利根川船下り後のカツ丼

 最近かかわりを持った利根川シンジケートに誘われ、茨城・取手から千葉・佐原まで船下りを体験した。利根川は一都五県にまたがる日本最大級の河川で、江戸時代には高瀬舟が行き交い、明治以降、鉄道と道路が整備されるまで、重要な交通ルートだった。
         利根川下り④ 
         利根川クルーズ

約2時間の川下り。今年3月に旅したベトナムのメコン河ほどではないが、満々たる水量と雄大な景色の素晴らしさにしばし往時をしのんだ。徳川家康が江戸入府後から始めた「利根川東遷事業」は、江戸時代を通じて行われた空前の公共事業で、徳川家康のスケールの大きさに改めて驚かされる。
         道の駅水の郷さわら① 
         利根川グルメ

今回テーブルに載せるのは「道の駅 水の郷さわら」で食べたカツ丼である。ここはJR佐原駅からも近い。佐原は伊能忠敬の出身地で、市内を流れる小野川沿いの景観は江戸の面影が色濃く残り、国の重要伝統的建造物群保存地区にも選ばれている。江戸時代ほどのにぎわいはないが、「小江戸さわら」のキャッチフレーズがダテではないことがわかる。

さて、そのカツ丼。地場の野菜や果物などが並ぶ奥がフードコートになっていて、村長が目を付けたのは「食事処 あやめ」。「母の味」というキャッチフレーズとともに、「林SPFポークかつシリーズ」という言葉に胃袋が反応した。林SPFポークとは千葉のブランド豚で、抗生物質をほとんど使わずに育てた健康豚。その肉の旨さは知る人ぞ知る。
         食事処あやめ① 
       期待せずのはずが・・・
         食事処あやめ1 
         とんかつメニュー

利根川の川風を受け過ぎて、腹の虫がギャアギャア騒いでいた。「かつ丼」(税込み800円)を頼むことにした。フードコートなので期待値はさほど高くはない。お母さんというよりお姉さんと言った方がいい女性スタッフが作り始めるのがわかった。注文を受けてから作り始め、やがて油で揚げる軽やかな音が聞こえてきた。これは案外当たりかもしれないぞ。
         食事処あやめ② 
         カツ丼さま、登場
         食事処あやめ③ 
         いい景色や
         食事処あやめ⑤ 
         美味の予感

待ち時間は17分ほどと長め。お盆に乗ったカツ丼は幅広の漆器ドンブリに納まっていい匂いを放っていた。カツは切れ目が六つほど、ドンブリが大きすぎるので小さく見えるが、よく見るとデカい。溶き卵は半熟で、それがぷるぷるしている。玉ネギがいい色。刻み海苔、それにまん中に紅ショウガがどっかと乗っていた。味噌汁、大根漬け、それに柿付き。
         食事処あやめ⑥ 
         上質のカツ
         食事処あやめ⑦ 
       コロモと柔らかな肉

揚げ立てのカツが思ったよりも秀逸だった。コロモが薄めでサクサク感が残っていて、肉が柔らかい。何よりも脂の部分が適度にあり、それが甘みを帯びている。脂の旨み。肉の厚みは1センチほど。そう分厚くはない。やや薄味の煮汁がコロモからご飯までしっかりかかっている。むしろツユダクで、ご飯の美味さが隠れるほど。だが、その感触は悪くない。
         食事処あやめ⑨ 
         脂身と赤身
         食事処あやめ⑧ 
         ツユダク

ただ残念なのは、紅ショウガ。中央に多めに乗っているために、カツの一部に滲み込み、せっかくの揚げ立ての美味さが半減してしまう。せめて端っこに置くくらいの配慮がほしい。その他がとてもよかったので、もったいないと思う。
         おおまさり 
       今が旬をゲット

その後、おいしいと評判の生落花生「おおまさり」を買ったが、夕方からの宴会で酔っぱらい過ぎて、帰りの電車の網棚に置き忘れてしまった。嗚呼。

落花生星なき空を廻りおり

本日の大金言。

利根川は明治・大正以降、舟運の停滞とともに目だたない存在と化しているが、ウオーターフロントと考えれば、再び脚光を浴びる可能性が十分ある。川の文化が歴史を作ったことを忘れてはいけない。




                 食事処あやめ11 




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酒蔵跡でまさかの「300円カレー」

「日本産業界の父」 渋沢栄一の出身地でもある埼玉・深谷市へ。久しぶりに「深谷シネマ」で映画を見ようと思ったからである。深谷シネマは約310年続いた造り酒屋「七ツ梅酒造」の跡地を再利用した市民シアター。渋い映画を上映している。

是枝裕和監督「いしぶみ」の上映時間まで2時間ほど間があったので、遅めのランチを取ることにした。古い酒蔵の跡地にはカフェや豆腐屋、古本屋、雑貨屋などが暖簾を下げている。古い建物をそのまま再利用したレトロ感がポエムである。平日なので人が少ない。
          深谷シネマカフェ1 
      シネマかふぇ「七ツ梅結房」
          深谷シネマカフェ14 
          廃墟ではない
          深谷シネマカフェ① 
          驚き300円カレー

見るからに廃墟のようなカフェ「七ツ梅結房(ななつうめゆいぼう)」が視界に入った。今どきの小ぎれいなカフェとはまるで違う。「シネマカレー300円」の文字に思わず目を疑った。300円のカレーだって? これは入るっきゃない。
          深谷シネマカフェ④ 
          このレトロ感

すすけた暖簾をくぐると、中は昭和がそのまま佇んでいた。大きな木の古いテーブルに椅子が8つほど。ソファ席とテーブル席もある。奥が厨房になっていて、そこにバンダナを巻いた店主が一人。ひと昔前の永六輔のようなお顔。他に客は常連らしい男性が一人だけ。ゴジラの塩ビ人形がテーブルの上で吠えていた。
           
メニューの中から、この店の目玉でもある「シネマカレー」(税込み300円)を頼んだ。あまりに安いので、コーヒー(200円)も追加した。店主は話しかけると必要最低限だけ答えてくれる。
          深谷シネマカフェ③ 
          メニューも昭和

「300円のカレーライスなんて日本一安いんじゃない?

「そうですか。うれしいですね。このカレーはボクの祖父がその昔、群馬・高崎でレストランをやっていて、その時のレシピを再現したものです。全部手作りです。作り方はおじいちゃんに口止めされているんです(笑)」

店はオープンして4年半になるそう。築百年以上の蔵人の住居をそのまま使っている。それ故にお世辞にもきれいとは言えない。それをまた売りにしているのかもしれない。
          深谷シネマカフェ⑥ 
          名物カレー、登場

10分ほどで、ドンブリに入った「シネマカレー」がやってきた。ステンレスのスプーンがそのままで、カレーライスというよりもカレー丼と言った方がいいかもしれない。濃い黄土色のルーに大きめのジャガイモとニンジン。どこか家庭のカレーライスのよう。福神漬けなど脇役がないのがやや寂しい。
          深谷シネマカフェ⑤ 
          カレー丼?

ルーはこってりとしていて、よく煮込まれている。辛さはさほどではない。特別美味とは言えないが、悪くない味わい。ジャガイモとニンジンが固めで、多分後から加えている。タマネギは溶け込んでいるのか、姿が見えない。豚肉はないかと探したが、ようやく一切れだけ見つかった。シネマカレーだけにミステリー風味が隠し味かもしれない。
          深谷シネマカフェ⑧  
          ミステリー?
          深谷シネマカフェ11 
          豚肉発見

ライスの上にルーがたっぷりかかっているので、ライスはカレーおじやのよう。そのレトロ感は古き良き映画のようで、「シネマカレー」というネーミングにふさわしい。ボリュームは少ない。コーヒーの味も★1つほど。だが、300円と200円という安さがそうした今イチ感を払しょくしてしまう。これはこれでいいのだ。
          深谷シネマ2 
          深谷とうふ工房
          とうふ工房① 
          豆乳プリン
          とうふ工房③ 
          昭和の幸せ

敷地内の別の店「深谷とうふ工房」で、デザート代わりに「豆乳プリン」(税込み250円)を食べることにした。きな粉と黒蜜をかけ、豆腐の香りのするプリンを口中へと運ぶと、幸せ感が広がってきた。水もお茶も用意されていないのは寂しいが、人が少ないことを考えると、仕方ないことかもしれない。地方の疲弊を泉下の渋沢栄一はきっと悲しんでいる。


本日の大金言。

渋沢栄一は明治、大正、昭和にかけて、日本の主要な産業にかかわっている。その範囲は第一国立銀行はむろん、東京証券取引所やキリンビールまで多種多様にわたった。「渋沢財閥」を作らなかったことも評価を上げている理由の一つ。その足元の街のこれからが気にかかる。


                 深谷シネマカフェ13 

下町老舗洋食屋のポークソテー

 東京・人形町から浅草にかけては古き良き洋食屋が多い。それも下町の洋食屋。今回取り上げるのは、その中でも穴場だと思う入谷の老舗洋食屋である。

こう書くと「ははあ~ん、香味屋(かみや)を書くつもりだな」とお思いになる方がいるかもしれない。だが、ウマズイめんくい村は財政事情もあるが、それ以上に足場をB級に置いている。悲しいかな香味屋のような高級レストランは敷居が高すぎる。それに普段着のまま行きたい。
         洋食よしむら 
         下町の良き洋食屋

いかんいかん。もったいぶり過ぎた。本題。もう一つの老舗洋食屋、昭和28年(1953年)創業の「キッチンよしむら」のランチを取り上げることにしよう。日比谷線入谷駅からすぐ、言問通りに面した下町ビルのすき間に二階建ての古い、歴史的な建物が見えてくる。遠くにはスカイツリーも見える。「洋食 キッチンよしむら」の看板と白い暖簾。その外観を見ただけでもここが古き良き洋食屋であることがわかる。
         洋食よしむら① 
         入りたくなる

どこかパリのビストロにも通じる世界。ここも夜(ディナー)に来たら、「香味屋」ほどではないが、そう安くはない。だが、ランチが狙い目で、ごく庶民的な舌代で、ここの売りでもある「ドミグラスソース」を味わうことができる。

店内はやや薄暗いが、カウンター席とテーブル席がこじんまりとある。2階もあり、そこはテーブル席のようだ。カウンターの対面が厨房になっていて、そこにコック帽姿のややご高齢の店主が一人で料理に励んでいた。カツを揚げる軽やかな音といい匂いが流れてくる。女将さんが客席係を担当、つまり二人で店を切り盛りしている。ポエム。
         洋食よしむら② 
         ランチが狙い目
         洋食よしむら③ 
         いいコックがいる

ランチメニューの中から、一番高い(少々見栄を張ってしまった)「C ポークソテー パイナップル添え」(1090円)を頼むことにした。店主がフライパンを動かし始める。客は2階も入れて、5~6人ほどいるようだ。ほどほどの混み具合がゆったりしたいい時間を作っている。

待ち時間は15~6分ほど。丁寧な仕事ぶりが見て取れる。真っ白い磁器皿に見事なポークソテーがじゅうじゅうと音を立てるようだった。厚さは1.5センチほど。思ったよりデカい。その上からドミグラスソースがたっぷりとかかっていた。こんがり焼けたパイナップルが寄り添っている。千切りキャベツとカールのマカロニがいぶし銀の光を放っている。
         洋食よしむら④ 
         ポークソテー、登場
         洋食よしむら⑤ 
         ワオー(ため息)
         洋食よしむら1 
     ドミグラスソースの歴史
         洋食よしむら10 
         脇役の存在

それに盛りのいいライスとみそ汁。まずはみそ汁をひと口。かなり濃いめの赤だしで、具はワカメだけ。ごくフツーの味わい。気を取り直して、メーンのポークソテーへ。これがさすがの味だった。ドミグラスソースは初代(現在は二代目)からの継ぎ足しで、この店の生命線と言っていい代物。初代は浅草の洋食屋でコック修行をして、昭和28年にここに店を出したようだ。ドミグラスソースはその時からのもの。
         洋食よしむら⑥ 
         ガブッと行け
         洋食よしむら⑨ 
       パイナップルの歴史

その思いの詰まったドミグラスソースは赤みが強く、思ったよりも甘め。いい酸味が底に流れている。肉はロース肉で、ドミグラスソースを絡めて食べると、妙に柔らかすぎない肉の歯ごたえとともにいい食感が口中に広がる。焼き加減が絶妙だと思う。脂身を抑えているが、個人的にはもう少し脂身があるとうれしい。
         洋食よしむら11 
         1+1=3

パイナップルを添えるのは古い洋食屋の伝統の一つだが、以前銀座で食べたものよりもボリュームといい焼き加減といい入谷の方が素晴らしい。洋食は下町に限るなあ、と思いたくなる。ただライスは盛りがいいが、それほどの美味さは感じない。みそ汁とともにメーンのポークソテーほどの感動はない。

トイレも古いが、きれいだった。見えないところまで当り前のようにキチンと掃除されていた。まずは古き良き洋食屋をこの舌代で堪能できることに感謝することにしよう。

本日の大金言。

銀座や浅草の人気老舗洋食屋より、ちょいとはずれた場所にある洋食屋は狙い目だと思う。入り口に立つと、その店構えでいい店かどうかある程度わかる。人も店も佇まいに品性が宿ると思う。



                 洋食よしむら12 

「塩羊羹の傑作」を賞味する

 先日煉り羊羹にハマっている話を書いたら、恐るべき食通・ドン圭氏が突然やって来た。手に紙袋を提げている。
「これ、下諏訪に行ったお土産。ちょっと食べてみてよ」

それが信州・諏訪大社門前の老舗和菓子屋「新鶴本店」の塩羊羹だった。明治6年(1873年)創業、塩羊羹と餅饅頭は創業当時のまま、140年以上のこだわりの製法を続けている。暖簾を広げず、そのため下諏訪の本店でしか手に入れることができない。現在は五代目が暖簾を守っている。恐るべき塩羊羹。
         塩羊羹① 
       思わぬ羊羹、登場

これまで塩羊羹と言えば、主に日光などのものを食べたが、「新鶴本店」(しんつるほんてん、と読む)のものは初めて。ドン圭氏の舌と知識にはこれまで何度か驚かされてきたが、今回も素直に脱帽するしかない。
         新鶴本店① 
         真空パックなどしていない
         新鶴本店③ 
         紙の経木
         塩羊羹④ 
         何という色味

若草色の包みを解くと、紙経木が現れ、そこにどっしりとした塩羊羹が横たわっていた。1本950円(税込み)のもので、まずその色に驚かされる。フツーの煉り羊羹の色とはまるで違った。深みのある濃いグレー色。小豆の色ではない。お茶を入れていた村民2号も「これ塩羊羹なの?」と驚きの声を上げた。
         塩羊羹② 
         塩羊羹の元祖

よく見ると、表面がさざ波のように波打っている。これは固める際にできた舟形の模様か、それとも他に理由があるのかわからない。物差しで測ると、長さは15センチ、幅5センチ、厚みは3センチほどだった。伝統的な煉り羊羹の寸法そのまま。
         塩羊羹③ 
         小豆の存在は?

包丁を入れると、うっすらと透明感もある。グレーの中に緑色が差しこんでいるような、何とも言えない色。黒文字でまずはひと口。まったりとした塩味が口中に広がった。ベースの甘みから塩がにじみ出てくるよう。これまで食べた塩羊羹の単調とは違う、素朴で深みのある風味と味わい。ねっとり感はないが、美味、という他はない。塩羊羹がこれほどの味わいとは・・・村長の固定観念を打ち砕くに十分な時間となった。
         塩羊羹⑤ 
       好奇心がむくむく
         塩羊羹⑥ 
         職人の技
         塩羊羹⑦ 
         ま、ひと口

素材が書いてあったので見ると、「砂糖、小豆、寒天、塩」しか書かれていない。小豆なのに、小豆の色がない。ひょっとしてインゲン豆か白小豆を使っているのでは? 疑問が解けない。電話して聞いてみることにした。

「小豆は北海道十勝産のものを使っています。色ですか? 白く見えるのは皮を一粒一粒丁寧に剥いているからです。その作業も創業当時と同じです。塩はフツーの天然塩を使っています。すべて手作業で、寒天は地元・茅野産の天然素材のものです」
         塩羊羹⑧ 
         脱帽どす

若女将だろうか、女性がていねいに答えてくれた。「アクをしつこいくらいに取ること」も雑味を押さえた味わいに仕上げている秘密の一つのようだ。いわゆる小豆の濃厚な風味はその分消えるが、別の味わいが出てくる。

「もしいらっしゃるようでしたら、電話を頂ければ取り置きしときます。毎日作る数が限られているので午後には売り切れてしまうこともありますので」との一言も付け加える。不思議な感動が沸き起こってきた。煉り羊羹の奥の深さ。これは折を見て、下諏訪まで行くっきゃない。ドン圭氏の塩気の効いた意図が村長の目の前に横たわるのだった。闇の中の羊羹・・・。


本日の大金言。

砂糖と寒天が一般化するのは江戸時代寛政年間以降。明治6年と言えば、明治天皇が断髪し、西郷隆盛が征韓論に敗れて、薩摩に下野した年。まだ江戸が色濃く残っていた時代。その年に、諏訪大社の門前で塩羊羹が生まれた。むろん新鶴本店の初代のアイデアと工夫のたまもの。寒天を使った煉り羊羹の世界は予想以上にバラエティーに富んでいる。



                 塩羊羹⑨ 




律儀な赤城牛ステーキ丼

 村民2号の絵画仲間が埼玉・上尾で個展を開いた。村長はポンコツ車を走らせ、上尾駅近くの画廊へ。むろん村長の目的は別にある。赤城牛のステーキ丼である。

赤城牛は赤城山山麓の鳥山牧場で飼育されているブランド和牛で、上州出身の村民2号にとっては故郷に里帰りするようなもの。グルメシンジケートの情報で、すでに西口にステーキ丼の美味い店があることを仕入れておいた。その名も「上尾ごはん」。ローカル色がいい味付けになっているのではないか?
         上尾ごはん① 
    赤城牛ステーキ丼!(上尾ごはん)
         上尾ごはん③ 
         ポエム?

意外に小さな店で、白を基調にしたガラス張りの店構え。店名の下の「赤城牛と土鍋ごはん」の文字がほのぼの感を醸し出している。ちょうど正午過ぎだったので、数人が並んでいた。テイクアウトもしている。中に入ると、白木のカウンター席とテーブル席(2人用)が4つほど。
         上尾ごはん④ 
         きれいな店内

対面が厨房になっていて、イケメン店主が赤城牛を焼いていた。注文を受けてから焼き始めているようで、時間はかかるもののそのスタイルには好感。女性スタッフが一人、その対応がとてもいい。
         上尾ごはん② 
             これこれ

メニューから一番手ごろな「赤城牛ステーキ丼(レギュラー)」(税込み1000円)を選んだ。素材へのこだわりを売り物にしているようで、赤城牛ばかりではなく、米も生産者指定の会津産コシヒカリを使用している。野菜も同じ。それらがメニューに顔写真入りで紹介してあった。ぴったし1000円の舌代とともに、店主はかなり律儀なシェフのようだ。
         上尾ごはん⑥ 
         赤城山ァ~

待ち時間は15分ほど。やって来たステーキ丼は小ぶりの漆器ドンブリにみそ汁とキュウリの塩漬け付き。キュウリが二切れというのはいささか少ない。だが、メーンのステーキ丼は小ぶりのドンブリに見事な赤身のミディアムレアがすき間なく乗っていた。いい匂いが発散している。
         上尾ごはん⑦ 
      ステーキな盛り具合

一つ一つは小さいが、そのボリュームは1000円とは思えない。数えてみたら14切れほどあった。万能ねぎがパラパラと乗っている。赤城牛の直球勝負の気概が伝わってきた。白味噌仕立てのみそ汁をひと口飲んでから、ガブリと行った。
         上尾ごはん10 
         上質な赤身

肉は思ったよりも固めで、噛みごたえがある。醤油ダレが万遍なくかかっていて、土鍋で炊いた会津産コシヒカリとの相性がとてもいい。噛むほどに肉の旨みと甘みが歯の間から滲み出てくる。箸がどんどん進む。
         上尾ごはん11  
       会津産コシヒカリ
         上尾ごはん12 
         どうでっしゃろ?
         上尾ごはん14 
         言葉はいらない

ご飯の量が少なめなのがやや物足りない。だが、食べ終えると、赤城牛の重みが胃袋を満たしていることに気付いた。これはこれでほどよい分量かもしれない。

「赤城と会津だなんて、まるで私たちのようね。私にはちょうどいい量だし、満足度が高いわ」
「でも、あえて言うと、ワサビを付けてほしいね。それだけで全体の味わいがさらによくなると思うよ。それとキュウリが二切れはどうかな。これだけのステーキ丼なのに、細かいところが気になる」
         上尾ごはん13 
         醤油ダレ
         上尾ごはん15 
       こだわってまっせ

「確かに。まだオープンして1年らしいから、これからという部分もあるんじゃないの? 1000円というのも内容を考えると、かなりお得感がある。素材へのこだわりも好感が持てるわ。今度は霜降りステーキ丼を食べてみたいわ」
「そっちは1500円かァ。サブメニューのプチカレーと大人プリンも美味そうだし、また来るっきゃないな」
         上尾ごはん⑨ 
         こだわってない?

「でも、冷静に考えると、上尾で赤城と会津の出会いなんて、ローカルすぎるわ。京都のグルメ先生が聞いたら、きっとグヒヒヒと笑うに違いないわ。お似合いでんなあ、なんて言われそう」
「確かに。この件は京都筋には内緒にしとこう・・・」

「と言って、ネタにするんでしょ?」
「ネタ子は起こすに限る・・・」
「ずっと寝てるくせに・・・」


本日の大金言。

素材へのこだわりを強調する店が増えている。最近の特徴の一つだが、これは善し悪しだと思う。いい老舗は素材について語ることをあまりしない。いい素材を使うのが当たり前だという意識と伝統があるからだと思う。



                上尾ごはん16 







明石名物「たこ飯駅弁」にぞっこん

 台風が来ても食欲の秋、である。行楽の季節到来で、駅弁人気が異様に盛り上がっている。今回ご紹介するのは、東京駅の人気スポット「駅弁屋 祭」で揉むくちゃになりながらゲットした「ひっぱりだこ飯」(税込み1000円)。ウマズイめんくい村制定「隠れ駅弁大賞」有力候補である。
          ひっぱりだこ飯① 
       駅弁のメッカ(東京駅構内)

先日テレビを見ていたら、駅弁特集をしていた。「駅弁屋 祭」の人気ぶりも紹介、その中で人気ナンバーワンが山形・米沢名物「牛肉どまん中」(税込み1250円)だった。駅弁マニアまで登場して、駅弁の隠れた逸品なども紹介していた。

「駅弁屋 祭」はJR東日本の子会社日本レストランエンタプライズが2012年8月に開いた駅弁専門店。常時150~200種類の駅弁を置き、実演販売までしている。駅弁ファンにとってはこの世界の老舗・京王百貨店と並ぶメッカ中のメッカとなっている。村長はその前を何度も素通りしているが、立ち寄ったことはない。へそ曲がりの行列嫌い。
          駅弁屋祭 
      レジの前は大行列

たまたま東京駅で時間があったので、ふとのぞいてみることにした。正午前だったこともあり、混雑ぶりが想像以上だった。「牛肉どまん中」は早くも売り切れていて、人気ランキング上位の駅弁が飛ぶように売れていた。ほとんどが1000円を超えている。コンビニ弁当の安さと好対照。

いつから駅弁がこんなに高くなったのか、こんなに高い駅弁が売れてしまうのか、しかも賞味期限が短いうえに、食品添加物もかなり多い。駅弁ブームの謎を探りたくなる。先日、箱根湯本で買った人気1位・小田原名物「小鯵押寿司」(税込み1030円)の失望がよみがえる。駅弁は嵩上げブームではないか? 
          ひっぱりだこ飯5 
      実力者「ひっぱりだこ飯」

「明石名物 ひっぱりだこ飯」は人気ジャンルの牛肉系駅弁の人混みからやや離れたところにあった。「海鮮駅弁コーナー」の一角。税込み1000円という価格設定とタコ壷をイメージした陶器の器、それに希少な明石ダコを売りにしていることなどが気に入った。外観から只者ではない匂いが漂っていた。客が並んでいないことも村長のへそ曲がりのへそを刺激した。

ウマズイめんくい村に持ち帰って、夕飯のメーンとして賞味することにした。これが当たりだった。和紙仕立ての蓋を取ると、透明なパラフィンがあり、その下に見事な小ぶりの明石ダコ煮(足の部分)が二つ。それに竹の子煮、シイタケ煮、人参煮、菜の花煮が脇を固めていた。
          ひっぱりだこ飯④ 
       何から何まで凄い
          ひっぱりだこ飯⑥ 
          明石ダコ、登場

その下には錦糸卵が敷かれ、さらに炊き込みご飯が控えていた。見事、あっぱれ、ほぼ完ぺき。そんな言葉が浮かぶほどの完成度。缶ビールを飲みながら、まずは明石ダコを口中へ。備え付けの箸もひっぱると伸びるようになっていて、その実用的なアイデアも秀逸。明石ダコのほどよい弾力と醤油と砂糖と酒などで煮込んだ甘みが口中に広がってくる。感心する旨さ。
          ひっぱりだこ飯⑦ 
          タコの王様やで
          ひっぱりだこ飯11 
          炊き込みご飯

竹の子、シイタケ、菜の花、人参の味わいも悪くない。炊き込みご飯が冷たくなっているのに美味い。明石ダコの煮汁も入れているのかもしれない。意外にボリュームもある。穴子のしぐれ煮(こちらはかなり小さい)の姿も見える。タコの影に隠れてはいるが、この炊き込みご飯がとてもいい。
          ひっぱりだこ飯⑧ 
          脇役もマル
          ひっぱりだこ飯⑨ 
          穴子の姿も
          ひっぱりだこ飯10 
          あーん

食べ進むと、丸い練りものが出てきた。かまぼこの一種だが、こうした意外性のある楽しみまで付加している。残念ながら、食品添加物も少々入っているが、このご時世やむを得ないことなのか。
          ひっぱりだこ飯12 
          小さなサプライズ

これほどの駅弁を作る淡路屋は本社が神戸にあり、調べてみたら、明治36年(1903年)創業の老舗だった。「ひっぱりだこ飯」は平成10年(1999年)明石海峡大橋開通記念で作ったもの。

「これで1000円なら納得だわ。フツーなら1080円にするのにそれをしない。ちゃんと職人意識が生きている駅弁屋もあるのね。器から何から気に入ったわ。タコってどこかお笑いネタにされて、マイナスイメージが強いけど、これはネーミングも含めてスゴイのひと言。シャレが効いていて粋だわ。村長もタコ村長に名前を変えれば?」(村民2号)

「そんな・・・ほめ過ぎだよ。田吾作村長ってかい?」
「いいと思うなあ。ぴったし、よ。タコもおだてりゃ舞い上がる・・・」
「ひっぱられだこになっちゃった・・・」

本日の大金言。

駅弁の値段は全体的に高いと思う。駅弁のビジネス化がどんどん進むと、客離れも進むに違いない。名物駅弁には旅情と地場の味が詰まっていなければならないと思う。そこに手づくりの匂いのする職人がいないと単なる「底上げ益弁」になってしまう。



                 ひっぱりだこ飯13 

東京の穴場で「びえい豚カレー」

今回はとっておきの情報をご紹介しよう。東京・有楽町駅前にある交通会館地下。ここは村長の好きな場所の一つだが、最近ここにいい隠れスポットを見つけた。「丘のまち美瑛(びえい)」である。メディアにもあまり載っていないのが実にクールである。
         丘のまち美瑛 
      都心とは思えない

美瑛町は富良野と旭川の中間に位置する丘のきれいな町で、ここはそのアンテナショップとして、2012年にオープンしている。豊富な農作物の中でも特に美瑛産の希少な小豆「朱鞠(しゅまり)」が秀逸で、たまたま買い求め、自宅であんこを作ったところ、色・風味・味わい共に素晴らしいあんこが出来上がった。腕よりも小豆の美味さだと思う。何より、その安さにも驚いた。今年春の時点で、1キログラム500円台だった。これは通常だと500グラム、つまり約半分の価格。スタッフに聞くと、地元と同じ価格で提供している、とか。
         丘のまち美瑛① 
         まさかの値段

むろん、今回もその「しゅまり小豆」を買い求めた。750円にやや値上がりしていたが、それでもかなり安い(現地と同じ価格)。特にあんこ作りが好きな人なら、近くに行った時にでもぜひのぞいてみてほしい。
         丘のまち美瑛② 
         ランチメニュー

さて、本日取り上げるのは、ここで食べた「びえい豚カレー」(税込み800円)。美瑛町のきれいな丘の風景写真が広がるスペースに開放的なカフェコーナーがあり、そこでランチとなった。びえい豚は美瑛町の特産豚で、肉質が柔らかく甘みを含んでいるのが特徴。そのカレー。残念ながらレトルトだが、これが思った以上に美味かった。
         丘のまち美瑛③ 
         びえい豚カレー
         丘のまち美瑛④ 
         ルーがたっぷり
         丘のまち美瑛⑤ 
      トウモロコシ入りライス
         丘のまち美瑛2 
         こってりカレー

見るからに濃厚でこってりしたルーにはびえい豚がゴロゴロ潜んでいた。タマネギやニンジンなど美瑛産の野菜がすっかり溶け込んでいて、複雑な旨味が舌先に残る。タマネギの甘さだろう、甘めのカレーで、スパイシーさは見た目ほどない。辛さよりもこってり感を優先したカレー。
         丘のまち美瑛⑥ 
         びえい豚がゴロリ
         丘のまち美瑛⑦ 
       ま、ひと口

びえい豚は肩肉ではなく「腕肉」を使っていて、表面のうっすらとした脂の乗りと中の赤肉のバランスがいい。それがじっくりと煮込まれているのがわかる。

ライスは美瑛産の「ななつぼし」(特Aランク)で、トウモロコシを加えて炊いたもの。これがかなり効果的。ななつぼしはコシヒカリ系ではなく、むしろひとめぼれ系で、あっさりとした味わい。濃厚なルーと一緒に口中へと運ぶと、絶妙なマッチングとなる。
         丘のまち美瑛⑧ 
       絶妙な組み合わせ
         丘のまち美瑛⑨ 
       コーンライス、うむむ

福神漬けが欲しいところだが、残念ながら、置いていない。その代り(?)、美瑛産のデカめのミニトマトが乗っている。こちらは妙に甘くないのが自然で悪くはない。でも、やっぱり福神漬けは置いてほしいなあ。

全体として、よく作られた本格的なカレーで、ルーはボリュームもたっぷり。ただライスは美味いが、やや少なめなので、大盛りがあるともっとよい。少しずつファンが増えているようで、ソフトクリームなども売れているようだ。だが、村長にとって、ここの魅力は「しゅまり小豆」に尽きる。かようなレベルの高い希少小豆をこれだけ安く置いている場所が東京のど真ん中にあり、あまり知られていないことに驚く。もっとも、あまり知られて欲しくない気持ちもどこかにある。小豆好きの心理は乙女のごとく複雑なんである。

本日の大金言。

東京には盲点がいくつもある。ネットもマスメディアも見逃している盲点。だからこそ、道草とよこみち散歩は面白い。改めて人の行く裏に道あり花の山は至言だと思う。



                 丘のまち美瑛11 

ついに「江戸の羊羹」を食べた

煉り羊羹(ねりようかん)にハマっている。煉り羊羹が出現したのは江戸時代寛政年間(1789~1801)と言われている。日本橋で喜太郎という和菓子職人が、それまでの蒸し羊羹とは違う、寒天を使った煉り羊羹を作り、それが江戸で大評判になった。と言われている。

また別の説では、それより遡ること約200年前、豊臣秀吉の時代に鶴屋善右衛門(その後の駿河屋)が初めて煉り羊羹を作り、秀吉を大いに喜ばせた、とある。このあたりの事情はややこしいので、今回は深くは突っ込まない。これからゆっくりと調べる予定なので、楽しみにしてほしい。

という前置きから、江戸時代の煉り羊羹を食べたという話に移る。すでに佐賀・小城市の村岡総本舗や日光「ひしや」の煉り羊羹は賞味しているが、製法が江戸時代を引き継いでいるとはいえ、どちらも明治維新後の創業。厳密に言えば、江戸の煉り羊羹そのものとは言えない。だが、ここにまさかのサプライズ、が起きた。
          太田甘池堂 
      江戸の煉り羊羹3種

ある会合で、今やメディア界の重鎮となった甘辛酔人が「江戸時代からの秘伝の製法のまま」の煉り羊羹を手土産にしてくれたのである。埼玉・秩父小鹿野に創業が享和3年(1803年)の老舗和菓子屋「太田甘池堂」が存在することは知っていたが、その秘伝の「古代秩父煉羊羹」が目の前にある。それも「本煉(ほんねり)」「田舎(いなか)」「柚子(ゆず)」(各税込み220円)が2個ずつ。台風の中を秩父に小旅行してきたとのこと。「ついでですが、村長にぜひ食べてほしい」とひと言残して月光仮面のごとく去って行った。夢かうつつか、村長は目がウルウル。

「太田甘池堂」は「これから行かねばならぬ和菓子屋リスト第6位」の店だった。以心伝心、何かようかんとはこのこと。翌々日、ウマズイめんくい村で賞味することにした。一刻、江戸にタイムスリップ・・・。極上の玉露を入れ、まずは本命の「本煉」から。何を隠そう、この「本煉」こそが江戸時代から続く秘伝の煉り羊羹なのである。
          太田甘池堂① 
       これが秘伝「本煉」

これが意外や、小豆ではなく白インゲン豆の煉り羊羹だった。空気に触れると、表面が白く結晶化するために、真空パックしている。パックを取ると、白煉りの表面から透明な蜜が滴るようだった。そのなめらかなテカリ。黒文字でススと切ってから口中へ。北海道産インゲン豆の風味とねっとりとした食感が歯のすき間からあふれてくるようだった。やや甘めだが、ほどよい甘さ。村岡総本舗のような表面のヒビ割れもザクっとした歯ごたえもない。
         太田甘池堂② 
      江戸日本橋の香り
         太田甘池堂④ 
       白インゲンだって?
         太田甘池堂1 
     おうよ、知らなかっただとォ?

玉露をズズズと飲んでから、続いて「田舎」へ。柔らかな粒あんがぎっしり詰まった素朴な羊羹で、村長はこれが一番気に入った。最後の「柚子」は「本煉」に柚子を加えた煉り羊羹で、飴色のテカりとほのかな柚子の香りがとてもいい。上質の味わい。
          太田甘池堂⑦ 
          「田舎」のテカり
          太田甘池堂⑧ 
          オオオの世界
          太田甘池堂⑨ 
          小豆の風味

だが、謎も多い。村長は「太田甘池堂」に電話してみた。現在は10代目だが、運よく先代と話すことができた。

「すごい歴史ですねえ」

「当家の2代目が江戸日本橋の『甘林堂』で羊羹づくりの修業をして、秘伝を伝授され、故郷の秩父に帰ってきて、羊羹を作り始めたんですよ。店の名前は一字をもらって『甘池堂』としたんです。それが享保3年のことです。それ以降ずっと同じ作り方をしてるんです」

「白インゲンが本煉とは驚きですね。京都伏見の駿河屋の紅煉(べにねり)も白インゲンに紅色を付けてますね」

ええ、白インゲンを使っていると思います。それこそが当時からの煉り羊羹そのものだと思います」

「『田舎』と『柚子』は後から、ですか?」
          太田甘池堂11 
          「柚子」の上質
          太田甘池堂13 
          飴色の技

「そうです。ウチではここ50年ほどの歴史で、比較的新しいものです。本煉りが江戸からの秘伝の味なんですよ」

「小城羊羹や日光ひしやのように真空パックしないで、竹皮で包んでヒビ割れを出した方が江戸の雰囲気が出るんじゃないですか?」

「買った後に真空パックを外して数日置いてから食べる方もいらっしゃいますよ。そうすると、空気に触れて、同じように表面が糖化するんです。それはお好みで、ということです(笑)」

煉り羊羹は江戸時代、特に文化文政期(1804~1830)に「最高ランクのスイーツ」として人気となった。武家や公家、商人などが主な客だったようだ。庶民のスイーツはまんじゅうや餅菓子。煉り羊羹は戦後、洋菓子などに次第に人気を奪われ、東京・本郷の老舗名店「藤むら」なども先ごろ羊羹づくりをやめてしまった(理由は不明)。だが、ここに来て羊羹の美味さが再注目され始めている。よう食わん、はもうすぐ過去になるはずだ。

本日の大金言。

現在、煉り羊羹と言えば「虎屋」が有名だが、虎屋は元々は酒饅頭で、江戸期まで煉り羊羹といえば、「鈴木越後」や「金沢丹後」「船橋屋織江」などが有名だった。だが、それらは明治維新後、歴史の舞台から忽然と消えてしまった。その消息やいかに?




                 太田甘池堂14 

埼玉で上州?意外な定食

 久しぶりにシバの女王から極秘情報が入った。
「久喜・鷲宮に上州っていう美味い店を見つけたわ。隠れた名店だと思う。きっと村長も気に入るわ」

上州だとォ?上州生まれの村民2号が喜ぶに違いない。だが、肝心の料理内容を聞き逃してしまった。上州料理と言えば、コンニャクか赤城牛か麦豚くらいしか思い浮かばない。多分、その中の一つだろう。村民2号に話すと、「埼玉で上州料理だなんて、気が進まないわ」と乗ってこなかった。
        和食上州 
        埼玉の上州

翌日、シバの女王がその店でランチを食べるというので、便乗することにした。B級シンジケートの一人、聞き耳のキクちゃんも同乗。ポンコツ車をぷかぷか飛ばした。鷲宮神社からそう遠くはない鷲宮2丁目にその「上州」が潜んでいた。住宅街の中。一軒家の和食屋だった。意外な場所にいい店構え。

時刻が正午ちょい過ぎだったこともあり、駐車場は満杯だった。仕方なく周辺をウロウロして時間調整をする。入り口にランチメニューのボードが置いてあり、村長の目は「まだい刺身と鳥から揚げ定食」で止まった。
        和食上州① 
        意外な展開に

村長の予測が完全に外れた。ようやく15分後に暖簾をくぐると、いい料理屋の佇まい。見事な一枚板の白木のカウンター席とテーブル席、それに奥にも座敷がありそうだった。カウンターの奥には白い板前姿の店主が料理作りに励んでいた。隙のない動きで、ここが本格的な和食屋だと理解できた。シバの女王が言った通り、隠れた名店の予感。
        和食上州④ 
        いい雰囲気
        和食上州③ 
        本日のメニュー

テーブル席に案内されて、村長は「まだい刺身と鳥から揚げ定食」(税別770円)頼むことにした。シバの女王と聞き耳キクちゃんは「わらさ刺身とメンチカツ定食(同770円)を頼んだ。

12~3分後、角盆に乗った「まだい刺身と鳥から揚げ定食」がやってきた。注文と同時に揚げられた鳥から揚げはかなり大きめのものが3個、それに見事な真鯛の刺身。真鯛の刺身は皮を残す皮引きで、店主の腕前がかなりのものであることがうかがえた。味噌汁と炊き立てのご飯(盛りがいい)、それに小鉢が2品。
        和食上州⑥ 
        うむむの定食
        和食上州⑦ 
        上空より

これが当たりだった。真鯛の刺身の鮮度と美味さに感心。さらに鳥から揚げが圧巻だった。レモンを絞ってから、熱々をガブリと行くと、コロモのサクサク感と鶏肉のジューシーが口中に広がった。鶏肉は多分モモ肉で、下味がいい料理屋のものだった。かすかに生姜の香り。薄口醤油が繊細に効いている。
        和食上州1 
        真鯛の刺身
        和食上州10 
        板前の腕
        和食上州⑧ 
      秀逸な鳥から揚げ
        和食上州11 
      サクサクとジューシー

定食の基本、味噌汁とご飯も「おもてなし」の心がこもっている。さり気なくフツーに美味いのが好感。ご飯の量が多いので、ダイエット中の人は事前に少なめとお願いした方がいい。かような場所に隠れた名店があることがうれしい。支払いの時に、店主に「なぜ上州?」と聞いてみたら、「私は二代目ですが、オヤジの出身が上州なんですよ。それで屋号にしただけです」とか。なあーんだ、というオチ。
        和食上州⑨ 
        炊き立てご飯
        和食上州12 
        味噌汁

その初代オヤジさんも店を手伝っている。この場所に店を開いて、すでに50年以上経っているそう、約2年前に店をリニューアルしたそうで、話している間にも客がどんどん入ってきた。地元に愛されている料理屋は貴重だと思う。次は村民2号とゴッドマザーを連れてくるっきゃない。「あたしゃあ、酒は冷やがいいよ」天井から赤城おろし・・・じゃなかった、ゴッドマザーの声が聞こえてきた気がした。

本日の大金言。

隠れた名店は意外な場所に確かにある。ネットにもガイドブックにもあまり出ていない。宣伝臭い表面のグルメ情報より口コミの情報。探せばいい店はいっぱいあるかもしれない。教訓。



                 和食上州13 

人気駅弁「小鯵押寿司」の味

箱根食べまくりの納めは、かの有名な駅弁「小鯵(こあじ)押寿司」。箱根湯本駅で「人気ナンバー1」という文字に釣られたわけではないが(ホントは少し釣られた)、明治36年(1903年)から東海道本線・国府津駅で売られている、日本でも有数の歴史ある駅弁。相手にとって不足はない、なんてね。

午後4時前。箱根湯本駅で帰りのロマンスカーを待つ間、村民2号とキオは2個セットの可愛いらしいおにぎりを買い込んだ。昼飯抜きのはずが、我慢できなくなったらしい。今ごろダイエットしたって遅いのに、「村長に乗せられて今度の箱根は食べすぎたわ」などとブツブツ。どうやら地球が丸いのも、猫がニャーと鳴くのも村長のせいらしい。
        小鯵押寿司 
    歴史的駅弁がおいでおいで

村長にダイエットなどは必要ない。「小鯵押寿司」(税込み1030円)と缶ビール(同245円)を買い込んで、ロマンスカーに乗り込んだ。発車と同時に包みを解く。緑色の輪ゴムで止めた駅弁は見た目はいいが、内箱は発泡スチロール製で、見事な鯵の押寿司が8個、それに紫蘇巻きが2個詰められていた。上にラップがかかっている。酢締めにした鯵の銀色と白が旨そうである。
        小鯵押寿司② 
        どれにすっべえか?
        小鯵押寿司③ 
      ついに黄金の時間?
        小鯵押寿司④ 
        上箱を取ると・・・

せめてラップではなく、経木にしてほしいな・・・などというのは単なるノスタルジーかもしれない。缶ビールをガブッと飲んでから、一個目をパクリ。小鯵の押寿司を食べるのは7~8年ぶり。あれれ。相模湾で獲れたという小鯵は厚みがあるのに、期待していた旨みが来ない。酢の強さが鯵の旨みを消し過ぎているのではないか。鯵の脂の甘みも感じられない。銀シャリ酢飯も期待したほどの味ではない。以前食べたときはもう少し感動があったのに、これはひょっとして村長の舌がおかしくなったのかもしれない。
        小鯵寿司 
        ええ景色やのう
        小鯵押寿司⑧ 
     紫蘇巻きもあるでよ
        小鯵押寿司10 
        相模湾の小鯵

「人気駅弁なんてそんなものよ。そもそも期待しすぎる村長がおかしいのよ。舌だってヘンになるわよ」
「おにぎりは美味いわよ。安くて美味い、が一番ね。それにダイエットにもなるし」

ガッカリ顔の村長をからかうように、村民2号とキオが茶々を入れてきた。2人とも悠然とお茶を飲んでいる。村長はあわてて缶ビールを飲み、「この期待外れが駅弁の楽しみでもあるんだよ。最近の駅弁は食品添加物がやたら多い。これも着色料からソルビットまでいっぱい使っている。駅弁業者も大変なんだよ。すべて含めて駅弁なんだよ。食べる方も大変だけど」などと強弁する。ちと苦しいが。
        小鯵押寿司11    
        醤油を垂らすと・・・
        小鯵押寿司12 
        これはイケる・・・
      
ほろ酔いで、醤油をかけてみる。すると、味わいが変わってきた。小鯵は酢締めする前に塩で締めているので、結構味が付いている。だが、醤油の力が魔法のように押寿司全体を引き上げた。醤油は偉大なり

その勢いで小田原を過ぎたあたりできれいに平らげた。紫蘇巻きは具が入っていず、白ゴマもない。だが、単調な鯵押寿司の味わいにいいアクセントをつけてくれる。甘酢生姜で口内をリセットする。しばらくすると、富士山が見えてきた。人生は晴れの日ばかりではない。むろん雨の日ばかりでもない。小鯵だって昔の彼ならず、ということもある。こうして夕暮れ間近、ウマズイめんくい村の食べまくり箱根の旅が「La Fin」となった。

本日の大金言。

全員、体重が約2キロほど増えてしまった。食べることは太ること。いや、食べすぎることは太ること、が正しい。アジの食物連鎖の頂点は人間かもしれない。




                小鯵押寿司13 

タイムスリップ感動「あずきクリーム」

 今回の箱根食べまくり旅で、村長にとって最大の収穫の一つが「あずきクリーム」である。まさかの場所でまさかの世界。

強羅駅から旅館へ帰る坂の途中、昨日は閉まっていた不思議な店が開いていた。時刻は夕方5時近い。「喫茶  旅情」のレトロな看板と「かき氷」の旗。今流行のビジネス優先の作られたレトロではない。時代の流れをシャットアウトしてしまったような店構え。あるいは取り残されてしまったような? 入り口のホワイトボードが村長の好奇心をくすぐった。
          喫茶旅情 
          57年の歴史

「あずきdeコーヒー」(税込み500円)、「あずきクリーム」(750円)、「あずきトースト」(500円)・・・。このメニューは何だ? あんこ大好きの小さなハート(?)がときめいた。ドッキドッキ。
          喫茶旅情① 
          思わず立ち止まる

村長の動きを察知した村民2号がすかさず「私は寄らないわよ」。キオは「面白そうだから、私は一緒に入るわ」。店内はすでに死語となってしまった純喫茶そのものだった。ご高齢の女性店主が一人、こちらを見た。小太りの全身昭和おばさん! 客は他には誰もいない。こういう店は案外当たりかもしれない。見渡すと、あのジュークボックスが現役で置いてあった。キオが珍しそうに近寄って行った。
          喫茶旅情1 
          タイムスリップ
          喫茶旅情③ 
          現役のジュークボックス

「あずきdeコーヒーって何ですか?」
「コーヒーにあずきが付いてるんですよ。ウチのオリジナル」
「オモロイ。あずきクリームは?」
「粒あんの上にアイスクリームを乗っけてる。これもうちのオリジナルです」
「へえー、ますます面白い。小豆は自家製?」
「もちろん。かなりこだわって作ってますよ」
「じゃあそれ、ください」

店は昭和34年(1959年)創業で、隣の「とんかつ里久」(ここは名店)とも関係があるらしい。どうやらそちらはご主人が経営しているようだ。
キオは「アイスクリーム」(450円)を頼んだ。「あずきクリーム」は750円なので、あずき代が300円ということになる。値段もレトロにしてほしかったが、そううまくは行かない。
          喫茶旅情2 
        あずきクリーム、お成り~
          喫茶旅情④ 
          夢の世界
          喫茶旅情⑧ 
       こちらはアイスクリーム

10分ほどで「あずきクリーム」がやってきた。見事な粒つぶ感のあるあんこで、ボリュームもかなりある。その上にバニラアイスクリームがどっかと乗っていた。あまりにシンプルな、素晴らしき世界! キオがおばさん店主からジュークボックスの操作方法を聞いて、100円玉を入れ、「イエスタディ・ワンスモア」をかけた。「知ってる曲がこれくらいしかないわ(笑)」。
          喫茶旅情⑤ 
          言葉はいらない
          喫茶旅情⑥ 
        およしになってえ~

粒あんは濃厚な色で、思ったよりもふっくらと炊かれていた。洗練さはないが、素朴な美味さ。小豆の風味が口中でドドドと広がった。冷たい粒つぶ感とこってり感がたまらない。甘さもほどよく、塩がよく効いている。バニラアイスクリームも昔の素朴な味わい。濃厚な粒あんとの相性がとてもいい。溶け始めたバニラアイスと混じり合う風味豊かな粒あん。不思議な感動がじわじわと体を包み始める・・・。すっかり堪能してから、再びおばさん店主と二言三言。
          喫茶旅情⑦ 
          最強タッグ

「この小豆は北海道産ですか?」
「それが違うんですよ。数年前から丹波の小豆に変えたのよ。ちょっと高いけど、風味がひと味違うので、こっちにしたのよ」

意外なお答え。まさかの坂のまさかのあんこ。京都でも丹波の小豆より少し安めの北海道産を使う店が増えているのに、箱根のかような場所で、貴重な丹波の小豆と出会うとは・・・。隠れたいい店をめっけ、の気分。これ見よがしの宣伝をしていないのも気に入った。

あんこ作りの際のアク抜きについても聞いてみた。
「和菓子を作るわけじゃないし、小豆本来の風味を生かすにはあまりアクは抜かない方がいいと思う。私は一回しかしませんよ」
小豆の風味が強いのはそのせいのようだ。この店に和菓子職人のような洗練さを求めてはいけない。
           旅情1 
    夢の時間はあっという間

カーペンターズの「イエスタディ・ワンスモア」はとっくに終わっていた。「田舎しるこ」も食べてみたくなったが、キオが察知して立ち上がった。「早く帰ろ。豪華な夕ご飯が待ってるわ。楽しみね」明るく言い放った。ダイエットの五文字はいずこへ?

本日の大金言。

まさかの出会いというのも確かにある。路傍の石がダイヤモンドの原石だった、ということだってある。先入観を捨てて、周りを見ることから始めたい。



                大涌谷 

元祖とはひと味違う「あじ丼」

 今回ご紹介するのは面白い「あじ丼」である。彫刻の森美術館でピカソを堪能しすぎたせいか、ウマズイめんくい村の一行約3人の意見がキュビズム状態になってしまった。2日目のランチ。

村長は宮ノ下の「鮨みやふじ」で「元祖あじ丼」を賞味するつもりだった。だが、村民2号が難色を示した。「お寿司屋さんは気分じゃないわ」。キオも「昨日の夕ご飯と朝ごはんがうま過ぎて食べすぎたわ。もっと軽いものがいい」。宮ノ下駅でバラバラ状態。ほとんど再構成不能・・・。
        宮ノ下駅① 
      宮ノ下ランチ騒動?

仕方なく、取って置きの妥協案を出すことにした。宮ノ下駅からすぐの場所にある「宮ノ下食堂 森メシ」である。木の造りの、食堂というより山小屋カフェのようでもある。どこかレトロな雰囲気もあり、箱根の山々の緑が入り口を通して見えた。入り口のメニューボードを確認してから二人がようやく頷いた。

「ここならいいわ。美味いコーヒーもありそうだし」(村民2号)
「ヘルシーなうどんもある。ここにしましょ」(キオ)
        森メシ 
    なぜか大和屋ホテルの看板
        森メシ① 

      宮ノ下食堂「森メシ」

シメシメ・・・村長の狙いはこの店の人気№1「あじ彩丼」(税込み1280円)。あじ丼は止まれない。「鮨みやふじ」と同じように、相模湾の新鮮な鯵(あじ)を使っているのも事前に取材済み。午後2時を過ぎていたせいか、人気店なのにお客は4~5人ほど。ラッキーか?
        森メシ④ 
        おいでおいで
        森メシ② 
        見晴らしがいい

ガラス張りの大きな窓から見える箱根の緑が心地よい。村長は「あじ彩丼」、村民2号は「釜揚げしらす丼」(同1050円)、キオは「すだちおろしうどん」(同930円)を頼んだ。店は2012年4月オープン。地場の鮮度のいい魚と野菜を使っていることを売りの一つにしている。小田原にも支店があるようだ。

厨房でシェフが作り始め、約10分ほどの待ち時間で、「あじ彩丼」がやってきた。味噌汁、キンピラの小鉢、葉唐辛子のつくだ煮が脇を固めている。ドンブリ、皿の趣味も悪くはない。
        森メシ⑥ 
        あじ彩丼、登場
        森メシ⑤  
        絶景かな

あじ彩丼は「彩」という字を入れている通り、賽(さい)の目切りの鯵(あじ)とキュウリ、大根が鮮やかな色でドンブリを覆っていた。頂上にはミョウガと生姜、それにスダチ。ひと目で鯵の鮮度のよさが見て取れた。さらにみじん切りの柴漬けで和えている。面白いアイデア。その赤紫色が彩りにアクセントを付けている。「鮨みやふじ」の元祖あじ丼とは見た目も味付けも違う、オリジナリティーにあふれたあじ丼。
        森メシ⑦ 
      まずはスダチを・・・
        森メシ⑧ 
        次は醤油ダレ

本音で言えば、村長は元祖あじ丼のほうが好みだが、これはこれで悪くはない。鯵の量がかなり多いのも好感。鯵は漬けではないので、醤油ダレの味わいではない。まぶした柴漬けの味がほどよい塩気とともに鯵自体の旨みを引き立てている。キュウリと大根が意外に調和している。ご飯も酢飯ではなく、そのままのご飯。それでもスダチと醤油を加えて食べると旨い。小鉢も手づくりで悪くない。みそ汁も出汁がよく効いている。
        森メシ10 
      これこれ、むふふ

「思ったよりもボリュームがあるけど、釜揚げしらすがとても旨い。見晴らしもいいし、ここは気に入ったわ」(村民2号)
「スダチと大根おろし、海藻がありがたいわ。うどんもまずまず。カロリー的に満足よ」(キオ)
「まあ、85点くらいの満足度かな。ご飯は酢飯にしてほしいな」(村長)

コーヒーを頼む頃には、バラバラだったキュビズムもそれなりに調和が取れていた。やっぱりピカソは偉大だよ。

本日の大金言。

箱根・小田原周辺は鯵(あじ)が美味い。いいカフェやレストランは多いが、美味い地場の鯵に出会えるチャンスは案外少ない。情報も少ない。隠れた名店はもっとあるはずだが。


                  森メシ13 



珍しや「有精卵だし巻き卵サンド」

 お江戸で修業中のキオが合流して、小田急新宿駅からウマズイめんくい村「2泊3日箱根珍道中」がスタートした。よく考えたら、約10年ぶりの三角形の丸い旅。空は青く高い。

「仕事の疲れが溜まってて、箱根でゆっくりしたいわ。温泉も楽しみ」
すっかりレディーになったキオが言えば、絵心のある村民2号も負けじと声を上げた。
「村長のお世話で身も心もぐったりよ。私も癒されたいわ。それに何と言っても岡田美術館が楽しみ」
ロマンスカーの中で、ひとしきり話の花が咲いた。村長は黙ってビールを飲むだけ。
        箱根 
        いざ箱根へ!

だが、「岡田美術館」は不運にも臨時休館中だった。
「ちゃんと調べておかない村長が悪いのよ」
「村長をリコールしなきゃ」
「・・・・・・」

強羅で降り、荷物を旅館に置いてから、少し遅いランチとなった。強羅公園内に今年4月にオープンしたばかりの「サンドイッチ料理 一色堂茶廊(いっしきどうさろう)」へ。旅館で聞いた地元の情報なので、ハズレはないはず。
        一色茶廊6 
     空気がきれい(強羅公園)
        一色茶廊① 
        一色堂茶廊
        一色茶廊② 
        ルネッサンス風

強羅公園自体がフランス式の広大な庭園で、「一色堂茶廊」は見事な噴水池の畔にあった。白を基調にした、どこかルネッサンス風の建築。金曜平日なので、客は5~6組ほど。天井が高く、「東京駅丸の内口にいるみたい」(キオ)。BGMはクラシックとくる。皮肉に言えば、いかにもの世界。
        一色茶廊③ 
      サンドイッチ料理メニュー
        一色茶廊4 
      ここはどこ?わたしは誰?

メニューの中から村長は「自然有精卵のだし巻きサンド」(1100円=税別)を選んだ。有精卵というのも珍しいし、だし巻き卵というのも珍しい。村民2号はダイエット中なので人参とアボカドの「二色サンド」(同800円)、キオは「燻製鶏ハムサンド」を選んだ。それぞれ飲み物(プラス300円)を付けた。安くはないが、箱根でこのリッチな世界ならやむを得ない。
        一色茶廊⑦ 
        有精卵のだし巻きサンド
        一色茶廊⑥ 
        二色サンド
        一色茶廊⑤ 
        燻製鶏ハムサンド

10分ほどで白い磁器皿に乗って「自然有精卵のだし巻きサンド」がやってきた。自然な薄い色のふわりとした焼き加減で、卵の厚みは優に1センチはある。関東風ではなく、関西風のだし巻き。食パンもかなり厚めで、ほんの少しトーストしてある。

「卵は3個使ってるんですよ。有精卵なので、とっても濃厚です。注文を受けてから焼きはじめるんですよ」(女性スタッフ)
        一色茶廊2 
        このボリューム
        一色茶廊1  
        関西風やでェ

マッシュドポテトとキヌア(雑穀)ドレッシング和えが添えられていた。細やかでよくできた構成。だし巻きサンドをガブリと行く。かなりの薄味。食パンには自家製マヨネーズが薄く塗ってある。有精卵の旨みを全面に押し出した作りで、マヨネーズたっぷりに慣れた舌には物足りないほど。薄味の旨み。食パンの美味さもまずまず。
        一色茶廊3 
        旨味が広がる
        一色茶廊12 
        マッシュドポテト
        一色茶廊13 
        キヌアだって?

「私のはヘルシーサンドってところかな。人参とアボカドがホント素のままって感じ。味付けもマヨネーズがほんの少しだけ。でも、野菜もパンもボリュームが凄いわ。ダイエットになるのか心配になってきたわ」(村民2号)
「私の方もボリュームが凄い。燻製の鶏肉と野菜がイケる。でも、ちょっと味が薄いかな」(キオ)

食べ終える頃には岡田美術館休館のショックがどこかへと消えていた。「コーヒーが美味いわ」(村民2号)「水が美味い」(キオ)。切り替えの早さなのか、単に忘れっぽいのか、3人の頭はすでに岡田美術館から次の「彫刻の森美術館」へと向かっていた。

本日の大金言。

「サンドイッチ」ではなく「サンドイッチ料理」とか。箱根の新しい名所になる可能性はある。去年6月に起きた大涌谷の小噴火で、一時休業状態に陥った箱根だが、すでに元に戻っているようだ。外国人観光客の多さも噴火前に戻っている。



                一色茶廊5 

プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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