2016年巨大地震はあるか? 大予想

 何ということだ。2015年、平成27年が土俵際まで来てしまった。大みそか。紅白など見ている場合ではない。
「余計なお世話よ。またどうせくだらない予想をするんでしょ? 2016年はさらに大変な年になるとか、巨大地震が来るとか、日本でテロが起きるとか、アベノミクスが破たんするとか、ヘンな病気が流行るとか・・・悪い予想をいっぱい並べて、当たるも八卦当たらないも八卦なんて言って、逃げちゃうんでしょ。魂胆が見え見え」
「先が見え過ぎるというのはつらいのう。俗人の僻みやからかいに耐えねばならん」
「自分の足元も見えないくせによく言いうわ。邪魔ジャマ。これ持って早く銭湯に行ってらっしゃい。一年の垢を落として来てね」
村民2号から430円とタオルを渡されて、村長は寒風の中に放り出された。ハ、ハックション! 忘れないうちに恒例の「明日の新聞」最終版を出すことにしよう。題して「2016年はこうなる?」。むろん、当たるも八卦当たらぬも八卦、でありまーす。

大予想1 浅田真央、世界フィギア選手権でショートでトリプルジャンプ成功。だが、フリーで二度転倒。5位に終わり、その後の記者会見で引退表明。「すべて吹っ切れました。これからは人生のトリプルジャンプを目指します」と涙をこらえて明るく語った。男子は羽生結弦が驚異の330点越えで見事金メダルに輝いた。
大予想2 テロか? 福島第一原発周辺で謎の爆発。直後にネット上に犯行声明。TV、新聞がテロの可能性を報道。連日、北朝鮮説、イスラム国説など犯人探しが過熱。だが、捜査は進展せず、一部週刊誌が「東京電力による事故隠しの疑い浮上」を報道。真相は依然謎のまま。
大予想3 ヤンキース田中マー君、またも故障者リスト入り。ドジャース入りした前田健太は好投も後半戦打ち込まれ、最終的に7勝11敗でシーズンを終了。
大予想4 世界中で天変地異起きる。国連が「地球が数万年に一度の重大な地殻変動期に入った可能性は否定できない」と緊急レポート。日本も南西沖で巨大地震発生。
大予想5 異常気象による穀物の被害で、世界の食糧事情が深刻化。スーパーから食料品が消える事態も。「TPPは失敗だった」農協が緊急声明出す。甘利担当大臣、「ゲスの極み乙女。」ネタ放つも相手にされず。
大予想6 たけし、TV収録後に倒れる。復帰するも滑舌がさらに悪化。「赤信号渡りたくても渡れない」名言を吐いて、休養宣言。テリー伊藤がお見舞いして、その様子をユーチューブで流し、賛否両論の事態に。
大予想7 山口組、神戸山口組ついに抗争勃発。東京、大阪、高知などで死者7人、重傷13人。
大予想8 リオ五輪開幕。日本金メダル7個と大健闘。VIP席で飲み過ぎた森元首相が興奮しすぎて担架で運ばれ、世界のメディアから「コメディアン森」とからかわれる。
大予想9 10代による理由なき殺人事件が頻発。安倍首相が「戦後教育の結果でもある」とコメント。噺家に転身した古館伊知郎が「岸信介の教育の結果はどうなったの?」とラジオ番組でコメント。戦後教育論争に発展するも、トランプ米新大統領の仲介で手打ち。
大予想10 国債が大暴落。日銀介入も焼け石に水。相次ぐ失政で安倍首相緊急入院、体調不良を理由に退陣表明へ。後継に橋下徹が急浮上。「ボクは坂本龍馬になる」と訳の分からないコメント。
おまけの予想 ウマズイめんくい村が閉鎖。理由はガセネタ漏えい罪。彦作村長「私以外私じゃないの」と抗弁するも誰も相手にせず。キオからは「ゲスネタ多過ぎ。バカみたい」とダメだし。仕方なくあんこ行脚に出る。

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ビッグブラザーより自家製あんこ作り

 2015年(平成27年)も残すところ1日半となった。ニュースを見ていると、自分の感覚がかなり麻痺していることに驚く。32インチの画面から、世界で起きていることがほとんどリアルタイムで垂れ流されてくる。コメンテーターと称する、よく考えると身元不詳のタレント(だと思う)が訳知り顔でコメントする。それを毎日見ていると、気づかないところで、最も根本的な何かがズレテきているのではないか? 世界中の混乱がズレた感覚の上に成り立っているとしたら、それは狂気の芽になり、やがて・・・それはひょっとしてジョージ・オーウェルの世界に近いかもしれないぞ。

村長はテレビを止め、パソコンを止め、携帯の電源を切り、日がな一日あんこ作りに励むことにした。ビッグブラザーから逃れるためにはこれしかないなどと。村長にとって、あんこは原点に近い。あんこがある種の生活の基準になっている。そのあんこ生活の一端を今回そっと公開したいと思う。だからなんだってか?
              あんこ作り① 
              あんこ作り開始!

生活クラブから購入した小豆「北海道十勝士幌町産」(500グラム)と上白糖(500グラム)を用意。深鍋とザル、それに木べらも揃えておく。まずは小豆を軽く水洗いし、深鍋に入れ、水をたっぷり張って、強火にする。ぐつぐつ煮立ったら、中火にして10分ほど煮る。小豆は事前に一晩水に漬けた方がいいという人もいるが、村長はそのやり方を取らない。
              あんこ作り③ 
              10分ぐつぐつ

次は渋切り。煮立った小豆と煮汁をそのままザルに上げて、水でざっくりと洗う。それを深鍋に入れ、新しくたっぷりと水を張り、弱火で再び煮込む。小豆がゆるやかに踊るほどのトロ火がベスト。新豆なら1時間が一つの目安だが、今回は小豆が固めだったので、1時間半ほど煮込んだ。その間、アクが出るので、小まめに取り除く。
              あんこ作り④ 
              渋切りです
              あんこ作り⑤ 
              水で洗う
              あんこ作り⑧ 
           アクを取りながら再び煮る

小豆と会話しながら、例えば「もうそろそろかい?」とか「どんどんきれいになっていくね」とか。アホか? 2、3粒取ってみて、指で潰してみる。簡単に潰れるくらいになったら、いい頃合い。砂糖を半分ほど加え、さらに10分ほどトロトロと煮込む。具合を見て、お湯を足してもいい。残りの砂糖を入れ、さらに煮込んでいく。塩を少々加え、味を調え、あんこがどろりとしてきたら火を止めて出来上がり。
              あんこ作り⑨ 
         柔らかくなったら砂糖を半分ほど
              あんこ作り13 
          残りの砂糖でさらに煮込む
              あんこ作り15 
              完成です

しばらくそのままにして置いて、余熱を取る。すっかり冷めたら、冷蔵庫で保存する。あんこ作りは人によって様々な作り方があり、それぞれの秘伝もある。今回の方法は村長のテイク1の作り方で、手間ひまも思ったほどはかからない。2時間ほど鍋の前から離れないことが肝心。2時間の甘い辛抱。

砂糖はグラニュー糖でもいいが、上白糖の方が甘みがこってりと仕上がる。淡泊な味が好みの人はグラニュー糖がいいと思う。小豆の量と砂糖の量は同量というのが基本だが、村長は少し砂糖を少なめにする。甘さ控えめの方が好み。水飴や本みりんを入れる人もいるが、風味が少し変わるので、村長は敬遠している。
              あんこ作り④ 
              あんこモーニング!
              あんこ作り⑤  
              格別の味わい
              あんこ作り⑥ 
              残りの人生

翌日、つまり本日の朝食。冷蔵庫に入れておいた出来立てのあんこで、食パンを食べる。イトーヨーカ堂久喜店「むぎのいえ」で買ってきた「全粒粉食パン」(6枚入り税込み258円)に牛乳とドリップコーヒー。マーガリンを塗り、ほどよい柔らかさに仕上がったあんこをたっぷりと乗せる。味はどうかって? ビッグブラザーに知られると怖いので、その答えはぜひ皆さんの手でひそかに味わってほしい。1984・・・じゃなかった2016年まで残り1日半。とりあえず良いお年を!

