別次元の「自家製生麺やきそば」

ペンクラブの懇親パーティーに行く前に、神田・神保町の焼きそば屋に立ち寄ることにした。
「神保町に来たら、いっぺん行ってみるといいよ。栃木のジャガイモ入り焼きそばとは別次元の味だよ。凄い行列だから、覚悟してね(笑)」
出版社の食通友人が村長をからかうように、かようなことをほざいていたからである。

午後4時半。「売り切れご免」の店で、テレビや雑誌でも取り上げられて、それがさらに人気を加速しているそう。神保町交差点から白山通りに出て、しばらく行くと、左手に「自家製生めんやきそば専門 みかさ」の暖簾が見えた。悪くない店構え。創業昭和59年と書いてあるが、もっと新しい店に見える。時間が時間のせいか、行列は2人ほど。「シメた、ラッキー」と思った。
              みかさ① 
              タッチアウトか?

写真を撮っていると、店から黒ずくめのスタッフが出てきて、「本日終了です のプレートを置こうとした。しまった! 慌てて、「冥王星からここまで来たんです。どうか入れてください」懇願すると、苦笑しながら、「お一人ですか、いいですよ」のお返事。人生一寸先に何があるかわからない。店は9人しか座れないカウンターのみ。先客は7人ほど。
              みかさ② 
              並も大も同じ値段

奥が厨房になっていて、2人のスタッフがいた。一人が大鍋で生めんを茹で上げ、もう一人が鉄板で焼きそばづくりを分担していた。券売機で「ソース 並」(700円)を頼むことにした。「塩」にも心が動いたが、ここはまずは定番で行かねばならない。
              みかさ1 
              カウンター席のみ

13~4分ほどの待ち時間で、「ソース(並)」がいい匂いを発散させながらやってきた。そのビジュアルに軽く驚く。楕円形のスチール皿に小高い山のような生麺焼きそばがジュウジュウと音を立てるように盛り上がっていた。見事なソース色の世界。頂上には半熟たまご焼きが乗って、手前にはカリカリに焼いた豚バラ肉が5~6枚。向こう側には千切りにした長ネギがどっさり。青のりが盛大にかかっていた。
              みかさ④ 
              オオオの登場
              みかさ⑤ 
              上空より
              みかさ⑥ 
              ため息の世界

見ようによっては広島風お好み焼きのようで、違うのはその下の生麺焼きそば。箸でグイとすくってみる。具はもやしとキャベツだが、平打ち太麺の存在感にため息が出そうになる。白河ラーメンのような縮れ麺で、ソースのテカりが生々しい。まずはひと口。まさにソース焼きそばだが、八角のような匂いがかすかに鼻腔をくすぐる。中華のエキスも取り入れている? うむ。
              みかさ⑨ 
              自家製生麺どす

ソースは何か隠し味が入っているに違いない。醤油とかオイスターソースあたりか。麺のもっちり感とソースのコテコテ感。半熟玉子焼き、千切りネギ、ベーコンのような豚バラ肉のカリカリ感が、アルゼンチンタンゴのように濃厚に絡んでくる。しばらくすると、ソースの奥からスパイシーさが口中一杯に広がってきた。水をガブッと飲む。確かに旨いが、味がかなり濃い。
              みかさ10 
              半熟卵焼き
              みかさ⑦ 
              豚バラ肉
              みかさ11 
              辛子マヨネーズ

友人が言うように栃木市のジャガイモ入り焼きそばとは次元が違う。脂はラードか、あるいは豚バラ肉の脂を使っているに違いない。麺は北海道産の国産小麦粉を使った自家製で、そのため「いっぱい作れないので、売切れ次第終了にさせていただいているんです」(店長)。ソースも自家製で、「3種類使っています」(同)。これだけのこだわりの焼きそば専門店は他に知らない。

食べ終えると、かなりの満腹感と満足感に襲われた。店長に聞いてみる。
「何系の焼きそばなんだろう?」
「特にないですよ。強いて言えば、先代が熊本なので、その時の味でもあるんです。ここに来てちょうど2年になります。昭和59年創業というのはその熊本の店から、ということなんです」
ソースと八角のかすかな匂いとスパイシーな刺激が口中に残ったまま、ヨタヨタと如水会館へと急いだ。白ワインを早く飲みたくなった。

本日の大金言。

那須塩原のソースラーメン、会津若松のソースかつ丼、神保町のソース焼きそば。醤油文化とは違うソースの新世界。すでに新しい物語が始まっている。



                        みかさ12 

















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仰天の「三つ編みこしあんブレッド」

小江戸 栃木市に来たついでに街中をブラ歩き。ほぼ2年ぶりの蔵の街。すると、栃木市のゆるキャラとち介の姿が見え、見覚えのないスポットが広がっていた。「まちの駅 コエド市場」の看板。栃木市の農産物や名産品をPRする目的で作られた巨大なアンテナショップだそう。今年4月にオープンしたばかりで、入り口にはコミュニティーFM放送スタジオがあり、そこでハーフっぽい美人パーソナリティーが放送中だった。うむ。
              コエド市場 
              新しい名所?
              コエド市場① 
              FMスタジオもある

村長の目は美人パーソナリティーから、その奥にある焼き立てパン屋に移行していた。「あんこたっぷり こしあんブレッド」(450円)の文字。美人もいいが、こしあんブレッドにはかなわない。パブロフの犬状態。よろよろと急ぐと、すでに残り3個となっていた。何よりもその圧倒的なボディに釘付けになってしまった。
              コエド市場② 
              パブロフの犬

食パン一斤分はあろうかという生地量で、こんがりと焼かれた三つ編み状の焼き目にこしあんが練り込まれていた。こしあんの量は200グラムと説明してあった。200グラムだとお? 手に持つとどっしりとした重さが伝わってきた。かような食パンはこれまで見たことがない。すぐに買い求めた。
              コエド市場⑤ 
              おおおの出会い

「当店のオリジナルで、イチ押しのパンです。作るのに試行錯誤してようやく完成したものなんです。三つ編みにして焼くのも大変なんです。午前中に売り切れになってしまう日もあります」
店員さんがとち介顔で話した。

利根川シンポジウムを終えて、ウマズイめんくい村へと急いだ。早くこのこしあんブレッドを食べたい。あんパンには牛乳が似合う。村民2号が待ち構えていて、賞味となった。ナイフで切ると、パンのしっとり感が伝わってきた。マーブル模様のこしあんの量が半端ではない。
              こしあんブレッド① 
              ええのう
              こしあんブレッド⑤  
              愛の三つ編み
              こしあんブレッド③ 
              たまらん

