上野「うさぎやカフェ」のかき氷

 東京もついに梅雨明け。炎天下、汗だくだくになりながら、東京・茅場町で一仕事。その足で、上野の「うさぎやカフェ」に足を延ばすことにした。村長は亀だが、うさぎ好き。

うさぎやカフェは「上野うさぎや」が開いた甘味カフェ。去年7月にオープンしているが、不覚にも村長は知らなかった。穴があったら入りたい夕方、うさぎやに行くと、いつものようにどら焼きを買う人で賑わっていた。だが、そこにカフェらしきものは見当たらない。店員さんに聞くと、「ここから近い別の場所にあります」とか。
         うさぎやカフェ 
         うむむ?

店員さんが教えてくれた湯島方面に2分ほど歩くと、裏通りに「うさぎやカフェ」の横文字のスタンド看板と、いい暖簾が見えた。今どきのモダンな外観。多分、若い人や外国人観光客も視野に入れた店づくり。オシャレだが、ちょっと嫌な予感
         うさぎやカフェ① 
         モダンな外観 

店内は意外に広く、シンプルなテーブルが並んでいた。客が意外と少ないのは時間帯のせいか。メニューから「うさ氷」(870円=税込み)が目に止まった。
         うさぎやカフェ② 
         メニューの一部
         うさぎやカフェ③ 
         シンプルな店内

「うさ氷って何?」
「氷あずきです。ハチミツも加えてます。ハワイの天然水を使った氷を使ってるんです」
「ハワイの氷?」
「超軟水で、ひょっとして日本の天然水よりも美味いかもしれませんよ」

店員さんの対応はいい。「氷あずき」と聞いては逃げられぬ。ハワイウォーターというのも気になる。7~8分ほどで、その「うさ氷」がやってきた。デカい! 白い富士山のような巨大な山。高さはそれほどない。黒茶のドンブリのような器、下には黒茶の皿、それに木匙。見ようによっては、いかにもの光景。
         うさぎやカフェ⑥ 
         富士山のよう

だが、かき氷は氷が柔らかくて上質。しっとり感もある。木匙で崩していくと、あんこが現れた。このあんこが、さすがうさぎや、という美味さだった。一粒一粒がふっくらと柔らかく炊かれていて、風味も甘さもひと味違う。どら焼きのあんこと同じもの。そこにハチミツの風味がかすかに吹いてくる。ハチミツがあんこの風味を損なうのでは?という危惧は当たらなかった。
         うさぎやカフェ⑧ 
         ハワイの天然水氷
         うさぎやカフェ10 
         さすがのあんこ
         うさぎやカフェ11 
         上質の美味

悪くない美味さ。だが、店の造りも含めて、どこかちぐはぐさを感じる。「上野うさぎや」は大正2年(1913年)創業。富山から出てきた初代谷口喜作は「喜作最中」で成功。その後、一枚だったどら焼きを二枚であんこを挟む形を考案、それが東京っ子の舌を魅了した。日本橋うさぎや、阿佐ヶ谷うさぎやは初代喜作から枝分かれしている。

現在は4代目が暖簾を受け継いでいる。どら焼きを海外に広めようと高い志を持っているのは間違いない。だが、それがどこか空回りしていないか? いろんな理由があるのだろうが、やはり「うさぎやカフェ」にどら焼きを置いていないのも不思議だ。
         うさぎやカフェ5 
         秀逸な喜作羊羹

仕方なく、うさ氷に続いて、「喜作羊羹」(540円)を頼んだ。煉り羊羹と抹茶羊羹。これがやはり絶品だった。定番の商品は素晴らしい。だが、それを生かす器がどこか地に足が付いていない気がする。温故知新がどこかズレテいる・・・というのは言い過ぎか。むろんこれは村長の個人的な感想である。上野うさぎやがいい店だけに、惜しい気がする。

本日の大金言。

老舗が時代をにらみながら、新しい試みにチャレンジするのは素晴らしいことかもしれない。だが、それが成功するかどうかは難しい。うさぎと亀の寓話もある。




                 うさぎやカフェ13 





スポンサーサイト

讃岐うどん超人気店のぶっかけ

 東京・神保町での野暮用を終えたら、午後3時を過ぎていた。小腹がすいたので、先日テレビで「東京で一番美味い讃岐うどん」と紹介していたうどん屋に足を延ばすことにした。

メディアでこの手のキャッチフレーズは、結構ハズレが多い期待が大きすぎると満足度もハードルが高くなりすぎる・・・などとブツブツ考えながら、小川町方面へと歩く。昼どきは大行列らしいが、午後3時過ぎという時間帯は狙い時ではないか?
          丸香 
      午後3時過ぎでも行列

場所がわからなくなったので、たまたまいたクロネコの配達員に聞いてみた。
「ああ、いつも行列ができているところですね」と指差してくれた。駿河台下を左手に上ったあたり。「丸香(まるか)」の屋号が見えた。この時間帯なのに7~8人並んでいた。コンクリート地の外観に、「うどん」と大きく書かれた白地の暖簾が下がっている。モダンな外観。
          丸香① 
          モダンな店構え

回転が速いので、5分も待たずに中へ。正面奥が板場になっていて、活気にあふれていた。対面式の長いテーブルの空いたところに腰を下ろして、夏限定の「ぶっかけ」(並580円=税込み)と「ちくわ天」(180円)を頼んだ。
          丸香③ 
          夏はぶっかけに限る?

待ち時間は7~8分ほど。大根おろし、花ガツオのような削り節、万能ねぎ、カイワレ大根が盛大に盛られていて、白ゴマもかかっていた。おろしショウガもしっかり乗っている。その合間から絹色のやや細めのうどんが顔を出していた。いりこの出汁がほのかに立ち上っている。うむ。
          丸香④ 
          華やかやなあ

それに見事なちくわ天。「本日は中にチーズが入ってます」(女性スタッフ)。チーズ入りチクワが大好きな村長は、この意外なフェイントに心をつかまれそうになった。さすが評判の店。

だが、ここもセルフ方式ではない。店主は本場・香川県高松市の名店「山越」で修業をし、2003年夏に創業。その経歴を見ると、本場の讃岐そのものだと思うが、小麦と水は本場のものとはいかないようだ。都内なので、それは仕方のないところ。
          丸香⑥ 
          揚げ玉をかける
          丸香⑧  
          うどん自体の美味さ


最初のアタックは、塩気が意外に強いなあ、だった。いりこ出汁のよく効いたツユ、うどんは思ったよりも細めだが、口中に入れた途端、そのもっちり感がとてもいい。コシがしっかり効いていてうどん自体の風味もある。丸亀やハナマルとはひと味違う美味さ。揚げ玉を入れ、食べ進む。「東京一」というのはややオーバーだと思うが、かなり上質の讃岐うどんだと思う。
          丸香10 
          ちくわ天の秀逸
          丸香11 
          チーズ入りだった

