まさか?現実にあった「幻のそば屋」

 美味いもの探しの旅をスタートさせて早9か月。エンターテインメント新聞社時代は「うまいものを食べ尽くした」などと豪語していたが、いかに自分が大海を知らない池のバカ鯉だったかを思い知らされることが二、三あった。世の中は思っているよりもずっと広い。

昨日、その最たる店の一つに出くわしてしまった。赤羽彦作村長にとってはあまりに衝撃的なそば屋。何せ店を開けるのは土日のみ、しかも午前11時半から午後2時半まで営業はたったの3時間という、常識的に考えるととんでもない店である。一部では「幻のそば屋」と呼ばれている。たまたま村民2号がソバ通の知人から仕入れた情報で、その「幻のそば屋」が北埼玉の郊外にあることがわかった。

          石臼亭13  
          まさか、これがそば屋?

ポンコツの愛車を吹っ飛ばして、その「石臼亭(いしうすてい)」というそば屋を探し当てた。JR鴻巣駅から加須市へ向かって車で10分ほどの距離。看板もなく、PRもしていない。「手打そば」という幟(のぼり)がかすかにはためいているだけ。だだっ広い敷地内に車が数台止まっていた。古民家というより大きな納屋のよう。古い農家そのまま。「営業中」という札がかかっていなければ、まさかここが「幻のそば屋」だとは到底思えない。 

          石臼亭③ 
          幻の入り口

中に入ると、広い座敷があり、大きなテーブルが4つほど。さらに椅子席のテーブルも用意されている。メニューを見ると、「そば 並盛(350グラム)750円」「大盛(550グラム)950円)」と実にシンプルに書かれている。かき揚げ50円、野菜の盛り合わせ300円・・・。かき揚げ50円? 見間違いではないかと目をこすってみたが、見間違いではなかった。きわめて少ないメニュー。そばは「石臼引き二八そば」と書かれている。

          石臼亭⑤ 
          まずはそばがき

店主の娘さんなのか若い女性に「そばの並盛(750円)と「かき揚げ(50円)」を注文した。注文してからそばを作るので少々時間がかかるそう。どっしり腰を据えて待っていると、5~6分ほどして付き出しのようなものが出てきた。そばがきを油で揚げたものだという。そばがきはもっちりした食感でうまいが、かえしが強すぎて甘すぎる。サービスなのでも文句は言えないが、期待が大きかった分、もう一つの代物だった。

          石臼亭⑥ 
          主役の登場

さらに待つこと10分ほど。本命の「もりそば」がかき揚げと一緒にやってきた。まずはかき揚げの巨大さに仰天。厚さ4センチ、直径10センチは優にありそう。ネギとニンジン、それに干しエビが色彩豊かにてんこ盛り状態で揚げられている。
そして、竹ざるに盛られた主役のそばは、挽きぐるみの二八そば。やや緑がかった見事な細打ちだった。

         石臼亭10 
         挽きぐるみ二八そば

「これはうまい。そばがいい。このコシと立ち上がってくる風味はかなりのレベルだと思うよ。つゆはかなり甘めで、もう少し出汁を利かせた方が村長の好みだけど、それを差っ引いても、これだけのそばがこんなド田舎・・・失礼、埼玉の郊外にあるなんて驚きだよ」

          石臼亭⑦ 
          これが50円とは・・・
          石臼亭⑨ 
          つゆは甘め

「私が食べたそばの中でもベスト3に入るわ。かき揚げはとても50円とは信じられない。冗談としか思えないわ。外側がカリッとしていて中は柔らかい。でも、これを1個食べるのは大変。半分で十分よ。頼むときに注意が必要ね」
村長と村民2号の評価はそばが最高評価の五ツ星で、それ以外は三ツ星。だが、そばの美味さと店構えだけで十分「幻のそば屋」の名に値すると思う。

          石臼亭11 
          かき揚げの仰天

帰りがけに謎の店主に直撃してみた。年齢は60前後か。太めである。

「店をやり始めたのは12年前。もともとソバが大好きで全国の美味いそば屋を食べ歩いたりしてたんですよ。趣味が高じて店を開いたというのが正直なところです。このあたりは埼玉でも秩父に次ぐそばの産地なんですよ。うちの隣もソバ畑で、ここで取れた地粉を使ってるんです。二八って言ってますけど、実際は一九くらいの割合です。ええ、挽きぐるみで、挽きたてが一番うまい。うちのそばが美味いとしたら、挽きたて、打ち立て、茹で立てに徹していることかもしれません。まあ、田舎そばですが」

土日以外は他の仕事をしていることもわかった。他にうどん職人もいるという。
彦作村長は農家のオヤジのような「幻のそば屋の店主」の姿に、新しいそば屋の流れが起き始めていることを思い知らされるのだった。



本日の大金言。

グルメの世界は思った以上に広くて深い。世の中を知ったつもりが教えられ。未だ豚児。



                      石臼亭12 
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プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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