人気1位蕎麦処で「3合そば」のなぜ

 紅葉の那須を後にして、ウマズイめんくい村のおかしな御一行3人が目指したのは「蕎麦のメッカ」日光例幣使そば街道。かつて天皇の勅使が日光東照宮に供物を納めるために通った街道でもある。この通りにはうまいそば屋が数多くある。彦作村長はうまいそばが食いたくなると、ポンコツ車をぶっ飛ばして、やって来たりするのだった。途中で、見事な虹が出ていたが、一行の関心はそんなところにはない。

         那須の虹 
         虹の架け橋、いずこへ?

今回の目的は「水無湧水庵(みずなしゆうすいあん)」。地元のタウン誌が行ったそば人気ランキング1位のそば屋である。以前土曜日に来てあまりの混みように入ることを断念した記憶がある。今回は平日の木曜日。しかも午後1時半を過ぎている。あまり待たずに入れるチャンスではないか。
「アタシャあ、10分以上待たされるのは嫌だよ。きのうは久しぶりにカラオケで31曲歌って気分がいいから、少しは我慢するけど、そば屋と歌の順番だけは10分以上待たされるのは御免こうむるよ」
87歳の大叔母が都はるみ調のこぶしを利かせて言った。

         湧水庵① 
         地元のそば人気1位

「水無湧水庵」は平屋建ての古民家。駐車場は平日の午後1時半を過ぎているのに混み合っていた。4人用のテーブルが4つ。座敷もあり、そちらはテーブルが6つほどある。ほとんど満席で、従業員のおばはんたちが忙しく動き回っていた。運よくそれほど待たずにテーブル席が空いて、そこに村長と村民2号と大叔母が同時に「よっこらしょ」と腰を下ろした。

メニューから「3合そば」(1700円)と「天ぷら盛り合わせ」(450円)を注文した。もりそば1枚が600円なので、別々に頼むよりも3人分合計で100円安上がりになる。それともう一つ、「3合そば」だとそれぞれの食欲と競争能力が食べる量の勝敗を決する。最後に笑うのは誰か? 一瞬にして、3人のそれぞれの思惑が、表の笑顔とは裏腹に波乱含みで一致した。

          湧水庵② 
          この見事な二八そば3合

大きな竹ざるに見事な色黒の手打ち二八そばが乗っかってやってきた。食べやすいように小さな山が7つ。そばは地粉を使った挽きぐるみの細打ちそば。栃木・粟野で食べた「永野のそば」に似ている。
「さすがにいいツヤね。新そば祭りはあと2週間先だから、まだ新そばではないけど、それでもほのかにいいそばの香りがする。そばつゆは少し甘めかな。多分かつおダシ。あまり濃くはない。私にはちょうどいい」
村民2号が素早くチェックする。

         湧水庵③  
         もそっとソバに・・・

「天ぷら盛り合わせ」はなす天2本、大きなかき揚げ、まいたけ天、チクワ、ピーマン。かなりのボリューム。天ぷらがテーブルに載った途端、静かにゴングが鳴った。
3人同時にそばに箸を延ばした。
「これだけ細打ちなのにコシがある。ノド越しも合格。この店は名前でわかるように湧水を使っている。この周辺ではこの店だけで、この水の素晴らしさが特徴だね」
彦作村長が余裕を見せながら寸評する。

         湧水庵⑤ 
         天ぷらの盛り合わせ

「天ぷらも結構うまい。でも、コロモが厚めで、時間を置くとベチャッとしそう。要は早く食べろということね。天つゆは甘め。ソバとの相性を考えると、いいバランスね」
村民2号が冷静に分析する。
「ただ一つ、気にくわないのがワサビ。これだけいい水で、裏庭にはワサビ畑もあるのに、粉ワサビを水で溶かしたものを使っている。なぜだ、と叫びたい気分だ」
「決まってるでしょ。いちいちワサビをすり下ろしていたら、これだけのお客をさばききれないし、第一、この値段も維持できないわよ。仕方ないわよ」
「惜しいなあ。この店は平成12年に地元の農家が共同で作ったのが始まり。そう考えると、まあよくやっているということなのかなあ。画龍点晴を欠く、というのはそば職人にささげる言葉ということなのかな」

        湧水庵④ 
        湧水と地粉の結婚

黙々と食べることに専念していた大叔母が箸を置いた。タッチの差で村民2号と村長も箸を置いた。大ざるはきれいになっていた。天ぷらがピーマンだけ1個残っていた。
「まあ、こんなもんじゃろ。アタシャあ、うどんの方が好きだね。ソバはみみっちくてイケない。村長、あんたの仲間が残ってるよ」
そばを一山多く食べた大叔母がツマヨウジをくわえながら、勝利のドヤ顔で言った。
「ピーマンのことよ。残り物に福よ。村長、早く食べてね」
村民2号も笑みを浮かべて相槌を打った。村長は冷たくなったピーマンに手を伸ばした。



本日の大金言。

そばにとってワサビは、オーケストラにおけるシンバルのようなものかもしれない。シンバルのひと叩きが曲全体を左右することだってある。


                 湧水庵⑨  
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

最新記事
カテゴリ
彦作のつぶやき
最新コメント
月別アーカイブ
カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
最新トラックバック
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR