京都と会津の「ニシンそば」

 何を隠そう、会津での隠れた目的の一つが「ニシンそば」。ニシンの山椒漬けは会津独特のものだが、保存食「身欠きニシン文化」の頂点は京都である。

地形的に会津も京都も山国(盆地)なので、乾物をどう美味く調理するかというのが、先人の知恵だった。北海道から北前船で運ばれた身欠きにしんは、その意味でも重要なタンパク源だった。食の都でもある京都のニシン文化の洗練は頭一つ抜けている。
                                   河道屋銀華 
                     「河道屋 銀華」のにしんそば

数年前、先斗町の路地裏「河道屋 銀華」で食べた「にしんそば」や、京都のグルメ仙人にいただいた南座横「松葉」のニシン棒煮の美味さは舌の記憶の奥座敷にしっかり残っている。ちなみにニシンそばの元祖は、この「松葉」。明治の初めに二代目が棒煮をそばの上に乗っけることを発案、それが京都の隠れ名物にもなっている。
          千本蕎麦① 
          千本蕎麦へ
          千本蕎麦1 
          ポエムな世界

という前置きはこのくらいにして、「強清水(こわしみず)」で、遅い昼めしを取ることにした。目的がそば茶屋「千本蕎麦(せんぼんそば)」。庶民的な「清水屋」ほどの歴史はないが、地粉をしっかりと手打ちしている本格的なそば屋。ここの「手打にしんそば」(税別 950円)は会津のニシンそばの実力を測るうえでは格好の店だと思う。
          千本蕎麦④ 
          待つ時間
          千本蕎麦⑤ 
          メニューの一部

注文してから20分ほど待つ。奥の板場でしっかり作っているのがわかる。その間、会津の名物「まんじゅうの天ぷら」(1個 同100円)を賞味してみる。カラッと揚がったコロモと中のこしあんが甘さが控えめで美味。さすがに醤油はかけずに食べる。
          千本蕎麦⑥ 
        まんじゅうの天ぷら

他の客も待たされている。イタリアンのコックだったという男性スタッフが「お待たせしました」と「手打ちにしんそば(温)」を運んできた。いい匂いと湯気。
          千本蕎麦⑨ 
       手打にしんそば登場
          千本蕎麦⑧ 
          ええのう

中央にはニシンの半身が横たわっていて、大根おろしが乗っていた。それにワカメ、刻みネギが浮いている。ニシンは山椒漬けで、京都の出汁を使ってじっくりと炊いたふっくら感のある棒煮とは見た目からして少々違った。

つゆはあっさりしていて、昆布と鰹の出汁も効いている。ニシンはそれなりに柔らかい。山椒の香りも悪くない。だが、京都ほどのほくほくと口中で崩れ落ちるような柔らかさはない。
          千本蕎麦12 
          半身の期待感
          千本蕎麦10 
          田舎そば、マル

そばは太打ちの田舎そばで、これは村長の好み。挽きくるみの二八そば。ボソリとした歯ごたえ、そば自体の香りもいい。だが、ニシンが京都のものとは比較にならない。フツーに食べれば美味いだろうが、京都の名店のニシンそばと比較すると、横綱と小結くらいの違いがあると思う。
          千本蕎麦11 
          京都は遠い?

京都のグルメ先生のしゃがれ声が黒光りした天井あたりから聞こえた気がした。
「あーた、それは会津に失礼というもんですよ。会津には会津のよさがありますよ。そもそも比べようというのが無茶というもんです。ひーっひっひ」

本日の大金言。

会津と京都の縁は意外に深い。平安時代初期に最澄や空海と論争した高僧・徳一(とくいつ)は陸奥国会津を拠点にしていた。千年の都・京都と片田舎・陸奥国会津。幕末には望まない京都守護職まで引き受けさせられた。現在の京都府庁舎はその跡地である。あまり知られていないが。


                  千本蕎麦15 

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古民家のニシン「山椒丼」

 「ニシンの山椒(さんしょ)漬け」は江戸時代から伝わる会津の郷土料理で、日本酒のツマミとしては番付上位にランクすると思う。メチャウマではないが、不思議に美味い。見た目も地味すぎる。

海のない山国・会津の食の知恵がぎっしりと詰まっている。珍しさで言えば、いわば料理界のシーラカンスみたいな存在だと思う。素材の身欠きにしんは北前船で北海道から新潟を経て、荷馬車などで会津へ運ばれた。棒鱈(ぼうだら)もその中に混じっていたようだ。
          鰊屋敷 
          まさかの世界

会津に来てこれを食べないと、どうにも落ち着かない。このブログでも何度か取り上げたことがあるが、店によって美味いマズイの濃淡はある。今日テーブルに乗せるのは「鰊屋敷 太田(にしんやしき おおた)」の「山椒丼セット」(税込み 1080円)である。
          鰊屋敷① 
          タイムスリップ
          鰊屋敷② 
       ようこそ、隠れ家へ

早乙女一座と別れて、夕暮れどき友人のタカシ君とヨシフミ君と待ち合わせ。市内の相生町(旧博労町)の古民家がそのニシン屋敷。まだ日が落ちていないが、暖簾をくぐって中に入ると、タイムスリップしたような錯覚に陥る。下郷村から移築したという古民家は、わっぱめし「田季野」に劣らない江戸・明治古民家の世界で、時間が早すぎたせいもあるのか、広い屋敷内には客の姿はない。タカ&ヨシもまだ来ていない。
          鰊屋敷③ 
          ええのう
          鰊屋敷13 
       ここだけのメニュー

すぐに目的の「山椒丼セット」を頼んだ。主役のニシンの山椒漬け丼は、おそらくこの店でしか食べられない。ニシンの山椒漬けを炙ってドンブリにするというは発想が素晴らしい。創業23年ほどで、お隣りの魚屋が経営している。

生ビール(中ジョッキ 580円)とアテのニシン山椒漬け(絶品だった)でしばし待っていると、「山椒丼セット」がやって来た。こづゆ、棒鱈煮、漬け物、果物を従えるように。
          鰊屋敷1 
        本物の会津料理

小ぶりのドンブリに炙ったニシンの山椒漬けが4切れほど、まん中には自家製の山椒みそ。いい香りがそこからフワリと立ち上がっていた。すべて手間ひまかけた手づくりというのが、あまり宣伝していない分、凄いことだと思う。
          鰊屋敷⑥ 
          初の山椒丼

まずは、こづゆ。貝柱の出汁がジワリと効いていて美味。観光客に人気の「田季野」や「渋川問屋」のものなどよりも本物だと思う。棒鱈煮はちょっと味が濃い。
          鰊屋敷5 
          こづゆ
          棒鱈煮① 
          棒鱈煮

山椒丼へ。身欠きにしんはタレ(醤油、ザラメ、酢を煮て冷ましたもの)によく漬かっていて、噛むとホロリと柔らかい。女将によると、山椒の葉を挟んで本郷焼き宗像窯のニシン鉢に入れ、3~4週間ほど漬け込むそう。固さが絶妙で、山椒の香りが食欲を刺激する。表面を炙ることによって、全体の風味が倍加しているようだ。
          山椒漬け丼①  
          当たり
          鰊屋敷7 
          ええのう×2

無添加の山椒みその美味さが光る。山椒の粒もそのまま生かしている。炊きたてのご飯にドンピシャで、思っていたよりもシンプルで素朴に美味い。少し残念なのは、ニシンの山椒漬けの数。もう一切れほど乗っていれば文句なしなのだが。
          鰊屋敷11 
          地酒チビチビ

追加した地酒「豊国(とよくに) 純米酒」をチビチビ楽しんでいると、下駄履きのタカシ君がやって来た。他にお客はまだ誰もいない。これだけの屋敷と味わいを一人で独占するのは少々気が引ける。観光客は本当の会津の味わいを知らない、改めてそう思う。その後、酔っぱらった辛口のタカ&ヨシ君が「ここ、意外にうめえな」と漏らした。会津人もかくのごとし、とは。

本日の大金言。

会津は来年が戊辰戦争150年となる。かつて賊軍と呼ばれ、詐欺同然に官軍を名乗った薩長の末えいの一人が現下の首相である。「大義なき衆院解散」と言われても、臆面もなく「国難突破」を旗印に掲げる。ダマされてはいけないが、ダマされる方にも責任がないとは言えない。その意味で、会津の悲しい歴史は教訓でもある。



                鰊屋敷12 










涙のソースカツ丼と半ラーメン

 毎年この時期は会津祭見物と直木賞作家・早乙女貢さんの墓参を兼ねて、会津へ行く。早乙女さんが亡くなったのは平成20年(2008年)12月23日。享年82歳。エンタメ紙で長年担当していたこともあり、取り巻きの編集者や作家、女優などと墓参へ行く。亡くなった日の前後のことは今でも鮮明に覚えている。
          会津祭り③  
        藩侯行列が始まった
          会津祭り① 
          綾瀬はるかの姿も

ライフワークとなった「會津士魂」(吉川英治文学賞受賞)の作者が、今は天寧寺の墓所に眠っている。会津祭「藩侯行列」では西郷頼母役として、馬上にまたがって、観衆に手を振っていた姿が忘れられない。文壇でも有名な遅筆で、村長も大いに悩まされたが、それもいい思い出として胸の奥に仕舞ってある。銀座のクラブや向島の料亭で接待したことなど昨日のことのようだ。

さて、今回テーブルに乗せるのは、猪苗代町で食べたソースカツ丼とラーメンである。
「猪苗代にソースカツ丼とラーメンの美味い店がある」
という情報は、地元の食通からしっかり仕入れていた。
          まるいち食堂① 
          そそられる世界

それが本町通り沿い(町尻)ある「まるいち食堂」である。人気店なので、早めのランチとなった。昭和の匂いの残る素朴な外観。紺地の暖簾とその奥の白い長暖簾がポエム。時刻は午前11時。一番乗り。
          まるいち食堂② 
          メニューの一部

テーブルが六つほど。正面奥が広めの板場になっていて、感じのいい店主(三代目)が水の入ったコップを持ってきてくれた。定番の「ソースカツ丼」(税込み 950円)を頼み、さらに「半ラーメン」(同 300円)も追加した。半ラーメンはメニュー札にはないが、「麺類はすべて半分にできます」(店主)との一言が効いた。単品だと500円。自家製手打ち麺、というのが店のこだわりを感じる。
          まるいち食堂④ 
          まずは半ラーメン

10分ほどで「半ラーメン」がやってきた。喜多方ラーメンに似ているが、正統派会津ラーメンの系譜である豚骨鶏ガラ出汁の醤油スープで、まずはレンゲでひと口。あっさりしているのにコクと旨味がある。麺は平打ち縮れ麺で、もっちりとした歯ごたえ。自家製の煮チャーシュー、大きめのナルト、メンマもフツーに美味い。
          まるいち食堂⑤ 
       スープはあっさり系
          まるいち食堂⑥ 
          自家製麺

食べてる途中に「ソースカツ丼」がやって来た。蓋から見事な色のトンカツがはみ出そうになっていた。タクワンとスープ付き。
          まるいち食堂⑦ 
          主役のソースカツ丼
          まるいち食堂⑧ 
          オオオの世界

