謎多き立食い「ラー油入り肉そば」

 「銀座に面白い立ち食いそばがある。凄い人気らしい。村長が行けば、きっとビックリする。ひょっとして知ってるかもしれないけど」
少し前、面白がりの友人がわざわざ電話してきた。

「ああ知ってるよ。『俺のイタリアン』とか『俺の焼肉』とか経営してる店でしょ? 話題作りの上手い店はあまり信用しないことにしてる。ま、そのうち行ってみるよ」
そんな会話があり、一応頭の中のメモリーに入れておいた。メモリーは壊れかかっている。
              俺のだし① 
              そば俺のだし

銀座で飲み会があり、そのついでに立ち寄ってみることにした。数寄屋橋ビルの地下にその店「そば俺のだし GINZA5」があった。ちょっと前までは「俺のそば」という店名だったのが、なぜか「そば俺のだし」に微妙に変わっていた。うむ。

店構えは開放的で立ち食いそば屋というより、モダンな和風バル(居酒屋)のようで、銀座のサラリーマンやOLに人気なのもすぐ理解できた。地酒やワインまで揃っている。「いきなり!ステーキ」などと同じ匂い。ランチはもとより、仕事帰りにちょっと立ち寄りたくなる雰囲気。BGMはお決まりのモダンジャズ。女性スタッフの対応がとてもいい。
              俺のだし 
              和風バルか?

一番人気だという「俺の肉そば(冷)」(700円)を選んだ。店がオープンしたのは去年の4月11日。何か3.11と関係あるのか? 調べてみたら、道場六三郎の愛弟子がスカウトされて、この店のメニュー作りにかかわったらしい。3.11とはどうやら関係はないようだ。
              俺のだし② 
              メニューの魅力

立ち食いスペースは80人ほど入るスペース、奥が厨房になっている。そこで「俺の肉そば(冷)」を受け取る。男性スタッフが4人、女性スタッフが1人ほど。テキパキと働いていた。

お盆に乗った冷たい肉そばを見てその姿に驚いた。刻み海苔が山のように盛られ、その下には白ゴマが雪のように広がっていた。箸で海苔の下をかき分けると、新鮮な白ネギの層が現れた。さらにその下に、黒々とした田舎そばが「おばんです」と現れてきた。至るところに薄切りの豚肉が岩のように佇んでいた。驚くべきはそのボリューム。普通盛りなのに1.5倍は優にありそう。
              俺のだし③ 
              俺の肉そば(冷)
              俺のだし④ 
              圧倒と驚き
              俺のだし3 
              階級社会?

つけ汁に付けて食べる。ラー油がドカと入っていた。つけ汁自体がかなり濃いのに、そこにラー油の辛さが押し寄せてくる。そばは器械打ちで、コシがかなり強い。そば粉は国産だろうか? 風味もそこそあり歯ごたえも悪くない。それは村長の好みだが、つけ汁は醤油の存在が濃過ぎて、出汁の奥ゆかしい姿が感じられない。うむ。
              俺のだし⑦ 
              そばのコシ
              俺のだし5 
          ラー油の風味がたまらない

ラー油に驚かされたが、しだいにそれが思ったほどの辛さにはならない。寸止めの辛さ。これは確信犯的なプロの味だと確信した。豚肉の質はそれほどではないが、薄切りなのでいいアクセントになっている。どんどん箸が進む。食べ進むうちにこの強烈なビジュアルと味はどこかで味わったことがあることを思い出した。
               俺のだし4 
               薄切りの豚肉

2年ほど前に賞味した虎ノ門近くの「そば処 港屋」とそっくりではないか? 濃い味、ラー油入り、海苔と白ゴマ、コシの強い田舎そば・・・ひょっとして兄弟店なのか? 「港屋」は2002年にオープン、そのスタイルは立ち食い業界に衝撃を与えた。今も人気の行列店である。

ウマズイめんくい村に帰ってもそのことが気になった。気になると眠れない性質なので、翌日思い切って、電話で聞いてみることにした。

「あのう大変旨かったのですけど、虎ノ門の『そば処 港屋』とは関係あるのですか?」
「はっ? 何か」
「よく似てたものですから、関連会社かなと思って」
「まったく関係ありませんよ」
「たまたま似てたってことですかねえ」
「ウチはウチですよ」

世界には自分とそっくりな人が3人いる、と言われるので、たまたま似ていても不思議はない。これがラーメンだと考えれば不思議はない。村長は「結局は旨ければいいんだな。港屋はそばオンリーでバルでもないし、居酒屋でもない。形態も違うしな」と思い直した。激烈な外食戦線。だが、どこか割り切れないものがかすかに残るのだった。元祖?「そば処 港屋」にも電話して聞いてみようと思ったが、バカバカしくなって指を止めた。

本日の大金言。

似せることは悪いことではない。物マネからオリジナルが生まれることだってある。もしそこに職人がいれば、という前提付きだが。




                            俺のだし10 















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女性群がる「歴史の街のイタリアン」

 茨城県・古河市は首都圏からそう遠くはない。万葉集にも詠まれた歴史の古い街で、室町から戦国時代にかけては古河公方が支配し、江戸時代は日光街道・古河宿として栄えた。その名残りは至るところに点在している。村長の好きな街でもある。何よりも観光客がそれほど多くないのがいい。
              唐草4  
              古河文学館と美味

石畳と緑がきれいな一帯があり、そこに大正ロマンの香りが漂う「古河文学館」がある。1階はイギリス製の古い蓄音機があり、折に触れて、「SPレコード鑑賞会」なども行っている。鎌倉や足利よりもディープな、穴場とも言える。今回はここの2階にある「イタリアンレストラン 唐草」を取り上げようと思う。古河観光協会直営のレストランで、創業は平成10年11月。
              唐草 
              現役のイギリス製蓄音機
              唐草2 
              超人気レストラン

「予約を取らないと入れない」という超人気のレストランでもある。シバの女王が労を取ってくれて、食べることに人生の半分をかけている怪しい6人衆が集合した。恐るべきグルメ・ドン圭氏、そば名人・イシカワ仙人、クッタカ姫、猫おばさん・・・。ワイワイガヤガヤ、まるでヨーロッパの高級ロッジのような広い店内へと入る。高い木組みの天井、巨大なストーブ、右手には厨房があり、そこでシェフが3人、忙しそうに料理に励んでいた。ジャズが軽やかに流れている。
              唐草① 
              山荘風の造り

見渡すと、お客はほとんど女性。これは期待できる。正午前だというのに、完全満席。奥の長いテーブル席に腰を下ろして、「ランチセット」(サラダ、魚・肉料理、パン・ライス、フリードリンク=税込み1078円)を選んだ。メーンの魚・肉料理は14種類あり、その中から「三元豚(カナダ産)のポワレ洋わさびのソース」を選んだ。パンではなくライス。この辺りはいいコメの産地でもある。
              唐草② 
              ランチメニュー
              唐草③ 
              どれにしようか?

他の5人はドルチェ9種盛り(スイーツ)の入った「唐草ランチ」を頼んだ。238円ほど高いが、これはお得。村長は胃袋に爆弾を抱えているので、今回は泣く泣くスイーツは断念。「あら、村長、私のを少しあげるわよ」というありがたい声も。

12~3分ほど待って、まずサラダが登場。サラダはごく平均的。フリードリンクなので、コンソメスープとアセロラジュース、それにコーヒーまで欲張る。それらを楽しみながら、さらに7~8分ほど待つと、白い角皿に盛られたメーンの「三元豚のポワレ洋わさびのソース」がやってきた。ライスの盛りはほどよい。
              唐草④ 
              サラダが登場
              唐草⑤ 
              三元豚のポワレ洋わさびのソース

中央にはカナダ産三元豚のポワレ(蒸し焼き)が乗り、その下には水菜とタマネギが敷かれている。ナスが2切れ、ニンジン1切れ、それにジャガイモが二つ。絵になるレイアウトだが、メーンの三元豚のポワレがそれほど大きくはない。ほどほどの厚さと大きさ。その上にどんと盛られた洋わさび。ソースがいい匂いを放っている。
              唐草⑥ 
              当たりかハズレか

まずは三元豚をひと口。カナダ産なので、身が締まっている。脂身はほどほど。国産のブランド豚のような柔らかな肉汁感ではなく、むしろすっきりした味。ソースがやや甘すぎる。そこは好みの別れるところ。村長はソースの甘さは抑えて、豚も茨城、埼玉、栃木、群馬などの銘柄豚を使った方がいいと思う。三元豚ではなく四県豚。秘密のケンミンショーでもこの噂の4県の絆が問われているので、その意味でもそのあたりを検討してみてはいかがか。
              唐草⑧  
              カナダ産三元豚
              唐草10 
              地場の野菜
              唐草12 
              ライスは?