一切れを手に取ると、柔らかな重み。まずはひと口。しっとり感と焼きたてのパンの香り、そのすき間からほどよい甘さのこしあんが絶妙に広がってきた。いい色味のこしあんは地場の小豆を使ったもので、深沢製餡所から取り寄せているそう。その風味も悪くない。
              こしあんブレッド⑥ 
              言葉はいらない
              こしあんブレッド⑦ 
              愛のコラボ

「450円は安くはないけど、あんこがこれだけ入っていることを考えると、むしろ安いくらいだわ」
「こしあんが練り込まれたパンは他にもあるけど、もっと小さいものが多い。三つ編みにしているのもユニークだよね」

「小麦粉は国産ではないんじゃないかしら。原材料を見たら、乳化剤とか香料とかあれこれを使っているのね。そこがちょっと残念かな。添加物は少ない方がいい」
「欠点を見るより、これだけのものを作っていることが凄い。地場のあんこもいい。まだスタートしたばかりのようだから、これからさらに他にないパンを作っていくんじゃないかな」
              こしあんブレッド⑧ 
              天国への階段

「また買いに行くつもりでしょ? 凝り始めると止まらないんだから。じゃがいも入り焼きそばとこしあんブレッドで、体重も我が家の家計もパンクするかもね」
「そんなことないよ。第一どちらも安い」
「何言ってんのよ。ガソリン代と高速代が入ってないでしょ。メチャ高い買い物になるわよ」
「バレたか・・・でも、欠点を見るより長所を見よう」
「長所なんてあったっけ? 髪の毛の少ないことも長所ってこと?」
「・・・・・・」

本日の大金言。

ハード系中心の欧米から見ると、日本のパンのバラエティーな進化は驚異だそう。何せあんぱん文化を根付かせた国である。和魂洋才の先に何があるか?


                            こしあんブレッド1 






「じゃがいも入り焼きそば」の有名店

 利根川シンポジウムに出席するために、栃木市へポンコツ車を走らせた。栃木市は蔵の街でも知られるが、「じゃがいも入り焼きそば」でも有名になりつつある。村長の好きな街の一つで、埼玉・川越ほど観光客が多くないのがいい。シンポジウムには時間があったので、大豆生田商店(おおまみゅうだしょうてん)に立ち寄ることにした。ユニークな店名。目的はむろんここのじゃがいも入り焼きそば。

このあたりはジャガイモ文化地帯でもあり、足利市や桐生市にも「じゃがいも入り焼きそば」がある。面白いことにそちらは「ポテト入り焼きそば」と称している。じゃがいもと焼きそばが意外やミスマッチでないことは、すでに村長も舌で確かめている。約2年半前に栃木市内の「四次元ポケット」で食べたときは、その予想外の旨さに目を見張ったものだ。大豆生田商店は安さとボリュームで特に人気の店。
               大豆生田商店 
               ド派手な看板

県道309号栃木環状線沿いに「いもフライ」の幟(のぼり)が立ち、「栃木名物 じゃがいも入り焼きそば 380円」のド派手な赤い看板が見えた。ここは台湾か? 「大豆生田商店」の文字。駐車場にポンコツ車を止め、店内に入ると、4~5人が並んでいた。ガラス越しに若い男性が焼きそばを作っている姿が見える。行列は地元客のようで、テイクアウトで並んでいることがわかった。
               大豆生田商店① 
               栃木名物だっぺ
               大豆生田商店③ 
             いい匂いが充満している

女将さんらしき高齢の女性が「中で食事ですか?」と声をかけてきた。「はい」と村長。「奥へどうぞ。温かいお茶をすぐお持ちします」と女将さん。このあたりの間が何とも言えない。
               大豆生田商店② 
               この安さ

メニューは多くない。「じゃがいも入り焼きそば」(並盛380円、大盛480円)が基本で、いくつかのメニュー。村長は「いか・じゃがいも入り」(並盛430円)を頼むことにした。奥のテーブル席でこの店を訪れたタレントの色紙などを見ていると、いか・じゃがいも入り焼きそばがやってきた。
               やきそば①  
               懐かしい世界
               大豆生田商店④ 
               正座して食え

並盛とは思えないボリュームで、湯気を立てるソース色の焼きそばの間にジャガイモがごろごろと転がっていた。具はキャベツだけのよう。イカもソース色に染まっていて、その上から刻み海苔が大量にかかっていた。紅ショウガは少ない。これぞ昭和のB級グルメ。
               大豆生田商店⑥ 
               紅ショウガ

麺は二度蒸しした細麺で、箸ですくうとプツプツと切れていて食べやすくなっている。だが、村長はあまり切らない方が好み。ソースは甘めで奥に隠し味が入っているような味わい。ジャガイモはほくほくしていて、その甘みが焼きそばに合っている。北海道産男爵イモを使っているそうで、ソースに絡まった味わいは素朴に美味。イカは出店屋台のイカのようで、さほどの感動はない。キャベツもフツー。 
               大豆生田商店10 
               ジャガイモがごろごろ
               大豆生田商店⑦ 
               二度蒸し細麺

食べ進むうちに、これは駄菓子屋の焼きそばそのものではないか、と思えてきた。旨さというよりも懐かしい味わい。ノスタルジック焼きそば。食べ終えると、お腹に昭和の満腹感がよみがえってきた。ご高齢の店主が顔を出したので、あれこれ雑談。

「もともとは駄菓子屋で、昭和23年に隅の方で焼きそばを始めたんだ。焼きそば専門店になったのは10年ほど前から」
「ソースは地元のソースですか?」
「栃木と足利と佐野のソースをブレンドしてるんですよ。うちのオリジナルブレンド」
「じゃがいもの量がかなり多いですね」
「並盛で大きめなのを1個使ってる。油? ラードではなく、サラダ油です。いつの間にかテレビに取り上げられたりして、お陰様で客も増えて、遠くからわざわざ食べにくる客もいますよ」

焼きそばを作っているのは息子さんだそう。家族3人で切り盛りしている。かつて「三ちゃん経営」という言葉があったが、現代の三ちゃん経営も悪くないなあ、と思う。あまり関係ないが、ひょっとしてあの敏腕オオマミュウダ記者もこのあたりがルーツなのかもしれない。

本日の大金言。

栃木市にはじゃがいも入り焼きそばを食べさせてくれる店は「把握していないので正確にはわかりません。まあ20数軒くらいかなあ」(観光協会)とか。この北関東ののどかさがいい。


                            大豆生田商店11 





盆栽村より無名の特製オムライス

 東武アーバンパークライン(東武野田線)に乗って、大宮公園駅で下りた。知人にもらったチケットで「慈光寺特別展」(埼玉県立歴史と民族の博物館)を堪能してから、大宮盆栽村に向かうことにした。そこで腹の虫が騒ぎ出した。「早くメシにしろ~」。懐中時計を見ると、午後1時を回っている。いい店はないか? 
              埼玉博物館 
              「慈光寺」特別展       

だが、小さな駅と閑静な住宅街なので、村長のB級センサーにビビビと響く店が見つからない。歩くこと15分ほど。盆栽町中央通りにようやく「うむ」という店が見えた。赤レンガの渋い建物の1階。「コーヒー&フーズ ウッディハウス」という看板。「日替りランチ マグロのづけ丼」が旨そうだった。
              ウッディハウス① 
              ウッディハウス、当たりか?

店内に入ると、そこは店名通りのウッディな世界が広がっていた。円形の大きなウッドカウンターが中央にあり、その年季の入った渋いテカりにぐいと引きつけられた。これほど見事なウッドカウンターはそうはない。12席ほどあり、椅子もアンティークで渋い。奥がテーブル席で、4~5人のグループが食事を楽しんでいた。
              ウッディハウス③ 
              円形ウッドカウンターの凄味
              ウッディハウス② 
              いいラインナップ

マスク姿の女将さんは気さくで、メニューを見ている村長に「一番人気は特製オムライスなんですよ。づけ丼もいいマグロを使っているのでおいしいですよ」。最近オムライスにハマっている村長はその一言で「では特製オムライス、お願いします」。コーヒー付きで850円ナリ。

右手奥が厨房になっていて、そこで女将さんが特製オムライスを作り始めている姿が見えた。コックも兼任しているようだ。12分ほどで、いい匂いとともにコンソメスープが置かれ、続いて、大きな白い陶器皿に盛られた特製オムライスがやってきた。おそらく卵は2個は使っている。その上からデミグラスソースがドドドと溶岩のようにかかっていた。本格的な匂いと湯気が立ちのぼり、普通のオムライスともたんぽぽオムライスとも違う、新たな世界が広がっていた。脇役には千切りキャベツとキュウリ2切れ。
              ウッディハウス⑤  
              特製オムライス
              ウッディハウス⑥ 
              ええ景色やなあ

スプーンでまずはひと口。デミグラスソースの濃厚な旨さと卵の存在感。予想以上の味わい。チキンライスが秀逸で、一粒一粒にしっかりと火が通っていてトマトソースが絶妙に絡んでいる。その濃度の濃さがいい。デミグラスソースは自家製で「みんな私が作ってるんですよ。コンソメスープも自家製です」と屈託ない答え。
              ウッディハウス⑦ 
              まずはひと口
              ウッディハウス⑧ 
              ふた口め
              ウッディハウス⑨ 
              こ、これは・・・

食べ進むうちに、チキンライスに具がないことに気付いた。鶏肉もタマネギもグリンピースも入っていない。デミグラスソースにはタマネギやマッシュルームが入っているので、チキンライスには具がないのか? 聞いてみると、「確かにそうです。この店は建物が30年、私が引き継いでから10年になるんです。私の前はレストランだったんですよ。オムライスが人気で、そのレシピをそのまま引き継いだんです。だから、理由はわかりません」とか。とはいえ具がないことをまったく感じさせない旨み。
              ウッディハウス10 
              美味の山

これだけの味のオムライスがこの値段で、しかもほとんど無名なことに、村長はグルメ情報化社会の盲点を見た思い。仕上げのコーヒーを飲んでいると、隣りに常連らしい高齢の紳士が座った。生ビールを頼み、それからマグロのづけ丼を頼んだ。旨そうにぐいっと飲んでから、村長の方を見て、ニカッと白い歯を見せた。「一仕事終えてきたんですよ。だからビールが旨い。ここはいい店です」とつぶやいた。盆栽村の住人かもしれない。

本日の大金言。

テレビやネットの情報はそれなりだと思う。いい店は表通りよりも裏通りに潜んでいる。



                          ウッディハウス12 


「限定5本の希少パン」を予約してみた

埼玉・ 栗橋に近い利根川沿いに住むそば仙人の豪邸に行く途中で、小さな一軒家のパン屋を見つけた。「パン工房komugi(こむぎ)」という店名。入ると、こだわりの食パンやいい焼き色のコッペパンなど十数種類のパンが陳列してあり、試しに「もちもちコッペパン」(粒あんバター140円=税別)を買い求め、そば仙人邸で賞味したところ、5人中4人が「こりゃ美味いね」とうなずいた。東京・亀有「吉田パン」のコッペパンほどの驚きはないが、もっちり感といい、風味といい上質のパンだと思った。
              こむぎ 
              こんなところに・・・
              こむぎ③ 
              売り切れが早い
              こむぎ② 
              よだれが出かかる

以来、この店は村長のお気に入りとなった。北海道産小麦粉を100%使い、無添加生地にこだわっているのも好感。値段が高くないのもさらに好感。比較的近い幸手にある、埼玉でも有数の人気パン屋「cimai(しまい)」も天然酵母パンを売りにしているが、値段が高い。行田にある超人気店「rye(らい)」も高い。美味いけど高い。痛し痒し。

財政事情がひっ迫しているウマズイめんくい村にとっては、「パン工房こむぎ」はありがたい。で、ここの人気の「天然酵母パン・ド・ミ」(1本390円=税別)を予約することにした。一日5本しか作らない。そのため予約しないと手に入らない。「2週間先まで埋まっているんです」と申し訳なさそうに言われ、「では2週間先でいいですからお願いします」と予約することにした。
              こむぎ4 
              天然酵母やーい

で、ようやくその日が来て、ついでに「もちもちコッペパン(粒あんバター)」も買い、翌日の賞味となった。「天然酵母パン・ド・ミ」は見事な焼き色の食パンで、手に持つと、ずっしりとした重さが伝わってきた。「大変よく生きました」の著者・片岡みい子さんからいただいた新潟・燕三条のパン切りナイフで切ると、天然酵母と国産小麦粉のいい香りが立ち上がってきた。
              こむぎ1  
              2週間待ってゲット
              こむぎ① 
              夢の形か?
              こむぎ② 
              素朴な芳醇

最近ハマっている固形マーガリンと粒あんを乗せて、ガブッとかじる。やや固めだが、モチモチ感としっとり感が素晴らしい。ずしっとした弾力感もある。米麹から作った天然酵母を使用しているそうで、その素朴な風味がとてもいい。
              こむぎ③ 
              しっとりもっちり
              こむぎ⑤ 
              村長流の食べ方

