銀座の穴場、原点おにぎりで1年を振り返る

今年も残すところあとわずか。赤羽彦作村長はふと、江戸の銀座に行きたくなった。エンターテインメント新聞社で宮仕えしていた日々、銀座はいわば庭みたいなものだった。と書くとエラソーだが、銀座は大人の世界の迷路という側面もあり、彦作村長は銀座の裏通り歩きが大好きだった。裏通りにあるビー玉の幸福。

新橋で友人との忘年会がある。それまでの時間を久しぶりに山野楽器やデパ地下を散策。その足で松屋の裏手をぶらりぶらりと歩いていると、「茶房 野の花」という看板が見えてきた。1階が花屋でその2階部分。いい雰囲気である。その一角だけ野趣のテイストが漂っていた。

          野の花① 
          銀座のど真ん中?

時計を見ると午後3時半を過ぎている。まだ昼飯を取っていなかったので、軽い食事でも取ろうと考えながら、藍染めのノレンをくぐって階段をトントンと上がった。軽い驚きが村長をとらえた。目の前にここが銀座のど真ん中とは到底思えない別世界が広がっていた。由緒のある和蔵の中にでも紛れ込んでしまったよう。中央に6人用の黒い漆塗りのテーブル。これは古民家のドアを再利用したものだという。さらに5人用、2人用のテーブルが二つほど。時代物の本格的な和ダンスや陶器類などが並べられている。スペースはかなり広く、ゆったり感が漂っている。ここだけ別の時間が流れている。

         野の花② 
         1年を振り返るメニュー

時間が時間だけに客は他に1組だけ。村長はメニューの中から、「野山のごちそうA」(1100円)を選んだ。少々予算オーバーだが、たぶん年内最後の銀座なので、タマゼイ(たまのぜいたく)もいいか、という気分。この店はなんと野草を取り入れた自然食カフェだった。玄米と白米をミックスしたおにぎりと黒米のおにぎりがそれぞれ一個ずつ。それも富山産のコシヒカリを使っているというこだわりぶり。それに山菜の佃煮、煮物、ホタテの汁物がセットになっている。

驚くのは甘味。「空也最中とお煎茶または抹茶」(800円)や「自家製黒豆抹茶みつ豆」(1000円)まである。値段は安くはないが、「空也の最中」をメニューに置いている店はここしかないのではないか。予約しないと買えない「空也の最中」は銀座の逸品で、村長も宮仕え時代にはたまに使わせてもらった。最中界(そんなものがあるとして)の最高峰に位置していると思う。

          野の花④ 
          玄米と黒米のシンプルなおにぎり

予算の関係で「空也の最中」は断念したが、「野山のごちそうA」はマルだった。何よりもその控えめで自然な味わいに感心した。これは精進料理の一種ではないか。おにぎりは味付けはまったくしていない。塩味さえしない。素材の米だけの味。山菜の佃煮(3種類)がその味付けの役割を担当するというわけだ。村長は玄米ミックスのおにぎりより黒米のほうがうまいと思った。米が立っていて、玄米のややクニャッとした食感よりも噛み味がいい。

          野の花⑦ 
          煮物で精進
          野の花⑥  
          がんもで精進

煮物はシイタケ、がんもどき、フキ、麩(ふ)、こんにゃく、昆布、紅あずま、ニンジンなどが関西風の薄味に仕上がっている。一足早く正月が来たような気分になってしまった。もっともうまいと感じたのは「ホタテのみそ汁」。一見何の変哲もないお椀を探ると、中にホタテが潜んでいて、その出汁の凄味に少々驚いた。白みそと出汁のバランスが絶妙で、最初の柔らかいアタックから次第にじわじわと奥行きを広げ、突然現れた「はんなり美女の日本舞踊」、そんな例えをしたくなる味覚世界が五臓六腑に染み入ってきた。お盆の陰にさりげなく置かれた水仙の花一輪が目の隅に入る。まるで千利休のワビさびの世界ではないか。「ワビさび嫌い」には耐えられない、しかし、ワビさび好きには応えられない世界。

         野の花⑨ 
         みそ汁の奥の世界

彦作村長は、銀座のど真ん中で今年一年を振り返ることにした。精進料理と越中ふんどし。ここからスタートしなければならない。たまが外れないように、と自戒を込めながら。



本日の大金言。

今年から来年にかけてのキーワードは「日本の原点」だろう。背伸びしすぎた日本の足元をもう一度見つめること。右肩上がりの幻想はすでに崩壊している。


                   野の花⑧ 

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プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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