ジャガイモ、ナス、ニンジンは多分地場産なのだろう、美味。ライスはやや期待外れ。すぐ近く北川辺産のコシヒカリをお勧めしたい。料理は全体としてまずまずの旨さ。それ以上に感動するのは室内の造りと、フリードリンクの豊富さ。美味いものと雰囲気に生まれつきセンサーが付いている女性という名のグルメが群がるのもわかる。

ドン圭氏とそば名人・イシカワ仙人は黙々と食べていた。「ここ、気に入ったわ。ホント、美味い」クッタカ姫が満足そうに箸を置いた。猫おばさんが「猫に愛の手を」としゃべっている。シバの女王が明るく笑っている。いい時間が流れる。村長は猫になりたい。

本日の大金言。

たまには小旅行してみよう。そこにはややこしい日常を離れた世界がある。風呂に入るように、小旅行を楽しむ。自分の足で美味い店を探す。話しはそれからだ。





                          唐草11 







浅草「亀十」どら焼きの謎

 秘密会合に出席するために東京・浅草へ。開始時間までに時間があったので、夕暮れ時のそぞろ歩きを楽しむことにした。相変わらず青い目黒い目の外人観光客にあふれている。人力車の呼び込みも相変わらず。生き馬の目を抜く浅草、ここに来るとなぜか落ち着く。頭の中には小豆菓子。

ダメもとで雷門の通りを挟んで対面斜めに位置する「御菓子司 亀十」をのぞいてみた。これまで何度も名物「どら焼き」を買おうとしたが、いつも「売り切れです」。一日3000個しか作らず、それが朝から行列で、午後2時くらいには売り切れてしまう。1個325円(税込み)もするのに、ある意味で異常な人気が長年続いている。上映中の映画「あん」の余韻がまだ頭の中に残っている。
              亀十① 
              いつも行列の謎

村長は「日本橋うさぎや」のどら焼きが東の横綱だと思うが、「いやいや亀十がナンバーワンだ」というスイーツ好きの仲間も多い。日本橋うさぎやのどら焼きは210円。亀十のどら焼き人気は村長にとっては謎だった。正直に言うと、浅草という観光地ゆえのお上りさんミーハー人気だと思っていた。村長だってお上りさんだが。
              亀十1 
              中も順番待ち
              亀十② 
              1個325円ナリ

驚いたことに夕方4時半だというのに、「ありますよ」というお返事。売れなくなったのかと一瞬思った。行列は相変わらず。不思議だ。残り1個という奇跡。これは神様のイタズラか? すぐにゲット。ウマズイめんくい村に持ち帰り、翌日、二日酔いのクラクラ頭のまま、賞味することにした。
              亀十① 
              これは奇跡か?
              亀十② 
              デカい
              亀十③ 
              亀さん亀さん

渋茶を入れてから、目の前の亀十のどら焼きとにらめっこ。亀十は創業が大正末期で、浅草が最も活気があった頃。多分駄菓子屋の延長線上だったのではないか。その容姿がフツーのどら焼きとは違う。サイズがあのうさぎやよりもひと回り大きい。測ってみたら、110ミリ×120ミリ×30ミリ。およそきれいに仕上げようという職人の気配がない。焼きむらをむしろ前面に打ち出した手作り感。お前は一体どういう了見で、そんなひどい面をしてるんだい?
              亀十④ 
              文句ある?

セロファンを取ると、いい匂いが立ち上がってきた。皮は小麦粉と卵、それに膨張剤しか使っていない。うさぎやなどのようにハチミツを使用していない。手に取ると、しっとりしたふわふわ感が尋常ではない。二つに割ってから、ガブッと行くと、カステラ生地のような食感で、粘膜に密着してくるよう。新鮮な卵の風味。美味い。うさぎやとは違う、あまりに野暮ったい洗練。
              亀十⑤ 
              お上がり
              亀十⑥ 
              親亀の上に子亀
              亀十⑦ 
              皮の驚き

中のつぶしあんは量が少ないのに、風味が際立っていた。北海道十勝産大納言小豆を使用しているようで、その柔らかなふくよかさに感心。皮は両面焼かれていて、焼きむらが次第に「これは実は職人芸ではないか」と思われてきた。あばたもえくぼということわざもある。皮のデカさに比べてあんこの量の少なさが気にならない。絶妙なマジックとしか言いようがない。これが人気の秘密か。
              亀十11 
              あんこは多くはない

白あんもあり、それは今回はゲットできなかったが、次回は再チャレンジしてみたい。だが、1個325円というのはいくらなんでも高すぎると思う。総合力ではやはり日本橋うさぎやがナンバーワンだという思いは変わらない。むろん村長にとって、ということだが。たかがどら焼き、されどどら焼きの日々・・・。

本日の大金言。

二日酔いの朝のどら焼き。朝陽が渋茶に差し込んでくる。一体自分は何をしているのだろう? どら焼きはそんな疑問には答えようとしない。





                           亀十12 

神保町「タレかつ丼」涙の再会?

 ペンクラブの総会と懇親会に出席するために、久しぶりに神田・神保町へ。目的はもう一つある。新潟かつ丼「タレカツ」を5年ぶりに食べること。宮仕え時代、たまたま日本大学法学部近くを歩いていたら、「タレカツ」を見つけた。7年ほど前のこと。そこで食べたタレかつ丼がメチャ旨かった。当時はオープンしたてということもあり、今ほどの人気はなかった。以来、2年ほど折に触れて通った。
              タレカツ10 
              5年ぶりの再会

新潟かつ丼はラードで揚げた薄めの豚カツを甘辛だれにくぐらせ、炊き立てのコシヒカリの上に乗っけたもの。福井や駒ヶ根、桐生、会津若松などのソースかつ丼と違うのは、ソースではなく醤油ベースの甘辛タレであること。キャベツも敷いていず、直球勝負のシンプルなかつ丼。昭和初期創業の老舗洋食屋「とんかつ太郎」が元祖と言われる。
              タレカツ 
              老舗の風格が・・・  

ぎりぎりランチタイムだったので、意外にスムーズに入れた。左右にL字の一枚板のカウンター席があり、それぞれ5席と7席ほど。奥が厨房になっていて、2人の男性料理人がとんかつを揚げ、どんぶりを用意していた。とんかつ屋のいい雰囲気。村長は、「合いもり丼セット」(税込み840円)を頼んだ。以前はなかったメニュー。かつ2枚、海老1尾、それにサラダとお新香、味噌汁付き。
              タレカツ① 
              ランチタイムは得?

注文してからじっくり揚げるので、待ち時間は15分ほど。お盆に乗って、「合いもり丼セット」がやってきた。運び役の女性スタッフの対応はていねいで機敏。好感。大きなカツが2枚、それにエビフライが一つ。やぐらを組むように乗っかっていた。タルタルソースも付けてもらう。
              タレカツ② 
              これだこれだ

タレカツは和豚もち豚のもも肉を使い、パン粉はきめ細かい。醤油ベースの甘辛ダレがほどよく炊き立てのご飯にかかっていた。食欲中枢をくすぐるいい匂いとビジュアル。ご飯は以前はコシヒカリだったと思うが、新潟産の新ブランド米「こしいぶき」を使用しているそう。別れた恋人と涙の再会、そんな気分。
              タレカツ④ 
              カツ2枚と海老1尾
              タレカツ⑤ 
              タルタルソース

まずはカラリと揚げられた本命のタレカツをガブリと行く。思ったよりも肉が薄い。昔も薄かったが、さらに薄くなった気がする。肉の厚さは2~4ミリほど。ひょっとしてランチタイムだから少し薄めなのかもしれない。だが、サクサク感も甘辛ダレも昔と同じ絶妙さで、やや固めに炊かれたご飯とともに口中に運ぶと、幸せ感がじんわりと広がってきた。
              タレカツ⑥ 
              薄めのもち豚

エビフライはその下だけキャベツが敷かれていた。こちらもサクッと揚げられていて、美味。ラードで揚げているとは思えないほど、きれいな味わい。お新香もみそ汁も昔と同じいいレベル。だが、どこか波打つような感動が来ない。これはどうしたことか?
              タレカツ⑦ 
              美味の崩落
              タレカツ⑧ 
              もう一つの味わい

すべてがいいレベルで、すべてが高いレベル。タルタルソースを付けると別の味も楽しめる。タルタルソースも昔はなかったと思う。吉祥寺にも支店ができ、人気がどんどん高まっているのもめでたい。メニューが昔よりも多くなり、スマホ片手のサラリーマンや学生が押し寄せて来る。

だが、村長の心にどこか違和感が生じている。肉も柔らかいし、見た目もほとんど同じ。村長の方が変わってしまったのか、何かが微妙に変わった。ひょっとして時代の波? 93%の満足感で、店を後にした。

