偉大なる立ち食いソバにひれ伏す

隠すものがないが、 何を隠そう、赤羽彦作村長は「立ち食いソバ」の熱烈なファンである。厳しい宮仕え時代から、仕事の合間を縫って、立ち食いそば屋の看板を見ると、飛び込んでは食し、食しては、「うむ、ここはツユがいいな」とか「これはひどい。天ぷらがうどん粉の塊みたいだ」とか「立ち食いそば屋に美人がいないのはなぜか」とか、あれこれチェックすることも無上の楽しみだった。
有楽町のガード下、人形町の飲み屋街、東京駅近くのチェーン店などなど挙げたらきりがない。

水道橋の「とんがらし」は天ぷらが最高レベル(麺はイマイチ)だし、日本橋にも贔屓の立ち食いそば屋があった。

立ち食いソバには味以外の要素もある。例えば船橋競馬場の立ち食いソバなど。昭和40年代のうらぶれた雰囲気が好きで、たまに立ち寄ったりもした。
発泡スチロールのドンブリや割り箸が無造作に落ちていたりする。地方競馬場の立ち食いソバは、味はお世辞にもうまいとは言えないが、馬券を握りしめる訳ありの夢やスッテンテンになって無残に肩を落とす姿が隠し味となっているためか、都心のきれいな立ち食いとはひと味違う生身の陰影がある。それも彦作村長の好みでもあったのだ。

ここ5~6年ほどの立ち食いソバの実力は驚くべきものがある。「富士そば」や「小諸そば」などのチェーン店が始めた生そばをその場で茹で上げ、冷水にくぐして、出す。これは立ち食いソバ界の革命と言ってもいい。それまでは作り置きの茹で麺を湯に通すだけのぶよぶよ麵が多かった。今では店ごとに大きな釜で生そばを茹で上げる光景が普通になってきている。

天ぷらも揚げ立てを出す店がどんどん増えている。質が上がっているのに、値段は定番のかき揚げソバが400円前後と安い。

         ゆで太郎① 

メニューも豊富で、かつ丼やカレーライスにもハズレが少ない。村長は小諸そばと富士そばのかつ丼のファンでもある。「立ち食いでリッチな気分になりたい」時にはぜひにおすすめしたいくらいだ。400円~500円であれだけ肉厚でジューシーなとんかつには感動を覚える。タマネギと卵のバランスもよく、湯気とともに目の前に現れると、オーバーではなく「参りました」とひれ伏したくなるほどだ。ヘタなとんかつ屋より満足感がある。

デフレ不況が深刻になるにつれて、立ち食いソバだけは「負けてられるか」とばかりに歯を食いしばって、どんどんレベルアップしていくかのようだ。永田町や霞が関のインチキぶり、東電など電力会社の恐るべき無責任隠ぺい体質、巨大メディアの驕り、忍び寄る未来不安・・・そういった日本の劣化に対して敢然と庶民のソバに立つ。

「みんな、のびてる場合じゃないぞ、ソバはのびたらお終いなんだよ」と無言の声援を投げかけている。なんと「味な抵抗」ではないだろうか。宮沢賢治の雨ニモマケズ風ニモマケズの精神に近い、そんな立ち食いソバの底力に村長は改めて敬意を表したい。


さて、村長はたまに農作業に行く日本橋兜町のペンクラブの近くで、このところ成長著しい「ゆで太郎」に飛び込んだ。白地に江戸文字で「江戸切りそば ゆで太郎」と書かれたノレン。ムシムシしていたので、「冷やしたぬきそば」(380円)とトッピングで「コロッケ」(50円)、合計430円を自販機に入れる。ちなみに「かけ」は260円。

「挽き立て、打ち立て、茹でたて」を看板にしているだけあって、注文してから、呼ばれるまで12~3分ほどかかった。ここの特徴は店ごとにそば粉から生そばを作り、注文してからゆでる。大きな釜でソバをゆでているのが見える。北京原人からホモサピエンスに進化したみたいで、昔の立ち食いソバとはまるで違う。

冷やしたぬきの生命線でもある揚げ玉がかなり多めで好感が持てる。

具はワカメ、かまぼこ、刻みネギ。キツネが乗っかっているのも特筆もの。ソバは細めで江戸前。わさびがドンと控えているのもいい。だし汁は濃いめ。まずは揚げ玉とからませてひと口。これは冷やしたぬきに対する礼儀である。揚げ玉はアラレのようにつぶ玉でカリッとした歯ごたえ。

ソバはゆでたてを冷水にサッとくぐらせて出しているので、シャキッとしている。これだこれだ。わさびとワカメをからませてどんどん口に運んでいく。ツユは濃いめだが、くどくはない。

50円のポテトコロッケ(今どき50円のコロッケとは泣けてくる)にソースをかけ、きれいに食べ終えるころには、村長はすっかり与太郎と化していた。気分は木枯し紋次郎で定番のツマヨウジを口にくわえて外に出ると、梅雨晴れの太陽が、「またバカ者がひとり、ドブに落ちるぞ」と笑っているようだった。



  本日の大金言。

 立ち食いソバがある限り、日本は大丈夫だ。

         ゆで太郎②
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プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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