「天然酵母でこの値段はマル。しっかりといいパンを作っているわ。いい店見つけたわね
「店は3年半になるそうだよ。家族で始めた店で、娘さんと息子さんがパン職人のようだ。旧大利根町の田園風景にこういうパン屋がある。パン屋は都会ばかりじゃない。ポンコツ車を走らせていると、意外な発見があるってこと」

「ポンコツ村長もたまにはいい発見をするのね。ドヤ顔は似合わないわよ」
「じゃあ、これでどうだ。ヘンなおじさん、へんなおばさん・・・ダッフンだぁ」
「わけわかんない・・・こりゃ、ダメだわ」

本日の大金言。

探せば安くて美味い店は確かにある。そこにある庶民的な職人意識は貴重だと思う。誰もがカネカネの時代に。



                             こむぎ1 




まるで五右衛門、驚きのお稲荷さん

 横浜・馬車道通りを「いい店はないかいな」などとブラ歩きしていると、老舗和菓子屋が目に入った。「明治30年創業 松むら」の看板。うむ。すると、村民2号が「こっちこっち」と合図してきた。それが「いなりの泉平本店」だった。まるでバラックのような質素な店構え。白衣姿の高齢のいなり職人がいなりとかんぴょう巻きを黙々と作っていた。そのあまりに素朴な光景がガラス越しに見え、村長の目が釘付けになってしまった。
              泉平① 
              これが本店とは・・・
              泉平④ 
              よきいなり職人

創業が天保十年(1839年)の文字も見えた。天保十年といえば、まだペリー率いる黒船が浦賀に来航する前である。テイクアウト専門だが、村長は迷うことなく飛び込んだ。財政事情がひっ迫していることもあり、「いなり一箱」(3本入り810円=税込み)を頼んだ。これが見るからに江戸風の煮締めたいなり寿司で、そのあまりの存在感に見惚れてしまった。水飴で長時間煮込んだようなテカリ。北千住の「松むら」よりもどっしりとしている。まるで牢名主か石川五右衛門のようなお稲荷さん!
              泉平③ 
           いなりとのり巻きの世界

村長が感動した京都・新京極の「乙羽」とはまるで違う。調べてみたら、元々は江戸の札差(大名相手のコメの売買商人)泉屋平左衛門が祖先で、その流れで横浜に葦簀(よしず)張りの屋台を作り江戸前寿司の店を出し、それが大当たりして、現在に至っていることがわかった。ペリー来航以来、幕府は横浜を開港し、周辺が急速に発展していった。

いなり寿司は二代目が高野山詣でした際に伝授されたものだそう。それが江戸、東京、横浜と引き継がれてかような黒光りしたいなりになったようだ。ウマズイめんくい村に持ち帰って、賞味となった。折詰を開けると、細長い、濃い飴色のいなりが3本詰まっていた。真ん中で切られていて、甘酢生姜も付いていた。1本当たり270円なり。
              泉平12 
              176年の歴史
              泉平⑤ 
              蓋を開けると・・・
              泉平⑥ 
              濃い江戸のいなり

まずはガブリと行く。恐るべきズシンとくる甘さ。京都のいなりのように、油揚げを油抜きして出汁醤油で炊いている気配はない。油抜きしている気配も出汁の気配もまるでない。固めの酢飯は酢と塩だけだそうで、北千住「松むら」のように白ゴマもない。ぶっきら棒の極み。だが、どうしたわけか旨い! 洗練とはほど遠いのに旨い。食べ進むうちに不思議な感動に襲われる。
              泉平⑦ 
              飴色の驚き
              泉平10 
              素朴の極み?

油揚げの濃いテカリは麦芽糖で煮締めたよう。それもそのはず、醤油と水、砂糖、ザラメで煮込み、さらに代々伝わる秘伝の元汁を加え20時間ほど漬け込んでいるそう。煮方も秘伝だそうで、このフテブテしいまでに煮締めた重量級油揚げの存在感に脱帽したくなった。1本270円は安くはないが、相手が石川五右衛門では分が悪い。
              泉平⑨ 
              癖になる味

新潟の地酒「白龍純米吟醸」をチビチビやりながらあっという間に平らげてしまった。
「もう一箱買ってくればよかったわ。でも、これって江戸のいなりなのかしら?
村民2号も想像の枠を超えた味わいに上気しながら、疑問を口にした。

「そう言えば、店の高齢のいなり職人さんは『京都風でもなく東京風でもなく、ウチのは横浜流です』と言い切っていたなあ。銀座三越にも出店しているのに、未だに原点の店構えと味を続けている。凄いことかもなあ」
村長は空になった折詰を見ながら、「たかがいなり、されどいなり」とつぶやくのだった。

本日の大金言。

洗練の対語は粗野か野暮か? ひょっとして粗野の洗練という世界もあるかもしれない。



                          泉平11 


馬車道裏ビストロの「海鮮ちらし」

 久しぶりに横浜へ。村民2号の友人で有能なフレンチシェフだったK氏の葬儀に参列。感動的な葬儀だった。その後、頭を切り替えて、馬車道通りに足を運び、ランチすることにした。すでに午後2時近い。腹が減っては人生は始まらぬ。異国情緒の通りを歩き回る。昔行った周富輝経営の「生香園」に入ろうかと思ったが、村民2号が難色。路地裏に入る。
              モンテ 
              馬車道通り(横浜・関内)

ふと目に止まったのが「創作ビストロ モンテ」だった。パリの路地裏のビストロのような、小さなレストラン。ランチメニューが目に入った。「ここにしましょ」と村民2号が目を輝かせた。チョコレート色の木のテーブルが6つほど。棚にはワインが置いてあり、壁には「ウニめし」とか「フォアグラプリン」の手書き文字。よだれが出かかる。だが、それらのメニューは夜用のメニューだった。今回は断念。
              モンテ② 
              路地裏のビストロ
              モンテ5  
              食べることから始まる

ランチメニューの中から、「特製海鮮ちらし丼風ランチ」(950円)を頼むことにした。村民2号は「若鶏と色々野菜のトマト煮込み」(850円)を選んだ。どちらもサラダ、コーヒー付き。そう高くはない。奥が厨房になっていて、ジョニー・ディップのような2人のメガネコックの姿が見えた。
              モンテ③ 
              ランチメニュー

10分ほどで、サラダがやってきた。サニーレタスと千切りニンジン。鮮度がいい。自家製のやや甘めのホワイトドレシングが美味。「私の勘はいいでしょ。ここはたぶん当たり」と村民2号が自画自賛。2分ほどして、白い長方形の磁器皿に乗った特製海鮮ちらしがやってきた。ドンブリではなく皿というのが面白い。これが見事なものだった。
              モンテ4 
              秀逸なサラダ
              モンテ⑤ 
              秀逸な海鮮ちらし

見るからに鮮度のいいマグロ、ヤリイカ、サーモン、ブリ、タコ、甘エビ・・・それらが7~8種類ほど折り重なるように横たわっていた。上にカイワレとトビコがパラパラとかかっていた。そのすぐ下には酢飯。「毎朝、築地から直送してもらってるんですよ」と女性スタッフ。
              モンテ⑦ 
              焦るな、醤油

醤油をワサビで溶いて、上からツツツとかける。マグロは生のバチマグロだと思うが、それが二重になっていた。やわらかな旨さで、寿司屋で食べるものと遜色がない。ヤリイカの歯ごたえ、生サーモンのまったり感、ブリもひと味違うので聞いてみると、「天然物です」とか。出し巻きがないのが少々残念だが、そのことを忘れるほどいいレベル。
              モンテ⑧ 
              まさかの出会い
              モンテ⑨ 
              二層のマグロ
              モンテ10 
             考える胃袋

酢飯は柔らかめ。固めの好きな村長だが、これは悪くない。横浜は美味の街でもあることを改めて実感していると、黙々と食べていた村民2号が「パンをもう一枚ください」と追加した。その後、美味そうにコーヒーを飲みながら、「やっぱり私の鼻に狂いはなかった。横浜に引っ越したくなったわ」などとほざいた。ウマズイめんくい村横浜支局の開設も悪くないなあ・・・そう思いながら、あわてて財布の中をそっと覗くのだった。クシャミ。

本日の大金言。

生きることは食べること。食べることは生きてること。人はパンのみに生くるにあらず。しかし、パンがなければ生きれない。70億人超がこの地球上に生きている現実。パリの悲惨な連続テロ事件。



                        モンテ11

創業1532年、芥子(ケシ)餅の極致

 「飯炊き仙人のゲコ亭が復活してるようですよ。あーた、ちょっと前にブログで引退して味が落ちたと書いてたでしょ。相変わらず勉強が足りまへんなあ。もういっぺんチンチン電車に乗って、堺を訪ねたらよろしい。ひっひっひ」

京都にお住いのグルメ仙人先生から久しぶりに糸電話がかかってきて、かようなことをのたまった。ぐやじい~。飯炊き仙人が引退してフジオフードシステムという会社がそのままゲコ亭を引き継いだのだが、引退したはずの飯炊き仙人はその後も店に顔を出し、後進をあれこれ指導しているそう。だが、堺は遠すぎる。ああ悲しい。夜遊びをやめて、貯金箱にお金をためて、もう一度行かねばならない。

と書いたところで、隠し玉を特出しすることにした。知る人ぞ知る堺の超老舗「本家小嶋」の芥子餅(ケシもち)と肉桂餅(ニッキもち)である。ウマズイめんくい村の最終兵器と言ってもいい和菓子。それを今回,、隠し金庫から取り出してご紹介したい。
              本家小嶋 
              元祖の店構え(堺・宿院)

チンチン電車の停留所、宿院から歩いて2~3分ほどの距離。時代から取り残されたようなセピア色の一軒家。それが本家小嶋で、創業が何と室町時代末期・天文元年(1532年)。ややこしい話だが、高島屋はじめデパート展開をしている「堺 小島屋」はまったくの別会社。こちらは江戸時代中期の創業で、本家小嶋の歴史には及ばない。気が遠くなるような話だが。
              本家小嶋① 
              483年の暖簾

ここで村長は芥子餅と肉桂餅の箱入り(各3個入り 920円)を手に入れた。その時の女将との会話。女将は感じのいい丁寧な人柄だった。
              本家小嶋④ 
              時空を超えて

「初代小嶋吉右衛門から数えて、当代で20代目になります。遡りますと、元々が薬種問屋で貿易商だったようです。そのせいで中国やインドシナから芥子の実とか肉桂とかが手に入ったようです」
「創業当時はちょうど千利休が10歳くらいだったことになりますね。その後茶人となり、やがて信長、秀吉につかえる。利休は芥子餅も茶席に出していたようで、ここの芥子餅を出していた可能性が高い」
「それはあったでしょうね」

ウマズイめんくい村に持ち帰って、賞味となった。利休の絵の入った紙包みを解き、きれいな箱を開けると、一個ずつ区切りされた芥子餅と肉桂餅が現れた。芥子餅(ケシもち)は見事なケシの実がびっしりと表面を覆い、肉桂餅(ニッキもち)は表面がでん粉で覆われていた。大きさはそれぞれ3~4センチほど。
              本家小島① 
              おや利休さん?
              本家小嶋 
              いざ戦国の世へ
              本家小嶋① 
              神様か?

まずは芥子餅(ケシもち)。口中に入れた途端、ケシの実の香ばしさが鼻腔を抜け、餅の柔らかさと伸びがとてもいい。こしあんはきれいで極めて控えな甘さ。風味が立ってくる。利休の時代に同じようなこしあんがあったかどうかはわからないが、芥子餅は変わっていないはず。ケシの実のプチプチ感と香ばしさも只事ではない。感動を超えるさり気ない絶妙。
              本家小嶋② 
              芥子餅㊧と肉桂餅㊨
              本家小嶋③ 
              ケシの実がびっしり
              本家小嶋⑤ 
              うむむむ

肉桂餅(ニッキもち)はニッキ(シナモン)の香りがきつくない。餅にもニッキが練り込んでいて、さらにこしあんにもニッキが入っている。芥子餅と同じように実にていねいな作り。気品のあるニッキ餅で、どこかの和菓子屋のように過剰な説明がない。むろん添加物など入っていない。賞味期限はその日から二日間。
              本家小嶋⑥ 
              肉桂餅の凄味

女将は「なるべく本日中にお召し上がりください。時間が経つと餅が固くなります」と言葉を添えた。本物はやはりさり気ない。ところで、グルメ仙人先生は本家小嶋の暖簾をくぐったことがあるのだろうか・・・今度、糸電話で聞いてみようっと。

本日の大金言。

堺にはいい和菓子屋が隠れている。戦国の世に世界を相手に覇を唱えた堺の歴史の一片。奈良や京都と違う味わいがチンチン電車の先にある。



                          本家小嶋⑦ 




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「煮干しラーメンの新星」に並んでみる

 久しぶりに麺類シンジケートのメタボ男からメールがきた。煮干しラーメンの旨い店で、「ひょっとして煮干しラーメンでは埼玉で一番うまい」と興奮気味に書いてきた。「行列がすごいから、覚悟して行ってください。イラついてはダメです」と余計なひと言まで付いていた。場所は埼玉・北上尾・・・ほなら、行ってみまひょか。ポンコツ車に飛び乗った・・・つもりがコケそうになってしまった。