本日の大金言。

暖簾は一朝一夕にはできない。手を広げるのも商売。だが、同時に失うものもあるかもしれない。その加減が難しい。



                         タレカツ⑨ 



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「海街diary」後のホットごぼうサンド

 「モラージュ菖蒲」で『海街diary』を観た。是枝裕和監督の才能が隅々まで行き届いた佳作で、4姉妹とそれを取り巻く脇役陣のバランスがよく、カンヌで賞を取れなかったのが不思議なくらいの出来だった。長澤まさみが女優として成長していることにやや驚く。随分前、エンターテインメント新聞社時代に、ブルーリボン賞のプレゼンターを務めたことがあり、その時の監督賞が是枝監督で、新人賞が長澤まさみだった。そう思うと、感慨深い。
              モラージュ菖蒲映画 
             「海街diary」

映画はくすぐり部分が随所にあり、鎌倉の風景と4姉妹のからみを見ているうちに、どんどん映画の中の時間に引き込まれていく。詳しく書くと野暮になるので、一つだけ。食事のシーンが随所に出てきて、その中で「しらすトースト」が旨そうだった。

いい余韻の残る映画で、見終わった後、トーストが食べたくなり、先月オープンしたばかりの「倉式珈琲店」へ。やや高めだが、「コメダ珈琲店」や「星乃珈琲店」のような本格的なコーヒーを売りにする展開で、本店は岡山にある。「サンマルク」グループの新ブランドでもある。アメリカから日本に逆上陸した「ブルーボトルコーヒー」も本物のコーヒーを売りにしている。新しい流れかもしれない。
              倉式珈琲① 
              しらすトーストはないか?
              倉式珈琲② 
              サンドウィッチとホットサンド

「倉式珈琲店」はサイフォン式を売りにしており、トーストやサンドウィッチも充実している。「しらすトースト」を探したが、残念ながらなかった。迷った末に「ホットごぼうサンド」(ミニサラダ付 510円、税別)を選んだ。ごぼうサンドというのは珍しい。「倉敷ブレンド」(370円、税別)も頼んだ。村民2号は「玉子サンド」(同)。
              倉式珈琲③ 
              ありゃ、これは珍しい

12~3分ほどで、「ホットごぼうサンド」がやってきた。8枚切り食パンを2枚。こんがりとトーストされたホットサンドの中からゴボウとニンジン、それにマヨネーズベースのソースがどろりと流れ出そうになっていた。
              倉式珈琲2 
              主役か、脇役か?

「キンピラごぼうをマヨネーズで合えたみたいね」
と玉子サンドをかじりながら、村民2号が茶々を入れる。
              倉式珈琲3 
              サイフォン式珈琲
              倉式珈琲4 
              当たりか?

ガブリと行くとトーストの香ばしさと中のキンピラが意外と合っている。甘辛で味は濃いマヨネーズベースのソースが上手くバランスをとっている。「海街diary」ほどではないが、まずまずのバランス。ボリュームがやや物足りない。ミニサラダは平均的な味。倉式ブレンドは1・5倍の量があり、酸味と苦みのバランスは悪くない。香りがいい。
               倉式珈琲⑦ 
               キンピラとマヨネーズ
               倉式珈琲⑧ 
               ま、食べておくんなさい
               倉式珈琲⑨ 
               配役はミスマッチ?

「玉子サンドはイマイチかな。パンがパサパサしていて、つぶしたゆで卵の味付けが濃過ぎ。しらすサンドをメニューにすればいいのにね。コーヒーは美味いけど」
「メニューの中にあずきサンドがあったね。ランチにしては物足りないから、それを追加注文しようかな」

「どうぞお好きに。人間ドッグの結果次第でもう食べれなくなるかもしれないからね」
「大丈夫、死ぬまでは生きているから」
「それって、この前話していた深沢七郎の受け売りでしょ? バッカみたい」
「恐ろしいほどの名言だと思うけどなあ・・・・・・」
「深沢七郎が言えばね」
映画のいい余韻はすっかり消えていた。

本日の大金言。

人生はひまつぶし。たかが人生、されど人生。「あん」も「海街diary」も生きることの意味を深く問いかけている。いつの時代も生きることは簡単ではない。人生はしらすトースト、かもしれない。



                          倉式珈琲10 






梅雨にまさかの「かきめし大弁当」

 東京・北千住の丸井B1にある「マルイ食遊館」は村長の止まり木である。エンターテインメント新聞社時代から、時間のある時などは、ここを散策するのが楽しみだった。日本橋での用事を終え、夕暮れ時、久しぶりにここに立ち寄った。歩きすぎて踵(かかと)が痛い。ちょうど「日本美味めぐり」をやっていた。カニめしや牛めしなど全国の美味いものがいい匂いを放っていた。これだ、これだ。村長は生き返る。

一番目立つところで「かきめし」の実演販売が行われていた。「広島・呉市 倉橋産牡蠣(かき)使用」のポスターが食欲中枢をぐいと刺激した。広島・倉橋島は、日本でも有数の養殖牡蠣の産地で、殻は宮城産よりも小ぶりだが、中の身がデカくて、そのふっくらぷりぷり感は「日本一」という声もあるほど。北海道・厚岸の有名な「かきめし」も頭をよぎった。とはいえ、梅雨の時期に「かきめし」なんてありか?
              かきめし 
              かきめし、発見!

倉橋島産牡蠣を使った「かきめし」は大小2種類あり、「小」(1100円=税別)」が普通の駅弁サイズで、見事な色の煮牡蠣(かき)が5個ほど乗っかっていた。だが、その隣にある「大」(1300円、税込み1404円)に村長の目が釘付けになった。普通サイズの1.5倍はありそうな大弁当で、見事な牡蠣がどかどかと乗っかっていた。うむむ・・・生つばをごくりと飲む。
              かきめし② 
              足と目と舌が止まる

調べてみたら、この「かきめし」を作っているのは「雑草庵」という店で、広島・呉市出身のオーナーが東京・池袋で営んでいる瀬戸内海料理の店だった。マルイやデパートなどで行われる全国美味いものなどでも出店しているようだ。税込み1404円は安くはないが、「大」を買い求めることにした。

「牡蠣のシーズンは終わっているのに、かきめしとは驚いたなあ」
店の人に言うと、
「旬を瞬間冷凍した牡蠣で、鮮度は旬のままですよ。倉橋島の牡蠣は日本一ですからとにかく食べてみてください」
と自信満々の答えが返ってきた。
              かきめし③ 
              生つば、ごくり

ウマズイめんくい村に持ち帰って、たまたま手に入れた静岡の地酒「花の舞 純米無濾過生原酒」を用意した。「かきめし」のパッケージを取り、黒い厚紙の蓋をそっと開けた。見事な、グラマラスな牡蠣が7個!そのうちの2個はやや小ぶりだが、以前食べた厚岸名物の「かきめし弁当」の牡蠣よりもデカい。
              かきめし⑤ 
              むふむふの時間

よく見ると、その下の炊き込みご飯には細かいニンジンやシイタケ煮、黒こんにゃく、それに短冊切りした竹の子煮が敷いてあった。いい塩梅。他に玉子焼きが3切れ、柴漬け、水菜の漬け物、昆布の佃煮。
              かきめし⑥ 
              たまらんで~
              かきめし11 
              脇役も忘れないでね

小皿に取って、まずは牡蠣をひと口。ふっくらと煮上げられていて、甘辛具合がちょうどいい。プリっとしていて、噛むと柔らかく濃密な食感。歯と歯の間から牡蠣の肉汁がまろやかに口中に広がっていく。かすかに海の香り。炊き込みご飯は牡蠣の煮汁でコメを炊いているようで、出汁も効いていて悪くない味付け。冷やした「花の舞」をちびちびやりながら、梅雨時のかきめしを食べる。これはぜい沢の極みではないか?
              かきめし⑦ 
              おおっ、ビヨンセ?
              かきめし⑨ 
              アリシア・キーズ?
              かきめし⑧ 
              旨みの配合

「個人的には厚岸のかきめし弁当のほうが好みかな。あっちは北海道の鉄道の匂いと旅情がギュッと詰まっていた感じ。これも旨いけど、旅情がイマイチ。池袋の会社が作っているからかな」
「それはぜい沢というものよ。駅弁とこの弁当は比較できないわ。梅雨にまさかのかきめしが食べれただけでも、感謝しなきゃ。あえて言うと、炊き込みご飯が平均的で、国産米を使っているようだけど、ブランド米ではないと思う」

ウマズイめんくい村のかき入れ時はとっくに終わっているのに、季節外れのぜい沢なかきめしを賞味しながら、あーだこーだとのたまっている。外は雨と雷。それが次第に激しくなっている。国会もメディアもほとんど機能不全状態。勝海舟も後藤田正晴もいない。かきめしや踵に滲みる痛みかな

本日の大金言。

東京新聞で瀬戸内寂聴さんの車椅子姿での国会前デモ参加の記事を読む。日本はこのままだと戦争前夜に近づきつつあるようだ。冗談じゃないぜ。かきめしをしみじみと食らう。





                            かきめし12 





福島フェアで見つけた「生きんつば」

 埼玉・大宮駅の改札口から出たところに広がる中央自由通路は物産展の宝庫である。大宮という場所柄、北関東や東北の物産展が多い。たまたま「福島フェア」をやっていた。何気なく見ると、実に美味そうなきんつばが流し目を送ってきた。甘味中毒者の美味神経が反応した。「生きんつば」。ふむ、生きんつばとは珍しい。村長はそのビジュアルに惹かれた。まるで、全盛期のデミ・ムーアではないか?
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              これは何だ?(埼玉・大宮駅で)

