絶妙な繊細、草刈民代のような塩ラーメン

 「塩ラーメン」は函館が有名だが、醤油ラーメンや味噌ラーメンとはひと味違ううまさがある。かつて自分のことを「谷間のラーメン屋」とやや自嘲気味び表現した総理がいたが、中曽根さんと福田さんという強力なラーメン屋・・・いや総理経験者に挟まれた自分の立場をユーモアで切り返したものだった。

醤油と味噌の二枚看板に比べると影が薄いが、そのシンプルな塩ダシの味わい深さに根強いファンも多い。赤羽彦作村長もその一人である。中でも東京・北千住の「子竜(こたつ)」は好みの店。東口を出てすぐ、高架沿いにバーやラブホテルもある並びにひっそりと咲いている。それだけで彦作村長の胸は躍る。午後9時過ぎ、ジャズバーでバーボンのオンザロックを飲みながら、ダンディーなマスターとバカ話を楽しんでから帰途に着くと、駅ビル・ルミネの前で、突然のように「子竜」のラーメンが食べたくなった。

          子竜ラーメン① 
          入口は凝ったつくり

中年のカップルが千鳥足でラブホテルに入っていくのをちらりと見ながら、村長は、店内がコンクリートの打ちっぱなしのデザイン的にはニューヨーク的な「子竜」に入った。10人くらいしか座れない木のカウンター席に腰を下ろす。うまい店なのに客が一人しかいない。ジャズが流れている。店主は30代後半くらいか。ひょっとして40代かもしれない。見た目は若い。無駄口を叩かず、黙々とラーメンを作る。聞くところによると、葛西の人気店「ちばき屋」で修業したそう。

          子竜ラーメン③ 
          シンプルな立ち姿・・

「塩ラーメン」(650円)を注文。5~6分で、久しぶりの塩ラーメンが目の前に姿を現した。白濁した半透明のスープ。鶏ガラで取ったスープは少なめで、ほんのりと脂が浮いている。細ちじれ麺(多分自家製)がきれいな身なりで正座している。うまそうなピンク色のチャーシュー、よく煮込まれたシナチク、海苔、それに白髪ねぎがいい具合にシンプルを装いながら、脇を固めている。姿のいい塩ラーメン、そう表現するのがぴったり。

         子竜ラーメン④ 
         この繊細・・・

まずはスープをひとすくい。最初のアタックは薄味ですっきりしている。それが次第にコクと奥行きをじんわりと感じさせてくる。麵はかなり細麵が、シコシコしていて、彦作村長の好きな食感である。さりげない中に奥深さを秘めた職人芸。シナチクもいい具合の歯ごたえ。チャーシューは柔らかくてジューシー。ただ、村長の好みとしては、もう少し厚みが欲しい。チャーシューがあと2ミリ厚かったら、ほとんど完ぺきではないか。それが少々残念。白髪ねぎがシンプルな貴婦人のようで、シャキッとした食感が、いい塩出しのスープと麺のコラボにさらにいい色合いをもたらしている。

繊細な芯のある塩ラーメン。一瞬、どんぶりの中で、女優でバレリーナでもある草刈民代が踊り始めたような錯覚を起こしてしまったほど。何よりも今流行している極太麵とギタギタ脂と魚粉入りのドロリとしたラーメンとは明らかにポリシーが違う。野蛮と繊細。化学調味料と無化調。チャーシューさえもう少し厚みがあったなら・・・。

         子竜ラーメン⑥ 
         草刈民代が踊り出す・・・

         子竜ラーメン⑦ 
         もう少し厚かったら最高なのに

「自家製のからしを入れてみてください。また別の味が楽しめます」と無口な店主。その自家製からし(ラー油)を加えてみた。確かに辛みが増して、別の味わいが楽しめる。たまたまなのかもしれないが、これで、なぜ客が少ないのか。 全体的なインパクトに欠けるということなのか? 秘すれば花、の世界の奥行き。この「さり気ない味わいと気遣い」、どこかで経験した記憶が・・・。彦作村長がよく通っていた、門前仲町の「支那そば 晴弘」に似ている。そういえば「晴弘」も「ちばき屋」の暖簾分けだったことを思い出した・・・。

         子竜ラーメン⑤  
         コタツではなく子竜

「子竜(こたつ)」という店名は、「坂本龍馬が好きだったんで、その子供という意味で付けたんです」とか。食後に出してくれたジャスミンティーを味わいながら、村長は無口な店主の背中に向かって、「派手な極太こってり系になんか負けたらいかんぜよ」と願うのだった。外に出ると、満天の星の下、ラブホテルの妖しい看板が視界の隅に入ってきた。



本日の大金言。

日本から職人が消えつつある。ラーメンの世界においても。昔は客がいい店・いい職人を育てたが、今はどうか?


                子竜ラーメン② 

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プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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