最も感動したのはかなり大きめのちくわ天。揚げ立てのようで、サクッとしたコロモ、ちくわの美味さ、その中に潜んでいるチーズの食感と風味が実にいい。人形町「谷や」ほどの驚きはないが、行列さえもう少し少なくなれば、五日に一度は来たいと思った。

本日の大金言。

都内に讃岐うどんの名店が増えている。本場は安くて美味いが、都内となると、結構それなりの値段となる。高級化が進むと、本来の庶民的な讃岐うどんがどんどん「道」化していく。讃岐うどん道というものが庶民から離れることがないことを祈りたい。



                丸香12 






鶏そば名店の「冷やし担々麺」

 埼玉の果てに鶏そばの隠れた名店がある。ラーメン好きには知られた店で、今回ご紹介するのはここの夏限定「冷やし担々麺」。久しぶりの訪問だが、恐るべき一杯だと思う。

先々週のこと、ゴッドマザーが「冥途の土産に美味いラーメン、食いたい」と言い出した。ラーメンの街、栃木・佐野にでも行こうかと思ったが、ふと「竜神洞」が頭をよぎった。うどんの街・加須市の加須インターチェンジ近くにある、知る人ぞ知る名店である。2007年に創業、あっという間に埼玉でも有数の鶏ラーメンの行列店になった。
         竜神洞 
         埼玉の隠れ名店
         竜神洞③ 
         夏限定の逸品

その頃、何度か通ったが、ここ数年はご無沙汰となっていた。ゴッドマザーのひと言で、そこを思い出したのである。ポンコツ車で駆けつけ、「夏限定メニュー」という「冷やし担々麺」(税込み830円)を食べた。昔はなかったメニュー。これが実に美味かった。ゴッドマザーも「こりゃいい。辛さがよさ気だわ。マル!」と両手を頭の上で大きくくっつけた。辛口の村民2号も「こんなに美味かったっけ」とその味わいに魅入られたようだった。
         竜神洞② 
         鶏そばメニュー

で、今回、改めて取材を兼ねて、暖簾をくぐった。ここの定番メニューは「鶏そば」だが、以前は美味いには美味いが、麺が好みではないな、という印象が残っていた。24時間煮込んだ鶏スープは健在で、それが「冷やし担々麺」にもしっかり生きていた。

鶏スープに豆乳と野菜ブイヨンとゴマを加えた冷たいスープは秀逸で、そこに自家製ラー油やクルミなどがさり気なく混じっていた。麺が博多ラーメン系の細麺で、麺の固さを「固めでお願いします」としたこともあってか、オーバーに言うと針金のような低加水のコシで、それは村長の好みだった。
         竜神洞④ 
      冷やし担々麺、登場
         竜神洞⑤ 
         上空より
         竜神洞⑦ 
      すりゴマを好みで入れる

その上にはトマト、レタス、キュウリ、パプリカ、それにアボカドが色鮮やかに乗っていた。中央にはドカッと肉味噌。赤黒い自家製ラー油が白濁したスープの上に曼荼羅状に流れ込んでいる。ビジュアル的にも味のバランス的にも考え抜かれた構成。
         竜神洞10 
     このスープ、ただ者じゃない
         竜神洞⑧ 
             博多系細麺

事前に置かれたすりゴマ(自分で擂る)をかけ、割り箸でズズズと麺をすする。濃厚だが、思ったよりも淡泊で、ほのかな豆乳の香りがとてもいい。深みと旨味のある味わい。ラー油の他に花椒も入っているかもしれない。だが、その辛さがぎりぎりセーフの辛さで、絶妙なバランスと言わざるを得ない。
         竜神洞⑨ 
         アボカドとラー油
         竜神洞13   
         気配りの光景

博多系の低加水細麺が冷たい鶏スープによく絡む。ゴマの風味がラー油とともに口中に極上の風を送り込む。村長が食べた中でも冷やし担々麺としてはベスト5に入る美味さだと思う。

夏野菜も地場の野菜を使っているようで、鮮度がいい。ボリュームもほどよい。たまたまなのか、昔ほどの行列はなかったが、しっかりといい仕事を続けていることを確認。手抜きも人気店のおごりも見られない。加須という遠隔地のハンデがなければ、中央で十分に勝負できる鶏ラーメン店だと思う。外に出ると炎天。ゴッドマザーと同じように大きくマルをしたくなった。

本日の大金言。

冷やし担々麺は冷やし中華のジャンルの中でも比較的新しい世界。夏の暑さにその辛さが合う。これから爆弾印で注目のメニューだと思う。




                竜神洞12 




南会津の希少菓子「三本指」

 今回の旅の大きな目的が南会津町の「阿久津製菓」を訪ねること。今年5月に埼玉・伊奈の「バラまつり」の会場で、たまたま阿久津製菓が出品していた。そこで見つけたのが「三本指」という餅菓子だった。

阿久津製菓は南会津町伊南(いな)地区の和菓子屋さんで、伊奈と伊南という地名つながりで仲良くしているようだ。その「三本指」が珍しい形と独特の食感で村長のお気に入りとなった。

その時の縁で、南会津へポンコツ車を走らせようとなったのである。阿久津製菓は沼田街道に面した古町にこじんまりと看板を掲げていた。創業は明治から大正にかけて、和菓子修業をした初代が開いたようだ。百年以上の歴史がある老舗で、現在は二代目とそのご子息の三代目が暖簾を受け継いでいる。
         阿久津製菓① 
        希少な和菓子屋さん

二代目が出迎えてくれ(三代目は営業で外回り中)、製菓場でお茶をごちそうになりながら、和菓子談議に花が咲いた。「三本指」(6個入り 350円)を買い求め、さらに郷土菓子「石ごろも」(19個入り 350円)も買い求めた。「あんパン」「茶まんじゅう」など定番の他に、「幻のロールケーキ」(1本1200円、箱代100円)など新しい人気商品もある。
         阿久津製菓② 
      あんこ作りは大変
         阿久津製菓③ 
    出来上がったばかりのこしあん

さて、その「三本指」。二代目によると、初代から受け継いだ和菓子で、作るのに手間ひまがかかるそう。ウマズイめんくい村に戻ってから賞味することにした。餅菓子の一種で、三本指でつまんだような形。表面は柔らかな落雁のような白い糖衣で包まれている。その下は求肥餅(ぎゅうひもち)で、こしあんを包み込んでいる。
         三本指② 
         これが三本指
         三本指① 
         伝承の餅菓子