福島・須賀川に本店がある「夢・菓子工房 かめまん」の目玉商品で、フツーのきんつばの優に2倍はある圧倒的な大きさ。ふくよかな煮小豆がびっしりと詰まっていて、村長が大好きな浅草・徳太楼のきんつばとは別世界のきんつばに見えた。洗練と野暮・・・。

調べてみたら、「夢・菓子工房 かめまん」は創業が大正8年(1919年)で、もともとは駄菓子屋から始まり、和菓子屋「亀饅」となり、やがて洋菓子も作るようになり、店名もひらがなに変えたことがわかった。
              かめまん② 
              生きんつばとは珍しい

見事な「生きんつば」(税込み1個250円)が並べられていた。それを3個買い求め、ついでに「豆大福」(1個200円)も2個買い求めた。その夜、ウマズイめんくい村に帰ってから、賞味タイムとなった。渋茶を入れて、生きんつばを包んでいる透明なラップを解く。デミ・ムーアが現れた。村長の胸が高鳴る。

              かめまん③ 
              お成り~
              かめまん⑤ 
              この瞬間がたまらない

口中に入れた途端、北海道十勝産小豆の風味が広がった。蒸し菓子のようなもっちりした食感で、小麦粉と米粉が少し入っているようだ。甘さは抑え気味で、小豆の柔らかな粒つぶ感がたまらない。大納言小豆とつぶしあん。小豆の量が半端ではない普通、きんつばは小豆を寒天で固めたものを小麦粉で包んで焼くが、このきんつばは皮をつけずに焼く作業もしていない。それで、生きんつばと命名したようだ。
              かめまん⑥ 
              ナイスバディ?   
              かめまん⑦ 
              横から失礼します

食べながら、約2年前に秋田の十文字道の駅で食べた「あずきでっち」を思い出した。この地方に古くから伝わるういろうのような生菓子で、小豆ともち米を一緒に煮て、砂糖を加え、手でこねたもの。京都府や滋賀県、福井県にも「でっち羊羹」という同じようなものがある。
              かめまん⑧ 
              北海道十勝産
              かめまん⑨ 
              素朴な風味

気になって、須賀川の本店に電話取材してみた。すると4代目が出てきて、ていねいに教えてくれた。
「あずきでっちは知りませんでした。生きんつばはまったくのオリジナルで、16年ほど前に作り、今ではウチの主力商品の一つになっています。首都圏の物産展に出すと、珍しさもあって、すごく売れます。一種の蒸し菓子ですが、すべて手づくりなんです」

豆大福は小ぶりで、それなりの美味さだったが、特別なものは感じなかった。それ故に「生きんつば」の圧倒的な存在感が際立つ。翌日、「ツタヤ」に行って、デミ・ムーアの「素顔のままで」を借りてくることにした。

本日の大金言。

福島の苦難は続いている。そこに目を向けずに、一日を過ごすことができれば幸せかもしれない。だが、その幸せにはどこか苦味が付きまとう。我が身もまた。ゆでガエルの法則は恐ろしい。気づかないということの恐ろしさ。それを知っている権力者。



                         かめまん13 

あり得ない?「うどん屋のハンバーグ」

 「最近、ダサイタマの大宮をよく取り上げてますが、せめて紅亭ともう一つ、武州うどんあかねは行ってほしいですね。表のエースと裏のエースを忘れてもらっては困ります。もう少し勉強してください、ほほっほ」

奇妙なメールが入った。多分知人のイタズラだろう。この手のメールは時々ある。無視してもいいが、老舗洋食屋「紅亭」はブログでは紹介していないが、何度か食べている。だが、「武州うどん あかね」は行ったことがない。調べてみると、大宮では知る人ぞ知るうどん屋で、テレビやメディアにも取り上げられている店だった。
              あかね 
              行列の店

うどん屋なのにハンバーグが人気で、店主がうどん、息子がハンバーグを作り、それが結構旨いらしい。店名も正式には「武州うどん あかね&みどりダイニング」。どうせ今どきの店だろうな、とあまり期待せずに大宮駅西口にある「グルメプラザ」に向かった。その一階に「武州うどん あかね」はあった。
              あかね① 
              派手な入り口だが・・・

ちょうどランチタイム。まるで居酒屋のような派手な店構え。ラジオから流れる演歌の音が大きい。若いサラリーマンが5~6人ほど並んでいた。嫌な予感。5分も待たずに元気のいいおばさんスタッフに「どうぞ」と呼ばれた。あまりの雑然具合に頭がクラクラしてきた。左手はテーブル席と奥が小上がり座敷席、右手にもテーブル席があり、その奥が厨房になっていた。煙がうっすらと漂っている。30人以上は入れそうだ。
              あかね②
              昭和の雑然
              あかね③ 
              メニューどす

昭和の居酒屋の気配。客がひっきりなしに押し寄せてくる。右手のテーブル席に案内され、「うどん屋さんのハンバーグセット」(820円)を頼むことにした。これが一番人気とか。ハンバーグは9種類ほどあり、その中から「和風」を選んだ。うどんは冷と温があり、「冷たい方」を選んだ。ドリンクまで付いていて、ウーロン茶を頼んだ。
              あかね1 
              うどん屋さんのハンバーグセット

13~4分ほどで、ジュウジュウという音と盛大な湯気を立てて、人気のセットがやってきた。鉄板の上に乗ったハンバーグはかなりデカい。上にどっかと大根おろしが乗っかっている。もやしとニラ炒めが多めに添えられている。本格的な和風ハンバーグ! それにドンブリメシと冷たいかけうどん。それに浅漬けのおしんこ。
              あかね⑤ 
              本格的和風ハンバーグ
              あかね⑥ 
              じゅわり肉汁
              あかね⑦ 
              柔らかな旨味

和風ハンバーグは期待を超える旨さだった。豚と牛の合挽き、それに豆腐を加えて手ごねしているそうで、口に入れた途端、ふっくらとした肉汁と柔らかな旨味が広がった。和牛も入っているそうだが、むしろ豚肉の存在感が強い。隠し味がうどんのかつお出汁で、その旨味が効いている。大根おろしのポン酢がほどよく、旨味に奥行きを与えていた。うむ、とつぶやきたくなる味わい。
              あかね2 
              こちらも本格的手打ち
              あかね3 
              関西風のツユ

うどん屋でかようなハンバーグを食べれるとは、驚きである。うどんも本格的な手打ちうどんで、加須うどんのようなほどよいコシと風味。何よりも荒削りの鰹節から取った出汁がいいい。武州というよりも関西風の薄味で、こちらも本格的なものだった。旨みと余韻がきれい。ご飯まできれいに食べると、満足感が広がった。親子の味な競演。これで820円という価格設定にも店の志しを感じる。

派手な入り口やあざとさと紙一重の宣伝で、実力はイマイチだろうという思い込みが見事に裏切られた格好。今回だけはいたずらメールに完全敗北。たまにはこういうダマされ方もいいもんだ。

本日の大金言。

うどんとハンバーグを敵対ではなく親子で協力しつつ棲み分けする。これぞ理想の集団的自衛権ではないか? 永田町にもぜひ出店してほしい。





                          あかね⑨ 







備前焼個展後のビストロカフェ

 友人のご子息で、備前焼陶芸家の曽我尭(たかし)氏の個展を見に行った。会場は東京・青山の「備前焼ギャラリー青山」。先日案内が届き、グズグズしているうちに最終日直前となってしまった。慌てて、お江戸で修業中のキオを呼び、ウマズイめんくい村からヨッコラショと表参道まで出かけた。曽我尭氏は約300人ほどいる備前焼作家の中でも注目の若手陶芸家。
              曽我尭展②  
              曽我尭展(備前焼ギャラリー青山で)

作品には若さといい意味での野心を感じるが、見事な花器や大皿、小皿、ぐい呑みなどの世界にしばし浮世を忘れる。根津美術館近くはいい骨董屋があり、沖縄の古美術専門店「観宝堂」で見た壷屋焼は借金してでも手に入れたくなるほどだった。おっと、危ない。京都の念力仙人に「素人は手を出してはいけませんよ」と言われそうなので深入りはしない。仙人は自分も大変なのに宮沢賢治状態で、東奔西走しているようだ。
              ニドカフェ① 
              ニドカフェ

その後に食べたランチが当たりだった。表参道駅から青山通りを外苑前方面へ100メートルほど歩いたところ。南青山パティオビルの3階にある「ニドカフェ」。カフェというよりパリのビストロのようで、「骨付き鶏ももの肉とジャガ芋、レンズ豆の煮込み」(税込み1080円)が予想外に旨かった。サラダとパン、ドリンク付き。場所柄を考えると高くはない。むしろ安い。
              ニドカフェ③  
              隠れビストロ

