天海大僧正と「極上親子丼」

 ポンコツ車を走らせて埼玉・川越「喜多院」まで天海大僧正(慈眼大師)に会いに行く。まさかね。天海僧正は戦国の世に生まれ、徳川家康の側近(精神的師匠?)として仕え、秀忠、家光三代に渡って多大な影響を与えたお方。日光東照宮を造り、東照大権現として家康を祀(まつ)ったことでも知られている。にわかには信じられないが、107歳まで生きたという説もある。喜多院は天海が第27世として住持した天台宗のお寺。
                                 喜多院① 
              天海大僧正さま~

出自については多くを語らなかったようだが、会津高田出身という説が有力で、没落した蘆名(あしな)一族らしい。最澄や空海に論争を仕掛けた徳一といい、歴史において陸奥国会津の存在感は意外に根っこが深い。戊辰戦争では一敗地にまみれたが、会津はほんの時たま異能の天才が出るらしい。近年では小室直樹さんか。

くだらない前口上はこのくらいにして、本日のメーンディッシュを俎上に載せることにしよう。通称蔵通りから少し入った仲町「小江戸 オハナ」の「極上親子丼」(1200円)である。川越でも人気の卵料理専門店で、如何にもの蔵造りの店の前には5~6人ほど並んでいた。店の中にも5人ほど。川越は今や年間658万人(平成26年度)もの観光客が訪れる人気スポット。待つのは嫌いだが、見かけ倒しの店が多い川越の人気店なるものをこの目と舌でじっくり味わってみるのもオツかもしれない。
                                 オハナ5 
              人気店「オハナ」

自分で「極上親子丼」と名乗るのも凄い。約30分ほどの待ち時間で、店内へ。今どき受けそうな、悪くない造り。テーブル席に腰を下ろして、「極上親子丼」を頼んだ。「昭和のオムライス」(1300円)や「貴婦人の卵サンド」(850円)にも心を動かされたが、悲しいかな胃袋は一つしかない。BGMはアメリカンポップス。
                                 オハナ④ 
              極上親子丼だべ
                                 オハナ4 
              如何にもがたまらない?

7~8分ほどで、黒いお盆に乗った「極上親子丼」がやってきた。朱塗りの立派なドンブリと鶏スープ。蓋を取ると、見事な色味の卵の世界が湯気を立てて広がっていた。ふわとろ、黄身と白身がまんだらに入り組んでいる。甘いいい出汁の匂い。七味をパラリ。まずは鶏スープをひと口。あっさりとした塩味で、奥深さはない。続いて、メーンへ。朱塗りのレンゲで卵の海をひとすくいして口中へ。思わず、はひふへほお~。
                                 オハナ⑤ 
              極上親子丼さま~
                                 オハナ⑥ 
              ご開帳だっぺ~
                                 オハナ⑦ 
              一味をパラリ

かなりのツユダク。甘めの醤油味で、こちらは出汁がそこそこ効いている。7種類の出汁を使っているそうだが、悲しいかなそれを感じる舌がない。だが、悪くない味わい。卵は3個使っているそう。鳥肉はもも肉と胸肉2種類だろう、それが惜しげもなくごろごろと潜んでいた。地鶏を使っているそうだが、「タマシャモ」なのかは不明。歯ごたえがとてもいい。上質の味わいであることは確か。
              オハナ⑨ 
              美味の予感
              オハナ⑧ 
              地鶏がゴロゴロ
              オハナ1 
              オジヤではありません

東京・人形町「玉ひで」の元祖親子丼と似ているが、それよりもツユが多い。オジヤのようでもある。ご飯の旨みがわからないほど。このあたりは好みの別れるところだが、村長はもう少しツユの量は抑えた方が好み。茅場町「鳥ふじ」の親子丼を横綱としたら、関脇くらいの味わいだと思う。観光地としては上出来の満足感。
              オハナ10 
              ツユの海~


天海僧正は「気はながく 勤めはかたく 色うすく 食ほそうして こころひろかれ」という言葉を残している。その反対だった自分の足軽人生をついつい省みる。どこか西の方から「ま、会津の出といってもピンからキリまでいろいろありまんなあ。ぐひぐひぐひひっひ」という有難い声が聞こえてきた。こりゃ得度するしかないかもなあ。

本日の大金言。

川越にも外国人観光客がわんさと来ていた。中国人の多さも目立った。日本人の、いや人間の棲み分け能力が試されている。ドンブリの中の親子丼の未来。「ホテルルワンダ」の教訓。



                            オハナ2
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大寒や隠れ暖簾の「たつた丼」

 一寸先何が潜んでいるかわからない。ゴッドマザーのお見舞いついでに桐生市でランチとなった。ポンコツ車を止めて、巴町周辺をブラ歩きしていると、古い木造の文化財的建物が視界に入った。その一角に何とも言えない情緒ある暖簾が下がっていた。「鳥亀食堂」の看板がセピア色の光沢を放っている。食堂というより古い料理屋の気配。
              鳥亀① 
              まさかの出会い

つい昔の癖で建物と店周りを縦横斜めから見る。どうやら鳥料理専門店で、入り口にランチメニューボードがささやかに佇んでいた。「たつた丼」「鳥弁当」「もつ丼」などの手書きのメニュー。いずれも750円なり。「たつた丼」って何だろう? この安さだとあまり期待するのはよくないかな、などとあれこれ考えながら引き戸を開けて店に入った。
              鳥亀② 
              入るっきゃない

入った瞬間、「いい店だ」と直感した。ゆったりとした4人用テーブル席と2人用テーブルだけ。サーモンピンクのテーブルクロスと年季の入った椅子、シンプルなインテリアが隙のない世界を作っていた。そのさり気なさ。向島か人形町あたりの路地裏の隠れ名店の気配。右手が厨房になっていて、そこに年配の店主が一人。奥さんと二人で店を切り盛りしているようだ。客は一人しかいない。
              鳥亀④ 
              隅々の気配
              鳥亀③ 
              名店発見か?

気になっていた「たつた丼」(750円)を頼むことにした。「たつた丼」はこの店のオリジナルで、鶏のささみを片栗粉でまぶして天ぷらに揚げたものだとわかった。「たつた」は竜田揚げから来ているようだ。店は創業が昭和43年(1968年)で、その時からのメニューだそう。厨房からの軽やかな揚げ音が心地よい。

12~3分ほどで、「たつた丼」がやってきた。ドンブリではなく漆塗りの丸いお重で、蓋を取ると、一口サイズの鶏のささみの天ぷらが、数えてみたら十数個ほどびっしりと表面を覆っていた。狐色のきれいな揚げ具合。豆腐と小松菜のお吸い物をまずはひと口。昆布出汁の効いた深い味わいで、この店主がかなりの腕の料理人だとわかった。
              鳥亀⑥ 
              ただ者ではない
              鳥亀⑦ 
              たつた丼どす

鶏のささみの天ぷらはサクサクと揚がっていて、きれいな味わい。うっすらとツユがかかっている。そのやや甘めの薄味は一瞬物足りなさを感じさせるが、食べ進むうちにそのデリケートなまでの味わいが実に上質なものだとわかる。絶妙なシンプルとでもいう他はない。炊き立てのご飯は柔らかく炊かれていて、薄めにかけられたツユとよく合っている。お新香も手抜きがない。ボリュームもかなりある。
              鳥亀⑧ 
              鶏ささみの天ぷら
              鳥亀⑨ 
         サクサク感とささみ
              鳥亀11 
              七味をパラリ

途中で七味を振ると、味わいにアクセントが付いた。飛び切りの隠れ名店を見つけた気分。かような店が潜んでいる桐生という街の奥の深さについて。西の西陣、東の桐生と言われた時代もあった。
              鳥亀10 
              プロがいる

「こんな汚い店で、申し訳なく思っているんですよ。建物も壊れかかっていて、後継者もいない。私たちの代でお終いでしょう。建物ですか? 桐生は織物の町で、この建物は織物工場の織子(女子労働者)の寮だったらしいですよ。かなり古い建物です」

サービスに出しているというコーヒーを味わいながら、店主と奥さんとしばし雑談となった。村民2号が隅々まで神経が行き届いている店の様子に感心していることを話したら、かような返事が返ってきた。
              鳥亀4 
              コーヒーのサービス

すべてに手抜きというものが感じられない。どこにも誇張がない。750円という舌代が信じられない。テレビや食べログに登場する宣伝上手の店が軽く見えてくるのはなぜか? 本物はまだまだ意外な場所に潜んでいる。それを見つける楽しみもまた。

本日の大金言。

いい店がなくなるのは客の責任でもある。情報だけが一人歩きするネット社会の盲点を考えてみる。安倍首相の過剰な人気も実体とかけ離れているのではないか? 客の責任も問われていると思う。



                            鳥亀2 

犬になりたい?ホットサンドの新世界

 久しぶりに所用で埼玉・大宮へ。東武・大宮公園駅で降りて、氷川神社方面へと歩き始めた。すると、住宅街に面白いカフェを見つけた。木と白をモチーフにした「ホリデイコーヒー」という店名。横文字。アメリカ西海岸風の店構えで、「ワンちゃんOK」の文字とホットサンドのランチメニューが見えた。ワンちゃんOKだって? 入り口のウッドデッキに小型のブルドッグと美女の姿。うむむ。
              ホリディコーヒー② 
              おや、こんなところに
              ドッグカフェ 
              ブルドッグの姿が・・・

店はコーヒーが売りのようで、ハワイの希少なスペシャルティーコーヒー豆を使用しているらしい。ちょうどランチタイムだったので、入ることにした。陽だまりに佇んでいるブルドッグのそばを通るとき、何故か「吾輩は犬になりたい」というキャプションが頭に浮かんだ。困ったもんだ。

入るとすぐ大きなウッドテーブルがあり、カウンターには男性一人とアイドルのような女の子(多分バイト?)。それにもう一人女性スタッフ。すぐ左手にはソファのようにゆったりとしたテーブル席と小さなカウンター席。雑誌クロワッサンにでも出てきそうな開放的な造り。カウンターで注文するアメリカンスタイル。
              ホリディコーヒー1 
              西海岸かハワイか
              ホリディコーヒー2 
              メニュー

ツナサンド好きなので、「ツナメルトサンド」(税込み550円)を頼むことにした。セットメニューがないのが残念。財布の軽さを思いながら「エスプレッソ」(W400円)を単品で頼んだ。「今日はエチオピアイルガテェフェ村の豆を使っています」とアイドル系女子。アベベの顔が浮かんだ。困ったもんだ。店は去年9月にオープンしたばかりだそう。

奥のソファ席に腰を下ろしてから、ついでにワンちゃんのことを聞いてみる。
「ここはドッグカフェ?」
「ワンちゃんはデッキだけオーケーなんです。はい、店内は人間だけです(笑)」
               
10分ほどで、「ツナメルトサンド」とエスプレッソがいい香りとともにやってきた。エスプレッソは酸味がやや強く、奥深い旨味。約1年半前に山形駅前通りの小さなコーヒー店で味わったエスプレッソほどの衝撃はないが、かなり上質の味わい。
              ホリディコーヒー⑥ 
              主役と脇役
              ホリディコーヒー⑦ 
              香ばしいのう

「ツナメルトサンド」は予想していたよりも旨い。フライパンで表面を焼いたホットサンドで、まずパンの旨さがかなりのもの。もっちり伸びやかなパン生地で、先日食べた浅草「ペリカン」の食パンに引けを取らない。
               
中の具はツナがほとんどそのままの姿で多めに挟んである。ホワイトチェダーチーズが溶岩(メルト)のようにこちらも多めに流れ込んでいた。ホワイトではなくレッドチェダーチーズかも。野菜はトマトだけ。バターとマヨネーズの風味がかすかに漂う。ピクルスで箸休めしながら食べ進む。
              ホリディコーヒー⑨ 
              失礼します
              ホリディコーヒー10 
          もう片側も・・・股裂き愛?
              ホリディコーヒー11 
              パンの旨さよ

「このパン、旨いね。自家製?」
「いえ、近くの『小春日和』の天然酵母の食パンです。評判のいいパン屋さんなんですよ」
「やっぱり、どおりで旨いはずだ」
              ホリディコーヒー12  
              うんめえ

アメリカン風に、マスタードとトマトケチャップを付けてみた。マスタードが当たりで、辛さと酸味が全体の味わいに深みとアクセントを付ける。真冬の寒さの中でハワイの味わいも悪くない。軽食に立ち寄るにはいい店かもしれない。「いつもはアイドル犬がいるんですけど、今日はお休みなんです。また見に来てください」帰りがけに女性スタッフが白い歯を見せた。ワン!

本日の大金言。

犬も歩けば新しい店に当たる。歩かなければ、当たらない。この当たり前のことを忘れると、足元が暗くなる。たまには余分なものを捨てて、散歩に出よう。きっと寒風も春風になるはずだ。



                            ホリディコーヒー14

明治のまさか、人形町「特製カツ丼」

 江戸でのミッションがのびてしまい、すっかり日が暮れてしまった。久しぶりに大好きな街、人形町をぶらり。腹の虫がきゅっと鳴いたので、甘酒横丁の老舗洋食屋に立ち寄ることにした。明治45年創業「小春軒」である。ここのいいところは老舗なのに、格式ばったところがないこと。初代小島種三郎はあの山形有朋のお抱え料理人だったお方。当時、すご腕のコックだったことがわかる。
              小春軒① 
              この風情
              小春軒 
              いい店構え

村長はエンタメ新聞社時代に何度か足を運んだ。メンチカツや海老の盛り合わせが特に旨かった。今回は久しぶりの訪問。店はテーブル席が4つほど。さらに正面にはカウンター席もある。その対面が厨房になっていて、そこにコック服姿の四代目と五代目がいい雰囲気で料理に励んでいた。街の洋食屋の気配が心地よい。
              小春軒4 
              メニュー

近くのおばさんのような女将さん(三代目の奥さん)がお茶を運んできた。まずはビール(小500円)を頼む。さらにメニューの中から「小春軒特製カツ丼」(しじみ汁付 1300円=税込み)を頼んだ。このところメディアに取り上げられることの多いメニューで、その独創に驚く。初代が考案したカツ丼で、煮込みカツ丼ともソースかつ丼ともタレカツ丼とも違う。明治の料理人、恐るべしのドンブリ。
              小春軒② 
              お待ちい~

いい匂いが厨房から流れてきた。ビールでのどを潤しながら、歴史の浸みこんだ店内を楽しんでいると、12~3分ほどで、「特製カツ丼」がやってきた。蓋を取ると、まず半熟の見事な目玉焼きが「よろしくね」とあいさつしてきた。その周りには隠し味でもあるデミグラスソースで煮た人参、玉ネギ、ジャガイモ、グリーンピースが色とりどりに広がっていた。ポエム。
              小春軒5  
              驚きのカツ丼

しじみ汁をまずはひと口。穏やかな味わい。賽(さい)の目切りの野菜は形が崩れないギリギリの緊張感で、いぶし銀の旨さ。その下の豚カツが絶妙だった。大きな一枚を切るのではなく、見事な揚げ色のひと口カツが数えてみたら5枚。パン粉のきめが細かい。ほのかにラードの香りが発散している。醤油ベースの甘めのタレをくぐらせているようで、肉の厚さは1センチほど。それが実に柔らかい。美味。多分ヒレ肉で、一枚一枚形が違うのが面白い。
              小春軒⑤ 
              明治の凄味
              小春軒⑥ 
              ひと口カツが5つ
              小春軒⑦ 
              上質の肉
              小春軒⑨  
          半熟玉子焼きの行方
              小春軒11 
              美味の断面
              小春軒12 
              秀逸なカツ

炊き立てのご飯は立っていて、甘めのタレがほどよくかかっている。脂身の好きな村長だが、上質な豚カツの旨みに、明治の初代の独創に敬意を表したくなった。お新香がないのは洋食屋の矜持か。気さくな女将さんと、ここを毎日のように利用していた経済ジャーナリストM氏の話などをしばし雑談。ほろ酔い気分。

「特製カツ丼」は太平洋戦争を挟んでしばらく中断していたそうで、三代目が再現復活したものだそう。帰りがけに、ふと野暮を承知で四代目に「この豚肉はどこのブランド肉?」と聞いてみた。すると、「どこの肉かわかりません。すぐ近くの『日山』から仕入れてますんで」。オメーン一本! 「日山」とは旨いはずだ。人形町の老舗洋食屋に聞くには野暮すぎた。サル年に反省猿・・・座布団一枚取り!

本日の大金言。

明治人の気骨と独創と工夫には驚かされることが多い。平成が100年後どうとらえられるか、見てみたい。


                        小春軒13 


あの「ペリカンの食パン」に辿り着く

 東京・浅草でもう一つの狙いは「ペリカンの食パン」を手に入れること。浅草では「ペリカン」といえば、手に入りにくい絶品の食パンの店として知る人ぞ知るパン屋さん。このところパンにもハマっていることもあり、「富士」で天丼を賞味した後、寿町まで大急ぎで歩いた。ぎっくり腰が止まらない。
              ペリカン① 
              パン屋とは思えない

店はパン屋というよりも街のクリーニング店のようなあまりにシンプルな店構え。店の前におばさん客が数人いたので、聞いてみると、「もう売り切れたみたいよ」とあまりの反応。サン・トワ・マミー状態になりかかる。思い切って店に入ってみると、右側に長い板棚が続いている。奥が工場のよう。普通にイメージするパン屋さんとはまるで違う。長い棚には袋に入った、多分予約客の食パンがズラリと見えた。女性スタッフが5~6人ほど忙しそうに工場と店内を行ったり来たりしていた。
              ペリカン⑤ 
          店内もパン屋とは思えない
              ペリカン② 
            シンプルすぎるメニュー
                                 ペリカン 
                               サン・トワ・マミー

「あのう、もうお終いですか?」
「ええ。お終いです。でも、午後3時半に食パン1斤と2斤だけでしたら焼き上がります」
「それ予約できますか?」
「はい」

ツイてる。ぎりぎりセーフ。食パンは1斤380円(税込み)、2斤760円(同)也。2斤を予約した。ちなみにメニューは角型食パンと山型食パン、それにロールパンしかない。恐るべきシンプル。約2時間後に食パンを受け取る約束をして、ようやく浅草の目的をほぼ終えたのだった。それからいろんなハプニングがあったが、長くなるのでカット。
              ペリカン① 
              グッモーニング!

翌日朝、ウマズイめんくい村のテーブルの上に「ペリカンの食パン」が輝いていた。パンナイフはいつものように、みい子さんからいただいた燕三条のスグレ物パン切りナイフ。こちらも朝陽に輝いている。

ペリカンの1斤は普通の食パンよりも小ぶりで、その分長い。袋を開けると、小麦とイーストの香ばしい匂いが立ち上がってきた。これだけでいい食パンだとわかった。手に取ると、ズシリとした重さ。切り始めると、パン生地の密度としっとりとしたもっちり感が伝わってきた。
               ペリカン③ 
           ただ者ではない?これで1斤
               ペリカン⑤ 
               香りと密度
               ペリカン⑥ 
               伸びやかな大地

まずはトーストせずにバターを付けて食べてみる。パン好きの村民2号が「密度が全然違うわ。しかもふんわりしていて、小麦の風味といい、これは私が食べた食パンの中でもベスト3に入る」いつもの辛口コメントがない。値段も安くはないが、それに見合った美味さで、密度とふんわり感、それでいてみずみずしいもっちり感がぎゅっと詰まっている感じ。村長手づくりのあんこと一緒に食べると、ため息が出そうになる。脳内エンドルフィンが踊り始める。

さらにトーストしてみる。これが当たり。外側のカリッとした食感は只事ではない。中の生地のフワフワもっちり感との対照が際立っている。余分な添加物は使っていないようだ。
              ペリカン⑧ 
              トーストしてみる
              ペリカン⑨ 
              圧倒的な表面
              ペリカン10 
              味な股裂き?
              ペリカン12 
              最後はこれ

「バターを使っているようね。トーストしたらわかったわ。小麦粉は国産かしら?
「いや、店のスタッフに聞いたら、カナダ産らしいよ。聞いてもなかなか教えてくれなかったけど、『国産ではない』というので、『カナダ産?』とカマをかけたら、渋々頷いていたから(笑)。カナダ産もいい小麦粉だよ」

「食パンだけでこれだけの人気なんだから、ヘンなオッサンに教えるわけないでしょ? 他にもきっと秘伝とか企業秘密があるわよ。取材記者失格だわ」
「もう失格してるよ。創業は1949年、昭和24年で、親子3代で理想の食パンづくりに励んでいる。食パンだけでも1日500本は作るそうだ」
「へえ、500本! それがすぐに売り切れちゃうとはビックリね。今度は山型とロールパン買ってきてよ。何なら今すぐでもいいわよ。コーヒー入れて待ってるから」
「・・・・・・」

本日の大金言。

たかが食パン、されど食パン。観光スポットから離れた浅草にはいい店がまだまだ潜んでいる。中心から外側へ。



                           ペリカン14 



浅草裏通りで下町黒天丼

 あれまあ、朝起きて窓を開けたら、一面の雪景色。昨日までの晴天が嘘のよう。その重たい雪を眺めながら、ブログを書くことにする。

毎年、正月は東京・浅草に行っていたのだが、今年は諸般の事情で行く機会を失してしまった。遅ればせながら、週末、大江戸新年会に行くついでに、浅草寺に立ち寄り、「どうか今年こそ小願成就しますように」と手を合わせてきた。虫のいいお願いごと。聖観音菩薩も呆れているに違いない。
              浅草寺 
              遅い初詣(浅草寺にて)

浅草に立ち寄ったもう一つの狙いはむろん食べること。久しぶりに天丼が食べたくなって、グルメの偏屈友人が勧める西浅草へぶらりぶらり。店主が高齢のためほとんどランチタイムしか営業していない店(夜は予約客のみ)で、浅草ビューホテルの近くの裏通りへ。「季節料理 富士」の暖簾(のれん)が見えた。何やら銭形平次が脇からぬっと出てきそうな店構え。
              富士① 
              浅草の穴場

ぎりぎり午後1時半前に滑り込んだ。古民家風の店内。磨き抜かれた木のテーブルとカウンター席、それに奥が小上がり。照明が暗めだが、それが昭和のいい名残りを感じさせる。隅々まできれいに掃除されている。ランチメニュー「上天丼」(お吸い物、お新香付き1200円=税込み)を頼んだ。
              富士② 
              ええのう
              富士1 
              ま、お上がり

下町の香りのする店主と女将は、一見ぶっきら棒に見えるが、すぐにそうではないことがわかる。注文と同時に天ぷらを揚げる軽やかな音が耳に心地よい。13~4分ほどで、いい匂いとともに「上天丼」がやってきた。
              富士④ 
              おおおの登場
              富士⑥ 
              エビー級
              富士⑤ 
              下町のド迫力

自家製のタレにたっぷりとくぐらせた天ぷらが折り重なるように丘を築いていた。黒っぽい天丼! 大黒家や中清などと同じ浅草下町の匂いがするが、ここは観光スポットからやや離れているために、妙な外国人や観光客がいない。その分、しっかりと作っている。店主は元々は日本料理が専門だが、ここ20年ほどは天丼を食べに来る客が多いそう。

天ぷらは海老が3本、穴子がほぼ1本、ナス、ニンジン、それに貝柱のかき揚げ。関西のようなカラッと揚がった天ぷらではなく、しっかりとタレにくぐらせていることもあり、コロモが柔らかい。ふんわりとしている。タレが厚めのコロモに黒々と滲み込んでいて、一見味が濃さそうだが、穏やかな甘辛。油はサラダ油とごま油のブレンドだそう。野暮の洗練という言葉が浮かんだ。野暮ったさの中に江戸が潜んでいるような。
              富士⑧ 
              穴子の美味
              富士13 
              残りの人生

素材はいずれも鮮度がよく、海老はプリッとしていて、ナスやニンジンも普通に旨い。感心したのは穴子と貝柱のかき揚げ。穴子の柔らかさと貝柱の惜しげのない量。ただ、ご飯は柔らかくて、固めが好きな村長の好みではない。この内容で1200円は高くはないと思う。
              富士10 
              秀逸な貝柱かき揚げ
              富士⑨ 
              ご飯は柔らかめ

お吸い物が秀逸。シイタケと八つ頭、それに三つ葉が浮いていて、シイタケの出汁が心にまで浸みこんでくる。浅漬けのお新香も悪くない。関西流の天丼を期待すると、満足度は低いかもしれないが、これぞ浅草下町の天丼だと思う。帰りがけに店主と雑談。「浅草生まれですか?」と聞いたら「いや、元は上野・根津だよ」。五代目柳家小さんのような雰囲気。女将さんの江戸しぐさも心に残った。ぶっきら棒の奥に深い味わい・・・。

本日の大金言。

やはり浅草は裏通りがいい。観光客で人気の店よりも少し外れのすすけた暖簾。そこに失われつつある何かが残っている。



                         富士12 


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プロの味、意外な場所の和食ランチ

 親しくしている利根川そば仙人から「ちょっと旨い料理屋があるよ。シバの女王も誘って行かない?」とのお誘い。そば仙人は不思議な人で、そば屋を営んだり、イベントをプロデュースしたり、畑で野菜を作ったり・・・底が知れない。昔は東京・銀座で出入りの和服屋をやっていたという話もある。独特の愛きょうのあるお顔としゃがれ声で誘われると、つい「どこまでも行きまっせ、地球の果てでも」と答えたくなる。

かなりの食通でもある。連れて行ってもらった店ではずれたことはない。シバの女王とどっこいどっこい。その店が埼玉・久喜市栗橋町の「日本料理 嬉乃(うれしの)」だった。すぐそばに「静御前の墓所」がある。源義経の愛人・静御前の伝説はあちこちに残っているが、この静御前の墓所もその一つ。「日本料理 嬉乃」はその一角にあり、石畳のアプローチ、その奥に下がった海老茶の暖簾・・・いい店構えで、「かような場所に」とちょっと驚く。
              嬉乃② 
              いい店構え
              嬉乃① 
              限定レンチメニュー

ちょうどランチタイムで、「自家製じゃこ山椒ごはん」(茶わんむし、小鉢付 税込み820円)にも惹かれたが、そば仙人の「ここは魚が旨いよ。店主は九州と大阪で修業した料理人で、とにかく手を抜かない。醤油からドレッシングまで全部自分で作る。だからファンが付いているんだ」というひと言で、ランチで一番高い「嬉乃膳」(デザート、コーヒー付 1580円)を選ぶことにした。全員同じ選択。
              嬉乃③ 
              凝った造り

店は凝った造りで、趣味のいい小上がり席とテーブル席、木のカウンター席などがあり、対面の板場には店主と若い板前さんの姿が見える。店主の隙のない板前姿に、かつて中華料理の名シェフ・周富徳さんが村長に言った「いいコックは立ち姿でわかるよ。きりっとしている」という言葉を思い出した。

10分ほどの待ち時間で、まずは冷奴の小鉢が来た。「この豆腐、旨いですねえ」村長が言うと、そば仙人が「これ、豆腐じゃないようだよ」。女店員さんにこっそり聞くと、「あのう、それは鱈(たら)の白子なんです。それを裏ごししたものです」。さらに女店員さんではなく、女将さんだった。ありゃりゃ。穴がなくてもどこかに入りたい気分。
              嬉乃8 
              本場関西の世界
              嬉乃④ 
              まさかの世界

続いて、お膳が来た。ひと目で本格的なものだとわかった。刺身はヒラマサとスズキが二切れずつ。たぶん昆布締めしてある。これが見事なもので、自家製醤油とワサビで食べる。京都で京洛先生に連れて行ってもらった割烹のものと遜色ない旨さ。だし巻き玉子、ヒラマサの醤油焼き、イカシュウマイと舌鼓を打つ。すべて関西の出汁の効いた薄味。天ぷらはシロギスとシシトウで、サクッと仕上がっている。
              嬉乃⑥ 
              刺身2種
              嬉乃⑨ 
              絶妙なだし巻き
              嬉乃11 
              大栗の渋皮煮
              嬉乃⑦ 
              これがたまらん

煮物はつぶ貝、里芋、カボチャ、ほうれん草、それに渋皮煮の大栗。そば仙人の「手抜きがない」が誇張ではないことがわかる代物。炊き立てのご飯と漬け物にも感心。みそ汁ではなくうどんというのも面白い。村長はみそ汁派だが、これはこれで悪くない。

コーヒーはそこそこだが、デザートの「酒粕のムース」は秀逸。吟醸香とムースの舌触りが素晴らしい。地酒メニューも実に渋い選択で、店主の趣味のよさもわかる。これで1580円は高くはない。かような場所にかような名店が隠れていることに驚く。改めて世界は考えているよりも広い。
              嬉乃14 
              酒粕のムース

「今度、みんなで夜来ようよ。Aさんに運転させて、私たちで飲んじゃおうよ。ねえ、そば仙人」
「オレは酒、やめてんだよ。何ならオレが運転してもいいよ」
「村の車でもいいよ。イケイケポンコツ車、イケイケ火の車、時空を超えて義経と静御前の元まで飛んで行け、なんてね」
白拍子だった静御前が舞う歌舞踊りってどんなものだったんだろう? 御前と御膳でうれしいのう・・・ひどいダジャレオチだよ。

本日の大金言。

プロフェッショナルと出会う楽しみ。しかもそれが意外な場所にあるとき、感動は深くなる。表通りより裏通りに花の山が潜んでいることだってある。




                        嬉乃15 



会津産コシヒカリと「牡蠣三昧御膳」

 上州のゴッドマザーをお見舞いした帰り、時間が遅くなったので、埼玉・羽生イオンモールで夕飯を取ることにした。フードコートではなく、一階のレストラン街へ。久しぶりに会津産コシヒカリを使っている和食レストラン「四六時中」で、まだ続いている正月ボケを吹き飛ばそうと思ったからである。人生も四六時中。
                               四六時中① 
             イオンモール
              四六時中② 
              四六時中

「四六時中」はイオングループのイオンイーハートが展開している和食レストラン。魚介類やカツ類が旨い。何よりもおひつご飯がいい。入るのは約3年ぶり。入り口に「牡蠣の誘惑」という季節メニューのポスターが貼ってあった。「かき」と書かずに、わざわざ漢字で「牡蠣」と書いている。それが旨そうだったんで、「牡蠣三昧御膳(かきざんまいごぜん)」(税別1180円)を頼むことにした。村民2号は「ひれかつとじ定食」(同1080円)を選んだ。
              四六時中③ 
               旨そ~
              四六時中④ 
               誘惑に乗ってみる

待ち時間は10分ほど。このスピーディーさはさすが全国展開のレストラン。旨そうなカキフライが3個、お膳には蒸し牡蠣が3種類、冷奴、明太子とからし菜漬け。それに味噌汁。だが、村長にとっては主役は炊き立ての会津産コシヒカリが2杯分ほど入ったおひつ。これがあるだけで世界が変わる。
              四六時中⑤ 
              牡蠣三昧御膳

ひと昔前に東京・四谷で寿司屋の大将が「コシヒカリで一番旨いのは会津産コシヒカリですよ。魚沼産より旨いと思うよ」と意外なうんちくを披露した。そのときは単に「へえー」と思っただけだったが、その後確かに会津産コシヒカリの旨さは絶妙だと思う機会に何度も出会った。
              四六時中⑥ 
              たまらん世界
              四六時中10 
              会津産コシヒカリ

「四六時中」が会津産コシヒカリに目を付けたのは3.11よりずっと前だから、被災県支援という意味合いは薄い。茶わんにおひつからご飯をよそるときにいい香りが鼻腔をくすぐった。透き通ったテカり。これこれ。村民2号があきれるように村長の顔を見ている。

カキフライはコロモがサクッとしていて、小ぶりだが、多分広島産だろうカキの肉汁がそれなりに旨い。まずはソースでガブリ。次に醤油、最後にタルタルソースの順で楽しむ。タルタルソースと醤油の組み合わせが村長の好み。これで会津産コシヒカリを食べると、幸福感がじゅわりと広がる。
              四六時中11  
              旬のカキフライ
              四六時中12 
              こちらは蒸し牡蠣

蒸し牡蠣はポン酢仕立てで、一つには大根おろしがかかっている。それなりの旨さ。もう一種類は玉子焼きと甘だれがかかっていた。こちらもそれなりの旨さで特別のものは感じない。

一番感心したのは明太子とからし菜漬け。これをおひつご飯にのせて食べたら、絶妙な旨さだった。コシヒカリ以外は3年前ほどの感動はなかった。明太子とからし菜漬けの組み合わせに救われた思い。
              四六時中13 
              これがなかったら?

「ひれかつとじ定食も思ったほどではなかったわ。それなりの旨さね。昔の方が旨かったんじゃないかしら」
「この3年間で口が肥えたのかもな。でもまあ、会津産コシヒカリの旨さは変わらないのでホッとしたよ」

レジで支払いの時に、念のため、「牡蠣は広島産でしょ?」と聞いてみた。「いえ、韓国産です」とスタッフ。ありゃりゃ。イオングループ、恐るべし。


本日の大金言。

思い込みは誰にでもある。牡蠣は広島産か宮城産だけではない。まだまだ修行が足りない。こいつは春から出直しだわい。



                          四六時中テイク1

農村食堂の名物カレーそば

 最近、利根川にハマっている。1都6県にまたがる広大な流域は、徳川家康によって、関宿(現千葉県野田市)で大きく流れを変えられた。江戸湾に流れ込んでいた巨大な暴れ川を現在の銚子沖へと放出させた。信長や秀吉もそうだが、家康のスケールの大きさに改めて感嘆させられる。

3連休の半ば、書類作成の必要が生じてウマズイめんくい村に来ていたキオを誘って、利根川サイクリングに出かけた。村民2号も「村長の道案内じゃ危なっかしくて、私も行ってあげるわよ」と付いてきた。本当はダイエットが狙いらしい。花のお江戸で修業中のキオも「正月食べ過ぎて体重が2キロ増えた」とボヤいている。村長は酒太り気味。
              利根川④ 
              広大な利根川

ポンコツ車をプカプカ吹かして、埼玉・加須市外野の利根川沿いにある未来館横のサイクリングセンターへ。ここは穴場で、レンタル料が無料というのがいい。そこを起点に埼玉大橋を渡り、北川辺、古河方面へと約3時間ほどのサイクリング。広大な利根川を眺めながら、田園地帯を走るのが気持ちいい。いい豆腐屋を見つけて、絹ごし豆腐を買ったり。意外な楽しみもある。
              利根川⑤ 
              埼玉大橋を渡る
              利根川① 
              田園ポエム

その帰路の途中で遅いランチとなった。村民2号の主張で「道の駅 童謡のふる里おおとね」にある「お食事処 わらべ」に草鞋を脱ぐことになった。午後2時を回っているのに、まだ待ち客が6~7組ほど。25分ほどの待ち時間で店内へ。ここは手打ちそばと黒米うどんが有名。広い厨房にはおばさんが4~5人ほど、それに運び役のおばさんも2~3人。おばさんだらけの農村食堂でもある。
              わらべ① 
              穴場の店
              わらべ3 
              手打ちそば

村民2号は「天ざるそば」(税込み850円)、キオは「けんちん黒米うどん」(同850円)を頼んだ。村長は迷った末、「カレーそば」(同850円)を頼むことにした。入り口の打ち場でそばを打っているのは男性だが、その打ち方がまさに職人芸で、「カレーうどん」(750円)に傾いていたのを変えることにしたのだった。
              わらべ② 
              メニューの一部

ここでまた待ち時間15分ほど。やってきた「カレーそば」は大きい陶器の深どんぶりで、茶褐色のカレーつゆがなみなみと湯気を立てていた。そのボリューム感。なぜかあき竹城を連想してしまった。上にワカメが乗っている。これが侮れない旨さだった。
              わらべ④ 
              カレーそば、登場
              わらべ⑥ 
              ボリューム

ドロリとしたカレーつゆと角切り人参、煮込まれて形をほとんど失った玉ネギ、それに鶏肉がチラホラ。レンゲですくって口中へ。出汁の効いたルーは濃厚な中に酸味が感じられる。ドシリとした素朴な旨味。その後にスパイシーな波が襲ってきた。
              わらべ⑧ 
              おばさん手づくりの味
              わらべ⑦ 
              上質のそばだが・・・

そばはきれいな細打ちで、それだけ食べれば旨いのだろうが、カレーの存在感が強すぎて、そばの風味が隠れてしまっている。おばさんスタッフに聞くと、「そばは二八です。そば粉は秋田産。カレーは2時間も煮込んでいるんですよ。そばの風味がわからない? うどんの方がよかったかもね」とガハハ笑い。一滴残さずカレーつゆを飲み干すと、腹周りが2センチほど膨らんだ感じ。

「ここはカレーライスも旨いわよ。北川辺産コシヒカリが絶品。ただボリュームがあり過ぎるのが難点かな」
と天ざるそばを食べ終えた村民2号。天ざるそばについては「そばはボリュームもあって旨いけど、つゆがイマイチね。天ぷらはマル」とやや辛口のコメント。
               
黒米うどん初体験のキオは「黒さに驚いたけど、味はまあまあってとこかな。けんちんの野菜がいいわ。ボリュームといい東京では食べれない味ね」とこちらも中辛のコメント。全員きれいに平らげた。利根川ダイエットはいずこへ?

本日の大金言。

本年のテーマの一つが利根川。歴史や文化はもちろん、食文化も意外な発見があるかもしれない。坂東太郎の魅力を逐次追って行きたい。




                          わらべ10 






初体験、京風「牛カツ御膳」の味

 エンターテインメント新聞社時代にお世話になったイラストレーターT氏のお見舞いで御茶ノ水順天堂病院へ。あれこれ話し込んでしまっために、すっかり日が暮れてしまった。小川町方面へブラ歩き。その一角に見慣れぬ店が浮かび上がっていた。「牛カツ専門店 京都牛勝」の大きな看板と大提灯が目に入った。白いノレン。和風牛カツが売りのようだ。入り口左手には見事な黒毛和牛のブロック肉が陳列してある。
              牛勝3  
              ついに東京進出

調べてみると、京都に本店があり、行列のできる牛カツ専門店だとわかった。京都に3店舗、名古屋に1店舗。「行列のできる」うんぬんはいかにもテレビ的だが、それが東京にも進出。この小川町店は東京進出第1号店らしい。驚いたことに、オープンしたのが去年の11月17日で、まだ2か月も経っていないのに、東京だけで6店舗もオープンしている(12月末現在)。まずその資本力と迅速さに驚く。
              牛勝2 
      よだれが・・・牛カツのブロック肉

京都にお住いのグルメ仙人先生なら「そんなもん、まともに考えたらあきまへんで。暖簾は守るものであって、進出するものではありません。錦市場も他所からヘンな資本が入ってきて、おかしくなっている。アホなオノボリはんが行くにはちょうどいいかもしれまへんがな」と言うに決まっている。どこからか「ひっひっひ」という笑い声が聞こえてきた気がした。

だが、好奇心が旺盛すぎる村長は入ることにした。テーブル席とカウンター席があり、白衣の料理人と女性スタッフの多さ、それが京都の割烹料理屋風で、いかにもの世界。外国人にウケるだろうな、と一瞬思った。広い厨房からは牛カツを揚げる軽やかな音。急成長中の「いきなり!ステーキ」などと同じ匂いも感じた。
              牛勝1  
              メニューテイク1
              牛勝① 
              メニューテイク2

メニューの中から「牛ロースカツ京玉膳」(1380円=税別)を選んだ。瓶ビールもついでに。12~3分ほどで、お膳がやってきた。牛ロースカツは並(130グラム)。それほどのボリューム感はないが、包丁が12ほど入っていた。いい揚げ色。ワサビが小さく盛られていた。京玉とは半熟卵の天ぷらで、それも控えている。つけ汁は醤油ダレ、山椒塩、カレールーの3種類。それに赤だしの味噌汁と麦入りご飯。構成は悪くない。
              牛勝③ 
              牛カツ、登場
              牛勝② 
              上空より

牛カツは揚げ時間が60秒とかで、その赤身の鮮やかな色に見入ってしまった。ほとんど生肉のよう。「ミディアムレアです。牛肉の旨さがよくわかります」と女性スタッフ。コロモがカリッとしていて、まずはワサビを付けて醤油ダレで。牛肉は思ったよりも柔らかくて、甘みさえある。山椒塩が気に入った。牛カツの味が一番わかると思う。
              牛勝④ 
              たまらん色味
              牛勝⑥ 
              醤油とワサビ
              牛勝⑧ 
              山椒塩
              牛勝⑨ 
              和風カレールー

カレーは和風の出汁が効いたルーで、これも意外に旨い。京天玉は半熟度が緩すぎて、食べ方が難しい。ご飯に乗せて食べた方がいいかもしれない。赤だしはまずまずの味。麦入りご飯は見かけはイマイチだが、素朴な旨さ。キャベツの鮮度はイマイチ。全体として、見かけどおりの「いかにもの味わい」だと思う。
              牛勝10 
              卵の天ぷら

 本格的な牛カツは4000円前後はすると思う。その意味ではこの価格帯で味わえることは悪くない。出がけに「牛肉は国産なんでしょ?」と聞いてみたら、「いえ、黒毛和牛もありますが、お客さんがお食べになったものはアメリカ産です」とか。グルメ仙人の笑い声が天井から落ちてきた。

本日の大金言。

京都というブランドは素晴らしい。だが、京都にもいろいろある。わかっていて楽しむのとわからないで楽しむのとは少々意味が違ってくる。



                         牛勝12 






北千住いずこへ?午後のクロックムッシュ

 「村長、最近ヘンよ。言うことがズレテきたわ。正月ボケもひどすぎるし・・・北千住にでも行って来たら?」
「やっぱりそうか。昨日は飲み過ぎて、天国のちゃいが呼んでいるなんて、叫んでたらしいね。ここらでもう一度リセットしなくっちゃ」
てなわけで、村長の第二の故郷でもある東京・北千住へちょっくら行くことにした。

午後2時過ぎ。ジャズバー「ゆうらいく」に行くには時間が早すぎる。西口駅前周辺をブラ歩き。すると、あの「千住 玉寿司」が閉店していた。情報通の友人によると、「昨年10月頃、大将が倒れて、やむなく店を畳んだんだ。70年近い歴史のあるいい寿司屋がなくなるのはさびしいよ」と寂しそうに語った。

何ということだ。村長は夜は高いので、ランチタイムに何度か足を運んだ。マグロは天然の本マグロ、しかも大間のマグロしか使わないと話していた大将の顔を思い出す。村長の愛した「石黒の飴(あめ)」も去年夏に店を閉めた。絶品だった「最中屋なか井」もすでに暖簾を下ろしている。
              石黒の飴② 
           いい店がどんどん消える

いい店がなくなるのは、図書館が一軒消えるのと同じくらいの出来事だと思う。悪貨は良貨を駆逐する? 村長はマルイとルミネの高層ビルを呆然と眺めた。北千住はどこに行こうとしているのかいな? 
              デリマンシェル 
              ルミネ北千住一階

すると、そのルミネの一階部分に小ジャレたカフェが見えた。これまで何度も来ているのに気がつかなかった。若い女性がたむろしていた。時間も中途半端なので、入ることにした。理屈は後からついてくる。「ル・ディマンシュ」という今どきの店で、ベーカリーとカフェが合体していた。まだランチメニューをやっていて、「ランチA クロックムッシュ」(ミニサラダ、コーヒー付き550円)に心が動いた。手ごろな値段・・・。
              デリマンシェル① 
              クロックムッシュ

調べてみたら、店はあのオシャレな神戸に本店があり、北千住ルミネ店は二店目。何故に北千住なのかは不明だが、昔から北千住を知っている村長としては不思議な気分。10分も待たずに「クロックムッシュ」がやってきた。黒ゴマ入りの柔らかなフランスパン生地の上にゴーダチーズが厚めに乗っかっていた。フライパンで焼かれたこんがりとした焼き色が悪くない。ミニサラダとコーヒーはどこにでもある今どきのもの。
              デリマンシェル④ 
              軽めのランチ
              デリマンシェル⑥ 
              ガブリと行け

フォークはプラスティック製。パンとパンの間に薄切りのハムが一枚、それにさらにゴーダチーズも塗ってある。小麦粉とバターで作ったペシャメルソースで味付けがされている。ガブリと行くと、ゴーダチーズの濃い風味が来た。表面のパリパリ感。パンの風味も悪くない。ボリュームはあまりない。クロックムッシュとは「カリッとした紳士」という意味だそうで、まさに名前通りの味。フランスでは軽食としてよく食べられるそう。
              デリマンシェル⑦ 
              ハムが一枚
              デリマンシェル⑧ 
          ゴーダチーズもあるでよ
              デリマンシェル⑨ 
              フランスの匂い
              デリマンシェル11  
           パン生地も旨い

まわりを見渡すとお客のほとんどは女性。旨い店には女性が集まるというが、果たしてそれは本当か? 今どきのマニュアル化された小ぎれいな店内を見渡しながら、「千住 玉寿司」や「石黒の飴」や「最中屋 なか井」の熟練の職人技を思う。北千住の未来はいずこへ? ジャズバー「ゆうらいく」の将来も気になる。ニッポンの未来も気になる。「つんくとモー娘。」の未来も気になる。気になる、気になる・・・おっと危ない・・・。ここらで越中ふんどしを締め直さなきゃ。何だ、この締めは?

本日の大金言。

新旧交代がすべていいとは限らない。新陳代謝は必要だが、骨がなくなったら、存在自体もなくなってしまうのでは? 温故知新ということわざもある。このバランスが難しい。


                           デリマンシェル12 

江戸切り羊羹「紅練」の事始め

本日は世間的には 仕事始め。村長の仕事始めは江戸切り羊羹「紅練(べにねり)」である。寒天と砂糖を使った練り羊羹(ようかん)と言えば、虎屋が有名だが、寛政年間以降の江戸では鈴木越後、金沢丹後、船橋屋織江などが隆盛を極めていたようだ。特に鈴木越後の羊羹は高級羊羹の代名詞で、武家社会などでは上司に鈴木越後の羊羹を出すことがステイタスになっていて、値段が安めの金沢丹後を出したら、出世に響いたという嘘みたいな逸話もある。
               2016我が家玄関 
               サル年の事始め

寒天と砂糖が一般化した江戸時代中期以降の羊羹の面影を残すのが佐賀・小城羊羹。本日取り上げるのはその中でも老舗の村岡総本舗の昔ながらの切り羊羹である。佐賀・小城市は人口4万4千人ほどの小さな街だが、羊羹屋が二十数軒もある。知る人ぞ知る羊羹の町。

東京・日本橋高島屋B1「味百選・銘菓百選」で、村岡総本舗の昔ながらの切り羊羹を手に入れることができる。ここは村長にとっては夢のエリアでもある。種類が小倉、本煉、紅練など数種類あり、一昨年の10月に「小倉」をゲット、このブログでもご紹介したが、その時「紅練」が売り切れていて、心残りとなっていた。
               日本橋高島屋地下 
               夢の世界(東京・日本橋)
               小城羊羹② 
               村岡総本舗の羊羹!

