会津ソースかつ丼の大いなる謎

 雪の会津若松市内を滑ったり転んだりして歩きながら、村長は「会津ソースかつ丼」のことを考えていた。長野県駒ケ根市や群馬県桐生市など「ソースかつ丼」のメッカはいくつかあるが、会津のソースかつ丼がいつ誕生したのかさえ実ははっきりしていない。23店舗が加盟する「伝統会津ソースかつ丼の会」でも、大正起源説や昭和(戦前)起源説を併記しているほどだ。

          会津若松駅② 
          いざソースかつ丼へ

それ以前に「ソースかつ丼」自体の起源についても諸説あり、「わが方が元祖だ」「いやいやうちの方がもっと古い」という論争があるくらいだ。ソースだけに出どころが問題ということか。確実な記録が残っていないこともあり、結局のところ真相は「藪(やぶ)の中」といわざるを得ない。

「会津ソースかつ丼」の特徴は千切りキャベツが敷いてあること、肉の量が他地区のものと比べて驚くほど厚いこと。さらに会津米(ほとんどがコシヒカリ)を使用していることの三つだろう。以前このブログで取り上げた「美由希食堂」のソースかつ丼もドンブリからはみ出るほどの分厚いとんかつで、完食するのに苦労するほどだった。

         いとう食堂① 
         伝説の味とは?

村長が今回向かったのは行列のできる超人気店「いとう食堂」。営業時間が午前11時30分から午後2時までのたった2時間半のみ。会津若松駅から4~5キロほど離れた本町の住宅街にある。ここは精肉店を経営していたご主人が「美味いとんかつを研究」しているうちに、ついに肉屋をやめて食堂に切り替えてしまったという伝説の店でもある。会津産コシヒカリを使い、豚肉は研究の末に行き着いた新潟産の極上肉を使っている。今回の旅でこの店は外せない。

開店前からすでに8人ほど並んでいた。入り口は田舎の古い食堂の雰囲気。中に入ると、7人ほどしか座れないカウンター席。狭い。
「相席になりますけど、いいがし(よろしいですかの意味)?」
夫婦で営んでいるようで、奥さんらしい女性が、申し訳なさそうに村長と村民2号に話しかける。
「さすけね(大丈夫ですの意味)」と村長。

         いとう食堂11 
         こんなメニューも

奥が和室になっていて2部屋。そこに腰を落ち着けてから「かつどん(ソース)」(1000円)を注文した。厨房から主人が揚げるとんかつの軽やかな音といい匂いが漂ってくる。注文してから作り始めるために待ち時間は20分ほど。その登場の仕方は強烈だった。ドンブリのふたからトンカツがはみ出ている! ふたを取ると、分厚いとんかつが6切れ。厚さは優に2センチはあるのではないか。それが見事な色。なめこの吸い物と大根の醤油づけが脇に控えている。まるで横綱白鵬の土俵入り。

         いとう食堂③ 
         おおっと、横綱の土俵入り

ひと口、がぶりと行く。柔らかい。ヒレ肉のようだが、ロース肉だという。ジューシーな肉汁が口中に広がる。「サシ(脂身)がこれだけいいのは新潟産のこの豚肉だから。試行錯誤してこの肉にたどり着いたんですよ」とご主人。ソースはいくつかのものをブレンドしている。甘めでリンゴ酢のような柔らかな酸味のソースがピンク色にも見える分厚い肉の味を引きたてている。キャベツは多めで、それがやや柔らかめに炊かれた会津産コシヒカリとの間に入って、絶妙な間合いとなっている。

          いとう食堂④ 
          何という圧巻

「これだけのボリュームがあるのにどんどん箸が進む。大根の醤油漬けにも感心するわ。自然なうまみで、とてもいい箸休めになってる。でも、なめこのお吸い物は具が多すぎて、もう少しシンプルな方がいいと思う」
村民2号がお腹のロースを叩きながら品評する。

         いとう食堂⑤ 
         柔らかな肉汁が・・・
         いとう食堂⑦ 
         キラキラ会津産コシヒカリ

「1000円という値段は安くはないけど、食べると納得せざるを得ない。会津ソースかつ丼の最高峰だろうな。で、何ゆえに会津ソースかつ丼はこんなに分厚い肉なのか。あれこれ考えたけど、この雪の深さと関係があるんじゃないか? 会津では雪はロマンではなく厳しい現実でもある。ここから逃げたいけど逃げられない。我慢することが日々の生活とつながっている。どこかで爆発したい。しかし、ならぬことはならぬ。そのエネルギーがある日ソースかつ丼へと向かった。どうせなら他が真似できないことをやってやろうじゃないか。それがこのマーベラスなソースかつ丼の原動力となったのではないだろうか」
「会津の鬱屈した思いと志しがギュッと分厚く詰まっているというわけね」
「戊辰戦争では負けたけど、ドンブリ戦争では絶対に負けないぞ。屯田(とんでん)でも勝つぞ。トンカツだあ。そういうメッセージかも。エイエイオー!」
「・・・・・」



本日の大金言。

会津の真髄はソースかつ丼にあり。ドンブリのふたは古代からのドカ雪である。そこからはみ出る志し。それが会津ソースかつ丼なのである。


                    いとう食堂⑨ 


 
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プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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