行列の店、佐野ラーメン謎の進化形

 首都圏から車で約1時間ほど、栃木・佐野市は彦作村長が時々足を運ぶ関東のラーメン王国である。市内には大小合わせて200軒以上のラーメン店が覇を競っている。その数は正確にはわからない。市の観光課に聞いても、「登録されているのは144軒ですが、実際は200軒を超えていると思います。人口当たりのラーメン店の数でいうと、日本一です」と妙な胸の張り方をする。

このラーメン王国で人気急上昇中の店がある。創業昭和5年(1930年)の元祖「宝来軒」や「おぐら屋」といった老舗の人気店を押しのける勢いで今や行列のできる店となっているというのだ。オープンしたのは約6年前と歴史は浅い。佐野ラーメンの新しい波だという。噂を聞きつけた美熟女の村民2号が鼻をぴくぴくさせながら、俳句をひねっていた彦作村長の耳元でささやいた。
        ゐをり① 
        1時半過ぎだというのにこの行列

「私は三井とかケンちゃんラーメンが好き。だけど、凄い人気らしい。特に女性のファンが付いているんだって。これまでの佐野ラーメンとはひと味違うらしいわよ。『麺家ゐをり』って名前もユニーク。ウマズイめんくい村の村長が行かないとあっては損長になっちゃうわよ」
「うむ。村長と損長じゃ随分イメージが違うな」
彦作村長はおもむろに立ち上がった。ふんどしがズレテいないか確認してから、できたばかりの一句を口ずさんだ。
「ラーメンを すするお顔も 伸びている」

ポンコツの愛車が東北道・佐野インターから6~7分ほどで目的の「麺家ゐをり」に到着した。時刻は午後1時半を過ぎている。狭い駐車場は満杯でどこに止めようかとしばらく迷っていると、運よく1台分が開いた。この店の課題はまず駐車場だな。こすりそうになりながら、何とかポンコツ者を狭いスペースに入れることができた。

          ゐをり② 
          なんじゃ、この店構えは

建物はまるで童話の世界のような、ロボット風な、不思議な造り。外に椅子が並べてあって、入りきれない人が順番待ちしていた。佐野の中でも行列のできる店として麵通の間でも話題になっていることが、その光景を見ただけでもわかる。入り口のドアには朱色のノレンが下がっていて、そこだけ純日本風というユニークさ。

結局、15分ほど待たされて、6人くらい座れる木のカウンター席に案内された。他にテーブル席が4人用と2人用それぞれ3つほど。中の造りも凝っていて、何やらディズニーランドの穴倉にでも入ってしまったような気分。メニューの中から「醤油ラーメン」(600円)とW餃子(餃子2個としそ餃子2個セット、320円)を選んだ。

         ゐをり③ 
         このシンプル、只者ではない?

待つこと10分ほど。醤油ラーメンがやってきた。見た瞬間、待たされたことがどこかへと吹っ飛んだ。佇まいがいい。スープは半透明で、一口すすると、ダシがよく利いたまろやかな奥深い甘みが口中の粘膜にジュワジュワと滲みこんでくる。おそらく鶏ガラと煮干しなどで取ったスープにネギ油も加えている。よく見ると焦がしタマネギが浮いている。あっさりしているのにアラフォー美女のような奥深い底の見えないしたたかな味。

          ゐをり11 
          まずスープを
         ゐをり⑤ 
         進化形でござる

「うまい! 麺がこれまで食べた佐野ラーメンとは違うわ。かなりの太縮れ麺でつるっとしていて、もっちり感がすごい。佐野というより喜多方ラーメンみたい」
「チャーシューはバラ肉で、脂が多いけど、柔らかさがちょいうどいいね。シナチクは普通かな。海苔とかナルトがない。麵もそうだけど、これは佐野ラーメンではない。推測だけれど、店主はシェフからラーメンの世界に入ってきた人なんじゃないかな」
「全体的によく調和がとれているわね。私、この味好き」

          ゐをり⑨ 
          2種類の餃子の圧巻

餃子も大きめで皮が厚いがもちもちしていて具もジューシー。とくにしそ餃子は色が緑がかっていて、しその香りが口中に漂ってきて、意外なうまさ。村長の好みはもう少し皮が薄い方がいいと思うが、村民2号は「これはこれでいい」とこの店にすっかり惚れ込んだ様子。あっという間に完食してしまった。

「この麺は青竹ではないと思う。佐野の進化形ということなのか、それとも別種なのか。それと敢えていうと、箸がプラスチックというのが残念。化学調味料も適度に使っていると思う。とにかくうますぎる。それは間違いないが」
「そういうことを箸にも棒にも引っかからない評論というのよ。やっぱり損長かも」
毒矢が飛んできた。村民2号も底知れない熟女だったことを思い出した。


本日の大金言。

佐野ラーメンの新しい波を受け入れるか否か。佐野ラーメンのレベルが高いのはこうした競争が生きているからだと思う。「伝統と競争」。その競演にこそ未来が見えてくるかもしれない。


                   ゐをり10
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プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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