恐るべき「カレーセイロひも川うどん」

 「村長、見てみて! 伊勢うどんには驚かされたけど、見た目ならこっちの方がすごいわよ」
美熟女の村民2号が、友人のうどん通からの情報を持って、農作業中の村長のところに飛んできた。メールで送られてきた写真を見て、彦作村長も仰天した。優に幅5、6センチはあろうかという幅広うどんが映っていた。箸がツマヨウジのように細く見えた。まるでうどんというよりきしめんの親分ではないか?カレー汁にたっぷり付けてうまそうに食べようとしている村民2号の友人女性。手でVサインなどをしている。

「くやしい~。先を越された! 私も目を付けていた店なのよ」
村民2号の目が三角になっていた。村長は、黙って水を一杯持ってきた。落ち着いてから、おもむろに言った。
「合成写真かもしれないよ。とにかく行ってみよう」

          藤屋本店② 
          いい店構え

ポンコツ車を飛ばして、上州は桐生市に到着。ここは村民2号のお膝元でもある。かつては織物の街として栄え、文豪・坂口安吾が晩年を過ごした街でもある。カカア天下の本場としても知られている。66号線沿いに問題の「藤屋本店」があった。桐生には何度も来ているが、ノーマークの店だった。世界は本当に広い。

「藤屋本店」は2階建ての古民家造りの雰囲気のある店だった。暖簾(のれん)をくぐって中に入ると、カウンター席、仕切りのあるテーブル席などがいくつかあり、ゆったりとした和のスペースが広がっていた。テーブル席に腰を下ろしてメニューを見る。
「これだこれだ。『カレーセイロひも川』(800円)。これください」
「私は同じものはプライドが許さない。『ソースカツ丼』(820円)にするわ。会津のソースかつ丼と比べてみたいしね」

         藤屋本店③ 
         マーベラス!
         藤屋本店10 
         桐生ソースカツ丼

「藤屋本店」は明治23年創業の老舗だった。うどん・そば・地酒が看板で、中でも「ひも川」はディープなファンが多く、土日などは首都圏から訪れる客も多いという。待つこと12、3分ほど。ソースカツ丼に続いて、「カレーセイロひも川」がやってきた。ドデカいどんぶりにカレーのつけ汁が並々と入っていた。青ネギと豚肉がボコッボコッと浮いている。いい匂いが半径70センチを支配する。そば屋やうどん屋のつけ汁は出汁がよく効いていて旨味が独特だ。浅草の「翁そば」のカレー南蛮などはその最たるものだと思う。

          藤屋本店④ 
          どんぶりにカレーつけ汁

さらに村長を驚かせたのは「ひも川」。村民2号の友人が送ってきた写真は合成ではなかった。確かに幅5~6センチはある。それがきれいに折りたたまれている。きしめんの親分というより、これはまるで「ゲゲゲの鬼太郎」の一反もめんだよ。箸で挟むのにひと工夫しながら、カレーのつけ汁にたっぷり付けて、口元に運ぶ。うまくいかない。

         藤屋本店⑤ 
         恐るべきひも川
         藤屋本店12  
         一反もめんではありません

あまりに長いので、途中で切ってから、再びトライ。もっちりしていてつるりとした感触は想像以上のうまさ。地粉100%のひも川うどんで、それが濃厚なカレーのつけ汁と相まって絶妙な寝技を仕掛けてくる。ボリュームもある。イケる。次第に村長の体が「カレーなるひも川」の中に飲み込まれ、予想外の美味に頭が真っ白になりかかる。格闘の末、15分ほどで完食。結構な満腹感にしばし揺蕩う(たゆたう)。

「ソースカツ丼は肉の量が会津よりずっと少なくて私にはちょうどいい。タレは甘めかな。キャベツがないのが桐生のソースカツ丼の特徴なんだけど、やっぱり野菜が欲しいわね。サラダでも付けてほしい」
「カレーセイロひも川は何と表現していいのか、これは反則スレスレだと思う。ちょっと前までは秋冬限定で出していたそうだけど、ファンの要望が多くて、1年を通してのメニューにしたそうだよ。こういう世界があってもいいとは思うけど、この店のように伝統の裏付けがあっての世界だと思うよ。ウケ狙いでこんなのがいっぱい出てきたら、一反もめんの行くところが無くなっちゃうよ(笑い)」
「村長も一反もめんの仲間だもんね。ふんどし好きだし」
村民2号の毒矢が飛んできた。
村長は、ここはカラスも「カア」と鳴かずに「カカア」と鳴く上州だったことを思い出した。



本日の大金言。

世界は広いが、うどんの世界も広い。埼玉には「川幅うどん」なるものまである。そのうち本当に「一反もめんうどん」が登場するかもしれない。


                    藤屋本店⑨ 


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赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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