昭和喫茶の「ポークジンジャー」

 赤羽つながりで赤羽好き、という訳のわからない出だしで、今回テーブルに乗せるのは喫茶店の「ポークジンジャー」であります。

ただの喫茶店ではない。「昔ながらの喫茶店」というキャッチを堂々と押し出している、その名も「友路有(トゥモロー)赤羽本店」。店名まで昭和のベタなダサさ。朝5時半から営業しているのは喫茶店ではここが初めてとか。創業は1970年代としかわからない。赤羽にはいい喫茶店が多いが、ここもその一つ。
          友路有 
          王道の喫茶店?

東口を出るとすぐ右に交番があり、その隣のビルの2階。1階はミスタードーナッツ。階段をトントンと上ると、古き良き純喫茶(死語だが)の風情。入り口に「酔っぱらいお断り」の大きな文字。興ざめだが、ここがディープな居酒屋の街だということを思い知らされるようで、むしろ微笑ましい。
          友路有③ 
          入店禁止とは

ちょうど昼めし時で、ランチメニュ―の中から「ポークジンジャー」(コーヒー付き 税込み980円)を選んだ。喫茶店とは思えない本格的なメニューがズラリと並んでいる。
          友路有④ 
          ランチメニュー

煙草を吸うOLらしき女性、厚化粧のおばはん、オシャレな主婦、不動産屋風オヤジ・・・赤羽の縮図が、クラシックな落ち着いた空間にくっきりと陰影を刻んでいる。ガラス張りの窓から駅のターミナルが見下ろせる。ポエムな雑踏の中の孤独。
          友路有10 
          赤羽の下界?

10分ほどの待ち時間で、「ポークジンジャー」がやってきた。国産豚ロース肉を使用した洋食屋のポークジンジャーのようで、ひと目でウムとなった。ワカメの味噌汁と冷奴がうれしい。ご飯の盛りは少なめ。
          友路有⑤ 
        いい匂いとともに
          友路有⑥ 
          洋食屋のよう

ポークジンジャーは6切れ。ボリュームは十分にある。生姜と薄口醤油、それに滲み出た脂がジュウジュウといい匂いを放つようで、食欲をそそる。生つばが出かかる。
          友路有2 
          国産豚ロース

味噌汁をズズとひと口飲んでから、箸でポークジンジャーをガブリと行く。味噌汁は出汁の効いた穏やかな味わい。ポークジンジャーの柔らかな感触と肉汁。喫茶店のサイドメニューとは思えない旨さ。擂った生姜がたっぷりかかっていて、薄口醤油ベースのタレとともに肉の旨さを邪魔しない。むしろ引き立て役に徹している。
          友路有⑦ 
          コックの腕
          友路有⑧ 
          味噌汁と冷奴

ご飯は可もなく不可もなし。あえて言うと、昔の家庭的なご飯。冷奴は鰹節しかかかっていないが、素朴に旨い。
          友路有⑨ 
       サラダとスパゲッティ
          友路有12 
          最後の一点

サラダと細めのスパゲッティが意外に効いている。腹九分の満足感。食後のコーヒーは焙煎が効いていて苦め。ミルクがコーヒーフレッシュなのはいただけない。「昔ながら」ならここは手抜きせず、ちゃんと自家製のコーヒー用ミルクにしてほしい。せっかくのいい料理と雰囲気が最後の一点でちょっとこけてしまった。座布団一枚取り。むろん個人の感想ではあるが。

本日の大金言。

居酒屋の街・赤羽には、目立たないがいい喫茶店が多い。「梅の木」「プチモンド」など。赤羽は今や「新婚夫婦が住みたい街ランキング」で上位に位置するまでになっている。林家ペー・パー子だって住んでいる。





                  友路有11 






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「冷したぬき」と明治煉瓦窯

 「ちょっといいそば屋があるんですよ。食べに行きましょう」

個展開催中の画家夫妻から誘われて、村民2号ともども茨城・古河市郊外まで便乗した。すぐ近くに国の重要文化財「野木町煉瓦窯」もあり、それも見ようとなった。夫妻の大型車の中で話題が弾む。小さなお孫さんも「ソフトクリームが食べたい」と一緒に助手席に陣取っている。下駄ばきがかわゆい。ちなみに村長は草履。

室町時代末期は古河公方が治め、江戸時代初期は秀忠の知恵袋・土井利勝が君臨し、日光街道・古河宿としても栄えた街でもある。その北の外れ、松並町にその「ちょっといい」そば処「松川屋」が白い暖簾を下げていた。一軒家の古いそば屋。北関東にはいいそば屋が多い。
          松川屋② 
          いい店構え

夫妻もそば好きで、村長がそば好きなことを知っている。たまたまなのか、正午過ぎだがお客はそう多くはない。テーブル席と小上がりの座敷があり、どこかのどかで落ち着く。
          松川屋3 
          客は少ない
          松川屋③ 
          ええのう

夫妻は通らしく「ざるそば」(税込み 630円)を頼み、村長は夏季限定の「冷したぬきそば」(同780円)を頼むことにした。村民2号は「もりそば」(同470円)と天ぷら「野菜天盛り合わせ」(同520円)。

12~3分の待ち時間で、ざるともりが置かれ、「冷したぬきそば」と野菜天盛り合わせが続いてやって来た。このそばが懐かしいそばで、グレー地に黒い星が滲むように光っていた。細打ちではなく、気持ち太めの手打ちそば。洗練というより野暮に近いそば。
          松川屋④ 
          もりそば
          松川屋⑥ 
          冷したぬきそば
          松川屋⑤ 
          野菜天盛り合わせ

「冷したぬき」はキュウリ、かまぼこ、ハム、カニもどき、錦糸卵が色鮮やかにいい世界を作っていた。細かい天かすが星雲のようにたっぷりとばらけていて、ひと目で気に入ってしまった。天かすの少ない「冷したぬき」があまりに多いが、これぞ正統派の冷したぬきそばだと思う。村長にとっては東京・越中島の「宝盛庵」以来のドンピシャ。
          松川屋⑦ 
          こうでなくっちゃ
          松川屋⑨ 
          黄金の時間?