本日の大金言。

手ざわりの感覚は大事だと思う。頭でばかり考えるよりも、とりあえず手足を動かしてみる。そこで得た情報こそがささやかな血肉となる。たとえ明日世界がおかしくなっても、りんごの種はどこかにある? テレビの向こうのビッグブラザーにご用心。
 

                          あんこ作り⑨

築地を超える?大宮市場の穴子天丼

 年末は東京・築地まで買い出し行くことを恒例としていたが、今年は「市場替え」することにした。築地の混みようと観光化にちょっと距離を置いてみようと思ったからである。寿司屋も定食屋も安くない。村長が愛した昔の築地とは様相が変わってきている。で、埼玉の胃袋・大宮市場に行くことにした。

ポンコツ車を飛ばして、午前9時半に到着。駐車場は満杯で、次から次と車が来る。だが、エアポケットのように、1台分だけ空いていた。激動のバッドなひつじ年だったが、最後はラッキーで終わるか? 魚市場でマグロや毛ガニなどを買い、築地に比べて観光化されていない年末市場の風景を楽しむ。本マグロの頭がゴロゴロ転がってもいる。大宮市場には築地が失った昭和の風景がある。こうでなくっちゃ。
              大宮市場2 
              年末の大宮市場
              大宮市場 
              穴場である

午前11時になったので、少し早いランチを取ることにした。「キッチンニューほしの」や「花いち」などの人気店にはすでに行列ができている。食堂の数は東西合わせて十軒ほど。千住の足立市場とそう変わらない数だが、その中に掘り出し物があるかもしれない。むろんハズレもある。村長は店の佇まいや入り口を重要視する。
               
ヘボ探偵のように、店の前を何度も行ったり来たりして、「いい店かどうか」をチェックする。テレビに出たとか、タレントの誰それが来たとかをこれ見よがしに店頭に張っている店は村長の好みではない。一軒が気になった。「御食事 藤よし」の質素でシンプルな看板と店構え。行列もない。カレーライスから豚カツ、魚定食、中落ち丼、うどんまで守備範囲が広いが、どこかひそかなプライドを感じる。ここに決めたっと。
              藤よし 
           いい店が隠れている

店内はテーブル席(4人掛け)が八つほどとちょっとしたカウンター席があり、正面奥が広い厨房になっていた。「いらっしゃいませ」という掛け声がいい。美人女性店員さんのきびきびした動きもいい。厨房では店主らしい白衣の男性と数人のスタッフがとんかつやアジフライを揚げていた。職人の気配。これは当たりかもしれないぞ。
              藤よし③ 
              昔の築地?
              藤よし② 
              こうでなくちゃ

メニューの中から「穴子天丼」(870円)を選んだ。10分ほどで「穴子天丼」がやってきた。大きなドンブリに盛られた穴子天は一つ一つが大きく、揚げ立てのいい匂いを放っていた。数えてみたら折り重なるように三つ。それにピーマン、カボチャの天ぷら。コロモとタレのかかり具合が悪くない。ひと目でスグレモノとわかった。みそ汁とお新香付き。
              藤よし④ 
              おおおの登場

みそ汁をすすってから、穴子天をガブリと行く。みそ汁はさほどではないが、穴子天はコロモがカラリと揚がっていて、それがいい歯触りとして伝わってきた。タレは甘めでほんの少しドロリとしていた。穴子の柔らかな旨さ。予想以上の味わい。築地なら870円では多分食べれないだろうな。ムフフフという笑みが自然に漏れてくる。
              藤よし⑦ 
              予想以上の味わい
              藤よし⑧ 
              生穴子を使用
              藤よし2 
              カボチャもある
              藤よし⑨ 
           まさかの会津産コシヒカリ

炊き立てのご飯はやや固めに炊かれていて、タレが絶妙に絡んでくる。「キッチンニューほしの」に続くいい店を発見した気分。これ見よがしに宣伝していないのも好感。ボリュームもかなりある。みそ汁とお新香にやや課題は残るものの、大いなる満足感を抱えて、舌代を払う。そのときに、女将らしき女性と雑談。

「大変旨かった。穴子が気に入りました。最近は冷凍物を使った店も多いようですね」
「穴子はもちろん生を使っています。近海の穴子です」
「米がまたいいですね。大宮なので、彩のかがやきですか?」
「いえ、会津産のコシヒカリを使ってます」
「へえー。道理で旨いはずだ」

祖先が会津藩足軽の村長にはうれしい結末となった。世界情勢の混沌度はさらに深まっているというのに、大宮市場の片隅であまりに平和な時間が流れる。戊辰戦争の記憶を忘れてはいけないのに・・・。

戊辰戦争と太平洋戦争は一足飛びで繋がっていると思う。トップが無能だと、会社も庶民も国民も不幸になる。そして、それを支えているのも庶民であり国民であるという現実。歴史は繰り返すのか? あれほどの福島の原発事故も沖縄も教訓に成り得ていないとは・・・。

本日の大金言。

中央市場よりどこか物悲しい地方の市場。たまには目線を変えて見ることも必要だと思う。狂騒のテレビを止めて、ローカル市場に行こう。麻痺しつつある現実感覚を市場の中から取り戻す。そのための年末だってアリだと思う。


                        藤よし11 

まさか?「銀座とん喜」のカツ丼

本日はクリスマス。クリスチャンではないが、ジョン・レノンの「ハッピー・クリスマス」と「アデル25」でも聴きながら、座禅でも組んで、静かにお祈りすることにしよう。戦争は終わりそうもないし、状況は悪化している。一体何を祈ればいいんだい? 
              銀座クリスマス     
           銀座のクリスマス一コマ
         
友人の才人・片岡みい子さんのロシア絵画コレクションを見に、東京・日比谷ギャラリーに行く。風月堂前で酔拳修行中の中吉氏と待ち合わせ。ちょうどランチタイムなので、近くにある「とん喜」で「カツ丼」を食べることにした。寒い日はカツ丼に限る。とん喜のカツ丼のファンは多い。
              とん喜 
              とん喜のカツ丼!
              とん喜1 
              銀座の裏通り

老舗として知られる「とんき目黒店」は池波正太郎など食通も通ったとんかつ屋で、村長も大昔に一度食べたことがある。京都にお住いのグルメ先生も「とんき目黒店」を贔屓にしていた。銀座のとん喜はどうか? 多分同じ暖簾だと思うので、きっと旨いだろうと期待がふくらむ。
              とん喜② 
               ランチメニュー

店は地下一階にあり、数人が並んでいた。10分ほど待って、店内へ。白木のカウンター席とテーブル席があり、厨房では白い板前姿のコックとスタッフがテキパキと満員の客をさばいていた。とんかつを揚げる軽やかな音とラードのいい匂いが漂っていた。村長は「カツ丼定食」(930円)、中吉氏は「ヒレカツ定食」(980円)を頼んだ。