茶席にでも出てきそうなきれいな餅菓子で、まずはひと口。外側の雪のような糖衣の食感がとてもいい。さらに求肥餅とこしあんが柔らかく口中に広がってくる。添加物などはむろん使用されていない。
         三本指④ 
         雪景色?
         三本指⑤ 
       こしあんの美味さ
         三本指⑥ 
         独特の食感

そのバランスが秀逸だと思う。こしあんを製餡所任せの和菓子屋が増えているが、ここでは二代目がしっかり手作りしている。やや甘めで、小豆の風味と、塩気がよく効いていて、失礼ながら、かような場所にかような餅菓子が存在していたことに驚く。

「石ごろも」は半生菓子の石衣の一種。懐かしい駄菓子のようで、一見石ころのようにも見える。外側の糖衣と中のあんこがやや固めで、それがいい食感となっている。あんこには小豆の他に麦こがしやクルミ、ごま、黒糖なども練り込まれていて、どこか月餅のあんこのようでもある。京菓子の松露の駄菓子版といったところ。
         阿久津製菓① 
         こちらは石ごろも
         石ごろも④  
         半生菓子どす

3.11の風評被害で、一時苦しい局面もあったようだが、現在はその添加物を使わない丁寧な仕事ぶりが再評価され、少しずつだが販路を広げている。こういう和菓子屋を大事にしたい。

本日の大金言。

山奥で百年以上も暖簾を守り続けること。それを受け継いでいく困難と強い意志。首都圏の和菓子屋とは違った意味で、こうした希少な和菓子屋を応援できる。注文して食べてみる。ネット活用の意味はそこにもある。考えてみてほしい。百年以上も雪深い山奥で暖簾を守り続けている姿を。



                 阿久津製菓④ 



檜枝岐カレーと民宿驚きの夕食

 「ランチはどこかコーヒーの美味い店がいいな。裁ちそばは食いあきたわ」
尾瀬街道を檜枝岐に向かってポンコツ車でプカプカ走りながら、村民2号が鼻歌混じりにつぶやいた。こういう時は逆らってはいけない。

だが、「裁ちそば」の看板や暖簾は多いものの、通り沿いにコーヒーの美味そうな喫茶店やレストランは見当たらない。ガイドブックやネット情報でカフェを探す。ようやく、それらしきスポットが見つかった。「ミニ尾瀬公園カフェ」。村営のミニ自然公園で、その入り口にあるシャレたロッジ風のカフェが人気のようだ。
         カフェミニ尾瀬公園① 
      ミニ尾瀬公園カフェでランチ

入場料500円が必要だが、カフェでは土日祝日限定で、オリジナルカレーも提供している。定番メニューはジェラートやパンケーキなどで、コーヒー(400円)もある。ちょうど祝日だったので、ここに入ることにした。テラスもあり、見晴らしも素晴らしい。
         カフェミニ尾瀬公園② 
         当たりか?

13種のスパイスを使ったこだわりの手作りカレー「燧盛り(ひうちもり)」(並 税込み800円)を頼むことにした。これがとんでもない代物だった。

ライスが燧ケ岳(2356メートル)をイメージしていて、山の形に盛られている。カレーはじゃがいも、人参、玉ネギ、豚肉がゴロゴロしていて、木製の皿一杯に茶色いルーが満ち溢れていた。見た目のインパクトは特筆もの。だが、肝心のカレーが首をひねりたくなるものだった。
         カフェミニ尾瀬公園⑥ 
         おおおの登場
         カフェミニ尾瀬公園⑤ 
         水は美味いが・・・

豚肉はまずまずとして、じゃがいも、人参があまりに固い。
「何これ、ウソでしょ? 煮込みが全然足りないわ。13種のスパイスも感じられない。市販のルーをそのまま使ったみたい」
村民2号が夢から醒めたように、辛口の言葉を連発した。ウマイ、マズイを通り越した味わい。
         カフェミニ尾瀬公園⑨ 
         ちゃんと煮込んでる?

村長は「これはギャグか」と笑いたくなってしまった。「すき家のカレーの方が値段を考えるとまだまし、そう思いたくなるよ」と村長。村民2号はコーヒーを頼むのを辞めてしまった。救いは水とジェラート(バニラ300円)が美味かったこと。ミニ尾瀬公園も悪くはない。と、一応のフォローも入れておく。

その後、檜枝岐舞台などを散策しながら、宿泊所「民宿 舟岐館(ふなきかん)」へ。ここの食事が素晴らしかった。救われた思い。一泊二食付き7350円(税込み)で、夕食にはイワナの刺身、サンショウウオの天ぷら、そば粉のすいとん入りつめっこ、エゴマのタレのはっとうなど、檜枝岐独自の山人料理が小鉢で10~12種並んだ。最後の締めが裁ちそばのぶっかけ
         民宿舟岐館② 
         民宿舟岐館
         舟岐館① 
         山人料理の極致
         舟岐館② 
         イワナの刺身
         舟岐館④ 
         はっとう
         舟岐館③ 
         そば粉のすいとん
         舟岐館⑤ 
         締めは裁ちそば

「何だか、昨日の再現みたいね。昼食はガッカリ、その後の夕食は天国。民宿がどちらも当たりで、また来たくなったわ」

「源泉かけ流しの共同浴場『燧の湯(ひうちのゆ)』もホント素晴らしい。ガイドブックやネット情報に頼るのはバカバカしい。まだまだ探せばいい店が隠れている気がするよ」

「檜枝岐は平家の落人伝説が色濃く残っているところだし、きっと何度も通わなければ、奥座敷まで上げてくれないのよ。京都の匂いもする。また来月来ましょ」

「来月? 人間ドッグの結果が気になる。それと財布の中身が・・・」

「なるようになれよ。ポンコツ車の修理代もバカにならないし、先のことばかりを考えたって仕方ないでしょ?」
「ポンコツ車が火の車になったりして・・・」

「大丈夫、またやり直せばいいでしょ。コーヒーの美味い店だって、きっとあるわ。希望を持ちましょ」
「・・・・・・」

本日の大金言。

奇をてらうよりも、着実な一歩。ウケ狙いよりもウケないことの大切さ。持続する地味な手作業こそが明日につながる。なんてね。



                舟岐館⑥ 

続きを読む

奥会津「裁ちそば」のどんでん返し

 ぎっくり腰で延期していた奥会津・檜枝岐(ひのえまた)に出かけることにした。3連休の2日目のこと。狙いの一つはここの裁ちそば、である。

ポンコツ車をぷかぷか飛ばす。深緑の山々と渓谷を見ながら、まず到着したのが「前沢 曲家集落」。国の重要伝統的建造物群保存地区にも選ばれている茅葺き屋根の集落で、大内宿ほど観光化されていない。
         そば処曲家① 
       まずは「そば処 曲家」へ

