一子相伝、脳がとろける「冬の水ようかん」

東山温泉にノレンを下げる羊羹(ようかん)一筋 「松本家」といえば、会津では知る人ぞ知る特別な存在である。文政2年(1819年)創業。湯治場として知られていた東山温泉で湯治客相手に田舎ようかん(水ようかん)を売り始め、次第にそれが「あまりに美味い」と評判を呼んだ。東山温泉は幕末には土方歳三が傷を癒した温泉で、彼もこの水ようかんを食べた可能性は高い。

松本家の凄いところは、当時の味を守り続けていることと、店舗を増やさないということだろう。200年近く東山温泉から動いていない。会津若松駅ナカに少量だけ置いているが、あっという間に売り切れになってしまう。一子相伝、今どき珍しいようかん一筋の、手づくりにこだわる店なのである。

                松本家① 
        2個しか残っていなかった

彦作村長は幼少(ガッキー)のころに、この水ようかんを初めて食べたときの感激を忘れない。細長く長方形に切られた水ようかんは乳白色の膜にくるまれたような、きれいな小豆色で、小豆のつぶつぶが星雲状に散りばめられていた。口にした途端、ほのかな甘みとともに小豆の風味がすっくと立ち上がってきた。オーバーではなく「この世にこんなに美味いものがあるなんて」と目を閉じて数秒間天上の世界をさまよったほどだった。以来、串だんごと並んで、彦作村長にとっては「特別な存在」となった。

          松本家④  
          ワオー!ふたを開けた瞬間

その水ようかん。駅ナカで「5本入り」(保存ボックス付950円)を何とか手に入れて、ウマズイめんくい村に持ち帰って、久しぶりの賞味となった。小豆、砂糖、寒天、塩しか使用していない「生もの」なので早めに食べなければならない。
発泡スチロールの四角い箱を開けると、透明なビニールに包まれて、松本家の水ようかんが横たわっていた。縦に切り込みの線がうっすら見える。いきなり妙齢の美女の寝室に入り込んだみたいな錯覚に陥る。

          松本家⑥ 
          粒あん入りは珍しい

日光の水ようかんをはじめ長方形の有名な水ようかんはこしあんがほとんど。だが、松本家は小豆が粒のまま散りばめられている。小皿に1折取り分けて、改めて見つめる。何というみずみずしさ。水ようかんは夏の甘味というのが常識だが、冬の水ようかんというポジションは珍しいと思う。福井などにも同様の形の冬の水ようかんがあるが、黒糖入りのこしあんである。

          松本家11  
          この透明感

見ているだけで生つばが出てくる。小豆の粒つぶが妙な食欲をそそる。寒天の量が多めで、それが色合いを透明感のあるものにしている。まずひと口。寒天の食感が強い。いい小豆の風味が口中に広がる。甘さがかなり控えめ。小豆の粒つぶ感が心地いい。だが、しかし・・・昔のあの感動がよみがえってこない。遠い記憶では天上のうまさだった。美味いことは美味い。それなのに、脳天がシビレるような感動が湧き上がってこないのだ。なぜだ? 何が起きたのだ?

         松本家10 
        あの感激が・・・

「村長の口が肥えたのよ。昔は他に美味いものが少なかったでしょ。刷り込みの記憶が大きすぎたのよ。特に村長は思い込みが強すぎる人だから」
「あの水ようかんは帰らざる河なのか。ノーリターン、ノーリターン・・・」
「ノータリーン、ノータリーン」
アホ顔の村長とモンローとはほど遠い村民2号の噛み合わないデュエットがいつまでも続くのだった。



本日の大金言。

記憶の中の味覚。それを追い求めるより目の前の味覚を追え。それがB級グルメ道なのである。




                松本家② 
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プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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