並んでいるときに頼んでいたので、10分も待たずに「カツ丼定食」がやってきた。白地のどんぶりにきれいなカツ丼が湯気を立てていた。とんかつは思ったよりも小ぶりだが、半熟玉子と海苔のかかり具合がいい。5切れ。コロモのサクサク感がプロの技を感じさせる。いいカツ丼かどうかを見分ける一つのポイントがコロモのサクサク感。雑なカツ丼ほどコロモがタレで柔らかくなっている。
              とん喜③ 
              いい風景
              とん喜④ 
              上質のカツ丼だが
              とん喜⑥ 
              見事な卵

第一関門は合格。続いて肉質。厚みは1センチほど。脂身の白さと赤身のピンク感が悪くない。噛むときれいな旨味が滲み出てきた。平田牧場の三元豚を使っているようだ。とんかつの下にはタマネギと炊き立てのコシヒカリ。そのタレも出汁感のある薄口醤油のタレで、やや甘め。かかり具合もほどよい。
              とん喜⑧ 
              コロモと肉
              とん喜11 
              脂身がきれい
              とん喜10 
              コシヒカリとタレ

たっぷり入った豚汁とお新香もいい味わい。だが、村長には期待が大きかった分、8割程度の満足感。上質の味だが、ボリュームがやや物足りない。中吉氏は「豚汁が旨い。1000円以下でこの味ならまあまあでしょう」。
              とん喜⑨ 
              飛び込みたい

食べ終えた後、お茶をゆっくり飲んでいたら、「すいません。後の人がお待ちですので」と言われてしまった。早々に退散。翌日気になって、老舗の「とんき目黒店」に確認のために電話してみた。

「銀座とん喜は目黒の暖簾分けですか?」
「全然関係ありません。ウチとは関係のない人がやってます」
「えっ、同じとんきでしょ?」
「きの字が違いますよ。漢字の喜はウチとは別の店です」
「ありゃまあ。失礼しました」

ネット上には「とん喜」は全国あちこちにある。老舗「とんき目黒店」は別格ということになる。この一字違いを混同している人も多い。村長もその一人だったが、「き」違いはどこにでもある。もって戒めとすることにしよう。

本日の大金言。

ハッピークリスマス、ミスターロレンス! ハッピークリスマス、京洛先生、ハッピークリスマス、ミセスみい子、ハッピークリスマス、ミスター中吉、ハッピークリスマス、渓流斎、ハッピークリスマス、スウェーデン林さん、ハッピークリスマス、シバの女王、そば仙人、ハッピークリスマス、村長のすべての友人、天国のちゃい、チョメ・・・。



                       とん喜12

激戦区の「東京豚骨ラーメン元祖」

飲み会の帰り、突然ラーメンが食いたくなって、 東京・池袋で途中下車。池袋は言わずと知れたラーメン激戦区。北口に出て、西一番街をブラ歩きしていると、「天下一品」や「三田製麺所」などの看板が「おいでおいで」していた。だが、村長の目線はその先の「桂花(けいか)」に止まった。池袋に「桂花ラーメン」があったことに驚いた。
              桂花1 
              お懐かしや           

本店は熊本市にあり、1968年(昭和43年)に東京・新宿に進出。醤油ラーメン全盛の時代に、白濁した豚骨ラーメンを東京っ子に知らしめたパイオニア的存在。村長が初めて「桂花ラーメン」を食べたのは、東京の2号店、新宿東口駅前店だった。その旨さに驚いた。白濁した豚骨スープ、茶褐色のマー油、針金のように固いストレート麵・・・そのすべてが初めての体験だった。

醤油ラーメンとも違う。味噌ラーメンとも塩ラーメンとも違う、豚骨ラーメンの出現に珍しさも手伝って通った。歌舞伎町やゴールデン街で飲んだくれた後に行くと、特に旨かった。「魔法の油」マー油の不思議な味わいにハマった。人気がどんどん上昇し、「桂花」の名前はラーメン好きの間では知らないものがいないほどになっていった。
              桂花2 
              桂花西一番街店

「魔法の油」の正体はごま油をベースにした焦がしニンニク油だが、当時はかような摩訶不思議な油を使うラーメン屋は他になかったと思う。今ではこれを真似た店が増えているが。酔いも手伝って、村長はかなり久しぶりにこの味を食べたくなった。店のスタッフに聞くと、「桂花 西一番街店」は去年7月にオープンしたそう。「昔の味と同じだと思います」とスタッフ。即決。定番の「桂花拉麺」(720円)を頼むことにした。
              桂花② 
              これこれ

10分ほどで、白い中華ドンブリにあの白濁した豚骨こってりスープが揺蕩っていた。茶褐色のマー油も健在だった。チャーシューは2枚、中央には完茹での煮卵、メンマ、茎ワカメ、それに刻みネギが浮いていた。昔と同じ構成。熊本ラーメンのいい匂いが発散している。これこれ。
              桂花3 
              思い出の一品
              桂花③ 
              熊本ラーメンの元祖

まずはスープをひとすくい。濃厚な豚骨の匂い。こってりしているが、穏やかで柔らかい旨味。それに焦がしニンニクと焦がしネギの匂いが複雑に絡んでくる。村長はどちらかというと九州ラーメンは苦手だが、この桂花の味は別格だと思う。
              桂花⑨ 
              魔法のマー油
              桂花⑧ 
              麺のシャキシャキ感
              桂花⑤ 
              変わらないチャーシュー

麺は加水の少ないコシの強いストレート中太麺で、オーバーに言うと針金のような歯ごたえ。小麦の風味も昔とそう変わらない。固めのチャーシューもメンマもフツーに旨い。昔と違うのはスタッフの雰囲気とマニュアル感。あっという間に食べ終える。スープを一滴残らず飲み干す。妄想が起きてきた。胃袋の底で山下洋輔が、赤塚不二夫が躍り出す。野坂昭如もマイクを握る。
              桂花⑥ 
              メンマもあるでよ

忘年会のシーズンに入り、外に出ると、サラリーマンやOLのグループが明るいノリで騒いでいた。疾風怒濤の時代はすでに終わっている。だが、しかし。いつまたおかしな状況にならないとも限らない。いやもうなっているのかもしれない。「一億総活躍社会」の隠し文字は「一億総犠牲社会」。「積極的平和主義」は「積極的介入主義」、「状況はコントロールされている」は「情報はコントロールされている」。「軽減税率」は「軽増税率」。嘘は言葉の置き換えから始まる。くれぐれもご用心・・・。

本日の大金言。

豚骨ラーメンのドンブリの底から世界を見る。胃袋と両足を実感すること。相手も同じだと想像すること。強欲を遮ること。扇動者を見分けること。イマジンを聞くこと。やるべきことはまだ一杯ある。

  


                         桂花10 

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深沢七郎の町の「特製ランチ」

 埼玉・久喜市菖蒲町は畏敬する作家・深沢七郎が晩年を過ごした街。奇抜なラブミー農場を開き、亡くなるまで約22年間、ここから稀有な世界観を発信し続けた。壁に突き当たった時などここに来ると、「生きているのはひまつぶし」「人口が減れば平和になる」などなど恐るべき金言を吐き続けた巨大な山の一端に触れた思いがする。

年納めのつもりでここに来たついでに、ポンコツ車で寄り道をすることにした。ちょうどランチタイム。県道12号線から小林神社方面へ。6~7分で「茶房 時ヤ夢工房」に到着。金土日しか営業しない不思議な店で、読み方も「じゃむこうぼう」が正解で、まともに読める人はほとんどいない。偶然に過ぎないが、深沢七郎も東京・曳舟で「夢屋」という今川焼き屋を開いていたこともある。奇縁としか言いようがない夢繋がり。
               ジャム工房 
               隠れ家か?