つゆをゆっくりとかける。やや甘めだが、カツオの出汁が効いている。野暮に近いそばをたぐる。コシともっちり感、つるっとした感触、そばの風味が絶妙に田舎のそばを演出している。二八そばか三七くらいのそばだと思う。つなぎは多分小麦粉。それが絶妙に美味い。
          松川屋10 
        絶妙な加減

キュウリの鮮度、かまぼこの鮮度、何よりも天かすのサクッとしたカリカリ感がとてもいい。そばによく絡む。皿が平皿に近いので、最後は少し食べづらいが、ボリュームもちょうどいい。
          松川屋11 
          正統派
          松川屋① 
          素材のよさ

「野菜天もカラッと揚がっていて美味いわ。ナスもかぼちゃも美味い。妙に洗練されていないのがいいわ。こういうそば屋はありそうであまりないかもね」
辛口の村民2号もうなずいている。
          野木町煉瓦窯① 
                                  127年前の世界

そのすぐ後、お隣りの野木町へ。明治23年(1890年)に造られ、昭和46年(1971年)まで、赤レンガを作り続けたホフマン式「野木町煉瓦窯」が青空に向けて屹立していた。日本で現存しているのはここだけ。どこかドイツの風景。乗馬クラブが隣接していた。小さな天使が「早くソフトクリーム食べたい」と下駄を鳴らした。

本日の大金言。

北関東にかような世界があったとは。田舎そばと127年前の「煉瓦窯」を延長線上で楽しめる。東京中心の目から、ローカルの発見へ。まだまだ日本は広く、しかも深いと思う。スマホやテレビの前から離れてみるのもたまには必要だと思う。







                  松川屋12 




花咲徳栄凱旋と加須うどん

 甲子園夏の大会は久々興奮した。興奮しすぎて、ぎっくり腰が一時的に治ってしまったほど。

ダ埼玉初のVの瞬間を友人4人とパブリックビューで見て、その後、レストランで便乗祝勝会。翌日のきのう、二日酔いのまま埼玉・加須市にある花咲徳栄へとポンコツ車を飛ばした。報道陣がズラリとカメラを構え、ファンが折り重なるように、岩井監督とナインの凱旋を待ち構えていた。選手はもちろんだが、岩井監督の手腕に一目置きたい。素顔は意外に若かった。写真はそのときのもの。
          花咲徳栄凱旋⑧ 
          ナイン凱旋の瞬間
          花咲徳栄凱旋② 
          岩井監督のV報告

その数時間前の昼めし。ゴッドマザーが「巨人が優勝したって? あー、めでたいなあ。あたしゃあ、そばが食べたいよ」と言い出した。村民2号も「花咲徳栄が優勝したことだし、いいわね」と同調した。どうせなら、と、うどんの街でもある加須市の「久下屋脩兵衛(くげやしゅうべえ)」にポンコツ車を止めた。加須でも一、二を争う人気店で、うどんばかりでなくそばも美味い。
          久下屋脩兵衛① 
          久下屋脩兵衛

30年ほどの歴史の一軒家。店主は二代目に変わっているが、人気は衰えていないようだ。5~6人待ち。ゆったりした店内。村長は「なんばん汁うどん」(700円=税別)と「ちょこっとだけ 釜上げしらすご飯」(同150円)を頼むことにした。村民2号は「ごま汁うどん」(同700円)、ゴッドマザーは「なんばん汁そば」(同800円)を選んだ。
          久下屋⑤ 
          いい眺め
          久下屋⑥ 
          メニューの一部
          久下屋④ 
          ちょこっとだけよ

優勝バーゲンセールを期待したが残念、何もない。ここは半額サービスくらいしてほしかったが。加須市といえば「鯉のぼりとうどんの街」が売りだが、手書き鯉のぼりの伝承店「橋本弥喜智商店」が昨年109年の歴史に幕を閉じ、残りはうどんしかない? そこに花咲徳栄の快挙、これからは加須市(かすし、ではありません)は「花咲徳栄とうどんの街」になるはずである。
          久下屋⑧ 
          なんばんつけ汁うどん
          久下屋⑦ 
          ごま汁うどん
          久下屋1 
          なんばんつけ汁そば

失礼、脱線してしまった。さて、その「なんばん汁うどん」。待ち時間は17~8分ほどと長い。うどんもそばも自家製粉で、手打ちにこだわっている。先代の時に数回来ているが、実直な職人肌で、いい店だった。今は二代目。
          久下屋10 
          つやと香り

冷たいうどんは細めで、絹のような光沢。まずは何もつけずにひと口。きれいな国産小麦の香りが広がり、つるっとした感触とコシ。塩分が強め。先代のときよりもやや細くなり、もっちり感も気持ち落ちた気がする。うどんのボリュームも少な目。
          久下屋⑨ 
          具だくさん
          久下屋12 
          あーん

温かいつけ汁はナス、鶏肉、きのこ、長ネギ、油揚げなどがドドと入っていて好感。だが、カエシがかなり濃い。やや甘めで、鰹節の出汁がベースにあるが、この濃さはいかにも北関東。好みもあるが、個人的にはもう少し抑えた方がいいと思う。

「私は満足よ。村長の舌がおかしいのよ。確かに味はちょっと濃いけどね」
「いい手打ちそばだよ。長島さんは元気かねえ、あー赤城山を飲みたくなってきた・・・」
          久下屋13 
          釜上げしらす飯
          久下屋14 
          混ぜる

あらら話がかみ合わない。小鉢に入った「釜上げしらす飯」が置かれた。箸でかき混ぜる。タレは生醤油とゴマ油。ちょこっとだけ、ならこれでいいかもしれない。まずまずの美味さ。たまたまなのか打ち場と板場に二代目の姿がなかったことが「ちょこっとだけ」気になった。

本日の大金言。

花咲徳栄の快挙は岩井監督が話していたように、日々の地味な努力の積み重ね。富士山は一日にしてならず。ひたすら便乗(?)の加須市役所もうどん屋も・・・いや彦作村長こそ爪の垢を煎じて飲まなければならない。

                   久下屋15 

焼き味噌と山賊焼きと地酒

 信州は美味いもののメッカでもある。本日取り上げるのは、長野市でたまたま飛び込んだ「信州そばと地酒」の店。安くて美味いを地で行くいい店だったが・・・。

長野駅の観光案内所で、女性スタッフ相手にあれこれ安くていい店の情報を収集していると、突然ニーッとカワウソ顔になって、「いい店がありますよ」。その表情がカワユかったのと「ワンコイン」の五文字にちょっとだけ胸が躍った。
          小木曽製粉所① 
          当たりか、ハズレか?

