奇跡の一本松と磯ラーメン

 今回の旅の目的の一つが「奇跡の一本松」を直に見ること。日本百景の一つだった名勝「高田松原」の7万本もの松の木が、あの日、牙をむく大津波によって一瞬にしてなぎ倒され、奇跡的に一本だけが残った。メディアが「希望の松」として大々的に伝え、痛々しいその姿に村長も胸を打たれた。
         奇跡の一本松1  
         何語る?奇跡の一本松

その「奇跡の一本松」が目の前に見える。辺り一帯は大規模造成工事中で、最大12メートルのかさ上げのために巨大なベルトコンベアーが毎日ダンプ4000台分の土砂を近くの山から取り崩し運んでくる。その音が青空に吸い込まれていく。何という構図だろう。
           奇跡の一本松③ 
         5年後の世界
         奇跡の一本松①   
         大規模造成工事中

「奇跡の一本松」は2012年5月、専門家によって「枯れ死」していることが明らかになった。その後、市は約1億5000万円かけて、合成樹脂などで形を維持し、モニュメントとして残すことになった。その費用は募金によって賄い、2013年6月末に完成している。

「震災から時が経ち、だんだん見に来る人が減ってきている。苦しいですよ。陸前高田の被害は風化させたくない」(近くのカフェの店主)。

数人の観光客らしき人たちが写真を撮っている(村長もその一人)。突然、見ているつもりが奇跡の一本松が無言でこうした光景を眺めている気がした。沈黙の饒舌という言葉が浮かんだ。さらにそれが地球の近未来のように感じてしまった。眺めているのは宇宙からの観光客で、「かつて地球ではこんなことがあったんだよ」と子どもに言い聞かせている・・・。

「村長も一本松のようになりたいんでしょ?」
「まだ枯れ死してないぞ。でも、あんなに立派で、あんなに孤独で、痛ましいなあ」
「枯れ死しないように、早く昼ごはん食べに行きましょ」

ポンコツ車を走らせて、近くの「こんの直売センター」へと向かう。ここには知る人ぞ知る名物「磯ラーメン」がある。旧店舗は津波で流され、約2年後に高台の米崎町県道38号線沿いに移転して再開にこぎつけた。
         こんの直売センター 
         再開まで2年

店内は地元客が7~8人ほど。それなりの活気がある。村長はメニューの中から「磯ラーメン」(税込み600円)を選んだ。村民2号は「ホタテ丼」にしようかどうか迷った末、結局同じものを選んだ。
         こんの直売センター② 
         メニューの一部

12~3分ほどで、磯ラーメンがやって来た。大きめのどんぶり。まん中にドデカいホタテがどっかと乗り、周囲を新鮮なワカメ、海苔、ふのり、マツモ、刻みネギが覆っていた。ホタテはこの店の自家養殖物。ポエム。
         こんの直売センター③ 
         ポエム
         こんの直売センター⑦ 
         透き通ったスープ
         こんの直売センター⑧ 
         自家養殖ホタテ
         こんの直売センター⑨ 
         裏から失礼します

スープは驚くほど透明で、賞味するとかなり薄い塩味。海藻とホタテの出汁がうっすらと滲んでくる。インパクトの強いラーメンに慣れた舌には少し物足りないかもしれない。
         こんの直売センター⑥ 
         細縮れ麺

麺は黄色みの強い縮れ細麺で、「麺は固めでお願いします」と注文したせいか、ドンピシャ村長の好み。何よりも自家養殖のホタテが見事で、そのプリプリ感が首都圏で食べるものとひと味違う。新鮮な海の甘み。内臓も美味。スープを一滴残さず飲み干すと、本来の陸前高田のきれいな海を飲み込んでしまったような感覚に陥ってしまった。胃袋の中の海。遠くに一本松・・・合掌。

本日の大金言。

奇跡の一本松は人類の未来かもしれない。今や73億にも膨れ上がった人間の生存競争がこ先どうなるか? 原発事故、テロと戦争、環境問題、ウイルス、そして自然の猛威・・・それを少しの間考えるだけでも奇跡の一本松を見る価値はあると思う。



                  こんの直売センター10 



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消えた「もち膳」、拾いの神おばさん

 3.11から5年が経ち、熊本地震のニュースが連日流れる中、のうのう暮らしの村長はフンドシを締め直すことにした。東北へ鎮魂の旅をかねてポンコツ車を走らせることにしたのである。食べることも鎮魂、と無理やり自分に言い聞かせて。

会津若松で叔母の四十九日法要を終えたその足で東北道をひた走り、岩手・一関に降り立った。すでに夜6時半を回っている。安ホテルにチェックインし、顔を洗うのもそこそこに、「三彩館ふじせい」に向かった。ここは一関の郷土料理「もち御膳」の名店のはず・・・だった。だが、営業しているはずが「午後は臨時休業」の悲しい知らせ。

「せっかく餅の町に来て、もち料理が食えないなんて、一関の神さまは何を考えているの?」
村民2号が怒りで髪を逆立て、村長もフンドシがハズレそうになるほどのショックを受けている(どういうショックか意味不明)。

街中を歩き回り、もち料理の店を探したが、見当たらない。歩いている人もほとんどいない。東北の夜は寂しい。時計を見ると、午後7時半を過ぎている。あきらめてホルモンの店にでも入ろうか、と考え直していると、一人の地元のおばさんが目の前を通り過ぎようとしていた。このおばさんが拾いの神だった。

ダメもとと、ワラにもすがる思いで、「もち料理の店をご存じありませんか?」と聞くと、しばらく考えてから「ひょっとしてまだやってるかもしれね」と言いながら、ウマズイめんくい村の怪しい一行を「自宅が近いから」と案内してくれた。さらに20分ほど歩く。暗闇の先に灯り・・・それが「蔵元レストラン せきのいち」だった。
         蔵元レストランいちのせき② 
    拾いの神はいる?(蔵元レストランせきのいち)

すでに営業を終えていて、地元の団体客だけが座敷で帰り支度をしていた。拾いの神おばさんが店のスタッフに「この人たち、遠くから来たの。もち料理だけでも食わせてあげらっせ」と交渉、凛とした女将さんらしき人が出てきて、「もち膳だけでしたら、どうぞ」と言ってくれた。何という展開か。村長も村民2号も目がウルウル。拾いの神おばさんは名前も教えずに去って行った。

「蔵元レストラン せきのいち」は大正7年(1918年)創業の酒蔵「世嬉(せき)の一」酒蔵が営むレストランで、敷地内には「いわて蔵ビール」のマイクロブルワリーまである。「一関もち膳」(税込み1300円)と、ついでに珍しいオリジナルの山椒ビール(700円)も頼んだ。
         蔵元レストランいちのせき① 
         一関もち膳さまァ~  
         蔵元レストランせきのいち④ 
      日本でここだけ山椒ビール

まずは山椒ビールがやってきた。「和食に合うビールということで、国際コンクールで優勝したんですよ」と女性スタッフ。ほのかに山椒の香りと味がしていて、それが意外に美味い。続いて「一関もち膳」の登場。漆塗りの見事な器に小分けにされたこしあん、ずんだ、ごま、沼えび4種類の餅がにっこりとほほ笑んでいた。
         蔵元レストランせきのいち⑤ 
         これも神さまだ?
         蔵元レストランせきのいち⑥ 
         見事な世界

それに温かいお雑煮、小鉢が3種類。麹(こうじ)の甘酒まで付いていた。餅は弾力があり、こしあんもずんだも甘さが自然で控えめ。ごまは塩気が強く、黒ごまの風味が口中で広がる。この地方の郷土料理に欠かせない沼えびは油で揚げたオキアミのようで、その食感が意外に餅とよく合う。
         蔵元レストランせきのいち11  
         こしあん餅
         蔵元レストランせきのいち14 
         ずんだ餅
         蔵元レストランせきのいち15 
         ごま餅
         蔵元レストランせきのいち17 
         沼えび餅
         蔵元レストランせきのいち10 
         お雑煮の美味さ

「雑煮がとっても美味いわ。昆布出汁のつゆと鶏肉、それに水菜が柔らかいお餅を引き立てている。洗練された味で、一関の食文化の奥深さがよくわかる。それと甘酒が気に入ったわ。奥州藤原氏の夢の跡が感じられる。拾いの神おばさんのおかげでいい思い出になったわ」
「何という夜だべ。人生、悲観ばかりしてられないなあ。東北の旅の幕開けとしては最高の滑り出しだよ。これから陸前高田の奇跡の一本松に会いに行かなきゃならないし、石巻にも4年ぶりに行かなければ・・・」

「食べてばかりじゃ神さまに愛想を尽かされるもんね」
「祈りながら食べるんだ。食べながら祈るんだよ」
「あらまあ、格好つけちゃって・・・ずいぶん器用なお方。少しは財布の中身も考えてね」
「・・・・・」

本日の大金言。

食べれることは生きてる証し。生きてる証しは? そこが重要な問題だが、答えは早々には見つからない。食べながら探すしかない。



                 蔵元レストランせきのいち18

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下町でまさかの「あまおう草餅」

 猫も歩けばカツ節に当たる。村長も歩けば、まさかの草餅に当たる。そんな軽口をたたきたくなる小さな出来事が起きた。

東京・池袋に用事があり、埼京線に乗り換えて外の風景を見ているうちに、ふと十条の商店街をブラ歩きしたくなった。池袋の用事には少々時間があったこともある。東十条駅で跳び下りた。十条は日本でも有数の商店街のメッカで、いくつかの商店街が複雑につながっている。最近、メディアに取り上げられることも多い。

中でも十条銀座商店街は、北区最大のアーケード商店街で、京都の三条商店街にも通じる庶民的な昭和の世界が色濃く残っている。中島らもが通った「斎藤酒場」を横目に、商店街の中に足を踏み入れると、ハートがときめくのがわかった。歩いているだけで心がウキウキしてくる。
         だるまや2 
     ええのう十条銀座商店

しばらく行くと、右手に餅菓子屋が見えた。「だるまや」の屋号。ぼた餅や草餅、おいなり、だんご、お赤飯など持ち帰りの商品が美味そうに並べられていた。かき氷ののぼり旗が風にゆらりと揺れている。ここはかき氷の名店でもある。

だが、村長の目はその中の一品に吸い寄せられた。見事な高級いちご「あまおう」が美味そうな草餅の間から「いらっしゃいな」とささやいた。あまりに魅力的なもろ肌脱ぎ。どきり。衝撃的なコケティッシュスイーツ・・・。
         だるまや 
         当たりかハズレか?
         だるまや② 
         おおおの草餅

いちご大福はこれまで何度も食べているが、いちご草餅なんて初めて。「季節限定 あまおう草餅 250円」の手書き文字が見えた。通常は280円。つぶあんとこしあんの2種類。一個250円でも安くはない。いちごと草餅なんてミスマッチではないか? 

奥が甘味喫茶になっていたので、女性スタッフ(女将さん?)に「中で食べれますか?」と聞いてみた。すると、「食べれますが、少し高くなります」とのお返事。よくよく聞くと、「何かお飲み物でも注文していただければ」ということだった。迷ったが、耳元で「いま食べないと絶対後悔するよ」と天使(悪魔?)がささやいた。
         だるまや④ 
         後悔先に立たず

「ホット珈琲 480円」(これが一番安かった)を頼み、「あまおう草餅」のつぶあんを賞味することにした。合計730円ナリ。だが、これが驚きの味わいだった。ラップを取ると、よもぎ餅の香りとあまおうの香りが鼻腔をくすぐった。自然で見事な色味と貫録。見ただけですご腕の餅菓子職人の気配を感じた。
         だるまや⑤ 
         見事な世界
         だるまや⑥ 
         横から失礼

おもむろにひと口かじると、あまおうの甘い果汁と草餅の柔らかくもっちりした食感、それに上質のつぶしあんが三位一体となって口中に広がった。草餅の香りがあまおうとあんこの風味を損なうのではないか、という危惧は消え去っていた。
         だるまや⑦ 
         たまらん
         だるまや⑧ 
         一つの極致か?
         だるまや⑨ 
         コケティッシュ

何よりもつぶしあんの美味さが予想を超えていた。ふっくらと炊かれていて、甘さがほどよい。砂糖は極上の和三盆を使っているのではないか。ふくよかな風味が鼻腔から脳天へ抜けていく。脳内にそよ風・・・。

三代目だという若主人にあれこれ聞いてみる。かなりのこだわりぶりが見て取れる。

「ボクはオーガニックにこだわってるんですよ。例えば小豆は産地よりも生産者が問題なんです。いい生産者を見つけたら、どこまでも行きます。いい砂糖があると知ったら、宮古島へも行きます。いちごでもコーヒーでも日本中どこにでも行きます。ボクは自分を旅人だと思ってるんです。ヘンな奴と思われるかもしれませんが、何事も成し遂げるのはヘンな奴だと思います」

確かにヘンなお方、ではある。だが、730円が高いという思いはすっかり消えていた。へんなへんはへんではない。

本日の大金言。

古さと新しさ。コロンブスの卵は一朝一夕には生まれない。ミスマッチから案外、新しい定番が生まれるかもしれない。


               だるまや10 







埼玉の隠れ家「喜多方ラーメン」

 麺食いシンジケートの友人から久しぶりに連絡があった。メールではなく電話というのは珍しい。

熊本地震の不安をひとしきり口にした後に、「ところで」と口調を変えて「埼玉の上尾に本格的な喜多方ラーメンがあること知ってるかな。知ってたら尊敬するよ」とシニカルにのたまった。「知らない」と答えると、うれしそうに「住宅街の自宅をそのまま店にした、まあ隠れ駕みたいなところだよ。ポンコツ車を走らせる価値はあると思うよ」。テレビは熊本地震関連の話題をこれでもかと伝えている。被災者の家族の心情を思うと、胸が痛む。

喜多方ラーメンは首都圏にもいくつかある。「坂内食堂」系のチェーン店「坂内」や「小法師」などは村長もたまに行く。だが、埼玉、それも上尾の住宅街とは珍しい。芸能人までネタにしたテレビの熊本地震関連の報道を見ながら、「何だか日本列島もメディアも断層がズレて来ているなあ」とブツブツ。本当のことが隠れている気がする。村長はテレビを消して、ポンコツ車を走らせることにした。喜多方ラーメン好きの村民2号が跳び乗った。
         サトウ 
        まさかの住宅街

上尾に向かって国道17号線をひた走り、上町交差点を左折して住宅街に入る。まさかと思う場所に「ラーメンとお食事の店 サトウ」の看板が見えた。「喜多方ラーメン」の赤い幟(のぼり)がなかったら、フツーの古い住宅にしか見えない。時刻は午後1時半過ぎ。
         サトウ①  
         自宅兼店

入ると、眼鏡をかけた感じのいい男性が現れ、「こちらにどうぞ」と右手の和室に案内してくれた。大きめの和テーブルが二つ。隣は椅子の部屋で、ダイニングをそのまま使っているようだ。その奥が厨房になっているようで、若い男性は「店主は私の父で、喜多方でラーメン修業をして店を開いたんです」と説明してくれた。和室の壁には手書きでいろんなランキングが貼ってあった。昭和の匂いそのままの不思議な雰囲気。
         サトウ③ 
         昭和の匂い

客は近所のおばさんらしき人が一人。出前もしているようで、「今日は亭主と離れたいから、食べに来たのよ」と話している。メニューの中から「醤油ラーメン(500円)と「餃子」(300円)を頼んだ。メニューは豊富で、チャーハンやカツ丼、おツマミ類まである。
         サトウ④ 
         喜多方ラーメン

10分ほどで懐かしいいい匂いとともに、醤油ラーメンがやって来た。透明な醤油ベースのスープがまさに喜多方。自家製チャーシューが2種類、丸い煮豚の豚バラチャーシューとモモ肉の角型チャーシューで、角型チャーシューは厚さが優に1センチほどある。細かい刻みネギ、ワカメ、それにメンマという構成。刻みネギもワカメもどっさり。喜多方ラーメンでワカメどっさりというのは珍しい。
         サトウ⑤ 
         匂いの郷愁
         サトウ⑧ 
      自家製チャーシューの分厚さ

その下の麺は平打ち縮れ麺で、「喜多方の製麺所から直送してもらってます」とか。コショウをぱらりと振ってから、レンゲでスープをひと口。すっきりし過ぎるくらいのあっさりした味わいで、「出汁は豚ガラ、鶏ガラ、それに煮干しを使ってます」とか。喜多方ラーメンの本流の味わいだが、こってり好きにはやや物足りないかもしれない。
         サトウ⑦ 
         あっさりスープ
         サトウ1  
         喜多方直送の麺

麺が本場そのもので、歯ごたえといいもっちり感といい「喜多方で食べてるみたいね」(村民2号)というもの。感心したのは豚バラチャーシュー。きれいな脂身と赤肉のバランスがよく、じっくり煮込んだ肉の旨みが秀逸。角型チャーシューは今イチ。メンマはフツー。全体のボリュームもある。
         サトウ⑨ 
       このチャーシュー美味
         サトウ10 
         小太り手づくり餃子

「餃子も小ぶりだけどしっかり作られていて、おいしいわ。何よりもラーメンがこの内容で500円というのがすごい。これで儲かるのかしら。本場よりも安い。佐野ラーメンと違った意味で、今の脂ギトギトのこってり系らーめんに対抗できるわね。まさか住宅街にこんな店があったなんて」
「家族経営のようだけど、喜多方ラーメンの首都圏観光大使に任命したいくらいだよ。ウマズイめんくい村の特別観光大使になってもらおうかな」
「そんなの誰もありがたがらないわよ」
「・・・・・」

本日の大金言。

住宅街の店が増えている。お客の対象をご近所に集中して、ビジネス展開よりも食っていければいい、と分相応の楽しみ方を基本にしているのが特徴。そうした中に本物が潜んでいることもある。


                  サトウ11

話題の「コッペパン専門店」の味

 コッペパンが静かなブームになっている。テレビや雑誌などでも取り上げられる回数が増え、東京・亀有のコッペパン専門店「吉田パン」のあんマーガリン(190円)の美味さにしびれてしまった村長は、折に触れてあちこちのパン屋でコッペパンを探し求めることが多くなった。

銀座の渋谷画廊で開催中のグループ展「it's展」のオープニングパーティーに顔を出す前に、今話題のコッペパン専門店「イアコッペ」に立ち寄ることにした。本屋で立ち読みしたパンの特集を見て、そのあまりにも美味そうなお姿に食欲中枢がグイと刺激されたからである。店はJR上野駅不忍口からすぐ、さくらテラス3階にある。エスカレーターの先。
         イアコッペ 
    人気のコッペパン専門店(「イアコッペ」)

雑誌で見たよりもこじんまりとしていて、スマホ片手の若い女性客が入れ代わり立ち代わりしている。今どきの小じゃれた店構え。テイクアウト専門で、様々なコッペパンが美味そうに並んでいた。女性スタッフがかわゆい。ポエム。

「一番人気は何?」
「あんバターです。二番人気はステーキです」
「では、その二つちょーだい」
         イアコッペ① 
         ビジュアルはマル
         イアコッペ1 
       一番人気「あんバタ」
         イアコッペ2 
       二番人気「ステーキ」

「あんバタ」(235円+税)と「ステーキ」(320円+税)を買い込んだ。雑誌で見たよりも意外に小ぶりで、吉田パンのようなふくよかなスケール感はない。値段もやや高め。女性スタッフとの会話で、西日暮里にある人気のパン屋さん「イアナック」のアンテナショップだとわかった。コッペパンは4種類あり、内容によって組み合わせを変えているそう。それがスイーツから惣菜まで12~15種類ほど。

近くの喫茶店にこっそり持ち込んで賞味することにした。まずは「あんバタ」。サランラップに包まれていて、それを取ると、きれいなコッペパン(プレーン)の間から、多めのこしあんとホイップバターが「おいでやす」と顔をのぞかせた。
         イアコッペ② 
         イッツ・ショータイム!
         イアコッペ⑦ 
         意外に小ぶり

二つに割ってからガブリと行く。生イーストを使っているためか、パン自体に気泡が多く思ったよりもパサパサしていて、ふわふわ感やもっちり感が乏しい。小麦の風味はそれなりにある。期待が大きかった分、最初のアタックで「目の前がァ~」サン・トワ・マミーが頭の片隅で流れ始める。
         イアコッペ⑧  
         おおっ美味そう
         イアコッペ⑨ 
         あれっ?

こしあんは多分あんこ専門店のものだろう、やや甘めで風味があり上質の美味さ。ホイップバターは塩加減が効いていて、こしあんによく合っている。だが、肝心のコッペパンが期待外れで、村長的には吉田パンが横綱だとすると、せいぜい小結ではないか。

お次は「ステーキ」、実に旨そう。こちらもガブリと行く。ステーキというよりも厚めのローストビーフで、肉はオーストラリア産。それが大小二枚。レタスとトマトケチャップベースのオーロラソースがたっぷりとかかっていて、それなりの旨さ。こちらのコッペパンは全粒パンで、見た目はとてもいいが、こちらも気泡が多くもっちり感がない。それが特長なのかもしれないが。
         イアコッペ④ 
         たまらん!
         イアコッペ⑤ 
       はい、そこまでよ

見た目はいいが、どこかマニュアル的で、中身に深みと職人の気配がない気がする。今どきのスマホのようなコッペパン。心に空白を抱えて、銀座・渋谷画廊「it's展」に行くと、オープニングパーティーは賑やかで、友人が5~6人いた。闘病中の片岡みい子画伯の作品を前に記念撮影をする。その後、バーに流れて、三々五々となった。西の空から京グルメ先生のクシャミが聞こえ、一期一会の四文字が遠くでピカピカしているのだった。

本日の大金言。

グルメ雑誌や食べログなどのビジュアル系メディアはどこか何かが欠けていると思う。その情報を鵜呑みにすると、あれっとガッカリすることがある。むろんすべてではないが、情報の氾濫の光と影・・・いや影すらないかもしれない。のっぺらとした時代の喜怒哀楽とは?


            渋谷画廊

地震の後の「味噌ラーメン」

 熊本の直下型大地震には驚かされた。地震は今も続き、大分まで広がって、日本列島最大級の断層「中央構造線」との関連も指摘され始めている。中央構造線は四国、紀伊半島を抜けて、長野伊那地方、さらには埼玉・秩父、茨城・鹿島沖までつながっているとも言われる。改めて日本列島が「地震と噴火」の島であることを思い知らされる。小松左京の「日本沈没」の前半部分がついつい頭をかすめてしまった。
          
さて、悲観に傾きがちな頭を切り替えて埼玉でも人気の味噌ラーメンを取り上げることにしよう。濃厚な味噌ラーメンを食べながら、足元を見るのも案外大事かもしれない。トラックがびゅんびゅん走るさいたま大宮線沿い、久喜インター近くに「麺場もっけい」がある。
         もっけい② 
         もっけの幸い?

もっけい(木鶏)とは中国の故事で「木でできた、何事にも動じない最強の闘鶏」のこと。木でできているのだから動じないのは当たり前だが、荘子が言うと、ありがたい言葉になる。かの不滅の記録69連勝の大横綱双葉山が「イマダ モッケイ タリエズ」と言ったことで、有名になったという側面もある。
         もっけい① 
         人気の味噌ラーメン店

それを店名にするのだから、志しの高い店主だろう。午後3時半に立ち寄ったので、店には客は数人しかいない。カウンター席に腰を下ろして、3種類ある味噌ラーメンの中から、一番人気「もっけい味噌」(税込み800円)を頼んだ。店主かどうかは不明だが、男性スタッフが黙々と中華鍋を動かす。いい匂いが立ちのぼってくる。味噌ラーメンはこうでなくっちゃ。10分ほどで、大きな、ずっしりとした黒いどんぶりがやってきた。札幌系の味噌ラーメンが湯気を立てている。
         もっけい④ 
         3種類の味噌ラーメン
         もっけい⑤ 
         地震と自信

脂が浮いた味噌スープが広がり、中央に千切りネギがどっかと乗っていた。炒められたもやしと挽き肉、それにチャーシュー、メンマが浮いている。よく見ると、半熟の煮玉子が沈んでいた。その下に西山製麺直送の、黄色みの強い中太縮れ麺が見え隠れしている。コーンがないのは寂しいが、構成としては悪くない。
         もっけい⑥ 
         いい匂い

まずはスープをひとすくい。脂の焦げたいい匂い。豚骨を24時間以上煮込み、そこに鶏スープと魚介出汁を加えたオリジナルスープだそう。こってり感よりもまろやかさが際立っている。麹(こうじ)味噌が強すぎるのか、甘みが強い。ここは好みの別れるところで、村長はもう少し甘みを抑えた方が好み。味噌は麹味噌、白味噌、赤味噌をブレンドしているようだ。
         もっけい⑧ 
         まろやかなスープ
         もっけい10 
         チャーシュー
         もっけい11 
         西山製麺だべさ

札幌系の味噌ラーメンにチャーシューは珍しいが、フツーに旨い。メンマは3本ほどと少ない。煮玉子もフツーに旨い。西山製麺直送の麺は縮れとコシがさすがで、これは村長の好み。千切りネギのシャキシャキ感がいい。

全体としてはボリュームもあり、悪くはないが、甘すぎるスープが好みからズレていた。「濃厚味噌」(税込み800円)の方が、村長の好みかもしれない。選択ミスかも。イマダモッケイタリエズ。不気味な地震にただ動揺し、あっちにぶつかり、こっちに怒り、右往左往する村長の頭の活断層に、幻の木鶏が毅然と止まっていた。フライパンの上のポップコーンのような人生・・・?

本日の大金言。

東日本大震災からまだ5年しか経っていないのに福島の記憶が風化しているように感じる。そこに今回の不気味な地震。伊方原発も気になる。足元を見ない政治屋、利権屋、すり寄るメディア、浮かれる日本、その下の活断層・・・自戒も込めてイマダキョウクンタリエズ。


                 もっけい13 

深夜こっそり「深川めしのおこげ」

 メディア仲間の夜の懇親会に出るために東京・銀座へ。少々時間があったので、銀座松屋デパ地下を散策することにした。歩いているだけで心がウキウキしてくる。片っ端から賞味したくなるが、悲しいかな胃袋は一つしかない。ふと「深川太郎」の出店が目に入った。深川めしと厚焼き玉子の店で、昔、門前仲町に本店があったことを思い出した。昔の縄張り。
          深川太郎① 
          深川めしと遭遇

「深川めし弁当」(税込み864円)も旨そうだったが、その隣に置いてあった「深川めしおこげ」(税込み594円)に目が吸い込まれてしまった。おこげをここまで前面に押し出したものはそうはない。透明なプラスチックの器にどっさり押し込められていた。実に旨そうで、しばし金縛り状態。
          深川太郎② 
          目が釘付け

店の女性スタッフに聞くと、「意外に人気があるんですよ。そんなに量が取れないんですよ。ええ深川めしのおこげです」。釜に付いたおこげで600円近いのは高いとも言えるし、安いとも言える。だが、そのあまりに露わなお姿に「お持ち帰り」することにした。「本日、午後9時までが賞味期限になってます。早めにお食べくださいね」と女性スタッフ。

懇親会はスウェーデンから一時帰国中の北欧先生も参加し、ワールドワイドな上下問題などで取りとめもなく盛り上がったが、気がついたら、午後10時近くなっていた。頭の半分は白ワインの海。遠くで賞味期限と時間がくるくる点滅している。

千鳥足でウマズイめんくい村に辿り着いたのはほとんど深夜の午後11時半だった。村民2号は爆睡しているようだ。シメシメ・・・こっそり「深川めしおこげ」を独り占めで賞味することにした。飲んだ後のおこげ・・・どこか夜這いにも似て(?)、実にポエムである。
          深川太郎④ 
          深夜の独り食事会

お茶を入れてから、プラスチックの器を開けると、何とも言えないいい匂いとともに露わなおこげ姿が現れた。いい色味で、むき身の煮アサリが点々と混じっている。自然なテカリが食欲をそそる。
          深川太郎③ 
          蓋を取ると・・・

深川めしは江戸時代から漁師町だった深川一帯で食べられていた庶民料理で、アサリをネギと味噌で煮込んだ汁(みそ汁)をかけて食べるぶっかけ飯と、炊き込みご飯がある。このおこげは炊き込みご飯のもの。
          深川太郎⑥  
          見事なおこげ
          深川太郎⑧ 
          むふむふ

醤油と砂糖、酒、それにアサリの出汁がいい具合になじんでいて想像以上に旨い。ほどよい薄味で炊き込みご飯の旨みがじんわりと口中に広がってくる。箸がどんどん進む。かなりのボリュームで、茶わん2杯分は優にある。時間が経って冷たくなっているが、それでもいい余韻が残っている。米は新潟産コシヒカリを使っているようだ。あっという間にきれいに平らげてしまった。
          深川太郎10 
          メニュー外の極致?
          深川太郎11 
       むふむふムフフフ・・・

酔っぱらった後の深夜にこっそり食べる深川めしのおこげ。世の中にこんなに旨いものがあるとは・・・新たな世界を発見した気分。翌日の村民2号の反応が気になったが、しばしの間、その幸福なひと時に浸るのだった。

本日の大金言。

中華料理にはおこげ料理(鍋巴)があるが、おこげの旨さは格別なものがある。日本の釜炊き飯のおこげは狙い目だと思う。おこげ専門店が出てこないのが不思議だ。


                 深川太郎① 


究極か?老舗の絶品だし弁当

 駅弁や老舗の弁当には旅情がある。だが、安くはない。花のお江戸の中心地、東京・日本橋をぶらり散策中にたまたま見つけたある意味で究極の和弁当を取り上げることにする。三越前からすぐ、コレド室町1階に知る人ぞ知る「日本橋だし場」がある。元禄12年(1699年)創業のにんべんの直営店で、鰹節問屋の原点を現代風にアレンジした店である。日本橋はにんべん発祥の地でもある。
         日本橋だし場 
         伝統とモダン

エンタメ新聞社時代からこの周辺はよく歩いたはずなのに、このモダンな和の店の存在を知らなかった。午後2時過ぎ、たまたまコレド室町に入ったところ、女性客が大量に群がっている光景が見えた。なぜか鰹(かつお)の一本釣りが頭に浮かんだ。おっさんの姿も見える。好奇心の赴くままに観察すると、「日本橋だし場」という看板が見え、横文字で小さく「DASHI BAR」と表記してあった。だしバーとは洒落ている。言葉遊びもまさに江戸的である。

イートインコーナーもある。調べてみたら、にんべんが約5年半前に開いた店だとわかった。鰹節の旨さを知らしめることも目的のようで、おでん(5品税込み360円)やかつぶしめし(レギュラー同200円)などまである。その安さが気に入った。様々な種類のかつおぶしだしを一杯100円ほどで楽しむこともできる。まさかの世界。
         日本橋だし場② 
         めっけ

その中で、「数量限定 彩りだし御膳」(税込み880円)をゲット、用事を終えて、ウマズイめんくい村に持ち帰ってから賞味することにした。どうも数量限定という言葉に弱い。1日20個限定だそうで、たまたまなのか、5個ほど残っていたもの。
         日本橋だし場① 
         老舗の限定弁当

六角形の弁当を開けると、見事な和の世界が「旦那、どうでござんすかねえ」と広がっていた。竹の子、フキ、ホタテ、だし巻き玉子、鶏肉、鮭、ニンジン、シイタケの煮もの、それに紅白なます、柴漬け、谷中生姜という構成。その下には出汁(だし)で炊いたご飯・・・鰹節だしのいい匂いが立ち上がってきた。
         日本橋だし場② 
         おおおの世界

一つ一つが薄味でていねいに作られているのがわかる。鶏肉煮と鮭の昆布醤油漬け焼きの旨さ。だし巻き玉子は甘さがほとんどないが、出汁が効いていて悪くはない。フキは甘く煮しめられていて、ちょっとしたアクセントになっている。旬の竹の子、シイタケの味わいもいいレベル。すべてが高いレベルで、にんべんの力の入れ具合がわかる。
         日本橋だし場⑥  
         これで880円とは・・・
         日本橋だし場④ 
         秀逸な竹の子煮
         日本橋だし場③ 
         だし巻き玉子
         日本橋だし場⑧ 
         だしご飯

鰹節のだしご飯もその薄味が洗練されている。ボリュームは普通の駅弁と同じくらいだが、この内容で880円というのはめっけものだと思う。だが、しかし・・・原材料を見て少々首をひねりたくなった。意外に添加物が多い。駅弁やコンビニ弁当もそうだが、弁当類は添加物がかなり多い。添加物をすべて否定するつもりはないが、鰹節の自然な旨味がいささか色あせてきた。究極の数量限定弁当もまた。これだけのものを作りながら、添加物を少しは減らすことはできないものか。食べ終えると、九分の満足感とともに遠い江戸の香りが陽炎(かげろう)に思えてくるのだった。

本日の大金言。

昆布だしは京都、鰹だしは江戸・・・世界でも和の旨みが高い評価を受けている。だしの旨さとだしおしみは紙一重。ありゃオチがダメだしだよ・・・。



                 日本橋だし場10

浅草ペリカンに匹敵の重量級食パン

 このところ隠れた美味い食パン探しにハマっているが、さきたま古墳群を見た帰りに埼玉・行田で見つけた驚きの食パンをご紹介したい。行田は江戸から明治・大正・昭和にかけて、足袋(たび)の一大生産地として歴史に名を残している。その夢の跡が街中のいたるところに残っている。新町通りを少し入ったところに明治43年(1910年)の足袋蔵をリニューアルした一角がある。ここは知る人ぞ知る行田の名所でもある。
         ライ① 
         築百年以上の足袋蔵

驚きの食パンはその中の「足袋蔵パン工房 rye(ライ)」で見つけたもの。以前、パン好きのグルメおばさんから「行田にとっても美味い食パンがあるのよ。でもそこは予約しないと手に入らないわよ」ということが頭にあったので、あらかじめ店の見当をつけて、予約しておいた。足袋蔵のパン屋なんてポエム過ぎる。
         ライ② 
         この店構え
         ライ⑥ 
         こだわりの強いパン

店構えからしてこだわりの強さを感じた。午前11時から午後4時までしか店を開けていない。入ると、雑誌のグラビアにでも登場しそうなモダンな和の世界。パンの数はそう多くはない。ハード系からデニッシュ系までせいぜい十数種類。パンのいい匂いが漂っている。むろん村長の狙いは食パン。予約しておいた「プルマンブレッド(角型食パン) 1斤」(税込み378円)を買い求めた。安くはない。
         ライ⑤ 
         希少な食パン

普通の1斤よりも大きい。店の女性スタッフに聞くと「そうなんです。普通の食パンよりも大きいです。1.2倍くらいはあります」とか。手に持った瞬間、ズシリと重さが伝わってきた。見た目の自然な色合いといい、これは期待できるかも。「手間暇がすごくかかるので、一日4本しか作れない」そうで、それが希少価値を高めているのかもしれない。

ウマズイめんくい村に持ち帰って、翌日の朝食で賞味となった。パンとコーヒーには人一倍うるさい村民2号が「浅草ペリカンの食パンに似てるわね」とひと言。みい子さんからいただいた燕三条の名品パン切りナイフで切ると、小麦粉の自然ないい香りが立ち上がってきた。しっとり感と密度がフツーの食パンとはまるで違う。
         ライ① 
       フツーのものよりでかい
         ライ② 
         只者でない?

小麦粉は国産ではなくカナダ産だそうで、店のスタッフが言うには「最上ランクのものを使っているんです。グルテンが14%で、フツーの食パンより多いんです。胚芽も入ってて、その分色が少しクリームがかってるんです」とか。確かに物が違うという感覚。さらに「小麦粉の他にイースト菌、砂糖、食塩、スキムミルクしか使っていない」とか。
         ライ④ 
         しっとり感と凝縮感
         ライ⑦ 
         どれが合うか?

まずはそのまま食べてみると、小麦粉の素朴な風味が凝縮されたもっちり感の中に詰まっていた。マーガリン、黒ごまペースト、それに村民2号手づくりのマーマレードをそれぞれ付けてみる。マーマレードが意外に合っている。
         ライ⑥ 
         手づくりマーマレード
         ライ11 
         トーストすると・・・
         ライ12 
         ワオ~

次にトーストしてみた。香ばしさがさらに全開した。外側のカリカリサクサク感と中のもっちり感が秀逸。
「どちらかと言うとトーストした方が美味いわ。いいトーストを食べているという実感がある。やっぱりペリカンの食パンと似てるわ。値段が安くはないから、しょっちゅうは食べれないけど、たまにはこうした本物を食べたいな
いいパンとコーヒーのおかげで、ツノが引っ込んでいる。久しぶりにウマズイめんくい村に朝の平和が訪れたのだった。

本日の大金言。

いい食パンは重い。密度とふんわり感、それにしっとり感と伸びやかさ。あらゆるものが凝縮されているような、命の根源につながっているような。人は確かにパンのみではないが、パンによって生かされているのもまた確かだと思う。



                ライ13 






デパ地下の仰天穴子寿司

 花のお江戸に出たついでに、東京駅大丸デパ地下「ほっぺタウン」をブラ歩き・・・のつもりが、夕方だったので、女性客で混み合っていた。ここは村長の遊び場の一つでもある。流れ流れてお弁当ストリートへ。弁当や駅弁の激戦区今回取り上げるのはここで見つけた仰天の穴子寿司である。
          タキモト1 
          なんじゃこれは?

まず驚かされたのが、バラエティーに富んだ巻き寿司が縦に陳列されていたこと。かような置き方は見たことがない。「創作鮨処 タキモト」という店名。創作鮨とは初めて目にする言葉。客がひっきりなしに訪れて、人気店だということがわかる。目玉の一つが「贅沢ミルフィーユ」という、まるでスイーツのようなネーミングで、何のことはないカニやイクラなどの具を酢飯と交互に重ねたもの。ミルフィーユとはよくも付けたり、である。
          タキモト3 
          置き方の意外性

かような奇をてらうものには興味がない・・・はずだったが、縦に陳列された巻き寿司に目が点になってしまったのだ。黒々と煮詰められたような蒲焼き穴子が2種類、押し寿司と巻き寿司が連結していた。「穴子一本巻」との表記。デカい。その圧倒的なビジュアル。穴子好きの村長にとって、あまりに悩ましい世界。穴子を一本使っているとはいえ一折1620円(税込み)というのは安くはない
          タキモト2 
          一か八か?

迷った末、清水の舞台から飛び降りる心境(?)で、買うことにした。店の元気のいいおばさん店員が「これはここでしか売ってないのよ」とガハハ笑い。「穴子は国産?」と聞いてみると、「もちろんよ。穴子もお米も国産よ」と村長の心を見透かしたように言った。賞味期限は本日中とか。

その夜、ウマズイめんくい村に持ち帰って、賞味することにした。村民2号が箸と皿とお茶を入れて待っていた。サランラップを解いて、まずは押し寿司を包丁で切り分けて、おもむろにひと口。穴子は見た目よりも柔らかく、小骨もあるが、気にならない。
          タキモト 
          いいパッケージ
          タキモト①  
        2種類の穴子寿司が・・・
          タキモト③ 
        よだれが出かかる
          タキモト④ 
          包丁を入れる
          タキモト⑦ 
          押し寿司
           
ツメ(タレ)がかなり濃く甘い。しおりには「当店の穴子は、2回の蒸し工程と6回の焼き工程」と書かれている。だが、そんな繊細な過程が感じられないほど野暮ったい。うなぎのような蒲焼きの味わいで、よく言うと豪快、悪く言うとぶっきら棒な味わい。酢飯はほどよい固さで、まずまずの旨さ。

「何だか、お稲荷さんに例えると、関東風ね。ふっくらと煮上げた穴子をイメージすると、ガッカリするかもね。でも、この見てくれの素朴さが逆にいい味を出しているとも言えるわ。人間と同じように、穴子も見てくれだけでは判断できないのよ」
          タキモト⑤  
          巻き寿司

次に太巻きに箸を伸ばした。9切れもある。具は穴子の蒲焼きだけ。こちらも穴子と酢飯、それに海苔のバランスが素朴で豪快。築地「高はし」の穴子丼や「八竹」の穴子寿司のような洗練された味わいではない。野暮の極致、かもしれない。
          タキモト⑧ 
          穴子三昧

「比較するのがおかしいわよ。2人分で1620円と考えたら、これはこれで納得よ。今度はミルフィーユを買ってきてよ
「フトコロが・・・」
「ぴゅうぴゅう寒いって言いたいんでしょ? 使うばっかりで、稼ぎが少ないんだから」
「とほほ・・・穴があったら、穴子になりたい・・・」
「村長の穴子なんて、誰も食べないわよ」
「・・・・・・」

本日の大金言。

穴子の旬は夏だが、冬の穴子は脂がのって美味いという人もいる。外国産や冷凍物もある。産地偽装が問題になったこともある。穴子の世界も一筋縄ではいかない。



                   タキモト10 





東京ラーメンのルーツ?埼玉の奇跡

 埼玉・加須市騎西にある清水酒造へ。百二十年続く小さな酒蔵で、ここの純米吟醸酒が村長の好み。これまで何度も鑑評会で金賞を取っている。五代目社長と歓談、今年の出来を聞いたら、「80点の出来」とか。控えめな人柄なので、多分、かなりいい出来なのは間違いない。予約しておいた、希少な「亀甲花菱 無濾過生原酒」を買う。これを持って、花見とシャレ込むことにした。
          清水酒造① 
          清水酒造

今年の桜はピンク度が高いように思う。3.11後の桜も何故かピンク度が高かった。ひとしきり花見の酒宴を楽しんでから、一人抜け出して、加須市元町にある「来集軒 元町店」の暖簾をくぐることにした。来集軒といえば、浅草店が有名だが、実は加須市元町店こそが来集軒・東京ラーメンの本流であることを知っている人は少ない。独特の自家製シュウマイもここから始まっている。
          花崎北公園桜② 
          満開の下

来集軒は元々は製麺所で、明治43年(1910年)、東京・浅草でスタートした。加須元町店の初代は、ここで麺づくりを修業。昭和3年(1928年)、入谷で「中華料理 来集軒」一号店をオープンさせた。その後、昭和16年に出身地だった埼玉・加須市元町に移転、現在に至っている。浅草来集軒の中華料理店としての創業は昭和25年(1950年)なので、それよりもずっと古い。
          来集軒 
          来集軒の元祖

その元町店へ。現在は三代目が来集軒の味を守っている。どこかよき時代の浅草のハイカラ趣味の残る店構え。テーブル席に腰を下ろし、「いちおし」の「ラーメン」(税込み550円)を頼んだ。もう一つの一押し「しゅうまい」もハーフ(2個140円)で頼んだ。
          来集軒① 
          昭和3年のメニュー?
          来集軒② 
          ひらがな、の世界

13分ほどの待ち時間で、ラーメンとしゅうまいがいい匂いとともにやって来た。白い深めのドンブリで、まさに正真正銘、伝統の東京ラーメンの世界。濃いめの醤油スープ、丸い豚バラチャーシューが一枚、黒々と煮しめられたシナチク(メンマというよりシナチクと呼びたくなる)、小さな海苔、刻みネギ・・・中華そば、いや支那そばの、あまりに懐かしき世界が目の前に広がっていた。
          来集軒③  
          これが東京ラーメン
           