この集落の入り口にあるのが「そば処 曲家(まがりや)」。明治期に建て替えられた古民家をそのまま使ったそば屋で、奥会津の人気スポットの一つになっている。

「裁ちそばは檜枝岐が有名だけど、この舘岩地区のそばも裁ちそばで、特にこの店はガイドブックなどでも必ず紹介されているんだ」
と、村長が村民2号に講釈した。だが、村長は遠い昔に裁ちそばを賞味したことはあるが、ほとんど付け焼刃の知識しかない。
         そば処曲家③ 
         天ざるセット


広々とした古民家の向こうには舘岩川の清流が見える。驚くほどの透明度。その窓際の席に腰を下ろして、メニューを見る。「人気№1」と表記された「天ざるセット」(税込み1570円)を頼むことにした。裁ちそばと山菜の天ぷら、それにはっとう、冷奴など小鉢が2種ほど。安くはないが、その分期待も高まる。

だが、窓から見える景色も雰囲気も素晴らしいのに、肝心の「裁ちそば」が想像とは違った。地粉100%で、つなぎは水だけ。そのため一本一本がブツブツと短く切れているはずなのに、まるで機械で打ったように手打ち感がない。一本が長いのも気になる。あれれ?
         そば処曲家④ 
       雰囲気はいいが・・・
         そば処曲家⑤ 
         裁ちそばは微妙

天ぷらはカラッと揚がっていて美味。根曲がり竹や高野豆腐の天ぷらなど凝った食材も悪くない。

「どうも期待外れだね。そばの風味も期待していたほどではない。観光地の裁ちそばって感じ」
「私は十分美味いと思うわ。村長の期待が大きすぎたのよ」
「そばも人生も思い通りには行かないなあ」
         民宿いせや① 
       民宿「いせや」の驚き

         食堂いせや③ 
       隣りは食堂「いせや」
         食堂いせや⑤ 
      こちらは食堂のメニュー

その夕、思わぬ展開となった。泊まった民宿「いせや」が想像を超える世界で、築130年以上の建物に目を見張らされた。ほとんど宣伝していない古民宿で、多分、庄屋か豪農の家柄だと思う。湯ノ花温泉の中にあり、源泉掛け流しの共同浴場も目の前にある。ガイドブックにはほとんど出ていない世界。

そこで夕飯の締めに出され裁ちそばが素晴らしかった。見事な裁ち方で、村長がイメージしていた裁ちそばそのものだった。昼は隣で、「食堂 いせや」を営んでいる。プロのそば職人がここにもいた。そばは見事な挽きくるみの十割そばで、細切りのエッジといい、コシといい、風味といい申し分ない。一本当たりが短い。これぞ裁ちそば。隠れた名店を発見の思い。ガッカリした分、喜びも倍加した。
         民宿いせや② 
       ようやく本物と出会った
         
民宿いせや③ 
         風味とコシとエッジ
         民宿いせや④ 
         いいこともあるさ

 その他の料理もイワナの炉端焼き、馬刺しなど、ぜい沢な山人(やもうど)料理がズラリと並んでいた。大どんでん返しと小躍りしたくなった。

「メディアに出ないところに本物があるってことだなあ。この内容で一泊二食付き7200円というのも凄いと思うよ。前半は期待外れだったけど、後半にこんな世界が待っていたとはね」
         民宿いせや⑥ 
       出汁の効いたツユ

「ここの主人がさり気なく言ってたけど、そばも自家栽培してるんだって。それを全然宣伝もしていない。こういう世界は大事にしたいわね」

この後の旅も、ガイドブックやネット情報に裏切られることになるとは、この時点では村長も村民2号も知らない。ガイドブックやスマホに頼り過ぎると、本物を見失ってしまうことだってある。

本日の大金言。

情報は自分の目と舌で探すしかない。だが、それすらわからない。失敗を繰り返す。そこからしか本物に出会うチャンスは起きないということか?



                 民宿いせや⑨ 

千住宿のパーフェクトモーニング

 東京・兜町ペンのデスク稼業に向かう途中で、北千住に立ち寄ることにした。軽く朝メシをどこかでとるためである。腹が減っては戦が出来ぬ。(腹が一杯でも戦はできぬが・・・)。

目指すは西口から歩いて5分ほどの「千住宿 珈琲物語」。ここは北千住でも有数のコーヒーの美味い喫茶店で、かつて村長が北千住に別宅を持っていた時に、ふらりと寄ったりした。イラストレーターなかだえりさんなど常連客も多士済々。
         珈琲物語① 
         お久しぶり

ここのモーニングが「うむ」という内容なのである。店構えからして、クラシックレトロな造りで、入った途端、自家製焙煎コーヒーのいい香りとジャズが「ようおいでなすった」と出迎えてくれる。
         珈琲物語③ 
       老若男女のファン

長いカウンター席とテーブル席の室内はウッディーで、カウンター席の背後には約300ものコーヒー茶碗が並んでいる。有田焼からヨーロピアンまで、これだけのコーヒー茶碗のコレクションは都内でもそうはない。焙煎機まで置いている。創業は昭和62年(1987年)。マスターのこだわりが半端ではないことがすぐにわかる。
         珈琲物語② 
         モーニングが狙い目

その分、コーヒーは安くはない。一番手ごろなマイルドブレンドが520円(税込み)。その意味でも「モーニング」(税込み620円)は狙い目なのである。丸型のテーブル席に腰を下ろして、愛らしい女性スタッフに「モーニング、頼むよ」とひと言。マイルドブレンド、厚焼きトースト、自家製ポテトサラダ、それにゆで卵。コスパ的にもほぼ完ぺきなモーニングだと思う。

ここでは急いではならない。ゆっくりと待つ。コーヒーの香りとBGMのチャーリー・パーカーが心地よい。12分ほどで、モーニングが到着。これこれ、有田焼のカップからコーヒーのいい香りと湯気がゆらゆらと立ち上っている。
         珈琲物語④ 
       パーフェクトモーニング?