「よくこんな店を見つけたわねえ。スイーツ類も美味そう」
キオが気に入ったようで、珍しく尊敬の眼差し。むふむふ。村長の極秘情報シンジケートは日本一円に及ぶのだ。実体はスカスカだが。
「食べることへの情熱には関心というよりあきれるわ。しかも客は女性ばかり」
村民2号が見えない吹き矢を放つ。
              ニドカフェ5  
              メニューの一部

キオは「仔羊肉の欧風カレー」(同)を選んだが、村民2号はなぜか村長と同じもの。村長はいい気になって、ドリンクをグラスワイン白(プラス200円)にした。7~8分ほどでサラダとグラスワインが登場。さらに10分ほどかかってメーンの「骨付き鶏ももの肉とジャガ芋、レンズ豆の煮込み」がいい匂いを放ちながらやってきた。
              ニドカフェ⑤ 
          サラダとパン、ついでにワイン
              ニドカフェ⑥ 
              メーンの登場

サラダは鮮度のいいサニーレタスが多めに盛られ、好感。パンはバゲットが2切れ。グラスワインは予想よりグラスが小さい。ここは当て外れ。だが、メーンが期待を超えていた。柔らかく煮込まれたレンズ豆とメイクイーンの上に鶏のもも肉がどっかと乗っていた。意外にデカい。パセリが細かく散りばめられている。本格的ビストロ。
              ニドカフェ⑦ 
              うむむ

鶏もも肉が驚くほど柔らかい。味付けは塩だけではないか。シンプルな美味。それにレンズ豆のほどよいふくよかな塩加減とメイクイーンのしっかりとした歯ごたえが絶妙で、鶏の出汁が料理全体に十分に行き渡っている。コックの腕がいいようだ。
              ニドカフェ⑧ 
              何を考える?
              ニドカフェ⑨ 
              柔らかな技術

鶏もも肉はボリュームがあり、そのジューシーな旨味に舌鼓を打ちながら食べ進む。至福の時間。あっという間に食べ終えると、満足感がジュワリと胃袋から脳天へと広がっていった。BGMはボサノバからシャンソンに変わっていた。
              ニドカフェ10 
              シンプルな美味

「さっき女性スタッフに聞いたら、鶏もも肉は4時間も煮込んでいるらしいわ。旨いはずよ」
「子羊の欧風カレーも旨かったわ。窓から見える景色もいいし、落ち着く店だな」
 
南青山でいい隠れ家を見つけた思い。ふと、最近、周囲で起きている様々な出来事が頭をかすめた。一寸先、何が起きるかわからない。何ができるか、何ができないか。ウマズイめんくい村にも暗雲が立ち込めている。これから自分に何ができるだろうか? 無事を祈りながら、窓から広がる風景をボーと眺めるのだった。一寸先は闇・・・。

本日の大金言。

ふと人生を考える。生と死を考える。食べる意味を考える。幸せと不幸を考える。答えはすぐには出ない。「普通が一番」藤沢周平の言葉が闇の底から灯りとなって浮かんでくる。





                           ニドカフェ12 


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利根川沿いは美食の宝庫

 このところ利根川沿いにハマっている。かつては坂東太郎(ばんどうたろう)と呼ばれた暴れ川沿いは豊饒な田園地帯で、コシヒカリや有機野菜、果物、小麦、そば粉などスーパーでは買えない美味を産んでいる。うなぎや川魚も美味い。画家のアトリエが点在し、伝説的なギター作りの名人も住んでいる。村長は食と文化の隠れた黄金地帯と呼んでいる。

シバの女王の案内でそば名人のイシカワ仙人の家で行われるそばパーティーに呼ばれたこともある。この方は、数年前までそば屋を営み、クラシックギターのライブを企画したり、畑で野菜を作ったり、自由気ままな生活を楽しんでいる。2日前は栗橋産のそば粉でそばパーティーを行い、村長もポンコツ車で駆けつけたが、夕日に沈む田園地帯の光景の美しさに息を飲んだ。
              石川さんち①  
              イシカワ仙人の二八そば

そばは見事な挽きくるみの二八そばで、自宅の畑で採った野菜の天ぷらともども、フツーは味わえない旨さを堪能した。その余韻を残しながら、翌日、大利根町の田園地帯の中にポツンとある一軒家カフェへポンコツ車を飛ばした。これも利根川ネットワークの情報。自家製パンとスイーツが美味いという評判で、これは行かずばなるまい。村民2号も付いてきた。
              エムティー 
              利根川の風

北側が利根川で、大久保病院から近い田園地帯に、「手づくりの店」の旗がひるがえっていた。2軒だけポツネンと建っていた。そのシャレた一軒が目指す「カフェ&雑貨 mt.(エムティー)」だった。自宅一階をカフェに改装して、手づくり木工雑貨も置いている。経営しているのは若い夫婦で、設計家だった夫と料理の上手い妻が1年前にオープン。「mt.」とは2人の頭文字だとか。
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              ここはどこ?
              雑貨カフェ 
              「カフェ&雑貨mt.」の世界

「まるで別荘みたいだわ。こんなカフェがこんな場所にあるなんて驚きね」
店内に一歩足を踏み入れた途端、一瞬信州か軽井沢にでもいるような錯覚に陥った。窓の外には田園地帯が広がり、窓から入ってくる利根川の風が心地よい。
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              癒しの空間
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              残り1個!

ここで食べた「焼きカレーパン」(150円)が絶品だった。自家製パンがすぐ品切れになるほどの人気で、その理由がすぐにわかった。小麦粉は北海道産のキタノカオリをメーンに使い、ベーグル、ちぎりパン、フランスパンなどを焼いている。到着した時間が午後3時過ぎだったので、すでにほとんどが売り切れ、「焼きカレーパン」が一個だけ残っていた。
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              ランチメニュー

「きなこシフォンケーキ バニラアイス添え」(350円)と「とろけるミルクティープリン」(250円)を頼み、有機栽培コーヒー(350円)もそれぞれ頼む。セットにすると100円引き。すべて自家製で、そのアイデアと美味さは軽く驚くほど。料理は奥さんの担当で、パティシエの修業をしたのかと思ったら、「もともと料理が趣味で、それが高じてパンまで作るようになったんですよ」とか。
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              きなこシフォンケーキバニラアイス添え
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              本格的なスイーツ
              mtプリン  
              ミルクティープリン

「焼きカレーパン」は手で割った途端、その自然な色味ともっちり感が際立っていた。村長がこれまで食べたカレーパンの中でもベスト5に入る美味さで、小麦の香ばしさと中のキーマカレーが絶妙である。具のキーマカレーは豚の挽き肉とニンジン、タマネギ、それにトマトをじっくりと煮込んでいる。隠し味にナスを使っているそうで、それが旨味と甘味を引き立てている。
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              焼きカレーパン、登場
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              うーむ
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              パン生地の秀逸
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              すべて自家製

「これだけの本格的な美味さで、この安さ。儲けが出ているのか、心配になってきたわ
「カレーパンも軽井沢で食べた『幻のカレーパン』の上げ底ぶりを思い出すと、今でも怒りがわくけど、こういう場所でこのようなカレーパンに出会えたことを思うと、神様は我々を見放してはいないと思えるな」
「オーバーねえ。第一、村長なんて、とっくに神様に見放されてるわよ」
「・・・・・」

本日の大金言。

利根川沿いにはフランスがある。隠れたグルメ地帯。あまり知られたくないが、それを発掘する楽しみもある。


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限定10食「牛タンガーリックライス」

 いつものように埼玉・大宮を散策していると、「一日限定10食 やわらか牛タンのガーリックライス」と書かれたボードが疲れた目に飛び込んできた。東口を左手に曲がったあたり。ちょうどランチタイム。「ワイン食堂 ボンヴィアッジオ」というイタメシ屋だった。イタリア語で「よい旅を」という意味。生パスタが売りの店。ガーリックライスには思い出がある。
              ボンヴィアッジオ 
              うむむ
              ボンヴィアッジオ① 
              入るっきゃない

エンターテインメント新聞社時代、仕事がらみで何度かホテルオークラの「鉄板焼き さざんか」で食事したことがある。今では考えられない贅沢だが、ステーキの最後に「ガーリックライス」が出てきた。これが驚くほどの美味だった。松阪牛の脂身で炒めたガーリックライスはシェフの見事な手さばきとともに村長の脳裏に鮮やかに刻まれている。

思えば遠くに来たもんだ。イタメシ屋の入り口で、そのガーリックライスが一瞬、頭をよぎった。「限定10食」という言葉も好奇心をくすぐった。地下へと続く階段を下りると、そこは予想外の広さで、BGMはラップが流れていた。女性スタッフが3~4人ほど。左奥が厨房になっていて、そこに男性シェフと女性シェフが仕事に励んでいた。悪くない雰囲気。 
              ボンヴィアッジオ③ 
              残り何食?