蓋を取ると、赤みの強い巨大なトンカツが「おおお」と横たわっていた。7切れ。その自家製ソースにくぐらせた揚げ色の素晴らしさに2秒ほど見入ってしまった。これまで会津では何度もソースカツ丼を食べているが、色の見事さにおいてはベスト3に入る。
          まるいち食堂⑨ 
          この色の凄味

肉の厚さは1.5センチ~2センチとかなり厚め。脂身がほどよく入った国産ロース肉。その下には千切りキャベツと炊き立てのご飯。

ガブリと行くと、コロモのカリッとした歯ごたえ。ここまでカリッとした食感のコロモはあまりないと思う。肉は妙に柔らかすぎず、妙に固くもなく。ほどよい旨味と自家製ソースだれの甘味と酸味が絶妙だと思う。
          まるいち食堂10 
          国産ロース肉
          まるいち食堂11 
          下界はどないや?

ただ残念なのはご飯。炊き立てのせいか柔らかすぎる。むろん好みの問題だが、ここはもう少し固めに炊いてほしい。タレのかかり具合はほどよい。
          まるいち食堂13 
          脂身のよさ
          まるいち食堂12 
          ボリューム3層

全部食べ終えると、ベルトをひと回り緩めたくなった。最後に残ったタクワンの美味さ。次第に客が増え、三代目だという店主と雑談する時間がどんどんなくなってきた。

創業が約50年前で、元々は小さなラーメン屋だったそう。二代目(実母?)も板場に立っている。美人の女性(奥さん?)も平ザルを慣れた手つきで操っていた。
「トンカツを揚げる油はラードでしょう?」
「はい、そうです」
それだけ聞くと、また次の客が入ってきた。外に出ると、ラードのきれいな旨みが口中に残ったまま。空を見上げると、なぜか涙が一滴ほど出かかった。

本日の大金言。

会津のソースかつ丼は名物になっているが、昔はさほどではなかった。いつのまにか会津名物として人気が出、メディアも取り上げ、店の数も飛躍的に増えた。1000円以上が普通になっているが、会津ソースカツ丼の元祖と言われる「若松食堂」なども1000円以内である。デカ盛りで1000円を優に超えるソースカツ丼競争は意味がないと思う。


                  まるいち食堂14 

行田名物「フライ」のおばはん

 たまたまテレビで埼玉・行田の名物「フライ」を取り上げていた。お好み焼きかどんどん焼きのようなB級の郷土食だが、ゴッドマザーが「あれ、食べたい」と言い出した。最近まだらボケがひどくなっている。

ちょうど敬老の日だったので、ポンコツ車を飛ばすことになった。有名な「かねつき堂」にしようとも思ったが、あまりに安易なので、行田の知人に穴場を教えてもらうことにした。

それが「珈琲苑 憩(いこい)」だった。穴場好きだけに情報は確か。たまに外れることもあるが。
          珈琲苑 
          懐かしい喫茶店?

フライは元々が駄菓子屋の延長線上のB級グルメだけに安普請の店が多い。大正年間に足袋(たび)の工場で働く女工さん相手に店がどんどん増えたという歴史を持つ。水で溶かした小麦粉をフライパンで焼いたところから「フライ」と呼ばれるようになった(別の説もある)。ソースを塗って食べる素朴なもの。

埼玉でも行田周辺でしか通用しない郷土料理で、「秘密のケンミンSHOW」などでも笑いのネタにされることも多い。さらに「ゼリーフライ」などという妙なものまである。ついお菓子のゼリーを想像してしまうが、豆腐のおからを素揚げしただけのもの。形が銭(小判)と似ているところから「ゼリーフライ」となったらしい。いずれにしてもおかしな郷土料理ではある。
          珈琲苑① 
          安う~

「珈琲苑 憩」は市の中心部の裏通りにあり、昭和の匂いの残る小さな喫茶店のような外観。入ると、テーブルが四つほど。カウンターの奥が厨房になっていて、2人のおばはん(ご高齢です)が切り盛りしていた。昔美人だった気配もある。
          珈琲苑② 
        昭和のローカル?

メニューから「ふらいセット」(税込み ドリンク付き500円)を選んだ。村民2号とゴッドマザーも同じもの。「卵を入れますか?」と店主らしいおばはん。プラス50円なり。「あらサービスじゃないのね」と村民2号。冷や汗。ついでに「ゼリーフライ」(2個150円)も頼んだ。
          珈琲苑③ 
          フライさま、登場

12~3分ほどで、大きな白い磁器皿に二つ折りされたフライがやって来た。思ったよりもデカい。直径25センチはありそう。表面には2種類をブレンドしたという特製ソースが湯気とともにいい匂いを放っていた。青海苔がかかっている。食べやすいように切れ目が入っていた。奈良漬けとたくわんがいいアクセントになっている。
                                    珈琲苑④ 
         B級の王者?
          珈琲苑⑥ 
        この粉感がたまらない
          珈琲苑⑧ 
       お好み焼きに負けない?
          珈琲苑⑤ 
        奈良漬けの美味

あまりに素朴なうまさだった。ソースは甘めで、溶いた小麦粉のどんよりした食感が悪くない。具は多めの青ネギとハムがポツリポツリ。それに卵が層になっていた。
          珈琲苑⑨ 
          卵のプラスアルファ

「うまいわ。たっぷりのネギが効いてる。でも卵を入れてよかったわ」
「あー懐かしい味だよ。あたしゃあ、幸せだよ。ついでにさ、お酒、頼んでくれる?」
「何言ってるの、コーヒーで十分よ」
          珈琲苑10 
        たび型ゼリーフライ

さや当て中に「ゼリーフライ」がやって来た。小ぶりで足袋(たび)の形をしていた。こちらもソース味。おからのコロッケ。素朴過ぎる味わい。ご高齢の女店主と雑談。店は30年くらいになるそう。「はっきりした創業年は忘れた」とも。相方のおばはんスタッフも相槌を打つ。明るいボケが曼荼羅状につながっている。敬老の日にふさわしいなあ、村長は足元を見ながらそう思うのだった。
          珈琲苑13 
       お酒ではなくコーヒー

本日の大金言。

フライは店によって少しずつ違う。キャベツや肉や海老を入れるところもある。お好み焼きに限りなく近く、チヂミにも似ている。しかも安い。行田だけの名物にしておくにはもったいない。







                珈琲苑12 

昭和初期の「ポークライス」

東京・銀座へ「JPAL(日本出版美術家連盟)展」を見に行く。友人の切り絵作家・小宮山逢邦さんから案内をもらっていたため。オープニングには行けなかったので、ちょいと覗くと、知り合いが何人かいて、お茶を飲みながら1時間ほど歓談。楽しいひと時となった。
          小宮山画伯 
          JPAL展

その足で東銀座の「中華そば 萬福(まんぷく)」へ。むろん昼めしのため。「萬福」は宮仕え時代にたまに通った店。創業が昭和4年(1929年)だが、その前から初代が屋台営業していたので、厳密には大正末期には「中華そば」(当時は支那そば)を出していたようだ。
          萬福 
       昭和を残した外観

今ではメディアにもよく取り上げられ、銀座界隈の人気店になっているが、今回は定番の「中華そば」ではなく、「ポークライス」(税込み 880円)が目的。中華そばとともに創業当時からメニューにあったようだ。これまで食べたことがなかったので、期待がふくらんでいる。
          萬福② 
          懐かしいカウンター
          萬福① 
          ポークライス!

時間が午後1時を過ぎていたせいか、さほど混んでいなかった。建物は昔のまま。年季の入った木の長いカウンター席とテーブル席があり、中国人のコックと女性スタッフが応対していた。日本語の合間に中国語が飛び交う。

水がなかなか来ないのは愛きょうとしても、数年ぶりに来たので、やや違和感。昔よりも雑になった気がする。とはいえ天下の「萬福」である。注文と同時に中華鍋を操るいい音がして、まずはスープ、続いて主役のポークライスがやって来た。待ち時間は13分ほど。
          萬福③ 
          元祖の味わい

スープは中華そばスープで、懐かしいシンプルな味。「ポークライス」はケチャップ味のやきめし。炒飯ではなくやきめし、である。
          萬福④ 
          美味の山?
          萬福⑤ 
          昭和がそのまま

ケチャップの鮮やかな赤。立ち上がってくるいい匂い。卵の黄色とタマネギ、それにグリーンピースが少し。ポークは小さな肉片が点々と見える程度。ポークライスというからにはもう少しポーク感があるかと思ったら、その期待はいくらか肩透かしを食らった。
          萬福⑥ 
          一粒一粒の歴史

だが、ステンレスのスプーン(レンゲでないのがいい)で口に運ぶと、ケチャップの濃厚な酸味が炒められたライスとともに、いい具合に粘膜にささやきかけて来た。

どうだす、旨いでっしゃろ? 大正の味だっせ
          萬福10 
      あーんの残り時間

醤油ベースのやきめしのようなパラパラ感ではなく、しっとり感でコーティングされている。一粒一粒にしっかり火が通っているために旨味がひと味違う。タマネギだけ火の通り具合が抑えてあり、そのほどよい食感が計算されている。ポークはチャーシューではなく、ロースか肩肉(ひょっとして細切れ?)を使っているようだ。
          萬福⑧ 
          ポークの意味

ボリュームはほどほど。880円という舌代を考えると、もう少し肉の量と全体のボリュームが欲しい。食べ終えると、懐かしい大型扇風機がこちらに柔らかな風を送っていた。

昭和がそのまま残っている。中華と洋食が混然としていた時代。日本橋「たいめいけん」(昭和6年創業)もその中から立ち上がってきた。銀座界隈の食の歴史の一断面が柔らかな風の中に煌めいている、そう思うことにした。

本日の大金言。

中華そばの元祖については諸説ある。「萬福」もその一つだが、大正期は全国各地に屋台ラーメン(主に中国人)が出始めた時代でもある。一説には江戸時代初期に水戸光圀が中華そばらしきものを食べたという記録もある。いずれにせよルーツが中国にあることは間違いない。




                萬福12 



深夜の「元祖いかめし」

 本日取り上げるのはかの阿部商店「元祖いかめし」であります。函館本線森駅のいかめし! 駅弁大会などでも人気ナンバーワンに何度も輝いた北海道の名物駅弁。村長はずいぶん以前に北海道で食べた記憶があるくらいで、口にしたのはホントに久しぶり。
          元祖いかめし 
          元祖いかめし

昨夜のこと。日本ペンクラブの9月例会に出席、桐野夏生さんのミニ講演などもあり、大いに盛り上がった。その後、北千住に流れて、ここでもまた痛飲。ウマズイめんくい村に帰ったのは午後11時を過ぎていた。すでに村民2号もゴッドマザーもグースカ寝ていた。シメシメ・・・。
          元祖いかめし③ 
            実演販売中だった
          元祖いかめし④ 
       たまらずゲットしたが

実はその数時間前に、北千住「マルイ」の地下「食遊館」で、「元祖いかめし」を仕入れていた。たまたま「北海道フェア」が行われており、阿部商店が元祖いかめしを実演販売していたのである。税込み780円なり。これをしっかりゲットし、カバンの中に入れておいたのである。ミサイルが飛んでくる時代、こうした用心はある意味必要だと思う(こじつけが過ぎる)。

で、真夜中。小腹がすいていたのと、「本日中にお召し上がりくださいね」(女性スタッフ)の言葉もあったので、冷蔵庫から白ワインを取り出し、真夜中の元祖いかめし賞味、となったわけである。
          元祖いかめし① 
          おお~
          元祖いかめし③ 
          お見事×2

紙包みを解き、経木の蓋を取ると、見事な煮色のいかめしが2杯現れた。いかめしの独特のいい匂いが部屋中に充満した。村民2号とゴッドマザーが起きてこないか気になったが、走り出した食欲は止められない。こっそり一人で食べるという、どこかやましい意識もすっかり消えていた。
          元祖いかめし② 
          駅弁キング?

いかは小ぶりだが、丸々と太っていた。小皿に移してから切り分ける。まずはひと口。イカの柔らかな食感と歯ごたえ。ギッシリ詰まった半透明の米・・・煮汁がいい具合に滲み込んでいる。絶妙な甘辛さで、素朴な美味さに歴史を感じる。
          元祖いかめし④ 
          丸ごと一杯
          元祖いかめし⑤ 
          切り分ける

スルメイカを使い、きれいに洗ってから生のうるち米ともち米を詰め、じっくりとボイルし、それを醤油と粗目砂糖で作った秘伝のタレに漬け込む。駅弁には珍しく添加物を使っていない。
          元祖いかめし⑥ 
          かぶりつきたい
          元祖いかめし⑦ 
          美味い部分
          元祖いかめし⑧ 
       えんぺら、最高

明治36年(1903年)創業以来の手づくりで、それが売りでもある。小ぶり2個なのでディナーとしては少々物足りないが、小腹を満足させるには十分だと思う。真夜中の酔っ払いには、最高の贈り物。

あっという間に平らげ、余韻に浸っていると、隣の部屋からゴッドマザーのいびきが聞こえてきた。そのいびきがグースカ、グースカから・・・いかめしやうらめしや~と聞こえた気がした。慌てて、ビニール袋にカラになった折詰の箱ごと放り込んで、ギュッと縛ってから、ごみ箱の底に隠すように忍ばせた。このせこさはどこから来るんだろう? 明日バレなきゃいいが・・・。

本日の大金言。

阿部商店の元祖いかめしは今ではデパートや駅弁大会でも手に入るようになった。値段も少しずつ上がっている。だが、その素朴な美味さは何ものにも代えがたい。




                  元祖いかめし⑨ 





箱根の「30センチピッツア」

 「ピザ」ではなく、イタリア風に「ピッツァ」。元箱根の人気イタリアンで、40分ほど待たされてようやくたどり着いた、本格的ナポリ風ピッツァをテーブルに乗せるとしよう。

箱根・強羅で同級会宴会の翌日、二日酔いの頭を抱えながら、大涌谷⇒芦ノ湖遊覧の定番コースをまわり、元箱根でちょうどランチタイムとなった。「美味いパスタを食いたいな」という声が上がり、村長は有名な芦ノ湖テラスへと一行約10人を案内することにした。
          芦ノ湖テラス 
          箱根のナポリ?

ここにある「ラ・テラッツァ芦ノ湖」は箱根でも有名な本格的イタリアンレストランで、土日などは1時間以上待たされることもある。オープンテラスもある広いシャレた建物で、どこか日本離れしている。
          芦ノ湖テラス3 
        シャレた店内が見える

パスタ派とピッツァ派に別れたが、村長は少数派のピッツアを頼むことにした。「マルゲリータ」にしようか迷ったが、フトコロ事情の関係で「アッチュガーナ」(税込み 1100円)を選んだ。ピッツァだけで30種類もある。地場の「箱根四季ビール」(同 700円)も抜け目なく頼んだ。合計1800円ナリ。ちと痛いが、やむを得ない。
          芦ノ湖テラス④ 
          メニューの一部
          芦ノ湖テラス⑤ 
          地ビール

ここは本格的なナポリピッツァを出してくれる。東京・広尾の名店「アクアパッツァテラス」から独立、店名も「ラ・テラッツァ芦ノ湖」と変えている。イタリアから取り寄せた巨大窯を使い、手延べした生地を直火で焼き上げる。燃料が薪というのもナポリそのもの。
          芦ノ湖テラス1 
          七湯ビールだって?

注文してからの待ち時間は12~3分ほど。その間に地ビールをゆっくり飲む。ビールをチビチビ飲むのも悪くない。箱根四季ビールを頼んだのになぜか「箱根七湯ビール」が来た。ま、いっか。ハーフ&ハーフのような炒った麦芽の香りが特徴のビールで、半分ほど飲んだところで、「アッチュガーナ」がいい匂いとともにやって来た。
          芦ノ湖テラス⑦ 
          主役の登場
          芦ノ湖テラス⑥ 
          これで一人前
          芦ノ湖テラス⑧ 
          でかー

デ、デカい。2人前と間違えたのではないかと思うほどの大きさ。優に30センチはある。真っ赤なトマトソース(マリナーラ)をベースにアンチョビ、フレッシュトマト、バジリコの葉などの色合いがどぎつい。どこかレディー・ガガのよう。ポーカーフェイスを歌いたくなる。

生地がナポリそのもので、薄くて、縁だけが盛り上がっている。直火のまだら状の焦げ目がポエム。縁のパリパリ感ともっちり感。
          芦ノ湖テラス⑨ 
          本場の味わい
          芦ノ湖テラス11 
          あーん
          芦ノ湖テラス12 
          裏側もチェック

トマトソースの濃い風味とアンチョビの塩辛さ、オリーブオイル、ニンニクの隠し味などが生地の小麦粉の香ばしさとマッチしている。小麦粉はイタリアから取り寄せているそう。黄と赤のイタリアンミニトマトがいいアクセントになっている。
          芦ノ湖テラス13  
          ボーノ、ボーノ
 
それにしてはボリュームがあり過ぎる。全部で8カットされていたが、何とか平らげると、口の中がナポリになってしまった。モッツァレラチーズがないのが残念だが、これはこれで満足。レディー・ガガの休養宣言が心配だが、最後に残った箱根七湯ビールをグイッと飲み干すと、胃袋の奥からジローラモが「パスタも食べる?」とささやいてきた・・・気がした。何というオチだ。

本日の大金言。

彼は昔の彼ならず。彼女も昔の彼女ならず。だが、ピッツァはナポリのまま。ピッツァの元祖はローマではなく、むろんアメリカでもなく、ナポリなのである。現在のような「マルゲリータ」が誕生したのは1889年と言われている。



                  芦ノ湖テラス15 





名曲喫茶の「卵とツナサンド」

 ロールパンのサンドイッチには夢がある、気がする。角型の食パンは現実的で、どこか銀行マンのようだが、ロールパンはその形状ゆえか、小さな花屋のようにも見える。ささやかな夢がある?

だが、角食パンに比べて、美味いロールパンのサンドイッチに出会うことは少ない。今回取り上げるのは、その極めて珍しい、上質なロールパンのサンドイッチだと思う。
          らんぶる① 
          ここだここだ

中学時代の同級会を箱根でやることになり、有志と新宿で待ち合わせとなった。少々時間があったので、三丁目の名曲喫茶「珈琲 らんぶる」で早めの腹ごしらえをすることにした。先々週もこのあたりでディープな「飲み会議」をやったが、入りたかった「らんぶる」は素通りしただけだった。

その思いが少々残っていたので、今回のトライとなった。クラシックの名曲と美味いコーヒー。それだけで十分で、食べ物はほとんど期待していなかったが、それが大間違いだった。
          らんぶる1 
          地下の先の世界

「珈琲 らんぶる」は東京でも有名な大箱の純喫茶(もう死語だが)の一つで、創業が昭和25年(1950年)。新宿の昭和レトロがそのまま残っていて、地下への階段やシックな赤じゅうたん、天井から吊るされたシャンデリアはどこかヨーロッパの社交場を思わせる。
          らんぶる④ 
          素晴らしき空間?
          らんぶる③ 
       シンプルメニューの奥

「卵とツナのサンドセット」(コーヒー付き 税込み950円)を頼むことにした。角食パンではなく、ロールパンのサンドだったことが好奇心をくすぐった。

それほどの期待をしたわけではない。12~3分ほどの待ち時間でやって来たロールパンサンドに目が奪われてしまった。ツナペーストの想像を超える盛り、ゆで卵ペーストの量・・・それにミニサラダとブレンドコーヒーの香り。うむ。
          らんぶる3 
        ほお~軽く驚く
          らんぶる⑥ 
          手抜きがない

ロールパンはほどよく火が通っていて、パンのいい香りが立ち上がっている。普通のロールパンよりもひと回り大きい。コーヒーをひと口飲んでから、ツナサンドへ。ほとんどツナだけのようなペースト。少しだがオリーブオイルかマヨネーズも入っているかもしれない。ロールパンには多分マーガリンしか塗られていない。
          らんぶる⑨ 
          ツナペーストさま
          らんぶる13 
          ロールパン、マル
          らんぶる10 
        美味のボリューム

直球勝負のようだが、かなり計算されたプロの技で、ガブリと行くと、ロールパンの美味さとテンコ盛りのツナペースト(やや味が濃い)が口内で絶妙に溶け合っていく。いい意味で期待が裏切られてしまった。

卵も素材勝負で、賽の目切りに細かく切られたもの。マヨネーズが前面には出ていず、黄身と白身がいい具合にマッチングしている。その具のボリュームとパンの美味さが周到に計算されている、そんな感じ。
          らんぶる11 
          こちらもウムム
          らんぶる12 
          はみ出る卵さま
          らんぶる14 
          ガブリ後の余韻

ミニサラダもシンプルで余分なものはない。BGMのモーツァルトとゆったりした空間が心地いい。一階が喫煙室(20席)、地下が禁煙席(200席)というのも気が利いている。次回も新宿に行ったら、ここで時間調整することにしよーっと。

本日の大金言。

時間があれば、ロマンスカーに乗る前に、名曲喫茶でいい時間を過ごす。新宿三丁目界わいの楽しみはいろいろあるが、引き出しの中の一つに「らんぶる」のようなオアシスを入れておくのも悪くはない。












                   らんぶる16 

メッツ青木とハンバーグカレー

 本日、テーブルに乗せるのは「ハンバーグカレー」である。ただのカレーではない。

ポンコツ車を飛ばして、ゴッドマザーが住んでいた、群馬・桐生市の留守宅に掃除に行ったついでに、ひょんなことから入った店。これが意外な店だった。

かの日本新聞協会にも加盟しているローカル紙の星「桐生タイムス」が近くにある東五丁目界隈。このあたりは昔ながらのいい店が潜んでいる。織物の町の面影が色濃く残ってもいる。