トーストは厚めのものが3切れ。山型食パンは「都内の老舗パン屋から仕入れている」そう。コーヒーをひと口飲んでからガブリと行く。バターの塗り込み方とカリカリ感が絶妙で、中のパン生地の密度の濃いもっちり感がとてもいい。シンプルだが、よく考えられた味わい。
         珈琲物語13 
         厚切りトースト
         珈琲物語⑦ 
         パンが美味い
         珈琲物語12 
         絶妙な焼き方
         珈琲物語1 
         幸せな朝がくる

自家製ポテトサラダはポテトを丁寧にすりつぶしていて、塩加減がほどよい。ジャガイモの鮮度のよさ。ゆで卵も完熟と半熟のちょうど中間くらいで、妙に媚びたところがない。さり気ないワザとスタイルが好感。
         珈琲物語⑧ 
         自家製ポテトサラダ
         珈琲物語10  
         ゆで卵の技術

パーフェクトヒューマン・・・じゃなかったほぼパーフェクトモーニングではないか。ただあえて言うと、生野菜がない。その理由はわからない。ポテトサラダの横にトマトでもあれば「アイム・パーフェクト・モーニング」になると思う。コーヒーの美味さは申し分ない。

以前、京都で食べた無名の喫茶店のモーニングに負けない、古典的なモーニング。「千住宿」という江戸時代の伝統をコーヒーで提供するという静かな心意気を感じる。チェーン店では味わえない職人の仕事がここにも生きている。

本日の大金言。

いいコーヒーとトーストがあれば、いい朝になる。いい喫茶店が少なくなりつつある中で、しっかりといいモーニングを出す。そういう店を大事にしたい。


                 珈琲物語11 

頂点か? 山本道子のマドレーヌ

 先週末の話になるが、京都から天空先生が半蔵門に舞い降りた。先月は今西軒のおはぎを30個も持参し、居並ぶ食通たちを仰天させたが、今回はお忍びなのでほとんど手ぶら。料理屋でお酒と肴をつまみながらのディープな時間。

話が豆大福から古今東西の和菓子などの裏の裏情報に及び、これがホントの蜜談という展開になった。その模様は天才(一部に天災という声もあるが)ブロガー「渓流斎日乗」に書かれてしまった。ところどころ記憶違いがあるが、宇宙から帰還したばかりだから仕方がない。

で、本題。一瞬だけ村上開新堂の話になった。すぐ近くに日本の洋菓子界の草分け、東京・一番町「村上開新堂」がある。明治7年(1875年)創業の、皇室御用達の洋菓子店で、明治天皇が京都から東京に遷座した際に、初代村上光保が宮内庁から洋菓子製造の習得を命じられ、その後日本初の洋菓子店を開いたという歴史を持つ。
         山本道子の店① 
         山本道子の店
         村上開新堂① 
     さり気なく村上開新堂の屋号

ここは敷居が高く、「一見さんお断り」の伝統を持っている。京都にも村上開新堂があるが、こちらは初代の下で修業した甥っ子が明治40年(1907年)に開業した庶民的な洋菓子店。敷居が低く、誰でも買うことができる。同じ暖簾なのに、「まったく別の店です」(東京)とそれぞれ素っ気ない。

このあたりの歴史はややこしいので、詳しくは触れないが、村長は会合の前に東京の村上開新堂の五代目でもある「山本道子の店」に立ち寄っていた。ここのマドレーヌを賞味したかったからである。ここもまたややこしいのだが、「山本道子の店」は村上開新堂と同じ建物にあり、別ブランドとして一般に開放して焼き菓子類を販売している。それでも製造が追いつかないそう。
         山本道子の店② 
         焼き菓子とクッキー類

村長は予約しておいた「焼菓子詰合せ」(6個入り 税込み1460円)をリュックに入れ、「ディープな蜜談」を楽しんだ後、ウマズイめんくい村に持ち帰り、賞味することにした。
         山本道子の店③ 
         これこれ

三島由紀夫が絶賛した下田「日新堂」のマドレーヌ、天空先生折り紙つきの京都村上開新堂のマドレーヌはすでに賞味している。山本道子のマドレーヌはどんな味がするのだろう? 期待で小さな胸がときめく。

貝殻形(ホタテ形)の見事なマドレーヌで、包みを解いた途端、焦がしバターとハチミツの風味が広がった。焼き色がかなり濃く、手に触れると、しっとりと重厚に焼き上がっていることがわかる。「村上開新堂のシェフが焼いてるんですよ」(店のスタッフ)。うむ。1個当たり210円。安くはないが、希少なのでそう文句は言えない。
         山本道子の店 
         シャレた包装
         山本道子の店② 
         希少マドレーヌ
         山本道子の店⑤ 
         立ち上がる風味

ひと口かじると、まず濃厚なバターの風味が押し寄せ、ハチミツと小麦粉、さらにはブランデー(?)のような隠し味と甘い風味が混然一体となって二重三重に押し寄せてきた。どこか素朴な手作り感もある。京都村上開新堂のマドレーヌとよく似た味わいだと思った。同じ貝殻形でも京都のものはタテ型。こちらはヨコ型。
         山本道子の店⑦ 
         横からの厚み
         山本道子の店1 
         見事なホタテ形
         山本道子の店⑥ 
       裏側の重厚感
         山本道子の店⑧ 
         天国が近い?

「高級なマドレーヌだというのはわかるけど、村長みたいにヘンに深入りしたくはないわ。私はガレットの方が好きだな。ブラウニーも美味そう。京都の天空先生はこんなものを毎日食べてるのかしら? 今西軒のおはぎとか、信じられない世界だわ」

「まさか。毎日カスミを食ってるらしいよ。ときどき人も食っているらしいよ(笑い)」

「今回は村長のミスで、せっかく作った梅ジャムを献上するのを忘れちゃったけど、今度来たときは忘れないでね」

「でもいつ来るか、わからない」

「糸電話があるでしょ?」

「・・・・・」

本日の大金言。

たかがマドレーヌ、されどマドレーヌ。マドレーヌ一個に宇宙を見ることだってある。なんてね。


                  山本道子の店10 

旧家の古代米ハヤシライス

 このところ毎年恒例になっている、埼玉・行田市の古代蓮を見にポンコツ車を走らせることになった。今回はゴッドマザーが後部座席にちょこんと乗っている。「冥途の土産に古代蓮でも見るか、ガハハハ」陽気である。村民2号も介護係として付きっきり。

早朝から観光客でにぎわい、蓮の花よりも人間の方が多い気さえする。人はなぜ花を見たがるのか、これはいまだ謎だと思う。ほとんどお祭り状態。ここには秘すれば花、の世阿弥の世界はない。今が古代蓮の旬で、ピンク色のきれいな花が咲き誇っていた。
         古代蓮① 
         早朝の古代蓮

「ああ腹減ったわ。早く昼飯食べに行こ。どっか美味いとこ、調べてあんでしょ?」
ゴッドマザーと村民2号連合軍に、連夜の飲み会でバテ気味の村長は無抵抗状態。さもありなんと、隠しておいた切り札を出すことにした。行田市長野にある「高澤記念館カフェギャラリー」である。行田のグルメおばさんから仕入れておいた極秘情報。「建物も染物のギャラリーも凄いわよ。古代米カレーがおすすめよ」。
         高澤カフェ⑤ 
     グルメおばさんの極秘メモ
         高澤カフェ① 
         まさかの世界入り口

緑に囲まれた国登録有形文化財の高澤家の建物(江戸末期)と広い庭をひと目見て、村民2号が「気に入ったわ」。ゴッドマザーも「昔の我が家みたいだよ」
         高澤カフェ④ 
         女性客が多い