殺風景な果樹園の中の一軒家。ジャムづくりが本業で、1年半ほど前に茶房レストランも開いた。ランチメニューは「本日のランチ」と「ホットサンド」しかない。スイーツ類は別扱い。村長は「本日のランチ」(ドリンク、デザート付き 1080円)を頼むことにした。村民2号も同じものを頼んだ。
               ジャム工房1 
               殺風景と紙一重
               時ヤ夢工房① 
               メニューは少ない

「本日のランチ」は週ごとに変わるそうで、今週は「鶏の唐揚げ」。女主人によると「一足早いクリスマスです」とか。イマイチよくわからないが、そこが独自と思うことにした。テーブル席が4人用2人用合わせて6席ほど。全体の印象は安普請だが、BGMにナット・キング・コールが流れ、趣味は悪くない。

待ち時間が予想外だった。注文を受けてから作り始めるのと、人手が少ないためか、35分も待たされた。厨房からは唐揚げを揚げる軽やかな音と食欲をそそるいい匂いが流れてくる。不思議と腹が立たない。雑誌「家の光」が置いてあり、何気なく読むと、先日亡くなった野坂昭如の原稿が載っていた。12月号なので、亡くなる寸前に書いたものだと思う。胸が詰まりながら読む。
              ジャム工房16 
              ひまつぶし?

「本日のランチ」はかなり凝ったものだった。木箱のお重には、サフランライスと揚げ立ての鶏の唐揚げ。さらに小鉢が五つも付いていた。それにお吸い物。小鉢はいずれも凝ったもので、じゃがいも入りオムレツ、ゴボウの唐揚げ味噌和え、ポテトサラダ、蒸し鶏の自家製マヨネーズ和え、金時草の和え物。薄味が基調で、地場の野菜を使っている。
              ジャム工房④ 
              おおおの到着
              ジャム工房⑤ 
              地産地消の素材
              ジャム工房⑥ 
              メーンの唐揚げ
              ジャム工房12 
              ガブッと行け     
              ジャム工房13 
              夢の歯型

メーンの鶏の唐揚げが秀逸。家庭料理の延長線上の味付けで、コロモのサクサク感と鳥の肉汁感がジュワリと滲み込んでくる。醤油に白ワイン、ニンニク、ショウガで味を調えているそう。サフランライスは自分の畑で採った「彩のかがやき」を使っている。柔らかく炊いているが、村長はもう少し固めが好き。
              ジャム工房15
              デザート

 「隠れ家みたいで、これからもたまには来たいわ。細かいところは雑なところもあるけど、デザートの梨のパウンドケーキも旨いし、コーヒーもドリップ式で悪くない。それに『家の光』は懐かしいわ。私は昔、ここでイラストを描いたこともあるのよ」
「へえー、主婦の友社ばかりじゃないんだ。毎日新聞でも仕事をやっていたっけね。最近は全然働かないけど」
「村長のせいよ。私が働いたら、村長はもっと働かなくなるでしょ。元々怠けものなんだから。少しは深沢七郎さんとか野坂昭如さんの爪の垢を煎じて飲んでほしいわ」
「バカメ。人生はひまつぶし。それに才能が違い過ぎる。稼ごうなどと思ってはいけない」
「ダメだこりゃ。付ける薬がないわ・・・」

本日の大金言。

深沢七郎と野坂昭如。ラブミー農場で対談したこともある。つい昨日のことのようなのに、時は過ぎ、2015年も終わろうとしている。偉大な先人も忘れられようとしている。忘れてはいけないと思う。


                       ジャム工房14 

ウルトラマンと十割「特製豚そば」の謎

 このところ心労と飲み会ハシゴで、胃袋がSOS。ペンクラブの忘年会に出席しようかしまいか迷ったが、ヨレヨレの体で行くことにした。朝から何も食べていない。PM3時過ぎ。途中の北千住で下車、銀行から残り少ない預金を下ろす。残額を見て、頭がクラクラしてきた。腹に何かを入れなければ、夜まで持ちそうにない。
               そば助 
               隠れ名店か?

ふと見ると、ウルトラマンが立っていた。いい匂いが鼻腔に流れ込んできた。「究極の塩だし そば助」のレトロな看板。「十割そば」という文字も見えた。立ち食いそばの外観で、村長の「これから行ってみたい店リスト」にも入っている店だった。塩だしと十割そば。胃袋にも優しい響き。これは入るっきゃない。
               そば助5 
               立ち食いそば屋?
               そば助① 
               メニューは多い

店はカウンター席とテーブル席があり、開放的というより、ざっくばらんな造り。券売機で「特製豚そば」(680円)を選び、カウンター席に腰を下ろした。黒Tシャツ姿の女性スタッフが2人。下町風のお姉さん。メニューはバラエティーに富んでいて、酒のツマミまである。うむ。聞くと、浅草稲荷町に本店があり、北千住は二番目の店だそう。

「十割そばって、どうせそば粉は中国産でしょ?」
「いいえ、北海道知床産そば粉を使っているんですよ。豚だってやまと豚です。食べてみればわかります」
「失礼しました」
               そば助② 
               特製豚そば

7分ほどで、「特製豚そば」がやってきた。鰹の塩だし9に醤油1を加えたツユだそうで、いい匂いが湯気の中から「ようおいでなすった」と言っているよう。豚肉の量がかなりあり、新鮮な刻みネギが乗っていた。白ゴマがパラパラと振ってある。悪くない風情。
              そば助③ 
              うむむ

まずはスープをひとすくい。かなり甘い。かつおの出汁が確かに効いていて、奥深さを感じるが、もう少し甘さを抑えた方が村長の好み。十割そばは星が点々としていて、グレーがかっている。押し出し式の製麺で、注文を受けてから作っているそう。コシはさほどない。食べているうちにブツブツ切れてくる感じで、それは十割そばの証明かもしれない。そばの風味もそれなりにある。会津桧枝岐(ひのえまた)の十割そばを思い出した。
              そば助⑦ 
              鰹の塩だしツユ
              そば助⑥ 
              国産十割そば
              そば助⑧ 
              秀逸な豚肉

薄切りの豚肉はきれいな脂身もあり、ロース肉のよう。その量が見た目よりもボリュームがある。好感。やまと豚というのも嘘ではないようだ。目の前に自家製の調味料が2種類あり、その一つ「激辛ごま唐辛子」を加えてみた。これが意外によかった。激辛とうたってあるが、村長にほどよい辛さで、味わいに変化が生まれた。締まる旨さ。そばの量はそれほど多くはないが、豚肉のボリュームもあるので、宴会の前(あるいは後)の小腹にはちょうどいい。
              そば助⑨ 
              自家製調味料
              そば助10 
              味の変化を楽しむ

値段的にも立ち食いそばレベル。立ち食いそばの範疇と言っていいかもしれないが、全席簡素な椅子がある。出がけに気になっていた入り口のウルトラマンのことを聞いてみたら、「あっ、あれは単にオーナーの趣味です」とお姉さんがカラカラと笑った。胸のランプが点滅し始めた。

本日の大金言。

安くて旨い。下町にはどこか心意気が残っている。江戸の屋台風そば屋とウルトラマン。ツマミと酒。ひょっとしてこれは新しい蕎麦屋の形態かもしれない。


                             そば助11 


無化調の新ラーメン「追い鰹そば」

 「最近、埼玉の東北にある加須が面白いことになっているようよ」
「加須ってあの加須? 3.11で双葉町が町ごと移転して一躍有名になった・・・」
「そうよ。うどんの街でもあるけど、ラーメンが面白いことになっているらしいのよ」
「ほう、どんなことに?」

村民2号が「昔美人グルメネットワーク」から仕入れた情報によると、埼玉でも人気店だった久喜市南栗橋の「麺屋みつば」が加須市に移転し、さらに埼玉ラーメンランキングで人気赤丸印上昇中の「らあめん忘八(ぼうはち)」も加須市にあるというのだ。「麵屋みつば」は約2年ほど前に行ったことがある。衝撃的な味だった。だが、「らあめん忘八」は行ったことがない。すぐにポンコツ車を飛ばすことにした。
               忘八1 
               人気急上昇中

埼玉県道84号線沿い、下樋遣川に「らあめん 忘八」の日除け暖簾が見えた。一軒家。午後1時近い。駐車場は満杯で、入り口の椅子に9~10人ほど並んでいた。かような場所にかようなラーメン屋があったことに少々驚く。スマホ片手の若い客が多く、今どきのラーメン屋なのは間違いない。期待半分で、並ぶことにした。
               忘八① 
               かなり待たされる

寒空の下、30分ほど待っていると、ようやく中に入れた。左側がテーブル席と座敷になっていて、右手に小さなカウンター席。その奥が広い厨房で、太り気味の若い店主が、黙々と麺づくりに励んでいた。多分夫婦だろう、30代くらいの女性が、出来上がったラーメンを運んだりしていた。一生懸命だが、あまり仕切りはよくない。外で待っている人が多いのに、店内は結構空いていたりする。
               忘八② 
               ここまで30分ほど

村長は券売機で、「追い鰹そば」(750円)を頼むことにした。村民2号は「とりそば」(700円)。ここは化学調味料を一切使わず、麺も埼玉産小麦を使い、完全自家製麺。素材へのこだわりは半端ではない。この手の店によくある説明書きが少ないのは好感。麺が完全自家製なので、売切れ次第終了だそう。
               忘八③ 
               メニューは少ない

10分ほどで、「追い鰹そば」が登場。深めの真っ白いどんぶりに、濃いめの醤油スープが湯気を立てていた。多分鶏油だろう、脂がキラキラ浮いている。チャーシューが2種類。ピンクがかったきれいな豚チャーシューと、比内地鶏のチャーシュー。ぶっといメンマが2本。万能ねぎとカイワレが浮いている。その下には中太ストレート自家製麺。悪くない構成。
              忘八⑥ 
              シンプルな「追い鰹そば」
              忘八⑦ 
              コショウをパラパラ

まずはスープ。予想よりも濃い。もう少しかえしを緩めた方がいいと思うが、それが次第にまろみを帯びてきた。追い鰹(宗田節)が効いていて、その風味は煮干しとはひと味違う。自家製麺が独特だった。ツルリした食感で、噛むとムニュっとした歯ごたえ。「麵屋伊藤」のような、シャキッとしたコシではない。あえて言うと、柔らかなコシのある冷麦のような食感。
              忘八2 
              追い鰹の出汁
              忘八⑨ 
              独特の自家製麺
              忘八3 
              豚チャーシューは秀逸
              忘八4 
              鶏チャーシューも秀逸

「塩そばもちょっと味が濃いかな。麺は本当に独特。チャーシューもきれいに作られていて、悪くない。メンマはシャキッとしていてマル」
「同じ無化調ラーメンでも、東京・門前仲町『こうかいぼう』ほどの深みはない。スープも麵もチャーシューも上手く作っているのに、どこかバラバラな感じ。まだ十分に練れていない気がする」

「まだオープンして1年半だそうよ。運営ももう少しうまくやらないと、外で待っている客がかわいそう。私たちも30分も待ってて、風邪ひきそうになったわ。店主も奥さんも一生懸命なのはわかるけど、まだ空回りしていると思うわ」
「ま、これからもっとよくなる。そう思うことにするよ」
「私たちは悪くなる一方だけど(笑)」
「・・・・・・」

本日の大金言。

新しいラーメン店がどんどん誕生している。そのほとんどが今どきのレシピラーメン。超こってり系か、無化調系。味わいに熟練の深みがないのが特徴。たかがラーメン、されどラーメン。



                            忘八11

スタンドバーで安く信州を楽しむ

 夕刻の会合にはまだ時間があったので、東京・新橋の駅前ビル1号館をうろつくことにした。午後4時半過ぎ。このビルは居酒屋、立ち食い屋、洋食屋などが暖簾を下げる、食べ歩き飲み歩き好きには隠れたメッカである。実はここに村長の止まり木がある。

青紫色の幟(のぼり)がさわやかで艶めかしい。「地酒ミュージアム 信州おさけ村」の文字がはためく。長野県酒類販売(株)の直営店である。ディープな信州の酒がほとんど揃っている。スタンドバー(立ち飲み)なので、とにかく安い。ワインや焼酎、地ビールもある。信州のツマミ類も豊富でこちらも安い。東京の穴場の一つと言っていいだろう。
              信州おさけ村 
        穴場である新橋駅前ビル一号館)

村長はふらふらと入り、「3種利き酒セット」(550円)を頼むことにした。「中乗りさん純米吟醸 横井戸貯蔵」、「七笑 ひやおろし」「九郎右衛門 ひやおろし」の三種を選んだ。ツマミは「馬刺しの燻製(くんせい)」(350円)と「野沢菜油炒め」(120円)を頼んだ。我ながら渋い選択。セルフサービスなので、自分で持って、木のカウンターで「夕暮れのひと時」を楽しむことにした。
              信州おけさ村 
              意外にOLが多い
              信州おさけ村④ 
              3種類で550円なり
              信州おさけ村⑥ 
              350円の珍味メニュー

信州の地酒はいい。「中乗りさん 純米吟醸 横井戸貯蔵」はコク、酸味、香りがいぶし銀の輝きで、五臓六腑にズシリとくる。「七笑 ひやおろし」はまろやかでやや辛口。「九郎右衛門 ひやおろし」は樽香があり、辛口だが甘酸っぱさがある。村長の好みは「中乗りさん 純米吟醸」で、これをチビチビやりながら、「馬刺しの燻製」を食べる。
              信州おさけ村⑤ 
              たまらん!

信州は熊本、会津と並ぶ馬刺しの産地で、「馬刺しの燻製」は地場のもの。ロースト香と黒胡椒の香り、それに塩分と甘みが馬肉から滲みでてくる。ビーフジャーキーよりもまろやかで噛めば噛むほど甘みもある。特上の味ではないが、きりっとした地酒によく合うと思う。マヨネーズを付けて食べると、それはそれで旨い。
              信州おさけ村⑧ 
              中乗りさん
              信州おさけ村10 
              馬刺しの燻製
              信州おさけ村⑨ 
              野沢菜の油炒め
              信州おさけ村1 
         馬刺しと油炒めの出会い

「野沢菜油炒め」は唐辛子も入っていて、そのピリ辛感と野沢菜自体の旨みが左党のちょっとしたツマミにはいい。合計1020円ほどのリッチ。気がつくと、店の中はサラリーマンやOLで賑わい始めていた。隣の中年のサラリーマンが親しそうに村長に話しかけてきて、「ここはナチュラルチーズが旨いんですよ」と言った。時計を見ると午後5時半。いけねえ。後ろ髪をひかれながら、慌てて立ち飲み日本酒バーを後にした。

本日の大金言。

立ち飲みバーは今やオヤジの場所ではない。若いOLの止まり木となっている。それを狙ってオヤジも男もやって来る。OLもひそかに罠を楽しむ。酒を媒介にした駆け引き。パソコンの前にしがみついているよりはよほど健全かもしれない。


                          信州おさけ村12 

肉屋直営のワンコイン「ロースカツ丼」

 グスン。作家の野坂昭如さんが亡くなった。青春時代にかなり影響を受けた作家だけに、どこか大きな時代が終わった気分になる。「新潮45」の最期の原稿には「この国に、戦前がひたひたと迫っていることは確かだろう」と書いたという。「戦前がひたひた」。「焼け跡闇市派」と自称した野坂さんの、これは遺言かもしれない。ずしりと重い。だが、しかし・・・これをしっかりと受け止めなければと思う。ぎっくり腰・・・などと言っている場合ではない。

空が滲んでいる。こんな時はカツ丼に限る。シバの女王から教えてもらった茨城・古河市にある「とんかつ 三軒家」にポンコツ車を飛ばすことにした。肉屋「ヤマムロミート」直営のとんかつ屋である。今回が2回目の訪問。とにかく安くてボリュームがある。しかも旨い。それ故、正午は行列ができることもある。最近太り気味で、朝昼晩ラジオ体操を始めた村民2号も付いてきた。
              三軒家① 
              肉屋直営のとんかつ屋

古河市下辺見の県道沿いに「とんかつ 三軒家」の看板が見えた。まるでファミレスの外観。混雑を避けて、午後1時半過ぎに到着。L字型の大きいカウンター席とテーブル席、それに小上がりもある。メニューの中から村長は「ロースかつ丼」(税抜500円)を頼むことにした。前回は「ロースカツ定食」(同700円)を食べ、豚カツの厚みとキャベツの山盛りに「さすが肉屋直営」と大いに満足した。「ロースかつ丼」はどうか? 村民2号は「ヒレカツ定食」(同3ケ800円、みそ汁付き)
              三軒家② 
              ロースかつ丼でねえの?
              三軒家1 
              混んでる人気店

15分ほどの比較的長い待ち時間で、「ロースかつ丼」がやってきた。お新香が付いているが、みそ汁はなし(別料金)。グスン。朱塗りの大きなドンブリの蓋を取ると、湯気とともに卵でとじられたカツ丼が3倍ゴシックで現れた。卵は多分2個は使っている。とんかつは値段を考えると、かなりの大きさで、5つに切り分けられていた。卵がもう少し半熟だといいのだが、しっかりと火が通っている。上に三つ葉が乗っていた。
              三軒家③ 
              圧倒的なボリューム

箸を入れると、肉の厚みとコロモの厚みがわかった。ロース肉の厚みは1センチほど。ガブリと行くと、ロース肉の柔らかさがいい歯ごたえ。脂身が少なく、それは好みの問題だが、脂身好きの村長にはやや物足りない。かなり甘めの濃い味付けで、コロモのサクサク感ももう少し欲しい。多分揚げたてというよりも揚げ置きを使ったのではないか。前回のロースカツ定食は揚げたてだった。
              三軒家⑥ 
              言葉はいらない
              三軒家⑤ 
         肉も暑いがコロモも厚い
              三軒家⑦ 
              戦後の歴史

ツユには出汁感があまりない。ご飯もフツーの旨さ。総合的にはボリュームといい、肉といい、ワンコインとは思えないもので、食べ終えると、かなりの満腹感。これは肉屋による田舎のB級のカツ丼、だと確信した。
              三軒家3 
              揚げ立てのヒレカツ

「ヒレカツはちょうどいい量で、キャベツがどっさりというのがいいわ。確かに肉が旨いし、安いのもいい。私の方が当たりね」
「みそ汁くらい付けてほしいけど、ぜいたくは言えない。でも、このカツ丼の原点のような味とボリュームは悪くない。戦後、日本は焼け跡闇市から立ち上がってきた。このカツ丼にはそのかすかな匂いがする。でもなあ、ああ悲しい」

「どうしちゃったの? 野坂昭如が亡くなって、村長の青春も終わっちゃったの? もうとっくに終わっちゃっているのに、バッカみたい」
「そうじゃない。豚汁を頼めばよかったって思ったら、なぜか涙が出てきたんだ。200円の豚汁を頼めなかった自分が情けなくて情けなくて・・・オレは何という小さな人間なんだって・・・」
「ずっとそうやって、一人芝居をしてたら?」

本日の大金言。

野坂昭如は美食にはあまり執着していなかったようだ。昔、確かエッセイで、食べ物に対する選り好みはないと書いていたと記憶する。地方に出たら、食堂などに入ると、選ぶのが面倒なので、ほとんどカレーライスかラーメンと。焼け跡闇市の記憶を終生忘れなかった、あるいはそこから人間を見つめようとした稀有な作家に黙とう・・・。


                         三軒家11 






秘湯の安宿「地もの料理」

 忘れるところだった。奥塩原温泉郷の秘湯宿をこっそりご紹介したい。ウマズイめんくい村の怪しい一行が泊まったのは「湯荘白樺」。日塩もみじラインの途中にある部屋数15ほどのやや裏さびれた温泉宿だが、ここの檜(ひのき)の風呂が飛び切りよかった。村長がこれまで入った源泉掛け流し湯の中でベスト3に入る。

財政事情から「とにかく安くていい宿を探そうね」と、それまでよく泊まっていた「那須山荘」や板室温泉「大黒屋」は今回は敬遠。村長の取材力をフル回転して、一人1泊2食付7000円(6畳一間、税抜)の「湯荘白樺」を見つけた。奥塩原新湯温泉は江戸時代中期に発見された秘湯で、周辺には4軒の旅館がある。「湯荘白樺」はその中でも一番安い。しかも元湯がすぐそばにあり、硫黄の匂いとともに噴煙(水蒸気)が上がっている。ポエム。
              湯荘白樺① 
          硫黄の匂いのする秘湯の宿

硫黄の匂いがどこか心地よい。チェックインするなり、檜風呂に入る。大人の男性が5~6人ほどしか入れないこじんまりとした檜の湯船。そこに乳白色の硫黄泉が揺蕩っていた。かなり熱い。湯口には太い木の枝が差し込まれていて、それで流れ込む源泉を調節している。温度調節も兼ねているようで、空気に触れる時間を長くすることによって、42~44度を保っている。村長が初めて見る、あまりに素朴な世界。
              那須塩原① 
              極上の源泉掛け流し

入った瞬間、なめらかさと体を包み込む感触、さらに毛穴に滲みこんでくるような泉質・・・・ぎっくり腰常習の村長にとってはかなりの効用。単純酸性硫黄泉なので草津の湯とも似ているが、硫化水素も含んでいて、その卵の腐ったような匂いは強烈でさえある。湯の花が沈殿し、泥化していて、バケツに入ったそれを体に塗ると、効用がさらに高まるそう。ここには無上の秘湯の楽しみ感がある。

歩いて行ける距離には「むじなの湯」他3つの源泉掛け流しの共同浴場もある。それぞれ泉質が微妙に違う。寒風の中、石段を90段ほど下がった場所にある「むじなの湯」にも入ったが、体に突き刺さってくるような源泉は注意が必要。村長は湯当たりしてしまい、30分ほど横になったほど。
              湯荘白樺② 
              予想以上の夕飯

さて、この「湯荘白樺」の夕飯が予想以上によかった。安い旅館なので期待していなかった分、感動もひとしお。食堂がないので、部屋に運んでくれる。御膳には煮物、鶏のホイール焼き、豚肉の鍋物、刺身、蓮根の和え物、サラダ、お新香、デザートの自家製杏仁豆腐が並ぶ。それにご飯とみそ汁。

家庭的だが予想以上の味だったので、女将に聞いたら、「魚以外はすべて地場産なんです。野菜も豚肉も地場のものです」とか。煮物の大根も知る人ぞ知る奥塩原高原大根で、そのほどよい固さと甘みが美味。ホイール焼きの鶏肉と長ネギ、鍋物(陶板焼き)の豚ロース肉と大根おろし。それらも素材は地場もの。どちらも味付けは甘辛で、もう少し砂糖の量を少なくした方が好みだが、村民2号は「この味付けが牧歌的でいいのよ」
              湯荘白樺⑤ 
              ええのうタイム
              湯荘白樺⑥ 
              奥塩原高原大根
              湯荘白樺③ 
              鶏胸肉と長ネギ
              湯荘白樺⑨ 
              豚肉の旨さ
                                                      湯荘白樺12 
                                   湧水で炊いたご飯


地酒の純米大吟醸「天鷹心」をチビチビやりながら、秘湯の料理をつつく。硫黄泉で火照った体に一刻の幸せを流し込む。ぜい沢過ぎる時間でねえの。

「ここは当たりね。見晴らしもいいし、何よりも温泉が素晴らしい。紅葉はすっかり終わって、雪もちらほら舞ってるわ。隠れた温泉宿としてはここはまさに穴場だと思う。トイレと洗面所が共同なことだけが残念だけど」
「それも含めて、ここは確かに穴場だ。ウマズイめんくい村指定の宿にしよう」
「ベンガル虎と白クマのはく製の置物には驚いたわ。そうそう村長もお願いして、はく製にしてもらったら? 誰も見ないけど(笑)」
「んーん、ダッフンだァ・・・・・・」
「もう聞き飽きたわよ」

本日の大金言。

安くていい宿は探せばある。多少の欠点は目をつぶれば、そこが小さな天国になる。幸せはどこにでもある。ただ気がつかないだけかもしれない。



                          湯荘白樺14 



天国のジョンも驚く?ディープなレストラン

 那須高原に来たもう一つの目的は「ペニーレイン」。超人気のベーカリー&カフェレストランで、5年ほど前の夏に軽い気持ちで来たら、「1時間から2時間ほどお待ちいただきます」と言われて、早々に退散した。今回は師走のしかも午前中。まさか以前のようなことはあるまい。満を持して、翌日、午前11時過ぎにポンコツ車で到着した。
              ペニーレイン 
              ここはリバプールか?

「アビイロード」のアルバムジャケットがそのまま再現された入り口。シャレた洋風の建物。それだけで人気の秘密がわかる。元々はペンションだった建物を改築して、ビートルズファンだったオーナーがベーカリー&カフェレストランとして営業を始めた。25年ほどの歴史。
              ペニーレイン1 
              アビイロードの先

入るとベーカリーコーナーがあり、店内はかなり広い。焼きたてのパンがデパートのパン屋のように並び、その奥がレストラン。午前11時半前だというのに満席で、家族連れや女性のグループ客、カップルで賑わっていた。ビートルズが愛用したギター(レプリカ?)やジョン・レノンが描いたイラストなどが店内にさり気なく置かれている。
              ペニーレイン2 
              香ばしいパンの行列
              ペニーレイン3 
              ランチメニューが狙い目
              ペニーレイン13 
              近くにジョンがいる?

待ち時間は10分ほど。ツイテル? ランチメニューの中から、村長は「BLTのバゲットサンド」(サラダ付き、900円=税込み)を頼むことにした。村民2号は「パングラタン」(1200円=同)。「予算オーバーだけど、せっかくだからコーヒーも頼みたいわ」で、「イマジンのドリップコーヒー」(お代わり自由、550円)も頼んだ。懐にぴゅうと寒風が吹いた。イテテテ。

10分で、まずはコーヒーが到着。続いて、「パングラタン」、「BLTのバゲットサンド」がやってきた。「パングラタン」はブールを丸ごと一個使い、くり抜いた中央部にグラタンがテンコ盛りで湯気を立てていた。
「箱根の渡邊ベーカリーで食べた温泉シチューパンにも驚いたけど、これも負けていないわ。ボリュームではこっちの方が凄い。その分値段も高いけど」
村民2号が上気しているのがわかった。酒池肉林の世界かもしれない。
              ペニーレイン④ 
              おおおのパングラタン

「BLTのバゲットサンド」のボリュームにも驚く。あのデカくて長いバゲットを半分使い、その間から厚切りのベーコン、トマト、レタス、サラダ菜、粉チーズがどっかと見えた。4つに切り分けられていたが、バゲットの香ばしさと焼きたてのベーコンのいい匂いが食欲をそそった。これが一人前だとは思えない。イギリス人サイズか?
              ペニーレイン⑤ 
          わわわのBLTのバゲットサンド
              ペニーレイン⑥ 
              イギリスサイズ?

覚悟を決めて、ガブリと行くと、バゲットの固さとパリパリ感が押し寄せてきた。ベーコンの厚さは5ミリはあろうかというもので、新鮮なトマト、レタス、サラダ菜がいいバランスで口中に広がる。慌てて食べると柔らかい粘膜に痛い。黒胡椒とバターとベーコンの塩味が自然で、パンの美味さが引き立つ。やや薄味。
              ペニーレイン10 
              秀逸なベーコン

自家製ピクルスを箸休めにして、ドリップコーヒーで休憩。マスタードソースを付けてから、さらにガブリと行く。これが当たりだった。マスタードソースの酸味と辛さがいい具合で、BLTサンドをさらに引き立てる。胡麻ドレッシングのサラダも悪くない。
              ペニーレイン7 
              自家製ピクルス
              ペニーレイン11 
              秀逸なマスタードソース

「もうお腹いっぱい。パンも美味いし、コーヒーも美味い。だけど、このボリュームはどうにかならないかしら。また太っちゃうわ」
「ところで、ここにビートルズのメンバーは来たことあるのかなあ。ジョン・レノンは軽井沢と箱根を愛していたようだけど、那須の話は聞いたことがない。ちょっと残念」
「当たり前でしょ。この店が出来たのは、ジョンが一発の銃弾によって亡くなった後よ。でも、もし知っていたら、来ていたかもしれないわね」

「天国のジョンが3.11とその後を知ったら、きっと天国で悲しんでいるだろうな。イマジンを聞くとそれがわかる」
「あらどうしちゃったの?急にセンチメンタルになっちゃって。ダッフンだァの方が似合うわよ」
「トイレに行きたくなってきた・・・」
「シャレになっていないわよ。サイテー!」

本日の大金言。

本日はジョンの命日。渓流斎さんと瘋癲北欧さんはリバプールには行っているが、ここには来たことがあるのだろうか? 京洛先生なら「そんなけったいなとこ、よう行きまへんで。白河周辺以北は鬼が棲んではる、ひっひっひ」というだろうな、きっと。



                          ペニーレイン12 

伝説の「丸ごとりんごパン」

 久しぶりに那須高原へ。3.11以降、客足が遠のいていたが、今では少しずつ戻っている。皇太子ご一家が3.11後も変わりなく那須の御用邸に滞在していることも大きい。その那須のアンティークショップで、女主人から面白い話を聞いた。

「雅子さんがあんぱんがお好きで、よくホテル瑠庵(ルアン)のあんぱんを買っていたそうですよ」
「へえー、あんぱん好きとしては聞き流せない。そのホテルに行かなくっちゃ」
「でも、震災後に閉店してしまったんですよ」
「ありゃまあ残念」
「でも、それが別の場所でパン屋として復活したんです。そちらに行ってみては?」
              ルアン② 
              ルアンの看板が・・・

ポンコツ車を飛ばすことにした。那須高原には「NAOZO」や「ペニーレイン」などいいパン屋が多い。りんどう湖方面へと向かうと、テディベアミュージアムの斜め向かいあたりにその「パン・ドゥ・ルアン」の看板が見えた。元祖那須のあんぱんの文字。一軒家のパン屋で、「那須あんぱん」と染め抜かれた白いノレンが下がっていた。時刻は午前11時半。
              ルアン① 
              復活した暖簾

入ると、左手にズラリと焼きたての美味そうなパンが並んでいて、天然酵母パンやバゲットなどの合間に「那須あんぱん」が見えた。大と中と小があり、大はすでに売り切れていた。村長は「中」(420円)を選ぶことにした。ちなみに「小」は220円。もう一つ、村長の目をくぎ付けにさせたのが「丸ごとりんごパン」(580円)だった。リンゴを丸ごと一個包み込んだパンで、その焼き色といい形といい、村長の胸を高鳴らせるに十分だった。恋するりんごパン。
              ルアン③ 
              香ばしいパン
              ルアン⑥ 
              那須あんぱん(中)
              ルアン2  
              丸ごとりんごパン!

