いいことありそうな浅草の仰天カレーそば

 スカイツリーで浅草が再び脚光を浴びているが、彦作村長は宮仕え時代から、ヒマを見つけては浅草を歩き回るのが好きだった。浅草はため息をつきたくなるほど懐の深い街である。江戸歌舞伎や落語や芸人の街だった時代もあり、ヨシカミなど洋食屋や天婦羅屋、ドジョウ屋、居酒屋・・・うまい店も多く、挙げれば切りがないほど庶民文化が長い歴史とともに迷路のように息づいている街でもある。西の京都と東の浅草。共通しているのは外人の観光客がやたら多いこと。外人は目ざとい。

                 翁そば② 
         浅草寺の初春

正月の3日。午後2時過ぎ。彦作村長は浅草寺へと足を延ばした。浅草寺の大香炉の煙を浴びようと思ったからだ。その後、知る人ぞ知る「翁そば」でカレーそばを賞味する。我ながらいいアイデアではないか。「翁そば」は創業が大正3年(1914年)の庶民的なそば屋。かつて彦作村長はここで林家三平(先代)を見たことがある。ただ黙々とそばを食っていただけだが、テレビとは違う生真面目な表情に驚いた記憶がある。喜劇王エノケンや売れる前のビートたけしなども通っていたそう。

          翁そば① 
          この煙の先は?

浅草寺の香煙で身を清めると「今年は何かいいことが起きるかもしれない」という気になる。これまで何度も浴びてきたが、一向に頭もよくならないし、髪の毛には効かない。それでも「何かいいことが起きるかもしれない」と思わせる魔力がある。初詣客は3日だというのに引きも切らない。外人の観光客も目立つ。

                翁そば③ 
        ジャーン、翁そば

浅草寺周辺は混み合っていたが、少し離れると、それほどではない。「翁そば」は敷居の低い店である。言われなければ、老舗だということもわからない。浅草下町の心意気というものはこういうものかもしれない。入ると、「いらっしゃい」という掛け声。4人用のテーブルが二つと6人くらい座れるテーブルが三つ、それに小上がり。多分常連だろう、初老の紳士が黙々とカレーそばを食べていた。「すいません、今日はなくなり次第、おしまいです」動きのテキパキした女性(女将かも)が申し訳なさそうにそう言った。江戸しぐさの伝統を感じる物腰がさわやかである。

          翁そば④ 
          これがカレーそばのひやだい

「カレーそば」は何とか大丈夫だった。正式には「カレー南蛮そば」だが、常連は「カレーそば」と言っている。彦作村長は「ひやだい」(600円)にした。「ひやだい」とは冷水で冷やしたそばの上に熱いカレーのあんをかけたもの。その大盛りを「ひやだい」と言うようだ。すぐ近くの三ノ輪の老舗のそば屋「角萬」でも常連が同じような言い方をしていた。言葉を短くしてしまう江戸の下町文化ということか。最近のギャル語「てへぺろ」だとか「きゃわたん」とかもこの伝統を引き継いでいるのかも。

         翁そば⑦ 
         おう、いい湯加減だぜ

来た、来た。これだ、これだ。初めに見たときは仰天ものの「カレーそばのひやだい」。大きめのドンブリに目いっぱいカレーあんが乗っかっている。表面張力でカレーあんがこぼれずに踏み止まっている。そうとしか思えない圧倒的なボリューム。その濃いめの色の奥から「おいトウヘンボク、めン玉よーく開いて、食べてくんな」そんな声が聞こえてきた。これぞ大正のB級グルメのご先祖さまの声ではないか。しっかり食えよ、トウヘンボク。

         翁そば⑥ 
         うどんではありません

どろりとした濃厚なカレーあんは、よく見ると玉ねぎとかしわ肉が入っていて、熱々だが、その下のそばはぶっとくて冷たい。そのアンバランスが絶妙と表現するしかない。どんどん入ってくる。うまい。素朴にうまい。辛さがじんわりと効いてくる。この「粋」とは対極の「野暮」さはどうだ。ヘンな表現だが、洗練された野暮とも言うべきカレーそば。余計な講釈はいらない。黙って味わえ。小皿の刻みネギを入れてみる。鮮度のいいシャキッとした刻みネギを入れると、それが濃いカレーあんを一瞬無化する。その感触がいい。ぶっといそばはたぶん二八そばだろうが、ボソッとした歯ごたえが悪くない。あっという間に平らげてしまった。これで舌代が600円とは。

勘定を払って外に出ると、「こいつは春から縁起がいいや」というセリフが与太郎のお腹の中から出てくるのだった。



本日の大金言。

儲けばかり追求するB級グルメもどきと本物の違い。「翁そば」にその答えがあるかもしれない。


                   翁そば⑧ 
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新年のご挨拶

年末の大予想にはビックリです。「芦田愛菜に初スキャンダル発覚」には笑わせていただきました。よくもまあ根拠のない話をいかにもありそうに読ませますね。ブログときどき拝見させてもらってます。わけのわからない世界だが、変に面白い。あなたは紙一重のお方だとは思いますが、一体どちらのお方なのでしょう?マスコミ関係?注文をひとつ。和菓子とかよりバッテラとか今日のカレーそばとかをもっと発信してもらいたい。できれば店のリンクも張ってほしい。アクセスももっと増えると思いますが、もったいない。

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見せて頂きました。麺類はあまり好みませんので・・・。
今年も元気に頑張ってください。
プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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