日本橋でレアな「こだわりお茶漬け」

 秘密ペン結社の新年会に出席するために久しぶりに江戸表へ。スタートの午後6時半にはまだ1時間半ほど間があったので、ぶらりぶらりと茅場町から日本橋の丸善方面へ歩いていくと、「山本山本店」の看板が目に入った。ここは元禄元年(1690年)創業という東京でも指折りの老舗だ。海苔とお茶で有名だが、この奥に喫茶室があることを知っている人は意外に少ない。

          山本山① 
          この奥に隠れ家が・・・

彦作村長は以前ここを老舗出版社の敏腕編集者から教えてもらい、「日本橋うさぎやのどらやきと煎茶セット」(350円)を賞味、「こんなところにこんな場所があるとは」と内心驚嘆、その編集者の底知れぬ心配りに舌を巻いたものだった。野点傘(のだてがさ)が置かれたスペースにゆったり座れるテーブルとイス。メニューはそれほど多くはないが、その中にお茶漬けがあったことを覚えていた。

          山本山② 
          ただのお茶漬け?

ちょうど小腹がすいていたのと、生来の食い意地と好奇心がむむむくと湧きあがった。「平日限定 こだわりのお茶漬け」の中から「お茶屋のお茶漬け」(900円)を注文することにした。最高級の海苔(あさくさ)と静岡産の厳選煎茶(清鷹)、それにうめ味の抹茶塩(海人の藻塩)を使った実にシンプルなお茶漬けで、なくなり次第終了というレアもの。「菓子司 長門」の京和菓子もセットになっている。ほうじ茶と冷茶まで付いてくる。これで900円が高いと思うか安いと思うか、判断の別れるところだが、シティーホテルのラウンジのコーヒー1杯が同じくらいの値段ということを考えると、総合的に見て、彦作村長はそれほど高いとは思えない。

          山本山③ 
          おいでやす

10分ほどで着物姿の店員さんがお盆に載った「お茶屋のお茶漬け」を運んできた。日本橋のメーンストリートにかような「超絶した時間の流れ」があろうとはお釈迦様でも知るめえ、知るめえ。しかも、時間が時間ゆえか、お客は1組しかいない。美濃焼の茶碗に炊き立てのご飯(宮城南郷産ささにしき)が盛られ、手で千切られた見事に黒光りした海苔が乗っている。別盛りの抹茶塩を木の匙(さじ)ですくって、パラパラとふりかけ、その上から、熱い「清鷹」を注ぐ。お茶と海苔とうめ味の抹茶塩が茶碗の中で融合し、何とも言えないいい香りが鼻腔から脳の深奥に入り込み、それはオーバーではなく真冬の雪景色が春の新芽の景色へと切り替わるようだ。

          山本山④ 
          シンプルな深み
          山本山⑨ 
          あーん

木の匙で口に運ぶと、シンプルな美味さがストレートに伝わってくる。その奥深さ。来た来た来た。白と黒と緑の小さなドラマチック。脳内劇場の場面転換。半径50センチほどの春の予感の至福。お茶漬けは日本独特の食文化でご飯にお茶をかける食べ方は中国にもないという。平安時代には湯漬けがすでにあり、戦国時代には武士の常食だったともいう。寂しく貧しい即席料理という言い方もできるが、料亭などでは、最後にお茶漬けを出すことも多く、粗食が最高級の食事にもなるという不思議な日本の食文化のシンボルでもある。

          山本山11 
          菓子司のこしあん

そんなうんちくはさておき、小腹に一足早い春を収めてから、「長門の和菓子」に手を伸ばす。甘さを抑えたこしあんが絶妙なうまさ。品のいい味と表現するしかない。冷茶で締める。目を閉じると、ヤポネシアンでよかったとしみじみ思うのだった。



本日の大金言。

たかが茶漬け、されど茶漬け。紙一重の価値観。それを日本橋のど真ん中で味わうのもたまにはいい。


                   山本山13
 
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懐かしい味

初めてコメントします。実は私も東京在住の時、山本山の喫茶室でうさぎやのどら焼きを食べたことがあります。仕事先の甘党の女性が案内してくれ、確かにこんなところにという意外性に驚かされました。そのときは結構込んでました。客筋は日本橋らしく上流の中高年が多かったと記憶しています。現在は親の介護で新潟に戻り、東京に行くことはありません。懐かしくなりコメントしました。
プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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