明治創業のベラボーなカツカレー

 日本橋小網町と言えば、東京証券取引所のある兜町に隣接した地帯。茅場町と人形町にも近く、日本橋高島屋からも歩いて15分ほどの距離。花のお江戸のほぼド真ん中といってもいいところ。ここに明治22年創業の洋食屋がある。しかもこの洋食屋、ただの洋食屋ではない。舌代が驚くほど安い。「カツカレー」(530円)、「ハンバーグ」(480円)「ハヤシライス」(450円)などなど、タイムマシンで30年ほど前の昭和に戻ってしまったよう。いい意味でベラボーな料金と店構えで営業を続けている、れっきとした現役の洋食屋さんなのである。

          桃乳舎② 
          かような店があったとは・・・

「平成のガラパゴスだよ。株屋のボクでさえ最初は驚いたくらいだからねえ。喫茶・軽食って看板を掲げているのも昔のまま。店名が『桃乳舎』って一風変わった名前でね。ま、百聞は一見にしかず。一度行ってみるといいよ」
友人の証券マンからこの店の存在を聞いたとき、正直、きっと味はイマイチなんだろうな、と思った。日本橋周辺にはかの池波正太郎が通った「たいめいけん」(昭和6年創業)や「新川 津々井」(昭和24年創業)など老舗の美味い洋食屋が結構ある。いずれも値段もそれなりで、突如、ビンボーになってしまった彦作村長にとっては敷居が高すぎる。

         桃乳舎③ 
         日本橋とは思えない

久しぶりに日本橋に足を延ばしたついでに、ふと思い出して、その「桃乳舎(とうにゅうしゃ)」を探してみようと思い立った。時計を見ると午後1時半すぎ。茅場町から鎧橋を超えた当たりをウロウロしていると、「桃乳舎」のレトロな看板が見えた。わざとらしく作ったレトロではない。昭和8年に建てられた古い洋館で、入り口には自転車が数台置いてある。少々古ぼけたショーケースがあり、カレーライス(450円)やポークカツ(580円)、ハンバーグ(480円)、コーヒー(250円)など主なメニューが並んでいる。コカ・コーラまであるのが、昭和世代にとっては胸にぐっとくるものがある。

         桃乳舎④ 
         このシンプル

店内はよく言えば無駄なものがないシンプルな、見方によっては田舎の殺風景な食堂のような質素なテーブルと椅子。外連味(けれんみ)のない、ある種の昔の東京下町本来の匂いがする。化粧っ気のない感じのいい女性が注文を取りに来た。「ランチ」はすでに売り切れていたので、「カツカレー」(530円)にした。奥が厨房になっているらしく、そこに白いコック帽とコック服のシェフの姿が見えた。軽い驚きだった。ニューオークラのコックと同じような見事な佇まいだったからだ。

            10 
          吾輩はカツカレーである

注文してからトンカツを揚げているようで、いい匂いが質素なテーブルにまで漂ってくるよう。12~3分ほどで「カツカレー」がやってきた。大きな白い皿に熱々のご飯が盛られ、揚げたてのトンカツ、その上からカレーのルーがかかっている。カレーの具はタマネギしか見えない。トンカツの肉は厚くはないが、コロモが実にサクサクしていてジューシー。ご飯がふっくらと炊き上げられていて、その目立たないこだわりに感心させられた。

         テイク2  
         昭和のよき香り
         桃乳舎⑧ 
         肉は薄いが・・・

カレーはやや甘めでなつかしい昔のカレー。小麦粉とカレー粉をバターでじっくりと炒めたようなやさしい味である。香辛料をあまり使っていないのも村長の好みである。福神漬けの自然な美味さも好感が持てる。フツーの美味さをフツーにやっている。その奥にある意志・・・。

ただ一点、カレーのルーがもう少し多いといいのだが、それもこの値段を考えると、あまりにぜい沢な注文かもしれない。東京のど真ん中とも言える場所に、かような洋食屋がさり気なく存在していることに正直驚いた。改めて世の中は広いと思わずにはいられない。

          テイク3                     オールライス?

出がけに、この店の「桃乳舎」の由来を尋ねたら、意外な返事が返ってきた。
「創業当時は牛乳屋だったんですよ。明治の頃の話ですけど。その時の名前をずっと使っているんですよ」
「桃乳」という語感に惹かれたミーハーな村長だったが、そのような歴史があったとは。今でも証券マンばかりでなくよき時代の常連客も多いという。アベノミクスを掲げるどこかの首相はこの店を知っているのだろうか? 



本日の大金言。

東京も捨てたものではない。マスコミがあまり取り上げない、いい意味での職人が今日もどこかでいい仕事をしているかもしれない。



                     桃乳舎12
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プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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