤の影

その後、加須市内の住宅街の隠れそば屋に行くことにした。そば好きの知人から「土日しかやっていないそば屋」として情報を収集していたからである。久下(くげ)公園のすぐ近く、たどり着くまでかなり時間がかかった。何せ住宅街の中で、ひっそりと営業しているため、ここを知っている人は少ない。
           石蕎亭④ 
           隠れ家そば屋

「石蕎庵(いしきょうあん)」と書かれた木の看板と新しい平屋の建物。知人によると、店主は脱サラ組で、そば好きが高じて15年のそば修行の後に昨年店開きしたそう。そば道場4段の腕前で、そばソムリエの資格も持っているらしい。午後2時近くに到着。テーブルが三つ(4人用、2人用)と小上がり。すぐ左が打ち場と厨房になっていて、石臼挽きの器械が見えた。
           石蕎亭① 
           ようやくめっけ

商売をしているというよりも好きでそば屋を始めたような気配。メニューから「二八そば」(700円)と「天ぷら盛り合わせ」(5品500円)を頼んだ。すると、店主が「今日は海老がないので、250円でいいですよ」とあまりにのどかな反応が返ってきた。うむ。
           石蕎亭② 
      そば好きにはたまらないメニュー

「挽きたて、打ちたて、茹でたて」がモットーで、そのため、待ち時間が15~6分ほどかかった。その間、地酒の樽酒を一本だけ頼んだ。そばには地酒がよく似合う。大根のみそ漬けでのどを潤す。天ぷら、そばの順でやってきた。
           石蕎亭5 
           黄金のまどろみ?
           石蕎亭⑤  
           二八そば

本日のそばは北海道産と常陸秋そばを丸抜きで仕入れ、石臼で挽いたもの。ややグレーがかった細打ちそばで、新そばのような香りと風味が口中に広がる。そばの美味さがよくわかる二番粉を使っているそう。コシとのど越しともに上質。感心したのはそばツユ。甘からず辛からず。ダシのよく効いたふくよかな旨味で、そばによく絡む。
           石蕎亭⑥ 
           風味が立つ  
           石蕎庵2 
           四段の腕前
           石蕎亭1 
           そばツユのこだわり
           石蕎亭3 
           山芋の天ぷら

「そばがとても美味いわ。天ぷらもさつまいもとカボチャ、それに山芋が私の好み。きれいに揚がっている。店主のこだわりがよくわかるわ。土日しかやっていないというのが残念」
「ここはせっかちな人には合わないかもな。じっくりと待って、ゆったりした気分で食べる。ここんとこ妙に忙しかったけど、これで疲れが取れそうだ」
孤高のアーチストはただ黙々とそばを食べていた。その目線はどこか遠くを見ているようだった。

本日の大金言。

GWとはよく付けたものだ。あまり関係ないが、ビートルズの「ゴールデンスランバー」の詩の一節。かつてそこには故郷へと続く道があった。かつてそこには家へと続く道があった・・・。



                       石蕎庵 

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プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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