ブラウンの木のテーブル席に腰を下ろして、「ガーリックライスはまだありますか?」と尋ねた。「はい、まだ大丈夫です」ときれいな女性スタッフ。サラダ・スープ付きで850円(税込み918円)。即決で「それ、お願いします」。
              ボンヴィアッジオ④ 
              サラダと冷たい味噌スープ

10分ほどで、サラダとスープがやってきた。サラダは契約農家のサニーレタスでいい鮮度。スープは冷たい味噌スープで、薄く輪切りされたキュウリが多めに沈んでいた。もっと暑ければ、この冷たい味噌スープは美味だろうな、と思ったが、涼しかったので、微妙な味わい。

続いて、主役の牛タンのガーリックライスが登場。ガーリックのいい匂いが周囲1メートルを支配した。中央には半熟の目玉焼きがどっかと乗っていた。「やわらか牛タン」がいい色で、ごろっごろっとガーリックライスの海に転がっていた。刻んだパセリ、それに赤紫色の糸唐辛子が雲のようにかかっていた。創作イタリアンの世界。
              ボンヴィアッジオ⑥ 
              エスニック? イタリアン?

まずはスプーンでひと口。ニンニクの香りが口中に広がった。細かなニンジンがガーリックライスに混じっていて、さらによく見るとガーリックチップも混じっていた。ライスは固めでやや薄味。それは好みの別れるところだが、固め好きの村長にとっては悪くない味。キツネ色に焦げ目がつくくらいだともっといいのだが、惜しいところ。半熟の目玉焼きと一緒に食べると、それなりに旨い。
              ボンヴィアッジオ2 
              ガーリックの匂い
              ボンヴィアッジオ11 
              柔らかな牛タン
              ボンヴィアッジオ10 
              たまりましぇ~ん
              ボンヴィアッジオ⑨ 
              固めの美味

牛タンが実に柔らかくて美味。赤ワインで相当に煮込んでいるのだろう、全体の味にいいアクセントをつけている。「さざんかのガーリックライス」とは比べようもないが、まずまずの味わい。ボリュームが意外にあり、食べ終える頃には満足感に包まれた。糸唐辛子は思ったほど辛くない。店は5年目だそうだが、大宮にも新しい波が確実に押し寄せているようだ。

本日の大金言。

チャーハンの旨い店は多いが、ガーリックライスの旨い店は案外少ない。未開発地帯だと思う。


                        ボンヴィアッジオ12 

洋食屋の「ハーフ&ハーフハヤシライス」

 埼玉・大宮駅東口で以前から気になっていたのが、洋食屋の茶色いビル。巨大なハヤシライスとオムライスが道行く人を見下ろしていた。その看板のビジュアルが郷愁を誘った。店の名前は「キッチン シューラク」で、ベルギービールも売りにもしている洋食屋だった。大宮には「紅亭」という古い洋食屋が有名だが、この店も歴史がありそうだった。
              シューラク① 
              気になる洋食屋

入り口でメニューを見ていると、ちょうど女将さんらしい清楚な女性スタッフと目が合ってしまった。ニコッとされる。
「ハヤシライスが美味そうですね」
と村長。
「フォー(出汁)から作っているんですよ。自信があります。どうぞどうぞ」
これは入るっきゃない。
              シューラク14 
              入るか入るまいか

一階がカウンターになっていて、シェフらしい男性が奥で仕込中だった。時刻は午前11時半過ぎ。2階に案内される。大宮駅東口ロータリーを見下ろすカウンター席に腰を下ろす。いい眺め。駅の雑踏がポエムである。メニューの中から、「ハヤシとサラダのハーフ&ハーフ」(780円)を頼むことにした。浅田真央の「ハーフ&ハーフ」発言をなぜか思い出して、一人苦笑する。
              シューラク② 
              浅田真央?

10分ほどで、「ハーフ&ハーフ」がやってきた。ハヤシライスはハーフとは思えないボリュームで、いい匂いを放っていた。サラダもかなりのボリュームで、トマト、レタス、それにコーン、さらにチーズがどんと乗っかっていた。その向こうに行き交う人の多さ。その一人一人にのっぴきならない人生があると思うと、頭がクラクラしてきた。
              シューラク③ 
              いいロケーション

ハヤシライスは「フォーから作っている」というだけあって、甘酸っぱいソースはやさしい味わい。複雑な旨味もある。タマネギがほどよい柔らかさ。牛肉は溶け込んでいるのか姿がほとんど見えない。小麦粉を抑えているのか、とろみがあまりない。もう少しとろみがあった方が好みだが、これが「シューラク」のハヤシライスなのだろう。村長にとってはやや物足りなさが残る。
              シューラク⑤ 
              ハーフとは思えない
              シューラク⑥ 
              フォーから作る
              シューラク⑦ 
              美味の湖

ライスは固めで、福神漬けがいいアクセントになっている。サラダは鮮度がもう一つで、可もなく不可もなし。780円という安さを考えると、満足の範囲だが、期待が大きかった分、八分の満足。
              シューラク⑨ 
              サラダ

帰り際、シェフに「シューラク」という店名の由来を聞いてみた。
「このあたりは衆楽といって、昔は大衆の楽しみ場所だったんですよ。それをカタカナにしただけです。ボクで4代目です。元々はラーメン屋で、洋食を始めたのは20年ほど前からなんです」
「メニューにカレーライスがないのは珍しい」
カレーライスは誰でも作れる。だからボクはやらないんですよ。ハヤシライスはフォンからじっくり作ってるんですよ。手間ひまかかるのがいいんです」

話を聞いているうちに、ここはディナータイムに来た方がいい店だと思った。結論を出すのは早すぎる。ハーフ&ハーフは中途半端過ぎる。もう一度、夕暮れ時に来ようと思った。

本日の大金言。

「大衆」という言葉がほとんど死語になって、市民がそれに取って代わってきた。「衆楽」という言葉が洋食屋に生き残っているのは、どこか胸を撫で下ろすものがある。



                         シューラク12 


水戸の絶妙「老舗カレーライス」

 突然、海が見たくなった。あれま、どうしちゃったの? どこかの三文ドラマの出だしのようだが、これには理由がある。友人でストックホルム在住の瘋癲(ふうてん)北欧先生がこのところブログを休みがちで、久しぶりにブログを再開した。理由はパソコンの不具合だったようだが、「月の船」という日本の創作グループの展覧会のことや、村長のブログのことまで書いてくれている。ネットは確かに国境を越える。

その中で、メーラレン湖→大西洋→ホルムズ海峡→太平洋→黒潮→日本へとつながる「水」のことを書いている。村長にはまったく欠けている視点と世界観で、文章と同時に写真が印象に残った。で、ちょっくら海でも見てくるか、につながったというわけだ。ひょっとしてスウェーデンが見えるかもしれない。ポンコツ車を飛ばして、房総から大洗海岸までプラプラ走った。残念ながらスウェーデンは見えなかったが、代わりに腹が減った。
              茨城沖 
              誰もいない海(茨城・大洗)

水戸市内で遅めのランチを取ることにした。水戸芸術館のある大町通り沿いでいい雰囲気のレストランを見つけた。「西洋堂」という看板。入り口のメニューボードに「本日のランチ」が書かれていて、「カレーライス」(750円)に目が行った。調べてみたら、1906年(明治39年)創業の老舗フレンチレストランで、皇室御用達のレストランだった。うむ。
              カレーライス 
              いい店、めっけ!

店は二つに分かれていて、敷居の高いフレンチレストランと大衆的なコーヒーハウス。当然、ウマズイめんくい村の怪しい一行は大衆側に入った。入った瞬間、そのアートフルな世界に目を見張らされた。ガラス張りの大きな窓、そこから見える植物の緑、緑色の長いソファ、木のテーブル・・・水戸が芸術の街だったことを思い出した。村民2号も「いいわね」とひと言。
              西洋堂③ 
              うーむの世界
              西洋堂② 
              ぶな豚のカレーライス

時刻が1時半を過ぎていたせいか、客は2組ほど。その一角に腰を下ろして、メニューの中から「ぶな豚のカレーライス」(750円)を選んだ。村民2号は有機栽培のコーヒーも頼んだ。7~8分ほどで、福神漬けとラッキョウが置かれた。盛りがいい。だが、よく見ると、ラッキョウではなくタマネギの酢醤油漬けで、これが意外に美味。
             西洋堂⑤ 
             福神漬けとラッキョウ?

