上野アメ横で昭和のB級まんじゅう

 友人の放浪作家がベネズエラから一時帰国したので、それにかこつけて出版社の編集者とイラストレーターと連絡を取り合い、久しぶりに怪しい4人が東京・上野に集合した。
「チャベスが死んで選挙が始まったので帰ってきたんですよ。選挙の結果がどうなるのか、しばらく日本にいて、またベネズエラに出稼ぎに行ってきますよ。向こうには愛人が2人、ボクを待っているんですよ」
ヒゲだらけの国籍不明顔でニヤリとした。どこまで本当なのかは不明だが、憎めないキャラだ。スペイン語がペラペラでチャベスのブレーンだったこともあるという不思議な男である。

                 都まんじゅう外観① 
          いい店構え

飲み屋に行く前にアメ横をぶらぶら。その途中で「かるた家」が目に入った。「都まんじゅう」の幟(のぼり)と看板。昭和28年創業のこれぞ上野のB級という和菓子屋さんだ。もともとは上野公園の西郷さんの下のあの「上野のれん街」で営業していたが、取り壊されることになり、8年前にアメ横に移転してきた。土日などは行列のできる店でもある。テレビや雑誌に取り上げられることも多い。

          都まんじゅう⑥ 
          思わず引き込まれる

どこか戦後の夜店のアセチレンランプの匂いがするような、懐かしさを覚えてしまう。人形焼きのように器械が一個一個焼き上げていく。見た目はまんじゅうというより今川焼きのようだが、外側はカステラ生地で、中は北海道十勝産の手亡豆(白あん)が入っている。器械で焼き上げていくのだが、その作業過程は、からくり人形でも見ているみたいな、手づくり感が漂っている。

          都まんじゅう⑤ 
          B級の老舗

「10個入り600円」を買い求めた。それをバッグに入れて、すでに葉桜になってしまった上野公園の桜を見ながら、宴会となった。

「本が売れない。何かいい企画はありませんか?」と編集者。

「ニッポンの名器」というのはどう? BCな話の著者に書いてもらったら、面白いんじゃないか、と村長。ストラディバリウスみたいに名器の謎を探る。図書館に置けるような、ハイレベルの知的なエンターテインメント本にする必要がある、と村長。
「面白い! 売れたらシリーズにして、『フランスの名器』とか『中国の名器』とかね。『ベネズエラの名器』はぜひボクに書かせてほしい」と放浪作家がニヤリとする。目がマジになっている。
「県別にしてこれぞホントの秘密の県民ショーなんてのもいいね」

取らぬ狸の皮算用で、怪しすぎる宴会が盛り上がる。葉桜のような皮算用。イラストレーターがトイレに行ったまま帰ってこない。話に夢中になって、誰も心配しない。20分ほどしてから真っ青な顔でふらふら状態で戻ってきた。「久しぶりに街に出たのでちょっとクラクラした」。村長は立ち上がって、お開きを宣言した。

          都まんじゅう② 
          見事な色と風味
          都まんじゅう⑥ 
          ひと口、やってくんない

ウマズイめんくい村に戻って、「都まんじゅう」を賞味してみた。焼き色が見事なきつね色。器械の腕前は職人芸かも。「都まん」という焼き文字が粋である。小麦粉、卵、上白糖、ハチミツなどを使ったカステラ生地は意外にしっとりしている。何とも言えない焦げたような甘い匂いが漂ってくる。中の手亡豆(てぼうまめ)の白あんはこしあんで、甘さは控えめ。添加物を使っていないことに好感が持てる。味はメチャウマではく、まさにB級のうまさ。辛口に品評すると、カステラ生地の存在が大きすぎて、白あんの存在があまりに薄いのではないか。村長の好みとしては白あんの量をもっと増やしてほしい。

          都まんじゅう⑧ 
          カステラ生地と白あん

だが、と思い直す。この店の佇まいと歴史と上野という飛び切りの下町の香りを考えると、これはこのままがいいのかもしれない。アメ横の怪しい坩堝(るつぼ)の世界をこよなく愛する彦作村長にとって、この「都まんじゅう」はそのネーミングとともにおいそれと品評できない不思議な位置を形作っているのだった。



本日の大金言。

世の中には理屈で割り切れないものがいっぱいある。B級グルメの世界にも宇宙の価値観を変える「暗黒物質」があるかもしれない。



                 上野公園2  



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プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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