かけそばと猫めしの至福

 立ち食いソバは宮仕え時代の彦作村長にとっては特別な存在だった。都内をあちらこちら歩きながら、美味い立ち食いソバに出会ったりすると、道端でお金を拾ったような気分になった。その立ち食いソバ界の最高峰に位置するのが日本橋「そばよし」である。江戸時代から続く日本橋の鰹節(かつぶし)問屋「中弥商店」が始めた立ち食いそば屋で、昼時などは長い行列ができるほどの人気となっている。

         そばよし② 
         タダの立ち食いそば屋に見えるが・・・

いつかはクラウン、いつかはそばよし。彦作村長は久しぶりに江戸表に行ったついでに、ぶらりと立ち寄ってみた。時刻は午後3時を少々まわっていた。さすがにこの時間になると、待たずに入れた。かき揚げや穴子天もうまいが、ここは「かけそば」(270円)と小ライス(70円)に限る。老舗の鰹節問屋の直営店はダテではない。「立ち食いソバの常識」となっている化学調味料は一切使用していない。もともとは屋台から始まった江戸前そば。その原点に帰ると口で言うのは簡単だが、そこにB級の「立ち食い」という現実を入れて実行するのはそう簡単なものではないと思う。コロンブスの卵ならぬコロンブスのかけそば。

          そばよし④ 
          究極?かけそばと小ライス

小ライスは知る人ぞ知るこの店のサブの名物でもある。あったかいご飯に備え付けの鰹節の粉(無料)を振りかけて、醤油を数滴加える。それをかき混ぜて食べる。おかかご飯である。これがメチャクチャ美味い。

彦作村長はかつて猫と共同生活をしていたころ、猫まんま、つまりおかかご飯こそ究極のごちそうではないか、そう思うことが何度かあった。猫こそ最高の美食家かもしれないぞ。それは「そばよし」で確信に変わった。

まずは「かけそば」。つゆは多めで細切りのそばがゆったりと泳いでいる。カツオの出汁が見事に利いている。返しとのバランスが絶妙で、色合いといい、そのなめらかな風味といい、さり気ない奥深い味わいといい、「ま、これが江戸のそばの原点というものでござんすよ」八代目桂文楽がドンブリの底からにゅっと顔を出して、そうつぶやいているようだ。

          そばよし⑨ 
          返しと出汁の絶妙
          そばよし⑧ 
          只者ではござんせん

ネギの鮮度が普通の立ち食いそば屋よりシャキッとしていて、店の一杯のかけそばへのこだわりを感じる。そばは品のいい江戸前の細切りで、多分二八だろう。柔らかさと歯切れがとてもいい。シンプルの中に、計算しつくされた全体の味わいが職人芸そのものと思わざるを得ない。確かに美味い。

          そばよし⑤ 
          粉がつおをかけまして・・・
          そばよし10 
          おかかご飯!

茶わんに盛られた小ライスに鰹節の粉を振りかける。「醤油を4~5滴」とガイドされているが、村長は7~8滴ほど垂らした。静かにかっ込む。次に混ぜてみる。またかっ込む。何とも言えない鰹節の風味とあったかご飯の恋愛がイケてる。目をつむる。なぜか下町の長屋で博打から帰ってこない父親を待つ貧乏な娘の風景が浮かんでくる。近所の捨て猫が日向ぼこをしている。遠い江戸の昔へと空想の羽根を伸ばす・・・。

あっという間に至福の時間が終わった。合計で340円ナリの舌福。村長はドラ猫のように爪楊枝をくわえてから、毛の抜けた尻尾をピンと立てて外に出た。遠くに三越が見えた。



本日の大金言。

「かけそばとおかかごはん」という原点。敷居の高いそば屋もいいが、鰹節屋の立ち食いという選択も粋じゃござんせんか。


                      そばよし12 


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プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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