希望はあるか、双葉まんじゅうとお赤飯の朝

 赤羽彦作村長の4代前の祖先は会津藩の足軽である。思い立って、ポンコツ車を吹かして、うどんの町・埼玉県加須市を目指した。ひと月ほど前のこと。ある福島復興イベントで、「双葉名物 茶まんじゅう」と「お赤飯」を買って、ウマズイめんくい村に持ち帰って賞味したところ、これが予想外にうまかったのだあの過酷な事故から立ち上がって、これを作っている和菓子職人に会いたい。

                双葉まんじゅう12 
         加須でひるがえる旗

双葉町=3.11でもっとも打撃を受けた町。役場ごと加須市に移転した悲劇の町。言葉でいうのは簡単だが、未曾有の事故から1年9か月経つのに故郷に帰れる日は見えない。未来を奪ってしまった東京電力の犯罪、それを推し進めてきた歴代政権の無策と無責任、想像力のあまりの欠如に彦作村長は改めて怒りを覚える。へたな正義感を振りかざすつもりはないが、いまだに「東電の恩恵を被ってきたんだから」うんぬんを言う人がいる。それを否定するつもりもないが、根本を間違えてはいけない。村長は福島の事故は原子力の特権村が起こしてしまった構造的な人災だと思う。その根っこの部分にはビルの最上階に巣食っている無責任体質がとぐろを巻いている。そして、それは現在も進行中なのだ。一億総ざんげを繰り返すのは早すぎる。

双葉町役場がある騎西高校から少し離れた場所に、NPO法人が運営する「こらっせ くわっせ」(寄ってってください、食べてってくださいの意味)がある。冬の青空に「双葉名物 茶まんじゅう」の旗がひるがえっていた。双葉町の和菓子職人・森正夫さん(69)がここで「茶まんじゅう」と「お赤飯」を作っている。事故がなかったら、今も双葉町で85年続く老舗和菓子屋「森製菓」の二代目店主として早朝から和菓子作りをしていたはずである。

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         和菓子職人・森さんとシゲちゃんの名コンビ

設備は双葉町時代とは比べようもない。売れ筋だった「十万山」や「味噌まんじゅう」を作るには設備が足りない。今年7月、森さんはできるところから始めようと、地元やボランティアの支援のもと、茶まんじゅうとお赤飯づくりに乗り出した。双葉町時代から店員として森さんを支えてきた関根茂子さんも一緒である。

戊辰戦争で悲劇の舞台となった会津よりも双葉町の置かれた状況は厳しいかもしれない。会津は未来は奪われなかったが、双葉は未来を奪われている。いまだに双葉町に戻れるめどは立っていない。それが日本の未来にも重なる。彦作村長は柄にもなく、そんなことを考えながら、早朝の8時に「こらっせ くわっせ」に入った。もうもうたる湯気の中で、森さんとシゲちゃんが作業中だった。木製の角せいろで「お赤飯」を蒸している最中だった。うまそうな匂いが充満している。

               お赤飯③   
        蒸し上がった名物お赤飯

茶まんじゅうのあんは館林で仕入れたさらしあんに砂糖を加えて、大きな鍋で炊く。和菓子職人歴50年の森さんが木のへらを使って、あんがこびりつかないように素早くかき回し続ける。一見単純作業だが、見事な職人技。見ているだけでかなりのエネルギーが必要な作業だとわかる。    
               
        茶まんじゅう① 
        出来たての茶まんじゅう

出来上がった茶まんじゅうを試食させてもらう。カラメル色の皮は実にもっちりしていて、中にぎっしり詰まった絶妙な甘さのこしあんと一体となっている。お世辞ではなく、職人歴50年の味とはこういう味だという手づくりの味わいが口の中に広がってくる。湯気の中の無上の口福。今、生きていることの実感まで噛みしめてしまう。

「お赤飯」は双葉独特のもので、ささげは使わずに金時豆を使う。もち米は小豆色にそめず、白いまま蒸し器で蒸かす。蒸かし上がった「双葉のお赤飯」はかなりのうまさだ。もち米はキラキラ輝いてふっくら、その甘みのあるもっちり感はやはりプロの技である。金時との相性もささげとは違う食感だが、絶妙と言わざるを得ない。

          双葉まんじゅう10 
          この見事な勇姿
          お赤飯① 
          キラキラお赤飯

「まんじゅうもお赤飯も双葉で作っていた時と同じ味です。イベントがあるとそこに行って販売もしているんですよ。もうすぐ70です。身体はきついけど、ここでこうして、再び和菓子を作れるとは想像もしていなかった」
言葉少なげな森さんにかすかに笑顔が戻る。職人のシャイな笑顔。村長の好きな笑顔だ。
「茶まんじゅうは1パック5個入りで400円、吹雪まんじゅうも同じです。お赤飯は1パック200円いただいてます。皆さんぜひ一度食べてみてください。本当にうまいですよ」
儲けをほとんど考えていない価格設定だが、そこに双葉の菓子職人・森さんの想いも詰まっている。元気なシゲちゃんの声が「こらっせ くわっせ」に響く。笑いで包まれる。その笑顔の陰に3.11が容赦なく存在している。



本日の大金言。

和菓子職人歴50年の森さん。その技を引き継ぐ人は今現在いない。総選挙の候補者たちとのあまりの落差。これが2012年12月の現実の一側面でもある。


            双葉まんじゅう17 
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プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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