国道17号線(中山道)をひた走り、県道87号線で伊奈方面に向かうと、すぐにそれらしい店が見えてきた。正午前なのに駐車場は一杯で、何とか車を止めると、行列が見えてきた。一軒家で、「中華そば よしかわ」という柿色の日除け暖簾。いかにもだが、悪い雰囲気ではない。行列はざっと14~5人か。調べてみたら、オープンしてまだ一年ちょっと。
               よしかわ1 
               煮干しラーメンの新星
               よしかわ① 
               正午前にこの行列

店先に「先に食券を買ってからお並びください」と書いてある。「煮干し専門店 自家製麺」という文字も見えた。ふむ。指示に従って、発券機で定番の「煮干しそば(白)」 (税込み680円)を選んだ。煮干しそばには「黒」もある。かえし(醤油)に白を使っているか黒を使っているかの違いのようだ。メニューはその定番の他に「煮干ししじみそば」とか「秋限定鯖の中華そば」など結構バラエティーに富んだ構成となっている。
               よしかわ③ 
               煮干しがいっぱい

25分ほどの待ち時間でようやくカウンター席へ。店内はこじんまりとしていて、明るい木造り。カウンター席の他にテーブル席も4つほどある。煮干しは片口イワシなど4種類使っているとか、スープは化学調味料は使っていないとか、麺は国産の全粒粉をブレンドとかあれこれ説明書きが張られている。さらに7~8分待つと、ようやく「煮干しそば(白)」がやってきた。おおおっ、目が点になりそうだった。
               よしかわ⑤ 
               うむむの登場

中央に生ハムのようなピンク色のチャーシューがバラの花弁のように陣取り、それを取り囲むように白い鶏チャーシューが1枚、幅広のメンマが2本、半熟の煮卵、玉ネギ、三つ葉、それに大きな海苔。スープは透明な白だしスープで、そのすぐ下に小麦色のストレート中太麺がどっしりと横たわっていた。湯気とともに煮干しのいい匂いが鼻腔に侵入している。ふむ。
               よしかわ⑥ 
               コショウをパラリ

村長がこれまで食べた煮干しラーメンの雄「麵屋伊藤」(東京・赤羽)の恐るべきシンプルさとはまた違った構成。まずはスープ。煮干しの臭みがほとんど感じられない、きれいで穏やかな味わい。高レベル。麺は「麵屋伊藤」の食感に近い、ゴワゴワとした低加水麺で、その腰の強さがグッド。食べている間も伸びることがなかった。
               よしかわ⑦ 
               絶妙なスープ
               よしかわ⑧ 
               うむむのチャーシュー
               よしかわ2 
               鶏チャーシュー

中央の生ハムのようなチャーシューは幾重にも重なっていて、食感も柔らかい。ほのかな味付けも悪くない。鶏チャーシューは普通。メンマも煮卵もいいレベル。だが、食べ進むうちに次第に物足りなさが出てきた。薄味でじんわりと旨いし、この値段でこれだけの素材と味を出し、文句のつけようがない。ひょっとしなくても埼玉で一番かもしれない。それなのになぜ? この感覚は東京・門前仲町の超人気店「こうかいぼう」と共通していることに思い至った。
               よしかわ12 
               麺の凄味
               よしかわ10 
               メンマも秀逸

無化調、素材のこだわり、作り方の生真面目さ。すべてが優等生で、どこかいい意味での不良っぽさがない。この物足りなさは村長の個人的なものだが、ジグソーパズルでいうと、最後の一枚が欠けているような気分。ひょっとして村長の舌が化学調味料に毒され過ぎているのかもしれない。村長は9割8分の満足感で箸を置いた。あまり関係ないが、秀才だった小保方晴子さんがどうしているか、気になる。

本日の大金言。

説明をしないとビジネスが成り立たない時代。そのため一生懸命説明する。その対極にあるのが余分な説明を控える職人の世界があると思う。食べて味わってどう感じるかがすべて、というのはもう古いのかいな?



                           よしかわ13 

「瀬音の湯」でカキフライ宴会

 東京・三鷹時代のマッドな友人たちと紅葉を楽しみながら秋川渓谷で芋煮会とシャレ込むつもりだった。総勢15人ほど。だが、あいにくの雨・・・と思いきや、すご腕幹事の手配に抜かりはない。場所を「瀬音の湯」に切り替えた。武蔵五日市駅から路線バスで10分ほど。正午前に「瀬音の湯」に到着。これがスーパーな温泉施設だった。3時間900円ナリ。時間オーバーはプラス料金を取られる。
              瀬音の湯① 
              「瀬音の湯」に到着
              瀬音の湯1 
              これはええのう

紅葉を眺めながら、露天風呂を楽しむ。泉質はアルカリ性単純泉だが、アルカリ度が強く、つるつるした源泉で、予想以上に身体が癒される。和風レストランが混み合っていたので、空席が出るまで、待合ホールでビールを飲み始める。底なしが揃っているため、どんどんビールの栓が抜かれ、和風レストラン「川霧」の席が用意された時にはすでに半分以上がほろ酔い状態。
              瀬音の湯② 
              どれどれ

ここで食べた「牡蠣(かき)フライ膳」(税込み880円)が予想よりも旨かった。一品料理が少ないため、定食のおかずを酒の肴にする作戦。クールである。全面ガラス張りの向こうに紅葉が見える。霧がかかっていて、それが幻想的で実にいい。ビールから焼酎、地酒に切り替え、牡蠣フライをつつく。一人前5個。カラッと揚げられていて、和辛子を付け、ソースで食べる。海のミルクが口中でとろける。女性スタッフに聞くと「広島産の牡蠣です」とか。
              瀬音の湯③ 
              カキフライ膳
              瀬音の湯⑤ 
              やっぱ辛子だべ
              瀬音の湯⑦ 
              海のミルク
              瀬音の湯4 
              天国に近い?

「天ぷら膳」(同1600円)も大ぶりの海老3本、茄子(なす)など盛りだくさんで悪くない味わい。食通のやり手オヤジが「漬け物が旨いな。山ゴボウがいい」と妙なところに感心している。確かにその山ゴボウは旨かった。女性陣は「ご飯が旨いわ。こういうところで食べるから旨いのかもね」。店のスタッフに聞くと、宮城産のブランド米「志波姫」を使用しているそう。
              瀬音の湯3 
               天ぷら膳

「瀬音の湯」はあきる野市が25億円もの巨額の資金(ほとんど借金らしい)を使って、平成19年(2007年)4月にオープンしている。第三セクター方式で運営しているため、スタッフの対応はどこか牧歌的。ちぐはぐな対応もあるが、それを含めて、かような場所にかような温泉施設があることは有り難い。
              瀬音の湯⑧ 
              幻想的やでェ

宴会は談論風発、鯨飲馬食、時々脱線しながら、二次会、三次会と流れて行った。拝島駅そばの「庄屋」を出たときはすでにすっかり日が落ちていた。「今のところ、行方不明者なし。全員無事。よかった、よかった」誰かが言った。「いや、まだわからん。これから、これから」千鳥足で、中央線に乗る。気がついたら数人ほど消えていた。いずこへ?

本日の大金言。

紅葉を眺めながらの露天風呂と地酒。そこにちょっとした料理があれば、そこは極楽になる。一年に一度の天国旅行も悪くない。



                            瀬音の湯⑨

夏より晩秋の老舗うな重

 うなぎを食べたくなって、埼玉・行田にある老舗「満る岡(まるおか)」までポンコツ車を飛ばした。村民2号とご意見おばさんもうなぎと聞いて同乗している。今年初めてのうなぎ。つい3か月ほど前、土用丑の日や真夏に食べようと二、三度電話したが、予約が殺到していて、食べ損ねてしまった恨みがある。「満る岡」は明治8年(1875年)創業の、埼玉でも指折りの鰻屋。
              満る岡 
              晩秋のうなぎ!

国道125号線沿いにあり、さきたま古墳群や忍城(おしじょう)も遠くない。到着したのは正午ちょい前。築100年という見事な建物。鰻屋というよりは料亭のよう。暖簾をくぐると、天井が高く、モダンな造り。たまたまいた女性スタッフ(五代目女将だった)によると、「2001年に店を改装したんです」とか。改装する前に来たかった、とやや後悔。銀座の竹葉亭や桐生・泉新などのように、老舗はやはりうなぎの煙が柱や天井に滲み込んでいるような雰囲気がいい。
              丸る岡 
              老舗のいい店構え
              満る岡② 
              モダンな店内

奥のテーブルに案内されて、メニューの中から「うな重(上)」(肝吸い、お新香付 税抜2800円)を選んだ。たまのぜい沢。村民2号とご意見おばさんも同じもの。店が大きいので板場は見えない。匂いも煙も来ない。ウチワの音も聞けない。約30分ほど待って、見事な漆器のお重がお盆に乗ってやってきた。老舗のうな重!
              満る岡① 
              うな重のメニュー

フタを取ると、きれいな焼き色のうなぎが二枚、横たわっていた。中ぶりのうなぎ。焼き加減が絶妙で、余分な焦げ目がない。いい風情。うなぎの大きさも厚みもまずまず。特上を頼めばもっと大ぶりなのだろうが、ウマズイめんくい村の財政事情を考えると、それはぜい沢に過ぎる。山椒をパラパラと振ってから、まずは肝吸いをひと口。まろやかで上質な味わい。
              満る岡⑤ 
              これこれ
              満る岡④ 
              フタを取る

うなぎに箸を入れる。いい匂いが立つ。ほどよくタレがかかったご飯と一緒に口中へ。九州・鹿児島産のうなぎ。地下水で育ったうなぎは、脂の乗り、ふくよかさともにまずまずの旨さ。やや物足りなさも感じるほどのきれいな味わいで、タレは甘すぎず辛すぎず。ご飯はやや固めに炊かれていて、全体として、上質できれいにまとまったうな重だと思う。
              満る岡⑦ 
              絶妙な焼き加減
              満る岡⑧ 
              裏から失礼します
              満る岡10 
              あ~ん

女将によると、昼用は朝さばいて、夜用は夕方さばいて下焼き(白焼き)しておくそう。上野の老舗「伊豆栄」なども同じ仕込みをしている。それで注文を受けてから焼き始めるので、待ち時間が30~40分ほどで済む。それでも注文してから30~40分はかかる。その間に肝焼きでも頼んで、ぬる燗をちびちびやるのがうなぎに対する礼儀かもしれない。ついボヤキが出てしまった。いけねえ。
              満る岡2 
            タレの加減もほどよい

「それはぜい沢すぎるわよ。村長ったら、昔の癖が抜けないわね。少しは台所事情を考えなさいよ」
ご意見おばさんが村長のボヤキに釘を刺した。イタタタ。

「うなぎの値段が上がってるのに、3000円でこの味わいはマルよ。今年はうなぎを食べれないまま終わるかと思っていたけど、今日は満足満足。ま、ぜい沢言うと、もう少しご飯の量が多いといいけど」
村民2号がお腹をポンポンさせながら、満足そうにうなずいた。
今年もあと2か月弱で終わるのか、そう思うと、村長はちょっぴり憂うつになるのだった。

本日の大金言。

晩秋のうなぎは狙い目である。ほとんど待たずにゆっくりと味わえる。土用丑の日よりもリッチな気分になれる。



                            満る岡12 

「白い卵のオムライス」の中身

東京・茅場町での用事の後に、西新井大師で途中下車することにした。総持寺で百円玉を賽銭箱に投げ入れ、一つ二つ願いごと。午後2時を過ぎていたが、昼飯をどこで取ろうか、周辺をうろついていると、40代くらいの地元の小太り美人から「いいとこありますよ。洋食屋で白いオムライスで有名な店です。テレビでも取り上げられて、そこは私のお勧めです」。これだから下町はいいのう。テレビ云々には懸念もあるが、小太り美人を信じて行ってみることにした。白いオムライス、というのも気になる。
              西新井① 
              西新井大師に詣でる

環七通りを歩いて5~6分ほど。通りから少し入ったところに、「洋食やさん 銀亭」のポエムな看板が見えた。ややホコリっぽい印象も悪くはない。店の入り口には取り上げられたテレビなどの情報が貼られていた。少々嫌な予感。とはいえ、テレビで取り上げられた「白いオムライス」の中身も気になる。
              銀亭 
              ポエムな店構え

思い切って入ると、店内はこじんまりとしていて、カウンター4席とテーブル席4つほど。カウンターの向かい側が厨房になっていて、そこに小太りのシェフがいた。無愛想な表情で、それは下町特有の人見知りかもしれない。時間が時間なので、店には客が一組だけ。テーブル席に腰を下ろして、メニューの中から「白いオムライス」(900円)を頼んだ。
              銀亭① 
              当たりかハズレか

