「芸能人の口コミ」という落とし穴

 赤羽彦作村長はテレビが大好きで、平均すると一日に4時間くらい見ている。バラエティー番組も好きで、特にお笑い系が好み。今、気になっているのが「お願いだから、死んでえ~」の「ザ・パンチ」の現在。その笑いのツボに入ってくる独自な才能に村長は目を見張らされた。久しぶりに脳天を痺れさせてくれるお笑い芸人が出てきたぞ。村長は胸をわくわくさせて彼らの活躍を注視した。2008年のM-1でも決勝まで残って、そのまま優勝すると思った。だが、その本番で滑ってしまった。異様な緊張が伝わってきて、上滑りし始めたのだ。どうした、ザ・パンチ! テレビに向かって、村長は叫んだ。だが、負けたボクサーのような彼らのへこんだ顔だけがテレビに映し出されるだけだった・・・。

         かのや① 
         テレビの世界

そのザ・パンチだが、最近テレビで見ない。「吉本・東京」の所属だが、吉本はこの稀有な才能(ガラスの才能)をどうするつもりなのだろう? そんなことを考えながら、新宿の「ルミネ よしもと」の入っているビルを回って、居酒屋の客引きがたむろする通りを紀伊国屋方面へ歩いていくと「讃岐うどん かのや」という立ち食いうどん屋が目に入った。入り口には「芸人100人の口が選んだクチコミグルメ」というカラーの雑誌記事が張ってあった。よしもとのお笑い芸人が「この店を選んでますよ」という宣伝なのだろう。渡辺直美やスリムクラブ内田の顔も見えた。

          かのや12 
          お笑い芸人の口って?

「よしもとクチコミグルメ」が取り上げている立ち食いか。案外イケるかもしれないぞ。讃岐うどんも最近は食べていないし、ここはダマされてもともと、乗ってみることにしよう。そう考えて、自販機で「ちくわ天うどん」(390円)を選んだ。そばも売っていて、しかも「讃岐うどん」では当たり前のようになっているセルフ方式ではない。ま、「はなまるうどん」や「丸亀製麺」だけが讃岐うどんではない。これもありかもな。そう思って、「ちくわ天うどん」を受け取り、定番のきざみネギとおろし生姜を乗せる。白ゴマも振る。大好きな揚げ玉がないので、店員に「揚げ玉は?」と聞くと、「60円です」。自家製の揚げ玉なので別料金だという。初めての体験だったが、村長は「ま、揚げ玉が無料と思い込んでいた方もおかしい。だけど、ここはパス」。揚げ玉はあきらめて、横にのびるカウンターに腰を下ろして、うまそうに湯気の出ている「ちくわ天うどん」を見つめた。

         かのや④ 
         笑えないうまさ

ドンブリは小さめで、全体的に量も少なめ。ツユは薄口で、出汁のよく利いた関西風。その上に半分に切ったちくわ天が2つ乗っている。ワカメも鎮座している。生姜ときざみネギがいい具合に融け込んでいる。店内の雰囲気は場末の繁華街のようなけだるい雑然がそこかしこに感じられる。彦作村長の好みのシチュエーションでもある。

         かのや10  
        素晴らしきツユ

まず、ツユをレンゲでひと口。多分かつおやサバやイリコ、コンブなどで取ったダシがよく利いてうまい。さすがお笑い芸人口コミの店だな。ザ・パンチもここに来たことがあるのだろうか? ノーパンチ松尾のあの「早く死んでえ~」をもう一度聞きたい。パンチ浜崎の似合わないスカーフ姿を見たい。お願いだから、早く再起してえ~。ちくわ天をザ・パンチに見立てて、そう突っ込みを入れたくなった。

         かのや⑥ 
         うどんの意味とは?

うどんは讃岐とは思えないコシのない中太のうどん。もちもち感はなく、歯切れもごくごく普通。うーむ。村長は混乱した。これはいわゆる讃岐のうどんとは違う。少なくともはなまるや丸亀とは別種のうどんだろう。堂々と出している「讃岐うどん」という看板と芸人の口コミ記事。その意味をあれこれ推理しているうちに、彦作村長は考え違いをしていることに気づいた。これはこの店のある種の芸ではないか? 

メディアの露出情報をそのまま信じることの愚。
氾濫する外側だけの情報。表面こそが真実だというメッセージ。その絶望的な軽さ。その魔力。そうか、そうだったのか。ザ・パンチもこのテレビの魔力の罠にはまってしまったのではないか。

ザ・パンチはテレビから離れたところから必ず再起する。そして、テレビの世界に向かって「お願いだから、やめてえ~」と突っ込みを入れる日がくる。「かのや」を出ると、村長は今苦しんでいるはずの松尾と浜崎にささやかなエールを送るのだった。



本日の大金言。

作家の小林信彦はテレビについて「江戸時代の吉原のように人間を惹きつけて止まない現代のきらびやかな悪所である」という意味のことを書いている。必要悪。その洞察力、さすがと言うしかない。



                   かのや11 


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プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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