それが西口「東急REIホテル」1階の「小木曽(おぎそ)製粉所 駅前店」だった。ざるそばが一枚500円、というのは悪くない。しかも女性スタッフによると信州の地粉を使っていて、村長の好きな「挽きくるみ」だというのである。
          小木曽製粉所② 
        500円そば屋だって?

外から中が見え、きれいで新しい店構え。時間が夜七時半を過ぎていたが、客の姿はまばら。昼は混雑するというのが信じられない。正面奥が板場になっていて、店主の他に小柄なインド系美女がけな気に働いていた。このインド系アイドル美女、日本語が堪能で、しかも店主のサポートはするわ、料理を手伝うわ、その動きにしばし見とれてしまった。ダメなおとっつぁんを支えるけな気な下町娘のよう。
          小木曽製粉所③ 
          メニューの一部
          小木曽製粉所15 
          いい雰囲気

あ、本題を忘れるところだった。まずは木べらに盛られた焼き味噌(350円=税別)を肴に生ビール。焼き味噌はネギと甘めの味噌のバランスがまずまず。インド系美女と話したかったので、追加注文。信州の郷土料理でもある「山賊焼き」(半分 300円)、仕上げに「ざるそば」(500円)を頼んだ。「山賊焼き」は「量が多いので、半分でも多分十分楽しめます」とのアドバイスに素直に従った。
          小木曽製粉所④ 
          焼き味噌

「地酒は何がおすすめ?」
「いろいろありますけど、こんなのはどうですか?」
          小木曽製粉所⑧ 
          これはこれは

といって、教えてくれたのが「生もと純米酒 黒澤」(一合600円)だった。千曲川の老舗酒蔵の逸品。これが焼き味噌に合っていた。やや辛口で、ふくよかさと酸味がとてもいい。
          小木曽製粉所⑤ 
        山賊やき、これで半分

山賊焼きは鶏のもも肉の豪快な竜田揚げで、コロモに擂り下ろしたニンニクと玉葱を加えたもの。レモンを絞って、マヨネーズを付けて食べてもいい。ベースが醤油味で、確かに半分でもかなりの量。口内で山賊が暴れまわる。これはどちらかというと、ビールの方が合うと思う。地酒を追加し、さらに飲み進む。今いる場所が天国に思えてくる。
          小木曽製粉所⑦b 
          鶏の肉汁

仕上げのざるそばがいいタイミングでやってきた。「本日は安曇野産」だそうで、盛りも見た目も信州ならではの清流の匂いがする。グレーの二八そばは星が点々としていて、「挽きたて、打ちたて、茹でたて」。そばの風味がマル。鰹出汁のよく効いた甘めのつゆでズズズとすする。500円とは思えない風味と美味さ。
          小木曽製粉所⑨ 
          仕上げのざるそば
          小木曽製粉所12 
        安曇野産挽きくるみ
          小木曽製粉所11 
          いい蕎麦の香り

これはいい店を紹介してもらったワイ、とほろ酔い(ボロ酔い?)気分で悦に入っていると、インド系アイドル美女がそば湯を持ってきた。

「この細打ちのそば、500円とは思えないよ。そば職人も凄腕だよ。さすが信州だなあ」

「あのう、手打ちではないんですよ。うちは器械打ちです」

小木曽製粉所は長野県内にいくつかあり、寿司屋も傘下にある王滝グループのチェーン展開だった。インド系美女が申し訳なさそうに説明してくれたが、一人勝手に悦に入っている村長のロバの耳には届かなかった。

本日の大金言。

器械打ちでもいいものはいい。だが、とここで小さくつぶやく。手打ちにこだわりたい。舌代とフトコロ事情の間で悶々とすることもある。




                    小木曽製粉所14 

不思議な民家の「冷カレーうどん」

 続くときは続くもんである。浅草でまさかの「冷やし天丼」を賞味したばかりだというのに、今度は「冷カレーうどん」に出会ってしまった。冷天丼ほどの驚きはないが、その発想と努力に取りあえず「最敬冷」であります。

時間があったので、美術商の知人のコレクションを見に東京・池袋に出たついでに、久しぶりに池袋ランチとなった。どちらかというと、池袋には縁が薄い。ラーメン激戦地でもあるし、いい居酒屋も多いのに何故か足が向かない。
          ひかり1 
          ん? という入り口

西口周辺を立教大学方面へぶら歩き中に、「冷カレーうどん」のタテ看が見えた。蒸し暑くて、空から雨が落ちてきそう。モダンなロゴで、カレーうどんの店「ひかりTOKYO」。これが不思議な店だった。
          ひかり① 
          不思議なアプローチ

矢印に従って、小さなビルの下をくぐって、半地下の暗い通路を抜け、コンクリートの階段を上ると、ごくフツーの古い民家があり、そこが「ひかりTOKYO」だった。昭和の普通の住宅をそのまま外観だけ使用。店内に一歩踏み込むと、改装された和モダンの室内が広がっていた。BGMは癒し系のアメリカンポップス。外国人が喜びそうな、今どきの世界でもある。昼はカレーうどん専門、夜は居酒屋に変身する。昼と夜の顔が違うというのも面白い。
          ひかり2 
          ようやく店へ

庭の見えるカウンター席で「冷カレーうどん」(税込み 950円)を頼んだ。チーズ入りうどんなどユニークなうどんもある。
          ひかり3 
          メニューの一部
          ひかり7 
          外と中のギャップ

待ち時間は6~7分ほど。予想外の早さに「これはハズレかもな」という疑念が横切った。益子のような陶器の平ドンブリに濃いカレーの冷たい海! 豚バラ肉がごろごろ隠れていて、よく煮込まれた玉葱の姿も見える。ほぼ中央には温泉卵がぽっかり浮かんでいた。刻みネギがパラパラ。
          ひかり② 
       冷カレーうどん、登場
          ひかり③ 
          あんりゃまあ

よく見ると、手前の部分に赤茶色の香辛料(ターメリック?)がかかっていた。これはかなり辛そう。

レンゲで冷たいカレーの海を掬って口に運ぶと、濃いめの味付け。そのすぐ後からスパイシーな辛さが襲ってきた。数種類の香辛料を使っているようだ。うどん屋のカレーというよりもビストロのカレーに近い。
          ひかり4 
          辛そ~
          ひかり④ 
          冷たいルー
          ひかり5 
          平打ちうどん

うどんは平打ちで、きしめんのようだが、腰がかなり強い。その固い感触は悪くない。たっぷりと複雑なカレーと豚バラ肉、玉葱がよくコラボしている。個人的にはもう少し味を薄めにしてほしいが。
          ひかり⑨ 
          豚バラ肉
          ひかり10 
          崩す楽しみ

温泉卵を崩して絡めると、まろやかさが加わり、味わいが落ち着く。ボリュームもまずまず。数年前に北千住で「天ぷら付き 冷やしカレーうどん」を食べたことがあるが、それよりも本格的な創作カレーうどんだと思う。まだ極めて珍しい世界なのは確か。
          ひかり12  
          スパイシーなどろり

支払いの時、スタッフに聞いたら、店はまだ2年だが、オーナー店主はいろんな店で修業したそう。うどんは手打ちかと思ったら、「製麺所から仕入れてます。多分機械打ちでしょう」とか。正直な受け答え。このあたりも今どきの店ということかもしれない。

本日の大金言。

冷やしグルメの世界はこれからの世界でもある。カツ丼、天丼、カレーうどん・・・どんぶり料理は温かいものというイメージがどんどん変わっていく。冷やし親子丼が登場する日も近い?



                 ひかり11 


千住魚河岸の「海鮮とくだ屋丼」

魚市場めぐりは実に楽しい。東京・築地はあまりに観光化され過ぎて、少し足が遠のいているが、首都圏の中では足立市場や大田市場、大宮市場などは狙い目だと思う。人の行く裏に道あり花の山、である。今回テーブルに乗せるのは、その足立市場の海鮮丼。
          徳田屋⑤ 
          市場めし

村長の大好きな北千住から20分ほど歩く。千住大橋駅が一番近いが、北千住駅から飲食街を抜けて、旧日光街道をぶら歩きするのがいい。東京大空襲で焼け野原になってしまったが、江戸時代初期から続いたヤッチャ場(青果市場)の名残りが少しだが残っている。
          足立市場 
          穴場グルメ

往時を空想しながらしばらく歩くと、松尾芭蕉の矢立の初めの碑もある。足立市場はそのすぐ先。築地と同じように東京都の中央卸売市場でもある。しかも魚介類専門はここだけ。開業したのは昭和20年(1945年)だが、野菜市場が移転、魚介専門市場になったのは昭和54年(1979年)。

観光客が少ないのがいい。外国語が飛び交うこともほとんどない。と書くと右翼のようだが、村長は右翼でも左翼でもない。あえて言うと、中翼(なかよく)である。中くらいなりおらが夏。
          徳田屋① 
          昔の築地?

市場内には食堂が7~8軒ある。一番古いのが「椎橋食堂」だが、今回暖簾をくぐったのは比較的新しい「徳田屋(とくだや)」。ちょうど正午、4~5人ほどが並んでいた。
          徳田屋② 
          メニューの一部

10分ほどの待ち時間。カウンター席(7席)とテーブル席が大小二つほど。カウンターの目の前が板場。メニューの中から「海鮮とくだ屋丼」(税込み980円)に目を付けた。アラ汁とお新香付き。ここは「特盛豪華海鮮丼」(同1300円)と「お好みフライ2点定食」(同900円)が特に人気だが、諸事情で「海鮮とくだ丼」を選んだ。新鮮ネタ8種類で、980円というのはお得感がある。

待ち時間は約20分ほど。店主は手抜きしているのではなく、ていねいに作っているのがわかった。

女性スタッフが「お待たせしました」と、お膳を運んできた。
          徳田屋③ 
          海鮮とくだ屋丼
          徳田屋④ 
          上空より

これが鮮度といい盛りといい、圧巻に近いものだった。中央には小高い山からイクラが雪崩落ち、その下には見事なマグロの中落ちが大きな塊になっていた。タコブツとキュウリが混じっている。かなりの凝りよう。
          徳田屋⑥ 
          鮮度とボリューム
          徳田屋⑦ 
          言葉はいらない

それを取り巻くようにバチマグロのブツ、白身魚(カンパチ)、生しらす、きびなご、卵焼き、ガリ・・・。ひと目で気に入った。築地なら多分、1.5倍近い舌代は取られると思う。

ダシ醤油にワサビを溶いて、回すようにかけていく。アジフライを頼んだ隣りのカップルが「デカい~」と声を上げている。
          徳田屋⑨ 
       この瞬間がたまらない
          徳田屋5 
          きびなご
          徳田屋11 
          この凝りよう
                                   徳田屋12 
                                  食べ進む

ご飯は酢飯ではなくフツーの炊き立て。すべての素材の鮮度がさすが魚市場というレベル。特に主役のイクラと中落ちの小山がいい。わさび醤油がほどよくかかったご飯。それがどんどん胃袋へと消えていく。アラ汁と漬け物(柴漬け)はフツー。アラ汁は具がなく、それがやや物足りない。

食べ終えると、ほどよい満足感。さわやかな後味。店は「まだ4年です」とか。千住の魚河岸の将来に光が見えた気がした。


本日の大金言。

みんなが行く場所より、みんなが行かない場所。メディアの露出よりメディアの露地裏。そこに意外ないい店がある。



                  徳田屋13 

世界遺産の「昭和カツカレー」

お江戸で修行中のキオが珍しくお盆帰省した。

「富岡製糸場に行ってみたいわ。世界遺産になってもう3年経つから、一度くらい行かないとね」

世界を相手にする仕事の末端に付いているので、明治5年(1872年)に国策事業として建設された富岡製糸場に関心があるらしい。これまでは歴史にはほとんど無関心だった。天変地異が起きなければいいが。

「いいわね。絹のスカーフも買いたいし、美味い食堂もあるし、確かいい喫茶店もあったわね」
村民2号が3年前に行ったときのことを思い出しながら、同調した。動機がちょっと不純だが。

ボケがひどくなってきたゴッドマザーは家でお留守番。耳も遠くなっている。
「ナニ、富山に行ってくるのかい? あー、何だっけ。あれあれ・・・松葉ガニ買ってきておくれ」
外に出て徘徊(はいかい)しなければいいが。
          富岡製糸場① 
          お盆の世界文化遺産

お盆渋滞の中、ポンコツ車を飛ばして、富岡インターで降り、富岡製糸場へ。正午近くなっていた。3年前ほどではないが、長い行列。

「混み合う前に先にランチしましょ」

3人の意見がこの時だけは一致。そこで村長はおもむろに「高田食堂」を持ち出した。富岡製糸場の工女(女工とは言わない)が食べたカレーライスの店として、「富士屋」とともに知る人ぞ知る存在。3年前に「富士屋」で食べたカレーライスに感動したことを覚えている。
          高田食堂 
      こちらは味の文化遺産?

さて、その「高田食堂」。創業が昭和28年(1953年)で、白地のシンプルな店構えとノレンが昭和のよき食堂を思わせる。すでに混み合い始めていたが、あまり待たずに中に入れた。
          高田食堂② 
       正午前なのにほぼ満席
          高田食堂3 
          メニューの一部

村長は「カツカレー」(税込み800円)を頼んだ。村民2号とキオは「カツ丼」(卵とじ 同750円)を選んだ。

このカツカレーがスグレモノだった。ドロリとした濃い色のカレーが全面を覆い、揚げたての大きめの豚カツが寝そべっていた。かなりのボリューム。福神漬けの色がいい。多分自家製。こうでなくっちゃ。
          高田食堂④ 
          おおお
          高田食堂1 
          こちらはカツ丼

カレーは「富士屋」(昭和30年創業)とよく似ている。フライパンで小麦粉から炒め、カレー粉などを加え、特性スープでじっくり煮込んでいる。ひと口で懐かしいコクが口中に広がった。その後に辛さが追いかけてくる。スパイシー。角に切った豚バラ肉が3個ほど、飴色の玉葱がこのカレーライスに昭和のよき存在感をかもし出している。
          高田食堂⑤ 
          素晴らしき世界
          高田食堂11 
          揚げたて
          高田食堂12 
          薄めの豚カツ

ロース肉の豚カツは薄めで、コロモが細かい。ドロリとしたカレーとの相性がとてもいい。ライスもいいレベル。どんどん食べ進む。途中でウースターソースをかけてみた。これが意外に美味。もう一つの味わいを楽しめる。ひょっとして工女も途中でソースをかけたかもしれない。食べ終えると、かなりの満足感。これで800円というのは得した気分になる。
          高田食堂14 
      ウースターソースをかける
          高田食堂13 
          飴色の玉葱

「カツ丼はまあまあのレベルかな。あっさりした味付け。これで帰りにコーヒーを飲んだら、私はほぼ満足よ」
「ナニ言ってんの、富岡製糸場に早く行こ」

フランス人の指導で日本の大工が造ったレンガ造りの巨大な建物が見えた。明治5年の刻印。当時を想像する。ここから世界に向けての日本の近代化が始まった。まだちょんまげが至るところに残っていた時代。フランス人が飲む赤ワインを生き血を勘違いして、恐れおののき、工女がなかなか集まらなかったという。ウソみたいだが本当の話、である。たった145年前・・・。

本日の大金言。

この145年で日本は進歩したのだろうか? 科学と情報網は恐るべきスピードで発達したが、人間自体はとても進歩したとは言えない。いや、悪くなっているかもしれない。カレーライスを食べながら、あれこれ考えるのも悪くはない。



                   高田食堂15 







山小屋のバターチキンカレー

 お盆の真っ最中、今回テーブルに乗せるのは尾瀬ヶ原の山荘で食べたカレーライスである。

山仲間の凸凹6人と一泊二日で尾瀬を楽しんだ。あわよくば至仏山(しぶつざん)に登ろうと思ったが、悲しいかな腰に爆弾を抱えているため、難コースを断念。重いリュックを背って空まで続くような木道をひたすら歩いた。遠くに燧ケ岳(ひうちがたけ)も見える。
          尾瀬ヶ原② 
        木道とコオニユリ

歩いているうちに木道が人生に見えてきたり、エンタメ新聞社時代に燧ケ岳の頂上付近で持参したウイスキーに雪渓を入れ、それが実に美味かったことなどを思い出した。過去と現在がコブラツイスト状態。アブナイ、アブナイ・・・。
          尾瀬ロッジ① 
          美味いカレーがある?

その途中、山ノ鼻の「尾瀬ロッジ」で早めのランチを取ることにした。鳩待峠で土産物屋のおばはんから「尾瀬ロッジのカレーが美味いですよ。おすすめです」という情報をこっそりゲットしていたからである。山おばはんの情報は従うに限る。
          尾瀬ロッジ③ 
          これかいな

時間が早かったせいか、意外に客は少ない。予定通りランチメニューの中から「尾瀬ロッジカレー バターチキン」(税込み1200円)を頼んだ。ナンとライスを選べる。ライスはサフランライス。1200円は安くはないが、標高1410メートルということを考えると、そう高いとは言えない。

セルフサービスなので、自分でお茶を入れ、12~3分ほど待っていると、トレーに乗ったバターチキンカレーがやってきた。これが本格的な黄色みの強いインドカレーだった。いいスパイスが立ち上がっている。黄色いサフランライスと地場の野菜サラダ、それに福神漬けとラッキョウ。
          尾瀬ロッジ⑤ 
          山小屋のカレー?

トロリとしたルーをスプーンですくうと、湯気とともによく煮込まれた鶏肉が現れた。口中に運ぶと、ルーのコクとヨーグルトの酸味がいい具合に混じり合う。複雑な旨味。スパイシーだが、甘めで、辛さが思ったほどない。
          尾瀬ロッジ⑦ 
          本格的なカレー
          尾瀬ロッジ⑧ 
          チキンの美味さ

サフランライスは沼田産のコシヒカリを使用。高原野菜の鮮度がいい。福神漬けとラッキョウは多分出来合いのもの。ちょっと残念。
          尾瀬ロッジ⑨ 
          サフランライス
          尾瀬ロッジ10 
          合わせ技

全体的には山小屋のカレーとは思えない本格的なカレーだが、女将らしき女性と雑談したら、「日本人向けに少しアレンジしてます。すべて手作りで、じっくり煮込んでるんですよ」とか。ボリュームが山男にはやや物足りないかもしれない。ぎっくり腰を抱えた山男未満にはほどよい。
          尾瀬ロッジ11 
          高原野菜の鮮度

尾瀬の澄んだ空気を思いっ切り吸い込んで、思いもかけぬ本格カレーを食べ、どこまでも続く木道へ出る。誰かが言った。遠くを見てははいけない。何も足さず何も引かず。足元だけに意識を集中する。だが、集中し過ぎた反動か、その夜は酒宴で脱線、足元を踏み外してしまった。

本日の大金言。

居酒屋もいいが、たまには山へ行くのも悪くない。尾瀬ヶ原は夏休みのおすめスポット。何も考えずに、点になって高原の中に身を沈める。すると元気になってくるから不思議だ。



                  尾瀬ロッジ13

焼きお結びと冷や汁

あまりに暑い日が続いたので、今回も冷たい美味で行こうと思う。

「冷やし天丼」ほどの衝撃はないが、信州・下諏訪で食べた焼きお結びと冷や汁。これが諏訪神社のご利益か、絶妙な味わいだった。

おにぎりとお結びの違いはよくわからないが、お結びの方が何となく神の力が宿っている気がする。そう言う説もある。諏訪大社の門前にある「料理茶屋 神楽(かぐら)」。縄のれんが神妙に下がり、悪くない雰囲気。
          神楽 
          かしわ手

「今日は午後3時までですが、よろしいでしょうか?」

縄のれんをくぐって店内へ入ると、板場から白衣の店主が顔を出して、そう言った。時刻は午後2時過ぎ。忙しいランチタイムが過ぎて、店内は他に客が一組のみ。

「全然大丈夫ですよ」
          神楽② 
          当たりか?

女性スタッフが冷たいお茶を持ってきた。メニューの中から、目を付けておいた「神楽御膳(かぐらごぜん)」(税込み900円)を頼んだ。焼きお結びが2種類、味噌と醤油。まずそれに引かれた。さらに野菜の「冷や汁」が美味そうだった。いい和食料理屋の気配。
          神楽③ 
          洗練と自然

15分ほどの長めの待ち時間。焼きお結びのいい匂いが板場から流れている。ここでは焼きおにぎりと言わずに焼きお結び。有田焼の器に焼きお結びが2個。お新香と昆布の佃煮が添えられていた。ワサビ漬けのピンポイント。さらに朱色の漆器のドンブリには野菜の冷や汁。これがかなり凝ったものだった。
          神楽⑤ 
          野菜の冷や汁

まずは冷や汁をレンゲで賞味。地場・信州の野菜をすり下ろしたそう。

「ゴボウ、人参、大根などをすり流しにしてます」(店主)

朱色のシャーベットが冷たい美味を演出していた。トマトのシャーベットだそう。塩ベースで、和の出汁がよく効いている。ミョウガの香りがほのかに舌から鼻へと抜けていく。昔はこのミョウガが苦手だったが、今は気にならない。トマトのシャーベットはアイデアもので、全体を冷たく引き締めている。暑さがこの瞬間はどこかへと飛んでいる。
          神楽⑥ 
        トマトのシャーベット
          神楽⑦ 
          凝った作り

焼きお結びは醤油の方が気に入った。地場の天然醸造醤油を使用。焼き色と風味がほどよく調和している。味噌の方は甘めで、一瞬鯛みそかと思ったが、自家製だそうで、信州味噌をベースにクルミやタマネギなど7種類のやさいを加えたもの。両面ではなく片面だけだったのがやや残念だが、これはこれで美味。
          神楽⑨ 
          醤油の焼きお結び
          神楽10 
          ええで、ええで
          神楽11 
          こちらは自家製味噌
          神楽12 
          たまらんでえ

米の味わいも上質。聞いてみたら「茅野の米沢米です。いい米で、献上米なんですよ」とか。美味いはずだよ。食べ終えると、腹八分の満足感。店主の腕が和の修業に裏打ちされている。
          神楽4 
          お新香

舌代を払う時に、何代目か聞いたら、「いえ、まだこの店を開いて、一年半です」。「東京で10年ばかり修業しました」とも。それで納得。その時になって、BGMがなぜか「蝶々夫人」だったことに気がついた。ここはやはり東儀秀樹くらいにしてほしかったが・・・。

本日の大金言。

焼きおにぎりと焼きお結び。庶民派と殿上派。どちらも日本の米文化の粋だと思う。これに美味い漬け物さえあれば、何もいらない。




                神楽13 

ここまで来たか「冷やし天丼」

こう暑いと、なぜか冷たいものが食べたくなる。台風が来ていることだし、記録的な豪雨も心配だが、食欲は止められない。

で、なぜか浅草。「なぜか上海」を聞きながら、このブログを書くことにしよう。今回テーブルに乗せるのは「冷やし天丼」である。以前、アキバで浜勝の「冷やしかつ丼」を賞味し、その時もまさかの出会いだったが、今回の「冷やし天丼」はひょっとしてそれを上回るかもしれない。
          秋光 
          冷やし天丼だって?

浅草の中心地・旧六区、ROX3Gの一階。ここに2年前にオープンした「下町天丼 秋光(あきみつ)」がある。本格的な天丼の店で、三ノ輪の老舗「土手の伊勢屋」の五代目が「天丼を世界へ」と旗を掲げて売出し中の店。志はよし、としよう。
          秋光① 
          老舗の新展開

「冷やし天丼」(税込み1200円)はこの7月から期間限定で出したメニュー。何が悲しくて、冷やし天丼なのか。というより、そんな奇をてらったものが果たして賞味に値するもののか、それを確かめても見たくなった。メディアでも少しずつ話題になっている。
          秋光② 
          まさかのメニュー

待ち時間は15~6分ほど。天ぷらを揚げるいい匂いとともに運ばれてきた、冷たいガラスの器。そこに揚げたての天ぷらがやぐらを組んでいた。海老天、ナス、シシトウ、ピーマン、その中心には小海老・貝柱のかき揚げ! ごま油の香りがほのかに漂っている。
          秋光③ 
          信じない

驚いたのは茶色いシャーベット状の出汁の塊。つゆと出汁を凍らせて、それを堂々と乗せている。その下を見ると、冷たいご飯(水めし)が広がっていた。ビジュアル的にもよく考えられた足跡が見える。うむ。

薬味はミョウガ、万能ねぎ、それにワサビ。漬け物も付き。「つゆはお好みでおかけくださいね」と女性スタッフ。
          秋光④ 
          信じる
          秋光⑤ 
        つゆはシャーベット

時間が正午前だったので、思ったよりも客は多くない。まずはレンゲでシャーベット状の出汁つゆと水めしをおもむろに口に運んでみた。思った以上に濃い。これが浅草の天丼の味とも言えるが、個人的にはもう少し抑えてほしい。
          秋光12 
          氷の世界?

本命の天ぷらへ。海老天、ナス・・・カラッと揚げられていて、「土手の伊勢屋」の天ぷらとほぼ同じ味わい。最も気に入ったのはかき揚げ。小海老と貝柱がいい具合に揚がっていて、つゆをかけると、上質の旨みが引き出されてくる。
          秋光⑨ 
          海老天さま
          秋光18 
          かき揚げさま
          秋光17 
          絶妙な世界?

薬味を乗せ、ワサビを乗せて味わうと、これがなかなかイケる。ワサビがいぶし銀の存在だと思う。食べているうちに、シャーベットが溶けだして、味の濃さがいい具合になってきた。半分以上食べた頃にほどよい味わいになった。

アイデアも構成も素晴らしいが、シャーベット出汁つゆが濃過ぎるのが気になる。1200円という価格も悪くない。世界でも多分ここだけの「冷やし天丼」。とはいえ世界へ行けるかどうか、それはひょっとして猛暑の行方にかかっているかもしれない。

本日の大金言。

冷やしかつ丼、冷やし天丼・・・あり得ない世界が出現するのは悪いことではない。それが一定のレベルなら、新しい可能性にもなる。次は冷やしカレーライスか、冷やしオムライスの登場を待ちたい。



                  秋光19 













「カレーうどん」隠れ横綱

 これまでカレーうどんの隠れ名店を随分と書いてきたが、ちょっと驚きの店を見つけてしまった。改めて世界は広い。

群馬・桐生にあるゴッドマザーの実家を大掃除に行く途中で、「あの山本屋に負けないカレーうどんがありますよ」との情報をつかんだ。桐生はうどんの街でもある。

中でも、お隣りのみどり市にある山本屋は、カレーうどんの元祖と言ってもいいくらいの歴史のあるうどん屋さん。東京・早稲田の三朝庵といい勝負だと思う。創業が明治36年(1903年)で、初代が作ったカレーうどん(カレー南蛮)は、個人的に言わせてもらえば、有名な巣鴨の古奈屋など吹っ飛ぶほどの代物。ローカルの隠れ名店の凄味をこの舌で確認したことが思い出される。
          まるたや2 
          カレー南蛮の名店?
          まるたや 
        名店は隠れている

その山本屋に負けないカレーうどんだって? 大掃除を終えたその足で、東4丁目の裏通りにある、その「まるたや」へ。「手打ち石臼挽きそば」の看板。いい店構えの小さな店。外見からはここがカレーうどんの隠れた名店とは思えない。

白い暖簾をくぐると、大きなテーブルがあり、その奥が打ち場になっていた。左手が広い板場。右手には小上がり。蕎麦のメニューに混じって「おこげカレーうどん」とか「夏カレーうどん」「天ぷらカレー南蛮」のメニュー札が見えた。カレーうどんだけで7種類ほど。何じゃこれは? あまりにユニークさにこれはウケ狙いのハズレかも? そんな疑念が浮かんだ。
          まるたや① 
        カレーうどんの可能性

店は30年ほどの歴史で、その前の代も入れると、かなりの歴史とか。これは近所の人の情報。小上がりに上がって、もっとも定番の「カレー南蛮うどん」(税込み 750円)を頼むことにした。村民2号も珍しく同じもの。
          まるたや② 
          地元客が多い?

午後1時ちょい過ぎということもあって、店は常連客らしき人で混み合っていた。
「こりゃあ30分はかかるよ」
そんな声が聞こえてきた。白衣の店主は職人気質にあふれた人のようで、手作りへのこだわりが強いよう。これはいい兆候でもある。
          まるたや③ 
          驚きの登場

25分ほどで、「カレー南蛮うどん」がやって来た。ドンブリがどっしりと広い。そこに満々たるカレーの海が湯気を立てていた。恐るべきビジュアル。絹さやが3枚ほど中央に浮かんでいた。ポエム!

「これはすごいわ。カレーうどんの横綱ってとこね」(村民2号)
          まるたや④ 
          圧倒される
          まるたや⑤ 
       ため息と食欲

その外見だけで、あの「山本屋」を彷彿とさせるに十分だった。まずはレンゲでひと口。ドロリとしたルーはやや甘めで、鰹の出汁がコクと旨味を支えているような、しっかりした味わい。溶け込んだタマネギの甘みがジワリとくる。豚肉(バラ肉)が点々とカレーの海の中に潜んでいる。
          まるたや⑥ 
          戦闘開始
          まるたや3 
          こだわりの重さ

うどんは平打ちで、山本屋よりもやや細め。地粉の手打ちうどん。もっちり感とコシがほどよい。どんよりしたカレーがよく絡む。ボリュームが半端ではない。普通なら残すところだが、予想以上の旨さで、どんどん箸とレンゲが進み、ついには完食してしまった。汗が気持ちよく噴き出している。猛暑のカレーうどんも悪くない。
          まるたや1 
          豚バラ肉
          まるたや⑧ 
          もっちり感

「もう何もいらないって感じ。しばらく動きたくないわ。ハーフも作ってほしいくらいよ」
「驚きのカレーうどんとしか言いようがないよ。浅草の『翁そば』も凄いけど、これはさらにボリュームがある。しかも素朴に旨い。次はおこげカレーうどんを食べてみたいよ」
「一人でどうぞ」

本日の大金言。

ローカルの名店は、東京中心のグルメ情報だけでは捕まえきれない。それを探す楽しみ。むろんカレーうどんだけではない。


                  まるたや⑨ 




猛暑の「肉煮干し中華そば」

 東京・中野は三鷹時代によく来た場所。本日取り上げるのは、南口で食べた「さいころ中野本店」の肉煮干し中華そばである。

肉煮干し、と聞いただけで、ヨダレが2~3滴ほど出かかる。入り口は中華そば屋というより、シャレたレゲエ風カフェバーのよう。炎天下、2~3人ほど並んでいた。ガラス張りの店内から、カウンター席に腰を下ろした美女(?)の後ろ姿が見える。状況的に入るっきゃない。
          さいころ 
          中華そば屋だって?
          さいころ1 
          ポエムな光景

入り口の「肉煮干し中華そば」(税込み 780円)の写真をしばし見つめる。素朴なバラ肉の煮豚チャーシューが全面を覆っていた・・・あの会津喜多方の坂内食堂を思い起こさせるビジュル。7~8分ほど待たされてから、店内に入り、券売機でそこを押す。略して「肉ニボ」。
          さいころ② 
          肉ニボのメニュー

広い厨房の前がカウンターになっていて、11~2席ほどしかない。さらに10分ほど待たされる。やって来た「肉ニボ」は、中華ドンブリといい、チャーシューといい、坂内食堂の「肉そば」とよく似ている。村長は坂内食堂のファンでもあるので、これは当たりか?
          さいころ③ 
          煮豚チャーシュー!
          さいころ⑤ 
          坂内食堂以上?

バラ肉の煮豚チャーシューが優に10枚以上はある。数えきれない。坂内食堂の肉そばは900円なので、これで780円はリーズナブルだと思う。
 
メンマも多めで好感。中央には小さ目のナルト。中華そば好きをくすぐるレトロな世界で、店構えの国籍不明感とイメージが一致しない。BGMもレゲエで、店長らしきスタッフのスタイルもどこかレゲエ風。このミスマッチと紙一重の世界が魅力でもある? さすが中野は守備範囲が広い。

          さいころ⑦ 
          濃いめのスープ

まずはスープ。煮干し出汁の風味が強い。カエシがかなり強めで、好みにもよるが、個人的にはもう少し抑えた方がいいと思う。煮豚チャーシューはほどよい固さで、ヘンに柔らかくないのがいい。
          さいころ3  
          自家製麺

麺は自家製麺だそうで、中太ストレート麺。小麦粉の風味と素朴でモチっとした食感も悪くない。メンマもフツーに旨い。坂内食堂ほどの感動はないが、トータルに考えると、まずまずの旨さだと思う。
          さいころ⑨ 
          この肉感

「さいころ中野本店」は6年ほど前まで「地雷源(じらいげん)」という店名だった。ラーメン好きの間ではちょっとした有名店。それが「さいころ」と名前を変えて、今では関東に支店も数店舗ある。特に土日は行列のできる店になっている。
          さいころ11 
          広い厨房

スープを少し残してしまったが、満足度は90%。店を出るとき、振り返ったら、店長らしき人がニッとこちらを見た。笑福亭笑瓶がジャマイカ経由でそこにいるようだった。ニクメないお方・・・。

本日の大金言。

煮干し中華そばは昔からの人気のジャンルだが、煮豚チャーシューがドンブリを覆う世界は一つの完成形だと思う。




                  さいころ10

ワイナリーの「全粒粉ランチ」

猛暑でタオル投入寸前になってしまったので、 久しぶりにプチぜい沢をしてしまった。

シバの女王とそば仙人をポンコツ車に乗せ、ぷかぷか向かったのは栃木・足利にある「ココ・ファーム・ワイナリー」。知る人ぞ知る、特殊学級「こころみ学園」のワイン醸造所。1984年にワインづくりをスタートさせ、それが軌道に乗り、九州沖縄サミット(2000年)では公式晩餐会で乾杯にも使われるまでになった。今ではJALのファーストクラスでもここのワインが採用されている。
          ココファーム 
       ココ・ワイナリーに到着

目的は絶景のぶどう畑の一角にあるカフェレストラン「ココ・ファーム・カフェ」。ここでランチを楽しもうというわけである。もう一つの狙いは、帰りに古印最中(こいんもなか)の手土産・・・。
          ココファーム① 
          ここはどこ?
          ココファーム② 
          ようこそ

午後1時半を過ぎていたせいか、運よく予約なしで入れた。ここは日本ではない。ブルゴーニュかボルドーか、はたまたナパか。まずはスパークリングワインなどを注文、前菜がてらに「足利マール牛 ローストビーフ」(税込み 1600円)を頼んだ。
          ココファーム④ 
          マール牛って?

マール牛とはワインの搾りかすを飼料にして育てた特別な牛で、足利の農場で飼育しているもの。ぶどうの香りと甘みが特徴。肉好きのシバの女王とそば仙人が満足そうにうなずく。この二人はかなりのグルメ。
          ココファーム⑤ 
       ローストビーフさま
          ココファーム⑥ 
          うむむ
          ココファーム③ 
          これこれ

メーンに選んだのは「あらびきソーセージのサンドウィッチ」(同 750円)。パンが天然酵母を使った自家製の全粒粉パンで、これが出色だった。
          ココファーム⑦ 
          絶景かな

あらびきソーセージはこのファームの名物でもある。それをサニーレタスと特製ソース(トマトソースとマヨネーズのソース)をたっぷり塗った全粒粉パンで挟んでいる。パン自体がやや小さいのが残念だが、ガブリとかじった瞬間、茶褐色の全粒粉パンの素朴なもっちり感に「やられて」しまった。
          ココファーム⑨ 
        秀逸な全粒粉パン
          ココファーム11 
       あらびきソーセージ

香ばしさと甘みさえ感じるほどの国産全粒粉の旨み。あらびきソーセージから滴る肉汁と特製ソース、サニーレタスのバランスがいい。備え付けのマスタードを付けると、さらに美味さにメリハリがつく。
          ココファーム12 
          たまらん
          ココファーム10 
          あーん

白い磁器皿に添えられたひよこ豆と海老・イカのマリネ、さつまいものマッシュポテト、ブロッコリーもいい脇役になっている。ここで出す料理はファームの有機栽培ものを基本的に使用している。気がついたら2時間近く滞在。自然な旨味といい眺めが、夏枯れ気味の心を潤してくれる。
          ココファーム13 
          脇役の洗練

「もう二三杯飲みたい気分だわ」
「帰りに古印最中(こいんもなか)を買わなくっちゃ。そば仙人の大好きな古印最中・・・村長も好きだけど(笑)」
「洋から和へ。ワイナリーから最中へ。ホント足利の凄いところだね。いこいこ」

だが、古印最中の「香雲堂本店」はなぜかシャッターが下りていた。怪しい三人組が固まったのは言うまでもない。炎天がどこまでもどこまでも続くようだった。

本日の大金言。

清志郎も歌っている。いいことばかりはありゃしない。山があれば谷もある。コインの裏表、どっちに出ても不思議はない。この先もずっと。




                  ココファーム14 


プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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