「舌の迷路」横浜中華街

 久しぶりに横浜中華街へ。主目的はハマのドン、西欧先生ご夫妻とディナーのためだが、せっかくの中華街。早めに行って、「安くて美味い店」を足で探し歩き、それなりのランチも楽しみたい。

横浜中華街には中華料理店だけで226店、その他を入れると約500店舗あり、その店舗密度はアジア最大とか。ここには何度か来ているが、ちょっと路地に入っただけで、中国語が飛び交い、香港か上海の裏通りにいるような錯覚に陥る。舌の迷路。胃袋のイエローマジックオーケストラ。
          横浜中華街② 
      関帝廟(かんていびょう)通り

そこがまた魅力でもある。観光客でにぎわう中華街大通りから少し外れて、裏通りの関帝廟通りに入ってみた。ここにはいい店が並んでいる。ぶら歩きしながら、その一つ「蓬莱閣(ほうらいかく)」に狙いを定めた。あの池波正太郎も通っていた店でもある。
          蓬菜閣 
       見かけは侘びしげだが

北京料理と書いてあるが、実際はその源流、山東料理。昭和35年(1960年)創業で、小さいながら「本格的な山東料理を出し、餃子とチャーハンも美味い」らしい。地道にいい料理を出しているような、やや煤けた店構えが気に入った。
          蓬菜閣② 
          餃子が美味い?
          蓬菜閣③ 
          チャーハンさま

テーブルが六つほど。時間が正午前だったので、お客は半分ほど。「焼餃子」(税込み720円)、「蒸餃子」(同)、それに「チャーハン」(同830円)を頼むことにした。生ビール(小420円)もしっかり頼んだ。
          清風楼③  
          焼餃子の大きさ

約15分ほどの待ち時間で、まずは焼き餃子がやってきた。4個だが、1個がかなりデカい。フツーの餃子の優に2~3倍はある。壁に「不要醤油」と書いてあり、「タレなしでそのままどうぞ」と説明してあった。付けるなら酢とラー油だけ、とも。うむ。
          蓬菜閣1 
          タレは不要だって?

これが当たりだった。皮のもっちりとした食感が只事ではない。具は豚肉、白菜、ネギが中心。しっかり薄味が付いていて、その肉汁と旨味がひと味違った。柔らかな香辛料(五香粉?)がいい具合に効いている。オイスターソースの気配もある。村民2号が「うまいわ。佐野の餃子より本格的ね」と妙な感心の仕方で頷いている。
          蓬菜閣2 
          只事ではない
          蓬菜閣5 
          がぶりと行け
          蓬菜閣12 
          こちらは蒸し餃子
          蓬菜閣4 
          酢とラー油だけ

続いて蒸籠に入った蒸し餃子。湯気が立ちのぼっている。白菜が敷かれていて、こちらも特大が4個。作り方が違うだけで、皮の恐るべきもっちり感と具の絶妙がピッタリ合っていた。酢とラー油を付けて食べると、別の旨みが舌に滲み込んでくる。
          蓬菜閣13 
          肉汁と菜汁
          蓬菜閣⑧ 
          名チャーハン!

ビールで咽喉を潤してから、最後にやって来たチャーハンへ。盛りのよさ、一粒一粒のパラパラ感、すべてがさり気なく上質。以前チャーハンの名店「同發(どうはつ)」で食べたものと遜色がない。値段等を考えると、こちらの方がコスパが高いと思う。
          蓬菜閣10 
          パラパラ絶妙
          蓬菜閣11 
          あーん

その約6時間後、みんなで食べた人気店「山東2号店」は同じ山東料理とは思えないほど、味付けが濃かった。水餃子は噂通り美味かったが。その分、時折り瑞典語も交った会話がいい隠し味となり、楽しいディナーとなったのは言うまでもない。

本日の大金言。

横浜中華街の店選びで注意すべきは、食べログなどの人気は眉唾と考えることだと思う。行列店はスマホ片手が多い。店の対応もいい意味でも悪い意味でも大陸的で、水を頼んでも、持ってこないこともある。スマホ片手の行列店は避けた方が無難と思う。





                        蓬菜閣15 



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三百年前の「そばと栃餅」の味

 大内宿と言えば、会津と日光を結ぶ旧宿場として、約300年前の茅葺きの街並みがそのまま残る歴史的建造物群として知られている。江戸時代初期(1640年頃)に宿場となり、その後、正徳元年(1711年)の大火で、ほとんどが消失、建て直されている。
          大内宿⑤ 
       300年の世界(大内宿)

現在の建物の多くは、その時に建て替えられたもの。それでも300年以上の歴史を持っている。現在残っているのは、茅葺き(かやぶき)33戸で、その他の建物を入れると、44戸もの歴史的建造物が通りの両側に並んでいる。タイムマシンの世界。


会津の帰りに、ランチを取るために、ポンコツ車で久しぶりに立ち寄ってみた。観光客でにぎわっているのは相変わらず。観光化され過ぎて、「ちょっと興ざめ」という声もあるほど。
          こめや① 
          こめや

それでも大内宿は立ち寄りたくなる場所である。いつもは「山本屋」に寄ることが多いが、今回は、その隣こめや」にワラジを脱ぐことにした。入り口の餅やイワナを焼く光景に、村民2号が「今日はここにしない?」と鼻の穴をぴくつかせたからだ。
         こめや⑥ 
         タイムスリップ

「手打ちそばとつきたて餅」の文字がポエム。時間がちょうど正午過ぎだったこともあり、待ち客が7~8組みほど。15分ほどの待ち時間で、囲炉裏のある入り口を抜け、広い座敷へと案内された。山本屋とほとんど同じ開放的な世界。黒光りした天井と梁、それに畳が心地いい。
          こめや③ 
        そばのメニュー(一部)
          こめや④ 
          つきたて餅

メニューから「ざるそば」(税込み850円)をまず選んだ。村民2号も同じもの。さらに目が「つきたて餅」をしっかり捉えていた。その中でも「大内宿名物 栃餅(とちもち)」がぺこりと頭を下げた・・・気がした。きな粉とあんこが一個ずつ。それで550円。

ざるそばは観光地値段だが、栃餅はその作り方の手間ひまを考えると、リーズナブルだと思う。
          こめや⑦ 
          ポエム

この栃餅がうまかった。甘さが控えめなこしあんの風味もよく、青きな粉の風味も素晴らしい。何より栃餅はつきたてということもあるのだろう、その伸びやかさと十分なコシが、舌の上で歴史をささやきかけてくる。
          こめや⑧ 
          あんころ餅
          こめや⑨ 
          こちらがきな粉

フツーの餅に栃の実を加えた栃餅だが、独特の風味が口中から鼻へと抜けていく。何と言ったらいいのか、あえて言うと、硫黄のような匂いがかすかにする。それが意外に面白い味わいになっている。隠し味は300年の風雪の歴史ということか。
          こめや10 
          ざるそば

その後に来た「ざるそば」はグレー色の田舎そばで、悪くはないが、去年、檜枝岐(ひのえまた)で食べた裁ちそばほどの感動はない。地粉9割、つなぎ(小麦粉?)1割だそう。ボソッとしたコシ。ツユは鰹節の出汁が効いていて、どちらかというと辛め。
          こめや13 
          300年の歴史
          こめや15 
          キュウリの塩もみ

「そばは山本屋の方が好きだわ。でも、栃餅がうまい。特にきな粉。栃餅の茶色といい組み合わせになっているわ。きな粉もあんこももう少し量が欲しいけど」

「確かに。そばはどうってことないけど、栃餅はいいね。硫黄のような風味が大内宿、って感じだ。ネギ一本と辛味大根の薬味で食べる高遠そばもあるけど、高いだけで、一度食べればいい。今回は食わずで、正解だと思う」

「財布のひもの関係でしょ。無駄にカッコつけちゃうとこが村長の悪い癖ね」

「武士は食わずに爪楊枝、ネギ一本なんてとんでもない」

「十分食ってるわよ。バッカみたい」

「・・・・・・」

本日の大金言。

大内宿にはおばあちゃんが店先で頑張っている光景が微笑ましい。草餅と豆餅を買ったが、その際の会話のやりとりも面白い。「おつり、なし」という会津弁を久しぶりに聞いた。この場合の「なし」はお釣りがない、という意味ではない。「おつり、です」の丁寧語なのである。幕末に会津藩が京都で苦労した一つの理由に会津弁がある。今では考えられないが。




                  こめや17 

「会津山塩らーめん」の深味

 四国食べまくり行脚の疲れも取れないまま、所用のため、ポンコツ車を駆って会津へ。胃袋がうれしい悲鳴(?)を上げている。

四国も東京もすでに桜が散っているのに、こちらはまだ二分咲き。会津の春は遅い。日本が縦に長いことを改めて実感させられる。「八重の桜」も遠い昔のよう。

市内に着いたのは、予定より早い午前11時を少し回ったところ。まずは昼めし。

「軽いものがいいわ」
四国で体重が2キロほどオーバーしてしまった村民2号が、疲れた声で、暴走しがちな彦作の胃袋に待ったをかけた。
          大一① 
          オープン前だった

思案の末、ワシントンホテルの先にある「麺や 大一(たいいち)」の暖簾をくぐることにした。ところが、時間が早すぎて、まだオープン前だった。それでも客が数人並んでいた。

ここは会津の友人から聞いていた噂のラーメン屋で、特に山塩ラーメンが美味いとのこと。それを思い出した。寒空の下、15分ほど待つと、店が開いた。
          大一② 
          どちらにしようか?
          大一1 
          右奥が厨房

村長は「会津山塩らーめん」(税込み700円)を、村民2号は「地鶏醤油らーめん」(同600円)を頼んだ。

カウンター席の向こうが広い厨房になっていて、そこに初老の店主らしき人が、他のスタッフとともに調理に励んでいた。いい匂いと湯気が店主のさり気ない動きを浮かび上がらせている。この店主、只者ではない。
          大一③ 
       こちらは地鶏醤油らーめん

10分ほどの待ち時間で、「会津山塩らーめん」がやって来た。透明度の高い黄金色のスープ。きれいな脂が浮いている。厚みのある煮豚チャーシューが2枚。極太のメンマが3本。刻みネギ。その下に揺蕩う太縮れ麺・・・。ひと目で気に入った。
          大一④ 
        こちらが会津塩らーめん
          大一12 
          極みの世界?

それらが白い深ドンブリに隙のない世界を作って、「ま、食べてみてくなんしょ」とささやいていた。

黄金色のスープをひと口。最初のアタックで、穏やかで深みのある旨味が口中に広がった。掛け値なしに美味い。
          大一⑥ 
          白金色のスープ

会津山塩とは裏磐梯大塩温泉に含まれる塩を煮詰めたもので、知る人ぞ知る会津のブランド塩。江戸時代は会津藩御用達の塩だったとか。ただの塩ではない。

それが地鶏、豚骨、焼きアゴ、香味野菜などで作った出汁スープに溶け込んでいる。

          大一⑧ 
          たまりません
          大一⑨ 
        チャーシューの存在
          大一10 
          メンマの極み

「ここは当たりね。喜多方ラーメンとは違う味わいで、首都圏に出したら、かなり受けると思うわ。そのくらいすべてが極められている。チャーシューも柔らかさがほどよくて、すごくおいしい。メンマもシャキシャキ感がすごい。塩よりこっちの方が美味いかもよ。ほとんどが自家製というのも好感。化学調味料の匂いもしないわ。ただ麺は私の好みじゃない」

「逆だなあ。麺も素晴らしいよ。もっちり感といい歯ごたえといい、小麦粉の風味といい、かなりのレベルだと思う。麺だけは特注麺だそう。スープを吸い込むのが早いので、早めに食べた方がいい」
          大一3 
          早く食べなはれ

店はオープンして4年になるそう。女性スタッフにそっと聞いてみたら、店主はワシントンホテルの料理長だったとか。それがラーメンの世界に挑戦したらしい。オメーン転身。

そういうことか・・・素材へのこだわり方、作り方が半端ではないことに合点がいった。会津にまた新しい星(年期の入った)が誕生したことを素直に祝福したい。

本日の大金言。

喜多方ラーメンと会津ラーメン。よく似ているが、微妙に違う。「会津山塩らーめん」はそこにシェフの要素が加わっている。会津も少しずつ進化(?)している。キーワードはシンプルの深みと旨味。その目線は全国の名店を捉えているはずだ。




                 大一11 




本場の「鰹塩タタキ」と「鰹めし」

 四国上陸のもう一つの目的が「鰹(かつお)のタタキ」、である。本場・高知市内を歩くと、あちこちに「鰹タタキ」のメニュー板が見える。クジラやウツボのタタキなどもあるが、土佐の本命はやはり鰹、だと思う。比較的安いというのも心強い。

秋の戻りガツオが脂が乗って一番おいしいと言われるが、春のこの時期の上りガツオも幾分さっぱりしているが、本場物はひと味、いやふた味ほど違うはず。数時間前から頭の中は鰹とビールがぐるぐる泳いでいる。
          はりまや橋 
          はりまや橋の夜

はりまや橋近くの安ホテルに荷物を置いて、外に出る。すでに夕闇。どこか黒潮の匂いがする。坂本龍馬の影も伸びている・・・気がする。アーケード商店街周辺をウロウロ、帯屋町を行ったり来たり。店構えなどから、鰹料理の店数軒を値踏みする。

その中で、地元客が次々と入っていく居酒屋に目星を付けた。たまにハズレることもあるが、長年培ったセンサーがピコピコ。それが「土佐の居酒屋 一本釣り」だった。たまたま出てきたオヤジに聞いてみると、「ここがこのあたりじゃ一番だよ。あんた、いい勘してるよ」。
          一本釣り 
          センサーがピコピコ

階段を上って二階へ。広い座敷とテーブル席。ほぼ満員だった。隣の団体は高歌放吟状態。よく言えば土佐いごっそうの活気。こう来なくっちゃ。
          一本釣り② 
          みんな食べたい
          一本釣り① 
          メニューの一部

すぐにビールを頼み、「本日のおすすめ」の「鰹塩タタキ」(税込み980円)をまずは頼んだ。元気のいいお姉ちゃんスタッフがバタバタと走る。「ちょっとうるさいわね。でも、これが土佐なのね」と村民2号がうなずく。
          一本釣り10 
          黒潮の活気

この「鰹塩タタキ」が予想通り絶品だった。醤油ダレよりも塩、がおすすめ・・・メニューにそう書いてあった。

「塩タタキは土佐の漁港から直送の鰹でないとダメなんですよ。鮮度が違います。それをワラで炙って、冷水で〆る。それを分厚く切って、ニンニクで食べるんです。これが本場の食べ方です。まあ食べてごらんなさい」(高知出身の編集者)
          一本釣り2  
          塩タタキに限る

その言葉を思い出した。上りガツオは5切れだが、一切れの厚さが2センチ近くある。表面の焼き加減と中の赤身の鮮やかさ。薄っすらと脂が乗っていて、ひと目でスグレモノだとわかった。見た目からして、いつもスーパーなどで買うものとは明らかに違う。
          一本釣り⑤ 
          わさびとニンニク
          一本釣り1 
          厚みと藻塩

薄切りのニンニクが豪快に置かれ、藻塩とワサビが小さな山を作っていた。それを付けて口中へ。つい目を閉じて黒潮を想う、絶妙な美味さ。この脂の乗りで上りガツオとは・・・と思ってしまった。鮮度のいい旨みと甘み、柔らかな肉質。ニンニクと塩とワサビが一体となって、怒涛の寄り。これでこの美味さなら、戻りガツオは? こちらも戻り客になりたいぜよ。
          一本釣り⑧ 
          柔らかな美味
          一本釣り⑦ 
          たまりませぬ

隣りの客のクシャミが気になったが、酒がすすんでくると、気にならなくなった。地酒を頼み、肴をつついていると、あっという間に時計の針が9時を回っていた。

村民2号が「おむすび」(2個380円)、村長が「鰹めし」(500円)で〆ることにした。

「おむすびは想像よりずいぶんデカいわ。土佐サイズってとこかな。鮭と梅干しだけど、結構うまい。土佐が好きになって来たわ」
          一本釣り12 
          鰹めしで〆
          一本釣り14 
          煮汁のめし
          一本釣り15 
          鰹がドカドカ

鰹めしは漁師の賄い飯(まかないめし)だと思うけど、カツオの甘辛煮が生姜が効いていて悪くない。ご飯もその煮汁で炊いたもの。もう少し甘さを押さえた方が好みだが。でもおこげがいいね。海苔と万能ねぎもいい。だけど、腹がきついぜよ。ギブアップ。龍馬といい弥太郎といい、あのバイタリティーはこのあたりから来てるのかな。でも、だんだん腹が立ってきた。板垣退助も土佐藩だった」

「わあ~もう打ち止め。会津の足軽の末裔の血が騒いできたのよ。戊辰戦争の恨みなんて言わないでよ。白旗上げたんだから。早く会計しましょ。ホテルに戻りガツオしましょ」

何が薩長土肥だ、官軍だ。テロリストの詐欺集団じゃないか~」

そう大声でわめくつもりが、なぜか声にならなかった。勝てば官軍、負ければ賊軍。ぐやじい。トホホ・・・。

本日の大金言。

鰹は止まった瞬間がそのまま死である。鰹のように生き、カツオのように死ぬ。鰹のタタキが美味いのは、その死生観が舌の上で交錯するからかもしれない。冷凍したら味が一枚落ちるのも、きっとそのせいだ。鰹は黒潮のナマに限る。




                  一本釣り16

道後温泉の「わっぱ弁当」

 道後温泉に浸かって旅の疲れやあれこれを落とそうと、愛媛・松山へ。今回テーブルに乗せるのは、道後商店街の名物「坊ちゃん団子」・・・ではない。元祖の店「つぼや菓子舗」にも行ったが、食指が動かなかった。観光用に見えたことも一因かもなあ。
          道後温泉本館4 
          ああ道後温泉本館

道後温泉周辺はいい町並みで、中心に位置する道後温泉本館には、赴任中の夏目漱石も毎日のように通っていたようだ。ノイローゼ気質の漱石を源泉が癒したのかもしれない・・・いけねえ、脱線しそうになっちまった。
           
その本館の温泉に浸かる前に食べたランチを書くつもりだった。遅いランチ。商店街の一角の足元に木の案内板がさり気なく置かれていた。「IRORI」と書かれ、ふと見ると、何やらモダンな和風の世界。細い石畳のアプローチが続いていた。それが「サムライダイニング 炉(いろり)」だった。降り続いていた小雨はすでに治まっていた。
          イロリ① 
          おおおの看板

今どきの和のモダンの延長線上にある店だろうな。そう思いながら、メニューを見ると、「わっぱ弁当」(880円=税込み)とあり、もう一つの鯛めしの文字が。まさか、あの鯛めしが? 手ごろな舌代に少し心が動いた。

黒い板塀と敷石が続く細いアプローチを先客の女性が行く後ろ姿もよかった。ついヨロヨロ・・・現金なものである。
          イロリ1 
          細いアプローチの先

この鯛めし入りのわっぱ弁当が当たりだった。店の造りが凝っていて、躙り口(にじりぐち)をくぐると、囲炉裏のテーブルがいくつかあり、グラビアに出てきそうなモダンな和の世界が広がっていた。照明を効果的に落としていて、外国人観光客が喜びそうな凝った造り。BGMはなぜか「スタンド・バイ・ミー」。
          イロリ③ 
          グラビアの世界?
          イロリ2 
          メニューの一部

「今どきモダン」も捨てたものではない。注文してから10分ほどで、「わっぱ弁当」がやってきた。昆布出汁のよく効いたお吸い物付き。それをまずはひと口。うま味。「これは案外イケるわ」と辛口の村民2号もうなずく。
          イロリ④ 
          凝ってまんなあ
          イロリ⑤ 
          おおおの中身

わっぱ飯は鯛の刺身を使った宇和島の鯛めしではなく、薄味の炊き込みご飯。鯛の身は多くはないが、昆布出汁が効いていて、まずまずの味わい。
          イロリ⑥ 
          めっけもん?
          イロリ3 
          鯛の炊き込み
          イロリ⑧ 
          地鶏のから揚げ
          イロリ10 
          キッシュさ~ん
          イロリ⑨ 
          練り物の赤シャツ?

具がバラエティーに富んでいて、こだわりが見て取れた。地鶏の半熟ゆで卵、地鶏のから揚げ、キッシュ、豆のサラダ、それに練り物、さつまいもまで。うむ。

「この値段を考えると、これは予想以上ね。ボリュームもちょうどいい。女性を意識した造りだわ」
「調べてみたら、松山を中心にした飲食グループ、サムライダイニングの新しい店のようだ。今どきの外側だけの店かと思ったけど、中身もかなりレベルが高い。デザートまで付いていて、その白玉のきな粉和えも美味。これで880円なら、満足だな」
          イロリ12 
          当たり、でおました

「坊ちゃん団子を食べなくてよかった?」
「いや、やっぱり温泉に浸かってから、坊ちゃん団子を買いに行く。外面だけで判断してはいけない。そう思い直したよ」

「結局、安上がりじゃなくなるわね」
「ノイローゼになるよりマシじゃないかな」

「はいはい、またその手ね。理屈は後からついてくる」
「その手は食わぬ、ではなく、その手は食えってこともある」
「バッカみたい・・・」

本日の大金言。

愛媛の鯛めしは二通りあり、宇和島は刺身を使い、タレも醤油ベース。もう一つは鯛の炊き込みご飯。どちらも舌代は安くはない。同時に二つを楽しもうとすれば、夏目漱石(旧千円札)が何枚も必要になる。ちと苦しいかな。




                  イロリ11 



「炙り〆鯖の棒寿司」の夜

 今回テーブルに乗せるのは鯖寿司(さばずし)、である。ただの鯖寿司ではない。

炙り〆鯖(あぶりしめさば)の棒寿司・・・形容詞が二つも付く。四国・高松市の料理屋で見つけたもの。地元のオッサンから教えてもらった情報を頼りに、日本一長いアーケード商店街をぶらりと散策しながら、ようやくたどり着いた。磨屋町の一角。
          ひら井① 
          父帰りたい?

すっかり日が暮れていて、「酒とめしの ひら井」の看板と白地の暖簾が灯りで浮かんでいた。いい風情だが、どこか今どきのモダンな和の世界。鯖寿司と言えば、京都の「末廣」や「いづ重」があまりに有名だが、その歴史の浸みこんだ店構えとは比べようがない。つまりは今どき。
          ひら井 
          いい店構え

だが、地元のオッサンのせっかくの情報。それにパッと見にはいい料理屋。ビジネスマンや旅行者が好みそうな店構えで、中に入ると、モダンな和の世界そのもの。BGMもモダンジャズ。嫌いな世界ではない。

生ビールと地酒の特別純米「大瀬戸」(1合890円)をまず頼んだ。ここで村民2号が「サラダを食べたい」と第一声。「自家製ギョーザ」(税込み500円)と「旬野菜の玉葱ドレッシングサラダ」(同680円)をひとまず注文。


          ひら井④ 
          メニューの一部
          ひら井⑤ 
          秀逸なサラダ
          ひら井⑥ 
          自家製ギョーザやで

このサラダがボリュームといい、鮮度といい、文句のつけようのないものだった。高松の料理のレベルはかなりのものと確信した。ギョーザも小ぶりだが8個もあり、絶品とまでは言えないが、まずまずの美味さ。
          ひら井2 
          おおの安さ

店に入った時から気になっていた炙り〆鯖の棒寿司」(同1280円)を頼んだ。一匹丸ごと使った鯛めしも食べたかったが、予算の関係で断念。

この「炙り〆鯖の棒寿司」が舌代を考えると、想定を超えていた。
          ひら井⑦ 
          ヨダレが出かかる

全部で8切れ。酢で軽く〆られた鯖は厚みが十分にあり、表面が炙(あぶ)られている。見るからに脂も乗っている。だし醤油につけて食べると、鯖の甘みと酢飯の甘みが押し寄せてきた。

酢飯は柔らかめで、もう少し固めの方が好きだが、悪くはない。

味わいの深みという点で、京都の名店の鯖寿司とは横綱と小結ほどの違いはあるが、1280円という安さを考えると、これは特筆ものだと思う。大雑把にいうと、京都の半分以下の舌代。満足度は五分の三くらい。
          ひら井⑧ 
          この厚み
          ひら井10 
          ガブッと行け
          ひら井⑨ 
          醤油の存在

この店は昭和59年(1984年)高松を拠点に産声を上げ、今では神戸にも店を広げていることもわかった。

「それなりにいい雰囲気で、それなりにいい料理を食べ、それなりに財布も軽くなる。高松の夜に乾杯だわ」

「高松はあの菊池寛の出身地でもある。近くには菊池寛通りもあるんだ。天下の文藝春秋社は元々は彼が作ったもの。又吉も恩田陸も彼がいなかったら、誕生していなかったかもしれないぞ」

「ベッキーだって、あそこまでいじめられないで済んだってこともあるわよ」
          ひら井② 
          地酒が進む

「菊池寛の偉大さを想いながら、鯖寿司を食べるってのも悪くないな」

「父帰る。父帰らない・・・」

「父と乳はコインの裏表。乳も帰って来てほしい・・・」

「くっだらない! そんなことしか言えないの? 村長を〆鯖にしたくなってきたわ」

低レベルのチチ・・・いやオチになってしまった。申し訳ない・・・。

本日の大金言。

瀬戸内海を要する香川県は美味しいものの産地。さぬきうどんばかりではなく、魚介類の宝庫でもある。菊池寛ばかりでなく、空海や平賀源内、宮武外骨もこの風土から生まれている。




                  ひら井4 





「究極の讃岐うどん」90分待ち

 とうとう讃岐うどんの本場・四国高松市へ。よく考えてみれば、何という散財、何というぜい沢。昔も今も馬鹿につける薬はない。

まずは高松駅前のレンタカー屋で情報収集。かなりのツウのようで、あれこれ名前を挙げた後、「有名店は一杯あるけど、今、讃岐の中でも指折りの店はそうだなあ」と言いつつ、ガイドブックにあまり載っていない店を教えてくれた。地元客もよく行く店とか。
          もり家 
          究極の名店か?

それが香川町の郊外にある「本格手打ち もり家」だった。車で30分ほど走らなければならない。四国食べまくりの旅の幕開けにふさわしい。

古びた一軒家。午後2時近いというのに、行列ができていた。それもただの行列ではない。店の前から奥までざっと50~60人くらいが二重三重に並んでいた。何という誤算。
          もり家① 
          ありゃら大誤算・・・

村民2号が口をあんぐり。高松市内に戻ろうか、迷っていると、目の前のうどん通らしき若者二人が「ここは並んでも食べる価値がありますよ。ボクらは一時間くらいは待つ覚悟です」。うむ。頭を切り替えて、覚悟を固めることに。

結局、1時間どころか、1時間半ほど曇り空の下で待つハメになってしまった。
          もり家1 
          いい雰囲気
          もり家2 
          いいメニュー

さて、問題の中身。頼んだのは「ぶっかけうどん」(冷=中盛り1.5玉 税込み440円)とちくわ天、半熟玉子天(それぞれ140円)。村民2号は同じものを普通盛り(1玉 税込み350円)。つゆは温を頼んだ。ここはセルフではなく、テーブルまでスタッフが運んでくれる方式。
          もり家⑤ 
          立ち上がる香り
          もり家4 
          こだわり
          もり家③ 
          天ぷら二品

レンタカー屋の情報はフェイクではなかった。深めの大きなドンブリに横たわったうどんはかなりの太め。だが、エッジが立っていて、姿自体が美しい。藤沢周平作品に出たときの檀れいのよう。薬味は生姜と万能ねぎ。

それが鰹とイリコ出汁のつゆに浸っていた。
          もり家⑥ 
          これぞさぬき
          もり家⑦ 
          手打ちの凄味

つるりとした食感と噛むごとにもっちりしたコシが尋常ではない。村長がこれまで食べた讃岐うどんの中で、最高峰は東京・人形町「谷や」だが、それに匹敵するか、超えていると思うほど。

つゆはかなり薄口だが、出汁がゆるやかに効いている。うどん職人の姿が見え、その仕事ぶりも隙がない。

ちくわ天と半熟玉子天は期待したほどではないが、カラリと揚がっている。藻塩を付けて食べると、美味。
          もり家7 
          藻塩で食べる
          もり家⑨ 
          半熟玉子天

「うどんがおいしい。食感が凄くて、これまで食べた讃岐うどんが嘘みたい。でも、いくらなんでも1時間半待ちはないわ。スタッフの対応はとてもいいけどね」
「そうだね。もう一度来たいかと聞かれたら、一度で充分と答えるよ。せめて待ち時間は30分以内だよ。そしたらまた来たい」

「ここの店主はNHKの『プロフェッショナル 仕事の流儀』にも出たらしいわ。つまり凄腕、ってこと。それ以来、客が増えたらしいわ」
「NHKも余計なことをしてくれたもんだ。創業が平成13年というから、まだ15年ほどの歴史しかない。で、この繁盛ぶり。老舗としてガイドブックにあまり載っていないのはそのせいかな」
          もり家10 
          職人の技

「並盛で充分なボリュームよ。村長は中で1.5玉でしょ。食べ過ぎじゃないの?
「確かに。お腹はパンパンだよ。ここの名物は特大のかき揚げだけど、それも頼んでいたら、もう倒れていたかも(笑)」

「檀れいがいくらきれいでも、食べすぎはダメよ。ほどほどが肝心てとこね」
「スタートから、ため息が出てきたよ・・・」

本日の大金言。

讃岐うどんの食べ歩きは体力も必要と痛感。食道楽の道は険しい。たかがうどん、されどうどん。食べないのも地獄、食べすぎるのも地獄。されど強欲の日々・・・。



                  もり家11 



女性の多い不思議なランチ処

 埼玉・久喜にある「鷲宮神社(わしのみやじんじゃ)」は、関東でも有数のパワースポットでもある。出雲大社につながる「関東最古の大社」として、神代の昔からこの地に伝説を築いている。

近年はアニメ「らき☆すた」の舞台にもなり、オタクのメッカとして注目されたりもした。今年2月、若くして亡くなった翻訳家・画家・ライターの片岡みい子さんも度々この神社を訪れている。
          鷲宮神社③ 
          鷲宮神社の桜

ここの桜も素晴らしい。ポンコツ車で久しぶりに参拝してから、もう一つの目的であるランチを取ることにした。

「前から気になっていた店よ。とにかく女性客が多いらしい」

村民2号の友人の情報で、好奇心剥き出しでポンコツ車を止めることにした。鷲宮神社から1キロも離れていない。
          ホオバル① 
          レストラン?

まず外見にオオオとなる。どこかイタリアかスペインあたりの宮殿のよう。そこに「HOUBAL(ほうばる)」の店名が浮かんでいる。

「もともとコンビニがあったとこよ。それを改装して、去年8月にオープンしたらしいわ。あっという間に女性客の心をとらえて、今では待ち時間の長い人気店になった。料理はイタリアン系かな」
          ホウバル③ 
          厨房もオシャレ

午後1時過ぎだというのに、確かに若い主婦(?)が多い。10分ほどの待ち時間で、中に案内された。今どきのシャレた店内は意外に広く、テーブル席と小上がりに別れている。開放的な厨房にはイケメン料理人が2人ほど。
          ホウバル② 
      ランチメニューの一部

ランチメニューの中から、村長は「ハンバーグ」(Aセット=サラダ、前菜、ドリンク付き 税別1000円)を頼むことにした。ソースはデミグラスなど3種類の中から粒マスタードクリーム」を選んだ。村民2号は「チキングリル」(きのことバルサミコソース)。ドリンクは食後にコーヒーを頼んだ。

10分ほどの待ち時間で、サラダ、ハンバーグの順でやってきた。サラダは鮮度も自家製ドレッシングもいいレベル。
          ほおばる 
          サラダと前菜(タパス)
          ホオバル⑤ 
          ハンバーグ!

ハンバーグは鉄製の小さなフライパンの上でジュウジュウと音を立てている。つまり鉄板焼き。とろけるチーズが盛大にかかっていて、パセリと香辛料の赤い実が彩りを添えている。マッシュドポテト付き。悪くないビジュアル。
          ホオバル⑥ 
          いい匂い
          ホオバル④ 
          マッシュドポテト
          ホオバル⑧  
          ビーフの量

これが思った以上に美味さだった。粒マスタードクリームの辛味と酸味が効いていて、ハンバーグの柔らかな食感を引き立てている。
          ホオバル⑨ 
        粒マスタードクリーム

ボリュームは女性客を意識してか、ほどよい量だが、ハンバーグの肉汁が広がると、店の雰囲気とともにちょっとおしゃれな気分になってくる。オレは田舎のプレスリー? BGMはどこか地中海風。

「チキングリルはバルサミコソースの甘酢っぱさがとてもいいわ。全体として、女心をくすぐる構成と味わいということかな。アジアンカフェレストラン『CHITA CHITA』と同じ経営らしいわ。でも『CHITA CHITA』よりこっちの方が全然美味しいわ」
          ホウバル④ 
        こちらはチキングリル

「アジアンよりもイタリアン系の方が女心をくすぐるのかな? ホウバルという店名も面白い」

「口に入れるほうばるとバル=居酒屋をくっ付けた造語らしいわ。店構えから料理まで人気の要素をすべて融合させたという感じね」

「確かに。ピコ太郎のPPAPもびっくりのくっ付け方だよ。八百万の鷲宮神社の神様も驚いてるかもなあ・・・」

本日の大金言。

女性客が多い店にハズレは少ない。鷲宮神社にはあらゆるものを吸引する不思議な力があるようだ。その大きな手のひらにウマズイめんくい村も乗っている。伊勢神宮より出雲大社系。



                 ホオバル11 




駅ナカパン屋カフェのランチ

 エキナカは便利な止まり木。中でも、小さいながら、JR久喜駅構内にあるパン屋はよく利用する。焼き立てのパンだけではなく、カフェコーナーもあり、電車の接続が悪いときなどはここで時間つぶしをすることも多い。
          フレッシュカフェ 
          駅の楽しみ

本日テーブルに乗せるのは、その「オーブンフレッシュカフェ」の味わいである。ちょうどランチタイム。東京に行く用があり、だが時間がない、待ち時間が20分ほどある。いくつか店があるが、「オーブンフレッシュカフェ」が一番の贔屓(ひいき)。調べてみたら、あのヤマザキの子会社だが、安くてそれなりに美味いというのが何よりの魅力だと思う。
          フレッシュカフェ② 
       焼き立てのパンがズラリ

焼き立てのパンや出来立ての惣菜パンが何種類も並んでいて、その中から、「チキン南蛮バーガー」(単品税込み290円)と「久喜あんぱん」(同170円)を選んだ。コーヒーとセットにすると、さらに安くなる。合計580円なり。これは有難い。
          フレッシュカフェ④ 
          ええのう
          フレッシュカフェ③ 
          久喜あんぱん

カフェコーナーはいつも賑わっていて、この店が繁盛していることがわかる。まずはチキン南蛮バーガーから。「温め直しますか?」スタッフのひと言で、忙しい時間が少しリッチになる。
          フレッシュカフェ① 
          カフェコーナー
          フレッシュカフェ⑤ 
          本日のランチ

チキンのから揚げを甘酢に漬け、レタス、千切りキャベツを乗せ、それにタルタルソースがたっぷりとかけられている。チキンのから揚げは2個。ガブリと行く。バンズは焼き立てのパンが柔らかく香ばしい。
          フレッシュカフェ⑥ 
          チキン南蛮バーガー
          フレッシュカフェ⑨ 
          折り返し点

チキンのから揚げはコロモが厚く、やや凡庸だが、それを補うだけのボリュームがある。タルタルソースはほとんどマヨネーズで、それなりの味わい。バンズの美味さが欠点を補っている印象。

久喜あんぱんへ。以前はこしあんと小倉あんがあったと思うが、今回は小倉あんだけ。パン生地も中のあんこもボリュームがかなりある。
          フレッシュカフェ2 
          名物あんパン
          フレッシュカフェ4 
          このボリューム
          フレッシュカフェ3 
          焼き立てのパン

小倉あん(つぶしあん)は甘さを抑えていて、それがいい効果を生んでいる。焼き立てなので、美味さが加味されている。質的にはフツーのレベルだが、あんこの量には満足。あんパンはこうでなくっちゃ。コーヒーで口の中をうるおしながら、久喜あんぱんを食べ終えると、あっという間に新宿湘南ラインの時間が迫ってきた。

あわただしく席を立つ。この止まり木感覚がとてもいい。パンを焼くいい匂いと活気に背中を押される。JRの民営化からちょうど30年経ったばかり。民営化には光と影、両方あるが、こと食に関しては楽しみが増えたことは事実だと思う。

本日の大金言。

駅には様々な人生が交差する。ほとんど交わることのない人生が、毎日乗降客分すれ違う。宇宙の中の、太陽系の中の、地球の中の、たまたまのたった一点に過ぎないが、何という奇跡的なすれ違いだろう。あんパンとコーヒーの出会いもまた。


                  フレッシュカフェ8 


辛さを調節できる「武州うどん」

 先週末は最悪だった。優雅に花見三昧のつもりが熱発。仕方なく土日の花見をドタキャンしてしまった。花に嵐のたとえもあるぞ、そのまま。体温計を脇の下に差しこんで、テレビで上野公園の酔狂ぶりを指をくわえて見ることになろうとは・・・ぐすん。

そのため予定していた食べまくりができず。で、今回は熱発前に行った武州うどんの名店をテーブルに乗せることにしよう。
          えんや 
          利根川沿いの名店

埼玉の北部・羽生から利根川沿いに熊谷方面(県道59号線)へポンコツ車をぷかぷか。行田市下中条あたりで、「うどん」の幟(のぼり)が数本、利根川の川風にパタパタと吹かれていた。

見た目は質素な一軒家で、「自家製うどん えんや」の大きな屋号が建物の半分近くを閉めていた。質素な目立ちたがり屋、というのもある。
          えんや① 
       シンプル・イズ・ベスト

埼玉では「武州うどん」の名店として、知る人ぞ知る店である。オープンして5年ほどになる。

店内に入ると、コの字型のカウンター席と壁に張られた手書きのメニューが目に入った。20席ほど。メニューの中から「辛味肉汁うどん」(並 税込み730円)を頼むことにした。
          えんや④ 
          武州のシンプル
          えんや③ 
          メニューの一部

感じのいい女性スタッフが「うどんのボリュームが結構ありますよ。並で600グラムあります。小盛りで450グラム。普通の店の並みくらいありますが」と親切に教えてくれた。うむ。小盛り(50円引き)に軌道修正した。熱盛りにしてもらう。

武州うどんの明確な定義はない。強いて言えば、このあたりの地粉を使った田舎うどん。ここも国産の小麦粉を2種類ブレンドさせている。「ゆでるのに少々お時間がかかります」とかで、15分ほど待たされた。出汁にもかなりのこだわり方が見て取れ、これは期待できそう。いわくを書き過ぎているのが、少々残念だが。
          えんや⑤ 
        これで小盛りとは

熱盛りのうどんと辛味肉汁が湯気を立ててやって来た。うどんは素朴なクリーム色で、思ったほど太くはない。辛味肉汁は豚バラ肉、油揚げ、長ネギが浮かんでいて、ラー油が薄っすらと膜を作っていた。
          えんや3 
          自家製手打ち
          えんや⑧ 
          豚肉も多い
          えんや⑨ 
          あーん

自家製うどんを肉汁にくぐらせて食べる。甘酸っぱい醤油ベース。フツーに美味いが、思ったほどの辛さがない。もっちりしているが、うどん自体にさぬきのようなコシはない。ボソッと切れる感じ。これが武州うどんなのだろうな。
          えんや2 
          一味とコチジャン

目の前に一味とコチジャンが置いてあった。どちらも自家製とか。これを肉汁の中に加えてみた。辛さがどんどんアップしていった。自分で辛さを調整できるのは有難い。自家製のふりかけまで置いてある。
          えんや6 
          辛さを調節

全体として、期待が大きかった分、思ったほどの感動はなかった。すっかり食べ終えると、「ま、武州うどんってこんなもんだろうな」というフツーの感想。この地方に根付く素朴なうどん、それもまた悪くはない。金子兜太のようなうどん・・・。

本日の大金言。

美味さばかりを求めるのはどこかおかしい。原点の素朴を確認する。さぬきばかりがうどんではない。たまには足元の大地を確認するのもこの際、大事だと思う。


                      えんや12 


プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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