その「紅練」(1本税込み801円)をほぼ二年越しでゲットした(単に忘れていただけだが)。江戸時代の和菓子の記録にも「紅練」は残っていて、おそらく今回手に入れた「紅練」羊羹も江戸の昔の姿そのままではないか、と思うのだ。そう考えた方が夢もある。紅色は縁起のいい色で、魔除けの意味もある。
               小城羊羹② 
               江戸時代へ!
               小城羊羹③ 
               経木と竹の皮
               小城羊羹⑤ 
               た、たまらんのう

「すごい色ねえ!」
村民2号が目を見張った。ふふふふと村長。エンタメ新聞社の宮仕え時代に、近くの喫茶店のママから貰って食べたのがこの「紅練」で、村長も初めて見たときはその姿に驚いたものだ。

包装が三重になっていて、外側の包みを解くと、木のいい香りとともに経木(きょうぎ)が現れる。さらに解くと竹の皮が現れる。その先に「紅練」がある。糖化して表面が白くひび割れている。製法が江戸時代のやり方を踏襲している。寒天と砂糖を加えたあんを舟型の木枠に流して、固まったら包丁で長方形(一棹ずつ)に切り分けていく。時間とともに表面が白く糖化していく。
               小城羊羹⑥ 
               焦ってはいけない
               小城羊羹1 
               糖化した表面
               小城羊羹⑦ 
               夢の中へ

「紅練」は備中産の白小豆と北海道産大手亡豆を使い、天然色素で紅色に染めている。そうして出来上がった「紅練」を正月に賞味する。幸せな事始め。口に入れて歯を立てた瞬間、表面の砂糖がガサリガサリと音を立てる。この感触がたまらない。中の羊羹はしっとりしていて、むしろ淡泊できれいな味。甘さもほどよい。白小豆の風味が口中に広がる。
               小城羊羹⑨ 
               あ~ん
               小城羊羹2 
               天国か?

「日光『ひしや』の羊羹もこれと同じ江戸時代の製法だけど、練り羊羹しかない。かような紅練は日本でもここのものしかないのでは?」
「ちょっと感動ものね。正月らしいわ。でも、村岡総本舗は明治32年創業でしょ? 江戸じゃないわ」

「細かいことはこの際目をつぶろう(笑い)。江戸時代の作り方を踏襲しているのは確かだ。小城市のある長崎街道は出島の砂糖を京都や大阪、江戸に運ぶ砂糖の道だったらしいよ。だから、羊羹が発達した。次は小城市に行かなくちゃ」
「そこまでは付き合えないわよ。ことしもどうぞお一人で妄想旅行を続けてくださいな」

「サル年だけに、去る者は追わずってか?」
「猿の後ろに猿回しがちゃんといるのよ」
「・・・・・」

本日の大金言。

和菓子の原点は饅頭、餅、それに羊羹だと思う。だが、謎の多い世界でもある。たかが和菓子、されど和菓子。今年も旅は続く。



                        小城羊羹11

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「石巻牛タンつくね串」の初詣

酔っぱらっているうちに年が明けてしまった。気がついたら今日は3日。新年おめでとうございます。2016年、平成28年、戦後二度目の丙申(ひのえさる)。波乱の予感がプンプン匂う。さて、どんな年になりますか、不安半分楽しみ半分。

ウマズイめんくい村の初詣は埼玉・久喜市の鷲宮神社。前日から「寝込んでなんかいられないわよ、初詣に行くぞー」と張り切っていたゴッドマザーは寒さのため、自宅で留守番。お江戸で修業中のキオと村民2号、それに村長とで朝陽の中を出店で賑わう大鳥居前に到着。ここは関東最古の神社としても知られ、ここ数年はアニメ「らき☆すた」の舞台として、オタク族のメッカにもなっている。
              鷲宮神社11 
              初詣はここ(鷲宮神社)
              鷲宮神社5 
              お呼びでない?
              鷲宮神社4  
              何を願う?
              鷲宮神社⑨ 
              ボクの出番や

行列に並んでいる間、出店の一角に「東北復興市 宮城県石巻市」の看板が見えた。去年はなかったように思う。「石巻牛タンつくね串」(1本200円)の文字と「ずんだしるこ」(1杯250円)の文字が見えた。今年の食べ始めはこれに決まった。石巻は3.11後二度訪れていて、いつも心のどこかで気にかかっている場所。
              東北復興市⑤  
              東北の味よ

しっかりと鷲宮神社の神さまにお参りをしてから、お札と破魔矢をいただく。キオと村民2号がおみくじ。二人とも中吉だった。「凶じゃなくてよかったわ。いい年になりそう」と小躍り。ついでに村長も引いたら大吉だった。意味もなく寺内大吉さんを思い出す。それから「石巻牛タンつくね串」と「ずんだしるこ」の下へ。

「牛タンつくね串」は3.11後に石巻復興プロジェクト「希望の環」プロジェクトがプロデュースして人気を呼んだB級グルメ。まさか鷲宮神社で、しかも初春に出会えるとは、これは神さまの何かの意思かもしれない。味噌ダレを選んで、ガブリと食らいつく。鳥つくねと牛タンの粗挽きと味噌ダレが絶妙に旨い。B級グルメイベントで人気を呼んだだけのことはある。
              東北復興市④ 
              B級グルメの星?
              牛タンつくね串 
               かじりつけ

キオも「初詣の味としては合格」。村民2号は「3.11からもうすぐ5年になるのね」と遠くを見る目線。村長もじっと手を見る。東北の復興は思ったほど進んでいない。特に原発事故を抱えた福島は苦しい。「福島の復興なくして日本の再生はない」と言ったあの言葉は巧言令色だけだったのか? 実体隠しが巧妙に進む中、ジャーナリズムの矜持はいずこへ? 
              東北復興市⑦ 
              珍しいずんだしるこ
              ずんだもち① 
              深い味わい

頭を切り替え、「ずんだしるこ」へ。村長も初めての賞味。山形産だだっちゃ豆を使ったあんで、中の餅は秋田のだまこ餅。きりたんぽと同じうるち米を丸めたもの。それが2個、熱々のずんだあんの中に沈んでいた。ほどよい甘さで、ずんだの風味と旨さが胃袋に滲みる。東北は近くて遠い、遠くて近い。3.11後の明日の日本でもある。それを肝に銘じながらしっかりと、味わう。

その後、「スターウォーズ フォースの覚醒」を見に菖蒲モラージュへ。キオお勧めの一作。シリーズの中でもかなりの出来栄え。現実とはほど遠いSF映画のはずが、今の世界につながっている。ただのエンターテインメント映画ではない。「でも、ずるいエンディングね。次が見たくなっちゃったわ。商売が上手すぎ」チクリと村民2号。ざっと、こんな感じで2016年がスタートしたのだった。

本日の大金言。

東北から始める新年。忘れようとしても忘れることはできない。一日のうち30秒でもいい。東北を、福島のことを想いたい。今ここにいる意味もまた。



                         鷲宮神社10 


プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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