広大な屋敷内に謎の隠れそば屋

 こういうそば屋ってアリか? 東北道をプカプカ南下中に彦作村長は埼玉・加須インターで降りることにした。美熟女の村民2号の情報で「北埼玉に面白い不思議系のそば屋さんがあるらしいわよ。広大な邸宅の中でひっそりと店をやってるんだって。それもお昼時だけ。一度行ってみたら?」が頭に入っていたからである。

加須インターを降りて、大桑交差点周辺をウロウロしながら、その不思議系のそば屋さん「そば処 たて野」を探し当てた。高速道路沿いは一軒家と田園が混在していて、こんな場所にそば屋があるとは思えない。広大な畑の奥にそれらしき幟(のぼり)が立っていた。それが「たて野」だった。

         たて野① 
         ここにそば屋が?

もともと大地主なのだろう、石の正門の下に「営業中」という木札が置いてあった。それがなければ、田舎の広大な邸宅としか思えない。そのまま車で入る。広い敷地の中に比較的新しい建物があり、「たて野」という地味な看板が。もし都内にこれだけ広いそば屋があったらかなりの料金を取られるだろう。第一、門から入って、オーバーではなく100メートルほど進まないと店にたどり着かないのだ。こりゃあまるで隠れ家だよ。こんな不思議なそば屋が現実にあるなんて・・・。

          たて野② 
          屋敷の中のそば屋
          たて野③ 
          メニューは多くない

ちょっとした料亭にでも入ったような気分でメニューを見ると、「せいろそば 小盛り600円 普通盛り700円 大盛り900円」と書かれていた。「季節の天ぷら 各種2個100円 さつまいも、かぼちゃ、はす、しゅんぎく、まいたけ」と実にシンプルな表記。天ぷらが2個100円というの珍しい設定だ。彦作村長は奥さんらしき女性に「せいろそば 普通盛り」(700円)とさつまいもとまいたけの天ぷらを注文した。合計800円なりはそう高くはない。

         たて野④ 
         まずは揚げそば
         たて野⑤ 
         揃い踏み

まず「揚げそば」が前菜として出てきた。お茶を飲みつつポリポリ。続いて「せいろそば」と天ぷらが置かれた。料亭のような広い座敷にテーブルは四つ。床の間には季節の花が飾られている。ホタルブクロとカスミソウ。風流な丸窓も情緒を盛り上げる。まるで隠れ屋敷でもいるような、キツネにでもつままれ気分。尻のあたりがムズムズしてくる。

         たて野13  
         挽きぐるみの二八そば

見事な細切りのせいろそばだった。挽きぐるみの二八そばで、グレーがかったところに黒い星が点々と入っている。まるで機械で打ったようなエッジの立った見事なそば。店主の腕前の確かさを表していた。北海道幌加内産の玄そばを使い、挽き立て打ち立てにこだわっているという。店主の顔が見たくなったが、お顔が見えない。

         たて野⑨ 
         見事である
         たて野12 
         つけ汁も隙がない

そばはコシがかなり強い。風味もこの季節にしては十分で、千利休でも潜んでいそうなつけ汁に付けて口中に運ぶと、幸せな気分がじんわりと立ち上がってくる。つけ汁はカツオと昆布の出汁と返しが絶妙で、甘すぎず辛すぎず。天ぷらもカラッと揚げられていて美味い。失礼ながら、こんなド田舎にかようなそば屋が潜んでいようとは、お釈迦様でもご存じあるめぇ、という気持ちになってくる。

ただ少々気になったのは、メニューの酒が人気の「八海山」で、いかにもという世界。村長は八海山も嫌いではないが、すべてが出来過ぎの世界・・・。尻のあたりがムズムズしているのはそのせいかもしれない。

         たて野⑧ 
         ま、ひと口ズズッと

店主はとうとう顔を見せなかった。隠遁者の気配。奥さんによると、趣味でそば作りをしていて、それが高じて55歳で会社を辞め、6年前に自宅の敷地内に店を開いたそう。「江戸東京そばの会」に通ったともいう。よくあるパターンでもあるが、それでこれだけの高レベルのそばを打つというのは、努力の他にもともとセンスがあったとしか思えない。脱サラしてそば屋を開く人は多いが、ここまでこだわる店はそう多くはないと思う。広大な自宅という運もあるかもしれない。店主の顔が見たい、そう思った。



本日の大金言。

そば屋を開いて第二の人生へ、という中高年は多い。そば打ちは比較的手軽に勉強できるが、成功するのはそう簡単ではない。そば屋を出す前にご本人が女房から追い出されることだってある。打つ前に妻に打たれるソバ修行、なんてね。




                   たて野11 


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プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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