アワやの滑り込み、澤屋の絶妙「粟餅」

 京都に来た目的の一つが北野天満宮前の「粟餅所 澤屋」の粟餅(あわもち)を食べること。天和2年(1682年)創業と言われているが、寛永15年(1638年)発行の「毛吹草」に洛中名物として記載されていることから、実際はもっと古いと言われている。店舗を広げず、北野天満宮前で三百数十年もの間、細々と手づくりの粟餅を出し続けている、信じがたい老舗である。日持ちしないので最低でもその日中に食べなければならない。一番のぜい沢は、作りたてを店内で賞味すること。

彦作村長は焦っていた。友人たちとの楽しい珍道中に時を忘れてしまい、気づくと午後4時を回っていた。村長の胸の赤ランプが点滅し始めていた。「午後5時まで。なくなり次第終了」という情報が頭をよぎっている。友情よりも澤屋の粟餅!村長は中座して、四条河原町からタクシーを使うことを決断した。念のため電話を入れる。「4時半まで入れますやろか? お土産で作っておきまひょか。それでどうですやろ?」「わかりました。もし間に合ったら、中で食べさせてください」そんなやり取り。


          澤屋② 
          あわやタッチアウト!

有名誌の元女性編集長も澤屋の粟餅に強い興味を示し、タクシーに同乗。割り勘にすれば安くなる。澤屋に到着したのは4時35分。ともすると通り過ぎてしまいそうなほど目立たない古い木造2階建の店舗。「あわ餅所」という看板と「澤屋」の暖簾がさり気なく歴史を感じさせる。半分店内で食べることをあきらめたが、「どうぞ、中でお食べください」とお茶を出してくれた。タッチアウトにならずに、滑り込みセーフ!

          澤屋④ 
          何という風情

店内は見事な木目のテーブルが6つほど。それほど広くない。白衣の12代目の主人とたぶん女将さん、それに息子さんだろうか13代目(?)が手作業で粟餅を作っていた。目の前には木の桶が置かれ、搗(つ)きたての黄色い粟餅を見事な手さばきであんで包み、丸めて行く。「一皿550円」(きな粉2個、あん3個)。それが目の前にやってきた。うーむ。こしあんときな粉のミラクルな世界か。北野の奇跡か。これだこれだ。

          澤屋⑧ 
          粟餅一皿どす

まずはこしあんをひと口。甘さが抑え気味のこしあんと搗きたての粟餅の柔らかな感触が口中の粘膜に張り付いてくるよう。すべての表現が馬鹿バカしくなるほど素朴に美味い。シンプルな深み。シンプルな豊饒。そんな表現すら陳腐である。村長がこれまで賞味した中でもこれは別格だと思う。粟餅の黄色がこれほど魅力を放射するとは・・・これは反則ではないのか。

         澤屋⑥ 
         うむむむ
         澤屋⑦ 
         粟餅の奇跡・・・
         澤屋10 
         きな粉の奇跡・・・

きな粉は細長い二本の粟餅の上にたっぷりとかかっていた。竹ようじで口に運ぶと、さわやかなきな粉の香りが鼻腔をくすぐり、砂糖のシャリッとした食感とともに、柔らかな粟餅が三位一体で素朴な感動を運んでくる。どちらかというときな粉の苦手な村長だが、これは素直に美味い。あっという間に一皿平らげてしまった。夢のような時間は終わった。一皿の幸せ。かような店が時を超えて、かような自然体で存在している。改めて京都の底知れない深みを思った。



本日の大金言。

アワを食う美味さ。北野大茶会を開いた豊臣秀吉はこの粟餅を賞味したのだろうか? 時代的に合わないが、秀吉がもし賞味していたら、女狂いは半分減っていたかもしれない。




                     澤屋③
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プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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