これはうどんかすいとんか?耳うどんの奇怪

 「耳うどん」なる江戸時代からのB級グルメの存在を知ったのは、ごく最近である。ラーメンで有名な栃木県佐野市を探索していた時、観光物産課の職員に「佐野はラーメンの街ですが、耳うどんもあるんですよ。面白いですから、ぜひ一度食べてみてください」そう耳打ちされたのだ。耳うどん?聞きなれない言葉に一瞬耳を疑った。

         耳うどん⑧ 
         耳うどんってそんなのアリか?

佐野の郷土食で、正月三が日に食べると、魔除けになって、一年間無病息災で過ごせるというのだ。江戸時代からのの風習で、耳の形をしたうどんを悪魔に見たてて、それを食べることで、家の中の話を悪魔に聞かれないで済むという。あるいは、耳を食べてしまえば、悪口が聞こえないから、近所付き合いがうまくいくともいう。人の悪口ばかり言っているメディアや一部のネット族にぜひ食べてもらいたい。正月も近いし、人の悪口好きな彦作村長も食べなければならない。

その耳うどんを1年中食べさせてくれる明治40年創業の「野村屋本店」へ愛車のポンコツ車を飛ばした。同乗しているのは村民2号の他、友人のマサさんとシゲちゃん。途中で問題が勃発した。「佐野に行くんだったらやっぱりラーメンだべ」というマサさんとシゲちゃん。「ぼくらは村長とか村民2号産と違って、他人の悪口はあまり言ってねえからなあ」。耳の痛い指摘に、それならと、耳うどん派と佐野ラーメン派に別れて昼食を取ることで4党合意が成立した。

          耳うどん③ 
          師走の耳の行列

古い田舎家づくりの「野村屋本店」の前には4~5人並んでいた。中に入ると、4代目当主(50代?)を中心に5人ほど、一家総出で忙しそうに動き回っていた。店内はそれほど広くなく、4人用のテーブルが4つと座敷もあり、こちらには4人用が三つ。中央に障子の低い仕切りがある。つい壁に耳あり、障子に目あり、ということわざが頭に浮かんだ。

         耳うどん① 
         障子に耳あり

メニューは「耳うどん」(740円)、「煮込み耳うどん」(800円)、「大根そば」(630円)などそれなりに豊富である。村長は迷うことなく「耳うどん」を注文。村民2号も耳をそろえた。

          耳うどん⑤ 
          正月の魔除け?

15分ほど待たされて、大きな朱塗りの器に入った耳うどんがやってきた。期待十分。そろそろと開けると、シイタケとゆずのいい香りとともに五目うどんのような満艦飾が目に飛び込んできた。伊達巻、かまぼこ、ナルト、かしわ、ネギなどめでたい正月の食材が総出演しているよう。カニもどきまで顔を出している。濃口の醤油に鰹節とシイタケの出汁だろうシンプルな関東の汁。そして、その下に耳うどんがゴロッゴロッと横たわっていた。

まずは汁をひとすくい。まさに郷土料理とでも言うしかない田舎の家庭の味だ。
「うちで作るのと変わらない。添加物も使っていないと思うわ」
村民2号が感想を一言。
いよいよ耳うどん。その形に仰天させられた。人間の耳の形そっくり!悪魔の耳というより人間の耳にしか見えない。ひょっとして悪魔とは人間のことなのか?

          耳うどん⑥ 
          聞く耳もってますかあ?

小麦粉に塩を加えて寝かせるというほとんどうどんと同じ製法で、食感も味もは素朴なすいとんのよう。蕎麦がきのうどん版といってもいい。もっちりの食感を期待したが、もっちり感も味の奥行きも感じられない。昔からある郷土料理そのままという感じだ。これはうまいとかマズイとかの概念を超えた「B級のウマズイ味」そのものではないか。京都など関西のの洗練とは対極の、関東の風土に根差した野暮な味わい。

「耳うどんは期待していたほどのうまさとは言えないなあ。でも、この素朴な耳うどんからは何か原点を見直せ、足元を見直せ、そんなつぶやきが聞こえてくる」
「それが耳うどんの本当の意味かもしれないわよ。耳をよく噛んで食べて、聞く耳を持てってこと。2012年の師走に何か暗示的ね」
「総選挙も奇妙な結果になった。圧勝した自民党に本当に聞く耳はあるか。民主が大敗したのは国民の声を聞く耳を失ったからだ。そう考えると耳うどんの持つメッセージは大きい」

         耳うどん⑦ 
         いい正月よ、来い

「村長も村民の声をちゃんと聞いてね。そういえば、佐野はあの司馬遼太郎が終戦を迎えたときに過ごした場所でもあるのよ。戦車連隊の小隊長としてね。その経験もその後の作家・司馬遼太郎の出汁となっていると思うわ。あの方の聞く耳の能力と時代を見る目の凄さは村長もよく知ってるでしょ?」
「ああ、村長も司馬遼太郎は愛読したからね。藤沢周平と司馬遼太郎。迷った時に、この2人は欠かせない。この2人が生きていたら、今の日本をどう見たか、とても気になる」
「天国特派員の村犬・チャイに取材してもらいましょうよ」
「耳よりのアイデアだ。村長名でさっそくメールを打つことにしよう」
 


本日の大金言。

江戸の昔からある耳うどん。現代人と江戸人。人間としてどちらが生活の知恵を持っていたか、気になる。


               耳うどん10 
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プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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