人形町路地裏、謎のフレンチトースト

 所用で江戸表に出たついでに、小雨の中、人形町をぶらついてみた。ちょうどランチタイム。先日は蛎殻町でいい焼き鳥丼に出会ったので、今度は甘酒横丁周辺を歩いてみることにした。小春軒でカツ丼でも食べようかと行ってみると、混み合っていた。5~6人ほど並んでいる。この時間の人形町はどの店も混み合っている。

仕方なく人形町郵便局の前を通り過ぎる。すると、その路地奥に静かな時間が流れていた。うむ。左側にあの料亭きく家と高級居酒屋いわ瀬の黒塀が伸びていた。喧騒から離れた路地も悪くない。タイムスリップしたような気分。
               カフェスト 
               路地裏の意外

スタンド看板がひっそりと佇んでいた。そこに「プリオッシュフレンチトーストスペシャル」(ドリンク付き1300円)と表記されている。写真はフレンチトーストを覆うように果物がどっかと取り囲んでいた。時代劇の世界に突如、ポツネンと現代劇が飛び込んできたような気分。フレンチトーストは村長の好みでもある。何より人気がないのがよろしい。「カフェスト」という店名で、入り口はどこかパリの路地裏のカフェのよう。
               カフェスト① 
               モダンな入り口

入った瞬間、軽く息を飲んだ。モダンで広い店内に客が一人もいない。正面に注文口があり、その奥が狭い厨房になっていた。どこかハワイかグアム島のカフェのような雰囲気。「宮崎産 白水舎のソフトクリーム」が目に入る。不思議としか言いようのないカフェ。色黒の青年が一人、「いらっしゃいませ」と明るく言った。アクセントから日本人のようだ。
               カフェスト② 
               客はいずこ?  

「プリオッシュフレンチトーストスペシャルをお願いします」「ドリンクはどうなさいますか?」「コーヒーで」「人形町ブレンドですね。有機栽培のコーヒーです」「それでお願いします」・・・・・・「面白い店だね。店は新しい?」「オープンして約1年になります」「もっと客がいるといいね」「はい。でも女性客が多いんですよ」「それはいいね」

待ち時間は17~8分ほど。注文を受けてから果物を切り、調理しているのがわかった。しばらくすると、若い女性客が一人、入ってきた。なぜかホッとする。白い磁器皿に果物がテンコ盛りされたフレンチトーストがやってきた。りんご、メロン、グレープフルーツ、キウイ、ブルーベリー、バナナ・・・その下に隠れるようにプリオッシュのフレンチトーストが2枚、さらに生クリーム。メイプルシロップの瓶もドンと置かれた。
              カフェスト③ 
              プリオッシュフレンチトーストスペシャル
              カフェスト⑤ 
              スペシャルである
              カフェスト⑦ 
              試合開始

果物はすべて鮮度がよく、特に熟したメロンが美味。フレンチトーストは輪切りにした自家製プリオッシュで、ミルクと卵の黄身が上半分だけ浸かったもので、京都で食べたどろりとしたフレンチトーストではない。まるでマフィンをトーストしたようなシンプルな味わい。やや期待外れだが、バターの香りが悪くない。
              カフェスト⑧ 
              フレンチトースト?
              カフェスト3 
              絶妙の世界へ
              カフェスト5 
              オリジナル

生クリームは甘さがかなり控えめでいい風味。それを塗ってからメープルシロップをかけてみる。意外に悪くない。さらに果物を乗せてガブリと行くと、これが不思議にマッチしていた。果物から出る新鮮な果汁とフレンチトースト、生クリーム、メイプルシロップが妙に合う。意外すぎる味覚。新たな世界か・・・多分かようなメニューはここしかないだろう。

その間、また一人女性客が入ってきた。約40分の間にやってきたのはこれだけ。ランチタイムだというのに、これはどうしたことだろう? あれこれ想像してみる。出がけにベテランの女性スタッフがやってきて、「また来てくださいね」とにっこりほほ笑んだ。客の少ないカフェ・・・こういう楽しみも悪くない。

本日の大金言。

表通りより路地裏。行列より閑散。正統より異端。人気地帯にも探せば意外な店がある。それを見つける楽しみ。



                             カフェスト10 


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住宅街に驚きのそば屋

 本日はとっておきの情報をお届けしよう。村長がここ数年折に触れて通っている隠れそば屋がある。このところ体調がすぐれないゴッドマザーが「冥途の土産においしいそばが食べたい」と言い出した。泣く子とゴッドマザーには逆らえない。村長は思案の末、埼玉・加須市騎西町「玉敷神社」近くにあるその隠れそば屋に案内することにした。

住宅街にあるためにわかりづらいが、「石臼挽き そば処 山福」の看板が神社の裏手通りにある。全国のそばを少しだけかじった村長だが、ここはまがい物が多いそば屋の中でも数少ない本物だと思う。宣伝をあまりしていないので、ほとんど知られていない。スマホ片手の客がいないこともいい。
              山福 
              住宅街の隠れそば屋

そばの産地でもある福島県昭和村・矢の原高原の玄そば(丸抜き)を契約農家から直接仕入れている。これだけでもそば好きなら「ほう」と唸るはずである。石臼挽きで一番粉しか使わないという徹底ぶりも凄いのひと言。ここならゴッドマザーも満足するに違いない。
              山福① 
             この奥の世界

ポンコツ車を走らせて、玉敷き神社近くの住宅街へと向かった。「手打ちそば」の旗が見え、駐車場にクルマを止めて、ガラガラと引き戸を開ける。座敷に一枚板のテーブルが6つほど、奥が打ち場になっていて、毎朝、女性店主がここでそばを打っている。きれいな娘さんが運びを担当、ご主人も板場で手伝っている。
              山福③ 
              打ち場

食が細くなっているゴッドマザーは「もりそば」(700円)、村民2号は「野菜天セット」(もりそば、野菜天付 1000円)、村長は「矢の原セット」(もりそば、小天丼付 1100円)を頼んだ。
              山福② 
              セットメニュー

待ち時間は13~4分ほど。黙々と食べていた辛口のそば通でもあるゴッドマザーが「こりゃあ、美味いわ」とつぶやいた。村長は内心してやったり。
              山福⑤ 
              矢の原セット

村長は改めてこの細打ちの極上のそばを味わう。二八そばで、強めのコシといいエッジといい見事だと思う。何よりもそば自体の風味が素晴らしい。混じりのない丸抜きのまま低温で貯蔵していることも風味が新そばと変わらない理由で、これを地道に続けているのも評価できる。ヘンな話だが、会津で食べた超人気のそば屋よりも美味いと思う。
              山福⑥ 
              絶品ニ八そば

ただ、つけ汁はかえし(醤油)が強めで、それは好みの別れるところ。村長はもう少し穏やかなのが好み。村民2号とゴッドマザーは「このくらい辛めの方がちょうどいいのよ」と辛口らしいデュエットコメント。小天丼も天ぷらのカラッとした揚げ方が好感。海老、ナス、ジャガイモ、シシトウ・・・小天丼とは思えないボリューム。瓜の浅漬けも美味。すべてに手抜きが見られない。
              山福⑨ 
              風味が立つ
              山福10 
              見事の一語
              山福⑦ 
              手抜きがない

「この店はここで10年、この味を保っているのよ。女性店主は埼玉県出身なのに、そば処の会津に惚れこんでそば屋修業したのよ。そば粉はもちろん水も昭和村まで行って名水を取ってくる凝りよう。こういう店がこの情報社会の中で隠れているのよ。この値段でよくやっていると思うわ」

村民2号がゴッドマザーに付け焼刃のうんちくをしゃべっている。ピュアなそば湯を飲みながら、ゴッドマザーは満足そうに「毎日来たいね」とつぶやいた。村長が天国に行きたくなった・・・。

本日の大金言。

国産そば粉の値段が高騰するのに伴って、混ぜ物も増えているそう。あるそば屋の主人が「有名どころも混ぜ物を承知で出している。そういう時代なんだ」と嘆いていたことを思い出す。本物と偽物とは? そば屋が問われている。


                            山福12 

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晩夏の日本橋の焼き鳥丼

 ペンクラブでの編集作業の合間を縫って、ランチを取りに大好きな人形町方面へとブラブラ歩いた。新大橋通り。日本橋蛎殻町。このあたりはサラリーマンが多く、ランチタイムはかなり込み合う。時間をずらして、午後1時ちょい前に「いい店はないか。穴場はないかいな」と鼻歌混じりにあちこち物色。

すると、焼鳥「ときわ」の看板が見えた。「焼き鳥丼」「親子重」の立て看板。「ランチタイム850円」の文字も。入るかどうか迷っていると、ちょうど店からサラリーマン3人組が出てきた。「ああ旨かったなァ」一人がそうつぶやいた。決まり! 村長は暖簾をくぐることにした。
              ときわ 
              犬も歩けば・・・
              ときわ① 
              穴場発見か?

テーブル席が左右にあり、奥が厨房になっていた。小ぎれいな店内。いい匂いがかすかに鼻腔をくすぐる。村長は2人用のテーブルに腰を下ろすと、メニューの中から「焼き鳥丼」(汁椀、香物付850円)を選んだ。鳥肉は「大山鶏を使用」とあり、さらに「阿波尾鶏のつくね付き」と表記してあった。どちらも国産ブランド鳥。これは期待できるかも。
              ときわ② 
              当たりの予感

厨房で焼き始める香ばしい匂い。店主らしい中年男性の立ち姿は悪くない。待ち時間は13~4分ほど。お盆に乗って「焼き鳥丼」がやってきた。木製の茜色のドンブリ。その景色がいい。フタを取ると、見事な焼き鳥が目に飛び込んできた。ネギ間が3本、塩つくねが1本。一つ一つのボリュームと肉汁感が滴るようで、「これは当たりか」と思わせるに十分だった。それにシシトウが二つ。
              ときわ③ 
              漆塗りのドンブリ

まずはみそ汁をひと口。シジミの出汁の効いたやさしい旨味。豆腐が崩れていたのが残念だが、いい味わい。七味をパラパラかけてから、本命の大山鶏を口中へ。かじった瞬間、弾力と旨味がじゅわりと歯の間から広がった。タレはやや甘め。
              ときわ④ 
          フタを取るとウムムの世界
              ときわ⑥ 
              七味をパラリ

海苔とともにご飯をかっ込む。タレはやや掛け過ぎだと思う。とはいえ、ご飯の旨さに目を見張らされる。柔らかすぎず固すぎず。まさに「立ってるご飯」で、「茨城産コシヒカリを使ってます」とか。ご飯の量は少なめだが、鶏肉のボリュームがたっぷりなので、全体としてはちょうどいい分量。
              ときわ⑦  
              阿波尾鶏の塩つくね
              ときわ⑧ 
              絶妙な大山鶏
              ときわ⑨ 
              ご飯がスグレモノ

阿波尾鶏のつくねは軟骨と青じそが入っていて、薄い塩味がつくねの肉の旨みを引き出している。淡泊できれいな旨味。これがいいアクセントになっている。全体的に850円とは思えない充実ぶりで、ランチの穴場発見の気分。
              ときわ10 
              美味の断層

店は元々は八丁堀で暖簾を下げていたが、4年ほど前に現在の日本橋蛎殻町に移転してきたという。村長がこれまで食べた焼き鳥丼の最高峰の一つは築地「ととや」だが、この焼き鳥丼はそれよりも300円ほど安い。それを考えると、大関クラスの味わいだと思う。ワキ役のお新香とネギが大山鳥と阿波尾鶏つくねの陰に隠れてもう一つなのが残念だが、いい店であることは確か。

かつて作家の丸谷才一が「春の築地の焼き鳥丼」と「ととや」の焼き鳥丼を絶賛したが、晩夏の日本橋の焼き鳥丼も悪くない。ツマヨウジをシーハーしながら、村長はマヌケ面でペンクラブへと戻るのだった。

本日の大金言。

メディアの情報に頼らずに街を歩くと、いい焼き鳥屋に出会うこともある。空、地面、風、行き交う人、肉体感覚・・・もう一度大地を踏みしめてみる。


                            ときわ11 

意外な料理屋の意外な海鮮重

 そば仙人の案内でシバの女王と一緒に利根川沿いの旨い店に行くことになった。そば仙人はつい最近までそば屋をやっており、クラシックギターのライブをプロデュースしたり、畑で野菜を作ったり・・・と自由気ままな生活を楽しんでいるお方。利根川沿いに邸宅を構え、気に入った人の活動を支援したりしている。前歴は謎に包まれている。

埼玉・久喜市栗橋生まれで、安くて旨い煮込みがあると聞けば、クルマを飛ばして群馬・渋川まで行ってしまう。祖先が会津藩足軽の村長も一目置く人物でもある。その人が案内してくれる店とは・・・村長の好奇心がうごめく。
              萬屋1 
              意外な出会い

栗橋文化会館からさほど離れていない125号沿いでクルマが止まった。古い一軒家の料理屋。「うなぎとすっぽん」の文字が目に飛び込んできた。「萬屋(よろずや)」という看板よりも「うなぎとすっぽん」の文字の方が目立つ。どちらも高価な美味。財政事情がひっ迫している村長にとっては少々困った展開。
 
だが、すぐにそれは杞憂(きゆう)だとわかった。そば仙人の狙いがここの「海鮮重」だとわかったからである。店内は店主の趣味なのだろう骨董品がさり気なく置かれている。そば仙人はここの常連らしく、すぐに小部屋に案内された。「あづま重」(1200円)を三つ、とそば仙人が頼んだ。「これが旨いんだ。すっぽんやうなぎもいいけど、これがここの隠れ目玉なんだ」。
              萬屋6 
              うむむの光景
              萬屋7 
              さり気ないアングル
              萬屋② 
              狙い目のメニュー

20分ほどかかって、「あづま重」がやってきた。海鮮のお重である。ポテトサラダ、おしんこ、味噌汁が付いていた。驚くべきはお重の中身。かつお、中トロまぐろ、甘エビ、いわし、コハダ、平貝貝柱、つぶ貝、赤貝、トリ貝、だし巻き玉子・・・ざっと見ただけで9~11種類の魚介類がドドドとのっていた。海苔がパラパラとかかっている。ひと目で鮮度のよさがわかった。うむむ。
              萬屋③ 
              あづま重、登場
              萬屋④ 
              9~10種盛り

利根川沿いでまさかかような海鮮重に出会うとは。築地で同じものを食べたら、たぶん2000円は行くだろう。醤油にワサビを溶いて、それに付けながら食べる。かつおの鮮度、中トロの美味、貝柱の食感と甘み、つぶ貝のコリッとした海の香り・・・白ゴマがかかったご飯は地場のコシヒカリで、やや固めに炊かれている。
              萬屋⑥ 
              つぶ貝とコハダ
              萬屋⑧ 
              まぐろ中トロ
              萬屋⑨ 
              貝柱の美味
              萬屋10 
              絶妙なだし巻き玉子

「だし巻き玉子がうまいわ」
シバの女王が食通らしい感想を漏らした。
確かにだし巻き玉子は焼き立てで、やや甘めだが、出汁が十分に効いている。美味。ほのかに温かい。どうやら注文を受けてから焼いたようだ。

「店は古いと言っても、30年くらいかな。毎朝、大宮市場で仕入れてくるんだよ。ここは奥が座敷になっていて、懐石料理も食べれる。だけど、オレはこのあづま重が好きだよ」

そば仙人は愛きょうたっぷりに表情をくしゃくしゃにさせた。どこかあの深沢七郎を連想させるオヤジで、シバの女王はじめファンが多いのもうなずける。ウマズイめんくい村も広がりつつある。

本日の大金言。

利根川沿いは川魚ばかりではない。海の幸まで隠れている。意外に思われるかもしれないが、利根川沿いは日本のフランスである。



                              萬屋12 

「シンプルな美味」ベーグルの逸品

 ポンコツ車を飛ばし上州に住むゴッドマザーのお見舞いへ。その帰り、佐野プレミアムアウトレットに立ち寄った。小腹がすいたからである。すでに夕闇が忍び寄り、街灯には灯りが付き始めている。人工的な街並みとはいえ、その不思議なレトロ感が悪くない。目的の「ベーグル&ベーグル」で簡単な食事をしようという算段である。
              佐野プレミアム 
         夕暮れのプレミアムアウトレット
              ベーグル② 
          ベーグル&ベーグルカフェ

入り口でベーグルサンドメニューが目に止まった。「ツナと卵」やら「肉厚ハンバーグ」やら「スモークサーモン」やら旨そうなメニュー。だが、村長の目は一番シンプルで一番安い「クリームチーズサンドメープルウォルナッツ」(単品350円)の上で止まった。ドリンクセットにすると、590円ナリ。そのままレジで注文する。ドリンクは暑かったのでアイスコーヒーにした。
              ベーグル④ 
              〆て590円ナリ

ベーグル&ベーグルは1997年(平成9年)、意表をついて「おかまの街」新宿2丁目に第一号店をオープンし、それが大成功、今では全国に約80店舗もの店を展開する国内第一のベーグル専門店にのし上がった。社長の林浩喜氏(52)は元商社マン。アメリカ留学中にベーグルに着目し、「日本ではベーグルは売れないよ」という声に反発、日本人の舌に合うベーグルの開発に成功したというキャリアを持つ。
              ベーグル⑥ 
              スグレモノ?

村長はベーグルが大好きで折に触れてよく買うが、ベーグルカフェでサンドを食べるのは初めて。オーブンで温めたベーグルの間に、メープルウォルナッツを加えたクリームチーズがサンドされている。まずその香りが鼻腔をくすぐる。ベーグル(シンプル)のいい小麦が実に香ばしい。
              ベーグル⑤ 
              香ばしい香り
              ベーグル⑦ 
              後ろから失礼
              ベーグル⑧ 
          クリームチーズとメープルウォルナッツ

ガブリと行くと、ベーグルの表面のカリカリ感とその中のもっちり感。その歯と舌に当たる感触がいい。クリームチーズのまろやかでクリーミィーな甘みと酸味。メープルシロップでコーティングされたウォルナッツのブツブツ感がいいアクセントになっている。その官能的な風味がシンプルベーグルとマッチしている。クリームチーズの量は測ったように絶妙な量。多くもなく少なくもなく。村長にとっては意外な発見。
              ベーグル10 
             意外な絶妙
             ベーグル11 
             あーん

アイスコーヒーの冷たさがいい合いの手になっている。ベーグル(シンプル)は小麦粉と水しか使っていない。一度茹でて、それを焼き上げるという工程で独特の食感を作り出す。とはいえ、ここまで絶妙なもっちり感を出し、ニューヨークスタイルのベーグルを日本人に合うようにしたことが成功につながった。

かつて、阪急の創業者・小林一三は「百歩先の見えるものは狂人扱いされる。十歩先の見えるものが成功者である」と言い、「みんなが賛成したものはやらない。みんなが反対したらやる」とも言ったという。ベーグル&ベーグルはそのいい例かもしれない。


本日の大金言。

日本のパン文化はどんどんバラエティー化して、その分、どんどん高カロリー化していると思う。ベーグルはそのシンプルさとヘルシーさで市場を広げている。シンプル・イズ・ベストという言葉をもう一度かみしめたい。


                            ベーグル12 

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「小ざさ最中」を冷やして食べる

 東京・吉祥寺の「小ざさ(おざさ)」は羊羹(ようかん)があまりにも有名だが、一日150本しか作らないので、ほとんど夜中から並ばなければ手に入れることができないとか。「店は午前10時オープンですが、明け方の5時には整理券(50枚)が終わってしまいます」(店のスタッフ)というから、尋常ではない。たぶん日本一手に入れにくい羊羹かもしれない。
              小さざ 
           行列より最中(小ざさ)

村長は吉祥寺周辺に住んでいたころ二度ほど食べたことがあるが、値段も安いうえにきれいなこしあんと練りに「なるほど人気があるのもわかる」と納得したものだ。それでも当時は早朝に行けば、何とか手に入った。今回はむろんパス。もう一つの狙い目「最中(もなか)」を買い求めた。こちらはそう混んではいない。5個入り(305円)をゲット。内訳は白あん2個、紅(小倉あん)3個。1個61円なり。安い。
              小さざ② 
              狙い目

前夜の宴会のいい余韻が頭に残っている。吉祥寺にお住いのやり手のH女史が白ワインを飲みながら、勢いで全員に「小さざ」の最中をお土産にと、買いに行こうとした。村長はすでにひそかにゲットしていたので内心焦った。誰かが「甘いものは苦手」と言ったのでH女史は思い止まった。なぜか胸を撫で下ろす。そのまま赤ワインへと雪崩れ込んでいった。

そんなことを思い出しながら、その最中を賞味することにした。最中もこれまで何度か食べたことはある。で、今回は冷蔵庫に入れて冷やしてから食べてみることにした。京菓子「松露」で味を占め、今度はそれを最中で実験してみようというわけである。これは和菓子に対する邪道である。水菓子以外は冷して食べることはまずない。
              小さざ 
              冷やした最中

ところが、これも意外や美味だった。「松露」ほどではないが、皮もパリパリのまま、さすがに餡(あん)はやや固めになったが、冷たさがその欠点を十二分に補った。
              小さざ14 
             お控えなすって

まずは白あん。大きさは小ぶりだが、あんがぎっしりと詰まっている。北海道十勝産の手ぼう豆(たぶん)はねっとり感が強め。かなり甘い。皮はパリッとしていて、濃厚な白あんを邪魔しない。手ぼう豆がそのままの形で練り込まれていて、それがいい歯ごたえになっている。ねっとり感が「小ざさ」の羊羹のさわやかなイメージと合わないが、これはこれで美味。
              小さざ11  
              あんと皮
              小さざ⑧ 
              白あんの量
              小さざ12 
              意外な濃厚

紅あん(小倉あん)は、羊羹とほぼ同じ風味で、北海道十勝産小豆のいい風味が口中に広がった。小豆の粒つぶがいいアクセントになっている。小豆とこしあんを別々に炊いて、それを合わせているのかもしれない。さらっとしたピュアな食感。つぶしあんではない。あんこ作りに手間ひまをかけているのがわかる。
皮との相性も素晴らしい。
              小さざ② 
              紅でやんす
              小さざ⑤ 
              絶妙な風味
              小さざ⑥ 
              ま、お食べ

「紅あんのほうがきれいな風味で好きだわ」
「確かに。透き通るようなこしあんと小豆の色味と味わいが絶妙だな。そよ風を感じるよ」
「悪かったわね。台風みたいで」
「そんな意味じゃ・・・」
人生、どこに落とし穴があるかわからない。

本日の大金言。

猛暑に最中を冷やして食べる。あまりおすすめはできないが、視点を変えると新たな美味を発見できる。



                            小さざ13

火花も負ける?吉祥寺の「茶房サンド」

 久しぶりに東京・吉祥寺へ。「いせや総本店」で友人たちと小宴会が目的だが、村長にとっては懐かしい場所でもある。ウマズイめんくい村を開くずっと以前に住んでいた場所。早めに行って、井の頭公園をブラブラ。大道芸人がパフォーマンスを繰り広げていたり、若者がミニコンサートを楽しんでいたり・・・昔とそう変わらない。
              井の頭公園 
              井の頭公園

芥川賞を取った又吉直樹「火花」の舞台の一つが吉祥寺で、そのハーモニカ横丁にも足を伸ばす。ここは村長がよく通っていた頃とすっかり変わっている。戦後の匂いのする迷路は同じだが、今どきの店が増えていた。午後1時過ぎ、遅めのランチを取ろうと、センサーをフル動員したが、ビビビとくる店がない。

東急の裏手に入る。人通りが少なくなる。昔からこの一帯はいい店が多い。村長がよく行った「葡萄屋」もそのまま。財政事情がひっ迫しているので、葡萄屋は指をくわえたまま、通り過ぎる。腹の虫がわめき始める。Uターンして東急のちょうど真裏あたりで、村民2号の足が止まった。「茶房 武蔵野文庫」という看板。うむ。ここはあの宮崎駿監督も通った喫茶店ではないか?
              武蔵野文庫① 
              むむむ
              武蔵野文庫 
           立ち止まる(茶房武蔵野文庫)

店構えがいい。クラシカルな匂い。店内はダークブラウンを基調にしていて、伊万里の流れを汲む小石原焼の陶器がいい具合に置かれている。油絵や井伏鱒二の書も飾られている。左手がカウンターになっていて、右手がテーブル席。スタッフは初老のマスターと女性2人。BGMはクラシックが流れていた。
              武蔵野文庫③ 
              吉祥寺文化?

「気に入ったわ」
村民2号が奥のテーブル席に腰を下ろすなり、満足そうにつぶやいた。メニューの中から、村長は「茶房サンド」(700円)、村民2号はこの店の名物「カレーセット」(サラダ、コーヒー付1200円)を頼んだ。村長もコーヒー(550円、セットにすると100円引き)を頼むことにした。
              武蔵野文庫② 
              メニューに釘づけ

13分ほどで、小石原焼きの大皿に盛られた「茶房サンド」がやってきた。オリジナルのカレーツナサンドで、それが4つと、さらにハムサンドが同じく4つ。カレーツナはツナとマヨネーズ、カレー粉、それに細かく刻んだキュウリを合わせたもので、ツナのボリュームが凄い。ポテトサラダが添えらていた。
              武蔵野文庫3 
              茶房サンド
              武蔵野文庫2  
              いい景色

ガブリと行くと、スパイシーな風味が立ち上がってくる。ツナと冷たいキュウリが暑さでバテ気味の舌に心地いい。パンがしっとりしていて、すべてに丁寧さが伝わってくるような美味。バターとマスタードの香りがほのかに漂う。ややもすると、カレーのスパイシーがツナの風味を上回る。ツナ好きの村長にとっては微妙な絶妙だが、これはこれで悪くはない。できれば、カレー抜きのツナも組み入れてほしいが。
              武蔵野文庫⑤ 
           カレーツナのボリューム
              武蔵野文庫6 
              たまらない!

ハムサンドは薄切りのハムが3~4枚ほど層になっていて、柔らかでしっとりしたパン生地と相性がいい。ハムの風味、敷かれたレタスの鮮度もいい。すっかり平らげると、かなりの満腹感。
              武蔵野文庫⑧ 
              ハムサンド

「カレーは当たり。でっかいジャガイモとチキンのかたまりが本格的なルーとともによく煮込まれていて、茶房とは思えない味だわ。ボリュームがこちらも凄い。コーヒーもかなりのレベルで、すべてが気に入ったわ。さすが吉祥寺。もう一度、期限付きでこの街に住みたいわ」
              武蔵野文庫5 
              恐るべきカレー

「ここは30年ほどの歴史だけど、その前が驚き。知る人ぞ知る『茶房 早稲田文庫』の流れを汲む店なんだよ。カレーもその時のレシピのまま。旨いはずだよ。井伏鱒二や五木寛之、それに最近では大ヒットする前の宮崎駿も食べていたようだ」

「こういう茶房は少なくなってきているだけに、貴重だわねえ。ハーモニカ横丁もいいけど、吉祥寺文化は奥が深いわ」
「その通り!もう一つ言いたい。若者よ、『小さざ』とか『さとう』のメンチばかりに並ぶんじゃないぞ」
「あれっ、さっき小さざの最中を買ったのは誰だったけ?」
「・・・・・」

本日の大金言。

吉祥寺は若者が住みたい街人気ナンバーワンだそう。その気持ちはわかるが、まずはスマホの電源を切って、自分の足で街を歩いてみるのも一考だと思う。


                           武蔵野文庫10 


花火の後の絶妙「手羽ギョーザ」

 先週の話になるが、友人宅で花火を見ながら暑気払いのパーティーに招待された。江東区南砂町にある豪華マンションの共有スペースで気の置けない友人たちと歓談しながらの3時間はぜい沢な時間となった。事前に「必ず一品持ってきてほしい」との要望があり、村長は悩んだ末に、北埼玉の隠れ逸品「手羽ギョーザ」を持っていった。
              富沢宅② 
              友人宅の暑気払い

横浜・中華街のシュウマイ、枝豆、唐揚げなどなど食通が多いだけに旨そうな料理がズラリと並んだ。酒もビールはもちろん、クレタ島の赤ワインや八海山の純米大吟醸スペシャルバージョンなど、珍しいものがテーブルの上に置かれていた。20階のベランダから眺めた花火もよかった。それぞれの人生の陰影も夜空で交錯する。複雑な余韻の残る一夜となった。
              富沢宅③ 
              魔法の花火

ウマズイめんくい村に帰ってきて、その話を村民2号にしたら、「私はその手羽ギョーザ、食べたことないわ」と言い出した。足元で花火がさく裂しそうだった。これはいけない。その翌々日、埼玉・加須市城址公園近くにある「鳥正本店」へポンコツ車を走らせた。
              橋本鳥肉店① 
              鳥正本店

住宅街にあるその店は地元の人気店で、手羽ギョーザや唐揚げはすぐ売れ切れになってしまう。そのため予約して買いに来る人がほとんど。パッと見にはあまりにシンプルな店構えだが、この地で50年ほどの歴史があり、もともとは鶏肉専門店だった。その後、惣菜もやるようになり、それが口コミで旨いと評判を呼び、今では予約しないと買えないほどの人気店になった。注文してから揚げるので、待つ時間が必要。

「手羽ギョーザ」は一つ90円だが、揚げると100円になる。ラードのいい匂いが店先にも漂い、高齢の主人とその息子だろうか、40前後の男性が黙々と唐揚げやらメンチやらコロッケやらを揚げていた。立ち姿がいい。
              橋本鳥肉店 
              昭和の匂い
              橋本① 
              すぐ売り切れる

夕方、予約しておいた「手羽ギョーザ」を5本(500円)買い込んで、ウマズイめんくい村へ。暑いので缶ビールとキンキンに冷えた白ワインを用意する。紙袋から取り出しただけで、いい匂いが室内に充満するようだった。見事なきつね色。
              橋本② 
              手羽ギョーザの時間

ガブリと行くと、やや濃いめの味付けの、何とも言えないジューシーな旨味が口中に広がった。表面にはうっすらと片栗粉がまぶしてあるようだ。鶏肉は国産鳥を使っていて、醤油と日本酒、それに生姜などの隠し味が効いている。その手羽肉の旨さはスーパーなどで買うものとはひと味違う。手元の部分がもっこりしていて、そこにギョーザの具がぎっしり詰まっていた。
              橋本⑤ 
              言葉はいらない
              橋本⑥ 
              裏から見ると・・・
              橋本⑦ 
              具がぎっしり

鶏肉のミンチ、ネギ、生姜、玉ネギなどでこねられた具は、ほのかに甘みがあり、やや濃いめに揚がった皮ときれいな肉との相性がとてもいい。健康を理由にラードを使わない店もあるが、ここはラードしかない。そんな決意が漂っていた。菜種とラードをミックスしているかもしれない。そのあたりを店主に聞こうとしたが、職人気質の店主は一瞥しただけで答えてはくれなかった。それもやむなしと思わせる物腰だった。

「人気があるのがわかるわ。これで1本100円は安い。鳥の肉汁感と具のバランスがとてもいい。できればサラダ油で揚げてほしいけど、味わいが落ちるかもね。これを村長だけが食べてたなんて許せないわ」

「昔食べたはずだよ。忘れてるだけだよ」
「食いものの恨みは恐ろしいわよ」

「忘れてるだけだっ手羽先」
「そんな小手先のダジャレでごまかされないわよ」
「ひえ~ギョーザン」
「つき合ってらんないわ・・・」

本日の大金言。

手羽先餃子のルーツはタイの屋台らしい。それを食べた日本人が持ち帰って商品化したところ人気を呼び、今ではB級グルメの一ジャンルを作っている。名古屋名物の手羽先唐揚げもその流れだと思う。




                           橋本⑨ 




谷中の人気かき氷と京都

 猛暑で年老いた三姉妹が熱中死するなど、痛ましい事故が相次いでいる。ウマズイめんくい村もあまりの暑さで崩壊の危機。こういう時はかき氷に限る。今かき氷界で超がつく人気店が東京・谷中の「ひみつ堂」。思い立って、銀座に出たついでに足を伸ばすことにした。時計を見ると、午後3時過ぎ。秘密のひみつの行動。
              ひみつ堂 
              ひみつ堂は大行列

だが、谷中銀座、夕焼けだんだんの路地を入ったところからスマホ片手の大行列。店のスタッフに聞くと、「2時間ほどはお待ちいただきます」と強気の受け答え。かき氷に2時間も待つ趣味はない。仕方なく、すぐ近くにあるもう一つのかき氷屋へ。ここも人気のかき氷屋だが、ひみつ堂ほどの行列ではない。案外、穴場かもしれない。
              茶遊亭 
              遊茶亭へ

八女煎茶(やめせんちゃ)の専門店「茶屋舎人園」が5年前から始めた甘味屋「茶遊亭」で、入り口にはひみつ堂に負けないくらいのてんこ盛りかき氷のメニューが「こっちの水はあ~まいぞ」とささやいていた。京都の虎屋一条店で食べたかき氷と比較してみるのも悪くはない。

店内はやはり若い女性客が多い。村長はメニューを見ながら、女性スタッフに「何が一番人気?」と聞いてみた。
「やっぱりお茶屋ですから、八女抹茶金時ですね」
虎屋もひみつ堂も宇治金時だが、ここは八女茶の店であることを確認。その矜持やよし。850円とひみつ堂より50円ほど高いが、「では、それを」と頼むことにした。
              茶遊亭② 
              かき氷メニュー

面白いことに、熱い塩こぶ茶とほうじ茶が前菜のように出てきた。冷たいかき氷の前に熱いお茶を出す。渋すぎる。10分ほどで、お盆に乗った見事な「八女抹茶金時」(800円)がやってきた。宇治抹茶と八女抹茶の違いはよく分からないが、チンパンジーとピグミーチンパンジーほどの違いはないと思う。エベレストのようなかき氷の上から八女抹茶の渋い緑色が白を覆い尽くすように流れ込んでいた。へその部分になぜか蜜煮した大栗が満月のように佇んでいる。悪くないビジュアル。
              茶遊亭③ 
              まずは熱いお茶が2種
              茶遊亭④ 
              見事な絶景
              茶遊亭⑤ 
              ええのう

スプーンを入れて、まずはひと口。天然の湧水から作った氷を使っているそうで、口に運んだ途端、そのきめ細かさがわかった。いい抹茶の風味が同時に伝わる。抹茶を引き立てるためか、甘露水は甘さがかなり控えめ。蜜煮した栗はまずまずの味わい。
              茶遊亭⑥ 
              天然水のきめ細かさ

スプーンでどんどん掘り下げていく。村長の大好きな金時への期待が高まる。だが、いくら掘り下げても、あんこが出てこない。あれれ、あれれ。ようやく底の底のほうにあんこが見えてきた。あんこ中毒者の怒りが湧いてきた。虎屋一条店で食べた「和三盆かき氷」と「宇治金時」が絶妙だっただけに、つい比較してしまいたくなる。
              茶遊亭⑨ 
              あんこや~い
              茶遊亭10 
              ようやくあんことご対面

あんこは自家製ではなく、近くのたい焼き屋のあんこを使っているというのもわかった。風味もあり、悪くはないあんこだが、いかんせん量が少なすぎる。谷中は好きな街だが、食文化の奥行きに関しては京都とは比較にならない。かき氷で腹を立てる方もおかしい。これは抹茶氷だと思えばいいだけではないか? 観光地だと思えばそう腹も立たない。しばらくして怒りは治まったが、谷中は好きな街だけに人気先行の先行きがつい心配になった。

本日の大金言。

たかがかき氷、されどかき氷。かき氷ブームでかき氷の値段がどんどん高くなっている。背景の地球温暖化がうらめしい。



                           茶遊亭1

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猛暑に「山形冷やしラーメン」

 久しぶりに東京・神保町へ。ここには村長の遠い親戚の古本屋もある。好きなジャズ屋もある。あちこちに顔を出して雑談しているうちに、あっという間に午後3時を過ぎてしまった。夕方には北千住に行かなければならない。慌てて外に出ると、相変わらず猛烈な暑さが横たわっていた。

昼飯を食べていないことに気づいた。汗が噴き出している。駿河台下を小川町寄りに歩くと、「冷ったいラーメン」の幟(のぼり)が見えた。「山形名物」の文字も。満艦飾のような店構え。「麺ダイニング ととこ」という店名。このあたりは何度も歩いているはずなのに、どうして気づかなかったんだろう? 人間の視野など当てにならないな、頭蓋骨の中の幻想から一歩も抜け出せないな、などと思ったりする。暑さのせいで頭までおかしくなったのかもしれない。
              ととこ② 
              冷ったいラーメンて何だ?

山形の冷やしラーメンは山形まで行って食べた元祖「栄屋本店」に少々がっかりさせられた記憶がある。旨いのは最初の3~4口ほどで、溶け始めた氷と単調な味に期待が大きかった分、「こんなもんか」と気分も冷めてしまった。ここも同じか? 「冷たい」ではなく「冷(つ)ったいラーメン」と山形弁で表記してある。あまりの暑さにも後押しされて、飛び込むことにした。
              ととこ① 
              雑貨屋さん?

まるでスナックかバーのようなL字のカウンターが伸びていた。壁には山形の地酒のメニューがこれでもかと表記してある。右奥に4人掛けのテーブルも。正面奥が厨房のようで、そこに店主らしい男性の姿が見えた。夫婦なのか、おしゃれなベレー帽をかぶった女性が冷たい水を持ってきた。
              ととこ④ 
              つったいメニュー
              ととこ2 
              冷酒を飲みたくなる

定番(?)の「つったいラーメン」(800円)を頼んだ。12~3分ほどで、白い陶器のラーメンどんぶりに盛られた冷やしラーメンがやってきた。大きな海苔、鶏チャーシューが中央に2枚、斜め切りの長ネギ、メンマ、キュウリ、ナルト、ワカメ、それに菊の花がパラパラと散っていた。氷が4~5個ほど醤油ベースの黒っぽいスープに浮いている。菊の花とは珍しい。確かに山形の匂い。
              ととこ⑥ 
              氷の世界?

「鶏チャーシューは炙(あぶ)ったもので、熱いですから、それだけは冷めないうちに食べてくださいね」
女将らしい女性が言葉を添える。昔山形美人系。ついでに「ととこ」の意味を聞くと、「ニワトリの赤ちゃん言葉なんですよ」とか。ニワトリの赤ちゃんになりたい。
              ととこ⑧ 
              炙り鶏チャーシュー

これが当たりだった。まずは鶏チャーシュー。まずまずの旨さ。次に醤油ベースのスープへ。かなり黒っぽく見えるが、鶏の出汁が効いていて、旨味がにじみ出ている。濃くなく、まろやかな味わい。ほのかに柚子(ゆず)の香り。複雑な隠し味も潜んでいる。聞いてみると、「しいたけとかタマネギなども使っている」そう。素材にこだわりを持っているようで、無化調、醤油も鶏肉も山形から取り寄せているとか。
              ととこ⑨ 
              冷たいスープ
              ととこ11  
              秀逸な細麺
              ととこ10 
              メンマもマル

感心したのは黄色みの強い細麺。コシがしっかりとあり、スープによく絡む。「栄屋本店」では食べているうちに徐々に飽きが来たが、これは最後まで飽きが来なかった。氷が固いのか、溶けも気にならない。800円という価格は安くはないが、それ以上にささやかな満足感が広がった。本場でガッカリして、東京で感心する。食材の説明が過剰なことと、満艦飾風の入り口はやや興ざめだが、今度は夜に来てみたくなった。

本日の大金言。

冷やしラーメンと冷やし中華は似て非なるもの。もう少しブレークしてもいいのに、まだブレークまでは行っていない。レベルの高い冷やしラーメンの登場を待つしかないのかも。



                          ととこ12 



冷やした京菓子「松露」の意外

 京都旅行の際に、祇園商店街を歩いていると、そこだけ異次元の匂いのする京菓子屋があった。すぐ並びには有名な「祇園辻利」があり、冷たいスイーツを求める行列が通りを邪魔するほど続いていた。だが、その店は客の姿が見えない。相当な歴史を感じさせる古びた店構えで、入りにくいのかもしれない。
              松葉屋⑤ 
              祇園商店街の異空間

それが「松葉屋」だった。へそ曲がりで好奇心だけは人一倍の村長は、飛び込むことにした。奥からメガネをかけた初老の店主が出てきた。白衣姿。大学教授か哲学者のような、只者ではない風貌。一瞬尻込みした。
              松葉屋① 
              松葉屋

店内は干菓子と半生菓子が置いてあり、「松露」に目が行った。こしあんと白あん、それにうぐいすあんの3種類。箱入りは1350円。それを買おうかどうか迷っていると、店主が「自家用やったら、こっちの方がお得ですよ」と気さくに話しかけてきた。「松露の量は同じやから」。その一言で袋入り(896円)を買い求めた。案外いい人かもしれない。
              松葉屋④ 
              箱入り
              松葉屋③ 
              袋詰めが得?

「店は相当な老舗とお見受けしましたが」
おずおずと聞いてみる。
「そんな、あなた。たった70年ですよ。この辺りは100年や200年の店ばかりですよ。ウチが老舗なんちゅうたら笑われますよ
目の前で手をパタパタ横に振って、哲学者は気さくに答えた。意外と話好きかもしれない。軽くジャブを出してみた。

「小豆は丹波ですか?」
「丹波?とんでもありまへん。丹波物使ったら、この3倍の値段なります。北海道十勝産で十分美味い。そんなに変わらしまへんで」
「砂糖は何を?」
「ウチは白ザラメです。白ザラメが一番だと思うてます」

ウマズイめんくい村に持ち帰ってから、賞味してみた。見事なすり蜜に包まれた3種類の松露は、見た目も味わいもさすが京都と唸りたくなるものだった。こしあんの風味、白あんの風味、それにうぐいすあん。きれいな風味。白あんは手亡豆ではなく白小豆を使っていた。それだけで店主のこだわりがわかった。
              松葉屋② 
              ムフムフの時間
              松葉屋③ 
              冷やしてみる

うぐいすはたぶん白小豆にクチナシ色素で着色しているに違いない。その鮮やかな色に、村民2号が「私はこれが一番好き。風味もいいわ」と漏らしたほど。5~6個賞味してから、あまり暑いので、冷蔵庫で3時間ほど冷やしてみた。
              松葉屋④ 
              すり蜜の美味
              松葉屋10 
              こしあんの風味

これが予想を超える冷菓子に変貌していた。かじるとすり蜜の衣のガサッとした崩壊音とともに、冷たいあんが小豆の素朴な風味とともに舌の上でスーッと溶けていく。すり蜜の濃厚な甘さとあんの風味が身をよじるように溶けていく。口中にささやかな天上界。冷たい、快楽的な美味。
              松葉屋⑥ 
              白小豆
              松葉屋⑧ 
              きれいな風味
              松葉屋⑤ 
              鮮やかな美味
              松葉屋⑨ 
              わてが一番おます

「以前、京洛グルメ先生に亀屋友永の小丸松露をいただいたことがあるけど、あれが横綱だとしたら、これはたぶん小結か関脇クラスかな。亀屋友永ほどの洗練はないけど、どこか素朴で、何とも言えない気品と風味があるわ」

「松露は手間暇のかかる半生菓子で、和菓子職人の腕が決め手になる。あの哲学者みたいな店主は二代目だと言ってたけど、いい腕なんだな。一つのことを突き詰めていくと、ああいう顔になるかもな」

「村長は相変わらずマヌケ顔だけど。突き詰め方が足りないんじゃないの?」
「・・・・・・」

本日の大金言。

京菓子の奥は深い。スマホで食べログを見て、行列に並ぶ。それも悪くはないが、そのすぐ近くに本物が潜んでいるかもしれない。そのことを肝に銘じたい。



                            松葉屋⑦ 

「B級グルメオールスター」の哀愁

 ペンクラブの編集会議に出席する前に、秋葉原で途中下車することにした。先月オープンした「B-1グランプリ食堂」をのぞいてみようと思ったからである。本日も暑い。日本のいいもの逸品市場「ちゃばら」の隣り、JR高架下にあるスペースに幟(のぼり)がはためき、ワゴンカーが8台ほど並んでいた。いかにもの世界だが、悪くはない。
              B1グランプリ食堂8 
              B-1グランプリ食堂
              B1グランプリ食堂② 
              B級グルメの殿堂?

ちょうどおやつの時間。客でごった返しているかと思いきや、意外に人が少ない。横手やきそば、八戸せんべい汁、甲府鳥もつ煮などなどB1-グランプリで名をはせた地方の名物料理が一挙にここで食べれるというのが売り。メニューの数は14種類。B-1グランプリの常設公認店だそう。Suicaでも決済できるが、村長は施設内の券売機で買うことにした。
              B1グランプリ食堂⑥ 
              2種類ゲット

迷った末に、「北上コロッケ」(2個300円)と「久慈まめぶ汁」(300円)を選んだ。水が欲しいので、「水はないですか?」と聞いたら、「水色のワゴンカーのところにあります」というお返事。だが、そこに行っても「水のサービス」があるのかどうかもわからない。スタッフの対応は悪くはないが、もう少しわかりやすいサービスが必要ではないか、ブツブツ言いながら、時間がないので、水はあきらめることにした。
              B1グランプリ食堂⑧ 
              屋台感覚

イートスペースのテーブルに腰を下ろして、賞味してみることにした。エアコンがないので、暑い。まずは北上コロッケ。屋台のようなプラスティックの皿がB級ぽくって悪くはない。ウースターソースをかける。北上コロッケは北上地方の名産「二子さといも」を使ったコロッケ。ジャガイモではない珍しい里いもコロッケ。
              B1グランプリ食堂1 
              北上コロッケ

箸で二つに割ると、グレーの里いも生地が出てきた。里いも好きの村長にとっては、期待していた世界。コロモがサクッとしていて、里いもの粘っこい風味が意外に旨い。だが、里いも以外に具がほとんど見えない。本来なら、黒毛和牛や白ゆりポーク、それにアスパラガスが入っているはずだが、顕微鏡で見なければわからないほど。ようやく肉の小さな粒と緑が見えた。アスパラガスかどうかは確認できない。
              B1グランプリ食堂6 
              里いものコロッケ!
              B1グランプリ食堂3 
              意外に旨い

次に「久慈まめぶ汁」を賞味。プラスティックのお椀は小さいが、大根、しめじ、油揚げ、焼き豆腐、人参など具が盛りだくさん。そこに丸いまめぶが2個愛らしく佇んでいた。醤油ベースの汁だが、味はかなり濃いめ。まめぶがなければ具だくさんの田舎汁だが、このまめぶがユニーク。
              B1グランプリ4 
              久慈まめぶ汁
              B1グランプリ食堂5 
              むむ、クルミと黒糖

かじると、すいとんのような小麦粉の食感で、その中にクルミと黒糖が入っていた。クルミの風味と黒糖の甘さが口中に広がる。妙な感覚。東北の食文化は奥が深いが、これもその一つだろう。NHK連続ドラマ「あまちゃん」で人気が広がったという背景もある。だが、ここで食べるまめぶ汁には出汁感がない。

どちらも価格もリーズナブルで、まずまずのB級ぶりだが、何か物足りない。郷土料理はたとえB級グランプリのスターといえども、やはり地元で食べるに限る。郷土料理のコンビニ化、ビジネス化はどこか無理があるのではないか。ま、こんなもん。そう思えばそれなりに楽しむこともできるかもしれないが。

「そりゃあ、地元で食べるのが一番でしょう。コロッケにしても何にしてもここのは冷凍ですからね。でも、それは仕方ないことです。結構楽しんでますよ(笑)」
常連だという隣り合わせの客の何気ない言葉が、アキバの暑い高架下に無機質に響くのだった。

本日の大金言。

B-1グランプリは地域おこしという意味では成功したが、失うものもある。作られた世界はあっという間に風化するかもしれない。


                           B1グランプリ食堂7

ワンダーな「まぜそば」と格闘

 まぜそばは折に触れて食べるが、今回は埼玉・大宮で見つけた仰天のまぜそばをご紹介しよう。お世辞にもヘルシーとは言えないので、食べるときにはある程度覚悟が必要。東口を下りて、大宮区役所裏手の通りをブラブラ歩いていると、黄色地に黒い文字で「ゴリラーメン」という店名が見えた。ゴリラーメン? あまりにシンプルな異質。どんな店主がいるのか、ムクムクと好奇心がわいた。入るっきゃない。
              ゴリラーメン 
              うむむの外観

午後1時過ぎ。ランチタイムの一戦を終えたけだるい余韻がカウンターだけの店内に漂っていた。そこに汗だくだくの店主が一人。ひと目見た瞬間、店名の理由がわかった。あのゴリラ―マンを連想させる風貌で、次の仕込みをしている最中だった。「いらっしゃいませー」外見と反比例して、声がかわいい。村長はその瞬間、好感を持った。
              ゴリラーメン① 
              メニューは少ない

メニューは「ラー」(700円)、「大ラー」(800円)、「まぜ」(750円)、など麺類は9種類ほど。ラーメンをラー、まぜそばをまぜ。そのコミック的な遊び心も悪くはない。券売機で「まぜ」(750円)を選んだ。12席ほどのカウンターの中央に腰を下ろした。

「トッピングがヤサイ、ニンニク、アブラ、タマネギ、チーズの中から二つ選べます」とゴリラーマン(失礼)。「ではタマネギとチーズを」と村長。待ち時間は長めで13分ほど。まずはそのビジュアルに圧倒された。中央に生卵の黄身がどっかと腰を据え、そのすぐ横に、厚さがゆうに2センチはありそうなドデカいチャーシューが2枚、ごろっと配置されていた。うむむ。豚バラチャーシュー。
              ゴリラーメン④ 
              ドカン

その下にはモヤシ、キャベツが控え、さらに焦がしタマネギ、鰹節、粒マスタードが脇役として配置されていた。溶けたチーズと刻み玉ネギの姿も見える。さらに驚くべきはその下の茹で上げられた麺。茶色っぽい平打ち極太麺がシュウシュウと音を立てているようだった。底にスープが潜んでいる。
              ゴリラーメン⑤ 
              チャーシューの圧倒
              ゴリラーメン⑥  
              爆発寸前

まぜそばはかき混ぜる必要がある。箸でぐわんぐわんとかき混ぜると、醤油系のいい匂いが立ち上ってきた。麺は軽く見積もっても300グラムはある。まずはひと口。ガツンと醤油系の濃い味が舌を襲った。粒マスタードやチーズ、鰹節の匂いが複雑に混じっている。極太麵はゴワゴワした食感で、デリカシーという言葉はここにはない。
              ゴリラーメン⑦  
              かき混ぜ開始

思ったよりもアブラアブラしていない。ストレートな和風のテイストさえ感じる。チャーシューはしっかり作っていて、思ったよりも柔らかい。だが、あまりに量があり過ぎて、どう反応していいのか、舌が迷っている。これは店名通り、ゴリラのラーメンではないか。微妙な味わいなど、ゴリラの前では必要はない。そのまま楽しめそう主張しているのかもしれない。
              ゴリラーメン⑨ 
              ゴワゴワ極太麵

二郎インスパイア系などと言われるかもしれないが、これはゴリラ系だと思う。味わいはバラバラで深みはない。いや、深みを求めてはいけないラーメンなのではないか? 格闘しながら、何とか完食にこぎつける。どっと水が飲みたくなった。水が美味い。生きてる幸せを実感する。ふと店主と話をしたくなった。
              ゴリラーメン11 
              水が欲しくなる

「すごいまぜそばだねえ。店は何年くらい?」
「3年です。ただのジャンクラーメンですよ。麺ですか? パンの小麦粉を使ってるんですよ。高級な小麦粉ではないので、その分、量でサービスしています(笑)」

Tシャツが汗で水をかぶったように濡れている。率直で意外な好青年。埼玉でも人気が上昇しているラーメン屋でもある。微妙な味わいを求める村長も、この店の前では「つべこべ言わずに食え」と言われている気がした。舌が醤油の濃さと粒マスタードやら何やらの爆撃でしびれたままである。久しぶりに食べることは格闘だ、という思いに襲われたのだった。

本日の大金言。

ラーメンもキャラクター勝負の時代に入ったかもしれない。店主の個性をウンチク抜きでストレートに出す。それがいいかどうかは客が決める。そのうちゴジラーメンとかキングギドラーメンなども出てくるかもしれない。





                          ゴリラーメン13 








プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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