レンゲでまずはスープを。見た目はかなり濃いが、実際はまろやかで穏やかな醤油スープ。やさしい味わいで、豚ガラ、鶏ガラ、それに野菜をじっくり煮込んだ出汁が効いている。煮干しも使っているようで、その風味が絶妙である。
          来集軒⑥ 
          醤油スープ
          来集軒⑤ 
          今も自家製麵

麺はもっちり感のある中太縮れ麺で、三代目店主が毎朝手もみして作っているこだわりの自家製麵。スープが麺によく絡む。「チャーシューもシナチクもすべて手作りにこだわってる」ことが次第にわかってくる。チャーシューが今どき多いトロトロではなく、やや固めなのが誠実である。シナチクが秀逸で、見た目の濃さと違って、素朴に旨い。
          来集軒⑦   
          昭和のチャーシュー
          来集軒⑨ 
          シナチクの秀逸

「しゅうまい」は豚肉と玉ネギで作っているそうだが、豚肉の存在は薄い。玉ネギの甘さとつなぎの小麦粉の存在が勝っている。酢醤油ではなく、ソースで食べるのが昔からの来集軒の流儀。マスタードをたっぷりつけてガブリといくと、どこかつなぎだけの足利シュウマイに通じるような、あれっという味わい。これが貧しかった昭和の味わいかもしれない。
          来集軒12 
          昭和のしゅうまい
          来集軒4 
          表現不能?

昭和3年創業の来集軒の世界に敬意を表したくなる。来集軒の暖簾は関東に点々といくつかある。だが、その何処もこの元町店の初代から出ているとしたら、ここでの時間はほとんど奇跡に近い体験になる。まさか埼玉の加須市にかような店があるとは・・・お釈迦様でもご存じないかもしれない。

本日の大金言。

東京ラーメンの元祖は浅草来々軒と言われる。明治43年(1910年)創業。初めてチャーシューとメンマを具として使ったとも言われるが、来集軒の歴史もそれに引けを取らない。ナルトやほうれん草、煮卵の登場はその後の話ということになる。



                   来集軒14 






ホッピーで味わう絶品「レバーカツ」

 「大宮で居酒屋というと『いづみや本店』があまりに有名だけど、最近いい店を見つけてね。そこのレバーカツはお勧めだよ。大宮の居酒屋も村長の好きな北千住や赤羽に負けないかもな」
ある会合で、埼玉・大宮に住む友人が、含み笑いをしながら、居酒屋好きの村長にささやいた。
         酒蔵力② 
      七輪と炭火のお出迎え

久しぶりに氷川神社に立ち寄った帰りに、そのレバーカツの旨い居酒屋に足を延ばしてみようと思った。含み笑いが少々気になっていたからである。東口から飲み屋街をぶらりと歩き、JR沿いの裏手に出ると、その居酒屋「酒蔵 力(りき)」があった。かがり火のように入り口に七輪が置いてあり、炭火が焚かれていた。かなりド派手な居酒屋だが、どこか昭和の匂いがする。調べてみたら、浦和に本店があり、埼玉を中心に12店舗ほど展開している店だとわかった。
         酒蔵力 
         大宮の発見?

牛・豚・鶏・内臓の卸問屋直営店であることもわかった。レトロな入り口を入ると、左手に長いカウンター席が伸び、右手はテーブル席が雑然と広がっていた。炭火と活気。悪くない雰囲気。大宮アルディージャのユニフォームが飾ってある(浦和本店はレッズ)。村長はレッズファンだが、この地域密着性は憎めない。
         酒蔵力1  
         まずはもつ煮込み
         酒蔵力⑧ 
         これこれレバーカツ

カウンターに座って、まずはホッピー(白380円)を頼んだ。女性スタッフに「何が一番人気?」と聞いてみたら、「もつ煮込みです」とのお返事。税込み390円は北千住と比べても高くない。これがなかなかの旨さだった。白みそ仕立てで、何よりもモツの柔らかさと臭みのない仕込みに感心した。関西風の出汁の効き方もマル。ボリュームもあり、東京下町の居酒屋もウカウカしていられない見事なもの。
         酒蔵力③ 
       ホッピーともつ煮込み
         酒蔵力④ 
         白みそ仕立て

友人のいう「力特製レバーカツ」(税込み420円)は、ひと口カツのような大きさのものが4つ。パン粉がガサッと付いていて、多分ラードで揚げられたいい匂いが放たれていた。キャベツが山盛りに添えられていて、ドレシングとレモンの配置も悪くない。キャベツの鮮度はイマイチだが、サクサクと揚げられたレバーカツをガブリと行った瞬間、そのまろやかな鮮度と旨さに軽く驚いた。
         酒蔵力⑤ 
         特製レバーカツさま
         酒蔵力⑥ 
         たまらん

レバーは多分豚だと思うが、臭みがきれいに抜けている。まるでヒレ肉を食べているような味わい。その柔らかなジューシーさは当初の想像を上回った。薄い塩味。マスタードを付け、ソースをかけてみる。何も言われなければ、これがレバーとは思えない。ご飯が欲しくなるほど。
         酒蔵力10 
         ソースをたらり
         酒蔵力13 
         醤油をたら~り
         酒蔵力12 
         レバーの美味

次に醤油を垂らしてみた。村長の好みはこちらで、ホッピーでノドを潤さなければ、本当にご飯を注文したくなってしまった。次第にほろ酔い状態になって、近くにいた男性スタッフと雑談した。

「肉屋の直営ってホント?」
「ホントですよ。肉はすべて国産です。米も国産米です。次はぜひ肉を食べてみてください。ボクのお勧めは鶏肉のカシラで、塩焼きが旨いですよ」

つい懐が心配になる。財布の中にすき間風がぴゅうぴゅう吹いている状態では、追加を我慢しなければ。ホッピーのお代わりも我慢。後ろ髪を引かれながら、外に出ると、夜空にお月様がぽっかりと浮いていた。満月や浮かぶ瀬もあれ五円玉

本日の大金言。

居酒屋の実力は侮れない。かつて立石で食べたオムライスも旨かった。その腕前。いい居酒屋にはいい親父がいる。




                  酒蔵力15 


プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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