訳あり店の仰天「中落ちしらす丼」

 シバの女王のお導きで、ブルーベリー摘み⇒中落ちしらす丼の黄金コースを堪能した。村生活を続けていると、こういう「僥倖(ぎょうこう)」に遇うこともある。僥倖は先日14歳の天才棋士が使った言葉で、フツーの中学生が使う言葉ではない。意味は思いがけない幸い。
          宇津木ブルーベリー園② 
      有機栽培のブルーベリー園

先日ガンから生還したそば仙人の豪邸に集まったのは、食べることをすべてに優先する5人。シバの女王、おけさ嬢、アッキー姫はお顔と胃袋が反比例する。そば仙人と村長はお顔と胃袋がねじれている。おけさ嬢のテンションが高い。クルマの中でいつ佐渡おけさを踊り出すか冷や冷や・・・いや楽しみ。いつものように楽しいワヤワヤ。
          宇津木ブルーベリー園③ 
          極上品なのだ

そば仙人の知人のブルーベリー園で、極上のブルーベリー摘みを楽しんでから、もう一つの目的「食事処 魚がし」へ。国道122号線に出てから埼玉・羽生方面へ。「すごい人気なのよ」(シバの女王)。加須市志多美交差点の手前に「食事処 魚がし」が見えた。一軒家で、駐車場も広い。正午過ぎ。駐車場はほとんど満杯。
          魚がし 
          人気の魚料理屋

店名の通り、魚料理が看板の店で、とにかく盛りがいいとか。数年前に強盗に襲われ、店主が大ケガをした店らしい。それでも人気が落ちないのは、よほどのものがあるのだろう。
          魚がし12 
          活気と威勢
          魚がし② 
          メニューの一部

メニューから「中落ちしらす丼」(税込み 800円)を選んだ。「海鮮丼」(同1500円)が目玉だが、近くの客の実物を見て、あまりの盛りにビックラ。築地なら多分、2000円以上しそうなボリューム。

待ち時間は7~8分ほど。スピード感がいい。ドンブリを覆っている中落ちとしらすの量に目が点になった。色の濃いみそ汁、サラダ、キュウリの浅漬け、温泉卵、ヨーグルトのババロア付き。これで800円は信じがたい。
          魚がし③ 
          これで800円とは

先日、北千住で驚きのちらし丼を食べたが、ボリュームという点ではこちらに軍配。だが、質という点ではどうか。中落ちは色が薄めで、びんちょうマグロのよう。しらすはしらす干しで、塩分がかなり強め。それがテンコ盛り状態。
          魚がし④ 
          中落ちの量
          魚がし⑤ 
          しらすの量

質より量のどんぶり。醤油にワサビを溶いて、回しがけししてから、ゆっくりとかっ込む。ご飯は酢飯ではなく、炊きたてのフツーのご飯。汗をかきかき、しばし格闘。途中で、シバの女王が「ちょっと一品」のおすすめメニュー「厚焼き玉子焼き」(同550円)を頼んだ。これも驚きのボリュームだった。ちょっと一品どころの騒ぎではない。
          魚がし⑧ 
          かっ込め
          魚がし⑨  
          かっ込め

それを一切れだけもらって、食べる。出汁の効いていない、いわゆる関東の玉子焼き。とにかく甘い。醤油を垂らすと、これが意外に旨い。何とかすべてを平らげると、ベルトのボタンが二つほど弛んでいた。突然、ここが武蔵国の北東の果てであることを思い出した。思えば遠くに来たもんだ。
          魚がし⑥ 
          厚焼き玉子焼き

帰り際、店のスタッフに「マグロは何マグロ?」と聞いてみた。「メバチと本マグロが少し入ってます」とか。村長の舌も麻痺してしまうボリューム、ではある。ああ満腹、満足、満身創痍・・・。

本日の大金言。

僥倖(ぎょうこう)は足元に落ちている。今を楽しむこと、禅の精神にも通じる、「今を楽しむ」。するとあらゆるものに感謝したくなる。それに気づくか気づかないか。





                  魚がし11 


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恐るべき隠れ「ちらし丼」

 東京・兜町での打ち合わせを終え、夜遅く久しぶりに北千住に立ち寄った。

ジャズバー「ゆうらいく」があいにく休みだった。上を向いて歩こう・・・のつもりが横を向いて歩いてしまった。西口飲み屋横丁が近い。ふと以前来たことのある「居酒屋」の明かり。「寿司 魚料理 星丸くん」の紺地の日除け暖簾。以前、友人と4人で来て、そこが安くて美味かったことを思い出した。星丸くん、とはユニークな店名ではある。
          星丸くん① 
          居酒屋?寿司屋?

小腹がすいていたので、入ることにした。店内は意外に空いていた。ブームの立ち飲みバルなどは若い女性客で一杯なのに、こういう昔ながらの本当にいい居酒屋は客がさほど多くない。スマホやテレビなどの及ばない世界。本当の名店はこれ見よがしの宣伝などしない。ここもそうした隠れ名店の一つか?
          星丸くん② 
          メニューの一部

豊富なメニュー。迷った末、「ちらし丼」(1100円)を頼むことにした。ついでにキリンビールもしっかり。これが予想を超える、一二塁間を鮮やかに抜けるヒットだった。
          星丸くん③ 
          いい雰囲気

アテとビールを飲みながら、15分ほど待っていると、二色十草の粋なドンブリがサッと置かれた。落合元中日監督の奥さん似の女性スタッフは愛想がよく、「今日の料理人は当たりですよ」。しばし雑談。店は25年になるとか。
          星丸くん⑤  
          本日の主役
          星丸くん⑦  
          これで1100円とは

ドンブリの上に広がる魚介類に目が奪われた。ざっと見たところ、海老、いくら、イカ、鯛、サワラ、タコ・・・など7~8種類ほどの刺身が惜しげもなく盛られていた。その鮮度と質の高さが見て取れた。さらに卵焼き、キュウリ、ガリ、その横に隠れるようにカンピョウ。大葉の鮮度にも隙がない。うむ。
          星丸くん10 
          ネタの凄み
          星丸くん11 
           中トロの驚き

タコをめくってみたら、その下に見事な中トロが二切れ隠れていた。天然の本マグロではないか、という代物。これで1100円とは信じがたい。しかも表記にはただ「ちらし丼」としか書かれていない。余分な説明は一切なし。プロの矜持(きょうじ)とはこういうものかもしれない。
          星丸くん12 
          回しがけ

すべてが高いレベルで、ネタの仕込みがしっかりと裏打ちされている。唸りながら、どんどん食べ進む。途中でわさび醤油を回しがけし、さらに味わいながら食べ進む。酢飯は柔らかめで、ほどよい。
          星丸くん15 
          たまらん
          星丸くん17 
          たまらん2
          星丸くん13 
          たまらん3

味噌汁が付いていないのがやや残念なくらいで、大いなる満足感の波に襲われながら、箸を置く。舌代を支払う時に、女将さんらしき和服の女性がいたので、「あのマグロ、本マグロの生では?」と聞いてみた。瀬川瑛子似の、やっぱり女将だった。
          星丸くん16 
          見えない場所にも

「わかっていただくと、うれしいですね。ウチは元が魚屋なんですよ。水産会社です。だから安くできるんです」

いい店に出会うと気分がいい。外に出ると、雨が落ちてきそうで、星はなかった。だが、振り返ると、星丸くんがある・・・。

本日の大金言。

たまには横を向いて歩こう。涙が少々こぼれても、横道にだって夢がある。六八九に最大の敬意をこめて。





                   星丸くん18 







山田監督も食べた?「草だんご」

 山田洋次監督「家族はつらいよ2」を観て、いい余韻が残った。山田コメディーの総集編的な映画で、好き嫌いが別れるだろうが、笑いの中に何とも言えないペーソスが残る。人間の業と匂いが笑いに包まれている。戦後の日本がそのまま平田家に重なっていて、展開のスピードやあざといギャグに少々イライラさせられるものの、そうしたことすべてを含めて、これは山田洋次の傑作だと思う。

85歳という年齢を全く感じさせない。脇役陣も渋い。笑いの奥にある、筋金入りのマエストロ・山田洋次の現代日本への醒めた目線が伝わってくる。蒼井優が何故か小津安二郎監督の原節子に重なったりもした。計算が見え隠れするが、それも含めて、この作品は2017年日本映画の金字塔になるのではないか。
          高木屋本舗145 
          寅さんの街へ
          高木屋本舗12 
          人気スポットだが

その余韻を残したまま、翌日、東京・柴又へ。寅さんの街。今回テーブルに乗せるのはかの「高木屋老舗」の草だんご、である。帝釈天の参道には草だんごの店が多いが、村長はこれまで5~6軒ほどしか食べていない。「高木屋老舗」は寅さんの舞台にもなっていて、あまりにも有名過ぎて、へそ曲がりの習性ゆえに、これまで入ったことがなかった。
          高木屋本舗11 
       あまりに有名な高木屋老舗

だが、「家族はつらいよ2」を観た後なので、山田洋次に敬意を表して(?)入ることにした。明治元年(1868年)創業の老舗で、それが店名にも表れている。よもぎ団子は元々はこの周辺の農家の郷土菓子だが、「寅さん」の大ヒットなどで、それが「草だんご」として、全国に知られる餅菓子になった。
          高木屋本舗③ 
          乗ってみるか

明治・大正の古い店構え。下町の活気。歴史の浸みこんだ、磨き抜かれた木のテーブル。その上で、「草だんご」(税込み 350円)を食べる。客は老人から若い人まで、それこそ平田家そのもの。ガヤガヤとうるさいが、それをうるさいと思うか、思わないか。むろん村長はうるさいとは思わない。
          高木屋本舗4 
          磨き抜かれている

「草だんご」は噂通りの美味さだった。人気店なのに、驕りのない、ていねいな作り方。へそ曲がりだが、素直に認めるしかない。これまで食べたどの店よりも、パッと見が明るい。コシヒカリを使ったよもぎ餅はきれいでよもぎの香りが素晴らしい。柔らかさともっちり感がとてもいい。それが5個。
          高木屋① 
          「草だんご」登場

その上に覆いかぶさっているつぶしあんが秀逸。こしあんと粒あんをブレンドしたような滑らかさで、柔らかく炊かれたいい小豆の風味が口中に広がる。添加物などは使用していない。北海道産小豆だそうだが、甘さがほどよく、トロリとしたきれいな余韻が舌の上に残る。ペーソスは隠れているのか、見えない。
          高木屋⑥ 
          ひと目で気に入った
          高木屋⑧ 
          素朴な洗練の世界
          高木屋⑦ 
          柔らかな美味
          高木屋10 
          噂通り

渥美清と山田洋次監督がこの草だんごを食べたかどうか、少々気になった。で、女性店員さんにそっと聞いてみた。

「よく食べたって聞いてますよ。メニューにない特別な揚げ餅なども出したそうです」

高木屋老舗抜きでは寅さんは語れない。「寅さん」シリーズは平成7年暮れ、48作品で終了している。渥美清はすでに亡くなっているが、山田洋次監督は85歳の今も現役で創作意欲も衰えていない。これは凄いことでもある。「家族はつらいよ3」も観てみたい。

本日の大金言。

いい映画は一朝一夕にはできない。立川談志は「落語は業の肯定だ」と喝破した。山田洋次監督にもそれを感じる。「人間はつらいよ」が笑いの底に流れていると思う。



                  高木屋本舗15 



「1個80円」饅頭屋の驚き

 ポンコツ車であちらこちら飛び回っていると、時に思わぬ発見がある。それがほとんど無名の店だとうれしさが倍増する。

今日テーブルに乗せるのは、そんな店である。しかも餅菓子屋とくれば、言うことはない。和菓子屋は中央だけではない。

ある会合に出席するため上武街道をプカプカ走り、群馬・前橋市郊外に入った。あまりにローカルな景色が続く。江木町にある「赤城病院」も近い。一瞬、「だんごとまんじゅう」の看板が見えた。通り過ぎてから、気になって、引き返した。
          菓子処きたづめ② 
          かような場所に
          菓子処きたづめ③ 
          発見の喜び