その母屋の一部がカフェになっていて、ビジュアル的にポエム。タイムマシンに乗って、明治・大正の世界に紛れ込んでしまったような錯覚に陥る。全国的に古民家カフェが流行っているが、ここもその一つと言える。だが、スケール感がひと味違う。高澤家は江戸時代初期からの旧家で、豪農だった家柄。ここの当代は染色デザイナーでもあり、その作品がさり気なく飾ってある。
         高澤カフェ③ 
         ランチメニュー

メニューから村民2号が「これがいいわ。ハヤシライス」。ランチタイムメニューは古代米を使ったチキンカレー、ココナツミルクカレー、ハヤシライスが売り。それぞれ単品だと880円(オリーブオイルトースト、サラダ付き)だが、ドリンクセットにすると、1080円。見ているとほとんどの客がチキンカレーを頼んでいる。

「カレーはどこにでもあるけど、ハヤシライスはそうはない。しかもここはルーから自家製。きっと美味いに違いないわ
泣く子と連合軍には勝てない。勢いに飲まれて、村長もハヤシライスを選ぶことにした。
         高澤カフェ⑦ 
         ハヤシライス、登場
         高澤カフェ3 
         当たりかハズレか?

これが微妙だった。バターや小麦粉を使用していない、フォンから手作りにこだわっているのは素晴らしいが、デミグラスソースで煮込んだルーが妙に甘い。国産牛と玉ネギがしっかり煮込まれていて、見た目が実に美味そうだった。サラダも古代米のライスもマル。だが、ルーがタマネギの甘さだけなのか、コクはあるものの、いかんせん村長には甘すぎる。
         高澤カフェ4 
         コクと甘み
         高澤カフェ10 
         国産牛肉
         高澤カフェ11 
         オリーブオイルトースト

「カレーにした方がよかったかな?」
辛党のゴッドマザーがつぶやいた。村長もうなずく。

「何言ってんのよ。この甘さがいいのよ。デミグラスソースも本格的だし、ボリュームがほどほどなのもうれしいわ。店の人がハヤシライスはお子さんに人気がありますって言ってたでしょ? 老いては子に従え、よ」

「ちょっと意味が違うんじゃ・・・」

「ここは料理プラスこの雰囲気を楽しむ。そう言いう心掛けが必要なのよ。わかった?」
         高澤カフェ13 
      自家製さくらんぼのケーキ

入るときに目を付けていた、自家製の「さくらんぼのケーキ」(プラス400円)で口直しすることにした。これが実に美味かった。3人の表情が緩んだのは言うまでもない。が、好事魔多し。帰りにポンコツ車を路端にぶつけてしまった。修理代がいくらかかるのやら・・・。空がどこまでも高い。

本日の大金言。

いい事は長続きしない。悪いことも長続きしない。一寸先に何が起きるかわからないのが世の常でもある。



                高澤カフェ12 

隠れ横綱「人形町の一枚どらやき」

 今回ご紹介するのは東京・人形町「清寿軒」のどらやき、である。どらやき好きにとっては、東京三大どら焼きと言われる上野(日本橋)・うさぎや、浅草・亀十、東十条・黒松に並ぶ、いやそれ以上の存在という声もあるほどの代物。

村長が東京・人形町に出張することを嗅ぎ付けた恐るべき食通・ドン圭氏が「そんなら清寿軒のどらやき、5個買ってきてくんないかい」と、くしゃくしゃに丸めた千円札1枚と百円玉1枚をポンと手渡した。清寿軒のどらやきは大判(税込み220円)と小判(税込み180円)があり、どうやら大判を5個という意味らしい。シメシメ・・・ドン圭氏といえども、清寿軒のどらやきは小判が希少だということを知らないらしい。
         清寿軒④ 
         清寿軒に到着

あまりの人気のために並ぶと大変なことになるので、事前に予約を入れ、当日の夕方4時、所用を終えてから立ち寄った。すでに入り口には「本日のどらやき完売につき閉店させて頂きます。」という木札がかかっていた。恐るべき人気ぶり。
         清寿軒⑧ 
         午後4時でこの状態
         清寿軒⑥ 
       箱詰めとバラ売りもある

村長が予約したのはバラで、大判3個と小判2個。合計1020円ナリ。むろん狙いは希少な小判。清寿軒の創業は文久元年(1861年)。あんこ作りから皮まで、毎日決まった分を七代目当主が昔ながらの製法で作り続けている。他に羊羹もあるが、どらやきが有名になり過ぎて、陰に隠れてしまっている。おそらく羊羹も美味いに違いない。

ウマズイめんくい村に持ち帰って、まずはその晩のうちに賞味することにした。賞味期間は3~4日ほど。大判はうさぎやなどと同じ二枚重ねだが、小判は一枚であんこを包んだ形で、見た瞬間、その圧倒的なあんこの量に度肝を抜かれる。ため息が出るほど見事なつぶあん、それを包む皮がぎりぎり焼きすぎ寸前の濃いきつね色で、かようなどらやきは多分ここだけのものだと思う。
         清寿軒② 
         小判(右)と大判(左)
         清寿軒⑤ 
         これが小判とは・・・
         清寿軒③ 
         たまらん

あんこの厚みが優に4センチほどはある。皮は手に持つとべたっとするほどしっとりフワフワに焼かれている。ガブリと行く。皮からハチミツの焼けた風味が口中に広がる。味りんの風味もどこかに。そのすぐ後から、柔らかく炊かれたつぶあんがドドドと押し寄せてくる。かなり甘め。じっくりと炊き上げているという北海道十勝産の小豆と白ザラメの風味が実に素朴。洗練というよりも素朴な手作り感。あんこ好きにはたまらないどらやき、ではある。
         清寿軒⑦ 
     一枚であんこを包んでいる

もう一つ、大判へ。こちらは小判ほどあんこのインパクトはないが、素朴に美味い。バランス的にはこちらのほうが安心感がある。日本橋うさぎやなどのきれいな外見ではなく、焦げ付く寸前の皮のハチミツ感が特長。どこか野暮ったい。これもかなりの職人技に違いない。
         清寿軒⑨ 
         こちらが大判
         清寿軒1 
         ちょいと失礼
         清寿軒12 
       たまらん、たまらん

「小判は凄すぎて、ちょっと手が出ない。大判の方が美味いわ。並んでも買いたいというファンの気持ちもわかるな」(村民2号)
「さっきドン圭氏から電話があって、珍しくホメてた。こんなに美味いどらやきはこのあたりじゃないよ、ってね。それは正しい(笑)」(村長)

二日後、取り置いていた最後の大判1個を賞味した。どらやきは焼き立てよりも1~2日ほど置いた方が味がなじんで美味いと思うからだ。見立て通り、味わいがさらに深まっていた。

