バラの命と「冷やしきつね」

 「ああ退屈だよ。どっかパアーッと遊びに行きたいなあ」

10メートルも歩けないゴッドマザーが聞こえるようにつぶやいた。体と頭が昔のように連動しないので、ストレスが溜まっているようだ。このまま噴火されたら困る。

「しょうがないわねえ。じゃあ伊奈のバラまつりでも行く? まだ大丈夫だと思うわ」

村民2号が提案した。で、埼玉・伊奈町「バラまつり」へとポンコツ車を飛ばすことにした。車椅子があることも確認した。
          バラまつり① 
          伊奈バラまつりへ

約380種4800株ものバラが咲き乱れる伊奈バラ園は、すでにピークは過ぎていたが、何とかギリギリセーフだった。バラにも女性にもピークの終わりはある。悲しいかな男はバラにさえなれない。本質的にバラバラな生き物。
          バラまつり② 
          バラの命

その後、ランチをどこで取るか、少々モメたが、結局すぐ近くにある「久兵衛屋(きゅうべえや)」に入ることにした。チェーン店だが、うどんが安くてそれなりに旨い。親会社はすき家などを傘下に持つゼンショーグループ。
          久兵衛屋 
          久兵衛に入る
          窮兵衛屋② 
          B級のうどん

暑かったので、村長は「冷やしきつねうどん」(税別490円)を頼むことにした。週末から凄い料理ばかり続いていたので、基本に帰ることにした。B級の原点へ。村民2号は「きのこつけ汁うどん」(同590円)、元々パワー系のゴッドマザーは「肉つけ汁うどん」(同590円)。
          久兵衛屋⑤ 
          冷やしきつねうどん
          久兵衛屋⑥ 
          チェーン店の実力

これが予想外に旨かった。チェーン店の実力恐るべし。打ちたて、茹でたての自家製うどんを売り物にしているだけあって、やや細めのうどんはコシが十分にあり、のど越しもつるりとしている。つゆは濃いめだが、思ったよりも悪くない。昆布よりも魚介の出汁が強い。
          久兵衛屋⑦ 
          これって原点?

大きなきつね(油揚げ)が一枚、8つに包丁が入っていて、こちらもやや濃いめの味付けながら、十分に冷えたいい味わい。ワカメ、刻みネギ、薄切りの蒲鉾・・・感心したのは揚げ玉。カラリと揚がっていて、ワサビとともにうどんときつねをかっ込むと、冷たい美味が口中に広がり、それが悪くない。かすかに化学調味料の余韻。
          久兵衛屋⑨ 
          揚げ玉とワサビ
          久兵衛屋⑧ 
          自家製うどん
          久兵衛屋4 
          ワカメの鮮度

きのこつけ汁は当たり。この値段でこれだけの満足感は文句なしよ」(村民2号)
「悪くはないけど、これじゃあお腹いっぱいにはならないよ。もう一つ頼んでもいいかい?」(ゴッドマザー)

ゴッドマザーは食べ終えると同時に食べたことを忘れてしまった? まさか? 頭と胃袋があべこべになっている? バラはしぼんでも棘(とげ)はある。やや腹立たしくもあるが、そこが楽しくも愛おしい・・・そう思うことができるか?
          久兵衛屋12 
        ま、食べておくれやす

先日、高貴な義母の介護体験を話してくれた、パリジェンヌ未亡人の言葉が胸に突き刺さっている。夫が他界してから、義母との二人暮らしは約10年間続き、最後の5年間は寝たきりになったそう。そして最後の最期まで一人で身の回りの世話をした。そのこと自体も凄いが、「スプーンで食べさせてあげるとき、本当にかわいいのよ。妙な話だけど」。その心の持ち方。発露。さり気ない話しぶりに内心驚いた。彼女が天使か妖精に見えてしまった。

「もう忘れちゃったの? ダメじゃない」

もう一つのバラの棘が遠慮なくチクリ。その様子を見ている、バラとは無縁な村長。これもまたよし、とも思う。だが、その数分後、「デザート食べにどこに行く? パアーッと行きたいなあ」しぼんだバラが、またつぶやくように言った。バラバラバラ・・・うーん困った。

本日の大金言。

バラの命は短くて・・・とはいえ、その一生には様々な思いが詰まっている、と思う。ひょっとして図書館一つ分の思い。食べ終えた冷やしきつねうどんのどんぶりを見ながら、人は他人をどれだけ愛せるか、つい考えてしまった。









                   久兵衛屋13 

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築地場外の昭和オムライス

 先週末はグルメ先生が西の空からビニール傘で舞い降りてきて、忙しい日程となった。プレスセンターでのカレーライス会、白金での夢のようなランチ・・・とてもこのブログでは書き切れないので、感謝を込めて行間のタイムカプセルに埋蔵しておこうと思う。50年後、万が一生きていたら、発掘してグルメ博物館にでも寄贈しようと思う。

おまけの昨日は群馬・前橋の法要に参列、その後の直会(なおらい)で出された会席料理も素晴らしかった。

と、週末からの胃袋日記を書いていて、こんなアンビリーバブルな舌の旅が続くと、きっとこの先、我が身に何か胃変が起きることになるかもしれない。今週は身を清めて、締めて行こうと思う。
          東都グリル② 
          観光客がいない
          東都グリル① 
          穴場の食堂

で、現実に戻って、本日テーブルに乗せるのは、東京・築地の場外市場外れの穴場食堂で食べた「オムライス」。B級の定番スター「オムライス」ほど昭和の夢の名残りを放つメニューはないかもしれない。

晴海通りから「波除神社(なみよけじんじゃ)」に向かって少し歩いたところ。このあたりに来ると、うるさい観光客の姿はほとんど消えている。昔の築地市場の匂いが残っている。ビルの地下にある「東都グリル」のオムライス、である。久しぶりの訪問。
          東都グリル1 
          ドアの向こう側

お客のほとんどは市場関係者で、創業は50年を超える。看板には「喫茶、お食事 東都グリル」と書いてあるが、実際は市場食堂と言った方が近い。出発点が洋食なので、活気のある広い店内の奥の厨房には隙のないコック姿の料理人が数人、フライパンなどを動かしている。

「A定食 オムライスとサラダ」(みそ汁付き 税込み750円)を頼むことにした。刺身料理からサンドイッチまで和・洋・中を網羅している。市場関係者のたまり場ということは、イコール美味、ということでもある。
          東都グリル③ 
          これこれ 

10分ほどの待ち時間で目の前にオムライスセットがドンと置かれた。見事な昭和のオムライス! ふわとろなどという今どきのヤワなオムライスではない。鉄壁のオムライス。卵(多分2個)はしっかり火が通っていて、その懐かしい黄色みがいい匂いを放っている。
          東都グリル④ 
          昭和が詰まっている
          東都グリル⑤ 
          ヤワではない

自家製の深紅のケチャップが、夢のようにどっさりとかかっている。シジミだしのみそ汁をすすってから、ステンレスのスプーンでひと口。ケチャップライスは一粒一粒によく火が通っていて、コックの腕が一定のレベルであることがわかる。
          東都グリル⑥ 
          ケチャップライス!
          東都グリル11 
          築地問題、って?

卵焼きとケチャップとライスが絶妙に合っている。具がほとんどない。ライスだけ。よく見ると、ハムとピーマン、それにタマネギが申し訳なさそうに混じっていた。徹底したケチャップライス。
          東都グリル⑨ 
          ハム、発見

ボリュームもかなりある。サラダはレタスとキャベツの鮮度がいい。それにマヨネーズで和えたスパゲッティが乗っていて、これも昭和のよき食堂のもの。
          東都グリル4 
          サラダの真実
          東都グリル12 
          ちゃんとせな

仕事を終えた市場関係者がビールや日本酒を飲みながら、刺身をつつき、フライを食べ、あれこれしゃべっている。築地市場問題に絡む話がちらちらと聞こえてくる。築地はこれからどうなっていくのか? きれいに食べ終えると、ここが東京の胃袋の中心であることを忘れそうになった。反省を込めて、帰りに波除神社にお参りすることにした。

本日の大金言。

たとえ明日世界が終わるとしても、私はりんごの木を植えるだろう。マルチン・ルターの有名な言葉だが、りんごの木をオムライスと置き換えてみたくなる。オムライスにはそのくらいの魔力が潜んでいると思う。




                  東都グリル13 




意外な場所の「玉ひで」親子丼

 東京・人形町「玉ひで」と言えば、元祖親子丼で有名な鳥料理の老舗。ランチ時はいつ行っても行列、土日などは1時間以上待たされることもある。創業が宝暦10年(1760年)と古く、あの石原慎太郎さんが常連の店でもある。敷居の低い店ではない。

宮仕え時代に何度か並んで「元祖親子丼」(1500円)などを食べたことがあるが、正直に言うと、一度食べたら、並んでまでも、という気にはならない。とはいえ、生に近いふわとろ卵としゃも肉(東京しゃも)だけの甘く濃厚な味は、往時の東京っ子の好みを知る上では貴重だと思う。
          五味八珍 
          いい外観では?

てな前振りで、本題に入る。群馬・桐生市の中心部・本町をブラ散歩中に、いい店構えの料理屋が目に入った。「五味八珍」(ごみはっちん)の長ノレン。ちょうどランチタイム。入ろうかどうか迷っていると、村民2号が「あら、この店の三代目が、人形町『玉ひで』で修業したんだって」と入り口のメニューをめざとく見つけた。
          五味八珍① 
          当たりかハズレか?
          五味八珍② 
          玉ひで?

「ふわとろ玉子 親子丼」の文字。まさかの玉ひで。行列はない。好奇心がむくむく。これは入るっきゃない。

元々はフグ料理と海鮮料理の料理屋で、三代目が「玉ひで」で修業したことで、鳥料理も売り物に加えたようだ。年季の入った木のカウンター席とテーブル席がいい料理屋の気配。白衣の二代目と三代目、それに女性スタッフが切り盛りしていた。
          五味八珍16 
          ポエム
          五味八珍③ 
          メニューの一部

テーブル席に腰を下ろして、「ふわとろ親子丼セット」(サラダ、お新香、味噌汁付き 1000円=税込み)を頼んだ。メニューがきれいではない。中山秀征と井森美幸のポスターがポエム。
          五味八珍④ 
          おいでやす

15分ほどの待ち時間で、玉ひで直伝の「ふわとろ親子丼」がやって来た。漆器の大きなドンブリ。フタを取ると、黄色い海。ふわとろというより、半熟、いや生に近い部分がどこまでも広がる、あの「玉ひで親子丼」そのもの。細かい気泡までそっくり(当り前だが)。甘いいい匂いが鼻腔を刺激する。
          五味八珍⑤ 
          おおお玉ひで
          五味八珍⑥ 
          半なまの世界

木匙でまずはひと口。かなり濃い。玉ひでは甘さの方が強いが、ここは上州流が入っているのか、甘さが少し抑えられ、かえし(醤油)がきつめ。つゆだくなのは同じ。ご飯はやや固め。
          五味八珍11 
          地鶏の柔らかさ
          五味八珍⑧ 
          出は人形町かい?
          五味八珍12 
          七味をパラリ

鳥肉はほどよい大きさのものがころころと10個ほど。もも肉が多い。玉ひでよりも柔らかい弾力で、悪くない。女性スタッフにそれとなく聞いてみると、「最初の頃は玉ひでと同じくしゃも肉を使ってたんですけど、固いので秋田の地鶏にしました」とか。
          五味八珍13 
          たまらーん

卵は3個使っているそう(玉ひでと同じ)。なめこと豆腐のみそ汁、サラダ、漬け物もフツーに美味い。

「1000円でこの内容だと、コスパも悪くないわ。コーヒーまで付いてきた。私は大満足よ。第一、並ばずに玉ひでの親子丼を食べれるのがいいわ」

「本家玉ひでよりも手ごろなのがいいけど、もう少し醤油を抑えた方が好みだけどね。本家は砂糖まで加えているらしいけど、ここは味りんだけで、砂糖は加えていないようだよ。だから醤油をもう少し抑えた方がいいのにね」

「上州の好みなのよ、この味の濃さが。ボリュームもかなりあるし、わざわざ人形町に行かなくてもいい。いい店を見つけたわ」
          五味八珍2 
          お新香マル

「ここは創業60年くらい。桐生は花ぱんの小松屋とうなぎの泉新、それに坂口安吾も通った芭蕉といういい店がある。そこまでは行かないけど、まずまずいい店だと思う」

「もっといい店が隠れているかもよ。それを探すのが村長の仕事。隠れた美味の発掘屋、なんでしょ?」

「苦節3年、骨折2年、発掘屋もつらいよ」

「またくだらないダジャレでごまかそうとして」

「発掘されたい・・・・・・」

「それじゃミイラってこと? ミイラ取りがミイラに? 笑えるわ」

「・・・・・・」

本日の大金言。

東京に一極集中の代償は地方都市のさびれ感。これは深刻だと思う。人体に例えると、心臓だけで体は動かない。地方の文化、歴史、そこにいる職人さんたちに目線を。



                    五味八珍15 



限定20食今半「百年牛丼」の味

 浅草今半、といえば「すき焼き」の老舗だが、元々の今半本店(新仲見世通り)をはじめ、別館、国際通り本店など暖簾分けがややこしい。

創業が明治28年(1895年)、吾妻橋で「牛鍋屋」としてスタートしている。この時代は元祖牛鍋チェーン「いろは」(明治11年創業)の全盛時で、当時の東京は牛鍋が大人気だった。社長の木村荘平は立志伝中の怪人物で、都内に22店舗を持ち、それぞれにお妾さん(これって死語?)を配置し、店長をやらせていた、今の常識で考えると、とんでも人物。あだ名は「いろは大王」(このあたりは山田風太郎著「明治バベルの塔」の中で詳しく書かれている。これがメッチャ面白い)。
          浅草今半 
          浅草今半(国際通り)

この流れの中で、今半も「牛鍋屋」を始めたと思われる。それから約122年後、浅草に用事があり、国際通りを歩いていると、「浅草今半 国際通り本店」の立派な建物が見えた。ここは昭和3年(1928年)に本店から暖簾分けしている。時計を見ると、午後2時近い。
          浅草今半③ 
          狙い目?

敷居が高い店だが、入り口で「百年牛丼」(税別 1500円)の文字が見えた。今半にしては比較的安い。しかも限定20食、の文字。ダメもとで入ることにした。

「20食、もうないでしょ?」
「いえ、たまたまですが、まだございます」(和服の女性スタッフ)

で、半信半疑のまま、入ることにした。エレベーターで三階へ。高級料亭の雰囲気。長くなるので、このあたりの途中経過は省略。
          浅草今半④ 
          プチリッチ?

目の前に「百年牛丼」がある。大きな有田焼のドンブリ。赤だし、お新香付き。畳と障子戸から明かりが差し込んでいる。他の客は多分1万円以上のメニューを楽しんでいる。隣りと後ろに関西弁の家族と中国語の家族。あまりにポエムな状況。
          浅草今半⑤ 
        主役、登場でありんす
          浅草今半⑥ 
          フタを取ると・・・

フタを取ると、いい匂いとともに、和牛が長じゅばん姿で寝そべっていた(まさか)。大きな薄切りが二枚ほど。見るからに旨そうな霜降り赤身で、その上に焼き豆腐二つと面取りした玉ネギ5個、それにグリンピース。
          浅草今半⑦ 
          百年が見える

値段を考えると、ま、それなりの肉だろうな、と高をくくっていたが、これが大間違いだった。割下で軽く火を通した霜降り牛は噛んだ瞬間、柔らかい感触とジューシーさにうむむ、となってしまった。多分黒毛和牛でもAランクの下だろうが、それを全く感じさせない。
          浅草今半3 
          当たりィ~
          浅草今半15 
          たまりまへんなあ
          浅草今半16 
          焼き豆腐
          浅草今半11 
          秀逸な玉ネギ

関西ほど甘くないのもいい。玉ネギはさっと熱湯にくぐらせた程度だが、それが絶妙。焼き豆腐も申し分ない。牛肉の下には細切りの煮コンニャク。見た目のきれいさも感動もの。
          浅草今半12 
          長じゅばんの奥?

ご飯だけがやや不満。つゆのかけ具合はいいが、米自体の美味さが思ったほど伝わってこない。お新香の中で紅ショウガが美味。仕上げにこれを乗せ、思い切ってかっ込むと、牛丼チェーンの味わいとは別格の美味さが口中に広がった。七味もかけると、これは牛丼の大王、だと思う。イマハン大王さま・・・。
          浅草今半17 
        紅ショウガの秀逸

帰り際、和服姿の中居さんに「よく限定なのに残ってましたね」と言うと、「これはもともとはオレンジ通り店のオリジナルだったんですよ。オレンジ通り店が閉店して、それをこちらで引き取ったんです」とか。今半のランチメニューの中で、多分一番安いと思う。どこか得した気分になって、ついツマヨウジを口にくわえたくなった。オロウカモノめ。

本日の大金言。

今半はあまりに有名で、あまりに安くはない。だが、探せば、その高級感を安く味わうことも不可能ではない。他の老舗も子細にチェックしていけば、新しいリッチな楽しみ方もできると思う。





                 浅草今半18 

「両さんの街」の超絶ナポリタン

 所用で東京・亀有に行くことになった。ここはコッペパンで有名な「吉田パン」もあるが、「こち亀」の街、と言った方がわかりやすいかもしれない。駅前には銅像もある。

用事を終えてから、北口を吉田パンに足を運ぼうと思ったが、その途中でお腹の虫がきゅっと鳴いた。時計を見ると、午後1時半過ぎ。どこかいい店はないか? 
          ラッキー 
          ゲット、ラッキー?

ちょいと横道を見ると、幸運が向こうからウインク(これって死語?)してきた。その名も「ラッキー亀有2号店」。出来過ぎ。さすが下町、亀有。両津勘吉が煙草を吸いながら油を売っていそうな気配。
          ラッキー① 
          よき喫茶店、めっけ
          ラッキー14 
          西ドイツ製焙煎機

本格的なコーヒー専門店(純喫茶?)で、入り口に大きな焙煎機が見えた。よき時代のレトロな世界。ひと目で外観に惹かれてしまった。

ランチタイムメニューの「ナポリタンセット」(税込み880円)に目が行った。懐かしいコテコテのナポリタンが頭の中の空に浮かんだ。
          ラッキー② 
          ランチメニュー
          ラッキー13 
          ポエム

店内はカウンター席とテーブル席で、ゆったりとした高級感に包まれていた。ご近所の常連らしい主婦客が多く、地元に愛されている店のようだ。煙草をプカプカ吸っているのがポエム。これこれ、この世界! イッツ・ワンダフル・ワールドだと思う。

押し出しのいい白髪の店主と女性スタッフが二人ほど。「ナポリタンセット」を頼んだ。これがコテコテの昭和のナポリタンだった。コンソメスープとサラダとデザート(ヨーグルト)付き。食後に「ブレンドコーヒー」。
          ラッキー④ 
          これこれ

ボリュームがかなりある。半熟の目玉焼きが上に乗っていた。こういう場合、粉チーズとタバスコをドバっとかけて食べるのが正しい食べ方だと思う。哀しいかな胃の調子がイマイチなので、タバスコは断念して、粉チーズだけを盛大にかける。
          ラッキー⑥ 
          粉チーズをたっぷり
          ラッキー⑨ 
          たまりませぬ

美味いという表現だけでは把握できない。具はウインナー、ピーマン、マッシュルーム、タマネギ。パスタにまとわりついてくるケチャップのこってり感と粉チーズが、あの懐かしい空腹の世界を現出させてくる。グイグイと胃袋に入ってくる。激ウマではなく、激マン(足)の味わい。 
          ラッキー⑧ 
          昭和のぜい沢
          ラッキー11 
          超絶の味わい?

半熟の目玉焼きがいい具合で、「どうだい、うめえだろ? 昭和を忘れちゃダメだぜ」と問いかけてくる。
          ラッキー⑦ 
          コンソメの深味

コンソメスープ、サラダ、デザートも昭和の丁寧さ。食後のコーヒー(サイフォン)も焙煎が効いた深い味わいだった。
          ラッキー12 
          本物の味わい

店は昭和52年(1977年)にオープン、元々は3号店まであったそう。それが「今じゃ、ここしかないよ」(店主)。喫茶店は下町に限るなあ。そう思いたくなる黄金の時間をしばし楽しむ。どこかに両津勘吉の気配・・・。

本日の大金言。

銅板でじっくり焼くホットケーキもここの売り物。昭和は死んではいない。いや、死なせてはいけない。外側だけの銀座シックスより、下町の喫茶店の方が大事だと思う。



                   ラッキー5

意外な場所の「カニチャーハン」

 ゴッドマザーがウマズイめんくい村に移住して、はや4週間ほどになる。小さな老犬「なぐ」(メス15才)も一緒。
          なぐ① 
          なぐ、でごわす

どうしたわけか、移住してきたら、老犬の方はどんどん元気になって、庭や公園などを走り回ってはウンチをしている。まるで自分がまだ生きていることを確認しているように。4週間前まではヨボヨボしていたのに。別人、いや別犬になってしまった。こんなことがあっていいのか?

と、近況を書いたところで、そのなぐ婆のフィラリア予防注射のため、久しぶりに上州の「実家」までポンコツ車を飛ばした。行きつけの動物病院へ。1時間ほどの待ち時間で目的を終えた。
          シノワ6 
          かような場所に

ここからが本題。桐生かみどり市でランチを取ることにした。どこに行こうか迷った。ふと村民2号が「シノワはどう?」。「うーん、いいね。久しぶりだな」と村長。

「中華厨房 シノワ」は桐生市の隣り、みどり市大間々町にある中華料理店で、数年前に何度か食べに行ったことがある。かような場所に、と驚くほどの本格的な広東料理の店。しかもシャレている。空っ風の上州らしからぬ(失礼)の垢ぬけした店構え。
          シノワ① 
          かような店
          シノワ② 
          いい雰囲気

「蟹肉炒飯(カニ肉チャーハン)」(税別850円)を頼むことにした。ここでチャーハンを食べるのは初めて。村民2号は「あんかけ五目焼きそば」(同800円)。
          シノワ③ 
          メニューの一部

取り皿が二つずつ置かれ、さらにフォークとスプーンと箸まで丁寧に置かれた。うむ。

そのすぐ後に「蟹肉炒飯」がやって来た。待ち時間は6~7分ほど。あまりの速さに、「久しぶりに来たけど、これはハズレか?」という思いが一瞬よぎった。すぐに続いて「あんかけ五目焼きそば」も。
          シノワ⑤ 
          カニチャーハン
          シノワ⑧  
          五目あんかけ焼きそば

これが間違いだった。鮮やかなレタスと卵、それに上海蟹肉がつややかな炒飯の合間に散りばめられていた。一見、ライスにはパラパラ感が少ないように見えたが、最初の一口で、やられてしまった。
          シノワ⑥ 
          当たりか?

塩味が濃くもなく薄くもなく、絶妙という言葉が思わず出てしまった。牡蠣油なのか、別の何かなのか、隠し味がわからない。まさに旨みという言葉が一粒一粒に滲み込んでいる炒飯で、横浜中華街の炒飯の名店「同發(どうはつ)」とよく似た味わい。ボリュームも不足はない。パラパラ感も絶妙だった。それ以外に言葉が見つからない。
          シノワ⑨ 
          驚きの旨み
          シノワ⑦ 
          レタスとカニ
          シノワ10  
          名チャーハン!

プロの料理人がここにいる。こんな場所にいる(失礼)。

「あんかけ五目焼きそば」も気持ち味が濃い目だが、美味。調べてみたら、店は20年ほどの歴史で、店主は横浜中華街の名店で修業したようだ。食後にコーヒーが付いてきた。満足感に包まれる。BGMがなぜかハワイアンなのが、不可解だが。
          シノワ2 
          言葉はいらない

「確かデザートの杏仁豆腐も美味かったわ。食べたいけど、予算がない。今回はあきらめるわ。ゴッドマザーも連れてきたいけど、クルマに乗るのは嫌だって言うかもしれないわ。なぐは元気だけど、ゴッドマザーはすぐに眩暈(めまい)がするって言うから」

「じゃあ、我々だけで来るしかない。実家とお墓の掃除もたまにしに来なきゃならないしな」

「目的はそれだけ?」

「バレたか。上州食いまくりも悪くはない」

「付ける薬がないわ・・・」


本日の大金言。

意外な場所に星がある。ミシュランの星ではないが、中華料理の星。まさかの横浜中華街の飛び地、とも言える。






                   シノワ5 



「駅弁屋」の高原たまごサンド

東京駅構内にある「駅弁屋 祭」はたまに利用する。全国の駅弁が集合していて、ここにいるだけで、SLで全国旅行した気分を味わえる。

で、今回テーブルに乗せるのは、中央本線小淵沢の駅弁「八ヶ岳高原たまごサンド」(税込み650円)。大正7年(1918年)創業の老舗駅弁屋の逸品。ネーミングからして実に美味そう、である。卵サンド好きにはたまらない世界。
          駅弁屋① 
     こういう駅弁もマル(駅弁屋 祭で)

サンドウイッチの駅弁と言うのもオツではないか。駅弁はどんどん高級化しているが、このくらいの価格帯がちょうどいい。
          八ヶ岳高原たまごサンド① 
          美味そう!

紙製の箱に3セット納まっている。フタを開けた途端、卵の厚みに驚かされる。優に3センチほどありそうで、その色が高原の卵らしくて(?)食欲をそそられる。たまごはスクランブルではなく、マッシュしたゆで卵でもなく、関西系の厚焼き。
          八ヶ岳高原たまごサンド② 
          ランチタイム
          八ヶ岳高原たまごサンド③ 
          おおおの世界

できれば缶ビールをそばに置きたい。新鮮な卵のいい匂いを吸いながら、手に取ると、食パンの柔らかなしっとり感が伝わってくる。食パンは薄い。そのアンバランスが悪くない。
          玉子サンド③ 
          あららの世界

ガブリと行くのがサンドイッチに対する礼儀だと思う。それを実行する。まずパンの美味さ、続いて卵焼きの甘めの味付けが口中に広がった。築地市場の卵焼きの名店「松露」の「松露サンド」ほど甘くはないが、かなり甘め。

マスタードの粒つぶとマヨネーズ、それにバターの香りが3メートル先から押し寄せてくる感じ。「松露サンド」はマヨネーズだけでそのまんまの味だが、これはそれよりも少しだけ深みがある。
          玉子サンド② 
          ウシシの世界
          玉子サンド⑥ 
          粒マスタードとバター
          玉子サンド⑤ 
          スーパーな厚焼き

だが、関西系のような出汁感はない。といって関東流のストレートな味わいでもない。あえて言うと、その中間くらい。粒マスタードをたっぷり使っているのは好感。
          玉子サンド⑦ 
          しっとり感

どうして味付けが甘くなるのだろう、まさか子供向け? 缶ビールでのどを潤し、柿ピーでもつまみながら食べるといいかもしれない。とはいえ、見た目の驚きと甘い卵焼き好きにはおすすめ。

本日の大金言。

忘れていたけど、今年はトリ年だった。卵サンドの駅弁で日常から一時的に飛び立つのもいいかもしれない。飛び過ぎてはいけないが。




                   玉子サンド⑧ 

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神保町の感動「ライスカレー」

 よく考えてみれば、昔は「カレーライス」ではなく「ライスカレー」だった。いつからライスカレーと言わなくなったんだろう?

カレーとライスが別々に盛られたのがカレーライスで、一緒に盛られたのがライスカレー。そういう説明が多いが、今ではほとんどがどちらも「カレーライス」と呼ばれていると思う。

戦後はライスカレーとラーメン、それにカツ丼が食堂の三代スターだった。「カレーライス」はある種のステータスだった気がする。一般の庶民家庭ではほとんど「ライスカレー」だったと思う。
          まんてん4 
        ライスカレーの始まりィ~

それがいつしか死語になりつつある。所用で東京・神田神保町に行ったついでに、白山通りの裏道にある「まんてん」へ。今では数少ない「ライスカレー」を堂々と表記しているカレー屋さん。懐かしい昭和の匂い。創業は昭和56年(1981年)。主役はライスで、カレーは準主役という感じかな。
          まんてん 
          ファンが多い
          まんてん③ 
          庶民価格

だが、この準主役がすごい。ここはかつカレーが有名だが、村長は「ウインナーカレー(並)」(税込み600円)を頼んだ。午後1時半過ぎだというのに、コの字のカウンターは満席。内側が厨房で、庶民的なコックさんが3人、とんかつを揚げたり、シュウマイを揚げたりと忙しい。
          まんてん16 
          いい雰囲気

すべて注文を受けてから揚げる。そのため待ち時間は10分ほど。その間、水の入ったコップとなぜかアイスコーヒーが入った白いデミタスカップがポンと置かれた。コップには銀色のスプーンが無造作に入っている。これがこの店の流儀で、アイスコーヒーはサービス。このさり気ないツカミがたまらない。
          まんてん④ 
          ここから、です

アイスコーヒーはどうってことのない味わいだが、それを飲みながら、20人ほどのお客を眺めると、サラリーマンや学生が多い。女性より圧倒的に男性。ほとんどが「かつカレー」の大盛りを注文している。揚げたてのカツ、どんよりとした黄土色のルーが実に旨そう。
          まんてん⑥ 
          たまらん
          まんてん⑦ 
          た、たまらん

「ウインナーカレー」がサッと置かれた。楕円の深皿をどろりとしたルーが覆っている。その上に素揚げされた赤ウインナーが3個! 食欲中枢が刺激される景色。赤ウインナー好きの心が踊り始める。きれいな切れ込み。ポエム。
          まんてん⑧ 
          た、た、たまらん!

スプーンでひと口。バターを使って小麦粉からじっくりと炒めた香りとカレー粉のコラボ、懐かしいどろっとした食感。辛さはあまりなく、むしろまろやかな味わい。素朴だが、不思議な深味。細かい豚ひき肉が時折り舌をくすぐる。

具の姿はほとんど見えない。タマネギはルーの中に溶け込んでいて、それがまろやかさとまったり感をかもし出している。
          まんてん⑨ 
          この素朴

ライスは柔らかめ。ルーは見た目ほど多くはない。ソースをかけようかと思ったが、カレーの味わいが隠れてしまいそうで、代わりに福神漬けをさらにドッカと乗せて、ぐいぐいと食べ進む。
          まんてん13 
         昭和の正統派
          まんてん14 
          このどろり感
          まんてん10 
          主役はライス?

これが実に旨い。どこか学食のカレーライスを食べているような錯覚を起こす。だが学食よりはこのライスカレーの方が個性的で、病み付きになる味わいだと思う。
          まんてん3 
          たまらん×7

並だったので、思ったほどのボリューム感はない。大盛りかジャンボにした方が、この店の醍醐味を楽しめると思う。食べ終えると、店員さんが「毎度~」と言ってニカッと白い歯を見せた。また来たくなったよ。

本日の大金言。

神保町周辺は旨いカレー屋さんのメッカでもある。だが、人気店はそう安くはない。その意味で、庶民的なカレー屋さん(チェーン店ではない)が元気なのは、学生の街ということを差っ引いても、いいことには違いない。





                    まんてん15 

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「イカ天付温玉ぶっかけ」のGW

 悲喜こもごものGWも終わった。GWのGはげんなりの意味もある。皆さんはいかがお過ごしだったでしょう?

ぎっくり腰の状態をチェックする意味もあり、山仲間の妙義山登山に久しぶりに参加し、何とか頂上まで登り切ったことが自分的にはちょっとうれしい話だった。この場合のGはぎっくり腰(リハビリ)のGとなる。妙義山といってもあの妙義山ではなく、足利の妙義山だが。総合難易度31(笑)。その証拠写真はこちら。
            妙義山ハイキング 
        妙義山山頂だぞお~

とはいっても途中の大小山はアップダウンがきつく、危ない岩場もあり、途中何度もタオルを投げそうになった。約4時間半のコースで、その後鹿島園温泉に浸かり、人気バル「いけずキッチン」で打ち上げ。そのとき食べた「鰹のタタキ」が旨かったので、それを今回書こうと思ったが、酔っぱらい過ぎて、写真を撮るのを忘れてしまった。この場合のGはガク然のGとなる。
          彩め庵① 
          人気赤丸印

で、GW中に遊びに来ていたキオと食べた「イカ天付 温玉ぶっかけ」をテーブルに乗せることにしよう。

久喜市「菖蒲モラージュ」を右手に見ながら、桶川方面へポンコツ車を飛ばすと、左手に目的の「めん処 彩め庵(あやめあん)」が見えてくる。ここはたまに訪れるうどんとそばの店だが、ハズレが少ない。何を食べてもそれなりに旨い。
          彩め庵② 
          あやめあん?

約4年前にオープン、少しずつ口コミで人気が広がり、今では土日などは行列ができるほどになっている。村長は「イカ天付 温玉ぶっかけ(冷)」のうどん(税別750円)を選んだ。キオは「鍋焼きうどん」(同900円)。
         彩め 
         メニューに惹かれる

これがかなりのこだわりのぶっかけで、先日さぬきうどんの本場・高松で食べた「ぶっかけ」が横綱だとすると、東の関脇くらいの旨さだった。
          彩め庵⑤ 
        イカ天付温玉ぶっかけ
          彩め庵④ 
        こちらは鍋焼きうどん

うどんは自家製麺で、さぬきの半分くらいの太さ。つるっとしていて、もっちり感とコシも十分にある。食べやすい。揚げたてのイカ天がカラッと揚がっていて美味。花かつお、生ワカメ、揚げ玉、長ネギ、万能ネギ、それにまん中に納まっている温玉もいいレベル。わさびがちょこんと乗っているのもいい風景。
          彩め庵⑦ 
          つゆを回しがけ
          彩め庵⑧ 
       カラリと揚がっている
          彩め庵10 
          温玉の存在
          彩め庵11 
          菖蒲うどん?


つゆは生醤油のように辛めで、それがいい効果を生んでいる。さぬきのような出汁感はあまりない。まぎれもなく関東のつゆ。

「味が最初は濃いと思ったけど、食べていくうちに旨くなってきた。ボリュームもほどいいわ。病み付きになりそうなうどんといったところかな」

「さぬきでもなく、武蔵野うどんでもなく、加須うどんでもない。あえて言うと菖蒲うどんだな。店主はその中間ですと言ってたけど、こだわりがあるのはわかる。80点主義のうどんって感じだな」

「80点ってなかなか取れないよ」
          彩め庵4  
          鮮度のよさ

「勝負したいときに食べるといいかもな、勝負うどん(笑)」

「見え見えのオヤジギャグ。最後でげんなりウイークになっちゃったわ」

「この場合のGはじじいギャグのGだよ。ひひひ」

「げっ・・・」

本日の大金言。

GWと無関係の人も多い。ごろ寝のG、げっそりのG、じっと我慢のG、ガキの相手のG・・・黄金のGWばかりではない。



                    彩め庵13 

有名人も愛した「清風楼のシウマイ」

 今回テーブルに乗せるのは、横浜中華街で知る人ぞ知る「清風楼(せいふうろう)」の「シウマイ」であります。シュウマイではなく、シウマイ。あの食通作家・池波正太郎や評論家・草柳大蔵が愛したというのもある種の伝説になっていて、土日などは時間帯によっては行列にもなる。
          清風楼 
          隠れた人気店

数年前、たまたま関帝廟通り(かんていびょうどおり)にあるこの店を見つけて、手土産にしようと思ったが、一番小さい折詰が(12個入り)が税込みで1720円と予想外に高かった。財布と相談した結果、その時は泣く泣く断念した。

それを今回、横浜に行ったついでに、断崖から飛び降りるつもりで(オーバーだよ)、手土産にした。創業が昭和20年(1945年)。現在は3代目。広東料理の老舗でもあるが、店内は小さな大衆食堂のようで、敷居の高さはない。シウマイばかりでなく、炒飯や焼きそばも美味い、という評判。
          清風楼① 
          安くはない

賞味期限は「冷蔵庫に入れて4日間です」(女性スタッフ)。で、上州から愛らしい老犬とともに、ウマズイめんくい村に移住してきたゴッドマザーを交えて、89歳のお誕生会をかねて、賞味することにした。ささやかなぜい沢。
          清風楼① 
          賞味の時間
          清風楼② 
          これこれ
          清風楼④ 
          本物の予感

懐かしい経木の箱(これがたまらない)にきっちりと納まった12個のシウマイは意外に小ぶりで、崎陽軒のシュウマイとそう変わらない大きさ。コック帽のような縦長が特長。外側から見ただけで、いい豚肉が薄っすらと見える。経木の蓋を取った瞬間、独特の玉葱のような濃密な匂いが広がった。
          清風楼⑥ 
          蒸し器で蒸す

村民2号が蒸し器で約8分ほど蒸す。白ワインを用意し、備え付けの辛子をお湯で溶く。酢醤油で食べる前に、いい色に蒸し上がったシウマイを、何もつけずにガブリと行く。
          清風楼⑧ 
          おおお
          蓬莱閣2 
          71年の歴史
          清風楼2  
          肉の圧倒

粗挽きの豚肉の旨みがまず押し寄せてきた。続いて長ネギとつなぎの片栗粉(?)が絶妙に絡んできた。貝柱の旨みと何か隠し味のようなものが全体の旨みを押し上げている。ほのかな塩味(魚醤?)。自然な甘みと旨味。
          清風楼12 
          辛子でガブリ
          清風楼10 
          酢醤油でガブリ

さらに辛子を付けて食べる。酢醤油でまた食べる。それぞれに別の旨みが引き出されてくる。

「確かに美味いわ。本物って感じ。でも1720円というのは安くはない。今日は特別な日だからいいけど、崎陽軒のシュウマイで十分だわ」

「こんな美味いシューマイ、あたしゃ初めてだよ。冥途の土産になるわ。もう二、三度は食べたいよ、店で食べたらもっと旨いだろうね、ぐふふふ」
          清風楼11 
          深みと値段

「このままじゃ村の財政が破たんする予感がする。もう一度働きに出ようかな」

「誰も雇ってくれないわよ。ぎっくり腰の村長なんて」

「村長一人でどこかに移住したくなってきた」

「賛成。天国へ移住するのもいいかもね」

「・・・・・・」

本日の大金言。

横浜中華街は観光化しすぎている気もするが、まだまだ美味の迷路は健在。特にメーンストリートより裏通り。



                   清風楼13 

究極か「あん入り焼きまんじゅう」

GWの真っ最中、法事で 群馬・前橋市までポンコツ車を飛ばす。今年はどうしたわけか法事が多い。

法事の当たり年、そう考えると心が落ち着く。生者必滅の四文字がようやく実感としてわかってきた気がする(遅すぎだよ)。

法事でも舌は止まらない。胃袋も止まらない。止めてはいけない。止めようとしてもそう簡単には止まらない。

前橋からの帰り道、県道桐生・伊勢崎線周辺は「焼きまんじゅう街道」でもある(そう勝手に呼ばせていただきます)。群馬県内でも老舗の名店の一つ「堀田商店」に立ち寄ることにした。
          堀田商店 
          本物の予感

焼きまんじゅうは群馬県民がひそかに誇る郷土食で、県内には専門店だけでも優に100店超はあると思う(数えたわけではないので、単なる実感です)。ていうか、群馬県民にしか通用しない、全国的には珍しいまんじゅう。江戸時代末期には存在していたようだ。「秘密のケンミンショー」などでも笑いのネタにされている代物。伊勢崎市昭和町にある「堀田商店」は、その星の数ほどの焼きまんじゅうの中でも、トップに位置する老舗という噂の店である。
          堀田商店① 
          創業90年
          堀田商店1 
          職人の気配

桐生・伊勢崎線沿いに「やきまんじゅう」の幟(のぼり)が見え、その奥に瓦屋根の古い店構え。隙のない一軒家。年季の入った木枠の出窓のところが板場になっていて、そこにご高齢の店主が白衣姿で精を出していた。炭火が見えた。ポエム。本物の予感。
          堀田商店③ 
          ポエム!

きれいに磨かれた大きな木のテーブルが三つほど。そこに腰を下ろして、「焼きまんじゅう」(1串税込み150円)2串とあん入り焼きまんじゅう」(同250円)を1串頼んだ。あん入りも2串頼もうとしたが、村民2号が「1串4個で1個が大きいから、そんなに食えないわよ」で、3串で妥協した。
          堀田商店② 
          メニューはこれだけ
          堀田商店④ 
          手づくりの世界

女将さんがお茶を持ってきてくれた。持ち帰りの客が多いそうで、ポツリポツリとお客がやってくる。焼き上がるまでの時間、店の創業を聞くと「もう90年になります。主人で3代目です」とか。昭和初期の創業ということになる。
          堀田商店2 
      隅々まで気が届いている

12~3分ほどで、益子焼の大皿に盛られた焼きまんじゅう3串がいい匂いとともに目の前に置かれた。見事な世界。味噌ダレと焦げ目、食欲をそそる甘い匂いが鼻腔をくすぐる。
          堀田商店⑥ 
          香ばしきシンプル
          堀田商店3 
          大皿と竹串まで

まずは焼きまんじゅう。竹の大串を抜いて、ガブリと行く。1串4個。1個の大きさは7センチ弱ほど。厚みは約2・5センチ。噛んだ瞬間、甘い濃厚な味噌ダレと柔らかな食感と香ばしい小麦の風味が口中に広がった。もちっとした歯ごたえ。美味。甘味が強いが、村長がこれまで食べた焼きまんじゅうの中でもこれは間違いなくトップだと思う。
          堀田商店⑧ 
          焼き立て
          堀田商店10 
          頂点の世界

皮種は地粉を使い、米粉も少し入れているようだ。それを糀(こうじ)で膨らませている。むろん自家製。どこかイタリアのフォカッチャを連想してしまった。

続いて、あん入りにかじりついた。こしあんが入っただけで、ずしりと重みが加わった。こしあんだけは「あんこ屋さんから仕入れてます」(店主)とか。きれいな甘みで、それが焼きまんじゅうの味噌ダレの濃厚な香ばしさに妙に合っている。
          堀田商店12 
          あん入りへ
          堀田商店13 
          ミスマッチではない
          堀田商店14 
          上質な職人芸
          堀田商店16  
          あーん

「あん入りも美味いけど、私は何も入っていない、本来のシンプルな焼きまんじゅうの方が好きだな。焼きまんじゅうはずいぶん食べたけど、これは凄いわ」

「焼きまんじゅう店は駄菓子屋みたいな店が多いけど、ここは庶民的なのに格がある。本物に出会えた感じ。焼きまんじゅうは決してB級ではない。そんな気になる。古い木の温もりと隅々まできれいに雑巾がかけられている感じがとてもいい」

「上州生まれとしては、うれしいわ。焼きまんじゅうはどこか小バカにされてる気がするけど、この店に来てほしいわ。この安さも店の心意気を感じるわ。1串150円は他の老舗より安い。しかも美味い。本当にいい店だわ」

「目がうるんでるね。そうか悔しかったのか(笑)」
「花粉症よ。会津の饅頭の天ぷらより全然いいでしょ?」
「何だか秘密のケンミンショーみたいになって来たね。やめよう、今日は法事帰りだから。平和に平和に・・・」
「生者必滅。饅頭にも平和を・・・」

本日の大金言。

焼きまんじゅうは以前は「あんなもん、どこが美味いのか」と思っていたが、いい焼きまんじゅうに出会ってから、その見方を変えた。ホントに美味いのである。千利休がメニューに出した「麩の焼き」も味噌ダレを付けて焼いたもの。ある意味で、焼きまんじゅうはその伝統の線の上にある、と思う。



                  堀田商店5 



プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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