それが「菓子処 きたづめ」だった。一軒家の餅菓子屋。「酒まんじゅう」の木の看板と藤色の暖簾が何かを感じさせた。これは入るっきゃない。

入ると、だんごと饅頭が数種類ケースに並んでいた。最近ハマっている酒まんじゅうに目が行った。手づくりの本格的な匂いがした。1個80円(税込み)というあまりの安さ。だんごに至って1本60円ナリ。東京だと信じられない価格設定。
          菓子処きたづめ 
          驚きの世界
          菓子処きたづめ① 
          謎のまんじゅう

店は若女将が一人。奥が板場になっているようで、そこに店主がいる気配。まずは酒まんじゅうを3個。もう一種類何にしようか、迷っていると、若女将が「黒桧まんじゅうはいかがですか? うちの看板でもあるんですよ」。黒桧(くろび)って何? 見た目は黒糖入り饅頭のようだが、もっちり感とテカリが違って見えた。こちらも3個(1個80円)ゲットすることにした。

「皮に黒糖と本葛(ほんくず)を入れてるんです。それでこしあんを包んでいます」
「本葛とはすごいね。黒桧って赤城山の最高峰の山のこと?」
「そうです。ウチのオリジナルなんですよ」
          菓子処きたづめ④ 
          二つの世界

そんなやりとりの後、その夜の賞味となった。酒まんじゅうはふっくらと蒸されていて、酒種の香りがほのかに漂う。かなりの大きさ。中のつぶしあんはほどよい甘さで塩気が効いていた。東京・荻窪の「高橋の酒まんじゅう」ほどの感動はないが、かなりのレベル。
          菓子処きたづめ⑥ 
          酒まんじゅう
          菓子処きたづめ⑦ 
          レベルの高さ
          菓子処きたづめ⑧ 
          酒種のいい香り
          菓子処きたづめ⑨ 
          すべて手づくり

さらに「黒桧まんじゅう」の美味さに驚いた。口に入れた瞬間、しっとり感ともっちり感が合わせ技で来た。独特の食感。こしあんのきれいな風味とほどよい甘み。黒糖の香りがかぶさってきた。こしあんも自家製で、この価格で丁寧に作っているのは並みではないと思う。
          菓子処きたづめ10 
          黒桧まんじゅう
          菓子処きたづめ11 
          皮の凄味
          菓子処きたづめ15 
          もっちり感
          菓子処きたづめ13 
          絶妙な合わせ技

店は15年ほどの歴史だそうだが、その前は和菓子の卸しをしていたとか。前橋市内の「あん庵」にも同じものを卸しているそうで、安さと質の高さがぽっと出の店とは違うことがわかった。たまたま出会った餅菓子屋で、かようなまんじゅうを食べられた喜びが、お腹の底からじんわりとこみ上げてきた。まんじゅうこわい、という落語がピカピカと頭をよぎるのだった。まんじゅうやーい。

本日の大金言。

ローカルの和菓子屋にもっと目線を向けよう。しっかりといい和菓子を作り続けている和菓子職人がどこかにいる。それを探す楽しみもまた。



                 菓子処きたづめ16

珍しい縮れた「武蔵野うどん」

 久しぶりに千葉に住む麺類シンジケートからメールが入った。

「不思議なうどんがある。有名なフードジャーナリストが激賞しているらしい。『食べログ』の評価も高い。場所が熊谷の郊外で、ここからは遠すぎる。武蔵野うどんらしいけど、そもそも武蔵野うどんって何? ポンコツ車を飛ばして、村長の舌で確かめてくれない?」

熊谷は確かに遠い。武蔵野うどんは最近よく目にする。さぬきうどんほどメジャーではないが、埼玉北部から東京・多摩地区にかけての、いわゆる武蔵野台地周辺で昔から食べられている郷土うどんのことを漠然と「武蔵野うどん」と呼んでいるようだ。それが商業ベースに乗り始めているらしい。

数年前に埼玉・行田の「元祖田舎っぺ」で、その武蔵野うどんの極致(?)を食べたことがある。角材のような太さとあまりの固さに驚かされた記憶がある。長さも常識を超えていた。コシというより固さ。食べるというより格闘。食べながら「これはうどん界の金子兜太ではないか」と思ったことを思い出した。
          さくら屋 
          いい外観

だが、その店は熊谷でも郊外、後正新田東交差点のすぐ近くにあった。その名も「うんどん さくら屋」。「うんどん」とは妙な言い方だが、このあたりでは昔から「うどん」を「うんどん」と言っているらしい。
          さくら屋② 
          丁寧な手打ち
          さくら屋1  
          期待が高まる

一軒家で、打ち場が外から見えた。いいうどん屋の外観。時刻は午後1時半。平日のせいか、客は意外に少ない。一番人気の「肉きのこ汁うどん」(税込み750円)を頼むことにした。
          さくら屋① 
          肉きのこ汁うどん!

待ち時間は約10分ほど。有名なフードジャーナリスト、食べログ・・・こういった情報をあまり信じないへそ曲がり元記者にとって、これは楽しみな時間でもある。どれどれ、舌を無にして、味わってみるか。
          さくら屋④ 
          きれいなうどん

何よりも麺が面白い。思ったほど太くもなく、ゴワゴワ感もなく、「田舎っぺ」のものとはまるで違っていた。絹のようなつややかな白で、確かに縮れていた。ある種の感動。ユニークとしか言いようがない。だが、金子兜太はどこにもいない?
          さくら屋⑤ 
          武蔵野だって?
          さくら屋⑦ 
          秀逸な縮れ方

まずはうどんだけを賞味。つるっとした食感とのど越し。ほどよいコシ。麺自体に塩気がある。武蔵野うどんというより、伊香保の水沢うどんのようなきれいな食感。悪くない。
          さくら屋4 
          フツーに美味い

醤油ベースの温かい肉きのこ汁は器が大きく、シイタケとロース肉、それにネギが浮いていた。ロース肉は思ったほど多くない。だが、シイタケは香りが高く、かなりのレベルのもの。鰹出汁が効いていて、甘めでほどよい薄味。
          さくら屋⑨ 
          肉は多くない
          さくら屋13 
          シイタケの秀逸