本日の大金言。

たかがどら焼き、されどどら焼き。上野うさぎやが二枚重ねのどら焼きを売り出したのは大正になってからと言われている。それまでのどら焼きは一枚だったようだ。きんつばとほとんど同じような作り方だったという説もある。清寿軒の小判は変形一枚。どら焼き界の隠れ横綱という声もある。



                 清寿軒14 


寿司屋の「怪物ネギトロ」の味

東京・上野の東京都立美術館で開催中の「ポンピドゥー・センター傑作展」を見た後、御徒町の「寿司幸」へ足を延ばすことにした。目的はここのネギトロ、である。
         寿司幸 
         寿司屋が並ぶ

アメ横につながっている迷路のような、通称寿司屋横丁にあり、有名なかっぱ寿司(1号店2号店)や英寿司などが並び、時間帯によっては安くて美味い寿司を求めるファンや観光客でごった返している。先々週、天空先生と博物館先生と来たときは、ちょうど昼時とあってかっぱ寿司の前には長い行列ができていた。
         寿司幸① 
         寿司幸の暖簾

だが、本当に安くて美味いのは、その谷間で白い暖簾を下げている「寿司幸」だと思う。外観が高級すし店のような佇まいなので、敷居が高そうに見える。そのため、大衆的な、どこか居酒屋風のかっぱ寿司ほど人気がない。知らぬは女房ばかりなり。人も店も見かけがすべてではない。常連客が多いのもこの店の実力を物語っていると思う。実は天空先生もここの隠れファン。
         寿司幸2 
         リーズナブル
         寿司幸1 
         これこれ

午後1時過ぎだが、客の入りは七、八分ほど。ほどよい混み具合い。「らっしゃい~」掛け声が明るく響く。L字型の白木のカウンターの一角に案内される。村民2号が「お寿司、久しぶりね~。何年ぶりかしら」とボソリ。イタタ。

まずは生ビール(550円)を頼み、目の前のユーモラスな大将(二代目)に「ねぎとろの大、お願いします」。大が1900円、小が1300円なり。小でも十分大きいが、ここは大で行きたい。大人のこぶしよりもひと回りほど大きな「ねぎとろ」の塊(かたまり)はここの名物で、これをツマミに一杯やるのがこの店の楽しみ方の一つだと思う。
         寿司幸⑤ 
         天国、天国

注文を受けてから目の前で作り始めるのだが、それを見るのも楽しい。寿司下駄の中央にネギトロの巨大な塊が置かれ、生ワカメと千切り大根のツマが控えている。ひと目で鮮度のよさがわかる。ネギトロを巻いて食べるための海苔も置かれている。村民2号が「こういうの初めて。すごいわね~」。
         寿司幸④ 
         巨大なネギトロ
         寿司幸⑥ 
         見る前に食べろ

醤油にワサビを溶いて、まずはひと口。中トロと大トロが曼荼羅状に入り混じり、そこにいい具合に千切りネギが絡んでいる。マグロのきれいな脂がさわやかで、その旨味が口中に一瞬の天国を作る。天国からの風・・・むふむふ。自然に笑みがこぼれる。
          
         寿司幸⑧ 
       海苔に巻いて、っと
         寿司幸10 
         穴子も絶品

穴子(1カン150円)と玉子(1カン100円)、さらにイカ(スミイカ1カン150円)と続いて賞味。回転寿司よりほんの少し高めだが、かなり安いと思う。柔らかく炊かれた穴子とツメが実に美味い。他も値段の割に高レベル。内容を考えると、回転寿司よりもリーズナブルだと思える。しじみの味噌汁も「サービスです」(大将)。最後に村民2号が最も高い「ウニ」(1カン450円)を頼んだ。2個で900円。イタタ。

「ネギトロのマグロはバチですか?」

ほろ酔い気分の村長がついバチ当たりな質問を投げかけてしまった。村民2号が村長の足をつついた。イタタ。「店はもう50年になるんですよ。私で二代目です」大将とのほのぼのとした会話のやりとりの中で、つい聞いてしまったのだ。悲しい性分。
         寿司幸⑨ 
         折り返し点

「いえ、本マグロです。昔から付き合いの長い魚屋から仕入れているんですよ。だからこの値段でできる。ネギも鮮度を保ちながらここまで水分を取るのは大変なんですよ。他の店が真似しようとしてもこれと同じものは絶対できません」
大将は笑いながら、答えてくれた。さすが大将。完敗どす。天然か養殖か、ついに聞きそびれてしまった。イタタタ。

本日の大金言。

寿司屋と言ってもピンからキリまである。高くて美味いは当たり前、安くてまずいも当り前。安くて美味い、満足度をどこに置くかにもよるが、そのギリギリのラインを見事に保っている店も確かにある。



                 寿司幸12 

アジアンカフェ「ガパオご飯」の謎

 今回ご紹介するのは、人間ドッグ後に食べた謎の「ガパオご飯」。タイ料理の定番料理だが、日本でも本格的なものを食べれるようになってきた。これが案外美味い。特に暑い今の季節にはお勧めの料理でもある。

埼玉・久喜市栗橋町にある済生会栗橋病院のすぐ隣。そこだけ南の島のような一軒家レストランが「アジアンカフェダイニング CHITA CHITA(チタチタ)」である。インドネシア語で夢とか希望の意味をもじったネーミングだそう。特に女性客が多く、村民2号が「ここにしましょ」と選んだ。
         チタチタ 
         アジアの純真?混沌?

人間ドッグ後にアジア料理とは案外イケてる。3月にベトナムで美食三昧してきた記憶もある。だが、店はインドネシア風でもあり、タイ風でもあり、インド風でもあり、ベトナム風でもある。で、「アジアンカフェダイニング」としているようだ。このあたりのアバウトさが日本的である。
         チタチタ1 
         ポエム

店内は広く、ポイントポイントに象の置物や民芸グッズ類がさり気なく配置され、見上げると天井扇がゆったりと回り、BGMはレゲエがかかっていた。ここはどこ?わたしは誰?この混沌(こんとん)がたまらない。女性に人気なのがよくわかる。
         チタチタ③ 
         ランチメニューの一部

ランチメニューから「野菜たっぷりガパオご飯」を選んだ。北千住「ライカノ」で食べた本場のガパオライスを思い出したからだ。サラダ、スープ、ドリンク付きで950円。村民2号は「野菜たっぷり」に惹かれて、同じものを頼んだようだ。

10分ほどで、サラダとスープがやってきて、続いてメーンの「野菜たっぷりガパオご飯」が置かれた。サラダは魚醤をアレンジしたドレッシングが美味。スープも味が濃い目だが、どこか味噌のような風味がしてクリーミーで悪くない。
         チタチタ④ 
         そろい踏み

「野菜たっぷりガパオご飯」は目玉焼きと紫キャベツのようなトレビスなど野菜類がどっかと乗っていた。トレビスはイタリア? 白い磁器の深皿。目玉焼きは黄身がほとんど生状態で、しっかりと火が通った白身とのバランスが不思議。シェフの面白いワザ。北千住で食べたガパオライスはしっかりと焼かれていたので、同じ目玉焼きとはいえ、これほど違うことに軽く驚く。
         チタチタ⑤ 
         ガパオご飯
         チタチタ⑥ 
         不思議な目玉焼き
         チタチタ⑦ 
         混ぜ混ぜ

その下には鶏の挽き肉、パプリカなどで炒めたご飯がほどよい量で控えていた。スプーンで混ぜ混ぜする。香辛料は日本人向けにきつくないようにアレンジしている。薄味でやさしい味わいが口中に広がる。悪くはないがどこか物足りない。北千住で食べたガパオライスは塩がかなり効いていて、それがパラパラしたライスと炒めた牛肉とホーリーバジルと絶妙に合っていた。
         チタチタ⑧ 
         ここから始まる?
         チタチタ⑨ 
         日本風のガパオ?

「このガパオご飯は日本風にアレンジしていて、本場のものとはちょっと違うなあ。強烈さが足りない」
「そこが日本人の知恵なのよ。この店の売りなのよ。私は初めてガパオを食べたけど、この薄味と奥ゆかしい旨味が気に入ったわ」
「人間ドッグの後だから、ま、優しい味の方がいいかもな」
         チタチタ10 
         イケてる世界

「次はロコモコ丼を食べたいわ」
「おいおい、ロコモコ丼ってハワイだぜ。このごちゃ混ぜぶりがチタチタってか?」

「夢とか希望に国境はないの。ガパオライスもロコモコ丼もナンのピザも同じ料理の一種なの。そう考えると、混乱しないでしょ。人類も料理もよく考えるとみな兄弟なのよ。世界中で今起きつつある排他主義より共生主義で行かなくっちゃ。壁をどんどん作ったら、世の中がどんどん狭くなる。見えなくなる。その先に何があるか、怖いわ」

「そう来たか、トランプさんも近平さんもEUも妙な国粋主義も・・・」
「どこかの安倍さんもね」
「頭が痛くなってきた。それが出来れば苦労しないけどなあ・・・」

本日の大金言。

和洋折衷、あんぱんにカツ丼・・・何でも取り入れてしまう換骨奪胎の国ニッポンの凄味。世界の未来はひょっとして日本が握っている? おっと危ないアブナイ。


                  チタチタ11 








日本橋舟めぐり後の支那そば

 ぎっくり腰がなかなか治らない。中学時代の同級会を泣く泣くキャンセルし、静養に努めるしかない。コシがなくては人生もラーメンも成り立たない?

だが、一つだけどうしても参加しなければならないイベントがあった。村長が関わり始めたある団体の日本橋川クルーズである。小船を10人で貸し切り、江戸の繁栄の跡を色濃く残す日本橋川をクルーズする。これは腰が抜けても参加するっきゃない。まさか?
         日本橋川クルーズ② 
         日本橋の下をくぐる

で、初めて東京の知られざる世界を見る体験をした。江戸城の石垣や河岸跡が残っていて、江戸⇒東京が舟運の都だったことを実感する。

その後の懇親会はキャンセルして、コルセット(ああ情けない)を付けたままもう一つの目的、「日本橋製麺屋 なな蓮(ななはす)」に立ち寄ることにした。ここは日本橋で人気上昇中のラーメン屋である。日本橋船発着所から近いというのもありがたい。シンプルな外観で、時間が時間だけに、行列はない。
         なな蓮③ 
         ザッツ支那そば!
         なな蓮① 
         シンプルな店構え

照明を落としたモダンな店内。カウンター(18席)しかない。オープンしたのは2013年12月。BGMはジャズ。券売機で「支那そば」(税込み800円)を頼むことにした。今どき「支那そば」とは泣かせる。ウケ狙いの匂いもする。
         なな蓮11 
         いい雰囲気
         なな蓮② 
         メニューの一部

7~8分ほどの待ち時間で、いい匂いとともに「支那そば」がやってきた。ここは無化調が売りで、スープはむろんのこと、麺まで国産小麦をブレンドした自家製。素材のこだわりについてさり気なくあれこれ書かれている。これも今どきの風潮。
         なな蓮⑥ 
         無化調のいい匂い

まずはスープ。醤油ベースの色がどんよりと濃い。脂が浮いている。比内地鶏のガラと魚介の出汁をじっくり煮込んで、秋田の手づくり醤油で仕上げたそう。最初のアタックは「無化調にしては味がやや濃いなあ」だった。だが、すぐにそれがまったりとしたまろやかさに変換した。むしろ淡泊で、奥ゆかしい味わい。出汁が効いていることがわかる。
         なな蓮⑤ 
         スープの深み
         なな蓮⑦ 
         自家製麵
         なな蓮⑨ 
         ま、あがってくんねえ

麺はモチっとしたコシがあり、どこかドロリとした食感。平打ちストレート細麺で、村長がこれまで食べた自家製無化調ラーメンとほぼ同じ味わい。縮れ麺好きの村長には、この無化調のこだわりが敬服はするものの、ややウザったい。むろん好みの問題。

大きめのチャーシューが秀逸。豚ロースとバラ肉の2種類で、どちらも柔らかく、ていねいに作られている。小松菜とネギ、それに海苔がシンプルな味わいを演出している。ボリュームもほどよい。だが、きれいすぎて、村長がイメージする支那そばではない。
         なな蓮⑧ 
         ロースチャーシュー
         なな蓮10 
         バラチャーシュー

「食べログで『ベストラーメン2014』に選ばれた名店」なのは間違いない。だが、日本橋川をクルーズした後ということもあるかもしれないが、ドンブリの中に江戸⇒東京の匂いがしない。支那そばは多分、その下町の庶民的な活気の中から生まれたと思う。洗練を取るか、野暮を取るか、ここは思案のしどころではある。曇天やぎっくり腰のへその位置

本日の大金言

日本橋は徳川家康の入府とともに江戸初期から商業地として栄え、魚河岸や鰹節問屋、呉服屋、刃物屋、和菓子屋などの大店が軒をそろえた。近くには歌舞伎小屋や吉原(葦原)も控え、花のお江戸の中心でもあった。支那そばが登場したのはずっと後の明治・大正以降で、諸説ある。



                  なな蓮12 







プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

最新記事
カテゴリ
彦作のつぶやき
最新コメント
月別アーカイブ
カレンダー
06 | 2016/07 | 08
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31 - - - - - -
最新トラックバック
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR