さらば築地場内「センリ軒」

 今年は築地市場のラストイヤー。関東大震災後、昭和10年(1935年)に日本橋から築地に移転、約83年に渡る歴史に区切りを付けることになる。どうせならきんさんぎんさん(懐かしいのう)とまでは行かなくても、100年まで頑張ってほしかったが、今年の10月11日豊洲移転で、その歴史に幕を閉じる。

築地には思い入れが深い。エンタメ新聞社が築地にあった頃、真夜中の仕事を終えてから、明け方近くに場内市場で美味い魚をつつきながら一杯やるのが楽しみだった。安ウマの極致。

感傷はさておき、今回テーブルに乗せるのは場内市場8号棟にある喫茶店「センリ軒」の名物「ヒレカツサンド」である。
          センリ軒② 
      場内市場名物の一つ

6号棟にある「珈琲の店 愛養(あいよう)」とともに、築地市場のシーラカンスのような老舗喫茶店。むろんこのシーラカンスという言葉には最大の敬意をこめている。なにせどちらも創業が大正初期。魚市場が日本橋にあった頃から「ミルクホール」として営業していたようだ。

新しい小田原橋棟の3階に支店を出したので、「センリ軒」自体がなくなることはなくなったが、築地の何とも言えないセピア色の店はなくなる。歴史は建物とともにある、と思うと、一抹の寂しさを感じてしまう。
          センリ軒④ 
          隣りの行列

で、思い立って、朝早く8号棟まで足を運ぶことにした。午前10時半だというのに、外国人観光客も含めて、恐るべき行列。だが、それは隣りの海鮮丼屋の行列。「センリ軒」は行列とは無縁で、ほとんどすぐに入れた。思わず笑みがこぼれる。知らぬは観光客ばかりなり。約5年ぶりの訪問。
          場内市場センリ軒 
          残り約10か月

コーヒーの香りとともに「昭和初期の世界」がそのまま。客は魚河岸関係者が多く、市場の有名人も長靴姿でコーヒーを飲み、三代目店主と大声で話していた。タバコの煙もここでは出入り自由である。
          センリ軒14 
          これこれ

「ヒレカツサンド」(税込み 700円)と自家製「チーズケーキ」(コーヒーとセットで600円)を頼むことにした。

待ち時間は10分ほど。ヒレカツサンドは表面がいい具合にトーストしてあり、間に挟まれたヒレカツは肉の厚みが優に1・5センチはある。自家製ソースがたっぷりかかっていて、パンにはマーガリンがほどよく塗られている。
          センリ軒⑦ 
     シンプル・イズ・ベスト
          センリ軒⑧ 
       トーストの焼き具合

3組にさらに包丁が入っていて、食べやすいように合計6つに小分けされている。ガブリと行くと、トーストしたパンの香ばしさと柔らかなヒレカツの重量感に場内市場で喫茶店ひと筋のプライドを感じる。トンカツのコロモは薄く、その分、ヒレ肉自体の旨さが絶妙に広がる。フツーに旨い。
          センリ軒11 
          おおおの世界
          センリ軒10 
          ヒレカツ

マスタードとパセリがないのが少々残念だが、それは今に始まったことではない。外側より中身で勝負の築地そのものの世界だと思う。市場関係者は舌の肥えた人が多い。それに応えて敷居を低くして百年以上も生き残っていることの凄さ。

マイルドなコーヒーも伝統を感じさせるもので、それを飲みながら、銀紙に乗った自家製チーズケーキを味わう。
          センリ軒⑤ 
        自家製チーズケーキ
          センリ軒⑥ 
          上質の味わい

レアとベイクド2層になっていて、舌の上での溶け方が心地よい。春風の鮮度と風味、それに甘さが抑えられている。底のビスケット生地とともにレベルの高いチーズケーキだと思う。

10月の移転まで、何度通えるか、頭の中で指を折ってみたが、6本目くらいでため息が出てしまった。

本日の大金言。

タイムマシンがあれば築地の前の日本橋魚河岸時代にも行ってみたい。江戸時代からつながる魚河岸の歴史こそ、日本が世界に誇る文化遺産だと思う。目算が狂ってしまったパフォーマンス好きのどこかの自分ファースト知事は今、何を思う?



                センリ軒12               








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赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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