うどんが縮れている分、汁がよく絡む。店のスタッフに聞くと、店は14年ほどの歴史で、「昔からこのあたりで作っているうどんです。だから、珍しいと言われてもピンときません」とか。

ボリュームは思ったほど多くはない。フツーに美味いうどんで、正直に言うと、麺が縮れている以外、特段、際立ったものは感じない。むろん食べて損はない。だが、フードジャーナリスト、食べログというキーワードはやっぱりなあ、ということを確信した。

本日の大金言。

うまいか、まずいかは個人的なものだと思う。それをビジネス化しようとすると、どこかに無理が生じる。ネットで起きている様々な問題は、その情報を吟味する側の能力の問題でもある。当たりもハズレもフェイクもある。故にたまには眉に唾を付けて見るくらいの余裕が欲しい。自戒を込めて。


                 さくら屋11

「炒飯専門店」謎の隠し味

 久しぶりに東京・神田神保町へ。ここに来るとなぜか落ち着く。ペンの総会の前に、古本屋街をぶら歩き。その足で、以前から気になっていた店で腹ごしらえをすることにした。腹が減っては戰が出来ぬ。

白山通りに出るとすぐ「炒飯屋」の看板が見えた。チャーハン好きにとっては、これほどベタな店名を堂々と掲げる店を見逃すわけにはいかない。
          炒飯屋① 
          ン、炒飯屋だって?

調べてみたら、あの餃子の名店「神田餃子屋本店」の系列店らしい。それが炒飯に特化したということか。時間が午後2時前だったこともあるのか、店内は比較的空いていた。
          炒飯屋1 
          ベタな店内

厨房では中国語が飛び交っていた。神保町のど真ん中に中国というのはポエム。京都のグルメ先生が見たら、きっと顔をしかめる。ざっと見たところ、炒飯の種類は13~15種類ほど。これだけでもこの店が「炒飯屋」を堂々と掲げる資格があると思う。
          炒飯屋④ 
          炒飯がいっぱい

最も定番の「炒飯屋の炒飯」(税込み680円)を頼むことにした。あまり関係ないが、北千住に「酒屋の酒場」という居酒屋がある。TVマンに教えてもらった店で、メチャ安の上に旨い。「〇〇の〇〇」という表記にハズレは少ない。プライドの念押し、座布団2枚ってとこか。

中華鍋を操る軽やかな音といい匂いが漂ってきた。待ち時間は短く、6~7分ほど。強力な火力で、炒飯をいためる。白い大皿に見るからに旨そうな炒飯が盛られていた。盛りがフツーの炒飯の1.5倍ほどある。鶏スープ付き。
          炒飯屋⑥ 
          炒飯屋の炒飯
          炒飯屋⑦ 
          大盛りではない
          炒飯屋2 
          これで普通盛り
          炒飯屋3 
          鶏スープ

まずは鶏スープ。薄い塩味で、鶏の出汁がじんわりと咽喉に滲み込んできた。旨みと酸味が悪くない。

レンゲで炒飯屋の炒飯を口に運んだ。まず最初のアタックでパラパラ感がレベルを超えていることに軽く驚く。具はチャーシュー、ネギ、卵という定番の世界だが、ライス一粒一粒にしっかりと火が通っていて、旨味が波のように押し寄せてきた。
          炒飯屋⑧ 
          謎の隠し味

何かが違う。よく見ると、茶色い細かい何かがいい味わいを加味していることに気づいた。これは何だ? 観察の結果、どうやら油で揚げた玉ネギ(ネギ油?)のようなものと思う。この隠し味がシンプルな薄味の世界に深味を加味している。八角の匂いもかすかにする。
          炒飯屋⑨ 
          叉焼の存在

ライスのパラパラ感と独特の旨味。ひょとしてコメが日本のコメではない? これはどこかで食べた記憶がある。ベトナム・ホーチミン市で食べたチャーハンに似ていることを思い出した。日本の炒飯ではなく、大陸の炒飯。ボリュームも大陸的・・・そう考えると納得がいく。
          炒飯屋13 
          何故ナルト?

食べ進むと、何故か薄いナルトが二枚出てきた。どこか大陸的ユーモアを感じて、つい笑ってしまった。

きれいに食べ終えると、大いなる満足感に襲われた。ベルトの穴が二つほど弛んだ。腹が一杯で戦ができるか、それが問題だが。

本日の大金言。

炒飯は中華料理の定番だが、日本のコメは湿気と粘りけが多く、それがコメ自体の旨みになっている。好みの問題でもあるが、炒飯にはパラパラ感の強いアジア米の方が合うかもしれない。





                 炒飯屋11 

昭和喫茶「カツサンド」の実力

 数は少なくなったが、昭和の正統派喫茶店は捨てがたい。マニュアル対応のスタバとかタリーズにポエムは感じないが、ここにはポエムが残っている気がする。つまり人間の匂いがする。

埼玉・大宮東口界隈をぶら歩き中に、その正統派喫茶店をたまたま見つけてしまった。裏通りの大門町でのこと。大宮には「伯爵」など純喫茶(もはや死語だが)の殿堂が残っているが、ここもその一つだと思う。
          珈琲専門館①  
          裏通りの至福?

「珈琲専門館 BEANS」という看板で、あの「珈琲館」のような雰囲気。だが、間に「専門」の文字と「BEANS」の文字が入っているので、別系列かもしれない。
          珈琲専門館 
          昭和の喫茶店

入り口にあるランチタイムメニューの「ロースカツホットサンド」に心が動いた。コーヒーとセットにすると、700円(税込み)という心温まる価格。手抜きの匂いがしない。ロボットが隠れていそうもない。
          珈琲専門館② 
          安くて美味い?

店内に一歩踏み込むと、まさに古い正統派の純喫茶そのもの。煙草の煙がシックな店内のあちこちで揺れている。煙草を吸わない村長だが、こうした世界を完全否定する気にはならない。BGMはカーペンターズというのも悪くない。
          珈琲専門館4 
          常連が多そう

おしぼりがポエム。テキパキとした店員さん。予想通り、「ロースカツホットサンド」は当たりだった。待ち時間は15分ほど。つまり、しっかり作っていることが推測できる世界。スタッフに聞いてみたら、店は30年になるそう。
          珈琲専門館④ 
          ロースカツホットサンド
          珈琲専門館⑤ 
          塩をパラリ

木製のプレートに乗ったロースカツホットサンドとミニサラダ。トンカツは揚げたてで、ロース肉自体の厚みは7~8ミリほどで、さほどの厚さではないが、手づかみでガブリと行くと、カラリとしたコロモと柔らかな肉の旨みが口中に広がった。いいカツサンド。何よりもたっぷりかけられたソースの甘みとマスタード、それにマーガリンが絶妙である。
          珈琲専門館⑦ 
          本格的だった
          珈琲専門館⑧ 
          手抜きがない
          珈琲専門館⑨ 
          まずはひと口
          珈琲専門館3 
          揚げたて

レタスと千切りキャベツもほどよい。手づくりのいい感触、食感。ミニサラダの鮮度も一定のレベルで、この店の手抜きのなさがわかる。コーヒーの美味さも評価したい。ふと気になって、食べログの評価を見たら、意外に低い。やっぱりなあ、と妙に納得。いい店は数字では評価できない。

本日の大金言。

世論調査なる世論操作がある。悲しいかな、情報をまず疑ってみることが必要な時代になっている。安倍内閣支持の数字などその格好の例だと思う。その結果の共謀罪成立だとしたら? 食べログの問題と世論調査の問題は似ていると思う。高度情報化社会は高度情報操作社会に繋がっている。そのことを頭に置いて、自分の舌と頭を磨くしかない。タワシでごしごし、一票の重み。





                  珈琲専門館11 

カフェ木村家の「あんこパイ」

 東京・銀座のど真ん中にある「木村家」はあんぱんの元祖として、あまりにも有名。何せ日本で初めて「あんぱん」なるものを作ったのが、明治7年(1874年)というのだから恐れ入る。あの明治天皇も木村家の酒種あんぱんのファンだったのだから、当時の東京っ子の舌を魅了したのもわかる。
          銀座木村家カフェ① 
          あんぱんの夢

まんじゅうの皮をパン生地にしただけ、という声もあるが、コロンブスの卵であることは疑いようもない。あんぱんの発見は、日本食文化の歴史の中で、アメリカ大陸発見と同じくらいの出来事だったと思う。クリームパンもメロンパンもあんぱんがなければ、生まれなかったに違いない。アンパンマンだって、出番が来なかったのは確かだ。
          銀座木村家カフェ② 
          2階はカフェの夢?

その2階にあるのが「カフェ木村家」である。土日などは行列ができるほどの人気カフェ。で、本題。今回はここで食べた「あんこパイ 生クリーム添え」(コーヒーか紅茶付き 税込み950円)をテーブルに乗せようと思う。
          木村家カフェ 
          たまりませ~ん

「あんこパイ」自体は今ではそう珍しくもないが、ここの「あんこパイ」はレベルが違う。アップルパイのように本格的なパイ生地で、中に詰め込まれたつぶあんの量も申し分がない。それに生クリーム添え、となると、これはもはや甘党にとっては和洋折衷の一つの夢の頂点だと思う。
          木村家カフェ① 
       あんこパイ生クリーム添え

白い磁器皿にカットされた、いい焼き色のあんこパイが寝そべっている。横には生クリーム。パウダーシュガーが夢のようにかかっている。フォークとナイフが添えられていて、コーヒーがいい香りを放っている。銀座4丁目の景色がガラス張りの向こう側に見える。上から目線(笑)。ポエム。
          木村家カフェ③ 
          一つの夢の形

何よりもパイ生地の美味さ。よくあるような冷凍ものの匂いがしない。焼き立てをそのまま持ってきたような歯ごたえと味わい。外側がパリッとしていて、内側はしっとり。このパイ生地だけで、木村家の実力がわかる。
          木村家カフェ④ 
          三角関係
          木村家カフェ⑥ 
        つぶあんとパイ生地

中のあんこはつぶあんで、十勝産小豆の風味も上品な甘さも木村家のもの。この銀座本店だけの特製でないのがやや残念だが、コーヒー付きなことや店のリッチな雰囲気を考えると、950円という価格設定はリーズナブルだと思う。カフェなら虎屋よりも木村家。
          木村家カフェ⑦ 
          何か御用?
          木村家カフェ⑧ 
       頬被りはいけませんぜ

生クリームは鮮度も味わいも上質。これをあんこパイに付けて口中に運ぶと、さわやかな草原にでもいるような気分になる。コーヒーは苦味が強く、それなりのレベルだが、すっかり食べ終えると、今ここにいる幸せが波のように押し寄せてきた。気分は完全オノボリサン。あまり関係ないが、オリバー君のその後の人生はどうだったんだろう?

本日の大金言。

銀座四丁目には夢がある。明治の夢がある。あんぱんの夢がある。永田町の思い上がりとの落差。日本は今、いつか来た道を再び辿ろうとしているのではないか。官邸という名の大本営。空気という名の忖度と自己保身。まだ間に合う。彼らは手を汚さない。あんぱん一票をぶつけるのも悪くない。


                  木村家カフェ10

「カレーあえそば」の爆発力

 クレヨンしんちゃんの街、埼玉・春日部市はラーメンの激戦区でもある。「麵や豊」「井之上屋」「会津ラーメン和」など地味だが、いい店が多い。

その一つが、西口から歩いて5分ほどの距離にある「大黒屋本舗 金狼」である。古くからある二郎系のラーメン屋だが、3年ほど前に「狼煙」で修業した店主が引き継ぎ、「金狼」という名前を入れた。このあたりの経由については、よくわからない。
          大黒屋本舗 
          いい店構え

だが、やや煤けたような、質素な外観は相変わらず健在で、久しぶりにここに入ることにした。入り口に「限定10食 カレーあえそば」(税込み750円)の手書き文字が見えたからである。「まぜそば」は多いが、「カレーあえそば」というのは初めて。お世辞にもきれいとは言えないが。
          大黒屋本舗1 
          きれいではない

午前11時半と時間が早かったので、客は一組ほど。コの字型のカウンター席は12席ほどしかない。木のカウンターが歴史を感じさせる。店主が一人、女性スタッフが一人。券売機で「カレーあえそば」を押した。750円という価格設定もくすぐられる。
          大黒屋本舗② 
          いい雰囲気

待ち時間は15分ほどと長め。長めの理由はすぐわかった。十草模様のドンブリに、ドデカい炙りチャーシューと焦がしネギ(油ネギ)の褐色の海! しかも中央にはタマネギのみじん切りと万能ねぎ。タマネギの上には赤唐辛子が一本。シンプルだが、見事な構成で、色彩感覚も悪くない。
          大黒屋本舗④ 
          おおおの登場
          大黒屋本舗③ 
          お見事な構成
          大黒屋本舗⑤ 
          限定の一品

混ぜ混ぜしようと思ったが、まずはその下に潜んでいる麺を引き出すことにした。モワリとした湯気を引き連れて、極太麺が現れた。全粒麺のような褐色で、底に沈んでいる醤油ダレが絡みついてきた。濃厚な魚粉の匂いとカレー粉の匂いが立ち上がってきた。ラードのこってり感も付いている。
          大黒屋本舗⑥ 
          極太麺
          大黒屋本舗⑦ 
          タレの存在

ひと口。極太麺はゴワゴワとした食感で、コシうんぬんを通り越して、かなり硬め。それは悪くはない感触で、着丼まで時間がかかったのはこの麺ゆえとわかった。
          大黒屋本舗10 
          うどんではない

だが、予想以上の味の濃さ。タレのこってり感はジャンクラーメンと言ってもいいくらい。カレーの辛さと花椒のような辛さが口内で爆発する。タマネギがそれをほんの少し中和するが、追い付かない。
          大黒屋本舗⑨ 
          お見事チャーシュー

炙りチャーシューは脂身が十分にあり、柔らかくて旨い。この内容で750円というのは安いと思う。限定10食というのもうなずける。重量級のあえそば。

だが、食べ終えると、爆発後の口内を静めるのが急務となった。水を2杯飲んだ。「カレーあえそば」の余韻がしばらく口内に残った。ガーリックの匂いも。かつて大ヒットした角川映画、松田勇作の金狼が頭をかすめた。店主はひょっとして勇作ファン?

本日の大金言。

ラーメンはもはや一つの宇宙だと思う。これほど短期間で世界に広がった戦後の日本食は、寿司に匹敵する。いや、その多様性は寿司を超えている。無化調からジャンクまで、海・山・大地がドンブリの中で進化し続けているなんて。天国のダーウィンも驚いてる?



                 大黒屋本舗11 

まさかの絶品「冷やしラーメン」

本日はかつて「西の西陣、東の桐生」とうたわれた、一方の雄、絹織物の街・群馬・桐生市で遭遇した冷やしラーメンを取り上げようと思う。

桐生市には隠れたいい店が多い。さすがに過日の賑わいはないが、「東の桐生」時代の名残りは探せば、街の至るところに残っている。例えばうなぎの「泉新」、洋食屋「芭蕉」などは、坂口安吾や棟方志功が愛した店としても知る人ぞ知る存在。名店は一日にしてならず、でもある。
          ルースター 
          ラーメン屋?

だが、新しい動きもある。本町通りをぶら歩き中に、たまたま見つけたのが「ルースター」だった。訳すと雄鶏。ラーメン屋というより、しゃれたカフェバーの造り。入り口のホワイトボードには「自家製麺」とか「化学調味料不使用」という表記。
          ルースター② 
          かなりのこだわり

過剰な説明は野暮だと思うが、この小さな店構えにはそれを超える何かを感じてしまった。村民2号も「よさそうな店ね」。午前11時半、開店と同時に入ることにした。

L字の白木のカウンター席が7つほど。厨房がオープンキッチン形式で、隅々まで気配りが行き届き、隙がない。そこにいい雰囲気の店主が一人。聞いてみると、昼はラーメン屋、夜はワインバーとか。「もう5年になります」とも。
          ルースター③ 
       まさかの冷やしラーメン

当たりの気配。夏季数量限定「冷やしラーメン」(税込み800円)を頼むことにした。醤油と塩2種類あり、醤油を選んだ。村民2号は「ラーメン」(塩、同700円)。

目の前で作る過程がすべて見える。これはよほど自信と意志がないとできない世界でもある。12~3分ほどで「ラーメン」、続いて「冷やしラーメン」の順で着丼。正午前だというのに、客が次々とやってくる。
          ルースター1 
        こちらは定番の塩ラーメン
          ルースター⑥ 
        こちらが冷やしラーメン

「冷やしラーメン」は桐生では珍しい。冷やし中華ではなく、冷やしラーメン。山形の「栄屋」が有名だが、東京でも少しづつメニューに出す店が増えている。
          ルースター⑦ 
          隙のない構成

鶏ガラ中心の冷たい醤油スープが美味。そこに鰹と昆布出汁が加えられているようだ。しっかりと味付けがしてあり、無化調に多い物足りなさがない。旨みと奥行きが舌にじんわりと滲み込んでくる。
          ルースター⑧ 
          秀逸なスープ

麺は細麺で、コシが十分にある。盛岡冷麺のような食感で、これが素晴らしい。近い場所に北関東でも有数の自家製ラーメン店「芝浜」があるが、村長の好みはこちら。
          ルースター12 
          自家製細麺

具は自家製チャーシュー、穂先メンマ、オクラ、それに千切りミョウガと青ネギ。よく考えられた構成で、すべてのレベルが相当の高みにあると思う。意外な発見に心が躍ってしまった。
          ルースター⑨ 
          具の秀逸
          ルースター14 
          穂先メンマ

もっとも気に入ったのは、穂先メンマ。これまで食べた中でもベスト5に入る美味さだと思う。

「大変ですけど、一人で全部やってます。人を使うと気疲れするし、それよりも自分で全部やった方が気が楽です」(店主)

「スープがなくなり次第終了」というのも、店主の動きを見ているとうなずける。
          ルースター10 
          発見の発見

「いい店を見つけたわね。スープを一滴も残さず飲んだのは随分久しぶりよ。桐生にもこういった新しい、いい店が出来てると思うと、うれしくなるわ」
辛口の村民2号が珍しくホメた。帰りに小松屋で「花ぱん」を買って、ゴッドマザーと老犬へのお土産にすることにした。

本日の大金言。

地方都市の衰退と混迷は深刻である。日本は東京だけではない。かつて栄華を極めた桐生にも新しい星が誕生している。こうした動きこそが日本の未来をほんの少しだが、明るくすると思う。永田町の体たらくよりも、地方にこそ光を。



                   ルースター15

涙の「ベーコンポテトあんぱん」

 「アーケード商店街・勝手に番付委員会」としては、十条商店街と並ぶ東京のもう一方の横綱「武蔵小山商店街」を外すことはできない。

昭和20年、東京大空襲でこのあたり一帯も消失したが、焼け跡の中から一人二人と立ち上がり、昭和31年(1956年)に最初の商店街(パルム)が完成、東洋一の長さとビッグニュースになった。今では全長約800メートル、そこに約250店舗がひしめき合っている。
          武蔵小山商店街 
                                    武蔵小山商店街!

今回テーブルに乗せるのは、その中でも、最も庶民的なパン屋さん「こみねべーかりー本店」である。はっきりした創業年は不明だが、「50年くらいになるわよ」(地元の主婦)とか。

ここの凄いところは、とにかく安くて美味いこと。故に地元の客でいつもあふれている。特にあんぱんが人気で、あんぱんだけで10種類くらいある。いつも焼き立て、入り口ででっぷり太った店主(?)がいい雰囲気で客をさばいていた。惣菜パンも実に美味そう。
          こみねベーカリー 
          こみねべーかりー!
          こみねベーカリー③ 
          夢のパン屋さん?

どれにしようか悩んだ末、「ベーコンポテト」(1個税込み180円)と残りわずかになっていた「つぶあんぱん」(同110円)をゲットした。見ただけで密度の濃さがわかった。
                                   込ねベーカリー 
         たまりまへん!
                                   こみねベーカリー② 
          時空を超えて

だが、イートインコーナーがない。仕方なく、近くの喫茶店でアイスコーヒーを頼んで、こっそり食べることにした。この手のパンは焼きたて、作りたてに限る・・・などとつぶやきながら。

「ベーコンポテト」はパン生地のもっちり感がとてもいい。それにマッシュドポテト、チーズ、マヨネーズ、ベーコンがどっさりと練り込まれていた。手に取った瞬間、ずっしりとした重みとその大きさに圧倒される。黒ごまの点々も食欲をそそる。
                                    こみねベーカリー1 
          夢の凝縮?
          こみねベーカリー3 
          じゃがいもコラボ
                                    こみねベーカリー4 
          夢の拡散?

想像を超える旨さだった。妙な味付けがなく、薄い塩味が素材を引き立てている感じ。チーズとマヨネーズが効いている。かなりのボリュームで、少食の人ならこれ一個で十分かもしれない。

続いて、つぶあんぱんへ。こちらも持った瞬間の重さに「うむ」となった。二つに割ると、しっとり感のあるパン生地の中から、重量級のつぶしあんが現れた。その恐るべき量。フツーのあんぱんの優に2倍はある。質より量かな・・・とも思ったが、ひと口でそれが間違いだとわかった。
                                   こみねベーカリー⑥ 
          夢かうつつか
                                   こみねベーカリー⑨ 
          110円の夢?

小豆の風味といい、質といい、やや控えめな甘さといい、一級品のあんこだと思う。あんこの量だけでいうと、大島の「メイカセブン」の薄皮あんぱんの方が凄いが、質という点ではこの「こみねべーかりー」の方が上だと思う。110円というのも信じがたい。
                                   こみねベーカリー⑦ 
          たまりまへん

2個食べ終えると、お腹がいっぱいになった。これだけのレベルのあんぱんをこの価格で10種類も揃えているパン屋は、都内でもここ以外にはないと思う。どこか素朴な、昭和の職人的なパン屋さん。

武蔵小山は青春時代によく行った場所。駅前はきれいに再開発され、赤ちょうちん街もあのパチンコ屋「26号線」も消えていた。彼は昔の彼ならず。街も昔の街ならず。だが、リニューアルしたようだが、「こみねべーかりー」はほとんど当時の面影を残していた。空が目に染みることもある。赤門にいた変人・浦野さんはどうしているんだろう?

本日の大金言。

武蔵小山商店街には今流行のオシャレなコッペパン屋もできていた。スマホ片手の行列。その横を素通りする。流行って何だろう?








                                                                   こみねベーカリー5 

ラーメン王国の隠れ名店

 首都圏から一番近いラーメン王国・佐野へとポンコツ車を飛ばした。ときどき無性にここのラーメンを食べたくなる。

食べログなどの人気ランキングでは、日向屋、大和、ようすけなどがいつもトップに位置している(6月4日現在)が、食べログ人気がそのままいいラーメン屋とは限らない。確かに美味いのは美味い。だが、これまで何度もネット上の「絶品情報」にガッカリさせられてきた経験上、それ以外の隠れた名店を探すのが楽しみになっている。第一、行列が嫌いだ。
          日光軒 
          当たりかハズレか?

ネットの情報よりナマ足の情報・・・佐野の街をぶら歩きしながら、あれこれ情報収集活動。これがまた楽しい。するとお笑い好きの女子高生三人組から、「駅前にハゲそうになる店がある」との情報をつかんだ。JK言葉で「ハゲそう」とは「すごい!」の意味だそう。何ちゅう言語変換か。それが佐野駅前の「日光軒」だった。佐野なのに日光軒とはこれいかに?

これが「はげそう」どころか、はげてしまった
          日光軒① 
      異端ではなく老舗だった

外見はどこかアジアンカフェ風。調べてみたら、創業が昭和23年(1948年)。佐野の中でも老舗の部類。一時ラーメン屋を辞めて、カフェに衣替えしたが、5年ほど前に三代目がラーメン屋を復活した。その間の事情は知らないが、創業当時の作り方と味をそのまま初代の祖父から引き継いでいるそう。

壁面の落書きと木のテーブルがどこかリゾート地のバル風。店内の雰囲気は老舗の佐野ラーメン屋とは到底思えない。BGMのウクレレが妙だ。
          日光軒③ 
          まさか、の世界
          日光軒② 
          メニューの一部

だが、ここで食べた「手打ち佐野ラーメン」(税込み630円)と「餃子」(3個 同260円)には正直、驚かされた。これまで佐野の美味いと言われるラーメン店はほとんど制覇したつもりだが、これは隠れた名店だと思う。村長の中ではベスト5に入る美味さ。
          日光軒⑤ 
        目が吸い込まれた

まずは「手打ち佐野ラーメン」。透き通った醤油スープで、レンゲでひと口。いきなり極上の旨みが滲み込んできた。鶏ガラ、豚骨、それに魚介類(煮干し?)が見事に融合していた。ため息・・・これほどのスープは佐野でもあまり経験がない。
          日光軒⑦ 
          これは、の世界
          日光軒⑥ 
          コショウをパラリ
          日光軒10 
          スープの秀逸

手打ちの自家製麺は、平打ちの太麺で、歯ごたえがいい。縮れ具合、コシ、もっちり感・・・ともに村長の好み。スープのまろやかな旨味が実によく絡む。
          日光軒11 
          手打ち麺の秀逸
          日光軒12 
          煮豚チャーシュー

煮豚チャーシューはかなり大きめのものが一枚。肉の旨さを引き出していて、妙に柔らかすぎないのがいい。メンマは懐かしい味わい。そのシャキシャキ感がたまらない。ナルトと海苔は小さい。これが昭和23年創業当時のものとは。「佐野ラーメンって本来はこういうものだったんですよ」(店主)とか。
          日光軒3 
          焼き具合い

餃子は皮まで手作りで、小さいながら、ボリュームがある。こちらもイケてる。具は野菜中心だが、何とも言えない旨味が舌先に残る。肉を使わずにテンペ(インドネシアの大豆発酵食品)を使用しているそうで、イスラムの人にも食べてほしいとか。
          日光軒4 
          うむむ、の世界
          日光軒5 
          名店、めっけ

午前11時半に入ったが、客がどんどん増えてきた。地元客ばかりでなく、観光客も混じっている。女子高生もいる。それでも人気店のようなスマホ片手の行列はない。いい店を見つけた気分。

最後に「日光軒」の由来を聞いたら、「創業者のおじいちゃんが日光好きだったからですよ(笑)」(三代目店主)。その時になって、店主が平ザルで麺をすくい上げていることに気がついた。さり気ないこだわりがいい店の条件でもある。

本日の大金言。

いい店は隠れている。テレビやネットの情報は話半分と割り切って、最後は自分の足と舌でいい店を探す。むろん外れることもあるが、それがこのフェイク時代の対処法だと思う。



                 日光軒7 


デパ地下の「鶏めしおにぎり」

 たまにデパ地下めぐりをしないと、頭がクラクラしてくる。ほとんどビョーキ。東京・日本橋高島屋が特に好みだが、上野松坂屋も縄張り(と勝手に言ってます)である。よたよた犬の縄張りめぐり。
          吉野鶏めし④ 
        デパ地下は宝の山?

絵画展を観た後に、ちょいと寄ってみた。九州フェアの真っ最中。すると、いい匂いが鼻腔をくすぐった。「吉野鶏めし」の実演販売が行われていた。大分・吉野地方に伝わる郷土料理で、「吉野鶏めし保存会」によるもの。全国のデパートなどで人気を呼んでいる。東京駅や日本橋「えび寿」などでも見かけたことがある。
          吉野鶏めし② 
          おおおの誘惑

さっそく「おにぎり3個入り」(税込み463円)を買い求めた。ウマズイめんくい村に持ち帰って、夕飯の一品にすることにした。

白ワインと枝豆などを用意し、村民2号とゴッドマザーが笑顔で待ち構えていた。イヤな予感・・・。
           吉野鶏めし⑤ 
          ささやかな夕飯
          吉野鶏めし⑥ 
          吉野鶏めし

「あら、大分のおにぎりだって? 美味そうだねえ。生きててよかったよ」
「なんで3個しか買ってこないのよ。一人3個として9個必要でしょ」
「鶏めしだからトリっこになるよ、こりゃ。ぐっひっひ」
「グルメ漫画の『美味しんぼ』でも紹介されたほどの逸品だよ」

くちばしのつつきあい。だが、ひと口食べた瞬間、全員が「うんめえ」となった。うんめえ共同体。
          吉野鶏めし⑧ 
          どないでっか?

ゴボウと地鶏を醤油と砂糖などで甘辛煮して、それを米と一緒に二度炊きしたもの。地鶏の出汁が効いていて、旨味が何とも言えない。米のもっちり感とゴボウと地鶏が融合している。絶妙な旨さだと思う。
          吉野鶏めし12 
          ガブリと行け
          吉野鶏めし11 
          鶏肉とゴボウ

「鶏の甘い脂がいい具合ににじみ出ていて、米が飴色につややか。さすが村長、いい買い物をしたわね」
「やっぱり一個じゃ足んないよ。今度はいつ行くんだい? 今度はちゃんと9個買ってくるんだよ」
「お金は?」
「アタシの年金はアテにしないでおくれ。デーサービスでいっぱいいっぱいだよ」
          吉野鶏めし14 
          桃色ため息

ゴッドマザーの食欲が何故かこのところ増加している。村に来る前はほとんど何も食べない日々が続いていたのに。10メートルも歩けないのに、口と食欲はよく動くようになってきた。その分、村長は沈黙するのみ。

本日の大金言。

「吉野鶏めし保存会」は地元のおばさんたちが1988年(昭和64年)に立ち上げ、会社化した。当時の平松守彦知事が提唱した「一村一品運動」に連動したもの。地域振興のアイデアとしては素晴らしいものだった。当時、オバタリアン現象も話題になったが、こっちのおばさんたちは地域を活性化した。




                  吉野鶏めし15 



プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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