右手がカフェコーナーになっていて、そこでこの二つの甘い恋人を賞味することにした。パン好きの村民2号は「これを昼めし代わりにしましょう」。ブレンドコーヒー(300円)も頼んだ。感じのいいパン職人さんに、「これを二つにカットしてもらえませんか」と頼むと、快く引き受けてくれた。
              ルアン5 
              カフェコーナー

白い磁器皿に二つに割った那須あんぱんと丸ごとりんごパンが並ぶ。まずは那須あんぱん。「中」でもフツーのあんぱんの優に2倍の大きさで、頂上には黒ゴマが散りばめられ、表面の卵液のテカりとこんがり感がいい。あんこは粒あんで、ひと目で上質のあんこだとわかった。その厚さは3センチはある。蜜煮した栗が一個入っていた。
              ルアン11 
              おおおの光景
              ルアン7 
              上質が詰まっている

パンの美味さと甘さがかなり控えめな粒あん。大納言小豆のふっくら感。栗のアクセントも効いている。絶妙なあんぱんだと言わざるを得ない。だが、もう一つの「丸ごとりんごパン」のほうが驚きだった。丸ごとりんご一個を使ったアップルパイは珍しくはないが、パンというのは珍しい。しかもその姿かたちの見事さ。
              ルアン⑨ 
              軸までパン
              ルアン12 
              飛び込みたい
              ルアン13 
              見る前にかじれ

紅玉を使い、さらにカスタードクリームとメープルシロップで包んでいる。フォークを使って食べると、蜜煮した紅玉の甘酸っぱさと新鮮なカスタードクリームのバランスが絶妙。口中に広がる幸福感。秀逸なカスタードクリーム。メープルシロップがそこに彩りを加えている。

「パンが美味いわ。それが基本にあって、アップルとカスタードクリームが生きている。ホテル瑠庵でもこの丸ごとりんごパンは人気だったそうよ。移転して味が落ちたという人もいるらしいけど、これだけの味でもし味が落ちたというのなら、元はどれほどのものだったのかしら」
「気になるのは雅子さんが今もここに来ているかだけど、どうも移転復活したことを知らないようだね。パン職人は『ホテルの時は見かけましたけど、こちらに移転してからは見えてないと思います』って話していた」
              ルアン4 
              天国はどこにある?

「それは残念ね。村長のブログを読んでくれたらね」
「まさか。でもいつか噂を聞きつけて来てくれるかもね。それにしても皇太子ご一家の那須御用邸滞在はあまり知られていないけど、さすがだと思うよ。同時に那須高原が震災前の活況を取り戻してほしい。切に思うよ」
「珍しくオチがないわね。明治天皇が木村屋のあんぱんがお好きだったように、皇室とあんぱんは意外に縁が深いのよ。村長とあんぱんの繋がりには誰も関心がないけど(笑)」
「・・・・・・」

本日の大金言。

軽井沢にもいいパン屋が多いが、ことパンに関しては那須高原の方が上だと思う。パン屋探しの旅も悪くない。




                             ルアン6 



「限定10食フレンチトースト」の夜

 ホテルグランドアーク半蔵門一階にあるレストラン「パティオ」は帝国ホテル系列のレストラン。本日はここで賞味した「限定10食 フレンチトースト」について。敬愛する富士山山頂近くに住む陰陽師先生の宿泊先でもある。村長は早めにフレンチトーストを電話予約して、午後5時過ぎに到着した。
               パティオ① 
               ここは穴場かも

高級感のある約100席のゆったりとした空間。全面ガラス張りの向こうにはさらにテラス席があり、イルミネーションが夜のしじまに輝いている。ポエム。その先には皇居がある。名前を言うと、「お待ちしておりました」とウエイター。賊軍の末裔でもある足軽村長にとってはお尻がムズムズする感覚。とはいえ帝国ホテル流の客への対応はさすが、だと思う。
               パティオ② 
               むふむふの限定10食
               パティオ④ 
               ハウスワインに限る

見晴らしのいい席に案内されて、メニューの中から「フレンチトースト」(1100円=税込み)とグラスワイン(白650円=同)も頼んだ。
「焼くのに10分ほどお時間がかかります」
「全然オーケーですよ。白ワインも一緒にお願いします」
               パティオ③  
               ポエムな世界

ぴったり10分で焼き立てのフレンチトーストが白い磁器皿に乗ってやってきた。食パンではなくバゲットのフレンチトーストで、それが3切れ。蜜色のいい焼き色で、上からパウダーシュガーが夢のようにかかっていた。胸が高まるのがわかった。
               パティオ⑤ 
               真打ち、登場

白ワインでノドをうるおしてから、ナイフとフォークを使って、まずはひと口。表面のカリカリとした歯触りがいい。バターの風味とその後から生地のムニュリとした食感。美味。「卵液に半日ほど漬けております」とウエイター氏が教えてくれた。きれいな深みのある味わいで、新鮮な牛乳とバニラの香りも潜んでいる。それらが鼻腔に抜ける感覚がたまらない。
               パティオ1 
               いい焼き色
               パティオ2  
               急がば回れ
               パティオ⑦ 
               美味の断面

以前、京都の「レストランバスティーユ」で食べたのもバゲットのフレンチトーストだったが、それはもっと官能的で濃厚だった。それに比べると、むしろあっさりとした上品な味わい。一切れ食べてから、メープルシロップをかける。いい匂いがさらに立ち上がってくる。これこれ。
               パティオ⑧ 
            メープルシロップをたら~り
               パティオ⑨ 
               これこれ
               パティオ12  
               たまらんのう

フォークで愛しむように、口中へ。人生は多分考えているほど長くはない。食べているうちが花かもしれない。濃厚で絶妙な甘みに自然と笑みが漏れる。考えてみれば、1100円という価格は安くはない。京都の絶品フレンチトーストは確か690円だった。白ワインと合わせると1750円のリッチ。直径50センチほどのリッチ。

その約4時間後、再びここに来たら、「限定10食」がまだ残っていた。これほどの味わいが売れ残っていたことに驚く。同時にここは穴場ではないか、とも思った。そう言えばここは店舗経営は帝国ホテルだが、警察共済組合の施設でもある。桜田門の威光が一般客に敷居を高くしているのかもしれない。このあたりには服部半蔵も潜んでいる。テロリストよりテカリスト・・・。

本日の大金言。

東京の穴場はいろいろあるが、限定10食のフレンチトーストをこのロケーションで食べれる場所はそうはない。出来ればカップルで行きたい。




                           パティオ11  




プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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