春ははるか、地粉十割のざる蕎麦

 再び所用で会津へ。NHK大河ドラマ「八重の桜」で盛り上がっているはずの会津若松。だが、例年にない厳しい寒さで、彦作村長を出迎えてくれたのは大雪だった。真っ白いじゅうたんが駅前から広がっていた。見上げると、鉛色の空から、粉雪がとめどなく舞い降りてきて、「これが会津の冬だべした。早くコタツに入らんしょ」という綾瀬はるかの声が聞こえてくるようだった。

大町通りをとぼとぼと歩いて、四つ角に到着。ここは1590年(天正18年)、豊臣秀吉の命によって伊勢松阪から会津に入封した戦国の雄・蒲生氏郷が始めに造った商店街のかなめの地。江戸末期の戊辰戦争の際には激戦の舞台になった場所でもある。ここに気になるそば屋があった。「そば酒菜 祥」。地粉十割の手打ちそば屋である。いつしか時刻は午後6時をまわっていた。雪は止んでいた。

          祥② 
          ちこう寄れ

店構えが雑誌のグラビア向き?の古い町屋造りで、観光客が喜びそうな雰囲気に満ち満ちている。信長の楽市楽座を継承した蒲生氏郷が見たら、きっと「おお、洒落ておる。まるで京にいるようじゃ」とでも言ったに違いない。(氏郷を招待できないのは残念だが)。ノレンをくぐって引き戸を開けると、見事な囲炉裏が視界に入った。その炉辺を囲んだ席に腰を下ろした。テーブル席と座敷もあり、気持ちのいい広々とした造り。これだけいい雰囲気なのに、客は一人旅らしい女性が一人だけ。何というもったいなさ!

                祥⑤ 
        いい雰囲気である

メニューの中からそう安くはない「ざる蕎麦(そば)」(900円)を選ぶ。和服姿(会津木綿?)の品のいい女性がそば職人で、かなりの年季を感じさせる。高橋祥子さんという名前で、出張そば打ちもしてくれるそう。フトコロ具合も真冬の彦作村長だが、地酒の濁り酒(グラス800円)を追加注文した。会津で「ざる蕎麦一枚900円」というのは相当な自信と中身がないと成立しない。会津はそばどころでもあるからだ。

12~3分ほどして、地元・本郷焼の器に盛られた「ざる蕎麦」がやってきた。海苔(のり)がない。もともとざるそばとはざるに盛られたそばのことで、明治に入ってから、海苔を添えるようになった。今では、海苔がかかっていないのがもりそば、かかっているのがざる蕎麦と勘違いしている人も店も多い。

          祥⑥ 
          見事なざる蕎麦

「ざる蕎麦」はつなぎはお湯だけという十割そばで、見事な洗練を感じさせる盛り方。
「会津はいいそばがあちこちで栽培されているんですよ。うちで使っている食材はすべて店主が山に入って採ってきたものです。きのこや山菜も天然の地物です。ぜひご賞味してください」(高橋さん)

そう言われても、ちとフトコロ具合が・・・。彦作村長は黙って、そばを口に運んだ。いいそば特有のほのかな甘い香りが広がる。一番粉を多く使っているのではないか。驚いたのはコシ。更科のような白めのきれいなそばからは想像できないほどの強いコシ。相当な力技が必要で、失礼ながら女性の細腕、しかもご高齢(?)のそば職人のどこにそんな力が潜んでいるのか? それが会津の女の底力なのか?

            祥⑧ 
            まずは食わんしょ

そばつゆは鰹と昆布の出汁が効いていて甘くもなく辛くもなく。そばとのバランスが実にいい。深々と降り積もる外の雪を想いながら、濁り酒を合いの手にズズズと音を立てながら、会津の真冬のそばを楽しむ。「岩うちわ」という希少植物の葉がさり気なく器の横に置かれている。

ただ、ワサビが天然本わさびではなく練りワサビだったのが少々残念。もう一点、濁り酒が小じゃれたグラスだったこと。好みの問題かもしれないが、酒どころでもある会津ということを考えると、ここはやはり枡(ます)とシンプルなグラスだと思う。〆て1700円の舌代を払って外に出ると、会津の夜がごろりと横たわっていた。

         祥10 
         なじょすんべ



本日の大金言。

「八重の桜」の効果はこれからだろう。桜の蕾はまだ雪の下。会津に春が訪れるのは「はるか」次第とは。なじょすんべ。


                      祥⑨ 
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赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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