広い家なので掃除が長引き、午後1時半を回っていた。腹の虫がぴいぴい鳴いている。街なかで生の情報を拾うことにした。

「釜飯もいいけど、カレーがうめえよ。喫茶店というより洋食屋みたいだよ」
          ルポ① 
         一軒家の隠れ家

でっぷり太った地元オバハンの情報で、その「イート喫茶 ルポ」を探す。焦げ茶と白の一軒家。「REPOS」も看板が見えた。日本語で「ルポ」。フランス語で「休憩所」の意味らしい。
          ルポ② 
         カレーだけで9種類
          ルポ③ 
          落ち着く

店内はウッディーで落ち着いた雰囲気。フルートのジャズが流れていた。カウンター席とテーブル席。マスターと女性(奥さん?)2人。時間が時間なので、客は一組だけ。テーブル席に座って、「一番人気」だという「ハンバーグカレー」(税込み 850円)。村民2号は「ベジタブルカレー」(同 750円)。ランチセット(ミニサラダとコーヒー 150円)も付けてもらった。
          ルポ⑤ 
          このボリューム
          ルポ3 
          まずはサラダ
          ルポ⑥ 
          本格的なカレー

この「ハンバーグカレー」がボリューム満点だった。大皿に焦げ茶のカレールーがたっぷりと広がり、隠れるように真っ白いご飯が湯気を立てていた。ハンバーグの姿は見えない。カレーライスだけで9種類あり、「スパイスは10種類ほど使ってます。じっくり煮込んでから、一晩寝かすんですよ」(マスター)とか。
          ルポ⑧ 
          ライスとルー

辛さとタマネギの甘みが濃厚に凝縮していて、悪くない味わい。スパイスが口中に広がる。スプーンでカレールーを分けると、中からかなりデカいハンバーグが姿を現した。自家製のハンバーグで、多分豚挽き肉中心。肉がそのままストレートに伝わってきて、玉ネギなどつなぎの変化球はあまりない。注文を受けてからフライパンでしっかり焼いた気配が漂っている。
          ルポ⑨ 
       ゴジラが隠れていた?
          ルポ12 
          肉の圧倒
          ルポ13 
          直球の肉汁

メチャウマではないが、喫茶店のカレーのレベルは超えていると思う。食べ終えると、ベルトが一つ弛むほどのボリューム。村民2号は「喫茶店のいいカレーって感じかな。ベジタブルは新鮮で、ナスが特に旨かったわ」と中辛の感想。

店は39年になるそう。ふとメジャーリーグの青木宣親(現メッツ)のサインがあることに気づいた。聞いてみると、「オフのときなどここにもよく見えます。奥さんが桐生の出身なんですよ」。
          ルポ15 
          コーヒーは普通

奥さんは確か元テレ東の女子アナ。ほおー、ということは・・・このハンバーグカレーも食べているの違いない。ブルージェーズからメッツに移籍したばかりだが、村長は青木のファンでもある。日本での輝かしい実績と高給を捨て、30歳でメジャーに挑戦、何度も苦難を乗り越えてきた苦労人、青木の頑張る姿が、イチローとは別の感動を与えてくれる。犬も歩けばいい店にぶつかる、である。

本日の大金言。

青木の凄さはめげないことだと思う。メッツでもヒットを量産し始めている。投手ではなく野手でメジャーで成功することは凄いこと。ハンバーグカレーと青木の粘り強く俊敏なパワーはどこかで繋がっている? まさかね。


                  ルポ14

目白通り地下の「パンカレー」

 東京・目白通りは好きな街だ。どこかパリの裏通りにも通じるような趣きがある。いい店がさり気なく隠れている。ぶら歩きすると心がウキウキしてくるから面白い。

キオが少し前まで目白通りの裏手に住んでいた関係もあり、近くに用事があったついでにぶら歩きを楽しむことにした。すでに午後7時を回っていた。「志むら」「寛永堂本店」であんみつでも食べようか算段していると、それを察知した村民2号が数メートル先で「ここがいいわ」と指差した。こうなると逆らえない。
          伴茶夢 
          素通りしそう

気がつかないと通り過ぎてしまいそうな老舗喫茶店で、アンティークな入り口と地下に続く階段、両側の古いランプがどこか中世のお城の一部のような趣きがあった。青ひげ公でも住んでいるんじゃないか?
          伴茶夢2 
          地下への階段

知る人ぞ知る「珈琲 伴茶夢(ばんちゃむ)」だった。大正ロマンの香りもする。村民2号のコーヒー好きは筋金入り。嗅覚も犬並み(?)に発達している。入り口のレトロなショーケースに目が吸い込まれた。
          伴茶夢③ 
          パンカレーだって?

「パンカレー」が浮かび上がっていた。短冊形に角切りにしたトーストの上にカレーがどっかとかかっていた。これは珍しいメニュー。浅草「若生(わこう)」のカレートーストに似ているが、少し違う。

調べてみたら、創業が昭和50年(1975年)で、建物も造りもそれよりもっと古いこともわかった。さすが目白。8種類のコーヒーもこだわり方が筋金入りのようで、チーズケーキなども本格的な手作り。迷わず名物らしい「パンカレー」を頼むことにした。
          伴茶夢④ 
          メニューの一部

この「パンカレー」(税込み 単品590円)、飲み物をセットにすると770円ナリ。リーズナブル! 歩き疲れていたので、アイスレモンティーにしてもらった。村民2号は「ゴールデン珈琲」(450円)。

注文を受けてから作り始めているのがわかった。12~3分ほどの待ち時間。トーストした2枚ほどのイギリスパンを4センチ×2センチほどに切り、その上からドロリとした本格的なカレールーがかかっていた。中央には刻んだパセリがパラパラ、ミルク(ヨーグルト?)も少し流れていた。ミニサラダも添えられている。
          伴茶夢⑤ 
           主役の登場
          伴茶夢⑨ 
       本格的な意外性
          伴茶夢6 
       アイスレモンティー

フォークとスプーンで食べると、複雑なスパイスの効いたルーが口中に広がった。こんがりと焼かれたトースト(バタートースト?)とよく合う。ルーはじっくりと煮込んでいるのがわかる。玉ネギはすっかり溶け込んでいて、合挽き肉の舌触りが「その辺のカレーとはちょっと違うよ」とつぶやいているよう。辛さは思ったほどない。
          伴茶夢4 
          肉ではありません

食べているうちに気がついた。トーストにカレールーがすっかり滲み込んでいるのと、半分だけ滲み込んでいるのと、滲み込んでいないのと・・・その計算された料理人の技に感心させられる。喫茶店でこのさり気ないプロ意識。妙な注釈もない。目白の奥の深さか?
          伴茶夢⑧ 
        ヨダレが出かかる
                                    伴茶夢5 
                                    口の中へ

「コーヒーも美味い。私の目に狂いはなかったわ。村長もよかったでしょ?」
「寛永堂で仕上げにあんみつを食べたいよ。志むらでかき氷も悪くないな」

ゴッドマザーが待ってるわよ。早く帰らなきゃ。徘徊(はいかい)してるかも、よ。心配じゃないの?」
「村長も目白をもっと徘徊したくなってきた・・・」

「別に止めないわ。じゃあね」
「・・・・・・」

本日の大金言。

人生は確かに甘くない。一歩間違えると、苦味に変わる。ほどよいところで折り合いを付けることも重要である。甘辛のさじ加減。






                   伴茶夢10 

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京都展の「いなり・だし巻き弁当」

 おいなりさんとだし巻き。京料理のベースにある粋だと思う。B級なのにA級でもあり、シンプルなのに奥が深い。どちらも出汁が決め手になっている。「野暮」が看板の関東のいなり寿司や卵焼きとはベースが違い過ぎる。むろん、野暮の魅力も手放しがたいが。

東京・新宿で気の置けない仲間とちょっとした飲み会があり、新宿伊勢丹本店で待ち合わせとなった。ちょうど6階で「京都展」が開催されていて、京菓子からサンドイッチまで、京都の名店がズラリと並んでいた。さすが伊勢丹、と感心しながら、いつもの癖で価格を見ると、いずれも安くはない。
          さいき家 
      京都の名店がズラリ(さいき家)
          さいき家② 
        おっ、だし巻き実演中
          さいき家① 
          これこれ

フトコロと相談しながらあれこれ迷った末に、「大徳寺 さいき家」の「いなり寿司だし巻き弁当」(一折 税込み972円)を買い求めた。1000円以内であることと「いなり・だし巻き」に惹かれたからである。

後ろに視線を感じ、振り向くと、京グルメ仙人と本日の夜の主役・コック長が立っていた。わわわ。いつもながら風の又三郎的登場の仕方で、これが不思議な魅力でもある。

「村長、グルメ仙人が冷ややかに見てましたよ。『さいき家』の弁当を買うなんて、お里が知れるって顔でしたよ、むふむふムフフ」
コック長が村長の耳元でささやいた。何という微笑ましい奴らだ。

その後、三丁目の居酒屋でしこたま飲み食べしてから、終電近くにウマズイめんくい村に帰り、翌日の朝食で、この「いなり寿司だし巻き弁当」を賞味した。
          さいき家① 
          朝めし、である

自然な色の大きいだし巻きが2切れ、それにいなり寿司が4つ。

「さいき家」は仕出し専門の料理屋で、創業が昭和8年(1933年)。西陣が華やかりし頃などは、評価の高い仕出し屋だったようだ。現在は時代に合わせて有名デパートなどでも店舗展開をしている。
          さいき家② 
          さすが京都

グルメ仙人はツウすぎて、昭和8年創業の仕出し屋などは「なんや近ごろ気張ってはる店やなあ。京都駅でも売り出してはるわ」くらいの認識のようだ。京都では84年程度では老舗とは言えない。かなんなあ。

だが、だし巻き卵の美味さはさすが京都、というものだった。甘さが控えめというより、ほとんどない。鰹節と利尻昆布出汁がじゅわりと効いている。冷めているのに美味い。ほどよい塩気。ふつうは冷めると出汁が微妙に流れ出て、味が落ちる。それがまったくない。ふわふわのまま。何か特別なつなぎを加えているに違いない。
          さいき家⑨ 
          冷めてても
          さいき家10
          味が落ちていない


 
いなり寿司はお揚げが薄く、かなり甘め。酢飯にはゴボウ、人参、たけのこ、黒ごま、ちりめんじゃこが入っていて、それなりに美味い。以前に賞味した新京極「寿司 乙羽(おとわ)」のいなり寿司が大関だとすると、小結くらいの美味さ。むろん個人的な感想で、フツーに食べたら「うめえ」となるレベルだと思う。
          さいき家⑥ 
          おいなりさん
          さいき家⑦ 
          出汁の効き方

気がついたら、一人でほとんど全部食べていた。村民2号とゴッドマザーが呆れたように村長を見ていた。天井のあたりからグルメ仙人の笑い声が聞こえた気がした。村にも応仁の乱が近づいている?

本日の大金言。

京都は別格だと思う。恐るべき一千年の味覚文化。庶民と殿上人が曼荼羅状にどこかで繋がっている。その下に眠っている怨念の深さ。千年王国の桜の下には屍体が埋まっている。おいなりさんとだし巻きもその上に花開いていると思うが。肩に力が入り過ぎだよ、ぐひひ。




                 さいき家5 



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プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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