さらに5分ほど待つと、あの銀色のカレーポッド(グレビーボート)にたっぷりと入ったカレールーと白い磁器皿に盛られたライスがやってきた。本格的なイギリス風カレーライス。よく煮込んだ濃厚な色、立ち上るいい匂い。豚肉がゴロッと潜んでいた。常陸牧場のぶな豚という茨城のブランド豚で、柔らかさと脂身のバランスが売り。
             西洋堂④ 
             老舗洋食屋のカレーライス
             西洋堂⑥ 
             ぶな豚の美味

それをゆっくりとライスにかける。スプーンで口中へ。ふくよかな旨みとかすかな酸味。バターの香りとフライパンで炒めた小麦粉の風味が潜んでいる。ぶな豚は実に柔らかく、赤身と脂身がきれいな味わい。タマネギがいい具合に絡む。スパイスがほどよい。フツーに旨い。ライスもふっくらと炊かれている。フレンチのコックの腕前がいいレベルだとわかる。上野精養軒や銀座資生堂のカレーライスと比べてもさほどそん色はない。
             西洋堂⑧ 
             しばし待て
             西洋堂⑨ 
             旨味の競演
             西洋堂3  
             あーん

「老舗レストランのカレーって感じね。さり気なく奥行きが広い。コンクリート打ちっぱなしの壁と絵や版画、それにオブジェもさり気ない。ウッディーな床も悪くない。雰囲気込みで東京だとこの値段じゃとても味わえないわ。もう少しいたいから、自家製ケーキとコーヒーを頼もうかな」
「村長は水でいいよ」
女性スタッフが新しい水を注ぎに来た。その水がひょっとしてスウェーデンまでつながっている? もう一人の人気ブロガー渓流斎さんも最近なぜか元気がない。慌てることはない。時間が解決することだってある。孤独が一流を作ることだってある。コップの水を見ながら、三流未満の村長は自分にも言い聞かせるのだった。

本日の大金言。

カレーライスには水がよく似合う。戦後の三大料理はラーメン、カレーライス、かつ丼だと思う。いずれもキラキラする水が側にあった。



                         西洋堂10 




築地「塩親子丼」謎の美味

 このところなぜかパーティーずくめ。出版パーティー、還暦祝い大パーティー、さらにはジャズライブ・・・そこに葬式まで付いてしまった。何という一週間だったことか。祭りの後は悲喜こもごも。財布をひっくり返して、ため息をついている場合ではない。人間ドッグのバリウムも一部まだ体内に残っている。入り口問題と出口問題。人間、この奇妙な生き物。

久しぶりに東京・築地へ。疲れたときは市場に行きたくなる。最近は観光化しすぎて、スマホ片手の外国人もどっと押し寄せている。値段も安くはない。昔の築地を知っているだけに、隔世の感。だが、探せばリーズナブルな穴場もある。場内市場8号館の「鳥めし・親子丼 鳥藤(とりとう)」もその一つ。今回はそこで食べた「塩親子丼」(800円)について。
               鳥藤② 
            行列の近くに穴場が・・・

明治40年(1907年)創業の鶏肉卸し専門「鳥藤」(場外市場)が営む食堂で、なぜか行列が少ない。まわりが行列、行列なだけに、不思議な現象だと思う。「築地はやっぱり魚を食べたい人が多いのよ」とは村民2号の分析。
               鳥藤12 
               明治40年創業

正午過ぎ。隣が大行列なのに、本日も「鳥藤 場内店」は待ち人が3人ほど。こういうのをシメシメ、という。10分も待たずにおばさんスタッフに呼ばれ、店内へ。左右に簡素なカウンター席が並び、奥が厨房。全部で13人しか座れない。「親子丼」が有名だが、ここには珍しい「塩」もある。800円という舌代も高値設定が今や常識の築地に置いては安い。黙々と食べているカップル・・・その表情で美味が伝わってきた。
               鳥藤④ 
               安めの好感
              鳥藤③ 
              狭い店内

待ち時間は13~4分ほど。お盆に乗って、「塩親子丼」がやってきた。黒いどんぶり、鶏スープ・・・いい匂いがすでに店内に充満している。ひと目でスグレモノだとわかった。半熟の卵の白身とオレンジがかった黄身がゆったりと雲のようにかかっていた。ぶつ切りにした大山鶏のモモ肉がその下に岩のように隠れている。数えてみたら9個。頂上には三つ葉・・・。タマネギなどはない。
              鳥藤⑤ 
              うむ

朱塗りのレンゲと箸が用意されている。まずは鶏スープをひと口。鳥の出汁のまろやかな薄味。物足りなさを覚えるほど。七色をパラパラと振ってから、箸をざっくりと入れ、塩親子丼を口中へ。まず、卵のなめらかさに軽く驚く。塩のまろやかな滋味。柚子(ゆず)の香り。鶏肉は柔らかさと弾力がいい具合で、全体が絶妙な均衡を保っている。甘すぎず、辛すぎず。割下の普通の親子丼とはひと味違う旨さ。
              鳥藤⑥ 
              ええのう
              鳥藤⑦ 
              艶やかなまろみ
              鳥藤⑨ 
              マーベラスな卵
              鳥藤4 
              親子の絆

ひょっとして、何か隠し味があるのではないか? 800円という安さでこの味わいは信じられない。やや固めに炊かれたご飯、塩ダレと流れ落ちた卵の黄身がいい具合にご飯にかかっている。卵は2個は使っているだろう。ひょっとして3個使っているかもしれない。人形町の行列店「玉ひで」の値段の高さを考えると、ここは親子丼ファンにとっては隠れた天国ではないか?

普通の割下の親子丼も食べたくなったが、塩親子丼の満足度と財布の嘆きで、何とか思い止まった。出口問題も気になる。外には4~5人待っている。ほどほどが肝心・・・立つ鳥跡を濁さず、のつもりが、店を出た途端、よろっと来てしまった。

本日の大金言。

親子丼の元祖は人形町「玉ひで」とも言われる。魚河岸が日本橋にあった頃、魚河岸関係者がしゃも鍋の最後によく食べていたそう。タマネギなどは入っていず、ホントの「親子」丼だった。


                        鳥藤11

映画「あん」後のどら焼き三昧

 京都にお住いのグルメ先生おすすめの映画「あん」を観に行く。どこか地方都市(多分東村山市)の小さなどら焼き屋を舞台にした映画で、監督は河瀬直美。原作はドリアン助川。久々琴線をかすめるいい映画で、主演の樹々希林、永瀬正敏、内田伽羅(樹々の孫娘)のからみがとてもいい。ドキュメンタリーの手法を取り入れた河瀬直美の演出(脚本も)も冴えている。
              羽生イオン あん① 
              あんのあん(羽生イオン)

その中で、あんこ作りの名人(訳あり)でもある徳江(樹々希林)が雇われ店長(永瀬)にあんこの作り方を教えるシーンがある。印象的なシーンで、本物のあんこ作りとはこういうものだということを十分に感じさせてくれる。人生の不条理を底に流れるテーマにしているが、見終わった後、いい余韻が残る。黒澤明監督の「生きる」をなぜか連想してしまった。

ウマズイめんくい村に帰った後、東京・新宿「時屋」のどら焼きを食べることにした。キオが手土産に置いていったもの。偶然とはいえ、どら焼きは侮れない。「時屋」は新宿西口小田急ハルク1階にある老舗甘味屋。創業は昭和23年(1948年)。どら焼きが売りで、それがドラえもんのモデルになったという噂もある。その根拠は作者の藤子・F・不二夫がこの店のファンで、よくどら焼きを買って食べていたというもの。真相は不明。
              時屋② 
              時屋のどら焼き

ここのどら焼きは小・中・大・特大と大きさも種類も多い。キオが買ってきたのは、最も定番の小(1個190円)だが、「小」とは思えない大きさ。測ってみたら88ミリ、80ミリ、厚さは28ミリだった。手焼きなので、微妙に大きさが違うが、その焼き色が見事に均一できれい。上野うさぎやのよう。
              時屋④ 
              これで小とは・・・

手で二つに割ると、黄色みのやや強い皮生地とつややかな小倉あんが現れた。生地にはハチミツが加えられていない。しっとり感と小麦粉、卵の新鮮な風味がいい。柔らかなスポンジ。さり気ない、ていねいな作り。
              時屋⑤ 
              ドラえもん?
              時屋⑥ 
      藤子・F・不二夫もファンだった

小倉あんは北海道十勝産大納言を使っていて、柔らかな粒つぶ感とふっくら感のバランスが悪くない。塩は使っていないようで、やや甘め。ほんの気持ち、あんこの量が少ない気がした。あんこ中毒者ゆえの感想かもしれないが。日本橋うさぎやほどの洗練はないが、かなり高いレベルのどら焼きで、昔の正統派どら焼きだと思う。
              時屋⑦ 
              スポンジと大納言小豆
              時屋⑧ 
              文句あっか?

「映画のようなどら焼き屋が近くにあったら、毎日買いに行きたいねえ」
と村長。
春日部郊外の『細井』が近いんじゃないかしら? 明日行ってみれば?」
と村民2号。吹き矢を研いでいる。

「『細井』はもっと洗練されてるよ。映画の中の『どら春』はもっとうらぶれていた」
「確かに。その方が村長にピッタシね。二枚目と三枚目の違いはあるけど」
「どら焼き屋を始めたくなったよ・・・」
「客が来るはずないでしょ」
「・・・・・」

本日の大金言。

どら焼きに人生が潜んでいることもある。たかがどら焼き、されどどら焼き。さよなら・・・いやどら焼きだけが人生だ。




                        祭りの後

バリウム後の名物餃子の味

 一年ぶりに人間ドッグへ。「肺年齢が年齢より+8歳です」と言われてしまった。ドキッ。肺年齢なんてあるのか? 胃袋を始めあちこちに黄色信号がともり始めているようだ。最終的な結果はまだ先だが、このところ友人知人に問題が生じるケースが目立つ。「お互いに気をつけようね」と村民2号。といっても、そう簡単に気をつけれる話ではない。「総じて健康」でよし、とする。健康より大事なものだってある。

胃袋にバリウムが入ったまま、ポンコツ車を飛ばして、茨城・古河市までドライブすることにした。ポエムな展開。ここには関東でもちょいと知られた名物餃子屋がある。バリウムの後は餃子に限る。その名も「丸満餃子」。千葉・野田市に本店がある「ホワイト餃子」とよく似た俵型のジャンボ餃子で、村長は「古河もも祭り」で、何度か食べたことがある。店で食べると味もひと味違うはず。
               丸満餃子 
           名物「丸満餃子」に到着

人気店なので、早めに到着。正午前なのにすでに客がどんどん入ってくる。創業は昭和39年(1964年)。先代が初期の「ホワイト餃子」で修業したようで、形から何からよく似ているのは当然と納得。入り口に巨大な餃子が看板代わりにレイアウトされているのがクール。古民家風の店内は一枚板の見事なテーブルが大小いくつか。小上がりもある。
               丸満3 
               いい雰囲気の店内

その一角に腰を下ろして、メニューの中から「創業の味」と強調してある「餃子ライス」(530円=税別)を頼むことにした。グラスビール(150円=同)も当然のごとく。村民2号は「半餃子定食(680円=同)を頼んだ。その間もどんどん客が入ってくる。ファンが多いのがよくわかる。
               丸満① 
               値段も好感

15分ほどの待ち時間で、「餃子ライス」がやってきた。まんじゅうのような餃子が数えてみたら8個! それに丸く盛られたライスと福神漬け。さらに味噌汁というシンプルな構成。村民2号は餃子が4つとサラダとデザート付き。餃子は油で揚げるように焼いているようで、そのこんがり具合が食欲をそそる。
              丸満③ 
         定番「餃子ライス」の登場
              丸満4 
              食欲全開

調味料が自家製ラー油2種類の他にニンニクなど数種類あり、コチジャンとマヨネーズを和えたものまである。村長は定番の醤油、酢、それに激辛の自家製ラー油を調合して、ビールをひと口飲み、おもむろに食べようとした。
「熱~っ」
村民2号が声を上げた。慌てるとろくなことはない。
              丸満2 
              自家製調味料
              丸満② 
              まずは特製ラー油
              丸満⑤ 
              この存在感

餃子は外側の皮が厚めで、パリではなくバリッとしている。その感触は悪くはないが、ほとんど味が付いていない。中の具は白菜、ニラ、ネギ、キャベツ、挽き肉など20種類以上使っているそうだが、言われなければわからない。もう少し具が詰まっていた方が好みだが、悪くはない。ニンニクの存在が薄い。物足りない人は調味料の生おろしにんにくを加えた方がいいかもしれない。
               丸満5 
               たまらん
               丸満6 
               やさしい具
               丸満7 
          コチジャンとマヨネーズのたれ

「皮が微妙だけど、具が旨いわ。コチジャンとマヨネーズのタレが意外に合う。昔、千葉・市川で食べたひさご亭の餃子を少し小ぶりにした感じだけど、ひさご亭ほどの驚きはないわ。もっともニンニクが強烈だったけど」

あれは別格だよ。ここはフツーに旨い。ひさご亭は再開発で市川本店がなくなり、市川大野店のみになってしまったようだけど、さびしい限りだなあ。村長に言わせれば、横綱と関脇くらいの差がある。ひさご亭の方が歴史も古いのに、メディアにも登場しない。どうしちまったんだろう。経営者の問題かな?」

「ホワイト餃子しか知らない人も多いわ。そういう時代なのよ。あっ、そうそう、ここはライスも旨いわ。このあたりは米がいいのよ。炊き加減もとてもいい。福神漬け付きというのもクール。全体としていい店で、人気があるのもわかるわ。ただ、ひさご亭がなつかしい・・・」
               
食べ終えると、結構お腹がいっぱいになった。バリウムの存在は頭の中からすっかり消えていた。

本日の大金言。

食べれるうちが花。そう思えるうちが花。中年老いやすく、人生は成りがたし。


                          丸満⑧ 

「東京スポーツ青春物語」と絶妙水なす

 久々のうれしいニュース。村長の知人が本を出版した。江戸に出たついでに、日本橋丸善に立ち寄り、「東京スポーツ青春物語」(飛鳥新社刊)を買い求めた。著者の柴田惣一氏はプロレスひと筋の記者生活を送り、デスク→第二運動部長→Web東スポ編集長などを歴任し、現在も「ワールドプロレスリング」(テレビ朝日)などでも解説を務め、現役記者として健筆をふるっている。なぜかネクタイ評論家としても知られている。
            
その新刊本を手にしながら、夕暮れどき、銀座・泰明小学校近くの「泰明庵(たいめいあん)」にふらりと立ち寄ることにした。路地裏の隠れ家。ここは銀座でも知る人ぞ知るそば屋で、常連客も通人が多い。宮仕え時代の大ボスもここのファンで、「相席で美味い肴をつつきながら一杯やるのがいいんだ」などと話していたこともある。
                   泰明庵2  
          銀座の路地裏の名店

創業は昭和25年(1950年)。「そば 軽食 泰明庵」のネオンが灯り、その下の情緒的な店構えはどこか京町家のよう。「軽食」の文字が時代を感じさせる。ここで食べた「水なす」が実に絶品だった。
           泰明庵② 
           隠れ家?

夕暮れどきとあって、客はまだ少なかった。昭和の昔にでもタイムスリップしたような店内。村長は非通人だが、年季の入った木のテーブル席に腰を下ろして、まるで居酒屋のようなメニュー札を見る。「もり 600円」「かしわ 780円」などの定番メニューの他に、「焼きホタテ」「まぐろ煮」などの手書き文字がズラリと並んでいる。
           泰明庵④  
           そば屋か、居酒屋か?

キリンの瓶ビールを頼んでから、迷った末に「だし巻き」(680円)と「そら豆」(380円)を頼むことにした。すると、おばさんスタッフが「水なすが美味いですよ」と絶妙な合いの手。うむ。「では、それもお願いします」と村長。非通人の哀しい見栄。
           泰明庵⑤ 
           旬の水なす、登場

しばらく待っていると、青緑の小鉢に盛られた「水なす」(680円)がやってきた。見事な浅漬け。水なすはビニールハウス栽培でほぼ一年中食べれるようになったが、最も美味い露地物は今からが旬。築地で仕入れているようだが、大阪・泉州ものかもしれない。
           泰明庵3  
           いきなりメーンエベント
           泰明庵4 
           カウント、スリーか?

ビールでのどを潤してから、まずはひと口。噛んだ途端、そのみずみずしい芳醇が口中を支配するのがわかった。絶妙な浅漬け具合。むむむ。さり気なく、美味い。水なす自体の甘みと白だしの塩加減が素晴らしい。いい料理人が暖簾を守っているようだ。幸せ感がじわじわと脳天へと広がっていく。新鮮な水なすは生のままスライスしても美味い。
           泰明庵⑦ 
           揃い踏み
           泰明庵⑨ 
           だし巻きの美味さ

「そら豆」はフツーの美味さだったが、「だし巻き」はまるで京都で、この洗練された味わいも格別だった。いい余韻を残して、その4時間後、北千住のジャズバー「ゆうらいく」へ。オーネット・コールマンを聴きながら「東京スポーツ青春物語」を読む。「白黒つけるだけが人生じゃない」の帯が効いている。ページをパラパラとめくっているうちに、次第にその内容に引きずり込まれていった。
           泰明庵③ 
     熱い思い(北千住「ゆうらいく」で)

東スポとプロレスの舞台裏がこれほどスリリングに書かれた本は少ない。前田日明に前歯2本を折られた事件などプロレスの見方が変わるほど。東スポWebの立ち上げエピソードなどもあり、一人の記者の熱い思いが伝わってくる。どこかベタな、青臭いタイトルが案外、東京スポーツという極めてユニークなメディアへの悲しいエールにも思えてきた。東スポは不滅のはずだが、果たして・・・「泰明庵の水なす」に答えがあるかもしれない。

本日の大金言。

時代が混迷すると、原点を忘れがちになる。迷った時は足元を見ろ、百の言より一つの汗。そこから道が見えてくることもある。



                        泰明庵10 


プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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