先日、埼玉・鴻巣吹上町の無名店で見事なオムライスを食べたばかり。どうしてもその印象が強いため、つい比較してしまう。10分も待たずに白いオムライスがやってきた。うむ。見事に白い、たんぽぽ風オムライスで、そのふわふわとした半熟気味の卵はイケてる。周囲をデミグラスソースが海のように囲んでいる。生クリームも浮いていて、いい匂いが立ち上る。
              銀亭③ 
              おおおの外観
              銀亭④ 
              アイデアもの

だが、その後がいけなかった。スプーンがない。小太り店主がおもむろにやってきて、ポンとスプーンをそのまま置いた。スプーンはクラシカルな見事なスプーンだが、ポンとは凄すぎる。思わずギャグかと思ってしまったほど。だが、しかし、これが下町流かもしれない。味がよければ文句はない。

白い卵の中にスプーンを入れて、口中へ。デミグラスソースは甘めだが、意外に旨い。ケチャップライスは可もなく不可もなし。よく見ると、タマネギに混じって、パイナップルやズッキーニが混じっている。それが果実的な甘みをかもし出して、白いふわふわ卵とデミグラスソースの世界に合っている。具は少なく、肉の姿もない。あっという間に食べ終える。全体のボリュームが見た目よりもない。750円くらいの満足感。
              銀亭⑤ 
              黄金の時間?
              銀亭⑦ 
              炒め方の技術
              銀亭⑥ 
              感動と懐疑
              銀亭⑧ 
              パイナップル?

「白いオムライスとはアイデアですね」
「いや、アイデアじゃない。米の餌で育てた卵をただ使っただけ。だから白いんだ。アイデアも何もないよ」
「へえー、どこの卵?」
「山形。それを見つけて、単に使っただけ」

店主のあまりに素朴な応対に奇妙に感動する。印象と店名が似合っていないところが面白い。テレビに出たことを店の売りにしている店は当たりが少ない・・・ウマズイめんくい村の鉄則はここでも半分ほど生きていた。珍しいもの好きにはおすすめだが、村長の胸には風がぴゅうと吹いた。外に出た途端、クシャミが出てしまった。

本日の大金言。

いい店ほど控えめだというのが実感。テレビは諸刃の剣で、京都のグルメ先生の「いい店はそんなものには出ない」は、けだし名言だと思う。




                        銀亭10 

「須田剋太展」後の絶品オムライス

 このところ毎年恒例になった「須田剋太展」へ。須田剋太は埼玉・鴻巣吹上町出身の画家で、司馬遼太郎「街道をゆく」(週刊朝日連載)とコンビを組んで挿し絵を描き、一躍その名を知られた。1990年に84歳でこの世を去っているが、起用当時はまだほとんど無名だった須田剋太を司馬遼太郎は「この人でなければダメ」と強烈にプッシュしたという。
              須田剋太1 
              須田剋太展

挿し絵も素晴らしいが、村長はこの画家の抽象画が好きで、近くの長島美術館(ここに数点所蔵されている)に足を運んだこともある。今回の「須田剋太展」は「白河・会津へのみち」ということもあり、村民2号ともども期待に鼻をふくらませてポンコツ車をぷかぷか飛ばした。だが、村長には今回の作品展示にはやや不満が残った。
              須田剋太展2 
              蟻はエライ

「無料だから仕方ないわよ。一定のレベルは保ってたわよ。ま、去年とか一昨年の方がよかったけどね。気分を変えて、あそこに行きましょ
村民2号がいう「あそこ」とは、長島記念館の近くにある「喫茶ちゃよりあい」。腹の虫がギャギャア騒いでいる。ちょうど午後1時。3年前も同じコースで行った店で、須田剋太展の会場・鴻巣市吹上生涯学習センターから車で10分ほどの距離。
              ちゃよりあい① 
              隠れ家である

喫茶店というよりも小さな山荘風のカフェレストランで、隠れ家的ないい店だと思う。「茶寄合」をひらがな表記していて、3年前と変わらずにそこにたたずんでいた。生パスタが旨い店で、3年前はここの激辛「アラビアータ」を食べて、体中がかっかと燃え上がった。そのとき、隣りのテーブルのオムライスが実に旨そうで、その記憶がよみがえった。
              ちゃよりあい② 
              昔懐かしいオムライス

坂本龍一の「戦場のメリークリスマス」のピアノ曲が流れる中、村長は「昔懐かしいオムライス」(900円、ドリンク付き)を頼んだ。村民2号は「アラビアータ」(同940円)。13~4分ほどでアラビアータ、オムライスの順でやってきた。大きな陶器の深皿。そこに見事なオムライスが鎮座していた。フツーのオムライスの1.3倍はありそうなふくよかなボリュームで、ヘンな例えだが、これはオムライス界のビヨンセではないか? ナイスバディ―! オリジナルのトマトソースがたっぷりとかかっている。黄色と赤、それにサニーレタスの緑・・・スプーンを入れるのがもったいない。
              ちゃよりあい2 
              アラビアータ
              ちゃよりあい⑤ 
              お見事!

チキンライスはバターの香りが漂い、フライパンで一粒一粒をしっかり炒めていて、スプーンで口に運んだ途端、目を閉じたくなった。美味。タマネギの量はフツーだが、グリーンピースがふんだんに入っている。きのこはマッシュルームではなくしめじ。それに人参。卵は多分2個使っている。焼き方がいい。オリジナルトマトソースはやや甘め。すべてが高レベルのオムライス。
              ちゃよりあい⑥ 
              むふむふの時間
              ちゃよりあい⑦ 
              一級品
              ちゃよりあい⑨ 
              あ~ん
              ちゃよりあい⑧ 
              もう一度あ~ん
              ちゃよりあい11 
              シャレている

途中で肉の姿が見えないことに気づいた。ここに鳥肉が入っていたら文句なしだが、何か理由があるのだろう。
「あー辛かったわ。口の中が火事になっちゃった。でも旨かった。甘さと辛さがマッチしていて、いいパスタを食べた感じ。コーヒーも美味いし、やっぱりここはいい店」
村民2号が満足そうにコーヒーカップを置いた。
帰り際、野暮を承知で店の主人にオムライスに肉を入れていない理由を聞こうと思ったが、やめることにした。村民2号の鼻歌が半音ズレていたからだ。

本日の大金言。

いい店は案外隠れている。鴻巣の近くにはなぜかいいイタリアンレストランが多いが、意外な穴場もある。ネット情報に頼りすぎないこと。この店も3年前に口コミで知った。



                           ちゃよりあい10 




プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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